説明

苗移植機

【課題】苗配置作業を堅実かつ容易に行うこと。
【解決手段】苗搬送部は、無端帯状の搬送ベルトの表面部に、多数の苗ホルダー体を搬送ベルトの伸延方向に間隔を開けて取り付けて、搬送ベルトを複数のローラを介して略逆三角形状に掛け廻すことで、上部の苗供給域と一側下部の苗搬送域と他側下部の苗ホルダー戻り域を形成し、苗ホルダー体は、固定側ホルダー形成片と可動側ホルダー形成片とを具備すると共に、同可動側ホルダー形成片は、固定側ホルダー形成片に近接して苗の茎部を挟持する挟持姿勢と、固定側ホルダー形成片から離隔して待機する待機姿勢との間で姿勢変更自在とし、前記苗ホルダー戻り域の終端部近傍に、可動側ホルダー形成片を挟持姿勢から待機姿勢に姿勢を変更する姿勢変更体を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘藷苗等の蔓状苗を圃場に移植する甘藷挿苗機等の苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗移植機としての甘藷挿苗機に、蔓状の甘藷苗の茎部を一対の移植爪で挟持して圃場の畝中に茎部を挿入して甘藷苗を移植するものがある。そして、かかる甘藷挿苗機には甘藷苗を移植爪に渡す苗渡し位置まで搬送する苗搬送部を設けている。
【0003】
すなわち、苗搬送部は、背面視で略逆三角形状に掛け廻した無端帯状の搬送ベルトの表面部に、多数の苗ホルダー体を搬送ベルトの伸延方向に間隔を開けて取り付けて、搬送ベルトを一定幅ずつ間欠的に移動させるように構成している。苗ホルダー体は、固定側ホルダー形成片と可動側ホルダー形成片とを具備し、同可動側ホルダー形成片は、固定側ホルダー形成片に近接して苗を挟持する挟持姿勢と、固定側ホルダー形成片から離隔して待機する待機姿勢との間で姿勢変更自在としている。
【0004】
そして、左側方から右側方へ略水平に一定幅ずつ間欠的に移動する搬送ベルトの上部を苗供給域となすと共に、搬送ベルトの左側上部の近傍位置に姿勢変更体を配置している。かかる姿勢変更体は、搬送ベルトの移動側に下り傾斜状の作用面を有する作用片を具備して、同作用片の作用面に沿って、右側方へ移動される上記苗ホルダー体の可動側ホルダー形成片から突設したピン状の被作用片が摺動することで、同可動側ホルダー形成片が挟持姿勢から待機姿勢に姿勢変更されるようにしている。
【0005】
このようにして、姿勢変更体により可動側ホルダー形成片を待機姿勢に姿勢変更させることで、作業者が待機姿勢の可動側ホルダー形成片と固定側ホルダー形成片との間に蔓状の甘藷苗の茎部を配置すると共に、可動側ホルダー形成片を挟持姿勢となす。そして、甘藷苗を苗ホルダー体により挟持した状態にて右側方さらには移植爪への苗渡し位置まで移動させて、移植爪により甘藷苗を圃場の畝中に移植する。その後、空の苗ホルダー体は苗供給域に復帰されて、姿勢変更体により可動側ホルダー形成片が待機姿勢に姿勢変更される。
【特許文献1】特開2009−82092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記した甘藷挿苗機では、右側方へ移動される苗ホルダー体の可動側ホルダー形成片を挟持姿勢から待機姿勢に姿勢を変更させる姿勢変更体を、搬送ベルトの左側上部の近傍位置に配置しているために、挟持姿勢から待機姿勢に可動側ホルダー形成片が姿勢変更動作される際の衝撃で、搬送ベルトの苗供給域に振動が伝播して、同搬送ベルトの苗供給域が波打つ。そのために、作業者は、振動で波打つ搬送ベルト上の苗ホルダー体に苗を供給・配置することになって、その苗配置作業がし辛いという不具合がある。
【0007】
また、姿勢変更体の作用片が有する作用面に沿って、可動側ホルダー形成片から突設したピン状の被作用片が摺動することで、同可動側ホルダー形成片が挟持姿勢から待機姿勢に姿勢変更されるようにしているために、作用片の姿勢変更作用が搬送ベルトの移送負荷となる上に、前記した可動側ホルダー形成片が姿勢変更動作される際の衝撃発生の要因ともなって、搬送ベルトの波打ち現象を増大させている。その結果、苗配置作業効率が低減している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、蔓状の苗を搬送する苗搬送部と、同苗搬送部により搬送された苗を圃場中に移植する移植部とを備えた苗移植機であって、苗搬送部は、無端帯状の搬送ベルトの表面部に、多数の苗ホルダー体を搬送ベルトの伸延方向に間隔を開けて取り付けて、搬送ベルトを複数のローラを介して略逆三角形状に掛け廻すことで、上部の苗供給域と一側下部の苗搬送域と他側下部の苗ホルダー戻り域を形成し、苗ホルダー体は、固定側ホルダー形成片と可動側ホルダー形成片とを具備すると共に、同可動側ホルダー形成片は、固定側ホルダー形成片に近接して苗の茎部を挟持する挟持姿勢と、固定側ホルダー形成片から離隔して待機する待機姿勢との間で姿勢変更自在とし、前記苗ホルダー戻り域の終端部近傍に、可動側ホルダー形成片を挟持姿勢から待機姿勢に姿勢を変更する姿勢変更体を配置したことを特徴とする苗移植機を提供するものである。
【0009】
また、本発明は以下の構成にも特徴を有する。
(1)姿勢変更体は、可動側ホルダー形成片に設けた被作用片に作用する作用片を具備すること。
(2)被作用片は可動側ホルダー形成片から外側方へ棒状に突設する一方、作用片は転動自在の作用ローラとなして、同作用ローラの周面が被作用片に作用するようにしたこと。
(3)苗搬送部は、回転軸線を平行させて対向状態に配置した一対の上部ローラと、両上部ローラの中央部間の下方に配置した下部ローラに、搬送ベルトを略逆三角形状に掛け廻すことで、上部の苗供給域と一側下部の苗搬送域と他側下部の苗ホルダー戻り域を形成し、苗ホルダー戻り域と苗供給域との間に配置した一側の上部ローラの回転軸線の直下方位置に前記作用ローラの回転軸線を配置すると共に、両回転軸線は平行させて上下に対向させて配置したこと。
【発明の効果】
【0010】
(1)請求項1記載の本発明では、蔓状の苗を搬送する苗搬送部と、同苗搬送部により搬送された苗を圃場中に移植する移植部とを備えた苗移植機であって、苗搬送部は、無端帯状の搬送ベルトの表面部に、多数の苗ホルダー体を搬送ベルトの伸延方向に間隔を開けて取り付けて、搬送ベルトを複数のローラを介して略逆三角形状に掛け廻すことで、上部の苗供給域と一側下部の苗搬送域と他側下部の苗ホルダー戻り域を形成し、苗ホルダー体は、固定側ホルダー形成片と可動側ホルダー形成片とを具備すると共に、同可動側ホルダー形成片は、固定側ホルダー形成片に近接して苗の茎部を挟持する挟持姿勢と、固定側ホルダー形成片から離隔して待機する待機姿勢との間で姿勢変更自在とし、前記苗ホルダー戻り域の終端部近傍に、可動側ホルダー形成片を挟持姿勢から待機姿勢に姿勢を変更する姿勢変更体を配置している。
【0011】
