説明

苗植機

【課題】 従来の苗植機は、覆土鎮圧輪が上下動自在で機体の自重を受けずほとんど支持力がないため、機体が後側へ傾いたときに機体が転倒する危惧がある。
【解決手段】 苗植付装置3で植え付けた苗の周辺に覆土しながら鎮圧する覆土鎮圧輪80を後輪6、6より後側に配置し、前記覆土鎮圧輪80を上下動自在に支持する覆土鎮圧輪支持機構を設けた苗植機において、前記覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上動したとき、前記覆土鎮圧輪支持機構を固定して覆土鎮圧輪80の上下動を規制する係合フック112を設けている。また、係合フック112を回動レバー110の回動域に位置させて係合フック112により覆土鎮圧輪80の上下動を規制する規制状態と、係合フック112を回動レバー110の回動域から離して係合フック112により覆土鎮圧輪80の上下動を規制しない規制解除状態とに切替可能な切替手段を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植付後の苗の周辺に覆土しながら鎮圧する覆土鎮圧輪を走行車輪より後側に配置した苗植機において、前記覆土鎮圧輪を上下動自在に支持する覆土鎮圧輪支持機構を設け、該覆土鎮圧輪支持機構により覆土鎮圧輪を圃場面に良好に追従させると共に、覆土鎮圧輪あるいは覆土鎮圧輪支持機構の自重又は覆土鎮圧輪支持機構に備えるスプリング等の付勢力により前記覆土鎮圧輪を下向きに付勢して土壌への鎮圧作用を得るように構成したものがある(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−253710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の苗植機は、覆土鎮圧輪支持機構により覆土鎮圧輪が上下動自在であるので、覆土鎮圧輪は機体の自重を受けずほとんど支持力がないため、機体が後側へ傾いたときに機体が転倒する危惧がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に記載の発明は、植付後の苗の周辺に覆土しながら鎮圧する覆土鎮圧輪80を走行車輪6より後側に配置した苗植機において、前記覆土鎮圧輪80を上下動自在に支持する覆土鎮圧輪支持機構を設け、前記覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上動したとき、前記覆土鎮圧輪支持機構を規制して覆土鎮圧輪80の更なる上動を規制する上動規制手段112を設けた苗植機とした。
【0005】
従って、請求項1に記載の苗植機は、覆土鎮圧輪支持機構により覆土鎮圧輪80が圃場面に良好に追従し、圃場に植え付けた苗の周辺に覆土しながら該苗の周辺の土壌を鎮圧する。そして、機体が後側へ傾いたりして覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上動すると、上動規制手段112により自動的に覆土鎮圧輪80の更なる上動が規制され、覆土鎮圧輪80で機体の自重を受けて機体の後側への転倒を防止できる。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、植付後の苗の周辺に覆土しながら鎮圧する覆土鎮圧輪80を走行車輪6より後側に配置した苗植機において、前記覆土鎮圧輪80を上下動自在に支持する覆土鎮圧輪支持機構と、該覆土鎮圧輪支持機構を規制して覆土鎮圧輪80の上動を規制する上動規制手段112を設け、該上動規制手段112により覆土鎮圧輪80の上動を規制する規制状態と、覆土鎮圧輪80の上動を規制しない規制解除状態とに切替可能な切替手段を設けた苗植機とした。
【0007】
従って、請求項2に記載の苗植機は、切替手段を覆土鎮圧輪80の上動を規制しない規制解除状態に切り替えると、覆土鎮圧輪支持機構により覆土鎮圧輪80が圃場面に良好に追従し、圃場に植え付けた苗の周辺に覆土しながら該苗の周辺の土壌を鎮圧する。一方、切替手段を覆土鎮圧輪80の上動を規制する規制状態に切り替えると、上動規制手段により覆土鎮圧輪80の上動が規制され、機体が後側へ傾いても覆土鎮圧輪80で機体の自重を受けて機体の後側への転倒を防止できる。
【発明の効果】
【0008】
よって、請求項1に記載の発明は、通常の作動域で覆土鎮圧輪80が上下動しているときは、該覆土鎮圧輪80が圃場面に良好に追従し、苗の周辺への覆土作用や苗の周辺の土壌の鎮圧作用を適正に得ることができ、植え付けた苗の姿勢を適正に維持することができる。そして、機体が後側へ傾いたりして通常の作動域を超えて覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上動すると、自動的に覆土鎮圧輪80の更なる上動が規制され、該覆土鎮圧輪により機体の自重を受けて機体の後側への転倒を防止でき、植付作業の安全性が向上する。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、比較的平坦で傾斜度の小さい圃場又は圃場面の凹凸が
大きい圃場では、切替手段を前記規制解除状態に切り替えることにより、覆土鎮圧輪80を大きく上下動させて圃場面に良好に追従させることができ、苗の周辺への覆土性能や苗の周辺の土壌の鎮圧性能を向上させることができて、植え付けた苗の姿勢を適正化を図ることができる。一方、傾斜地等の傾斜度の大きい圃場では、切替手段を前記規制状態に切り替えることにより、覆土鎮圧輪80の上動が規制されるため、機体が後側へ傾いても該覆土鎮圧輪80により機体の自重を受けて機体の後側への転倒を防止でき、植付作業の安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の一実施例としての苗移植機を以下に説明する。尚、以下の説明では、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン5を配置した側を前とする。そして、機体後部において機体前部側に向って立つ作業者の右手側を右とし、左手側を左とする。
【0011】
本例の苗移植機は、機体を前進走行可能とする走行車体1と、該走行車体1の後部に設けた歩行操縦用の操縦ハンドル2と、圃場に苗を植付ける苗植付装置3と、該苗植付装置3に苗を供給する苗供給装置4を備えた構成としている。
【0012】
走行車体1は、図示例では、エンジン5と、該エンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の駆動車輪である後輪6,6と、該後輪6,6の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪7,7とを備えたものとしている。
【0013】
エンジン5の後部には、ミッションケース8を配置し、そのミッションケース8は、その左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン5の左側部と連結している。このケース部分にエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。ミッションケース8の左右両側部には、前後に長い走行用の伝動ケース9,9の前部を回動自在に取り付けている。具体的には、走行用の伝動ケース9,9の前部の機体内側部に、該伝動ケース9,9と一体回転可能に設けたアクスルケース9a,9aを設け、このアクスルケース9a,9aをミッションケース8の左右両側部に回動自在に取付けて、走行用の伝動ケース9,9をミッションケース8の左右両側部に対して回動自在に取付けている。そして、この走行用の伝動ケース9,9の後部側方に突出させた車軸10、10に後輪6,6を装着している。伝動ケース9,9の前部の回動軸心X位置には、ミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで、ミッションケース8内の走行部系変速伝動部を経た走行用の動力が伝動ケース9,9内の伝動機構に伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース9,9内の伝動機構を介して、伝動ケース9,9の後端側の車軸10,10に伝動し、後輪6,6が駆動回転するようになっている。なお、アクスルケース9a,9aは、畝幅に対応して左右に伸縮調節可能に設けている。また、アクスルケース9a,9aを支持するために、アクスルケース9a,9aと略平行する状態で支持フレーム9b、9bをミッションケース8に固着していて、その支持フレーム9b、9bの外端部に固着した支持プレート9c、9cでアクスルケース9a,9aの外側部を回動自在に支持している。
【0014】
尚、ミッションケース8内に設けた左右それぞれのサイドクラッチ(図示せず)により、左右各々の後輪6,6の駆動を断つことができる構成になっている。従って、機体を旋回させるときには、前記サイドクラッチにより旋回内側となる左右一方の後輪6を非駆動状態にしてスム−ズに旋回できるようになっている。
