説明

苗植機

【課題】苗載台の左右往復動の速度を変更する変速部の変速操作において、固定具を外して変速用操作具を変速操作する時に、誤って変速用操作具を伝動ケースから抜いてしまって、変速用操作具と変速部の歯車との係合が外れてしまい変速操作ができなくなるという課題があった。
【解決手段】左右往復移動する苗載台10と該苗載台10に載置された苗から1株分の苗を取出して圃場面に植え付ける植付装置11と該苗載台10の左右移動速度を変更する変速部47とを設けた苗植機において、該変速部47には複数の駆動ギヤ43,44と複数の従動ギヤ45,46との何れかに係合して駆動ギヤ43,44と従動ギヤ45,46との噛み合いを変更させる変速操作具48を機体に固定及び回動操作自在に設けると共に、変速操作具48の回動操作時に変速操作具48が機体から外れるのを防止する外れ防止体52を設けた苗植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右往復動する苗載台に載置された苗から植付装置にて一株分の苗を取り出して圃場に苗を移植する苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
左右往復動する苗載台に載置された苗から植付装置にて一株分の苗を取り出して圃場に苗を移植する苗植機がある。その苗植機には、苗載台の左右往復動の速度を変更する変速部を設けて、植付装置が左右往復動する苗載台に載置された苗から取り出す一株分の苗本数を変更する構成となっている。そして、変速部は、駆動側の複数の歯車と従動側の複数の歯車との噛み合いを変更して変速する構成となっており、その歯車の噛み合い変更は駆動側の複数の歯車または従動側の複数の歯車の何れかと係合させた変速用操作具にて駆動側または従動側の歯車を移動操作して行なう構成となっている。
【特許文献1】特開2001−8509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、上記苗載台の左右往復動の速度変更は頻繁に行なうものではないので、変速用操作具はボルトなどの固定具にて伝動ケースに固定して、変速操作時には固定具を外して変速用操作具を変速操作し、変速操作後には再び固定具で伝動ケースに固定する安価な構成となっている。
【0004】
従って、変速操作時に固定具を外して変速用操作具を変速操作する時に、誤って変速用操作具を伝動ケースから抜いてしまうと、変速用操作具と変速部の歯車との係合が外れてしまう為に、変速部の歯車が軸上を移動してしまうことがある。その状態で変速用操作具を伝動ケースに装着して変速操作しても、変速用操作具と変速部の歯車との係合が外れた状態なので変速操作することができず、苗移植作業ができなくなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、左右往復移動する苗載台10と該苗載台10に載置された苗から1株分の苗を取出して圃場面に植え付ける植付装置11と該苗載台10の左右移動速度を変更する変速部47とを設けた苗植機において、該変速部47には複数の駆動ギヤ43,44と複数の従動ギヤ45,46との何れかに係合して駆動ギヤ43,44と従動ギヤ45,46との噛み合いを変更させる変速操作具48を機体に固定及び回動操作自在に設けると共に、変速操作具48の回動操作時に変速操作具48が機体から外れるのを防止する外れ防止体52を設けた苗植機としたものである。
【0006】
従って、変速操作具48の機体に対する固定を解除して変速操作具48を回動操作し、駆動ギヤ43,44と従動ギヤ45,46との噛み合いを変更して苗載台10の左右移動速度を変更する。その時に、外れ防止体52は、変速操作具48が機体から外れてしまうことを適正に防止する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明は、変速部47には複数の駆動ギヤ43,44と複数の従動ギヤ45,46との何れかに係合して駆動ギヤ43,44と従動ギヤ45,46との噛み合いを変更させる変速操作具48を機体に固定及び回動操作自在に設けると共に、変速操作具48の回動操作時に変速操作具48が機体から外れるのを防止する外れ防止体52を設けたので、変速操作具48の機体に対する固定を解除して変速操作具48を回動操作する時に、変速操作具48が機体から外れてしまうことを適正に防止することができ、課題を簡潔な構成で適正に解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の一実施形態として、4条植え歩行型田植機を以下に説明する。