このように、姿勢変更体を苗ホルダー戻り域の終端部近傍に配置しているため、姿勢変更体により挟持姿勢から待機姿勢に可動側ホルダー形成片が姿勢変更動作される際の衝撃は、苗ホルダー戻り域に伝播されることはあっても、同苗ホルダー戻り域と苗供給域とを区分けするローラを介して、同苗供給域には上記衝撃が振動となって伝播されることがない。そのため、搬送ベルトの苗供給域は波打つことがない。その結果、作業者は、振動で波打つことのない苗供給域にある搬送ベルト上の苗ホルダー体に苗を供給・配置することになって、その苗配置作業を堅実かつ容易に行うことができると共に、作業上の疲労も軽減することができる。
【0012】
(2)請求項2記載の本発明では、姿勢変更体は、可動側ホルダー形成片に設けた被作用片に作用する作用片を具備している。
【0013】
このように、苗ホルダー戻り域の終端部近傍に配置した姿勢変更体の作用片が、可動側ホルダー形成片に設けた被作用片に作用して、同可動側ホルダー形成片を挟持姿勢から待機姿勢に堅実に姿勢変更することができる。この際、作用片と被作用片の作用動作や可動側ホルダー形成片の姿勢変更動作は、作業者が苗の供給・配置作業を行う苗供給域の下方である苗ホルダー戻り域においてなされるため、作業者の苗供給・配置作業に支障とならない。また、苗供給域の始端において既に苗ホルダー体の可動側ホルダー形成片は待機姿勢に姿勢変更されているため、作業者が苗供給・配置作業をどの苗ホルダー体から行うかの自由度が増して、苗供給・配置作業性を向上させることができる。
【0014】
(3)請求項3記載の本発明では、被作用片は可動側ホルダー形成片から外側方へ棒状に突設する一方、作用片は転動自在の作用ローラとなして、同作用ローラの周面が被作用片に作用するようにしている。
【0015】
このように、転動自在の作用ローラの周面が被作用片に作用するようにしているため、作用ローラの被作用片への姿勢変更作用が軽快になされて、搬送ベルトの移送負荷が軽減される。そのため、前記した可動側ホルダー形成片が姿勢変更動作される際に衝撃が発生することがなくなって、苗ホルダー戻り域においても搬送ベルトの波打ち現象が減少する。その結果、苗供給・配置作業効率が高くなる。
【0016】
(4)請求項4記載の本発明では、苗搬送部は、回転軸線を平行させて対向状態に配置した一対の上部ローラと、両上部ローラの中央部間の下方に配置した下部ローラに、搬送ベルトを略逆三角形状に掛け廻すことで、上部の苗供給域と一側下部の苗搬送域と他側下部の苗ホルダー戻り域を形成し、苗ホルダー戻り域と苗供給域との間に配置した一側の上部ローラの回転軸線の直下方位置に前記作用ローラの回転軸線を配置すると共に、両回転軸線は平行させて上下に対向させて配置している。
【0017】
このように、苗ホルダー戻り域と苗供給域との間に配置した一側の上部ローラの回転軸線の直下方位置に前記作用ローラの回転軸線を配置すると共に、両回転軸線は平行させて上下に対向させて配置しているため、作用ローラを可及的に一側の上部ローラに掛け廻された苗ホルダー戻り域の終端部に近接させて配置することができる。そのため、作用ローラが被作用片に作用することで可動側ホルダー形成片を待機姿勢に姿勢変更させた際に生じる苗ホルダー戻り域の波打ち現象を堅実に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る苗移植機の側面説明図。
【図2】同苗移植機の平面説明図。
【図3】苗搬送部の断面側面説明図。
【図4】移植部の説明図。
【図5】苗搬送部の一部切欠平面説明図。
【図6】同苗搬送部の背面説明図。
【図7】駆動機構の平面説明図。
【図8】苗ホルダー体の平面説明図。
【図9】苗ホルダー体の背面説明図。
【図10】苗ホルダー体の左側面図。
【図11】移植爪の移植動作説明図。
【図12】挟持体の側面説明図(a)と背面説明図(b)。
【図13】従来の挟持体の側面説明図(a)と背面説明図(b)。
【図14】灌水ポンプと配管の平面説明図。
【図15】灌水機構の平面説明図。
【図16】灌水機構の一部切欠側面説明図。洗浄側面説明図(a)
【図17】挟持体の洗浄側面説明図(a)と洗浄平面説明図(b)と洗浄背面説明図(c)。
【図18】強制挟持作用体の背面説明図。
【図19】スクレーパー体の側面説明図。
【図20】スクレーパー体の平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る苗移植機Aの側面説明図、図2は同苗移植機Aの平面説明図である。図1中、Gは圃場、Uは同圃場Gに形成した畝,Mは同畝Uの表面を被覆するように張設したマルチフィルムである。
【0021】
苗移植機Aは、図1及び図2に示すように、前後方向に伸延する平面視四角形枠状に形成した機体フレーム1の前部にエンジン2を搭載し、同機体フレーム1の後端部に上下縦長に形成したミッションケース3の下部を取り付けて、同ミッションケース3と上記エンジン2とを連動ケース4を介して連動連結している。機体フレーム1の直前方にはブラケット5を介して左右方向に伸延する前輪支持体6をその軸線廻りに揺動自在に取り付け、同前輪支持体6の左右側端部より後下方へ支持アーム7,7を垂設して、各支持アーム7,7の下端部に前輪8,8を転動自在に取り付けている。ミッションケース3の左右側下部には外側方へ伸延する軸ケース9,9の基端部を連動連設し、各軸ケース9,9の先端部に後下方へ伸延する伝動ケース10,10の上端部を各軸ケース9,9の軸線廻りに揺動自在に連動連設して、同伝動ケース10,10の下端部に後輪11,11を連動連結している。上記前輪支持体6と伝動ケース10,10は昇降機構12に連動連結して、機体を昇降自在としている。13は昇降センサ機構であり、同昇降センサ機構13に畝Uの上面を転動しながらセンシングするセンシングローラ13aを設け、同センシングローラ13aのセンシング結果に基づいて昇降機構12により機体を自動的に昇降させて、後述する苗の植え付け(移植)深さを略一定に保つことができるようにしている。
【0022】
そして、図3及び図4にも示すように、ミッションケース3の後部には立体枠状に形成した支持フレーム20を後方へ張り出し状に取り付けている。支持フレーム20は、ミッションケース3の後上部から後方へ伸延させて平面視U字状に形成した上部支持フレーム形成体21と、ミッションケース3の後下部から後方へ伸延させて後方伸延部22aを形成すると共に上方へ立ち上げて立ち上がり部22bを形成し、上端部を上部支持フレーム形成体21の中途部に連結した下部支持フレーム形成体22と、同下部支持フレーム形成体22の立ち上がり部22bに連結した補助フレーム形成体23とを具備している。上部支持フレーム形成体21は後部をハンドル24となしている。図1中、25は機体の昇降操作用レバーと植付クラッチの接続・切断操作用レバーを兼用する昇降兼植付レバー、26は走行変速レバー、27は株間調節ハンドルである。