【0015】
また、走行用の伝動ケース9,9には、該伝動ケース9,9の前部側を回動支点として後輪6,6を上下させるよう上下回動する駆動手段が連結している。具体的には、伝動ケース9,9のミッションケース8への取付部には、上方に延びるアーム11,11を一体的に取り付けていて、これがミッションケース8に固定された昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端に取り付けた連結体13の左右両側部と連結している。左右一方側(右側)は、ロッド14で連結し、他方側(左側)は、機体の傾斜に応じて伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ15で連結している。
【0016】
昇降用油圧シリンダ12が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム11,11は後方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ12のピストンロッドが機体前方に移動してシリンダ内に引っ込むと、左右の前記アーム11,11は前方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ12は、畝面に接地して機体と畝面との上下間隔の変動にともなって動作するセンサーSによって作動する。センサーSの動作は機体に対する畝上面高さを検出する動作となり、そのセンサーSの検出動作に基いて機体を畝上面高さに対して設定高さになるよう昇降用油圧シリンダ12が作動するよう構成している。また、操縦ハンドル2近傍に配置した植付・昇降操作具Lの人為操作によって機体を上昇或は下降させるよう昇降用油圧シリンダ12が作動する構成ともしている。尚、この植付・昇降操作具Lは、苗植付装置3及び苗供給装置4の駆動の入切も行える構成となっている。
【0017】
また、前記左右水平制御用油圧シリンダ15が伸縮作動すると、その左右水平制御用油圧シリンダ15と連結する左側のアーム11が回動して、左側の後輪6と右側の後輪6を互いに異なる高さにし、機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ15は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサの検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動するよう構成している。
【0018】
前記左右前輪7,7は、エンジン5下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた横フレーム16の左右両側部に、上下に長い縦フレーム16a,16aを取付け、その下端部側方に固着した車軸17,17に回転自在に取り付けている。従って、左右前輪7,7は、機体の左右中央の前後方向の軸心Y周りにローリング動自在となっている。横フレーム16の左右両側部に対して縦フレーム16a,16aを上下調節可能に設けていて、前輪7,7の高さ調節をすることができるようになっている。
【0019】
前記操縦ハンドル2は、機体後部に設けていて、後輪6,6の車軸10,10より機体後方に位置している。具体的には、ミッションケース8に前端部を固定した機体フレーム2bの後端部に取り付けている。機体フレーム2bは、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、機体フレーム2bの後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0020】
尚、上記走行車体1は、接地して駆動回転する走行駆動部を、前後車輪を備えた四輪式の走行駆動部の構成としたものであるが、クローラー式の走行駆動部の構成とすることもできる。
【0021】
苗植付装置3は、先端が下方に向かうくちばし状の苗植付け体25と、該苗植付け体25の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに苗植付け体25を上下動させる上下動機構26と、くちばし状の苗植付け体25の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能する閉状態と苗植付け体25の下端部が前後に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能する開状態とに苗植付け体25を開閉する開閉機構27とを備え、苗供給装置4は、苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数の苗収容体29と、該苗収容体29を苗植付け体25の上方を通過するように周回移動させる移動機構30と、苗植付け体25の上方位置で苗収容体29の底部を開放して内側に収容した苗を落下させて苗植付け体25に苗を供給する開放機構31を備えた苗供給装置4を備える。
【0022】
苗植付装置3は、苗植付け体25を左右に設定間隔で複数体並べて配備した複数条植の構成としている。本例では、苗植付け体25を左右に設定間隔で四体並べて配備した四条植えの構成としている。
【0023】
四体の苗植付け体25…は、機体フレーム2bに下部を固定した取付部材32の上部に装着した伝動ケース28の左右両側部に設けた上下動機構26,26に二体づつ装着している。先端が下方に向いたくちばし状の苗植付け体25…の前側苗植付け体25F…の上部で後側にのびる左右のアーム部25Fa,25Fa…の後端部を後側の苗植付け体支持
軸34に回動自在に取付け、後側苗植付け体25R…の上部で前側にのびる左右のアーム部25Ra,25Ra…の前端部を前側の苗植付け体支持軸33に回動自在に取付け、前側苗植付け体25F…のアーム部25Fa,25Fa…と後側苗植付け体25R…のアーム部25Ra,25Ra…のそれぞれ前後中間部では、一方側のアーム部に設けた横方向のピン25a、25a…を他方側のアーム部に設けた左右方向の長孔25b,25b…に係合させている。前後の苗植付け体支持軸33,34の左右両端部は、連結部材35,35で連結している。そして、前後の苗植付け体支持軸33,34の左右中間部はそれぞれ苗ガイド連結部材36,36を介して、苗を苗植付け体25内に案内する筒状の苗ガイド37に連結している。更に、左右の苗ガイド37,37には、その左右間側に連結部材38、38を着脱自在に且つ一体的に装着していて、その連結部材38、38を介して、左右の苗ガイド37,37の左右間に配置した連結部材39,39と連結している。その連結部材39、39は、上下動機構26の上下の昇降リンク40a,40bの各先端部を上下に連結している。後側苗植付け体25R…のアーム部25Ra,25Raが前側の苗植付け体支持軸33回りに上方に回動すると、前記ピン25a、25aによる連結によって前側苗植付け体25F…のアーム部25Fa,25Faも連動して上方に回動し、よって、前側苗植付け体25F…は、後側の苗植付け体支持軸34回りの回動によって前方に移動し、後側苗植付け体25R…は、前側の苗植付け体支持軸33回りの回動によって後方に移動し、よって、苗植付け体25…の下部側が前後に開いて下方に開放状態となる。また、逆の動作によって、前後に開いた苗植付け体25…の下部側は閉じる。
【0024】
前記苗ガイド37は、苗供給装置4から供給された苗を苗植付け体25内に案内する筒状体であり、上部には、苗供給装置4の苗落下部下方に向ってのびる上部ガイド37aを設けている。これにより、苗植付け体が苗供給装置4の苗落下部下方からずれて位置していても、苗供給装置4から落下供給される苗を適確に苗植付け体25内に供給することができる。
【0025】
苗植付け体25…の上下動機構26は、伝動ケース28の左右両側部に設けている。具体的には、前記昇降リンク装置2の後端部の連結軸21に回動自在に装着した植付部フレーム12a上部に固着した伝動ケース28の左右側方に突出させた軸に前部を上下回動自在に装着し後部を苗植付け体25…に連結した上側と下側の昇降リンク40a,40bと、伝動ケース28の側部から突出させた駆動回転する駆動軸41と、該駆動軸41の先端部に一端側を一体回転するように取付けた駆動アーム42と、該駆動アーム42の回転外周側端部と前記上側の昇降リンク40aとに回動自在に連結する連動アーム42aとで構成している。そして、上側と下側の昇降リンク40a,40bの各後端部を前記苗植付け体支持軸33,34の左右中間部付近に取付けた連結部材39に回動自在に取付け、上側と下側の昇降リンク40a,40bと伝動ケース28と連結部材39とでリンク機構を形成するように設けている。従って、駆動軸41の回転により駆動アーム42が駆動回転すると、前記昇降リンク40a,40bが伝動ケース28の左右側部に設けた二つの軸40aS,40bSを回動中心に上下動して、左右の苗植付け体25…が上下動する。この上下動の上昇位置では苗植付け体25の下端部が圃場面より上方に位置し、下降位置では苗植付け体25の下端部が圃場面より下方に位置する。
