苗移植機
【課題】苗移植機は、稲の移植作業において、苗床で育苗されたマット苗を、植付杆が苗取出し口を通過するとき、一株分ずつ齧り取って植え付ける構成であるから、一株の苗本数は、送出されたマット苗の幅(苗量)によって左右される。したがって、従来の苗移植機は、圃場に植え付ける苗床の大きさ、及びそれに伴う一株の苗本数が植え付ける度にまちまちで不揃いになる課題があった。
【解決手段】この発明は、上記課題を解決するために、苗移植機において、苗取出し口(2)、又は苗植付装置(4)に、苗植付装置(4)の通過時に、苗の係止に伴って発生する苗取抵抗を検出する抵抗検出器(5)を設け、苗送り装置(3)を、該抵抗検出器(5)の検出値に基づいて、抵抗値が基準値より小なるときには苗送り量を大とする苗送り制御を可能に構成した苗送り装置としている。
【解決手段】この発明は、上記課題を解決するために、苗移植機において、苗取出し口(2)、又は苗植付装置(4)に、苗植付装置(4)の通過時に、苗の係止に伴って発生する苗取抵抗を検出する抵抗検出器(5)を設け、苗送り装置(3)を、該抵抗検出器(5)の検出値に基づいて、抵抗値が基準値より小なるときには苗送り量を大とする苗送り制御を可能に構成した苗送り装置としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗送り装置を制御する苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移植機における苗供給装置は、例えば、特開平5−111308号公開特許公報(特許文献1参照)に開示されているように、ポット式の移植機において、苗送りによる圧力を検出して送り作用を制御する機構、すなわち、苗載台上の移送方向最前列が苗ホルダに強く押し付けられ、その苗のポット部が潰れるのを防止する技術に関するものがある。
【0003】
上記公知技術は、同公報の記載と添付されている図2に示されているように、苗を載せる苗載台と、該苗載台上の苗を所定方向に移送する苗送り手段と、該苗送り手段による苗移送方向の最前列の苗を受け止め保持する苗ホルダとを備え、前記苗送り手段の駆動源としてモータを使用すると共に、前記苗ホルダが苗から受ける圧力を検出する圧力検出手段を設け、該圧力検出手段の検出結果に基づいて制御装置で前記モータを制御する構成となっている。
【0004】
要するに、上記公知技術は、圧力検出手段を利用して苗ポットの潰れない程度の圧力を検出して苗供給装置(苗送り装置)を制御する技術構成となっている。
【特許文献1】特開平5−111308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願前の公知技術として、本件出願人が提示した特許文献1に開示されている技術は、苗送りベルトによって苗取出口側に送られる苗の圧力を検出して、苗送りモータを制御する構成ではあるが、該公知例は、ポット式の苗移植機であるから、植付けにあたっては、常に、一つの苗ポットを一株として植え付ける構成となっており、一株の植付本数が問題となることはない。
【0006】
それに対して、この種の移植機(田植機)は、稲の移植作業(田植作業)において、苗床で育苗されたマット苗を、植付回動する植付杆が苗取出し口を通過するとき、そのマット苗から、一株分ずつ掻き取って植え付ける構成であるから、一株の苗本数は、送出されたマット苗の前後幅(苗量)によって左右される。したがって、従来の苗移植機は、圃場に植え付ける一株分の苗床の大きさ、及びそれに伴う一株の苗本数が植え付ける度にまちまちで不揃いになる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、苗載せ台(1)上に載置されている苗を、前側の苗取出し口(2)の方向に送り出す苗送り装置(3)を設け、前記苗取出し口(2)には、植付軌跡を描きながら回動する苗植付装置(4)が通過する構成で、通過時に係止した苗を、圃場面に植え付ける構成とした苗移植機において、前記苗取出し口(2)又は前記苗植付装置(4)には、苗植付装置(4)の通過時に、苗の係止に伴って発生する苗取抵抗を検出する抵抗検出器(5)を設け、前記苗送り装置(3)は、該抵抗検出器(5)の検出値に基づいて、抵抗値が基準値に比較して小なるときには苗送り量を大とする苗送り制御手段を設けた苗移植機であって、苗植付装置(4)が、苗取出し口(2)を通過するときにマット苗を掻き取るが、そのときに苗取り抵抗が発生することが知られている。そして、この苗取り抵抗は、苗の掻き取り量に比例し、少なければ小さく、取り量が大きければ大きな抵抗が発生することが解っている。