【0023】
また、図3にも示すように、下部支持フレーム形成体22上には、甘藷苗等の蔓状の苗Nを搬送する苗搬送部30を配設し、同下部支持フレーム形成体22の直後方位置には、図4にも示すように、上記苗搬送部により搬送された苗Nを畝U中に移植する移植部31を配設して、同移植部31の直前方位置でかつ苗搬送部30の下方位置には、下部支持フレーム形成体22の後方伸延部22aを介してフィルム切断部32を配設している。図1及び図2中、33はミッションケース3の左右側方にそれぞれ配設したタンク支持フレーム、Tは各タンク支持フレーム33上に載置した灌水用の水タンクである。図1中、34は鎮圧ローラである。
【0024】
〔苗搬送部30〕
苗搬送部30は、図3,図5及び図6に示すように、無端帯状の搬送ベルト40の表面部上にかつ後端縁部に沿わせて、多数の苗ホルダー体41を搬送ベルト40の伸延方向に間隔を開けて取り付けて、搬送ベルト40を複数のローラを介して正面視ないしは背面視略逆三角形状に掛け廻すことで、上部の苗供給域Xと右側下部の苗搬送域Yと左側下部の苗ホルダー戻り域Zを形成している。
【0025】
すなわち、苗搬送部30は、図3,図5及び図6に示すように、下部支持フレーム形成体22の後方伸延部22aに前後一対の搬送部支持フレーム形成体42を連設している。そして、各搬送部支持フレーム形成体42は上下方向に伸延する上下方向伸延部42aと、同上下方向伸延部42aの上端部の中途部を連設して左右方向に伸延する左右方向伸延部42bとを具備している。前後に対向する左右方向伸延部42b,42bの左側端部と右側端部には、それぞれ前後方向に軸線を向けた左側上部ローラ支軸43と右側上部ローラ支軸44とを架設し、各上部ローラ支軸43,44の前後部にローラ45,45,46,46を前後に対向させて取り付けている。前後に対向する上下方向伸延部42a,42aの下部間には前後方向に軸線を向けた左右一対の下部ローラ47,47を近接させて配置している。このようにして、上記したローラ45〜47間に搬送ベルト40を掛け廻している。
【0026】
図5及び図6中、48は右側上部のローラ46の端面より放射方向に突設した係合ピンであり、同係合ピン48はローラ46の周方向に複数個を等間隔に配置している。49は搬送ベルト40の前後側縁部に形成した係合孔であり、同係合孔49は搬送ベルト40の伸延方向に一定の間隔を開けて形成すると共に、同係合孔49に上記係合ピン48が係合して、ローラ46の回動に連動して搬送ベルト40が移送されるようにしている。50は搬送ベルト40の内周面に突設した前後方向への位置ずれ防止用突条片、51は左側上部ローラ支軸43に取り付けた回転体であり、同回転体51の周端縁部に形成した凹条部に上記位置ずれ防止用突条片50を係合させて、搬送ベルト40の前後方向への位置ずれを防止している。52はガード体、53は苗ホルダー体41に保持されて搬送される苗搬送域Yの苗Nを下方から保護する保護体、54は左側の下部ローラ47よりも左側上方に配置して苗ホルダー戻り域Zの中途部を上方へ凸状に折曲させて案内するガイドローラである。
【0027】
図5及び図6に示すように、搬送ベルト40の上面には、多数の仕切り壁55を係合孔49一つ置きに整合させて配置している。そして、隣接する仕切り壁55,55間に位置する搬送ベルト40の部分を一本分の苗Nの載置部40aとして、各載置部40aの後端縁部に苗ホルダー体41を配設している。
【0028】
また、右側上部ローラ支軸44は、図5及び図6に示すように、ミッションケース3の右側上部から右側方へ突出させた第1駆動軸56に駆動機構57を介して連動連結して、同駆動機構57により右側上部ローラ支軸44を介してローラ46,46を間欠的に同一方向(本実施形態では図6の背面視で時計廻り)にのみ回動させることで、搬送ベルト40を所定のピッチ毎(本実施形態では係合孔49の間隔を一ピッチとして二ピッチ毎)に搬送させるようにしている。
【0029】
(駆動機構57)
駆動機構57は、図5〜図7に示すように、揺動機構部58と回動機構部59とを具備している。
【0030】
揺動機構部58は、図7に示すように、前記第1駆動軸56の後上方位置に揺動レバー体60を上下方向に軸線を向けた揺動支軸61を中心に左右揺動自在に枢支している。揺動レバー体60には左側方に伸延する左側方伸延片60aと後上方へ伸延する後上方伸延片60bを形成している。そして、前記第1駆動軸56の先端部に円板62の中心部を取り付け、同円板62の外側面部に第1連結ピン63aを介して連結リンク63の前端部を枢支連結する一方、同連結リンク63の後端部を左側方伸延片60aの先端部に第2連結ピン63bを介して枢支連結している。
【0031】
回動機構部59は、図5〜図7に示すように、前記右側上部ローラ支軸44の後端部にボス部65を回転自在に嵌合し、同ボス部65の後端面に駆動スプロケット66を同軸的に連設している。そして、ボス部65と右側上部ローラ支軸44の後端部との間にはラチェット機構部67を介設している。また、揺動レバー体60の後上方伸延片60bの後端部には紐状片68の一側端部を連結し、中途部を上記駆動スプロケット66に掛け廻わして、他側端部を前記した搬送部支持フレーム形成体42の後側の左右方向伸延部42bより垂下したブラケット69に連結している。ここで、紐状片68の中途部は駆動スプロケット66の歯部と係合可能なチェン68aで形成して紐状片68の耐久性を向上させている。68bはターンバックル、68c,68dは引張スプリングである。図5及び図7において、70は略逆三角形状に掛け廻わされた搬送ベルト40の内方に配設した灌水機構である。
【0032】
このようにして、第1駆動軸56に連動させて円板62を回動させると、同円板62の周縁部に連結した連結リンク63が前後方向に進退摺動して、揺動レバー体60に形成した左側方伸延片60aの先端部を前後方向に揺動させると共に、後上方伸延片60bの後端部を左右方向に揺動させる。そして、後上方伸延片60bの後端部に連結した紐状片68が左右方向に引張摺動されて、駆動スプロケット66を正・逆回転させる。その結果、右側上部ローラ支軸44はラチェット機構部67を介して間欠的に正回転(図6の背面視で時計廻り)される。
【0033】
(苗ホルダー体41)
苗ホルダー体41は、図8〜図10に示すように、搬送ベルト40の上面後縁部に固定した四角形板状の基板片71と、同基板片71の右側縁部より上方へ立ち上げて形成した固定側ホルダー形成片72と、基板片71の左側縁部に起倒自在に枢支した可動側ホルダー形成片73とを具備している。
【0034】
