説明

苗挿し機

【課題】各種の育苗器に容易に対応可能であり、また各種の育苗器の兼用も容易にできる苗挿し機の提供である。更に育苗器の種類を変えるたびに煩雑な作業をすることのない、
作業効率の良い苗挿し機の提供である。
【解決手段】育苗器1を移送する移送装置3側に、検出センサ41、43によって検出される被検出部42、44を設け、移送装置3側で各種育苗器1の移送制御を可能とした。
育苗器1を載せて回転駆動する無端帯3に、該無端帯3の回転方向に、所定の育苗器1に対応して所定ピッチ毎に移送停止位置がセンサ41、43によって検出される被検出部42、44を設けており、また前記被検出部42、44はセルのピッチの異なる育苗器1に対応して複数種設けられていて、前記被検出部42、44がセンサ41、43により検出される度に前記育苗器移送装置Aの駆動を停止する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗器に苗を挿す苗挿し機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一度に多数の苗を同時に育苗器に苗挿しする苗挿し機として、複数のセルが前後左右に整列状態に配置された育苗器に苗挿しするもので、育苗器(セルトレイ)を載置して移送する育苗器搬送装置と、この育苗器搬送装置で搬送中の育苗器のセル内の床土に苗挿し用の穴を開ける穴開け装置と、苗挿し用の苗を搬送する苗供給装置と、育苗器のセルに苗を挿す苗挿し装置などを備えた苗挿し機がある。
【0003】
そして苗挿しをする苗の種類や数量、その他の条件によって育苗器の種類も変える必要があるが、育苗器を変えた場合に育苗器の搬送や穴開け、苗挿し等の駆動制御は苗供給装置から苗を把持する苗把持部側で行われる。
【特許文献1】特開2004−208519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された苗挿し機では、苗を取り出す取り出し把持ハンドや、苗を苗搬送装置から育苗器搬送装置に横移動させる横移動把持ハンドや、育苗器に苗を挿し込む苗挿しハンドなどの苗挿し装置の苗把持部側で育苗器の移送に対応した駆動制御を行っている。これら一連の動作を苗挿し把持ハンドを前後に一ピッチ(一セル列)ずらして行うことにより、育苗器のセルに苗が挿し込まれる。このように苗挿し装置の苗把持部側で駆動制御を行って、各種の育苗器に対応させるような構成であることから、苗挿し装置の構成が複雑で各種の育苗器の兼用も容易でない。したがって育苗器を変える場合には、苗挿し装置の苗把持部側の駆動制御の調整もその都度必要であり、育苗器の種類を変えるたびに微調整を行う必要が生じ、作業が煩雑となり、作業効率の面で未だ問題があった。
【0005】
本発明の課題は各種の育苗器に容易に対応可能であり、また各種の育苗器の兼用も容易にできる苗挿し機の提供である。更に本発明の課題は、育苗器に苗を挿す苗挿し機において、育苗器の種類を変えるたびに煩雑な作業をすることのない、作業効率の良い苗挿し機の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、育苗器を移送する育苗器搬送装置A側での駆動制御により解決できる。具体的には次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、育苗器(1)を載置して移送する育苗器移送装置(A)と、苗を支持する苗支持体(15)が周回する苗供給装置(C)と、該苗支持体(15)内の苗を把持して移動して前記育苗器移送装置(A)に配置された育苗器(1)に苗を挿す苗把持ハンド(5b,5c)を有する苗挿し装置(B)を備えた苗挿し機において、育苗器移送装置(A)は、育苗器(1)を載せて回転駆動し、その回転方向に設けられたセルのピッチの異なる育苗器(1)にそれぞれ対応した複数種の移送停止位置を決める被検出部(42,44)を有する無端帯(3)と、該無端帯(3)の被検出部(42,44)を検出するセンサ(41,43)と、前記センサ(41,43)によって前記被検出部(42,44)が検出される度に前記育苗器移送装置(A)の駆動を停止させる制御装置(38)とを備えた苗挿し機である。