【0008】
したがって、この出願は、上記法則を利用して苗取出し口(2)、又は苗植付装置(4)に設けた抵抗検出器(5)により苗取抵抗を検出し、検出した抵抗値に応じて苗送り装置の送り量を制御するものとしている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明は、上記の如く構成することによって、苗植付装置(4)がマット苗を掻き取るときに発生する苗取抵抗を検出し、その検出値に基づいて苗送り装置(3)を制御して苗の送出し量を調節するから、前記苗植付装置(4)が係止する一株分の苗床の大きさを揃えて一株の苗植付け本数を均等にすることができる特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
図1、及び図2は、走行車両を備える乗用型の4条植田植機(本件出願の「苗移植機」に相当する。以下同じ)8を示すもので、車体9の前後には走行車輪として左右一対の前輪10、及び後輪11が架設されている。車体9の前寄りの上部には操作ボックス12、及びステアリングハンドル13等を有する操縦装置が設置され、また、車体9の後方には昇降可能な苗植付部15が装備されている。また、車体9の後部には施肥装置16が設けられ、肥料タンク17に貯留する肥料を各条の繰出部18で所定量ずつ繰り出し、その繰出した肥料をブロワー19からの圧力風により各条の移送ホース20で苗植付部15に設けた吐出口21から圃場に吐出して施肥する構成となっている。操縦装置の後ろ側には、運転席22が設置され、運転席22の下側に田植機の各部に回転動力を伝達するエンジン23が搭載されている。
【0011】
そして、前記ステアリングハンドル13は、操舵操作によりステアリングポスト内のステアリング軸からステアリングケース内を経て減速回転される出力軸、ピットマンアーム、及び操舵ロット等を介して左右の前輪10を操向させ操舵する構成になっている。
【0012】
そして、苗植付部15は、図面に示すように、車体9の後部に昇降リンク機構25を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ26の伸縮作動により昇降する構成であり、図2に示す実施例では、昇降用油圧シリンダ26の引き側で苗植付部15を上昇させる構成としている。なお、27は植付昇降レバーを示す。
【0013】
そして、苗植付部15には、左右に往復する苗載せ台1、一株分の苗床を掻き取って圃場面に植え込む植込杆28を有する苗植付装置4、苗植付面を滑走しながら整地する左右のサイドフロート29,29と、中央位置のセンターフロート30を備えている。
【0014】
そして、前記エンジン23の回転動力は、エンジン出力プーリ31からベルト32を経由してHST33の入力プーリ34、入力軸35に伝えられ、この入力軸35から油圧ポンプが駆動され、循環する作動油によって駆動される油圧モータの出力軸から変速動力がミッションケース36の入力軸に伝動される構成となっている。
【0015】
そして、操作ボックス12、すなわち、フロントカバーの上部近傍には、前記HST33を変速操作する変速レバー38が配置され、この変速レバー38の前後方向の切換操作で前進と後進との切換が可能であって、走行速度も傾き度合の操作に応じて選択できる構成となっている。そして、運転席22の前方右側には前輪10、及び後輪11のブレーキペダルを設けている。
【0016】
そして、前記ミッションケース36は、前輪10と後輪11とに分配して伝動する四輪駆動に構成すると共に、苗植付部15側とに分配して伝動する構成を採っている。なお、前記施肥装置16は、繰出部18、及びブロワー19を別装備のモータで駆動する形態をとっている。
【0017】
そして、実施例の4条植田植機8は、図2に示すように、各フロート29,29,30の前側に整地ロータ40を軸架して整地する構成としているが、この場合の伝動機構は、後輪11の伝動ケース41から動力取出軸42を介して伝動する構成としている。
【0018】
そして、前記苗載せ台1は、図1に示すように、各植付条の台の下面に2条の苗送りベルト43,43を並列状に配置して苗送り装置3を構成し、その上に載置されたマット苗を、前側の苗取出し口2の方向に送り出す構成となっている。そして、苗取出し口2は、図1、図3、及び図4に示すように、前受板44を切欠いで形成され、前記苗植付装置4が植付軌跡を描きながら突入して通過するときに、マット苗を掻き取って係止し、そのまま圃場面まで回動して植え付ける構成となっているが、そのときに発生する苗取抵抗を、苗取出し口2の近傍位置で検出するために抵抗検出器5を設けた構成としている。