図8〜図10に示すように、基板片71の前端縁部には載置案内用片71aを立設すると共に、基板片71の左側後端縁部に枢支片71bを立設している。固定側ホルダー形成片72は固定側本片72aと半円筒状に形成したスポンジ等の軟質片72bとから形成して、固定側本片72aの中央下部には係止用括れ部72cを形成している。可動側ホルダー形成片73は側面視略門型に形成した可動側本片73aと半円筒状に形成したスポンジ等の軟質片73b,73bとから形成して、二股状の可動側本体73aの下部を基板片71の載置案内用片71aと枢支片71bに前後方向に軸線を向けた前後枢軸74,74に同軸的に枢支している。そして、可動側本片73aの前端縁上部には前方へ向けて外側方へ伸延する棒状の被作用片73cを突出状に設け、可動側本片73aの後端縁下部には右側方へ向けて伸延する挟持操作レバー73dの基端を連設している。また、可動側本片73aの外側面前部より左側方へ支持片73eを突設し、同支持片73eに前後方向に伸延する係止ピン73fの前端を連設して、同係止ピン73fを片持ち支持させている。係止ピン73fの中途部と上記係止用括れ部72cとの間には引張スプリング75を介設している。
【0035】
このようにして、可動側ホルダー形成片73は、固定側ホルダー形成片72に近接して苗Nの茎部kを挟持する挟持姿勢(Fa)と、固定側ホルダー形成片72から離隔して待機する待機姿勢(Fb)との間で姿勢変更自在としている。
【0036】
そして、図5及び図6に示すように、挟持姿勢(Fa)では、固定側ホルダー形成片72の軟質片72bと可動側ホルダー形成片73の軟質片73b,73bとが左右方向から押圧状態に接触している。この際、係止ピン73fは支点となる前後枢軸74,74の軸線位置よりも上方に位置(支点越え)して、同係止ピン73fに係止した引張スプリング75が可動側ホルダー形成片73を起立させる方向に引っ張り作用して、挟持姿勢(Fa)を保持するようにしている。
【0037】
また、図8〜図10に示すように、待機姿勢(Fb)では、可動側ホルダー形成片73が左側外方へ傾倒されて、固定側ホルダー形成片72の軟質片72bと可動側ホルダー形成片73の軟質片73b,73bとの間が大きく開口されている。この際、係止ピン73fは支点となる前後枢軸74,74の軸線位置よりも下方に位置(支点越え)して、同係止ピン73fに係止した引張スプリング75が可動側ホルダー形成片73を傾倒させる方向に引っ張り作用して、待機姿勢(Fb)を保持するようにしている。
【0038】
そして、挟持操作レバー73dは、図8及び図9に示すように、先端部の上端面73gが固定側ホルダー形成片72の上部に近接する傾斜姿勢を採っている。従って、上端面73g上に苗Nの茎部kを載置すると共に、同上端面73gを下方へ押圧して挟持操作レバー73dを下方へ回動させることで、可動側ホルダー形成片73を起立状態となして、挟持姿勢(Fa)に姿勢変更することができる。ここで、挟持操作レバー73dの先端部の上端面73gは、挟持姿勢(Fa)では右側下方への下り傾斜面となすと共に、待機姿勢(Fb)では右側上方へ上り傾斜面となして、この傾斜面が後側の軟質片73bと前後に重合(オーバーラップ)するようにしている。従って、挟持姿勢(Fa)では上端面73gが苗Nの茎部kを挟持する際に支障とならないようにすると共に、待機姿勢(Fb)では上端面73gと後側の軟質片73bとの間に茎部kが挟まらないようにしている。
【0039】
また、図3〜図6に示すように、搬送ベルト40の苗供給域Xの後方近傍位置には配置目安体76を設けている。すなわち、後側の搬送部支持フレーム形成体42の一部を形成する左右方向伸延部42bの左右側部に支持アーム76a,76aの基端部を取り付け、両支持アーム76a,76a間に左右方向に伸延する棒状の目安ロッド76bを架設している。そして、目安ロッド76bは前後枢軸74,74の軸線位置と略同一の地上高に配置し、かつ、後枢軸74から所定幅だけ離隔した位置に配置している。
【0040】
このようにして、図3及び図4に示すように、苗ホルダー体41に苗Nの茎部kを挟持状態に保持させる際には、茎部kの基端が下向きになるようにして、同基端を目安ロッド76b上に当接させる。そうすることで、苗供給域Xにおいて苗Nの茎部kの基端位置を整然と揃えることができると共に、茎部kの基端の後方突出量を画一化することができる。そして、苗搬送域Yの終端部において茎部kの基端を上向き姿勢となすことができる。その結果、後述する移植部31における移植爪による挟持性と畝U中への挿入性を向上させることができて、移植作業能率を高めることができる。
【0041】
また、図6に示すように、前記苗ホルダー戻り域Zの終端部近傍には、可動側ホルダー形成片73を挟持姿勢(Fa)から待機姿勢(Fb)に姿勢を変更する姿勢変更体77を配置している。
【0042】
(姿勢変更体77)
姿勢変更体77は、図3及び図6に示すように、後側の搬送部支持フレーム形成体42の一部を形成する左右方向伸延部42bの左側端部に作用片支持ブラケット77aを介して作用片77bを取り付けて形成している。作用片支持ブラケット77aは、左右方向伸延部42bの左側端部に上端部を取り付け、中途部を下方へ伸延させると共に前方へ折曲させ、さらに上方へ折曲させて左側面視で略J字状に形成して、上方へ折曲させた先端部77cに前後方向に軸線を向けたローラ支軸77dを介して作用片77bとしての作用ローラを転動自在に取り付けている。そして、作用ローラの上部周面に苗ホルダー戻り域Zを挟持姿勢(Fa)で搬送される苗ホルダー体41の可動側ホルダー形成片73に突設した被作用片73cが摺接(作用)して、可動側ホルダー形成片73が待機姿勢(Fb)に姿勢変更されるようにしている。
【0043】
ここで、前記作用ローラの回転軸線は、図6に示すように、苗ホルダー戻り域Zと苗供給域Xとの間に配置した左側の上部ローラ45の回転軸線の直下方位置に配置すると共に、両回転軸線は平行させて上下に対向させて配置している。
【0044】
このように、姿勢変更体77を苗ホルダー戻り域Zの終端部近傍に配置しているため、姿勢変更体77により挟持姿勢(Fa)から待機姿勢(Fb)に可動側ホルダー形成片73が姿勢変更動作される際の衝撃は、苗ホルダー戻り域Zに伝播されることはあっても、同苗ホルダー戻り域Zと苗供給域Xとを区分けする上部ローラ45を介して、同苗供給域Xには上記衝撃が振動となって伝播されることがない。そのため、搬送ベルト40の苗供給域Xは波打つことがない。その結果、作業者は、振動で波打つことのない苗供給域Xにある搬送ベルト40上の苗ホルダー体41に苗Nを供給・配置することになって、その苗配置作業を堅実かつ容易に行うことができると共に、作業上の疲労も軽減することができる。
【0045】
