説明

苗床

【課題】花壇や玄関先垣根に有用な、雑草が生え難く装飾性が高く堅牢な苗床を提供する。
【解決手段】内部に土壌等を収納する箱型の苗床1を、側面3にはテント地のような可飾性で耐候性のある非透水性の生地を用い、底面5と上面4には耐候性のある透水性の不織布を用い、更にその上面には植物を植栽する際に開閉をする開閉手段6を設けた。その開閉手段6として、最低1対のスライダーを有するファスナー61を1本以上縫い付けたものであって、また箱型を維持するために内部または縫い目内に硬質の芯材を有するように構成し、また上面4もしくは底面5の端には持ち運び用の持ち手7が縫い付けられているものである。また、連結部8を設けることで容易に連結、固定が可能にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は花壇や玄関先垣根に有用な苗床に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より花壇や玄関先に花や低木を植えることがなされているが、これらを直接土に植えるのではなく鉢植えして、植物の種類を交換したり雰囲気を変えたりすることがなされる。このような鉢においては、瀬戸物などの鉢を用いたり、プラスチックのようなプランターを用いたりすることがあるが、前者は一度植えると植物が枯れるまで同じ様相を呈するので変化がなく、後者は1〜2年でプランターが風化するので多年生草木には不適切である。そこで例えば特開平7−31292号公報(先行技術文献1)に示すような口径を大としかつ土抜けの起こらない構造の底付き鉢が提案されている。この鉢は一端から連続引き出し可能な集合鉢体を構成する個々の六角柱状の鉢の下部に、列方向に交差して対向する側壁の下部にそれぞれ延長する1対の方形状の互いの貼着で形成す第1の部分底と、隣接する側壁の下部にそれぞれ延長する1対の三角形状の貼着で形成す第2の部分底と第3の部分底の重合で形成する底部で構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いずれも表面が広く開放されているので雑草が生えやすい。防草シートで鉢の表面を覆うことが考えられるが、いずれの場合も鉢本体と防草シートとの接着が困難で、防草シートがめくれたり、風に飛ばされたりして効果的な防草が困難である。また先行技術のように、紙のような材料で鉢を構成することで鉢への装飾が容易であるが、反面、底辺を貼りあわせで構成せざるを得ないので、耐久性に乏しく多年生植物には適さない。また鉢そのものは大きく出来ないので、鉢ごと盗難にあう可能性が高い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、内部に土壌等を収納する箱型の苗床において、側面には可飾性で耐候性のある非透水性の生地を用い、底面と上面には耐候性のある透水性の不織布を用い、更にその上面には植物を植栽する際に開閉をする開閉手段を設けたもので、より好ましくは側面をテント地とし、側面と上面、側面と底面は重ね折り縫いしたものである。
そして本発明は、上述した開閉手段として、最低1対のスライダーを有するファスナーを1本以上縫い付けたものであって、また箱型を維持するために内部または縫い目内に硬質の芯材を有するように構成し、また上面もしくは底面の端には持ち運び用の持ち手が縫い付けられているものである。
また側面の角をなす部分に筒状の連結部がつけられているものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明にあっては、側面には可飾性で耐候性のある非透水性の生地を用い、底面と上面には耐候性のある透水性の不織布を用い、更にその上面には植物を植栽する際に開閉をする開閉手段を設けたので、鉢というより苗床として耐久性に富み、鉢の側面に多様な模様を装飾でき、場合によってはその模様に中に所有者の情報などを盗難防止に表記できる。しかも底面を不織布で覆うので土抜けはなく水はけがよいし、一方上面を不織布として覆ってしまうので、水遣りに不都合がなく雑草防止の効果が得られるため、自宅やマンションのベランダに置くこともできる。
また側面をテント地とし、側面と上面、側面と底面は重ね折り縫いしたので、縫うという作業で側面と防草効果のある上面を平易に強固に結合できしかも堅牢で、側面には写真印刷などで精巧な描画ができるため、広告やイベントにも利用可能である。
【0007】
そして本発明は、上述した開閉手段として、最低1対のスライダーを有するファスナーを1本以上縫い付けたことによって、植えつけた植物の成長を阻害しないで植物の根元まで防草することができ、植替えの際には苗床を傷つけることなく新しい植物等を植えることができる。またファスナーの開閉により直接土壌に肥料を与えることもできる。
また内部または縫い目内に硬質の芯材を有することで、布地であっても型崩れすることがなく長期間にわたって堅牢なので、多年生植物でも適用できる。堅牢であるからこそ、比較的大型の苗床に形成することも出来、玄関先の垣根等としても適用できる。そして上面もしくは底面の端には持ち運び用の持ち手を設けることで、苗床を連結して配置でき、また側壁の露出面を変更する場合には、持ち手で苗床を回転させること等が出来るので、苗床に土壌が詰まって重くなっていても軽度の移動が可能となる。