この歩行型田植機1は、機体の前部にミッションケース2、エンジン3、油圧ユニット4、油圧ポンプ5を設け、前記ミッションケース2の側面部より側方に突設した筒部2a,2aの端部に伝動ケース6,6が上下方向に回動可能に後向きに設けられ、該伝動ケース6,6の後端部に水田用車輪7,7が軸支されている。ミッションケース2の後部には、メインフレーム8の基部が固着されている。このメインフレーム8は、機体の下部を通って後方に延び、その中間部で上方に湾曲し、後部が斜め上方に向いた形状となっている。そして、上記湾曲部の前側の位置に内部に伝動機構を有する植付部フレーム9が固着して設けられ、これに苗載台10と植付装置11,…が装着されている。また、メインフレーム8の後端部には左右ハンドル12,12が取り付けられている。
【0009】
植付部フレーム9は、左右中央部に位置する中央ケース13と、該中央ケース13の左右両側に位置する左右チェンケース14,14と、中央ケース13の上部と左右チェンケース14,14の上部を連結する左右伝動パイプ15,15とで構成され、中央ケース13の下部左右側部と左右チェンケース14,14の下部左右側部に各々植付装置11,…が設けられている。
【0010】
苗載台10は、側面視においてメインフレーム8の後部とほぼ平行に設けられ、前部が低位となるよう傾斜させられている。そして、その前面側が苗を載せる苗載面となり、該苗載面は6つの苗載部10a,…に仕切られている。各苗載部10a,…には載置された苗を間欠的に下方へ送る苗送り装置16,…が設けられている。この苗載台10は、左右方向に横架した支持枠17によって下端裏面部が摺動自在に支持されているとともに、上部裏面部に固定して設けたレール18にメインフレーム8に取り付けたローラ19が係合しており、左右に往復動可能となっている。前記支持枠17には側面視でL形の苗受板20が一体成形されており、該苗受板20によって苗載台10に載置された苗の最下端が受け止められるようになっている。この苗受板20の6箇所に凹状に切り欠かれた苗取出口21,…が形成されている。
【0011】
植付部フレーム9の中央ケース13には、軸方向に摺動自在に支持された横移動棒22と、該横移動棒に取り付けたリードメタル23の爪23aが係合する螺旋状の溝24aが外周面に形成されたリードカム軸24とが設けられている。横移動棒22の中央ケース13外に突出する左右両端部に苗載台支持アーム25,25が固着され、その先端部が苗載台10の下端側面部に連結されている。リードカム軸24が回転すると、リードメタル23の爪23aがリードカム軸24の溝24aに沿って移動し、それによって横移動棒22が左右に往復動する。横移動棒22と一体に苗載台10も左右に往復動し、苗載台10に載置された苗の最下端部苗が苗取出口21,…に順次供給される。
【0012】
植付装置11は、回転駆動クランク26と揺動リンク27によって支持された植付具28を備え、回転駆動クランク26が回転することにより、植付具28の先端部に設けた植付け爪29が所定の軌跡を描いて上下運動を行い、前記苗取出口21に供給された苗載台10の苗から1株分の苗を取出して圃場面に植え付けるようになっている。
【0013】
機体の下部には、前後に長い中央フロート30と左右一対の側部フロート31,31が設けられている。植付部フレーム9に回動自在に支承されたフロート支持棒32にアーム33,…を一体に取り付け、該アームの前端部と各フロート30,31,31の後部に固着した取付部材34,…とが回動自在に枢着され、各フロート30,31,31の前部は上下動可能に揺動リンク35,…に吊られている。
【0014】
また、機体の上部には、予備の苗を載せておく予備苗載台36が、メインフレーム8に固定した支柱37によってほぼ水平に支持されている。
次に、この歩行型田植機1の伝動構成について説明する(図4参照)。エンジン3の駆動力は、ミッションケース2内の走行変速装置を介して左右伝動ケース6,6に伝達されて、左右水田用車輪7,7が駆動回転される。一方、ミッションケース2から植付駆動軸38にて植付部フレーム9内に設けられた植付軸39に動力が伝達される。この伝達部には植付軸39を定位置で停止させる定位置植付クラッチ40が設けられている。