【0026】
また、この苗植機では、苗植付け体25…を昇降する上下動機構26を、第一軸40aS回りに昇降駆動される第一昇降リンク40aと、該第一昇降リンク40aの下側で第二軸40bS回りに昇降自在に設けた第二昇降リンク40bと、該第一昇降リンク40a及び第二昇降リンク40bの各先端部を連結する連結部材39とで構成し、該連結部材39と苗植付け体25…を連結して苗植付け体25…を昇降する構成とし、前記第一軸40aSを、伝動ケース28内の伝動機構を介して伝達された動力により回転駆動される回転軸40aRの先端部に偏芯状態で形成し、該回転軸40aRの回転によって回転軸40aRの軸芯を中心として偏芯量を半径として回転駆動される構成とし、前記第一昇降リンク40aの昇降駆動中に前記回転軸40aRが回転駆動することにより苗植付け体25をその昇降動中に前後に傾けるように構成している。そして、苗植付け体25…の昇降軌跡上部側での上昇時の姿勢を、直立姿勢に対して下部が上部より後側になる前倒姿勢となるように設定している。また、苗植付け体25…の下降時の姿勢を直立姿勢に対して下部が上部より前側になった後倒姿勢となるように設定し、下降下端位置で後倒姿勢から前倒姿勢に姿勢変更するように設け、前記苗植付け体25…の上昇時の姿勢を直立姿勢に対して下部が上部より後側になった前倒姿勢となるように設定している。
【0027】
苗植付け体25…の開閉機構27は、後側苗植付け体25R…の上部で後側にのびる開閉用アーム部25Rb…の先端部を各苗植付け体25…において設け、一方、上側の昇降リンク40aの基部を枢着している軸に回動自在に取付けた作動アーム44を設け、この作動アーム44の先端部を長さ調節可能な連結ロッド45で連結し、そして、作動アーム44が、駆動軸41の駆動回転中に、該駆動軸41に一体回転するよう取付けたカム46の作用を受けて、設定したタイミングで苗植付け体25…に対して上昇動作するようにして構成している。これにより、駆動軸41が駆動回転して苗植付け体25…が上下動すると、作動アーム44も苗植付け体25…と共に上下回動し、そして、苗植付け体25…の下降下端位置に達すると、カム46の作用位置の変化により作動アーム44が苗植付け体25…に対して上昇動作し、これにより、後側苗植付け体25R…が前側の苗植付け体支持軸33回りに回動して後方に移動し、また、これに連動して前側苗植付け体25F…が後側の苗植付け体支持軸34回りに回動して前方に移動して、苗植付け体25…の下部側が前後に開いて下方に開放状態となる。そして、苗植付け体25…が上昇してカム46の作用位置の変化により作動アーム44が苗植付け体25…に対して元の位置に下降動作して、前後に開いた苗植付け体25…の下部側が閉じる。
【0028】
伝動ケース28を機体フレーム2bに取付ける取付部材32と、ミッションケース8と走行用の伝動ケース9,9の間に設けたアクスルケース9a,9aを支持する支持フレーム9b、9bとの間とを、支持フレーム32a,32aで連結し、伝動ケース28と苗植付装置3と苗供給装置4との支持強度を向上させている。
【0029】
苗植付け体25…の内側に供給する灌水用の水を供給するプランジャポンプ91,91のピストンロッド91a,91aを装着している。前後方向視で門型状になった伝動ケース28の内側に、苗植付け体25…の内側に供給する灌水用の水を供給するプランジャポンプ91,91を装着し、伝動ケース28の左右内側に突出させた前記回転軸40aR,40aRにプランジャポンプ91,91のピストンロッド91a,91aを装着し、プランジャポンプ91,91のケーシング部分91b,91bは、前記伝動ケース28を上部に装着した取付部材32に設けたプランジャポンプ取付け部に取付けている。Tは灌水用の水を蓄えるタンクである。更に、このタンクTから苗植付け体25…への水の供給経路(灌水ホース100)の途中に手動式のポンプ101を設けており、この手動式のポンプ101を作業者が操作することにより任意に苗植付け体25へ水を供給することができる。これにより、植付作業を中断して苗植付け体25の内側の泥を落として該苗植付け体25を洗浄するときや、プランジャポンプ91が作動不良であるとき等、適宜に苗植付け体25へ水を供給することができ便利である。なお、手動式のポンプ101は、タンクT近くの上方位置に配置されているので、後述する作業者用座席70L,70Rに座る作業者あるいは後輪6、6の後側で操縦ハンドル2の左右方向外側で歩行する作業者の何れからも近い位置に配置されて操作しやすい。
【0030】
苗供給装置4は、上下に開口する筒状体47…と該筒状体47…の下側の開口部47a…を開閉する底蓋48…とを有し互いにループ状に連結する複数の苗収容体29…と、該苗収容体29…を前記苗植付け体25…の上方近傍を通過する状態で機体平面視前後に長い長円形状のループ状の軌跡で周回動させる移動機構30と、前記苗収容体29…の底蓋48…を苗植付け体25…の上方位置で開放する開放機構31を設けた構成である。
【0031】
苗供給装置4は、前記苗収容体29…の外周に円筒外周部を形成し、該円筒外周部に外側から回動自在に係合する係合部(丸孔)を有して二つの苗収容体29,29を連結する連結体49を複数設け、該連結体49…の係合部を苗収容体29…の円筒外周部に回動自在に係合し該円筒外周部を回動軸として隣の苗収容体29…が回動自在に連結する状態として複数の苗収容体29…を互いに連結した構成としている。即ち、苗収容体29…と連結体49…とで無端チェーンのように連結した構成である。これにより、この苗移植機は、苗収容体29…は、直線的に移動する部分でも円弧状に移動する部分でも隣接する苗収容体29…との間隔が変わらないので、苗収容体29から苗植付け体25に苗を供給する個所で苗収容体29が苗植付け体25に対して位置ズレが生じにくくなり苗供給が適正に行われて適確な苗の移植ができる。苗収容体45…の個数と周回動する範囲を設定したうえで、苗収容体の上側開口部43b…を可能な限り広く形成できて、機体のコンパクト化を図りつつ苗収容体29…への苗供給作業をできるだけ容易に行えるものとなる。
【0032】
苗供給装置4の移動機構30は、右側及び左側の苗供給装置4R,4Lともに、それぞれ無端チェーンのように互いに連結する苗収容体29…;29…を左右に設けたスプロケット50,50;50,50の外周の円弧状切欠部に係合させて巻き掛け、この左右のスプロケット50,50;50,50を伝動ケース28内から取り出した動力で駆動回転することにより、右側及び左側の苗供給装置4R,4Lの各苗収容体29…;29…を周回動させる構成としている。スプロケット50,50;50,50を駆動回転可能に取付ける回動軸51,51;51,51は、伝動ケース28の上部で支持した支持フレーム52に回動可能に取付け、伝動ケース28の上部から上方に突出させた左右の回転軸53a,53bからスプロケットとチェンを介して各回動軸51,51;51,51に伝動する構成としている。
【0033】
苗収容体29…が周回する前後の軸51,51;51,51は、左右の後輪6,6より機体内側で、且つ、苗収容体29…が周回する前側の軸51,51を後輪6,6の車軸10,10位置より前側で、苗収容体29…が周回する後側の軸51,51を後輪6,6の車軸10,10位置より後側に配置している。また、苗植付け体25は、後輪6,6の車軸10,10位置より後側に配置している。
【0034】
伝動ケース28内の伝動機構は、ミッションケース8から動力が取出されて伝動回転する伝動軸28aの後端と連結する入力軸13に取付けた第一ベベルギヤ54から左右方向にのびる伝動軸55に回転自在に取付けた第二ベベルギヤ56に伝動し、そして、第二ベベルギヤの一端に設けたクラッチ爪と係脱可能なクラッチ爪を有する定位置停止クラッチである植付クラッチCを介して伝動軸55に伝動する。この植付クラッチCは、苗供給装置4の下方に設けたレバーを作業者用座席70L,70Rに座る作業者が操作することで操作され、このクラッチCの入り切りで苗植装置3の駆動が入り切りされる。伝動軸55の左右両端部には、第一スプロケット57・57が一体回転するように取り付けられ、この第一スプロケット57・57から、伝動ケース28の左右両端部から下方にのびるケース内下方に設けた第二スプロケット58・58にチェン59・59を介して伝動する。また、伝動軸55の左右両端部は、第一スプロケット57・57から更にのびて伝動ケース28の左右両外側に突出する。その突出部が駆動軸41・41となっている。第二スプロケット58・58と一体回転する回転軸40aRも伝動ケース28の左右両外側に突出し、更にその先端に偏芯状態で第一昇降リンク40aの枢支軸となる第一軸40aSが形成されて回転軸40aRと一体的に回転する。また、伝動軸55の中途部に第三ベベルギヤ60を一体回転するように取付け、それに噛み合う第四ベベルギヤ61を介して、伝動ケース28の上部から上方に突出させた一方側の回転軸53aを駆動回転する。他方側の回転軸53bは、この回転軸53bに設けたギヤ62が一方側の回転軸53aに設けたギヤ63と噛合って逆回転伝動される。この左右の回転軸53a,53bから、伝動ケース28に取り付けた支持部材54aによって支持した横方向にのびる支持フレーム54bの左右両側部に回転自在に支持した左右の後側回動軸51,51に、それぞれスプロケット65a,65a;65b,65bとチェン65c,65cを介して伝動し、更に、ここから左右の前側回動軸51,51に、それぞれスプロケット66a,66a;66b,66bとチェン66c,66cを介して伝動する構成としている。