なお、本明細書中、ピッチとは複数個のセルの互いの間隔のことをいう。
【発明の効果】
【0007】
本発明の苗挿し機は各種の育苗器(1)に容易に対応可能であり、また各種の育苗器(1)の兼用も容易である。また本発明の苗挿し機は苗を移送する移送装置側(3)に各種育苗器(1)の検出センサ(41)、(43)及び被検出部(42)、(44)が設けられているため、移送装置側(3)で各種育苗器(1)の移送制御が可能であり、苗挿し装置の苗把持部側での駆動制御を必要としないことから苗把持部側の駆動制御の調整などの煩雑な作業をしなくても良く、簡単に育苗器(1)の移送制御ができる。したがって、育苗器(1)の種類を変えるたびに作業を停止することがなく、作業効率の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態となる苗挿し機の構成を図面に基づいて説明する。本実施例の苗挿し機の平面図を図1に、側面図を図2に示し、これら図1と図2に基づいて苗挿し機の全体的な構成について説明する。
【0009】
苗挿し機は、育苗器1を載置して移送方向Rに向かって移送する育苗器移送装置Aと、苗を支持する苗支持体15が周回する苗供給装置Cと、該苗支持体15内の苗を把持して移動して前記育苗器移送装置Aに設置された育苗器1に苗を挿す苗挿し装置Bと育苗器1内のセル内の土に穴を開ける穴開け装置Dを備えている。
【0010】
育苗器移送装置Aには育苗器1の左右幅と略同じ幅に一対の枠体2、2が設けられ、該一対の枠体2、2の両端部には駆動軸4cが掛け渡され、該駆動軸4cに固着された駆動プーリ4bが駆動用モータ(図示せず)により駆動する。前記駆動プーリ4bの回転により該駆動プーリ4bに掛け渡された移送ベルト3が移動することで、該移送ベルト3上に載置された育苗器1が移送方向Rに移送される。
育苗器1には苗を挿入できるセル1aを多数(本実施の形態では一列につき20個)設けられている。
【0011】
図1、図2に示すように、苗挿し装置Bに苗を供給する苗供給装置Cは、カップ形状の苗支持体15を平面視で略長円形状に形成する苗供給装置枠体16に沿って多数(本実施の形態では把持具5aの4倍の数である40個)連続して数珠繋ぎで配置している。苗支持体15を周回移動させる一対のスプロケット17、17は、苗供給装置枠体16の両端部にそれぞれ設けられ、一方のスプロケット17が駆動体となり、一対のスプロケット17、17間に掛け渡された図示しないチェーンの駆動で他方のスプロケット17も連動する。一対のスプロケット17、17が回動すると苗支持体15の全体はスプロケット17、17の作用を受けて押され、苗供給装置枠体16に沿って略長円形状の軌跡を描いてT方向に周回移動する。また、前記平面視略長円形状に複数配置された苗支持体15の内側上方には供給する苗を置く苗置台6が設けられている。
【0012】
次に苗支持体15について、図3のその一部斜視図と図4の分解斜視図により説明する。
【0013】
苗支持体15は平面視円状に形成する上側苗支持部15aと、正面視五角形状で底部15bを三角形状に形成し、表面側に苗取り出し用開口部15cを形成した受け体(下側苗支持部)15dから構成され、上側苗支持部15aと受け体15dとは多数の苗収容体15を連結させる上下2枚のプレート23a、23bそれぞれに2つずつ形成する孔23c、23dに挿入し、受け体15dの上面に屈曲形成した取付部15fを上側苗支持部15aに形成している溝部15gに差し込み、連結環24を受け体15dの後部に挟み付けるよう取り付け、受け体15dの苗取り出し用開口部15cが歪み等により開いて受け体15dが上側苗支持部15aから脱落することを防止している。なお、前記プレート23aと23bとは上下が互い違いに重なる状態で苗収容体15を各孔23c、23dに挿入することで連結する。
【0014】
