説明

苗移植機

【課題】植付装置による苗載せ台からの苗取り量の調節が容易であり、また植付装置の植付深さを十分に確保できる苗移植機を提供すること。
【解決手段】走行車両1の駆動力が伝達される伝動機構40からの駆動力を受けて植付駆動ケース171内で回転する植付駆動機構の回転によって苗植付装置3の苗載せ台39の苗マットから苗を複数の植付体176で取って圃場に植え付ける苗植付動作をするとき、伝動機構40を切り替え可能して植付体176の回転軸174周りの回転軌跡を変更する切替装置123の操作により植付体176の苗取り量を増減させるか、又は植付体176の植付深さの深浅を変更する構成とした苗移植機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場に苗を植え付けるための苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の苗移植機において、圃場に植え付ける苗の苗取り量の調節は、苗取り量調節装置を操作して、苗載せ台の上下位置を変更することで植付装置が苗載せ台から掻き取る苗の量を調節することで行っている。
【特許文献1】特開2005−304339号公報
【特許文献1】特開2005−341881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1、2に記載の苗移植機では、苗載せ台には植付装置や摺動機構、苗送り装置等様々な作業部材が装着されており、相当な重量物となるため、苗取り量調節装置の操作に作業者は大きな労力を費やさねばならない問題がある。この問題点は、植付条数が多くなるほど深刻になる傾向にある。
また、特許文献1、2に記載の苗移植機では、苗の植付深さを変更する際、植付装置の深さを調節するフロートの回動アームを上下回動させて、植付装置の植付深さを変更している。
【0004】
しかしながら、植付装置の植付深さを変更する際、特に植付深さを深くするために植付装置を下降させる際、フロートの取付アームがフロートとの接触により設定したい植付深さにまで下降できず、植付深さが浅くなる問題がある。
そこで、本発明の課題は、植付装置による苗載せ台からの苗取り量の調節が容易であり、また植付装置の植付深さを十分に確保できる苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、次の解決手段により解決できる。
請求項1記載の発明は、圃場を走行する走行車両(1)と、該走行車両(1)の後部にリンク機構(2)を介して上下動自在に設けた苗植付装置(3)を設け、苗植付装置(3)には圃場に苗マットを積載する苗載せ台(39)と、該苗載せ台(39)の下部に植付深さを決めるフロート(42,43)と、該フロート(42,43)の上下位置を変更する回動自在な支持アーム(47)と、走行車両(1)の駆動力が伝達される伝動機構(40)を有する伝動ケース(38)と、該伝動ケース(38)内の伝動機構(40)からの駆動力を受けて回転する植付駆動機構(121)を有する植付駆動ケース(171)と、植付駆動ケース(171)内の複数の植付駆動モードの切替ができる植付駆動機構(121)の回転によって、苗載せ台(39)に載置された苗マットから苗を複数の植付体(176)で取って圃場に植え付ける植付装置(41)を設けた苗移植機において、植付駆動機構(121)は、植付駆動モードを切り替えることで植付体(176)の回動支軸である回転軸(174)周りの回転軌跡を変更する切替装置(123)と、該切替装置(123)の操作により、植付体(176)の苗取り量を増減切替をする第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)と第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)、又は切替装置(123)の操作により植付体(176)の植付深さの深浅の切替をする第1植付深さ伝動機構(100c,101c,102c)と第2植付深さ伝動機構(100d,101d,102d)を有する苗移植機である。
【0006】
請求項2記載の発明は、植付駆動ケース(171)の中に並列配置して第1苗取り伝動機構(苗取り量“多”ギヤ)(100a,101a,102a)と第2苗取り伝動機構(苗取量“少”ギヤ)(100b,101b,102b)を配置し、植付体(176)の回転軸(174)を前記第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)及び第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)の一部の駆動軸として配置し、切替装置(123)を操作して第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)又は第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)のどちらか一方を駆動させる構成とする請求項1記載の苗移植機である。