【0035】
苗供給装置4の開放機構31は、苗収容体29…の周回軌跡下方で底蓋48…が下方に回動しないように底蓋48…を下方から支持する支持体67を設け、この支持体67を苗植付け体25…の上方位置には設けないようにすることで、苗植付け体25…の上方位置を苗収容体29が通過するとき、底蓋48が支持体67による支持状態が解かれて下方回動し苗収容体29を苗を下方に落下可能に開放する構成としている。苗収容体29の底蓋
48が開くタイミングは、苗植付け体25…が苗収容体29の直下まで上昇したときとなるように調整しておく。また、上記構成に代えて、苗植付け体が苗収容体の直下まで上昇したときに、苗植付け体に設けた開放作動部材が、苗植付け体の上方に位置する苗収容体の底蓋が開くのを規制する規制手段を規制解除動作させる構成も採用できる。
【0036】
苗供給装置4は、機体右側の二つの苗植付け体25,25に対して苗を供給する右側苗供給装置4Rと、機体左側の二つの苗植付け体25,25に対して苗を供給する左側苗供給装置4Lは、共に、二つの苗植付け体25,25に対して苗収容体29…が一回りで周回移動して苗を供給する構成としている。このように二つの苗植付け体25,25に対して苗収容体29…が一回りで周回移動して苗を供給する構成とした場合は、一方側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…と他方側の苗植付け体29…に落下供給する苗収容体29…とが交互になるように連結し、且つ、一方側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…が一方側の苗植付け体25の上方を通過するとき、他方側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…が他方側の苗植付け体25の上方を通過するように設定し、また、少なくとも、苗収容体29…の周回移動方向下手側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…が、苗収容体29…の周回移動方向上手側の苗植付け体25の上方を通過するときは、その苗収容体29…については開放動作されないようにする開放規制手段を設ける。このように設けた上で、更に、苗植付け体25,25の上下動が一周期動作する間に苗収容体29…が2個分周回移動するように構成すると、苗収容体29…が二つの苗植付け体25,254の上方を直列的に通過しながら二つの苗植付け体25,25に対して苗供給漏れが生じることなく同時に苗を供給でき、且つ、二つの苗植付け体25,25の上方を通過した後に苗が供給されなかった苗収容体29…が生じないよう余すことなく二つの苗植付け体25,25に対して苗を供給できるものとなり、苗供給作業が余裕をもって行え、且つ、二つの苗植付け体25,25に対して確実に苗を供給できる。なお、前記開放規制手段は、例えば、苗収容体の周回移動方向下手側の苗植付け体に落下供給する苗収容体の蓋に突起を設け、この突起が、苗収容体の周回移動方向上手側の苗植付け体の上方を通過するときに、下方から支持する構成とすることで可能となる。
【0037】
この苗植機は、苗植付け体25…が植付けた苗に対して覆土鎮圧するための覆土鎮圧輪80…を各苗植付け体26…の苗植付け個所の各後方左右両側近傍位置に設けている。この覆土鎮圧輪80は、転動輪であって、機体に固定された取付部材32に左右方向の回動支点軸82回りに各植付条ごとに上下回動自在に取り付けられた覆土鎮圧輪支持フレ−ム102の回動先端側(後側)に取り付けられている。前記覆土鎮圧輪支持フレ−ム102は、平面視で前側(回動支点軸82側)が開放するようなU字型であり、パイプフレ−ムを適宜折り曲げて構成され、後端部が若干上側に立ち上がった形状になっている。この覆土鎮圧輪支持フレ−ム102の後端部には各植付条ごとに上下方向に延びるロッド103の下端を連結し、各植付条のロッド103(計4本)の上端を左右に延びるパイプ状の左右フレ−ム104の適宜位置で貫通させ、前後方向のピン105で前記左右フレ−ム104に対してロッド103が摺動しないように固定している。なお、前記ピン105をロッド103の上端部に備える孔(図示せず)に挿通して固定する構成であるが、前記孔はロッド103の上下方向の所定間隔おきに複数設けられている。従って、ピン105を挿通するロッド103の孔の位置を各植付条のロッド103で異ならせることにより、覆土鎮圧輪80…の鎮圧荷重を各植付条で個別に変更して調節でき、圃場の畝面の形状や土壌の特性(畝が崩れやすい土壌の特性等)に応じて各植付条で適正に苗の周辺に覆土及び鎮圧でき、各植付条の苗植付の適正化が図れる。
【0038】
そして、前記左右フレ−ム104は、機体フレーム2bに固着された左右方向の回動軸106回りに前後乃至上下に回動する回動ア−ム107に固着されている。尚、前記回動軸106は機体フレーム2bから左右に延設され、該回動軸106の両端部に回動ア−ム107を左右それぞれ設け、左右それぞれの回動ア−ム107が左右フレ−ム104の適宜位置を支持した構成となっている。また、回動軸106の両端部にはプレ−ト108を固着しており、該プレ−ト108を折り曲げて構成される規制部分108aに回動ア−ム107が当接することにより、回動ア−ム107がそれ以上上側(後斜め上側)へ回動し
ないように規制する。従って、前記規制部分108aが回動ア−ム107のストッパとなる。また、前記プレ−ト108を別途折り曲げて構成される部分108bと回動ア−ム107との間に引張スプリング109を設けており、該引張スプリング109により回動ア−ム107が下側(前斜め下側)へ回動するように付勢されている。従って、回動ア−ム108の下側への回動付勢で左右フレ−ム104ひいては覆土鎮圧輪80が下向きに付勢され、該覆土鎮圧輪80がある程度の荷重で地面に押し付けられて土壌への鎮圧作用を得るようになっている。左右の回動ア−ム107を繋ぐようにU字状の回動レバー110を固着して設けており、該回動レバー110が左右の回動ア−ム107,107と一体で回動するようになっている。従って、該回動レバー110を回動操作することにより、左右の回動ア−ム107を回動させて全ての植付条(計4条分)の覆土鎮圧輪80を同時に上下動させることもできる。よって、前記覆土鎮圧輪支持フレ−ム102、ロッド103、s左右フレ−ム104、回動ア−ム107、引張スプリング109及び回動レバー110等により、覆土鎮圧輪支持機構を構成している。
【0039】
操縦ハンドル2近傍には機体を走行させずに苗植付装置3及び苗供給装置4のみを駆動させるための空苗植えレバ−111を設けており、該空苗植えレバ−111により苗植付装置3及び苗供給装置4のみを駆動させてこれらの装置3,4の作動の確認や点検が行える構成となっている。図1の実線で示すように前記空苗植えレバ−111を下向きになるよう操作すると、空苗植え機能がオフとなって植付・昇降操作具Lの操作で機体を走行させながら苗植付装置3及び苗供給装置4を作動させる通常の植付が行える状態となる。一方、図1の仮想線で示すように前記空苗植えレバ−111を後向きになるよう操作すると、空苗植え機能がオンとなって走行停止状態で苗植付装置3及び苗供給装置4のみが作動する。なお、空苗植えレバ−111は、該レバ−111を付勢するレバースプリング(図示せず)の死点越えによりオン、オフの切替がなされる。そして、空苗植えレバ−111の中途部の前側(下側)部分には係合フック112を設けており、該係合フック112は前記回動レバー110の左右に延びる部分に係合し得る形状となっている。従って、空苗植えレバ−111が下向きになる通常の植付作業状態(空苗植え機能のオフ状態)で、覆土鎮圧輪80の上昇により回動レバー110が前記係合フック112の位置に到達するまで上側に回動して回動レバー107が係合フック112に当接すると、空苗植えレバ−111がレバースプリングによる前側への回動付勢に抗して後側に逃げ、回動レバー110が係合フック112の突出部を乗り越えた後にレバースプリングによる前側への付勢で係合フック112に確実に係合して固定される。よって、覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上昇すると、係合フック112により回動レバー110ひいては左右の回動ア−ム107が回動しないように固定され、全ての植付条(計4条分)の覆土鎮圧輪80は上下動しないように固定されることになる。なお、空苗植えレバ−111が後向きになる空苗植え機能のオン状態では、回動レバー110の回動域から係合フック112が離れ、回動レバー110がいかなる位置に上下動しても係合フック112が係合しない構成となっている。よって、前記係合フック112により、覆土鎮圧輪支持機構を固定して覆土鎮圧輪80の上下動を規制する上下動規制手段を構成している。なお、回動レバー110を人為操作により係合フック112に係合させ、覆土鎮圧輪80を固定することもできる。なお、左右の回動ア−ム110を下側へ回動付勢する引張スプリング109も回動レバー110を係合フック112に係合させる側(下側)に作用するので、回動レバー110と係合フック112との係合の確実化が図れる。