また、苗供給装置Cの一端(図1の紙面左側半分)は育苗器1の左右幅方向より側方に向かって突出して配置しているので、作業者Nが苗支持体15に苗を投入する苗投入場所となるスペースを形成している。そして、作業者Nが苗を投入する苗投入場所Mは、苗を把持具5aで把持する苗把持位置Fに隣接するスペースに設けている。
【0015】
苗置き台6の上面には苗挿し機の運転停止を行う切替スイッチ20を設け、苗投入場所Mの近傍には図示はしないが電源スイッチ、リセットスイッチ、そして各種装置を作動させるシーケンサー等を内蔵する操作盤や、苗供給装置Cの周回速度を作業者Nが足で調節するフットスイッチ等、作業者Nが操作する各種装置を集中的に備え、作業者Nが苗収容体15に苗を投入しながら苗挿し機を運転・制御することができるよう構成している。
【0016】
図2に示す穴開け装置Dは、育苗器1のセル1aに詰めている土に苗を差し込むための穴を作る作孔装置であり、育苗器1の長手方向に配置されるセル1aの数(本実施の形態では20個)に対応して配置されたセル1aと同一数の穴開けピン22aを取り付けている。穴開け装置Dで育苗器1のセル1aに詰めている土に苗を差し込むための穴を開けた後、ベルト3で育苗器1が図2の矢印R方向に移動するので、苗把持部5でセル1a内の土に苗を差し込むことができる。
【0017】
図5に一対の苗把持ハンド5b、5cを含む把持部5の斜視図を示す。
苗挿し装置Bは苗を保持するとき苗の茎を1本ずつ両側から把持する把持具5aを多数備えている。なお、本実施の形態では10個の把持具5aを並列して把持具プレート5mに取り付けて把持部5を形成することで、同時に10本の苗を育苗器1に苗挿しできるよう構成している。
【0018】
また、把持具5aはハンド開閉モータ10により開閉する一対の苗把持ハンド5b、5cを備えている。該把持具5aは一対の苗把持ハンド5b、5cと各苗把持ハンド5b、5cとそれぞれ一体で横方向に移動するプレート5d、5eと該プレート5d、5eにそれぞれ連結したアーム5f、5gなどからなるリンク部材と該リンク部材を介して作動させるハンド開閉カム5jを備えている。該カム5jはハンド開閉モータ10の回転軸に固定されているので、ハンド開閉モータ10が回転するとリンク部材を介して一対の苗把持ハンド5b、5cが開閉動作する。
【0019】
把持部5の把持具プレート5mの裏面はアーム33bの一端で支持され、アーム33bの他端は横移動プレート8上に配置された前後移動用モータ33の回転軸に固定されたカム33a(図1)に取り付けられることで、把持部5は移送方向Rに沿った方向に前後移動可能に構成している。
【0020】
横移動プレート8にはアーム35bの一端を取り付け、アーム35bの他端を横支持プレート9上に配置された横移動用モータ35の回転軸に固定されたカム35aに取り付けられることで、横移動プレート8は横支持プレート9に沿って移送方向Rと交差する方向Sに沿って育苗器移送装置Aの左右内側を移動可能に構成している。
【0021】
また、前記左右移動用モータ35の駆動により円形カム35aが回転すると、図6に示すように円形カム35aの周辺部に設けられた凹部35a1に各一対の苗把持ハンド5b、5cの苗の把持位置検出用のリミットスイッチ37の端子37aが入り込む構成になっている。そして、上記左右移動用モータ35の駆動で横移動プレート8が移動すると苗把持部5も移動する。横移動プレート8の移動中はリミットスイッチ37の端子37aがカム35aの外周面を摺動している。そして、端子37aがカム35aに設けた凹部35a1に嵌まると左右移動用モータが駆動停止し、横移動プレート8及び苗把持部5も停止する。
【0022】