しかも、苗ホルダー戻り域Zの終端部近傍に配置した姿勢変更体77の作用片77bが、可動側ホルダー形成片73に設けた被作用片73cに作用して、同可動側ホルダー形成片73を挟持姿勢(Fa)から待機姿勢(Fb)に堅実に姿勢変更することができる。この際、作用片77bと被作用片73cの作用動作や可動側ホルダー形成片73の姿勢変更動作は、作業者が苗の供給・配置作業を行う苗供給域の下方である苗ホルダー戻り域Zにおいてなされるため、作業者の苗供給・配置作業に支障とならない。また、苗供給域Xの始端においては既に苗ホルダー体41の可動側ホルダー形成片73は待機姿勢(Fa)に姿勢変更されているため、作業者が苗供給・配置作業をどの苗ホルダー体41から行うかの自由度が増して、苗供給・配置作業性を向上させることができる。
【0046】
さらには、転動自在の作用ローラの周面が被作用片73cに作用するようにしているため、作用ローラの被作用片73cへの姿勢変更作用が軽快になされて、搬送ベルト40の移送負荷が軽減される。そのため、前記した可動側ホルダー形成片73が姿勢変更動作される際に衝撃が発生することがなくなって、苗ホルダー戻り域Zにおいても搬送ベルト40の波打ち現象が減少する。その結果、苗供給・配置作業効率が高くなる。
【0047】
そして、苗ホルダー戻り域Zと苗供給域Xとの間に配置した左側の上部ローラ45の回転軸線の直下方位置に前記作用ローラの回転軸線を配置すると共に、両回転軸線は平行させて上下に対向させて配置しているため、作用ローラを可及的に左側の上部ローラ45に掛け廻された苗ホルダー戻り域Zの終端部に近接させて配置することができる。そのため、作用ローラが被作用片73cに作用することで可動側ホルダー形成片73を待機姿勢(Fb)に姿勢変更させた際に生じる苗ホルダー戻り域Zの波打ち現象を堅実に減少させることができる。
【0048】
〔移植部31〕
移植部31は、図4に示すように、前記補助フレーム形成体23に植付回転軸78を左右方向に軸線を向けて軸支し、ミッションケース3から左側外方へ突出させた第2駆動軸64(図示2参照)に伝動軸ケース79(図1及び図2参照)を介して上記植付回転軸78の左側端部を連動連結している。一方、植付回転軸78の右側端部には植付駆動機構80を介して左右一対の移植爪81,81を連動連結して、図11にも示すように、両移植爪81,81の先端部が円弧状の往路軌跡K1と円弧状の復路軌跡K2とからなる移植軌跡Kを描いて往復作動するように構成している。
【0049】
そして、図4に示すように、往路軌跡K1の始端部側に強制挟持作用体82を配設して、同強制挟持作用体82で左右一対の移植爪81,81の先端部を強制的に挟持作動させるようにしている。この際、左右一対の下部ローラ47,47の直後下方まで搬送された苗ホルダー体41が挟持している苗Nの茎部kを、強制挟持作用体82を介して左右一対の移植爪81,81の先端部が堅実に挟持して、苗ホルダー体41から苗Nを引き取る。そして、往路軌跡K1の終端部である畝U中に苗Nの茎部kを挿入して移植する。その後、左右一対の移植爪81,81の先端部同士は離隔動作して、茎部kの挟持状態を解除すると共に、復路軌跡K2を描いて元の始動位置に復帰する。そして、復路軌跡K2の中途部にスクレーパー体83を配設して、同スクレーパー体83中に左右一対の移植爪81,81の先端部を通過させることで、両移植爪81,81の先端部の内外側面に付着した泥土を掻き落とすようにしている。
【0050】
以下に移植部31の特徴的構成をより具体的に説明する。
【0051】
(移植爪81)
図11に示すように、前記した植付駆動機構80の一部を形成する回転支持アーム80aに左右一対の移植爪81,81の基端部を取り付けると共に、両移植爪81,81の先端部を接触させることで苗Nの茎部kを挟持することも、また,離隔させることで苗を解放することもできるようにしている。
【0052】
そして、移植爪81は、図11に示すように、爪本体84と同爪本体84の先端部に取り付けた挟持体85とから形成している。爪本体84は、直状に伸延する基端側爪形成片84aと、同基端側爪形成片84aの先端から折り返して湾曲状に伸延する先端側爪形成片84bとから形成している。
【0053】
挟持体85は、図12に示すように、先端側爪形成片84bに沿わせて伸延する板状に形成すると共に、挟持体85は、側面部同士で苗Nの茎部kを対面状態にて挟持する後退方向側部85aと、同後退方向側部85aと一体成形して茎部kの先端側の部分k1を側方から被覆する進行方向側部85bとから形成している。
【0054】
ここで、茎部kの先端側の部分k1とは、図12(a)(b)に示すように、後退方向側部85a,85a同士で挟持されている茎部kの部分k2から略直角に屈曲されて畝U中に挿入される茎部kの内、上記部分k2の近傍に位置する部分であって、挿入先端側に位置して畝Uを形成する土から挿入抵抗を受け易い部分である。なお、図13(a)(b)は、従来の挟持体200,200に挟持された苗Nの茎部kを示しており、茎部kの先端側の部分k1は挟持体200,200で被覆されていないために、かかる部分k1は畝Uを形成する土から挿入抵抗を受けて損傷等され易い。
【0055】
そして、進行方向側部85bは、後退方向側部85aとの境界部85cから外側方に向けて伸延させて形成して、進行方向側部85bの保護機能と後退方向側部85aの挟持機能を良好に確保したまま、両者を簡易に一体成形している。しかも、境界部85cは屈曲させて内側面を円弧面となして、境界部85cに位置する茎部kの部分が損傷等されるのを防止している。
【0056】
従って、左右一対の挟持体85,85では、図12(b)に示すように、進行方向側部85b,85bの内側面部同士を進行方向側へ(前方へ向けて)漸次離隔させて形成していることになる。
【0057】
なお、図12(a)中、84cは先端側爪形成片84bの先端部の外側面に形成した挟持作用受け面である。挟持作用受け面84cは先端に向けて先細り状となる傾斜面に形成して、後述する強制挟持作用体82から強制挟持作用を受け易いようにしている。85dは挟持体85の先端部の外側面に形成した刃面である。刃面85dは先端に向けて先細り状となる傾斜面に形成して、畝中に挿入し易くすると共に、後述する強制挟持作用体82から強制挟持作用を受け易いようにしている。
【0058】
このようにして、左右一対の挟持体85,85で苗Nの蔓状の茎部kを挟持した状態にて、移植爪81,81を進行方向側(本実施形態では前方)から後退方向側(本実施形態では後方)下方へ移動させて、畝U中に苗Nの茎部kを挿入して移植する。この際、両挟持体85,85が苗Nの茎部kを挟持する後退方向側部85aと苗Nの茎部kの先端側の部分k1を両側方から被覆する進行方向側部85bとを具備しているため、苗Nを畝U中に移植した際には、両挟持体85の後退方向側部85aに挟持された部分k2から先端側の茎部の部分k1が移植爪81に沿った姿勢を採ると共に、進行方向側部85bの側面部同士に側方から被覆される。そのため、後退方向側部85aに挟持された部分から先端側の茎部kの部分k1は進行方向側部85bにより保護されて、移植時には畝Uを形成する土から進入(挿入)抵抗を受けることがない。その結果、土の抵抗で損傷等されることがない。また、圃場Gに形成した畝Uの表面にマルチフィルムMを張設している場合も同様に、苗Nの茎部kがマルチフィルムMの進入(挿入)抵抗を受けることがないため、損傷等されることがない。