【0040】
なお、上述では空苗植えレバ−111の操作で、係合フック112が覆土鎮圧輪80の上下動を規制する規制状態と覆土鎮圧輪80の上下動を規制しない規制解除状態とに切り替えられる構成としたが、係合フック112を空苗植えレバ−111とは別に設けて、係合フック112を移動させる専用の切替操作具を設けて任意に前記規制状態と前記規制解除状態とに切り替えできる構成としてもよい。
【0041】
また、苗植付け体25…が苗を植付ける前の圃場面を鎮圧して整地する鎮圧ローラ81を各苗植付け体26…の苗植付け個所の前方となる位置に設けている。図1に示すように、この鎮圧ローラ81は、前後方向で後述する作業者用座席70L,70Rと重複する機体の前部位置に配置されている。従って、作業者用座席70L,70Rに座る作業者の体重が前記鎮圧ローラ81に良好に作用し、該鎮圧ローラ81による十分な圃場面の鎮圧効果を得ることができる。なお、鎮圧ローラ81は鎮圧用スプリング113により下向きに付勢されて土壌に押し付けられるが、前記鎮圧用スプリング113の反力で機体前部が浮き上がろうとするのを作業者用座席70L,70Rに座る作業者の体重で阻止することができ、機体の姿勢を適正に維持して苗の植付姿勢を適正に安定させることができる。逆にいえば、所望の鎮圧力を得るべく鎮圧用スプリング113のスプリング力(鎮圧荷重)を大きく設定することができる。
【0042】
ところで、左右の前輪7、7は、機体前端のバンパーフレーム95内に設けた上方に延びる操舵レバー114を左右に傾けて操作することにより、該操舵レバー114と一体で左右に回動するピットマンアーム115、該ピットマンアーム115に連結される左右各々のタイロッド116を介して縦フレーム16a,16aを回動させ、左右に操舵可能に設けられている。なお、前記ピットマンアーム115は、左右の前輪7、7を上下動させるための横フレーム16から前側に延びる取付プレート117に回動自在に取り付けられている。前記操舵レバー114により、傾斜地等で機体が所望の進路から外れたときに所望の進路に機体を復帰させるべく左右の前輪7、7を操舵することができる。この操舵レバー114は、機体の左右中央前端部で左右の作業者用座席70L,70Rから比較的近い位置にあるので、左右の作業者用座席70L,70Rに座るいずれの作業者でも手を伸ばして容易に操作することができる。また、この操舵レバー114は、機体の左右中央前端に設けられているので、操縦ハンドル2近傍となる機体の後部で歩行する作業者が機体の進行方向を確認するための指標となり、センターマスコットを兼ねている。また、この操舵レバー114は、バンパーフレーム95の後側に立設しているので、機体前端を障害物に衝突させたときにバンパーフレーム95がガードとなって直接衝撃を受けず、その損傷を防止できる。操舵レバー114は、その中途部に設けた回動軸118で上部が前後に折れ曲がるように回動する構成となっている。そして、操舵レバー114の上部と一体で回動する鎮圧ローラ支持フレーム119に前記鎮圧ローラ81が支持されている。従って、操舵レバー114の上部を前後に操作することにより、鎮圧ローラ81を上下動させることができ、操舵レバー114が鎮圧ローラ上下動レバーを兼ねている。このように、操舵レバー114、鎮圧ローラ上下動レバー及びセンターマスコットを同一の部品で兼用しているので、機体の部品点数を削減できてコストダウンが図れる。
【0043】
この苗植機は、苗供給装置4に苗を補給する作業者が乗車して苗補給作業が行えるよう、作業者が座る作業者用座席70L,70Rを設けている。具体的には、左側苗供給装置4Lの前側部の左外側近傍に左側の作業者用座席70Lを配置し、右側苗供給装置4Rの前側部の右外側近傍に右側の作業者用座席70Rを配置している。これらの座席70L,70Rの背凭れは、それぞれ機体の左右方向外側に位置するよう設けていて、その座席70L,70Rに座る作業者は、苗供給装置4L,4Rの前側部に向って機体内側向き姿勢で着座して、苗供給装置4L,4Rの前側部に対して苗補給作業を行う。また、本例の苗植機は、畝溝を走行する後輪6,6の後側で機体後部に設けた操縦ハンドル2の左右方向外側に、作業者が立って前に歩きながら苗供給装置4の後側部に苗を補給する作業を可能とする作業空間Wを形成しており、この作業空間Wに立つ作業者から苗供給装置4L,4Rの後側部に対して苗補給作業を行うことができる。
【0044】
また、左右の作業者用座席70L,70Rは、前輪7,7の車軸17,17位置より後側で且つ後輪6,6の車軸10,10位置より前側に位置させて配置している。更に、作業者用座席70L,70Rは、機体側面視で後輪6,6の上方に座席の一部がオーバーラップするように配置している。また、作業者用座席70L,70Rは、機体側面視で走行用の伝動ケース9,9の回動軸心Xの上方に配置しており、前輪7,7は、走行用の伝動ケース9,9の回動軸心Xより前側に配置した構成としている。
【0045】
作業者用座席70L,70Rの支持構成は、後輪6,6の車軸10,10を支持する支持部材である伝動ケース9,9の内側に突出させた後輪6,6の車軸10,10に取付けた座席支持部材72,72;73,73で支持し、該座席支持部材72,72;73,7
3に、後輪6,6の車軸10,10が上下しても作業者用座席70L,70Rが前後に傾かないようにする姿勢維持機構を設けている。
【0046】
この姿勢維持機構は、本例では、以下のように構成している。まず、上部に作業者用座席70L,70Rを取付けた座席支持フレーム72,72を設け、また、前輪7,7の車軸17,17を支持する支持部材である前記縦フレーム16a,16aと、後輪6,6の車軸10,10とを連結する前後に長い連結フレーム73,73を設ける。この連結フレーム73,73の前端部側は、前輪7,7の車軸17,17を支持する前記縦フレーム16a,16aの内側に固着、突出させたピンに回動自在の支持筒74,74に前後方向摺動自在に挿入させている。また、連結フレーム73,73の後端部側は、後輪6,6の車軸10,10に回動自在に取付けた筒部75,75に一体的に固着している。従って、走行用の伝動ケース9,9が下移動して後輪6,6の車軸10,10が上下しても、連結フレーム73,73は、前後の傾き変動が生じない。この連結フレーム73,73の前後途中個所に、前記座席支持フレーム72,72の下部を取付けるている。よって、走行用の伝動ケース9,9が回動して後輪6,6の車軸10,10が上下しても、作業者用座席70L,70Rは前後に傾いたりすることがない。また、この連結フレーム73,73に対して、座席支持フレーム72,72は上下軸心まわりに回動させて、作業者用座席70L,70Rを機体内側に移動可能に設けていて、これにより、移動時や格納時に作業者用座席70L,70Rを機体内側に収納させることができる。
【0047】
なお、連結フレーム73,73の前端部側を装着している前記支持筒74,74を前輪7,7の車軸17,17に取付けることもできる。また、連結フレーム73,73の後端部を後輪6,6の車軸10,10を支持する支持部材である走行用の伝動ケース9,9の内側に突出させた軸に回動自在に前記筒部75,75を回動自在に取付けこともできる。更に、連結フレーム73,73の前輪7,7側の連結部は、連結フレーム73,73を、前輪の車軸17,17又は縦フレーム16a,16aに対して摺動不能且つ回動自在に連結し、連結フレーム73,73の後輪6,6側の連結部は、連結フレーム73,73を、後輪の車軸10,10又は伝動ケース9,9に対して摺動自在且つ回動自在に連結する構成することもできる。このように構成すると、走行用の伝動ケース9,9が下方回動して後輪6,6の車軸10,10が下降すると、後輪6,6が機体に対して相対的に前方移動するが、作業者用座席70L,70Rは機体に対して相対的に前後方向には移動しない。従って、機体を旋回させるために、後輪6,6をまず下降して機体を上昇させ、そして、操縦ハンドル2を押し下げて二輪接地状態にして機体を旋回させるとき、前後方向において作業者用座席70L,70Rが後輪6,6の車軸10,10に向って接近することになるので、作業者用座席70L,70Rの重量による操縦ハンドル2の押し下げ負荷が軽減される。また、連結フレーム73,73の前輪7,7側の連結部と、連結フレーム73,73の後輪6,6側の連結部の両方ともに、連結フレーム73,73を摺動自在且つ回動自在に連結する構成とすることもできる。