図6に示すカム35aは定速回転する左右移動用モータ35により一方向にフル回転するのではなく、180度の半回転の往復運動を繰り返す。図6(a)に示すようにカム35aに設けた凹部35a1がカム35aの180度の対象に位置にあるとカム35aの180度の回転で横移動プレート8は育苗器1の一列分を2回で挿し木する横移動をする。同様に図6(b)に示すようにカム35aに設けた凹部35a1が90度の角度毎に3個設けられていると、カム35aの1/2回転で横移動プレート8は育苗器1の一列分を3回で挿し木する横移動をする。また、図6(c)に示すようにカム35aに設けた凹部35a1が45度の角度毎に4個設けられていると。カム35aの1/2回転で横移動プレート8は育苗器1の一列分を4回で挿し木する横移動をする。
【0023】
なお、苗把持部5を上下方向に昇降動作させるための上下移動用モータ26は、その駆動で横支持プレート9を縦支持プレート7に沿って上下方向に昇降動作させることで苗把持部5を昇降動作させる構成である。
【0024】
次に、本実施の形態の苗挿し機の作業内容について説明する。
操作盤の電源スイッチ、運転スイッチを押すと苗挿し機の装置各部動作を開始する。作業者Nは苗投入場所Mにいて周回する苗収容体15に一本ずつ苗を投入していく。
苗収容体15に収容した苗はT方向を略一回転して苗把持位置Fまで周回する。そのとき、センサ(図示せず)はスプロケット17の歯数をカウントしており、設定する歯数をカウントする毎に一時停止する。
【0025】
一方、育苗器移送装置Aのベルト3上で育苗器1が移送される。苗挿し装置Bと穴開け装置Dが育苗器1内の土に作用する苗挿し位置にある。この構成により、育苗器1内の一列分のセル内の土に穴開け装置Dで穴を開け、次いで苗挿し装置Bが苗を該セル内の穴に苗を植え付ける作業を行う毎に育苗器移送装置Aが間欠的に前進している。
【0026】
なお、育苗器移送装置Aは左右移動用モータ35が育苗器1の一列にある全部のセル1a内に同時に苗を植え付ける間は移動停止し、一列分の全てのセル1a内に同時に20個の苗を植え付けた後はセル1aの1個分だけ前進する。
【0027】
苗供給装置Cが苗把持位置Mで停止したら、苗把持具5aがそれぞれ対向する苗収容体15に収容する苗を取りに前進する。苗把持具5aが苗収容体15の苗供給開口部15eから苗を把持する位置まで進むと開閉モータ10が駆動して苗を把持し、再度元の位置まで後進する。そして、苗を把持した苗把持具5aは下降し、前記穴開け装置Dで開けた穴に苗の根元部分を挿入する。
【0028】
苗挿し作業が終了したら、把持ハンド5b、5cは苗を放し後進・上昇して元の位置に戻る。この苗挿し作業の工程中に次の工程で苗挿しする苗を供給するために、苗収容体15が設定したスプロケット17の回転数分周回する。
【0029】
図7には育苗器1のセル1aの平面図を示し、図7(a)には200穴用の育苗器1のセル1aを示し、、図7(b)には128穴用の育苗器1のセル1aを示す。図8には本発明の一実施例である育苗器移送装置Aの部分拡大斜視図を示す。
【0030】
図8では駆動軸4cが矢印E方向に回転することにより平ベルト3が矢印R方向に育苗器1を移送している。そして平ベルト3の両端に、200穴用の穴44と128穴用の穴42を設け、200穴用の育苗器1と128穴用の育苗器1のどちらの育苗器1でも選択できる構成としている。
【0031】
すなわち一定間隔にベルト幅方向に桟40を設けた平ベルト3で、挿し木をする育苗器1を移送する構成において、平ベルト3の前進方向に向かって右側(図8の右側)には、128穴用の穴42を8コとその穴を検出するためのセンサ41を設け、平ベルト3の前進方向に向かって左側(図8の左側)に200穴用の穴44を10コとその穴を検出するためのセンサ43を設けている。センサ41、43の位置は穴42、44が検出できる位置であれば特に限定されない。そしてセンサ41,43が128用の穴42もしくは200穴用の穴44を検出するたびに、平ベルト3が停止する構成としている。またピッチの異なる複数種の穴42、44を設けることで各種育苗器に対応可能である。
【0032】