【0019】
実施例の場合、抵抗検出器5は、図3、及び図4に示すように、苗取出し口2の周縁部に取付け、植付杆28の苗取り作動に伴って発生する抵抗値を検出できる構成となっている。そして、抵抗検出器5は、図5に示す実施例の場合には、上面で苗を受けるプレート45を複数のスプリング46で支持し、そのスプリング46の縮み幅で抵抗値を検出する構成になっている。
【0020】
なお、上記抵抗検出器5は、図6に示すように、植付杆28の上部、すなわち、苗植付装置4に取付けて設け、苗取抵抗を検出する構成にすることも可能である。
そして、コントローラは、図示を省略しているが、上記各抵抗検出器5から検出値が入力される構成としており、その入力された抵抗値を、予め登録している基準値と比較しながら演算して制御値を算出する構成となっている。そして、コントローラは、制御信号をアクチュエータに出力し、苗送り装置3を制御する構成としているが、この場合、前記抵抗検出器5の検出値が、基準値に対比して小なるときには、苗送り装置3の苗送り量を大とする側に制御を行う構成になっている。
【0021】
以上のように構成された実施例は、田植作業にあたり、植付軌跡を描きながら植付回動する植付杆28が、マット苗を掻き取るときに発生する苗取抵抗を、既に説明した抵抗検出器5が検出し、図外のコントローラに入力する。すると、コントローラは、その入力値を、予め記憶している基準値と比較しながら演算して制御値を算出し、アクチュエータに制御信号を出力して苗送り装置3を制御する。この場合、苗送り装置3は、検出値が基準値に対比して小なるときには苗送り量が多くなるように送り速度を速くする制御が行われて、苗の送出し量が自動的に調節される。このようにして、本件発明の実施例は、従来からの課題を解消して、係止する一株宛の苗床の大きさが略揃えられ、一株の苗植付本数が均等になる優れた効果がある。
【0022】
なお、苗送り装置3は、苗載せ台1が一方の端に達した位置で行われるから、途中位置で複数回の抵抗値が検出されて、それらの平均値に基づいて苗送り制御が行われることになり、より正確な制御となる。
【0023】
そして、実施例の乗用型の4条植田植機8は、随所に音声認識制御装置を組み込んでおり、苗植付部15への伝動は、停止と伝動とをオペレータの発生によって操作できる構成としている。また、電動マーカーは、その出し入れを音声制御で行うことができる構成にしてオペレータの操作負担を軽減する構成としている。
【0024】
つぎに、植付杆28の清掃装置について、実施例を説明する。
通常、植付杆28は、田植作業を続けると、苗係止爪48の間に泥土や雑草の切れ端等が挟まって堆積し、固まって苗の係止が困難になる場合が多く、清掃が必要である。実施例は、図7、及び図8に示すように、苗載せ台1の前部において、植付杆28の植付軌跡の途中位置の全横幅に渡って清掃ブラシ49を張り渡して設けた構成としている。この場合、清掃ブラシ49は、前後に位置の調節ができるように取り付けている。
【0025】
そして、清掃ブラシ49は、図面に示すように、苗載せ台1の両側壁50に取付ステー51を設けて苗の先端部より高い位置に配置し、苗係止爪48を通過のたびにブラッシングできる形状に構成している。
【0026】
以上のように構成することによって、植付杆28は、一回の植付回動毎に清掃ブラシ49の中を通過してブラッシングされ、苗係止爪48の間に挟まっている雑草の切れ端、泥土等がくしけずるようにしてきれいに取り除かれ、直後の苗の掻き取り、係止を確実に行うことができるものとなっている。
【0027】
つぎに、左右車輪53,53のローリング支持装置について実施例を説明する。
まず、左右一対の車輪53,53は、図9に示すように、車軸54,54、伝動ケース55,55、支持伝動筒56,56を介して前後方向の縦軸57,57に回動自由に支持し、伝動可能に構成している。そして、前記支持伝動筒56,56は、縦軸57,57を介して内側で下向きに設けた作動腕58,58を、一定の関係角度に保持して一体に連結して設けた構成としている。そして、スプリング59は、図面に示すように、前記した左右の作動腕58,58の間に介装して取り付けた構成としている。
【0028】
以上のように、左右車輪53,53は、左右の作動腕58,58の間に設けた一個のスプリング59をサスペンションとして柔軟に作動でき、一方が下がればスプリングを介して他方が上がって、円滑にローリング作動ができる特徴がある。
【0029】