【0059】
また、両挟持体85,85の先端部は先端側爪形成片84bの伸延方向に位置ずれさせて、いずれか一方の挟持体85を他方の挟持体85よりも移植方向に先行させることもできる。
【0060】
このように、一方の挟持体85を先行させることで、移植時に畝U中へ挟持体85を進入(挿入)させる際に、挟持体85が土から受ける抵抗を低減させることができる。そのため、マルチフィルムMが張設されている場合には、同マルチフィルムMを堅実に開孔することができて、苗Nの茎部kがマルチフィルムの進入(挿入)抵抗を受けて損傷等されるのを防止することができる。
【0061】
また、図17に示すように、前記した挟持体85,85の内側面には前記灌水機構70により灌水して、同挟持体85,85の内側面を洗浄することができるようにしている。
【0062】
(灌水機構70)
灌水機構70は、図3,図7及び図14に示すように、ミッションケース3から突設した前記第1駆動軸56にカム機構部86を介して灌水ポンプ87,87を連動させて、同灌水ポンプ87,87が前記水タンクT,Tから水吸入路としての水吸入パイプ88,88を介して吸水すると共に、水供給路としての水供給パイプ89,89及び給水管90,90(図11参照)を介して吐水して、畝U中に灌水することも、また、挟持体85,85の内側面を洗浄することもできるようにしている。
【0063】
そして、カム機構部86は、図15及び図16に示すように、第1駆動軸56にカム面形成体91を取り付け、同カム面形成体91の直後方位置にカムフォロワー形成体92を配置している。
【0064】
カム面形成体91は、図15及び図16に示すように、第1駆動軸56の基部側外周面に支持片93を第1駆動軸56の先端部に取り付けた前記円板62と対面させて取り付け、同円板62と支持片93間に屈曲変形板状のカム面形成片94を架設して、同カム面形成片94を第1駆動軸56と同心的に回動させるようにしている。そして、カム面形成片94の外側面には、回転方向側から順次、土中灌水用カム面94aと休止用カム面94bと挟持体洗浄用カム面94cとを連続的に形成している。
【0065】
カムフォロワー形成体92は、図3,図15及び図16に示すように、上部支持フレーム形成体21に左右方向に軸線を向けた枢支軸95を介して形成体本体96の上部を枢支し、下部側前部に左右方向に軸線を向けた枢支ピン97を介してフォロワーローラ98を転動自在に枢支する一方、下部側後部に作用板99を作用面99aが後方を向くように取り付けている。そして、フォロワーローラ98の周面を前記カム面形成片94の外側面に押圧状態に圧接させるようにしている。
【0066】
また、図14に示すように、灌水ポンプ87,87に設けたシリンダロッド87a,87aの先端間には連動体100を架設状に連設している。連動体100はシリンダロッド87a,87aの先端が当接する連結板101と、同連結板101の前面側に突設した左右一対の枢支片102,102と、両枢支片102,102間に枢支ピン104を介して枢支した転動ローラ103を具備している。そして、転動ローラ103の周面を前記作用板99の作用面99aに当接させている。
【0067】
このようにして、第1駆動軸56が図16に示す回転方向rに回動すると、カム面形成片94も一体的に回転方向rに回動する。そして、カム面形成片94の回動力は、フォロワーローラ98→形成体本体96→作用板99→転動ローラ103→連結板101→シリンダロッド87a,87aに伝達されて、灌水ポンプ87,87を吸水・吐水作動させる。この際、カム面形成片94の外側面には、回転方向側から順次、土中灌水用カム面94aと休止用カム面94bと挟持体洗浄用カム面94cを形成して、灌水ポンプ87,87の吐水圧が土中灌水時と挟持体洗浄時とで二段階(後者は前者よりも吐水圧が高い)に異なるようにしている。
【0068】
すなわち、図16に示すように、土中灌水時には土中灌水用カム面94aにフォロワーローラ98が押圧状態に圧接する一方、挟持体洗浄時には挟持体洗浄用カム面94cにフォロワーローラ98が押圧状態に圧接するようにして、土中灌水時と挟持体洗浄時だけ灌水ポンプ87,87が吐水作動するようにしている。しかも、挟持体洗浄時には土中灌水時よりも比較的高い吐水圧で灌水ポンプ87,87から吐水がなされるようにしている。また、土中灌水用カム面94aと洗浄用カム面94cとの間に休止用カム面94bを形成することで、同休止用カム面94bにフォロワーローラ98が押圧状態に圧接している間は、灌水ポンプ87,87からの吐水が一旦休止状態となるようにしている。ここで、土中灌水時とは、移植爪81の先端部に設けた挟持体85,85が苗Nを挟持した状態で畝U中に挿入し、その後、苗Nの挟持を解除した直後であって、畝Uの土中に灌水する時をいう(図11の移植爪姿勢(Fc)参照)。また、挟持体洗浄時とは、復路軌跡K2の中途部に配設した前記スクレーパー体83中に挟持体85,85を通過させる直前に、同挟持体85,85を洗浄する時をいう(図11の移植爪姿勢(Fd)参照)。
【0069】
このようにして、挟持体85,85の内側面に灌水する場合と、畝U中に移植した苗Nの茎部kの近傍に灌水する場合とで吐水圧を異ならせることができる。すなわち、挟持体85,85の内側面に灌水する場合は吐水圧を比較的高くして、同挟持体85,85の内側面に付着した土を堅実に洗い流すことができるようにする一方、畝U中に移植した苗Nの茎部kに灌水する場合は吐水圧を比較的低くして、畝Uに緩やかに灌水することができるようにして、灌水効率を向上させることができる。
【0070】
給水管90,90は、図17(a)に示すように、基端側爪形成片84aの先端部位置から先端側爪形成片84bの先端部位置まで、これら形成片84a,84bに沿わせて配管している。そして、各吸水管90,90の先端部は水供給路の終端部である吐水口90a,90aとなして、図17(b)(c)に示すように、各吐水口90a,90aを各挟持体85,85の近傍に配置すると共に、各吐水口90a,90aは対向するように指向させている。
【0071】
図17に示すように、一方の吐水口90aから吐水される吐水方向と、他方の吐水口90aから吐水される吐水方向は、立体的に交差させて衝突しないように設定している。また、各挟持体85,85の近傍に配置した各吐水口90a,90aは、図17(c)の挟持体投影面に示すように、移植方向において各挟持体85,85よりも上手側でかつ移植方向と直交する各挟持体85,85の投影断面内に配置している。図17中、Q1,Q2は吐水軌跡、W1,W2は各吐水軌跡Q1,Q2の交差部における断面部であり、相互に干渉していない。