【0015】
植付軸39の回転は、中央ケース13および左右チェンケース14,14内に張架したチエン41,…によって、前記回転駆動クランク26,…が取り付けられているクランク駆動軸42,…に伝えられる。
【0016】
植付軸39からリードカム軸24へは、駆動ギヤ43,44と従動ギヤ45,46の組み合わせからなるギヤ列式の変速部47を介して伝動されており、これらギヤの組み合わせを変えることにより苗載台10の左右往復動の速度を変更して植付装置11,…の苗取り量を2段階に切り替えられるようになっている。
【0017】
この変速部47を更に詳細に説明すると、駆動ギヤ43,44は一体に構成されており、植付軸39に対して軸方向には移動自在に設けられているが、回転方向には係合体47により一体に回転する構成となっている。また、駆動ギヤ43,44の端部には植付軸39の軸方向に移動させるための変速操作具48の係合突起49が係合する係合溝50が一体に設けられている。一方、従動ギヤ45,46はリードカム軸24に固着されている。
【0018】
そして、駆動ギヤ43の歯数は12個であり、駆動ギヤ44の歯数は10個である。また、従動ギヤ45の歯数は18個であり、従動ギヤ46の歯数は20個である。従って、駆動ギヤ43と従動ギヤ45とを噛み合わせてリードカム軸24を回転駆動させた場合は苗載台10の左右往復動の速度は早くなり、植付装置11,…が苗載台10に載置された苗から一株分の苗を取り出すときの一株分の苗取り量は多くなる(一株当たりの苗本数が多くなる)。逆に、駆動ギヤ44と従動ギヤ46とを噛み合わせてリードカム軸24を回転駆動させた場合は苗載台10の左右往復動の速度は遅くなり、植付装置11,…が苗載台10に載置された苗から一株分の苗を取り出すときの一株分の苗取り量は少なくなる(一株当たりの苗本数が少なくなる)。
【0019】
変速操作具48の先端部は円筒形状をしており、該円筒形状部48aが中央ケース13の側壁に設けた円筒状の貫通孔13aに回転自在に挿入されて設けられている。そして、3本のボルト51,…にて中央ケース13に固定されている。また、係合突起49は、変速操作具48の回転中心Cから偏心した位置に設けられており、3本のボルト51,…を外して変速操作具48をその摘まみ48bを持って180度回転させると、図4に示す回転中心Cの右側に位置する状態から回転中心Cの左側に位置する状態に移動して、駆動ギヤ43,44を図4で左方向に移動させ、駆動ギヤ44と従動ギヤ46とが噛み合った状態から駆動ギヤ43と従動ギヤ45とが噛み合った状態に変更させることができる。そして、変速操作後は、再び、3本のボルト51,…にて変速操作具48を中央ケース13に固定する。
【0020】
この3本のボルト51,…を外して変速操作具48を回転操作する時に、誤って変速操作具48を中央ケース13から抜いてしまうと、変速操作具48の係合突起49が駆動ギヤ43,44の係合溝50から外れてしまうので、駆動ギヤ43,44は植付軸39の軸方向に自由に移動してしまって、変速操作具48を中央ケース13の貫通孔13aに挿入しても係合突起49が駆動ギヤ43,44の係合溝50に係合せず変速操作ができなくなってしまう。
【0021】
そこで、3本のボルト51,…を外しても変速操作具48が中央ケース13から抜けないように、外れ防止体52が設けられている。この外れ防止体52は、基部を中央ケース13と右伝動パイプ15とを固定するボルト53にて友締めして中央ケース13に固定されており、その先端部が変速操作具48の外側面を押さえた構成となっている(図5参照)。なお、外れ防止体52の先端部は、変速操作具48を回転させるために持つ摘まみ48bの回転時の移動軌跡から外れた形状となっている。
【0022】
従って、3本のボルト51,…を外しても、外れ防止体52の先端部が変速操作具48の外側面を押さえているので、変速操作具48を回転操作する時に、誤って変速操作具48を中央ケース13から抜いてしまうことが防止でき、変速操作ができなくなるような事態を回避できる。
【0023】
左右側部フロート31,31の左右外側部には、前工程で圃場に植付けた苗位置を示す苗マーカ54,54が各々設けられている。この苗マーカ54は、鉄製の棒材55とその先端を上方に直角に折り曲げた部位に突き刺した球状の赤色のマーカ体56とで構成されており、棒材55の基部は側部フロート31にボルト57で固定されている。