そして、左右一対の車輪53,53は、一個のスプリングをサスペンションとする簡単なローリング支持装置であるから、安価に製作できる利点があり、一方が上がれば、他方が追従して下がり、その逆の関連作動も自由にできるものであって、左右が連動して逆作動し適確なローリング作動ができる優れたものである。
【0030】
つぎに、手押し式摘果回収車について実施例を述べる。
まず、手押し式摘果物回収車60は、図10、及び図11に示すように、手押し車の如き車台に、前部から順番に回転ブラシ61、回転回収コンベヤ62、コンテナ63を設け、摘果して圃場に放置された果物を自動回収する構成としている。そして、手押し式摘果物回収車60は、後部にハンドル64を装備した車体フレーム65に前輪66,66と後輪67,67との四輪を軸架して手押しで前進できる構成としている。そして、前記した各装置は、前輪66,66からチエン68、ギヤ69,70で伝動可能に連結し、走行に伴って前輪66,66からグランドドライブ方式で伝動される構成としている。
【0031】
以上のように構成すると、手押し式摘果物回収車60は、後部のハンドル64を握って押しながら、摘果された果物が散乱している果樹園内を前進すると、各装置がグランドドライブで伝動されて果物を回収することができる。すなわち、手押し式摘果物回収車60は、前進に伴って回転する前輪66,66からチエン68を介して回転ブラシ61が伝動され、矢印の方向に回転して果物を抱き込み、ギヤ69,70によって伝動される回転回収コンベヤ62との共同作用によって順次地上から果物を回収してコンテナ63にまで搬送して供給する。
【0032】
このように、実施例に係る手押し式摘果物回収車60は、きわめて簡易な構成によって低コストで製造できるものでありながら、グランドドライブの構成を採っているから運転コストもほとんどかからず果物の回収ができる特徴がある。更に、実施例は、従来の作業形態に比較して、作業者の疲労が少なく、能率よく果物の回収作業が出来る特徴がある。
【0033】
つぎに、前輪の独立上下動機構について実施例を説明する。
まず、前輪72を軸架した下部ケース73は、図12に示すように、ミッションケース側の車軸74に支持された上部ケース75に下側から上下摺動自由に嵌合して取り付けた構成としている。実施例の場合、下部ケース73の前輪軸76は、前記ミッションケース側の車軸74からベベルギヤ77,78、スプライン軸79、ベベルギヤ80、ホイルギヤ81を介して伝動可能に構成されている。そして、下部ケース73は、図14に示すように、前記スプライン軸79を軸受け支持して一体に上下する構成としており、このスプライン軸79の上部に、図12、及び図13に示すように、上下摺動自由にスプライン嵌合した前記ベベルギヤ78を上部ケース75に軸受・支持して一体に構成している。
【0034】
そして、カップ83は、図13に示すように、上部ケース75の上部に突出しているスプライン軸79の露出端部を覆わせて着脱自由に被覆した構成としている。84はC型止め環である。
【0035】
以上のように、カップ83は、下側に上下動自由に下部ケース73を嵌合した上部ケース75の上側開口部に、着脱自由に取り付けてC型止め環84で抜け止めをして取り付けた構成としているから、ベベルギヤ78を軸受けするラジヤルボールベヤリング85を固定保持することができ、スプライン軸79のグリースアップも簡単にできる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】4条植田植機の平面図
【図2】4条植田植機の側面図
【図3】苗取出し口の側断面図
【図4】苗取出し口の平面図
【図5】苗取出し口の別実施例を示す側断面図
【図6】苗植付装置の側面図
【図7】清掃ブラシを取付けた苗載せ台の平面図
【図8】清掃ブラシを取付けた苗載せ台の側面図
【図9】左右車輪のローリング支持装置
【図10】手押し式摘果物回収車の斜面図
【図11】手押し式摘果物回収車の内部構造を示す斜面図
【図12】前輪支持装置の内部を示す概略図
【図13】前輪支持装置の一部の断面図
【図14】前輪支持装置を分解して示す斜面図
【符号の説明】
【0037】
1 苗載せ台 2 苗取出し口
3 苗送り装置 4 苗植付け装置
5 抵抗検出器。
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗送り装置を制御する苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移植機における苗供給装置は、例えば、特開平5−111308号公開特許公報(特許文献1参照)に開示されているように、ポット式の移植機において、苗送りによる圧力を検出して送り作用を制御する機構、すなわち、苗載台上の移送方向最前列が苗ホルダに強く押し付けられ、その苗のポット部が潰れるのを防止する技術に関するものがある。