【0007】
請求項3記載の発明は、第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)の第1駆動ギヤ(100a)と第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)の第2駆動ギヤ(100b)を植付駆動ケース(171)に設けた回転軸(170)にそれぞれ遊嵌させて並列配置し、植付駆動ケース(171)の前後両端部に植付体(176)の取付軸(174)を軸着する一対の従動ギヤ(102a,102b)を配置し、第1、第2駆動ギヤ(第1、第2太陽ギヤ)(100a,100b)と前記一対の従動ギヤ(102a,102b)の間に第1、第2駆動ギヤ(100a,100b)からの駆動力をそれぞれ従動ギヤ(102a,102b)に伝達する一対の遊星ギヤ(101a,101b)を並列配置し、切替装置(123)の構成部材である回転軸(170)上を摺動するシフタ(122)により第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)の駆動ギヤ(100a)又は第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)の駆動ギヤ(100b)を駆動させて苗取り量を増減させる構成とする請求項2記載の苗移植機である。
【0008】
請求項4記載の発明は、植付駆動ケース(171)の中に並列配置して第1植付深さ伝動機構(植付深さ“深”伝動ギヤ)(100c,101c,102c)と第2植付深さ伝動機構(植付深さ“浅”伝動ギヤ)(100d,101d,102d)を配置し、植付体(176)の回転軸(174)を前記第1植付深さ伝動機構(100c,101c,102c)及び第2植付深さ伝動機構(100d,101d,102d)の一部の駆動軸として配置し、切替装置(123)を操作して第1植付深さ伝動機構(100c,101c,102c)又は第2植付深さ伝動機構(100d,101d,102d)のどちらか一方を駆動させる構成とする請求項1記載の苗移植機である。
【0009】
請求項5記載の発明は、第1植付深さ伝動機構(100c,101c,102c)と第2植付深さ伝動機構(100d,101d,102d)の第3、第4駆動ギヤ(第3、第4太陽ギヤ)(100c,100d)を植付駆動ケース(171)に設けた回転軸(170)にそれぞれ遊嵌させて並列配置し、植付駆動ケース(171)の前後両端部に植付体(176)の取付軸(174)を軸着する一対の従動ギヤ(102c,102dを配置し、第3、第4駆動ギヤ(100c,100d)と一対の従動ギヤ(102c,102d)の間に第3、第4駆動ギヤ(100c,100d)からの駆動力をそれぞれ従動ギヤ(102c,102d)に伝達する一対の遊星ギヤ(101c,101d)を並列配置し、切替装置(123)の構成部材である回転軸(170)上を摺動するシフタ(122)により第1又は第2植付深さ伝動機構(100c,101c,102c;100d,101d,102d)の駆動ギヤ(100c,100d)を駆動させて植付深さの深浅を切り替える構成とする請求項4記載の苗移植機である。
【0010】
請求項6記載の発明は、植付装置(41)を伝動ケース(38)の左右にそれぞれ配置し、切替装置(123)の端部に左右一対のシフタ(122)を配置し、切替装置(123)は左右の植付駆動ケース(171)に内装する一対の植付駆動機構(121)を同時に切り替え可能に構成する請求項1ないし5のいずれかに記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、植付駆動ケース171内の植付駆動機構121を切り替える切替装置123を設けたことにより植付装置41の回転軌跡を切り替えて、植付体176による苗載せ台39からの苗取り量を増減させることができるので、従来より苗取り量の調節の容易化と調節範囲の拡大化が図られる。
【0012】
また、植付深さの深浅を、植付装置41の回転軌跡を変えて切り替えることができるので、苗載せ台39の下部に設けるフロート42,43とフロート42,43の支持アーム47が干渉して下降しなくなることがなく、植付深さを十分に確保され、植付精度が従来より向上する。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、第1苗取り伝動機構(多)100a,101a,102aと第2苗取り伝動機構(少)100b,101b,102bを切り替えて苗取り量を増減させる構成としたことにより、苗載せ台39を上下動させて苗取り量を調節する必要が無く、作業者の労力が従来より軽減される。