【0024】
そして、前工程で植付けた苗列の上方を苗マーカ54のマーカ体56が位置するようにして、機体を前進させて植付け作業をすると、前工程で植付けた苗列に沿った植付け作業が容易に行なえる。
【0025】
特に、マーカ体56は、その穴部56aを前記棒材55の先端を上方に直角に折り曲げた部位に突き刺して固定した構成としているので、田植機を長年使用しても棒材55から抜けて落ちてしまうことが防止でき、良好な田植作業が行える。
【0026】
次に、苗巻取補助装置100について以下に説明する。
苗巻取補助装置100は、一定幅(約30cm)で縦方向に長い形態の育苗トレイ102内で育苗された長さ約6mの長いマット苗103上を移動させながら、このマット苗103の葉を巻取側となる後側へ倒伏させるものであり、苗巻取補助装置100の後側で育苗トレイ102上のマット苗103をパイプ状の巻取軸104の外周に巻き付けて巻き取るようになっている。巻取軸104を人手で育苗トレイ102に沿って回動させながら、該巻取軸104にマット苗103を巻き付ける。苗巻取補助装置100の前後には走行手段となる各々左右一対の走行車輪105を設け、原動機となる駆動モータ106からの動力が左右の走行伝動用チエーン107を介して左右各々の前後の走行車輪105に伝達され、計4輪の走行車輪105の駆動により育苗トレイ102の左右両側部の壁部102aをレールとして走行車輪105が案内されながら苗巻取補助装置100が走行する。
【0027】
前記駆動モータ106及び該駆動モータ106の電源となるバッテリー108は、苗巻取補助装置100の上部に配置されている。また、苗巻取補助装置100の上部の前後には、該苗巻取補助装置100を持ち運びするための把持部109を設けている。
【0028】
苗巻取補助装置100の上部上面側には速度調節操作具110を設けており、この速度調節操作具110の操作で駆動モータ106の駆動速度を変更して走行速度を調節できる構成となっている。尚、前記速度調節操作具110は、駆動モータ106の駆動を入切する電源スイッチを兼ねており、巻き取り作業を開始する為に速度調節操作具110を操作して電源を入りにして走行を開始した時には、最初は低速で発進し、徐々に速度調節操作具110にて設定した速度に増速するように制御すると、作業者が巻取軸104に苗を巻き始める時に低速走行するので巻き取り作業開始時の作業が適切に行なえる。
【0029】
また、巻き取り作業の終り近くでは巻き取ったロール苗の径が大きくなって巻き取り作業が難しくなっている。そこで、育苗トレイ102の長さは6mと決まっているので、走行距離を測定し、育苗トレイ102の終端部近くに来た時に自動的に走行速度を低速にするように制御すると、苗の巻き取り作業が適切に行なえる。
【0030】
更に、速度調節操作具110をアクチュエータで作動させる構成とし、機体に音声認識装置を設けて、例えば、苗を巻き取る作業者が「早く」と言えば音声認識装置がそれを認識して、走行速度が早くなるように速度調節操作具110をアクチュエータが作動して自動操作する構成(また、作業者が「遅く」と言えば音声認識装置がそれを認識して、走行速度が遅くなるように速度調節操作具110をアクチュエータが作動して自動操作し、作業者が「停止」と言えば音声認識装置がそれを認識して、駆動モータ106の駆動を切って走行を停止するように速度調節操作具110をアクチュエータが作動して自動操作する)とすれば、作業者は両手で苗の巻き取り作業をしているので作業性が非常に良くなる。
【0031】
苗巻取補助装置100の後部には、左右方向の回動軸111周りに上下回動可能のアーム112を左右各々設けている。尚、前記回動軸111は、斜め後下がりに延びる前記アーム112の略中央位置に配置されている。左右のアーム112の間には、平ベルトで構成される苗倒伏用ベルト113を巻掛けるための移動ローラ114を前記アーム112の下側の先端部に軸装している。前記苗倒伏用ベルト113は、苗巻取補助装置100の本体カバー115の所定位置に軸支される前側の固定ローラ116と後側の前記移動ローラ114との間に斜め後下がり姿勢で巻掛けられ、駆動モータ106からの動力が右側に配置した苗倒伏伝動用チエーン117を介して前記固定ローラ116へ伝達されて駆動する。従って、この苗倒伏用ベルト113が、巻き取る直前のマット苗の葉部に作用して該葉部を巻取側に倒伏させる倒伏手段となる。