【0003】
上記公知技術は、同公報の記載と添付されている図2に示されているように、苗を載せる苗載台と、該苗載台上の苗を所定方向に移送する苗送り手段と、該苗送り手段による苗移送方向の最前列の苗を受け止め保持する苗ホルダとを備え、前記苗送り手段の駆動源としてモータを使用すると共に、前記苗ホルダが苗から受ける圧力を検出する圧力検出手段を設け、該圧力検出手段の検出結果に基づいて制御装置で前記モータを制御する構成となっている。
【0004】
要するに、上記公知技術は、圧力検出手段を利用して苗ポットの潰れない程度の圧力を検出して苗供給装置(苗送り装置)を制御する技術構成となっている。
【特許文献1】特開平5−111308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願前の公知技術として、本件出願人が提示した特許文献1に開示されている技術は、苗送りベルトによって苗取出口側に送られる苗の圧力を検出して、苗送りモータを制御する構成ではあるが、該公知例は、ポット式の苗移植機であるから、植付けにあたっては、常に、一つの苗ポットを一株として植え付ける構成となっており、一株の植付本数が問題となることはない。
【0006】
それに対して、この種の移植機(田植機)は、稲の移植作業(田植作業)において、苗床で育苗されたマット苗を、植付回動する植付杆が苗取出し口を通過するとき、そのマット苗から、一株分ずつ掻き取って植え付ける構成であるから、一株の苗本数は、送出されたマット苗の前後幅(苗量)によって左右される。したがって、従来の苗移植機は、圃場に植え付ける一株分の苗床の大きさ、及びそれに伴う一株の苗本数が植え付ける度にまちまちで不揃いになる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、苗載せ台(1)上に載置されている苗を、前側の苗取出し口(2)の方向に送り出す苗送り装置(3)を設け、前記苗取出し口(2)には、植付軌跡を描きながら回動する苗植付装置(4)が通過する構成で、通過時に係止した苗を、圃場面に植え付ける構成とした苗移植機において、前記苗取出し口(2)又は前記苗植付装置(4)には、苗植付装置(4)の通過時に、苗の係止に伴って発生する苗取抵抗を検出する抵抗検出器(5)を設け、前記苗送り装置(3)は、該抵抗検出器(5)の検出値に基づいて、抵抗値が基準値に比較して小なるときには苗送り量を大とする苗送り制御手段を設けた苗移植機であって、苗植付装置(4)が、苗取出し口(2)を通過するときにマット苗を掻き取るが、そのときに苗取り抵抗が発生することが知られている。そして、この苗取り抵抗は、苗の掻き取り量に比例し、少なければ小さく、取り量が大きければ大きな抵抗が発生することが解っている。
【0008】
したがって、この出願は、上記法則を利用して苗取出し口(2)、又は苗植付装置(4)に設けた抵抗検出器(5)により苗取抵抗を検出し、検出した抵抗値に応じて苗送り装置の送り量を制御するものとしている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明は、上記の如く構成することによって、苗植付装置(4)がマット苗を掻き取るときに発生する苗取抵抗を検出し、その検出値に基づいて苗送り装置(3)を制御して苗の送出し量を調節するから、前記苗植付装置(4)が係止する一株分の苗床の大きさを揃えて一株の苗植付け本数を均等にすることができる特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
図1、及び図2は、走行車両を備える乗用型の4条植田植機(本件出願の「苗移植機」に相当する。以下同じ)8を示すもので、車体9の前後には走行車輪として左右一対の前輪10、及び後輪11が架設されている。車体9の前寄りの上部には操作ボックス12、及びステアリングハンドル13等を有する操縦装置が設置され、また、車体9の後方には昇降可能な苗植付部15が装備されている。また、車体9の後部には施肥装置16が設けられ、肥料タンク17に貯留する肥料を各条の繰出部18で所定量ずつ繰り出し、その繰出した肥料をブロワー19からの圧力風により各条の移送ホース20で苗植付部15に設けた吐出口21から圃場に吐出して施肥する構成となっている。操縦装置の後ろ側には、運転席22が設置され、運転席22の下側に田植機の各部に回転動力を伝達するエンジン23が搭載されている。