【0008】
また側面の角をなす部分には筒状のものを取り付けるまたは筒状になるよう縫い合わせることにより連結が容易にできるようになる。そして地盤と固定することにより盗難抑制にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明実施例の苗床の斜視図である。
【図2】本発明実施例の縫い目の説明図(a)(b)である。
【図3】本発明に利用する芯材の斜視図(a)とその芯材を縫い目に折りこんだ説明図(b)である。
【図4】本発明における連結の方法の説明図(a)(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、側面3に可飾性で耐候性のある非透水性の生地を用い、底面4と上面5には耐候性のある透水性の不織布を用いた箱型の苗床1であって、その上面5には植物9を突出させる際に開閉をする開閉手段6を設けたものであり、以下詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
図1は苗床1の斜視図で、内部には土壌等2を収納する箱型の苗床をなしている。苗床1の大きさとしては例えば長さ50cm、幅25cm、高さ50cmであるがこれに限るものではなく、立方体や多角柱でもよい。側面3には可飾性で耐候性のある非透水性の生地、たとえばテント地で構成し、底面4と上面5には耐候性のある透水性の不織布を用いる。土壌等2としては、例えば黒土、鹿沼土、バーク、肥料その他の混合物であって、苗床内で植物9が根を張り育成させるのが目的なので、袋の外の土壌に根を張らせる従来の緑化事業のような肥料のみを入れるものではない。
【0012】
側面3のテント地とは一般的にポリエステル繊維やアクリル繊維が使用されており樹脂加工が施されていることが多い。また、吸水防止加工により側面3からの水分の蒸散を防ぐことで苗床1内部の土壌等2の過度の乾燥を防ぐことができる。その他にも撥水加工、フッ素加工、親水性加工等によりテント地自体の汚れを付着しにくくし、さらに汚れを落としやすくしているため、泥汚れ等による見た目を損なうことも少ない。他にも、防炎加工も施されており安全性でも高い評価が得られる。そして、テント地にその場にあった印刷をして側面3に使用することにより、景観を崩すことなく設置することも可能になる。
【0013】
底面4や上面5に用いる不織布とは、例えばポリプロピレン多層スパンバンドからなるが、他にもアラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維などを用いることが出来る。これらの材質を用いるときの条件は、植物9の育成に必要な水分と、空気が布地を透過することのほか、耐候性が必要で、例えば日本国内の通常の天候管理下で10年間腐敗しないことが望ましい。これは苗床1はあくまで地面や屋上と独立して苗の育成を行うからである。腐敗しない10年間というのはあくまで目安で、上述したポリプロピレン不織布では15年以上の実績を持つし、本発明では以下の説明でも理解されるように、植物9と苗床1をまとめて新規なものに交換できるので、もっと短期間となっても良いが、耐候性は必要である。また緑化施工する建造物が耐火性を維持することが要求される場合があるが、この場合には苗床1は、建造物の耐火性を損なわないようにする必要がある。この場合には、不織布の材料としてガラス繊維の含有量を高くし、例えば90%以上がガラス繊維としてスパンバンド加工で不織布を形成するのがよい。
【0014】
側面3と上面5、側面3と底面4は互いに縫うことが出来るので、図2に示すような縫いあわせにより箱状に形成できる。縫い合わせを簡単に行うには図2(a)に示すように、縫代先が箱状の内側に位置するようにすることで見た目がシンプルな感じにまとめることができる。そして、縫い糸自体が直接光に触れないため紫外線による劣化を遅れさせることができる。また鞄やキャリーバックで実績があるような重ね折り縫いは図2(b)に示すように縫い合わせ部分が強固である。苗床1内部に土壌等2を入れた場合に重量が出るため、持ち運ぶに耐えられるようにするのにはこちらの縫い方の方が適していると思われる。見た目はそれほど気にならず、立体感や高級感を与えることができる。
【0015】
6は植物9を突出させる際に開閉をする開閉手段を設けたもので、植物9としては、根の部分に発芽土がついたまま差し込むものなどでよいが、いわゆる多肉植物であれば必要な土壌量が他の樹木などに比較して少なくて済むので好ましい。その多肉植物とはサボテン科、アロエ科、ハマミズナ科、ベンケイソウ科などがあるが、緑化に適したものを選択すればよく、例えばベンケイソウ科で常緑のもの、品種登録されたもので具体的に例示すればトットリフジタ1号などが好ましい。公園などにおく場合にはヒャクニチソウや矢車草など花がかわいらしいものが好まれる。一方本発明は住宅の垣根や店舗の入り口などにも有用なので皐月やマキなども植栽する。
【0016】