移動ローラ114の上方には左右のアーム112を連結する連結ロッド118を設けている。アーム112の上側の先端部には左右のアーム112を連結する連結軸120を設け、該連結軸120を苗巻取補助装置100の本体カバー115に形成した左右の円弧状の長穴121に嵌合させている。この連結軸120の中間部に挿通される調節ロッド122を設け、該調節ロッド122の肩部で連結軸120の後側への移動が規制されて左右のアーム112の下部が前側下方へ回動するのを規制している。尚、苗倒伏用ベルト113がマット苗から受ける抵抗により、調節ロッド122に沿って連結軸120が前側へ移動して左右のアーム112の下部が上側へ回動し得る構成となっており、苗倒伏用ベルト113に過大な負荷がかかるような状態でマット苗を損傷してしまうようなことを防止している。また、前記調節ロッド122の中途部を苗巻取補助装置100の後部に設けたブラケット123に螺合させており、この調節ロッド122と一体回転するハンドル124を回動操作することによって、調節ロッド123が前後に移動し左右のアーム112を上下に回動調節して苗倒伏用ベルト113の下端の位置を調節することができる。従って、前記調節ロッド122及びハンドル124は、苗倒伏用ベルト113がマット苗の葉部に作用する上下位置を変更する位置変更手段となる。苗倒伏用ベルト113は、下面側が斜め後下側へ移行し、移動ローラ114で上側へ転じて移行するように回転駆動する。また、この苗倒伏用ベルト113の周回速度は苗巻取補助装置100の走行速度よりも速くなるように設定されている。この苗倒伏用ベルト113の駆動により、マット苗の苗床に対して葉部yが後側へ傾斜するように押し倒された状態になり、この状態で巻取軸104にマット苗を巻きつけるようになっている。苗倒伏用ベルト113の内周面で左右両側端部には突条を一体形成し、固定ローラ116と移動ローラ114との左右両側端部には前記突条を嵌合させる溝125を形成する。また、固定ローラ116における溝125の左右両側部には歯車状の凹凸条面からなる歯車面126を形成して、苗倒伏用ベルト113をスリップなく駆動回転させる構成となっている。
【0032】
苗巻取補助装置100の本体カバー115の下部は透明に構成され、走行車輪105を側方から視認できるようにして、育苗トレイ102の壁部102a上へ走行車輪105をセットし易くしている。また、本体カバー115の前端の左右両端部には、マット苗の左右外端部の葉部yを左右方向内側へ収束させて案内する収束案内板127を備えている。本体カバー115の前側下端部には外力で変形可能な弾性体からなる苗寄せ案内杆128を左右各々取り付けており、この苗寄せ案内杆128は、後側へいくほど左右方向内側で且つ下側に位置するよう傾斜した構成となっており、後端を苗倒伏用ベルト113の下面に接近させている。苗巻取補助装置100の前進走行により、左右の収束案内板127で左右内側へ案内されたマット苗の左右外端部の葉部yを更に苗寄せ案内杆128の変形作用によって損傷しないように左右内側へ押し寄せ、葉部yが左右外側へはみ出ないようにして苗倒伏用ベルト113の作用位置へ案内する。また、図11に示すように、本体カバー115の左右の下端縁115aは、左右方向内側に屈曲しており、マット苗の左右外端部の葉部yが左右外側の育苗トレイ102の壁部102a上に位置しないように案内し、葉部yが前記壁部102aと走行車輪105との間に挟まれるようなことを防止している。また、苗倒伏用ベルト113の左右両側部の表面には該ベルト113の下面側で左右方向外側が後側に位置するように該ベルト113の周回方向に対して斜めの突条113aを設けており、該突条113aにより苗倒伏用ベルト113の駆動でマット苗の左右外端部の葉部yが左右方向内側へ向くように修正される。従って、前記収束案内板127、苗寄せ案内杆128、本体カバー115の下端縁115a及び突条113a等が、巻き取る前のマット苗の巻取方向と交差する方向における外端部の葉部を内側に案内する案内手段となる。
【0033】
また、図12に示すように、苗倒伏用ベルト113の移動ローラ114と固定ローラ116とを左右中央部の径を左右両端部の径に比べて小さくして、苗倒伏用ベルト113の中央部が凹んだ構成にすると、苗倒伏用ベルト113が巻き取る直前のマット苗の葉部に作用して該葉部を巻取側に倒伏させる時に、苗の左右両端部の葉部は左右中央部側へ案内されて倒伏してロール苗の側面から苗の葉が突出するようなことを防止でき、ひいては移植機による苗の移植を円滑に行える。