【0072】
このように、各挟持体85,85の近傍に配置した各吐水口90a,90aを、対向する挟持体85,85(特に、後退方向側部85a)の内側面に灌水するように指向させているため、各吐水口90a,90aと対向する挟持体85,85の内側面に付着した土を堅実に洗い落とすことができる。しかも、吐水方向は立体的に交差させて衝突しないように設定しているため、対向する挟持体85,85の内側面に付着した土を立体的に交差させた吐水で堅実に洗い落とすことができる。さらには、各吐水口90a,90aは挟持体85,85の投影断面内に配置しているため、挟持体85,85を移植方向に畝U中に挿入した際には、挟持体85,85で吐水口90a,90aが保護されるため、同吐水口90a,90aの土詰まりや摩耗を防止することができる。
【0073】
(強制挟持作用体82)
前記強制挟持作用体82は、図4に示すように、往路軌跡K1の始端部側に配設すると共に、苗搬送部30に設けた下部ローラ47,47の後下方に配置している。そして、図18に示すように、強制挟持作用体82により左右一対の移植爪81,81の先端部を強制的に挟持方向に作動させることで、下部ローラ47,47の直下方位置(苗搬送域Yの終端部位置)まで搬送された苗ホルダー体41に保持されている苗Nの茎部kを堅実に挟持するようにしている。Lは苗ホルダー体41の苗Nを保持する位置が描く苗保持位置ラインであり、苗搬送域Yにおける苗保持位置ラインLは、苗ホルダー体41に保持された苗Nの基端部が搬送されながら描く苗搬送ラインである。
【0074】
そして、強制挟持作用体82は、図18に示すように、前記下部支持フレーム形成体22の立ち上がり部22bに左側作用部105と右側作用部106とを左右方向に対向させて配置している。左・右側作用部105,106は、立ち上がり部22bに上下方向に伸延させて形成した上下伸延片107,108の上部を取り付け、各上下伸延片107,108の下端部に左右方向に伸延する筒状支持片109,110を取り付けている。各筒状支持片109,110中には左右方向に伸延する支持ロッド111,112を軸線方向に進退摺動自在に挿通し、各支持ロッド111,112の先端部に平面視コ字状のローラ支持片113,114を取り付けている。各ローラ支持片113,114には前後方向に軸線を向けたローラ支軸115,116介して挟持作用ローラ117,118を転動自在に枢支している。119,120は上下伸延片107,108の下端部とローラ支持片113,114の下端部との間に架設したスプリング支持片、121,122は各スプリング支持片119,120の外周面に巻回して、各ローラ支持片113,114を内方へ押圧付勢している押圧スプリングである。
【0075】
ここで、支持ロッド111,112は、図18に示すように、軸線が内側上方へ向けて傾斜状となるように配置し、各支持ロッド111,112の軸線とローラ支軸115,116の軸線とを略直交状態に配置している。そして、転動自在となした左右側の挟持作用ローラ117,118の外周面に、往路軌跡K1に沿って後下方へ移動する移植爪81,81の外側先端部である前記挟持作用受け面84c,84cと刃面85d,85dが摺動しながら強制挟持作用(挟持体を挟持方向に強制的に移動させる作用)を堅実に受けるようにしている。しかも、左側の挟持作用ローラ117は上端部を苗保持位置ラインLよりも上方に配置する一方、苗搬送ライン側である右側の挟持作用ローラ118は上端部を苗保持位置ラインLよりも高低差Hだけ下方に配置している。また、左側の挟持作用ローラ117は、右側の挟持作用ローラ118よりも左右方向の仮想中心線Cから一定幅(本実施形態では微少幅w)だけ外側寄りに配置して、左側の挟持作用ローラ117の上部周面に当接する移植爪81の先端当接位置が、同挟持作用ローラ117の中心を通る仮想線鉛直線Vよりも微少幅wだけ内方に位置するようにしている。
【0076】
また、図18に示すように、苗搬送ライン側に位置する右側作用部106には、苗搬送ラインで搬送される苗Nの茎部kの基端部をガイドする苗ガイド体160を取り付けている。すなわち、右側のローラ支持片114に支持片161を取り付け、同支持片161の上端部123を右側の挟持作用ローラ118の上端よりも上方位置まで伸延させ、同上端部162に線状の苗ガイド片163の基端を取り付けて、同苗ガイド片163の先端を右側方へ略水平に伸延させている。
【0077】
このように、苗Nが搬送されてくる側である苗搬送ライン側に位置する右側の挟持作用ローラ118を、苗Nが回収された側である左側の挟持作用ローラ117よりも高低差Hだけ低位置に配置しているため、搬送されてくる苗Nと右側の挟持作用ローラ118とが衝突等するのを回避することができる。そのため、右側の挟持作用ローラ118との衝突等により苗Nの姿勢が乱されたり、苗Nが脱落したりするのを防止することができる。その結果、移植爪81,81の挟持体85,85が苗Nの茎部kを堅実に挟持することができて移植も好適になされることから、移植効率を向上させることができる。
【0078】
しかも、左側の挟持作用ローラ117の上部周面に当接する移植爪81の先端当接位置が、同挟持作用ローラ117の中心を通る仮想鉛直線Vよりも微少幅wだけ内方に位置するようにしているため、移植爪81の先端が挟持作用ローラ117の周面に当接する当接角度が緩くなって、移植爪81の先端部がローラ周面に沿って摺動しながら移植爪81が円滑に下降移動することで、挟持作用ローラ117から堅実に茎部kを挟持する方向に閉作用を受けるようにすることができる。その結果、移植爪81の先端がローラ周面に衝突するのを回避することができて、移植爪81ないしは挟持作用ローラ117の周面が変形や損傷されるのを防止することができる。
【0079】
さらには、右側作用部106に取り付けた苗ガイド体160が苗Nの茎部kの基端部をガイドするため、曲がり苗等が右側の挟持作用ローラ118の手前に落ち込むという不具合を防止することができる。また、苗ガイド体160は挟持作用ローラ118を支持するローラ支持片113に取り付けているため、挟持作用ローラ118が進退移動した際には苗ガイド体160も一体的に進退移動してガイド機能を良好に確保することができる。
【0080】
(スクレーパー体83)
スクレーパー体83は、図1及び図2に示すように、前記補助フレーム形成体23に取り付けると共に、復路軌跡K2の中途部に配設している。そして、スクレーパー体83は、図19及び図20に示すように、左右一対の固定側スクレーパー片125,126と、両固定側スクレーパー片125,126間の上方に配設した可動側スクレーパー片127と、同可動側スクレーパー片127に作用して姿勢を変更させる姿勢変更機構128とから構成している。
【0081】