【0014】
また、切替装置123で苗取り量を選択する構成としたことにより、設定された量の苗を確実に取ることができるので、適切な量の苗が圃場に植え付けられるため、従来より苗が強風(台風)や病害虫に強くなり、収穫量の増加が図られる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、第1苗取り伝動機構(多)100a,101a,102aと第2苗取り伝動機構(少)100b,101b,102bの第1、第2駆動ギヤ102a,102bを植付駆動ケース171の出力軸170に遊嵌させて設けたことにより、切替装置123のシフタ122が接触した側の苗取り伝動機構(多)100a,101a,102a又は苗取り伝動機構(少)100b,101b,102bが駆動力を受けるので、他方の伝動機構(少)100b,101b,102b又は苗取り伝動機構(多)100a,101a,102aに駆動力が伝わって植付装置41の動作が狂うことが防止され、設定した量の苗を掻き取って圃場に確実に植え付けることができ、苗の植付精度が向上すると共に、苗が強風(台風)や病害虫に強くなり、収穫量の増加が図られる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、第1植付深さ伝動機構(深)100c,101c,102cと第2植付深さ伝動機構(浅)100d,101d,102dを切り替えて苗の植付深さの深浅を切り替える構成としたことにより、植付体176の植付軌跡だけを変更することができるので、苗の植付深さが十分な深さに設定されるため、苗の植付精度が従来より向上する。
【0017】
また、切替装置123で植付深さの深浅を切り替える構成としたことにより、設定された植付深さで苗を圃場に植え付けることができるので、植付深さが浅過ぎて苗が流されることや、深過ぎて生育不良となることが防止され、苗の生育が安定する。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、第1植付深さ伝動機構(深)100c,101c,102cと第2植付深さ伝動機構(浅)100d,101d,102dの第1、第2駆動ギヤ(第1、第2太陽ギヤ)100c,100dを植付駆動ケース171の回転軸170にそれぞれ遊嵌させたことにより、切替装置123のシフタ122が接触した側の第1植付深さ伝動機構(深)100c,101c,102c又は第2植付深さ伝動機構(浅)100d,101d,102dが駆動力を受けるので、他方の第2植付深さ伝動機構(浅)100d,101d,102d又は第1植付深さ伝動機構(深)100c,101c,102cに駆動力が伝わって植付装置41の動作が狂うことが防止され、設定した植付深さに確実に苗を植え付けることができ、苗の植付精度が向上すると共に、植付深さが浅過ぎて苗が流されることや、深過ぎて生育不良となることが防止され、苗の生育が安定する。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、植付駆動ケース171を伝動ケース38の左右両側に設け、左右一対のシフタ122を設けた切替装置123で左右の植付駆動ケース171に内装する一対の植付駆動機構121を同時に切り替え可能に構成したことにより、一度の操作で左右一対の植付装置41を同時に切り替えることができるので、切替作業の時間が短縮される。
また、左右一対の植付装置41を左右同じ構造とすることができるので、コストダウンが図られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例の施肥装置付き乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の施肥装置付き乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1に示す乗用型田植機の後輪の伝動部の構成を示す側面図である。
【図4】図1に示す乗用型田植機の植付装置部分の一実施例の動力伝動部の断面図である。
【図5】図1に示す乗用型田植機の植付駆動ケース内の植付体の動力伝動部の断面図である。
【図6】図1に示す乗用型田植機の植付駆動ケース内の植付体の苗取り量の多少による軌跡を示す部分断面図である。
【図7】図1に示す乗用型田植機の植付装置部分の他の実施例の動力伝動部の断面図である。
【図8】図1に示す乗用型田植機の植付体の浅植え軌跡と深植え軌跡を示す部分側面図である。
【図9】図1に示す乗用型田植機のセンターフロートをサイドフロートよりも下降させた状態を示す部分正面図である。
【図10】図1に示す乗用型田植機のフロートの構成図(図10(a,b):側面図;図10(c):平面図)である。