【0048】
更に、この苗植機は、左右の作業者用座席70L,70Rの各機体左右方向内側下方にステップ71L,71Rを設けている。このステップ71L,71Rは、機体側面視で作業者用座席70L,70Rの下方位置から前輪7,7の上方位置すなわち機体前端近傍にわたって延設している。従って、作業者は、機体前方を介して該ステップ71L,71Rに乗降することができる。後輪6,6は大径車輪で、前輪7,7は小径車輪であり、機体側面視で、この小径車輪の前輪7,7の上方にステップ71L,71Rの前側部分が位置するように設けている。ステップ71L,71Rは、後側をアクスルケース9a,9aの上部に取付け、前側を、バンパーフレーム95に内端部を固着したステップ支持フレーム92,92と、該ステップ支持フレーム92,92の外端部と固着し前記支持プレート9c,9cと一体のステップ支持プレート93,93との上に固定して取付けている。従って、走行用の伝動ケース9、9を下方回動させて後輪6、6を下降させると、機体が前下がりに傾斜して前記ステップ71L,71Rも前側に傾斜するため、作業者が機体前方と該ステップ71L,71Rとの間で容易に乗降することができる。また、後輪6、6を下降させても、機体前方の地面と該ステップ71L,71Rとの間の段差があまり大きくな
らないので、容易に乗降することができる。
【0049】
作業者用座席70L,70Rの後側近傍で機体側面視で後輪6,6の車軸10,10の上方位置に、苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナC、Cを設置可能に設けている。本例では、プラスチック等で成形された箱状のコンテナCの両側部に形成された取っ手孔C1,C1の一方側に係合してコンテナCを支持するコンテナ係合部材94,94を設けて、これにより、コンテナC、Cを設置可能に設けていて、コンテナ支持部の構造が簡単なものとなり、且つ、コンテナを設置していないときにコンテナ支持部が大きな空間を占めず、機体のコンパクト化と軽量化、低コスト化が図れる。図示例の具体構成は、コンテナ係合部材94,94の上端部がクランク状に屈曲していて、その上端部をコンテナCの取っ手孔C1に外側から挿入してクランク状の屈曲部で取っ手孔C1が引っかるようにすることで、コンテナCをコンテナ係合部材94に支持させることができる。また、コンテナ係合部材94は、座席支持フレーム72,72の上部に固着していて、作業者用座席70L,70Rの後側に起立するように設けている。路上走行時に作業者が作業者用座席70L,70Rに着座したときに手摺を兼ねる。
【0050】
この苗植機は、苗植付け体25に灌水用の水を供給可能に構成して、苗の植付と同時に灌水が行なえるようになっている。そして、灌水用の水を蓄えるタンクT、T;T,Tは、後輪6,6の機体左右方向内側で機体側面視において後輪6,6の車軸10,10付近に設けた左右のタンク支持台76,76上に左右に振り分けて載置可能に設けている。このタンク支持台76,76は、前記連結フレーム73,73に固着した支持部材上に固定されている。更に、タンクT、T;T,Tは、走行用の伝動ケース9、9の機体左右方向内側で、且つ機体平面視で前記伝動ケース9、9と機体フレーム2bとの間の空間部に配置され、機体のスペースを有効利用できるような位置に配置されている。従って、機体のコンパクト化が図れる。また、水を貯留するタンクTの重量が左右の後輪6,6の近くで作用するので、タンクTの重量が確実に後輪6,6に作用し、後輪6,6の走行推進力を安定させることができると共に、機体旋回時に機体の旋回中心となる走行車輪(後輪)6の近くの左右一方に配置したタンクTの重量が旋回駆動負荷を与えにくいため、機体旋回におけるモ−メントを低くできてスム−ズに旋回できる。なお、機体旋回時に後輪6,6を下降させて機体を上昇させると機体平面視で左右の作業者用座席70L,70Rが左右各々の後輪6,6に接近することになるので、旋回中心となる走行車輪(後輪)6の上方近くに左右一方の作業者用座席70L,70Rが接近して該左右一方の作業者用座席70L,70Rの重量が旋回駆動負荷を与えにくくなり、機体旋回におけるモ−メントを低くできてスム−ズに旋回できる。また、タンクTの重量で機体旋回時における操縦ハンドル2の押し下げ負荷にあまり影響を与えず、タンクTの重量すなわちタンクT内の水の容量に拘らず操縦ハンドル2の押し下げ負荷を適切な負荷に維持でき、旋回操作性を向上させることができる。従来、タンクや作業者用座席等は機体の左右中央位置に配置されていたので、左右何れの方向に旋回する場合でもタンクや作業者用座席が旋回におけるモ−メントを大きくする要因となり、旋回性能を悪化させるおそれがある。ところが、本実施形態のようにタンクT及び作業者用座席70L,70Rを左右に振り分けて左右各々が旋回時に機体平面視で重複あるいは接近するように配置構成することにより、旋回の円滑化が図れて旋回性能を向上させることができる。
【0051】
なお、作業者が作業者用座席70L,70Rに座らず後輪6,6の後側で操縦ハンドル2の左右方向外側の作業空間Wで歩行しながら作業をするとき、作業者用座席70L,70Rひいてはステップ71L,71Rが不要であるので、該ステップ71L,71R上にタンクT、T;T,Tを載置してもよい。特に、畦が高くて機体に対して後輪6,6が下降する側となるときは、伝動ケ−ス9,9が前側下方に回動することになるから、機体に対して後輪6,6が前寄りに位置することになり、機体が後輪6,6位置を支点に後側へ傾きやすくなって機体の前後方向の姿勢が不安定になりがちであるが、タンクT、T;T,Tをタンク支持台76,76の前側に位置するステップ71L,71R上に載置することにより機体全体の重心位置を前寄りにでき、機体の姿勢を安定させることができて、苗の植付姿勢を良好に維持でき、あるいは機体が後側へ転倒するのを防止できる。
【0052】
また、作業者用座席70L,70Rの後側で機体側面視で後輪6,6の車軸10,10
の上方位置で且つ機体側面視でタンク支持台76,76上に載置したタンクT,T;T,Tの上方位置に苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナCを設置可能に設けている。
【0053】
以上のとおり、上記の苗植機は、左右一対の前輪と左右一対の後輪が畝を跨いだ状態で前進走行しながら、苗植付け体25,25,25,25が圃場に苗を植付ける。苗供給装置4L,4Rは苗植付け体25,25,25,25に苗を供給する。作業者は、作業者用座席70L,70Rに着座して苗供給装置4L,4Rに苗を補給する作業を行なうことができる。
【0054】
よって、この苗植機は、左右一対の前輪7,7と左右一対の後輪6,6を備えた走行車体2と、圃場に苗を植付ける苗植付け体25…と、該苗植付け体25…に苗を供給する苗供給装置4L,4Rと、該苗供給装置4L,4Rに苗を補給する作業を行う作業者が座る作業者用座席70L,70Rとを備えた苗植機において、前記作業者用座席70L,70Rを、前記前輪7,7の車軸17,17位置より後側で且つ前記後輪6,6の車軸10,10位置より前側で前記苗供給装置4L,4Rの左右方向外側近傍に前記苗供給装置4L,4Rに向って機体内側向き姿勢で着座可能に設けている。従って、作業者が、左右横向き姿勢で作業者用座席70L,70Rに着座して苗供給装置4L,4Rに容易に能率よく苗を補給でき、そして、機体の進行方向前方及び後方の両方向を容易に確認できて、機体の操縦を適確に行なえ、作業者が安心して乗車でき、且つ、圃場に植付けられた苗の植付け状態を容易に確認でき、不適正な植付け状態になったときの対応を迅速に行うことができて良好な植付け作業が行える。更に、作業者用座席70L,70Rの重量とその座席に座った作業者の体重は、前後車輪6,6,7,7の各車軸10,10,17,17の前後間で作用するので、前輪6,6と後輪7,7の両方の車輪の接地圧が高まり、よって、前輪7,7の浮き上がりが抑制されて、苗の植付が良好に行なえ、また、直進性も向上し、苗の植付位置の左右のずれも生じ難くなる。
【0055】