左右一対の固定側スクレーパー片125,126は、図19及び図20に示すように、弾性ゴム等により前後長手の四角形板状に形成して、前記強制挟持作用体82の直後下方位置にて左右方向に一定の間隔を開けて内側端面同士を対向状態に配置すると共に、補助フレーム形成体23にブラケット129,130を介して取り付けている。そして、対向する内側端面は付着物掻き落とし面131,132となしている。
【0082】
可動側スクレーパー片127は、図19及び図20に示すように、弾性ゴム等により前後長手の四角形板状に形成して、姿勢変更機構128により固定側スクレーパー片125,126間の直上方位置に進出した使用姿勢(イ)(図20に想像線で示す)と、右側外方へ後退した不使用姿勢(ロ)(図20に実線で示す)との間で進退して姿勢変更可能となしている。そして、左右側端面は付着物掻き落とし面133,134となしている。
【0083】
ここで、図19に想像線で示すように、移植爪81,81の先端部、特に挟持体85,85が復路軌跡K2を描いて下方から上方へ移動する際には、可動側スクレーパー片127は使用姿勢(イ)に姿勢変更されて、移植爪81,81の先端部が固定側と可動側のスクレーパー片間を通過するようにしている。そして、移植爪81,81の先端部の外側面に付着した泥土等の付着物は、固定側スクレーパー片125,126の付着物掻き落とし面131,132で掻き落とされる一方、移植爪81,81の先端部の内側面に付着した泥土等の付着物は、可動側スクレーパー片127の付着物掻き落とし面133,134で掻き落とされるようにしている。
【0084】
姿勢変更機構128は、図19及び図20に示すように、植付駆動機構80に連動連結した作動アーム135と、同作動アーム135の先端部に取り付けた作動ロッド136を介して前後方向に摺動自在に連動させた前後摺動片137と、同前後摺動片137の先端部に連動連結した支持アーム138とを具備している。そして、支持アーム138は基端部を上下方向に軸線を向けた枢軸139に枢支し、先端部140を前方へ伸延させると共に後方へ折り返し状に屈曲させて、同先端部140に可動側スクレーパー片127を取り付けている。141は支持アーム138の基端部から左側方へ突出させて形成して前後摺動片137の先端部と連結する連結片、142は支持アーム138の基端部から右側方へ突出させて形成したスプリング係止片、143は使用姿勢付勢用の引張りスプリング、144は連結ピンである。
【0085】
このようにして、姿勢変更機構128は、可動側スクレーパー片127が使用姿勢(イ)を採るように引張りスプリング143により弾性付勢している。そして、引張りスプリング143の弾性付勢力に抗して前後摺動片137が作動アーム135により前方へ摺動されることで不使用姿勢(ロ)を採るようにしている。
【0086】
〔フィルム切断部32〕
フィルム切断部32は、図1及び図4に示すように、前記移植部31により畝Uに苗Nを移植する直前に、移植箇所となるマルチフィルムMの部分を部分的に切断して開口部145を形成し、同開口部145中を通して畝Uに苗Nを移植するようにしている。
【0087】
すなわち、フィルム切断部32は、下部支持フレーム形成体22の後方伸延部22aに取付ブラケット146を介して切断部本体147を取り付け、同切断部本体147に前記移植爪81,81よりも進行方向側である前方においてマルチフィルムMに向けて円板状の切断体148を進退自在に配設し、同切断体148を作動体150により進退作動させるようにしている。151は外周面に円弧状カム面152と切り欠き状カム面153とを形成した回転カムであり、前記した移植部31の植付回転軸78の中途部に取り付けて、同植付回転軸78と一体的に回転するようにしている。そして、回転する回転カム151の各カム面152,153が作動体150を揺動させて、同作動体150が切断体148を進退作動させるようにしている。
【0088】
切断体148は、周縁部を鋸歯状に形成して進行方向と略直交する軸線を中心にして転動自在とし、かつ、圃場の移植箇所に進出して突入することでマルチフィルムMの抵抗力に抗して進行方向に転動しながら同マルチフィルムMを部分的に切断するようにしている。
【符号の説明】
【0089】
A 苗移植機
30 苗搬送部
31 移植部
32 フィルム切断部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蔓状の苗を搬送する苗搬送部と、同苗搬送部により搬送された苗を圃場中に移植する移植部とを備えた苗移植機であって、
苗搬送部は、無端帯状の搬送ベルトの表面部に、多数の苗ホルダー体を搬送ベルトの伸延方向に間隔を開けて取り付けて、搬送ベルトを複数のローラを介して略逆三角形状に掛け廻すことで、上部の苗供給域と一側下部の苗搬送域と他側下部の苗ホルダー戻り域を形成し、
苗ホルダー体は、固定側ホルダー形成片と可動側ホルダー形成片とを具備すると共に、同可動側ホルダー形成片は、固定側ホルダー形成片に近接して苗の茎部を挟持する挟持姿勢と、固定側ホルダー形成片から離隔して待機する待機姿勢との間で姿勢変更自在とし、
前記苗ホルダー戻り域の終端部近傍に、可動側ホルダー形成片を挟持姿勢から待機姿勢に姿勢を変更する姿勢変更体を配置したことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
姿勢変更体は、可動側ホルダー形成片に設けた被作用片に作用する作用片を具備することを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
被作用片は可動側ホルダー形成片から外側方へ棒状に突設する一方、作用片は転動自在の作用ローラとなして、同作用ローラの周面が被作用片に作用するようにしたことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【請求項4】
苗搬送部は、回転軸線を平行させて対向状態に配置した一対の上部ローラと、両上部ローラの中央部間の下方に配置した下部ローラに、搬送ベルトを略逆三角形状に掛け廻すことで、上部の苗供給域と一側下部の苗搬送域と他側下部の苗ホルダー戻り域を形成し、
苗ホルダー戻り域と苗供給域との間に配置した一側の上部ローラの回転軸線の直下方位置に前記作用ローラの回転軸線を配置すると共に、両回転軸線は平行させて上下に対向させて配置したことを特徴とする請求項3記載の苗移植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−99(P2011−99A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147917(P2009−147917)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】