【図11】図1に示す乗用型田植機の苗載せ台のガイドの間隔調整機構の説明図(図11(a)ガイド部分の平面図;図11(b)ガイド部分の側面図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明の苗移植機の一実施例である4条植え乗用型田植機について図面に基づき詳細に説明する。
図1の側面図と図2の平面図に示すように、乗用型田植機は走行車両1に昇降用リンク装置2で作業装置の一種である苗植付装置3を装着すると共に施肥装置4を設け、全体で乗用施肥田植機として機能するように構成されている。走行車両1は、駆動輪である左右各一対の前輪6,6及び後輪7,7を有する四輪駆動車両である。
なお、本明細書では田植機の前進方向に向かって左右をそれぞれ左側と右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側という。
【0022】
図1に示すように、メインフレーム10a,10bにミッションケース11とエンジン12が配設されており、該ミッションケース11の後部側面に油圧ポンプ13がケース11と一体に組み付けられ、ミッションケース11の前部上方にステアリングポスト14が突設されている。
【0023】
そして、ステアリングポスト14の上端部にステアリングハンドル16が設けられている。機体の上部には操縦用のフロアとなるステップフロア19が取り付けられ、エンジン12の上方部に操縦席20が設置されている。ステアリングハンドル16の左側には変速操作レバー17が設けられ、操縦席20の右側には畦クラッチレバー18が設けられている。前輪6,6はミッションケース11の側方に向きを変更可能に設けた前輪支持ケース22,22に軸支されている。また、後輪7,7は、左右フレーム37の左右両端部に取り付けた後輪伝動ケース24,24に後輪支持体30を介して軸支されている。左右フレーム37はメインフレーム10a,10bの後端部に支持されている。
【0024】
図1と図2に後輪7への動力伝動機構の一部を示すように、エンジン12の回転動力は、プーリ27、ベルト28及びプーリ29を順次経由して油圧式無段変速装置(HST)31の入力軸32aに伝えられ、HST31の出力軸32bからミッションケース11内に伝えられる。
リヤ出力軸11a,11bの後端部はミッションケース11の後方に突出し、この突出端部に前記後輪伝動ケース24,24に伝動する左右後輪伝動軸35,35が接続されている。そして、この左右後輪伝動軸35,35により各々左右後輪7,7が駆動回転される構成となっている。
【0025】
苗植付装置3は、走行車両1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されている。
走行車両1に基部が回動自在に設けられた一般的なリフトシリンダ36(図1)のピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車両1に設けた油圧ポンプ13(図2)にて昇降バルブ(図示せず)を介してリフトシリンダ36に圧油を供給・排出して、リフトシリンダ36のピストンを伸進・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した苗植付装置3が上下動されるように構成されている。
苗植付装置3は、左右フレーム37を介して昇降用リンク装置2の後部にローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付駆動ケース171と、該植付駆動ケース171に設けられた支持枠体72に支持されて機体左右方向に往復動する苗載せ台39と、植付駆動ケース171の後端部に装着され、苗載せ台39の下端より1株ずつ苗を圃場に植え付ける植付装置41と、植付駆動ケース171の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンター(センサー)フロート42とサイドフロート43等にて構成されている。センターフロート42とサイドフロート43は、圃場を整地すると共に植付体176にて苗が植え付けられる圃場の前方を整地するように設けられている。
【0026】
PTO伝動軸45(図1)は両端にユニバーサルジョイントを有し、ミッションケース11からの動力を苗植付装置3の植付駆動ケース171に伝達するように設けられている。また、仰角センサ51(図1)は、メインフレーム10a,10bに立設した昇降リンク基部フレーム15と昇降用リンク装置2の上下動する昇降用の平行リンク部材2a,2bの間に設けられ、リンク79の動きを検出するポテンショメータであり、手動操作等により苗植付装置3を最上昇位置へ上昇したことを検出できる。
【0027】