また制御ボックス(制御装置)38には、平ベルト3を育苗器の種類に対応した移送制御に切り替えるための切替スイッチ45とアクション切替スイッチ48、電源スイッチ46、リセットスイッチ47、苗供給装置Cの作動速度を変えるためのスピード変速スイッチ49などのスイッチを集中的に備え、育苗器搬送装置Aを制御することができる。そして切替スイッチ45によって、200穴用又は128穴用の育苗器1の移送に変更できる構成としている。本実施例では200穴用と128穴用の育苗器1を用いているが、これらの種類に限定されず、どのような種類の育苗器1にも採用できる。
本構成を採用することにより、200穴用の育苗器1と128穴用の育苗器1及び箱苗等の兼用が容易な育苗器移送装置Aとして用いることができる。
【0033】
図9には本発明の一実施例である育苗器移送装置Aの部分拡大斜視図を示す。
図9では育苗器1を移送する平ベルト3の駆動軸4cの右端部に、カップリング51を介してロータリエンコーダ50を設け、育苗器1の移送量をロータリエンコーダ50により切り替えることで、各種育苗器1に適応できる構成としている。
【0034】
一定間隔に桟40を設けた平ベルト3で挿し木する育苗器1を移送する構成において、平ベルト3の中央に平ベルト3の位置を決めるための穴54と、該穴54とかみ合うように、中央に歯の付いたローラ52を平ベルト3の駆動用に設けている。そして苗の移送量を制御するロータリエンコーダ50がE方向に回転することによって、育苗器1の搬送モータ53を動かし、更に制御ボックス38の切替スイッチ45によって、200穴用の育苗器1や128穴用の育苗器1及び箱苗の移送に変更できる構成としている。
本構成を採用することにより、200穴用の育苗器1や128穴用の育苗器1及び箱苗の兼用型の育苗器移送装置Aとして用いることができる。
【0035】
図10には本発明の一実施例である育苗器移送装置Aの部分拡大斜視図を示す。
図10では育苗器1を搬送する駆動軸4cに、育苗器1の穴数や育苗箱に応じた円形のプレート56をワンタッチで交換することで、各種育苗器1に挿し木ができる構成としている。
【0036】
一定間隔に桟40を設けた平ベルト3で挿し木する育苗器1を移送する構成において、平ベルト3の中央に平ベルト3の位置を決めるための穴54と、該穴54とかみ合うように、中央に歯の付いたローラ52を平ベルト3の駆動用に設けている。
【0037】
円形のプレート56は育苗器1の移送量を決めるためのもので、駆動軸4cの右端部に配置されており、円形のプレート56の円周方向には育苗器1の穴数に応じた穴56aが設けられている。更に円形のプレート56の上部には円形のプレート56の穴56aを検出するためのセンサ55が設けられ、苗の移送量を制御する円形のプレート56が矢印T方向に回転することによって、育苗器1の搬送モータ53を動かし、該搬送用モータ53により中央に歯の付いたローラ52が矢印E方向に回転する。
【0038】
このように一定間隔に桟40を設けた平ベルト3により挿し木をする育苗器1を搬送する構成において、育苗器1の搬送モータ53の駆動軸4cに、セル200穴用の育苗器1や128穴用の育苗器1や育苗箱に応じた、育苗器1の移送量を決めるための円形のプレート56をワンタッチで交換することで、200穴用の育苗器1や128穴用の育苗器1及び育苗箱に簡単に変更できる構成としている。
本構成を採用することにより、200穴用の育苗器1や128穴用の育苗器1及び育苗箱の兼用型の育苗器移送装置Aとして用いることができる。
【0039】
図11には本発明の一実施例である育苗器移送装置Aの部分拡大斜視図を示す。図11(a)には穴開け装置Dの手前にブラシ57を設けた場合の斜視図を示し、図11(b)には育苗器1の表面をならすためのゴム板58の斜視図を示す。
【0040】
図11では穴開け装置Dの手前に、セル1aを用いないで全体に土をまんべんなく入れた育苗器1の表面の土の凹凸をならすためのブラシ57又はゴム板58を設けており、育苗器1が矢印G方向に移送され、ブラシ57やゴム板58により育苗器1の表面の土をならした後、挿し木をする箇所に穴をあけ、挿し木をする構成としている。
本構成を採用することにより、育苗器1の表面の土の凹凸をなくすことができ、苗挿し位置の正確さや苗挿しする深さなどの挿し木の精度が向上する。