また、この苗植機は、走行車体2の前部側にエンジン5及びミッションケース8を設け、該ミッションケース8の左右両側部に前後に長い走行用の伝動ケース9,9の前部を回動自在に取付け、該走行用の伝動ケース9,9の後部側面から突出させた車軸10,10に前記後輪6,6を装着し、該後輪6,6を上下動するよう前記走行用の伝動ケース9,9を回動させる駆動手段12を前記走行用の伝動ケース9,9に連結し、前記ミッションケース8内の動力を前記走行用の伝動ケース9,9内の伝動機構を介して前記後輪6,6の車軸10,10に伝動して前記後輪6,6を駆動回転する構成とし、前記走行車体2に連結したハンドルフレーム2bの後部に歩行操縦用の操縦ハンドル2を前記後輪6,6の車軸10,10より後方に位置する状態で取付け、前記作業者用座席70L,70Rを機体側面視で前記後輪6,6の上方に座席の一部がオーバーラップするように配置している。従って、歩行型の機体構成として機体のコンパクト化と簡略化が図れる。また、圃場端などで機体を旋回させるときに、機体後部の操縦ハンドル2を操縦者が押し下げて後輪6,6の車軸10,10を支点に機体を後側に傾かせて前輪7,7を浮上させ四輪接地状態から二輪接地状態にして機体を旋回させるが、この構成とした苗植機では後輪6,6の車軸10,10より前側に作業者用座席70L,70Rが位置しているので、操縦ハンドル2の押し下げ時に作業者用座席70L,70Rに作業者が着座していると作業者の体重により操縦ハンドル2の押し下げが容易に行なえない。しかし、機体の旋回時には作業者用座席70L,70Rに着座した作業者は機体外に降りているので、作業者用座席70L,70Rに着座した作業者の体重が操縦ハンドル2の押し下げ時の大きな負荷となることがなく、また、走行用の伝動ケース9,9がその前部側を支点に回動して機体旋回前に後輪6,6を下降すると後輪6,6が機体前側に移動することになり、そして、作業者用座席70L,70Rが機体側面視で後輪6,6の上方に座席の一部がオーバーラップしているので、操縦ハンドル2を押し下げて後輪6,6の車軸10,10を支点に機体を後側に傾かせると、作業者用座席70L,70Rが比較的大きく後方に移動することになり、操縦ハンドル2の押し下げ時に、作業者用座席70L,70Rが機体側面視で後輪6,6の車軸10,10上方位置近傍に移動して、作業者用座席70L,70Rの重量による操縦ハンドル2の押し下げ時の負荷が小さくなって、機体の旋回操作が容易に行える。
【0056】
また、この苗植機は、歩行操縦用の操縦ハンドル2を前記後輪6,6の車軸10,10より後方位置に設け、前記苗植付け体25…を、先端が下方に向いたくちばし状の苗植付け体として、該苗植付け体25…が苗を上方から受け入れて下降し圃場に突入したとき下部を開いて苗を圃場に放出しその後上昇するよう動作して苗を圃場に植付ける構成とし、苗供給装置4を、苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数の苗収容体29…をループ状に互いに連結して前後に配置した軸51,51の回りを機体平面視で前後方向に長い長円状軌跡で周回移動させて該軌跡の後側で前記苗植付け体25…に上方から苗を落下供給する構成とし、前記苗植付け体25…を前記後輪6,6の車軸10,10位置より後側に配置し、前記苗収容体29…が周回する前後の軸51,51を前記左右の後輪6,6より機体内側で、且つ、前記苗収容体29…が周回する前側の軸51を前記後輪6,6の車軸10,10位置より前側で、前記苗収容体29…が周回する後側の軸51を前記後輪6,6の車軸10,10位置より後側に配置し、前記作業者用座席70L,70Rを、前記苗供給装置4の前側部の左右方向外側近傍で前記苗供給装置4に向かって機体内側向き姿勢で着座可能に設け、前記後輪6,6の後側で機体後部に設けた操縦ハンドル2の左右方向外側に、作業者が立って前に歩きながら前記苗供給装置4の後側に苗を補給する作業を可能とする作業空間Wを形成している。従って、作業者用座席70L,70Rを苗供給装置4の左右外側方に配置しながらも、苗供給装置4を左右に幅狭く形成できて機体をコンパクトに構成でき、また、作業者は、作業者用座席70L,70Rに着座して苗供給装置4の前側へ容易に且つ楽に苗の補給が行え、軟弱な圃場などで作業者が作業者用座席70L,70Rに座らずに、後輪6,6の後側に立って機体の進行とともに歩きながら苗供給装置4の後側へ容易に苗の補給が行うことができる。更には、苗供給装置4の前側に対しては、作業者用座席70L,70Rに着座した作業者が苗の補給を行い、苗供給装置4の後側に対しては、後輪6,6の後側に立って機体の進行とともに歩く作業者が苗の補給を行い、一層容易に能率良く作業を行うこともできる。
【0057】
また、この苗植機は、前輪7,7を前記走行用の伝動ケース9,9の回動軸心より前側に配置し、前記作業者用座席70L,70Rは、機体側面視で前記走行用の伝動ケース9,9の回動軸心Xの上方に配置している。従って、後輪6,6が上下しても作業者用座席70L,70Rと接触しにくいため、作業者用座席70L,70Rをできるだけ低く配置できて、機体をコンパクトに構成でき、且つ機体の重心を低くできて、機体の操縦性が良好になり、また走行安定性が向上して苗の植付が良好に行なえる。
【0058】
また、この苗植機は、後輪6,6を大径車輪とし前輪7,7を小径車輪とし、作業者用座席70L,70Rの機体左右方向内側下方にステップ71L,71Rを設け、該ステップ71L,71Rを機体側面視で前記作業者用座席70L,70Rの下方位置から前記前輪7,7の上側位置ひいては前輪7,7より前側位置まで延設している。従って、機体前部側から作業者が容易にステップ71L,71R上に乗降りでき、圃場端に至ったときに機体から容易に且つ迅速に降りれて機体の旋回操作を容易に且つ迅速に行える。
【0059】
また、この苗植機は、苗植付け体25…は複数体左右に並べて設け、前記苗供給装置4L,4Rは、機体の左右二箇所で前記苗収容体29…が機体平面視で前後方向に長い長円状軌跡で周回移動するように左右に二つ並べて設け、該左右の苗供給装置4L,4Rによって前記複数の苗植付け体25…のそれぞれに苗を供給するように構成し、作業者用座席70L,70Rは、左右の苗供給装置4L,4Rのそれぞれ左右方向外側方近傍に位置するようにして左右に二つ設けている。従って、左右の苗供給装置4L,4Rによって左右に複数設けた苗植付け体25…のそれぞれに苗が供給されて該複数の苗植付け体25…で複数条同時に植付けが行え、更に左右の苗供給装置4L,4Rのそれぞれ左右方向外側方近傍に設けた作業者用座席70L,70Rに作業者が座って左右の苗供給装置4L,4Rに苗を補給できるので、能率よく苗植作業が行え、また、作業者用座席70L,70Rを左右に設けているので、作業者の体重による機体の左右重量バランスの悪化も小さくできる。
【0060】
また、この苗植機は、後輪6,6の車軸10,10が上下するよう該車軸10,10を
支持する支持部材9,9を動作可能に設け、前記作業者用座席70L,70Rを、少なくとも前記後輪6,6の車軸10,10又は該車軸10,10を支持する支持部材9,9に取付けた座席支持部材73,72で支持し、該座席支持部材73,72に、前記後輪6,6の車軸10,10が上下しても前記作業者用座席70L,70Rが前後に傾かないようにする姿勢維持機構を設けている。従って、作業者用座席70L,70Rを、少なくとも前記後輪6,6の車軸10,10又は該車軸10,10を支持する支持部材9,9に取付けた座席支持部材73,72で支持するので、作業者用座席70L,70Rに着座した作業者の体重は、後輪6,6の車軸10,10又は該車軸10,10を支持する支持部材9,9に直接作用し、エンジン5やミッションケース8に対してや苗植付け体25…や苗供給装置4を支持する部材などに対して直接作用することがないので、機体の軽量化が図れる。また、後輪6,6を上下動する駆動手段12にかかる負荷を小さく抑えることができ、後輪6,6の上下動を軽快に且つスムーズに動作させることができる。更に、座席支持部材73,72に、前記後輪6,6の車軸10,10が上下しても前記作業者用座席70L,70Rが前後に傾かないようにする姿勢維持機構を設けたので、作業者用座席70L,70Rを後輪6,6の車軸10,10又は該車軸10,10を支持する支持部材9,9に取付けた座席支持部材73,72で支持するものとしながらも、後輪6,6が上下動しても作業者用座席70L,70Rが前後に傾いたりせず、乗車時の作業者の安定性が一層向上し、苗供給装置4への苗の補給作業を能率良く安全に行える。
【0061】
また、この苗植機は、前輪7,7の車軸17,17又は該車軸17,17を支持する支持部材16a,16aと、後輪6,6の車軸10,10又は該車軸10,10を支持する支持部材9,9とに、それぞれ左右方向の軸心まわりに回動自在に連結し且つ前輪側或は後輪側のいずれか一方或は両方で前後方向に摺動自在に連結して、前記後輪6,6の車軸10,10が上下しても前後の傾き変動が生じない前後に長い連結フレーム73,73を設け、該連結フレーム73,73に、上部に作業者用座席70L,70Rを取付けた座席支持フレーム72,72の下部を取付けて前記姿勢維持機構を構成している。従って、作業者用座席70L,70Rの支持機構と前記姿勢維持機構を簡略な構造に構成でき、一層、機体の軽量化を図ることができる。