センターフロート42の前部に設けられた仰角センサ51は、苗植付装置3の対地高さを検出するものであり、該仰角センサ51の検出値に基づいて、制御装置100により昇降バルブを制御してリフトシリンダ36にて苗植付装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0028】
即ち、センターフロート42の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられたことを仰角センサ51により検出した時には、油圧ポンプ13にてミッションケース11内から汲み出された圧油をリフトシリンダ36に送り込んでピストンを突出させ昇降用リンク装置2を上動させて苗植付装置3を所定位置まで上昇させ、また、センターフロート42の前部が適正範囲以下に下がったことを仰角センサ51により検出した時には、リフトシリンダ36内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植付装置3を所定位置まで下降させる。
【0029】
そして、センターフロート42の前部が適正範囲にあるとき(仰角センサ51の検出値が適正範囲にあり、苗植付装置3が適正な対地高さであるとき)には、リフトシリンダ36内の圧油の出入りを止めて苗植付装置3を一定位置に保持させている。
このように、センターフロート42を苗植付装置3の自動高さ制御のための接地センサとして用いている。
苗植付装置3は4条植の構成で、フレームを兼ねる植付駆動ケース171、苗を載せて左右往復動して苗を一株ずつ各条の苗取出口39a(図2)に供給する苗載せ台39、苗取出口39aに供給された苗を圃場に植え付ける植付装置41等を備えている。
【0030】
図1に示すように、センターフロート42の前方にはロータ70aが配置され、該ロータ70aはサイドフロート43の前方にあるロータ70bより前方に配置されている。ロータ70aは後輪7の伝動ケース24内のギヤから伝動軸25を介して動力が伝達され、ロータ70bは両方のロータ70a,70aの駆動軸(図示せず)からそれぞれ動力が伝達される左右一対のチェーンケース71,71内の一対のチェーン(図示せず)から動力伝達される。
また、ロータ70aは梁部材73に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
【0031】
前記一対のリンク部材76,77は梁部材73に一端部が固着支持された第一リンク部材76と該第一リンク部材76の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材77からなり、該第二リンク部材77の他端部と図示しない補強部材に回動自在に支持された取付片との間に前記スプリング78が接続している。
【0032】
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部は支持枠体72に回動自在に支持されている。第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ70aを上方に上げることができる。詳細は省略するが、ロータ70aを上方に移動させると、ロータ70bも同時に上方に移動する機構になっている。
【0033】
施肥装置4は、肥料タンク67内の肥料を肥料繰出部68によって一定量ずつ下方に繰り出し、その繰り出された肥料をブロア69により施肥ホース62を通して施肥ガイド80まで移送し、該施肥ガイド80の前側に設けた作溝体82によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。
【0034】
また、ペダル86(図2)はメインクラッチと左右後輪ブレーキ装置(図示せず)を共に操作することができ、ステアリングハンドル16の右下側に配置されており、このペダル86を踏み込むとメインクラッチが切れ、続いて左右後輪ブレーキがかかり、機体は停止する。
【0035】
また、機体の前方にはフロントアーム88を突設し、フロントアーム88の先端部からフロントアーム88内にセンターマスコット89を挿脱自在に取り付けて、フロントアーム88とセンターマスコット89を一体化し、センターマスコット89の先端にランプ89aを設けて、フロントアーム88とセンターマスコット89を1本のレバーとする。また、ステップフロア19の前方両サイドにはサイドマーカ44が設けられている。
【0036】
後輪7の伝動ケース24は左右フレーム37の左右両端部に取り付けて、後輪支持体30に軸支されている。
昇降リンク基部フレーム15には後輪強制下降用の油圧シリンダ92の一端が連結されている。前記油圧シリンダ92のピストン92aの先端部は伝動ケース24に係止されている。
後輪伝動ケース24の回動により後輪7の車軸23は後輪伝動ケース24と一体で上下動する。なお後輪伝動ケース24にはミッションケース11から左右後輪伝動軸35を介して動力が伝達される。