【0041】
図11(a)ではブラシ57によって、砂挿し用育苗箱1(砂挿しする箱)に入った土の表面の凹凸を平らにしてから穴をあけ、挿し木を行う場合を示している。育苗器1を用いる場合も同様に土の表面の凹凸を平らにしてから、穴をあけ、挿し木を行えば良い。
【0042】
またブラシ57ではなく図11(b)に示したようなゴム板58を穴開け装置Dの手前に設けても土の表面の凹凸を平らにすることができるが、これらブラシ57やゴム板58に限定されない。
【0043】
一方、苗の種類によって挿し木が難しい場合がある。例えば軟弱な苗の場合は挿し木部分が細く、苗把持ハンド5b、5cにより把持して挿し木をする際に、苗把持ハンド5b、5cから下に出るキク穂63の出代ろが長いと、うまく挿し木ができない。
【0044】
図12には本発明の一実施例の苗支持体15の分解斜視図を示し、図13にはその一部斜視図を示す。図12は図4に相当する図であり、図13は図3に相当する図であるのでこれらの図と同一の部材には同一の符号を付しており、説明は省略する。図14には、細く軟弱なキク穂63を苗支持体15から把持する場合の様子を示し、図14(a)には図12を矢印L方向から見た場合の側面図を示し、図14(b)は図14(a)のA−A線矢視図を示す。
【0045】
図12では、キク穂63を投入する苗支持体15の苗取出用開口部15cの内側に、底上げ材60を貼付し又は入れてセットする様子を示しており、底上げ材60を貼付し又は入れた後、苗取出用開口部15cの手前側下端部に設けられたラバー62取付用プレート片15iにラバー62をかぶせて固着具61で止めている。図13では底上げ材60を苗支持体15にセットした状態を示している。なお、ラバー62は鉛直方向でなく傾斜させて取り付ける構成としてもよい。
【0046】
そして図14で示すように苗把持ハンド5b,5cの把持する高さは変えずに、すなわち底上げ材60がない場合と同じとし、把持したキク穂63の下端が、苗把持ハンド5b,5cの下部から出る量(図14のZ寸法を指す)を少なくし、挿し木をする構成としている。
底上げ材60としてはスポンジや樹脂型品などを用いることができ、どのような素材のものでも良くこれらのものに限定されない。
【0047】
このような構成を採用すれば苗把持ハンド5b,5cの把持する高さは底上げ材60がない場合と同じでよく、底上げ材60によって苗把持ハンド5b,5cから下に出るキク穂63の出代ろを短くして、すなわちZ寸法(図14(b))を短くして挿し木をすることで、細く、軟弱なキク穂63の挿し木が可能となる。
本構成を採用することにより、細く軟弱なキク穂63の挿し木をすることができ、苗の種類の適応範囲が拡大する。
【0048】
図15には苗把持ハンド5b,5cの部分拡大斜視図を示す。図15(a)には本発明の一実施例である苗把持ハンド5b,5cを示し、図15(b)には従来例の苗把持ハンド5b,5cを示す。
挿し木をする苗の種類により挿し木の条件も異なってくるが、挿し木は苗を把持して育苗器1の土中に挿すことから、挿し木の精度を向上させるためには苗の把持の仕方が重要である。
【0049】
図15に示すように、キク穂63を把持する苗把持ハンド5b,5cのうち苗把持ハンド5bの上下を苗把持ハンド5cまで伸ばす構成(アーム5p,5q)としている。アーム5pとアーム5qにより苗支持体15内の倒れた穂を確実に垂直に把持し、かつ、キク穂63の下側も把持することができるため、挿し木の精度が向上し更に軟弱で細い穂も挿し木できる構成としており、適用範囲の拡大が可能となる。
【0050】
このようにキク穂63を把持する苗把持ハンド5b,5cの苗把持ハンド5b側の上下を苗把持ハンド5cまで伸ばした構成(アーム5p,5q)としているため、苗把持ハンド部全体が軽くなって、苗把持ハンド5b,5cの振れも少なくなり、挿し木の精度が向上する。
【0051】