【0062】
また、この苗植機は、作業者用座席70L,70Rの後側近傍で機体側面視で前記後輪6,6の車軸10,10の上方位置に苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナCを設置可能に設けている。従って、苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナCを作業者用座席70L,70Rの後側近傍で機体側面視で後輪6,6の車軸10,10の上方位置に設置できるので、作業者は、作業者用座席70L,70Rに着座して苗補給作業をする場合も、後輪6,6の後側に立って苗補給作業をする場合も、コンテナCから苗を容易に取出して苗供給装置4に苗を補給することができ、容易に且つ能率良く作業が行なえる。また、二輪接地状態として旋回すべく機体を後輪6,6の車軸10,10まわりに傾けたとき、コンテナCが後輪6,6の車軸10,10の上方位置に設置されているので、コンテナC内に収容された苗が飛び出してしまうことが生じ難くなる。
【0063】
また、この苗植機は、苗植付け体25…に灌水用の水を供給可能に構成し、灌水用の水を蓄えるタンクT…を後輪6,6の機体左右方向内側で機体側面視において後輪6,6の車軸10,10付近に設けたタンク支持台76,76上に載置可能に設けている。従って、灌水用の水を蓄えるタンクT…を機体側面視で前記後輪6,6の車軸10,10付近に設けたタンク支持台76,76上に載置するので、タンクT内の水の重量による操縦ハンドル2の押し下げ時の負荷を小さくでき、また機体旋回におけるモ−メントを低くできて、機体の旋回操作が容易に行える。
【0064】
また、この苗植機は、苗植付け体25…に灌水用の水を供給可能に構成し、灌水用の水を蓄えるタンクT…を機体側面視で前記後輪6,6の車軸10,10付近に設けたタンク支持台76,76上に載置可能に設け、作業者用座席70L,70Rの後側で機体側面視で後輪6,6の車軸10,10の上方位置で且つ機体側面視で前記タンク支持台76,76上に載置した前記タンクT…の上方位置に前記苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナCを設置可能に設けている。従って、タンク支持台76,76上に載置した灌水用のタンクT…の上方位置に苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナCを設置可能に設けたので、機体をコンパクト構成でき、且つ旋回操縦時にコンテナC内の苗が飛び出したりしにくく、また操縦ハンドル2を押し下げて旋回操縦する時の負荷を小さくできて、機体の旋回操作が容易に行える。
【0065】
そして、この苗植機は、苗植付装置3で植え付けた苗の周辺に覆土しながら鎮圧する覆土鎮圧輪80を後輪6、6より後側に配置し、前記覆土鎮圧輪80を上下動自在に支持する覆土鎮圧輪支持機構を設け、前記覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上動したとき、前記覆土鎮圧輪支持機構を固定して覆土鎮圧輪80の上下動を規制する係合具(係合フック112)を設けている。従って、覆土鎮圧輪支持機構により覆土鎮圧輪80が圃場面に良好に追従し、圃場に植え付けた苗の周辺に覆土しながら該苗の周辺の土壌を鎮圧する。そして、機体が後輪6、6を支点に後側へ傾いて覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上動すると、係合具(係合フック112)により自動的に覆土鎮圧輪80が固定され、覆土鎮圧輪80及び覆土鎮圧輪支持機構で機体の自重を受けて、後輪6、6を支点に機体の後側へ転倒するようなことを防止できる。よって、通常の作動域で覆土鎮圧輪80が上下動しているときは、該覆土鎮圧輪80が圃場面に良好に追従し、苗の周辺への覆土作用や苗の周辺の土壌の鎮圧作用を適正に得ることができ、植え付けた苗の姿勢を適正に維持することができる。そして、機体が後輪6、6を支点に後側へ傾いて通常の作動域を超えて覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上動すると、自動的に覆土鎮圧輪80の上下動が規制され、該覆土鎮圧輪80により機体の自重を受けて機体の後側への転倒を防止でき、植付作業の安全性が向上する。
【0066】
また、機体の旋回開始時に、操縦ハンドル2を把持する作業者が該ハンドル2を押し下げて機体を後側へ傾けることにより、覆土鎮圧輪80を意図的に上動させて回動レバー110を係合具(係合フック112)に固定させ、覆土鎮圧輪支持機構を固定して覆土鎮圧輪80を所定の上動位置で固定させることができる。これにより、機体旋回時に、覆土鎮圧輪80が邪魔にならず、該覆土鎮圧輪80を畝に干渉させないようにして容易に旋回操作でき、旋回操縦性が向上する。
【0067】
また、係合具(係合フック112)を回動レバー110の回動域に位置させて係合具(係合フック112)により覆土鎮圧輪80の上下動を規制する規制状態と、係合具(係合フック112)を回動レバー110の回動域から離して係合具(係合フック112)により覆土鎮圧輪80の上下動を規制しない規制解除状態とに切替可能な切替手段を設けている。従って、切替手段を覆土鎮圧輪80の上下動を規制しない規制解除状態に切り替えると、覆土鎮圧輪支持機構により覆土鎮圧輪80が圃場面に良好に追従し、圃場に植え付けた苗の周辺に覆土しながら該苗の周辺の土壌を鎮圧する。一方、切替手段を覆土鎮圧輪80の上下動を規制する規制状態に切り替えると、上下動規制手段により覆土鎮圧輪80の上下動が規制され、機体が後側へ傾いても覆土鎮圧輪80で機体の自重を受けて機体の後側への転倒を防止できる。よって、比較的平坦で傾斜度の小さい圃場又は圃場面の凹凸が大きい圃場では、切替手段を前記規制解除状態に切り替えることにより、覆土鎮圧輪80を大きく上下動させて圃場面に良好に追従させることができ、苗の周辺への覆土性能や苗の周辺の土壌の鎮圧性能を向上させることができて、植え付けた苗の姿勢を適正化を図ることができる。一方、傾斜地等の傾斜度の大きい圃場では、切替手段を前記規制状態に切り替えることにより、覆土鎮圧輪80の上動が規制されるため、機体が後側へ傾いても該覆土鎮圧輪80により機体の自重を受けて機体の後側への転倒を防止でき、植付作業の安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】苗植機の側面図
【図2】苗植機の平面図
【図3】苗供給部、作業者用座席、前輪操舵機構の一部及び覆土鎮圧輪支持機構の一部を省略した状態の苗植機の平面図
【図4】苗植装置と苗供給装置を示す側面図
【図5】伝動ケースを一部展開し断面開示した苗植装置の背面図
【図6】苗収容体の連結構成を示す斜視図
【図7】コンテナ係止部材にコンテナを設置した状態を示す斜視図
【図8】覆土鎮圧輪支持機構を示す斜視図
【図9】前輪操舵機構を示す平面図
【図10】前輪操舵機構を示す正面図
【符号の説明】
【0069】
6…後輪(走行車輪)、80…覆土鎮圧輪、110…回動レバー、112…係合フック
(上動規制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付後の苗の周辺に覆土しながら鎮圧する覆土鎮圧輪(80)を走行車輪(6)より後側に配置した苗植機において、前記覆土鎮圧輪(80)を上下動自在に支持する覆土鎮圧輪支持機構を設け、前記覆土鎮圧輪(80)が所定の高さまで上動したとき、前記覆土鎮圧輪支持機構を規制して覆土鎮圧輪(80)の更なる上動を規制する上動規制手段(112)を設けた苗植機。
【請求項2】
植付後の苗の周辺に覆土しながら鎮圧する覆土鎮圧輪(80)を走行車輪(6)より後側に配置した苗植機において、前記覆土鎮圧輪(80)を上下動自在に支持する覆土鎮圧輪支持機構と、該覆土鎮圧輪支持機構を規制して覆土鎮圧輪(80)の上動を規制する上動規制手段(112)を設け、該上動規制手段(112)により覆土鎮圧輪(80)の上動を規制する規制状態と、覆土鎮圧輪(80)の上動を規制しない規制解除状態とに切替可能な切替手段を設けた苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−211913(P2006−211913A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25331(P2005−25331)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】