そして、上述した開閉手段6としては、ファスナー(滑り式留金具)61が有用である。そのファスナー61は金属ファスナー、コイルファスナー(樹脂ファスナー)、プラスチックファスナーなどが利用できるが、耐候性や、中に充填されたものが土壌等2であることを考慮すると樹脂製のファスナーが好ましく、金属ファスナーの場合は腐食し難い材質や表面処理を施すのが好ましい。
【0017】
ファスナー61は通常は一つのスライダーしかついていないので、植物9の茎がファスナー61の端に位置できるようにファスナーの位置を配慮した方がよい。このようにファスナーを使うことで苗の茎を締め付けることなく穴を閉塞することが出来、茎の成長に応じてファスナー61の開口を広げることが出来るが、更にはそのファスナー61のスライダーの滑り具合によっては、茎の成長でスライダーが後退し、自動的に開口の大きさが変えられることにもなる。それには、洋服等に使用されるロックのかかるタイプではなく、力を加えなくても自然と開閉するタイプがよりよい。
【0018】
より好ましい方法として、図1の左側に示すようにファスナー61のほぼ中央部が開口するように、スライダー611を二つペアーとして設けることである。これにより、植物9を土壌等2中に差し込みやすくなり、その配置の自由度も向上するので、芽の伸び具合・葉のしげり具合を考慮しながら植物9を植えるなど、苗床の配置場所によって有用である。
また、図1の中央や右側に示しているのは、穴を長尺とし、ファスナー61を、花草や低木などの植物を植える列ごとに一本として、それぞれ花草や低木を植えたい場所にスライダー611の対を配置したものである。また低木を1本ずつにしたい場合などは、苗床1を直方体など長細くし、その長辺方向に向かって一列だけのファスナーを設けてもよい。ファスナー61は、一般に壊れると修繕が困難で交換するしかないのが、本発明におけるファスナー61、61は服飾と異なり頻繁に開閉するものではないので、一連化にしてファスナー61の縫製作業を容易にする方が効率的であり、また緑化条件によって苗の間隔や本数が決まるので、1列1連であればそれに合わせた苗の配置が選択できるという長所がある。このような最低1対のスライダーを有するファスナーを1本以上縫い付けたものである。
【0019】
また箱型を維持するために苗床1内部または図3(b)のように縫い目内に硬質かつ植物の成長等を害さないような芯材10を有するように構成する。これには、図3の(a)のように骨組みのように棒状のものを組み立てるのもよいし、板のようなもので側面3内側に上面、底面のない箱型を形成してもよい。また上面もしくは底面の端には図1の持ち手7のように持ち運び用の持ち手が縫い目に縫い込まれているものである。
【0020】
そして側面3の角をなす部分には筒状のものを縦に取り付けることにより連結するための部分が出来る。また側面3の角をなす部分を筒状になるよう縫い合わせてもよい。そこにU字型のものを差し込むことにより隣との連結または他との連結を図4(a)のようにすることができる。そして、連結部8の途中に切り込みを入れることにより、目立たない所でも図4(b)のように連結することができる。また、連結部8にL工のような頑丈な物を差し込み地盤等にそのまま打ち込めば固定にもなり、盗難抑制にもつながる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、効果的な防草ができ、装飾性がありしかも堅牢なので花壇や垣根に有用である。
【符号の説明】
【0022】
1 苗床
2 土壌等
3 側面
4 上面
5 底面
6 開閉手段
61 ファスナー
611 スライダー
7 持ち手
8 連結部
9 植物
10 芯材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に土壌等を収納する箱型の苗床において、側面には可飾性で耐候性のある非透水性の生地を用い、底面と上面には耐候性のある透水性の不織布を用い、更に前記上面には植物を突出させる際に開閉をする開閉手段が設けられていることを特徴とする苗床。
【請求項2】
前記苗床の前記側面はテント地からなり、前記側面と前記上面、前記底面は
重ね折り縫いをされていることを特徴とする前記請求項1記載の苗床。
【請求項3】
前記苗床の前記上面には、前記開閉手段として、最低1対のスライダーを有するファスナーを1本以上縫い付けてあることを特徴とする前記請求項1記載の苗床。
【請求項4】
前記苗床には、箱型を維持するために内部または縫い目内に硬質の芯材を有することを特徴とする前記請求項1または2記載の苗床。
【請求項5】
前記上面の端もしくは前記底面の端には持ち運び用の持ち手が縫い付けられていることを特徴とする前記請求項1記載の苗床。
【請求項6】
前記側面の角をなす部分には連結用に筒状のものが付けられていることを特徴とする前記請求項1記載の苗床。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−211924(P2011−211924A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81101(P2010−81101)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(309020688)
【Fターム(参考)】