また従来例の苗把持ハンドでは苗把持ハンド5bの上側は延長していないが、本実施例では苗把持ハンド5bの上側も延長しているため(図15(a)のアーム5p)、苗支持体15内で倒れたキク穂63の位置も矯正でき、挿し木の精度が向上する。
更に品種によっては、キク穂63の下側を数ミリではあるが、把持することもできるので、細く、軟弱なキク穂63も挿し木をすることができる。
【0052】
図16には、苗支持体15により支持されたキク穂63の茎芯64を苗把持ハンド5b、5cで把持する様子を示しており、図14(b)に相当する矢視図を示す。図16(a)には本発明の一実施例である苗把持ハンド5b、5cで把持する様子を示しており、図16(b)には従来の苗把持ハンド5b、5cで把持する様子を示す。
【0053】
図16(b)に示す従来例の苗把持ハンド5b、5cの場合はキク穂63の茎芯64が二点鎖線位置の方向に倒れている場合は茎の位置を規制する規制体5rに茎心64が当たり、H方向には修正可能であるが、茎芯64が図の実線位置方向に倒れている場合は、規制体5rがないため、茎芯64が遊んでしまう状態となり、I方向には修正できない。一方、図16(a)に示す本発明の一実施例では、苗把持ハンド5bの上側も延長しているため(図15(a)のアーム5p)、茎心64が5pに当たり、キク穂63の茎芯64の位置をJ方向に修正可能であり、また苗把持ハンド5bの下側も延長しているので(図15(a)のアーム5q)、茎心64が5qに当たり、K方向にも修正可能である。このように苗支持体15内で倒れたキク穂63の位置も矯正でき、挿し木の精度が向上する。
【0054】
図17には本発明の一実施例である育苗器移送装置Aの部分拡大斜視図を示す。キク苗挿し木装置の育苗器1の育苗器移送装置Aにおいて、育苗器1の幅を規制するガイド65、66の上にブラシ59を設け、育苗器1のアンダートレイ67上面のふちにのった培土を自動的に除去することで、育苗器1が穴あけ位置及び苗挿し位置に、正確に停止することができる構成としている。
【0055】
穴開け装置D(図2)の手前の育苗器1のトレイ幅規制ガイド65の上面にブラシ59を設け、育苗器1に土詰めした時に、育苗器1のアンダートレイ67の上面のふちにのっている培土を、自動的に除去する構成としている。
【0056】
育苗器1に土を土詰めした時に、育苗器1のアンダートレイ67の上面のふちに培土がのっていると、穴あけリミットスイッチ68及び苗挿し装置側方でセルを検出できる位置に設けられた苗挿し位置リミットスイッチ(図示せず)の感度が悪くなり、誤感知を起こすことがある。したがって土詰めした時に、育苗器1のアンダートレイ67上面のふちにのっている培土をブラシ59で除去することにより、穴あけリミットスイッチ68及び苗挿し位置リミットスイッチの誤感知を防止することができる。なお、本実施例ではブラシ59により培土を除去しているが、ブラシ59に限らず、例えばゴム板でも良く、培土を除去できるものであれば限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
育苗器を移送する移送装置側で各種育苗器の搬送制御が可能であるため、苗挿し機に限らず、あらゆる技術分野で用いられる各種移送装置にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例の苗挿し機の平面図である。
【図2】図1の苗挿し機の側面図である。
【図3】図1の苗挿し機の苗支持体の一部斜視図である。
【図4】図1の苗挿し機の苗支持体の分解斜視図である。
【図5】図1の苗挿し機の苗挿し装置の斜視図である。
【図6】図1の苗挿し機の横移動プレート作動用カムの構成とその差動態様を示す図である。
【図7】育苗器のセルの平面図である。図7(a)は200穴用の育苗器のセルであり、図7(b)は128穴用の育苗器のセルである。
【図8】本発明の一実施例の育苗器移送装置の部分拡大斜視図である。
【図9】本発明の一実施例の育苗器移送装置の部分拡大斜視図である。
【図10】本発明の一実施例の育苗器移送装置の部分拡大斜視図である。