【0011】
そして、前記ステアリングハンドル13は、操舵操作によりステアリングポスト内のステアリング軸からステアリングケース内を経て減速回転される出力軸、ピットマンアーム、及び操舵ロット等を介して左右の前輪10を操向させ操舵する構成になっている。
【0012】
そして、苗植付部15は、図面に示すように、車体9の後部に昇降リンク機構25を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ26の伸縮作動により昇降する構成であり、図2に示す実施例では、昇降用油圧シリンダ26の引き側で苗植付部15を上昇させる構成としている。なお、27は植付昇降レバーを示す。
【0013】
そして、苗植付部15には、左右に往復する苗載せ台1、一株分の苗床を掻き取って圃場面に植え込む植込杆28を有する苗植付装置4、苗植付面を滑走しながら整地する左右のサイドフロート29,29と、中央位置のセンターフロート30を備えている。
【0014】
そして、前記エンジン23の回転動力は、エンジン出力プーリ31からベルト32を経由してHST33の入力プーリ34、入力軸35に伝えられ、この入力軸35から油圧ポンプが駆動され、循環する作動油によって駆動される油圧モータの出力軸から変速動力がミッションケース36の入力軸に伝動される構成となっている。
【0015】
そして、操作ボックス12、すなわち、フロントカバーの上部近傍には、前記HST33を変速操作する変速レバー38が配置され、この変速レバー38の前後方向の切換操作で前進と後進との切換が可能であって、走行速度も傾き度合の操作に応じて選択できる構成となっている。そして、運転席22の前方右側には前輪10、及び後輪11のブレーキペダルを設けている。
【0016】
そして、前記ミッションケース36は、前輪10と後輪11とに分配して伝動する四輪駆動に構成すると共に、苗植付部15側とに分配して伝動する構成を採っている。なお、前記施肥装置16は、繰出部18、及びブロワー19を別装備のモータで駆動する形態をとっている。
【0017】
そして、実施例の4条植田植機8は、図2に示すように、各フロート29,29,30の前側に整地ロータ40を軸架して整地する構成としているが、この場合の伝動機構は、後輪11の伝動ケース41から動力取出軸42を介して伝動する構成としている。
【0018】
そして、前記苗載せ台1は、図1に示すように、各植付条の台の下面に2条の苗送りベルト43,43を並列状に配置して苗送り装置3を構成し、その上に載置されたマット苗を、前側の苗取出し口2の方向に送り出す構成となっている。そして、苗取出し口2は、図1、図3、及び図4に示すように、前受板44を切欠いで形成され、前記苗植付装置4が植付軌跡を描きながら突入して通過するときに、マット苗を掻き取って係止し、そのまま圃場面まで回動して植え付ける構成となっているが、そのときに発生する苗取抵抗を、苗取出し口2の近傍位置で検出するために抵抗検出器5を設けた構成としている。
【0019】
実施例の場合、抵抗検出器5は、図3、及び図4に示すように、苗取出し口2の周縁部に取付け、植付杆28の苗取り作動に伴って発生する抵抗値を検出できる構成となっている。そして、抵抗検出器5は、図5に示す実施例の場合には、上面で苗を受けるプレート45を複数のスプリング46で支持し、そのスプリング46の縮み幅で抵抗値を検出する構成になっている。
【0020】
なお、上記抵抗検出器5は、図6に示すように、植付杆28の上部、すなわち、苗植付装置4に取付けて設け、苗取抵抗を検出する構成にすることも可能である。
そして、コントローラは、図示を省略しているが、上記各抵抗検出器5から検出値が入力される構成としており、その入力された抵抗値を、予め登録している基準値と比較しながら演算して制御値を算出する構成となっている。そして、コントローラは、制御信号をアクチュエータに出力し、苗送り装置3を制御する構成としているが、この場合、前記抵抗検出器5の検出値が、基準値に対比して小なるときには、苗送り装置3の苗送り量を大とする側に制御を行う構成になっている。
【0021】
以上のように構成された実施例は、田植作業にあたり、植付軌跡を描きながら植付回動する植付杆28が、マット苗を掻き取るときに発生する苗取抵抗を、既に説明した抵抗検出器5が検出し、図外のコントローラに入力する。すると、コントローラは、その入力値を、予め記憶している基準値と比較しながら演算して制御値を算出し、アクチュエータに制御信号を出力して苗送り装置3を制御する。この場合、苗送り装置3は、検出値が基準値に対比して小なるときには苗送り量が多くなるように送り速度を速くする制御が行われて、苗の送出し量が自動的に調節される。このようにして、本件発明の実施例は、従来からの課題を解消して、係止する一株宛の苗床の大きさが略揃えられ、一株の苗植付本数が均等になる優れた効果がある。