【0034】
本体カバー115から後側に左右のロール苗案内側板129を突出させて設け、この左右のロール苗案内側板129の間に形成されるロール苗が位置するようにし、巻取軸104及びロール苗を案内する。ロール苗案内側板129の上端縁部129a及び下端縁部129bは、左右方向外側に屈曲して設けられている。これにより、左右のロール苗案内側板129の間でロール苗を回転させながら巻取作業を行う際、ロール苗の左右端部がロール苗案内側板129の上端縁部129a及び下端縁部129bにひっかからないようにでき、ロール苗をスムーズに回転させることができる。また、ロール苗案内側板129の左右方向内側面には左右方向内側に突出するロール苗位置指標130を設けており、ロール苗の外径の変化に拘らずロール苗の前端外周面が前記ロール苗位置指標130の位置となるように巻取作業を行うことにより、苗倒伏用ベルト113とロール苗の前端との位置関係を一定に保って苗倒伏用ベルト113で葉部が倒伏した直後の苗を巻き取ることができる。従って、苗倒伏用ベルト113で葉部を倒伏させた後マット苗を巻き取るまでの間に葉部が復元してマット苗を良好に巻き取れなくなるようなことを防止できる。尚、ロール苗位置指標130は、上下鉛直方向に長く構成され、ロール苗の外径の変化に伴うロール苗の上下位置に拘らずロール苗の前端を合わせやすく構成している。尚、ロール苗位置指標130を突条物で構成したが、穴や単なる印等、指標となるものであればよい。
【0035】
また、左右のアーム112を連結する連結ロッド118の後側に、ロール苗の前面に接触してロール苗を案内するロール苗案内前板119を取り付けて設けている。該ロール苗案内前板119は、苗倒伏用ベルト113の斜め後上側に位置し、苗倒伏用ベルト113と同じ傾斜方向となる後下がりに傾斜した傾斜面を備えている。尚、ロール苗案内前板119の下端は、前記傾斜面に対して下側へ屈曲した構成となっている。ロール苗案内前板119は、苗倒伏用ベルト113の後端より前側に配置されているが、側面視で前記傾斜面の延長線が苗倒伏用ベルト113より上側且つ後側に位置するよう構成されている。従って、仮に後側で形成されるロール苗が苗巻取補助装置100側(前側)に近づき過ぎても、ロール苗の外周面が前記ロール苗案内前板119に接触してロール苗が苗倒伏用ベルト113やその周辺の構造物に干渉して巻き込まれないようにしている。また、ロール苗案内前板119の傾斜面の延長線が苗倒伏用ベルト113の下端の位置を調節するためのハンドル124より後側に位置しているので、ロール苗の外周面が前記ハンドル124に接触してロール苗がハンドル124に干渉しないようにしている。尚、ロール苗案内前板119は前記ハンドル124の操作により左右のアーム112と一体で回動するため、左右のアーム112の回動位置に拘らず、ロール苗案内前板119の傾斜面の延長線がハンドル124より後側に位置する構成としている。
【0036】
よって、この苗巻取補助装置100によると、ハンドル124の操作により苗倒伏用ベルト113の下端位置を変えることによりマット苗の葉部の倒伏作用状態を所望に変更して調節できるので、苗の葉の強度が小さい場合は、苗倒伏用ベルト113の下端位置を上昇させることにより倒伏作用位置を上昇させ、葉が折れたりして損傷するようなことを防止できる。逆に、苗の葉の強度が大きく葉が倒伏しにくい場合は、苗倒伏用ベルト113の下端位置を下降させることにより倒伏作用位置を下降させ、十分な倒伏作用を得ることができる。従って、苗の条件に応じて倒伏作用位置を変更することにより、苗を傷めずに且つ所望の外径で適正にロール苗を形成することができ、ひいては苗移植機による苗の植付を適正に行える。また、苗寄せ案内杆128等の案内手段によりマット苗の外端部の葉部が内側に案内されるので、苗倒伏用ベルト113の倒伏作用でマット苗の葉部が外側に大きくはみ出るようなことを防止でき、葉部を外側にはみ出さないようにして適正にロール苗を形成することができる。
【0037】
苗巻取補助装置100の前部には本体カバー115から斜め前下側に延びる左右の苗押さえ用アーム132を上下に回動可能に設け、左右の苗押さえ用アーム132の間で該アーム132の回動先端部に苗押さえローラ133を設けている。この苗押さえローラ133は、重量のある鉄製であり、駆動モータ106からの動力が苗押さえ伝動用チエーン134を介して伝動されて走行速度と略同じ周速で駆動する。また、図13に示すように、苗押さえローラ133は、左右中央部の径を左右両端部の径に比べて小さくしている。