【図11】本発明の一実施例であり育苗器移送装置の部分拡大斜視図(図11(a))とはゴム板の斜視図(図11(b))である。
【図12】本発明の一実施例である苗挿し機の苗支持体の分解斜視図である。
【図13】図12に示した苗支持体の一部斜視図である。
【図14】本発明の一実施例であり、キク穂を苗支持体から把持する場合の様子を示す図である。図14(a)は図12をL方向から見た場合の側面図であり、図14(b)は図14(a)のA−A線矢視図である。
【図15】本発明の一実施例である苗把持ハンドの斜視図(図15(a))と従来例の苗把持ハンドの斜視図(図15(b))である。
【図16】本発明の一実施例である苗把持ハンドで把持する様子を示す図(図16(a))と従来の苗把持ハンドで把持する様子を示す図(図16(b))である。
【図17】本発明の一実施例である育苗器移送装置の部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 育苗器 1a セル
2 枠体 3 ベルト(平ベルト)
4b 駆動プーリ 4c 駆動軸
5 把持部 5a 把持具
5b、5c 苗把持ハンド 5d、5e 移動プレート
5f、5g、5p、5q アーム 5j ハンド開閉カム
5m 把持具プレート 5r 位置規制体
6 苗置き台 7 縦支持プレート
8 横移動プレート 9 横支持プレート
10 把持ハンド開閉モータ 15 苗支持体
15a 上側苗支持部 15b 底部
15c 苗取出用開口部 15d 受け体(下側苗支持部)
15e 苗供給用開口部 15f 取付部
15g 溝部 15i プレート片
16 苗供給装置枠体 17 スプロケット
20 苗挿し機の切替スイッチ 22a 穴開けピン
23a、23b プレート 23c、23d 孔
24 連結環 26 ハンド上下移動用モータ
33 前後移動用モータ 33a カム
33b アーム 35 左右移動用モータ
35a 円形カム 35b アーム
37 苗把持位置検出用リミットスイッチ
37a 端子 38 制御ボックス(制御装置)
40 桟 41 セル128穴用検出センサ
42 セル128穴用穴 43 セル200穴用検出センサ
44 セル200穴用穴 45 切替スイッチ
46 電源スイッチ 47 リセットスイッチ
48 アクション切替スイッチ 49 変速スイッチ
50 ロータリエンコーダ 51 カップリング
52 ローラ 53 搬送モータ
54 位置決め用穴 55 検出センサ
56 プレート 56a 穴
57,59 ブラシ 58 ゴム板
60 底上げ材 61 固着具
62 ラバー 63 キク穂
64 茎心 65、66 規制ガイド
67 アンダートレイ 68 穴あけリミットスイッチ
A 育苗器移送装置 B 苗挿し装置
C 苗供給装置 D 穴開け装置
F 苗把持位置 M 苗投入場所
N 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗器(1)を載置して移送する育苗器移送装置(A)と、苗を支持する苗支持体(15)が周回する苗供給装置(C)と、該苗支持体(15)内の苗を把持して移動して前記育苗器移送装置(A)に配置された育苗器(1)に苗を挿す苗把持ハンド(5b,5c)を有する苗挿し装置(B)を備えた苗挿し機において、
育苗器移送装置(A)は、育苗器(1)を載せて回転駆動し、その回転方向に設けられたセルのピッチの異なる育苗器(1)にそれぞれ対応した複数種の移送停止位置を決める被検出部(42,44)を有する無端帯(3)と、
該無端帯(3)の被検出部(42,44)を検出するセンサ(41,43)と、
前記センサ(41,43)によって前記被検出部(42,44)が検出される度に前記育苗器移送装置(A)の駆動を停止させる制御装置(38)
とを備えたことを特徴とする苗挿し機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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