【0022】
なお、苗送り装置3は、苗載せ台1が一方の端に達した位置で行われるから、途中位置で複数回の抵抗値が検出されて、それらの平均値に基づいて苗送り制御が行われることになり、より正確な制御となる。
【0023】
そして、実施例の乗用型の4条植田植機8は、随所に音声認識制御装置を組み込んでおり、苗植付部15への伝動は、停止と伝動とをオペレータの発生によって操作できる構成としている。また、電動マーカーは、その出し入れを音声制御で行うことができる構成にしてオペレータの操作負担を軽減する構成としている。
【0024】
つぎに、植付杆28の清掃装置について、実施例を説明する。
通常、植付杆28は、田植作業を続けると、苗係止爪48の間に泥土や雑草の切れ端等が挟まって堆積し、固まって苗の係止が困難になる場合が多く、清掃が必要である。実施例は、図7、及び図8に示すように、苗載せ台1の前部において、植付杆28の植付軌跡の途中位置の全横幅に渡って清掃ブラシ49を張り渡して設けた構成としている。この場合、清掃ブラシ49は、前後に位置の調節ができるように取り付けている。
【0025】
そして、清掃ブラシ49は、図面に示すように、苗載せ台1の両側壁50に取付ステー51を設けて苗の先端部より高い位置に配置し、苗係止爪48を通過のたびにブラッシングできる形状に構成している。
【0026】
以上のように構成することによって、植付杆28は、一回の植付回動毎に清掃ブラシ49の中を通過してブラッシングされ、苗係止爪48の間に挟まっている雑草の切れ端、泥土等がくしけずるようにしてきれいに取り除かれ、直後の苗の掻き取り、係止を確実に行うことができるものとなっている。
【0027】
つぎに、左右車輪53,53のローリング支持装置について実施例を説明する。
まず、左右一対の車輪53,53は、図9に示すように、車軸54,54、伝動ケース55,55、支持伝動筒56,56を介して前後方向の縦軸57,57に回動自由に支持し、伝動可能に構成している。そして、前記支持伝動筒56,56は、縦軸57,57を介して内側で下向きに設けた作動腕58,58を、一定の関係角度に保持して一体に連結して設けた構成としている。そして、スプリング59は、図面に示すように、前記した左右の作動腕58,58の間に介装して取り付けた構成としている。
【0028】
以上のように、左右車輪53,53は、左右の作動腕58,58の間に設けた一個のスプリング59をサスペンションとして柔軟に作動でき、一方が下がればスプリングを介して他方が上がって、円滑にローリング作動ができる特徴がある。
【0029】
そして、左右一対の車輪53,53は、一個のスプリングをサスペンションとする簡単なローリング支持装置であるから、安価に製作できる利点があり、一方が上がれば、他方が追従して下がり、その逆の関連作動も自由にできるものであって、左右が連動して逆作動し適確なローリング作動ができる優れたものである。
【0030】
つぎに、手押し式摘果回収車について実施例を述べる。
まず、手押し式摘果物回収車60は、図10、及び図11に示すように、手押し車の如き車台に、前部から順番に回転ブラシ61、回転回収コンベヤ62、コンテナ63を設け、摘果して圃場に放置された果物を自動回収する構成としている。そして、手押し式摘果物回収車60は、後部にハンドル64を装備した車体フレーム65に前輪66,66と後輪67,67との四輪を軸架して手押しで前進できる構成としている。そして、前記した各装置は、前輪66,66からチエン68、ギヤ69,70で伝動可能に連結し、走行に伴って前輪66,66からグランドドライブ方式で伝動される構成としている。
【0031】
以上のように構成すると、手押し式摘果物回収車60は、後部のハンドル64を握って押しながら、摘果された果物が散乱している果樹園内を前進すると、各装置がグランドドライブで伝動されて果物を回収することができる。すなわち、手押し式摘果物回収車60は、前進に伴って回転する前輪66,66からチエン68を介して回転ブラシ61が伝動され、矢印の方向に回転して果物を抱き込み、ギヤ69,70によって伝動される回転回収コンベヤ62との共同作用によって順次地上から果物を回収してコンテナ63にまで搬送して供給する。