【0038】
従って、マット苗の葉の強度があり該葉が硬く倒伏し難い場合に、ハンドル124を操作して苗倒伏用ベルト113をマット苗の葉部に作用しない高さまで上動させ、育苗トレイ102においてマット苗の巻取作業時とは逆方向から走行させることにより、苗押さえローラ133でマット苗の葉部を予め一方側に倒伏させるべく押さえることができる。この時、苗押さえローラ133は左右中央部の径が左右両端部の径に比べて小さくしているので、マット苗の葉部を予め一方側に倒伏させるべく押さえる作用で、苗の左右両端部の葉部は左右中央部側へ案内されて倒伏し、後行程でマット苗を巻き取る際にロール苗の側面から苗の葉が突出するようなことを防止でき、ひいては移植機による苗の移植を円滑に行える。
【0039】
その後、苗押さえ用アーム132を上側に回動させて苗押さえローラ133をマット苗の葉部に作用しない高さまで上動させ、ハンドル124を操作して苗倒伏用ベルト113をマット苗の葉部に作用させるべく所望の高さに下動させ、苗巻取補助装置100の走行により苗倒伏用ベルト113により苗の葉を確実に巻取側へ倒伏させながらマット苗を巻き取ることができる。尚、駆動モータ106を逆転させて苗巻取補助装置100を後進走行できる構成とし、この後進で苗押さえローラ133によりマット苗の葉部を一方側に倒伏させる構成としてもよい。また、苗押さえローラ133及び苗押さえ用アーム132等を着脱可能に設け、予め苗の葉を倒伏させる必要のない場合には苗押さえローラ133を取り外せる構成としてもよい。
【0040】
尚、上述はロール苗案内前板119を回動可能なアーム112から支持する構成について説明したが、ロール苗案内前板119を機体側に移動しないように固定して支持することもできる。また、ロール苗案内前板119の一部(例えば下端部)を傾斜面に対して後側に突出させ、この突出部にロール苗の外周部が接する程度の位置で苗の巻き取り作業を行えば、ロール苗の外周部がロール苗案内前板119に接触する面積が小さくなるので、ロール苗の回転抵抗を小さくでき、苗の巻き取り作業を円滑に行えると共に、苗の巻き取りにつれてロール苗の径が変化しても、ロール苗がロール苗案内前板119に接触することによる回転抵抗の変化が少ないので、ロール苗の径に拘らず同じ回転抵抗でロール苗の巻き取り作業を行うことができ、巻き取り作業性が向上する。
【0041】
尚、上述に代えて、ハンドル124を、アーム112より左右方向外側に配置する等してマット苗の上方から離れた位置に配置することができる。これにより、ハンドル124にロール苗が干渉することがなく、またハンドル124がロール苗の前方にない分、苗倒伏用ベルト113にロール苗を近づける(ロール苗案内前板119を近づける)ことができ、マット苗の葉部を倒伏させた直後に苗を巻き取ることができる。また、苗巻取補助装置100の左右一側方から前記ハンドル124を容易に操作することができる。尚、ハンドル124は、左右一側のみに設けてもよい。また、ハンドル124として、アーム112と一体回動する操作レバーを採用してもよい。
【0042】
尚、上述は苗巻取補助装置100の前部に苗押さえローラ133を取り付ける構成について説明したが、左右のロール苗案内側板129により苗押さえローラ133の左右両端部を回動自在に支持する構成としてもよい。左右のロール苗案内側板129に上側へ切り欠いた切り欠き溝を設けるとともに、苗押さえローラ133の左右両端部に前記切り欠き溝に入る突出部を設ける構成とすることができる。このとき、苗押さえローラ133は非駆動状態でマット苗に上側から押し当てられ、機体の前進で回転するようになる。これにより、苗押さえ用アーム132等の苗押さえローラ133を支持する格別の部材が不要となり、機体の軽量化が図れる。
【0043】