【0032】
このように、実施例に係る手押し式摘果物回収車60は、きわめて簡易な構成によって低コストで製造できるものでありながら、グランドドライブの構成を採っているから運転コストもほとんどかからず果物の回収ができる特徴がある。更に、実施例は、従来の作業形態に比較して、作業者の疲労が少なく、能率よく果物の回収作業が出来る特徴がある。
【0033】
つぎに、前輪の独立上下動機構について実施例を説明する。
まず、前輪72を軸架した下部ケース73は、図12に示すように、ミッションケース側の車軸74に支持された上部ケース75に下側から上下摺動自由に嵌合して取り付けた構成としている。実施例の場合、下部ケース73の前輪軸76は、前記ミッションケース側の車軸74からベベルギヤ77,78、スプライン軸79、ベベルギヤ80、ホイルギヤ81を介して伝動可能に構成されている。そして、下部ケース73は、図14に示すように、前記スプライン軸79を軸受け支持して一体に上下する構成としており、このスプライン軸79の上部に、図12、及び図13に示すように、上下摺動自由にスプライン嵌合した前記ベベルギヤ78を上部ケース75に軸受・支持して一体に構成している。
【0034】
そして、カップ83は、図13に示すように、上部ケース75の上部に突出しているスプライン軸79の露出端部を覆わせて着脱自由に被覆した構成としている。84はC型止め環である。
【0035】
以上のように、カップ83は、下側に上下動自由に下部ケース73を嵌合した上部ケース75の上側開口部に、着脱自由に取り付けてC型止め環84で抜け止めをして取り付けた構成としているから、ベベルギヤ78を軸受けするラジヤルボールベヤリング85を固定保持することができ、スプライン軸79のグリースアップも簡単にできる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】4条植田植機の平面図
【図2】4条植田植機の側面図
【図3】苗取出し口の側断面図
【図4】苗取出し口の平面図
【図5】苗取出し口の別実施例を示す側断面図
【図6】苗植付装置の側面図
【図7】清掃ブラシを取付けた苗載せ台の平面図
【図8】清掃ブラシを取付けた苗載せ台の側面図
【図9】左右車輪のローリング支持装置
【図10】手押し式摘果物回収車の斜面図
【図11】手押し式摘果物回収車の内部構造を示す斜面図
【図12】前輪支持装置の内部を示す概略図
【図13】前輪支持装置の一部の断面図
【図14】前輪支持装置を分解して示す斜面図
【符号の説明】
【0037】
1 苗載せ台 2 苗取出し口
3 苗送り装置 4 苗植付け装置
5 抵抗検出器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載せ台(1)上に載置されている苗を、前側の苗取出し口(2)の方向に送り出す苗送り装置(3)を設け、前記苗取出し口(2)には、植付軌跡を描きながら回動する苗植付装置(4)が通過する構成で、通過時に係止した苗を、圃場面に植え付ける構成とした苗移植機において、前記苗取出し口(2)又は前記苗植付装置(4)には、苗植付装置(4)の通過時に、苗の係止に伴って発生する苗取抵抗を検出する抵抗検出器(5)を設け、前記苗送り装置(3)は、該抵抗検出器(5)の検出値に基づいて、抵抗値が基準値に比較して小なるときには苗送り量を大とする苗送り制御手段を設けた苗移植機。
【請求項1】
苗載せ台(1)上に載置されている苗を、前側の苗取出し口(2)の方向に送り出す苗送り装置(3)を設け、前記苗取出し口(2)には、植付軌跡を描きながら回動する苗植付装置(4)が通過する構成で、通過時に係止した苗を、圃場面に植え付ける構成とした苗移植機において、前記苗取出し口(2)又は前記苗植付装置(4)には、苗植付装置(4)の通過時に、苗の係止に伴って発生する苗取抵抗を検出する抵抗検出器(5)を設け、前記苗送り装置(3)は、該抵抗検出器(5)の検出値に基づいて、抵抗値が基準値に比較して小なるときには苗送り量を大とする苗送り制御手段を設けた苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−228705(P2008−228705A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77055(P2007−77055)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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