尚、苗巻取補助装置100の前部には、マット苗の葉部を切り揃えるための切断刃140を設けている。この切断刃140により、マット苗の葉部の高さが略均一にできるので、苗倒伏用ベルト113による葉部の倒伏作用を適切に得ることができ、ひいてはロール苗の径を適正にして移植機による苗の移植精度を向上させることができる。また、苗の巻き取り作業と同時にマット苗の葉部を切断できるので、別途葉部の切断を行う場合と比較して作業能率が向上する。尚、マット苗の葉部を切断しないときのために、切断刃140を退避させることができる構成とすればよい。また、左右のロール苗案内側板129に巻き取ったロール苗の左右側方にはみ出した苗の葉を切断する切断装置を設けると、ロール苗の側面から苗の葉が突出することを確実に防止でき、ひいては移植機による苗の移植を円滑に行える。
【0044】
尚、苗巻取補助装置100の前部にマット苗の葉部を検出する苗センサを設け、該苗センサが苗を検出しなくなると苗巻取補助装置100の走行が自動的に停止する構成としてもよい。これにより、作業者はマット苗の終端での苗巻取補助装置100の走行停止操作に気をとられず苗の巻き取り作業に専念することができる。
【0045】
尚、苗巻取補助装置100の後部で苗倒伏用ベルト113より後側にマット苗に薬剤を散布する薬剤散布装置を設け、苗の巻き取りと同時に苗に薬剤を散布する構成とすることができる。これにより、格別に薬剤散布作業を行う必要がなく、作業能率が向上する。この薬剤散布装置は、苗倒伏用ベルト113により苗の葉部を倒伏させた後に薬剤を散布するので、薬剤が苗の床部に供給されやすく、苗移植後の薬剤の効用を高めることができる。
【0046】
また、左右のロール苗案内側板129を左右方向に若干量回動する構成とし、ロール苗案内側板129の回動により苗巻取補助装置100の進行方向が左右にずれたことをすばやく検出し、この検出に基づいて左右の走行車輪105の駆動回転数を異ならせて進行方向が適正となるように機体を操向させることができる。この構成によると、育苗トレイ102の左右両側部の壁部102aを走行車輪105と合致するレール形状にしなくてよいため、コストダウンが図れる。尚、上記構成において、左右のロール苗案内側板129の一部(後部)のみが左右に回動するようにしてもよい。また、ロール苗案内側板129による進行方向の誤検出を防ぐため、左右のロール苗案内側板129が共に同じ側に回動したときのみ、左右の走行車輪105の駆動制御を行う構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】歩行型田植機の側面図である。
【図2】歩行型田植機の概略平面図である。
【図3】苗載台及び植付具の作用を示す側面図である。
【図4】植付部フレームの要部の断面図である。
【図5】変速操作具及び抜け止め体の作用を示す拡大図である。
【図6】苗マーカの一部断面拡大図である。
【図7】苗巻取補助装置を示す側面図である。
【図8】苗巻取補助装置を示す一部断面平面図である。
【図9】苗巻取補助装置を示す一部断面背面図である。
【図10】苗倒伏用ベルトを示す側面図である。
【図11】本体カバーの下端縁を示す背面図である。
【図12】苗倒伏用ベルトを示す断面平面図である。
【図13】苗押さえローラの平面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 苗載台
11 植付装置
43 駆動ギヤ
44 駆動ギヤ
45 従動ギヤ
46 従動ギヤ
47 変速部
48 変速操作具
52 外れ防止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右往復移動する苗載台(10)と該苗載台(10)に載置された苗から1株分の苗を取出して圃場面に植え付ける植付装置(11)と該苗載台(10)の左右移動速度を変更する変速部(47)とを設けた苗植機において、該変速部(47)には複数の駆動ギヤ(43,44)と複数の従動ギヤ(45,46)との何れかに係合して駆動ギヤ(43,44)と従動ギヤ(45,46)との噛み合いを変更させる変速操作具(48)を機体に固定及び回動操作自在に設けると共に、変速操作具(48)の回動操作時に変速操作具(48)が機体から外れるのを防止する外れ防止体(52)を設けたことを特徴とする苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−148645(P2008−148645A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341508(P2006−341508)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】