【0037】
また、左右の後輪支持体30に後方に向けて取り付けられた弾性ゴム支持アーム93の先端と後輪伝動ケース24の上面との間にスプリング94を設け、該アーム93と後輪伝動ケース24の上方部位との間に弾性ゴム体96を取り付ける。
従って前進高負荷時に後輪7を左右独立して進行方向に回動させる際に生じる駆動反力(図3の矢印A方向に作用)により、後輪伝動ケース24が回動支点軸24aを中心に下方に駆動されて自動的に走行車両1の後部側が上昇する。
【0038】
例えば、登り坂での走行時又は畦際での旋回時など前進高負荷時に後輪7に働く駆動反力(図3の矢印A方向に作用)により後輪伝動ケース24が回動支点軸24aの回りに回動しようとするが、この力が後輪7を路面に押圧する圧力は後輪支持体30に設けた弾性ゴム体96でさらに付勢され、後輪伝動ケース24が下側に回動する。
【0039】
この後輪7を路面に押圧する力を弾性ゴム体96で付勢することで走行車両1の後部が持ち上げられ、これにより走行車両1の前部が浮き上がるのを抑制して、前後輪6,7が確実に路面をとらえることができる。こうして前進高負荷時における田植機の走行性が良くなり、特に湿田時の泥押し防止効果が高い。
また、上記構成は機体重量が大きくても前記駆動反力を弾性ゴム体96が補うので後輪7を十分下動させることができる。
【0040】
また、アーム93の先端と後輪伝動ケース24の上面との間に設けたスプリング94が伝動ケース24の後部上面を弾性的に支持し、該スプリング94の先端には弾性ゴム支持アーム93の先端を貫通するケーブル98が連結している。このスプリング94は後輪7の上下動を伝動ケース24を介して走行車両1側に伝達しやすくしたり(張力小のとき)、あるいは伝達し難くしたりする(張力大のとき)機能がある。
【0041】
弾性ゴム体96は下向きに伝動ケース24を押圧しているが、スプリング94は上向きに伝動ケース24を押圧している。また、ケーブル98でスプリング94を引っ張ると後輪7が下降し難くなる。
上記構成で、本実施例の走行車両1のハンドル16をある一定角度以上旋回方向に切った時に、旋回時の外側後輪7の負荷が小さくても、旋回時の外側後輪7だけ下降するように強制的に動かす制御を行うことができる。
【0042】
従来の構成では、旋回時に外側後輪7の負荷が小さいと、駆動負荷によるだけで外側後輪7を下降させて車高を上げるだけであったため駆動が不安定になりやすかったが、本実施例では小回り旋回を安定的に行うことができる。
【0043】
また、従来の構成では、苗植付時に機体の後部が上下動すると(苗植付時に後輪7が下がると)、センターフロート42の仰角センサ51(図1)の検出値が変化し、苗植付装置3の昇降制御が不安定になったり、該昇降制御の制御感度が不安定になったり、植付姿勢が傾いたりする問題があった。しかし、左右独立懸架方式の機体で後輪7が下方に付勢される力を抑えるスプリング94を設けた前記構成においては、そのスプリング94を図3に示すように油圧シリンダ92の近傍に設けているので、後輪7が通常状態である苗植付状態(植付装置3は下げ)で機体の後部が上昇しにくい。一方、苗植付装置3を上昇させた場合は機体の後部が上昇しやすくなる。
【0044】
なお、変速操作レバー17のグリップ部分には、リフトシリンダ36の作動により苗植付装置3の上昇または下降のいずれかを選択する図示しない切替スイッチと、苗植付装置41の作動・停止を選択する切替スイッチ(図示せず)を設ける構成としてもよい。
上記の構成により、苗植付装置3の上昇または下降を作業者の指で行うことができるようになり、機体の操作性が向上する。
【0045】
また、ステアリングポスト14を中心として変速操作レバー17の反対側に路上走行を選択するための田植機を路上走行させるときの「移動速」、中立位置を選択する「中立」及び苗植付装置3による苗植付作業などの「植付速」のいずれかを選択できる植付操作レバー(副変速操作レバー)26を設けている。
【0046】
またリフトシリンダ36に接触する位置に苗植付装置3の上昇または下降を検出する苗植付装置上下動センサ(図示せず)としての接触センサまたはスイッチを設けている。また図示しないが、植付操作レバー26の操作を検出する植付操作レバーセンサとして該レバー26のポジションを認識可能な接触センサまたはスイッチを植付操作レバー26が接触する位置に設けている。さらに変速操作レバー17が前進位置または後進位置にあることを検出する変速操作レバーセンサ(図示せず)として変速操作レバー17の操作位置を検出する接触センサまたはスイッチを変速操作レバー17が接触する位置に設けている。
【0047】
図4には伝動ケース38と植付駆動ケース171内の分解構造図を示し、図5に植付駆動ケース171内の植付体176の動力伝動部の断面図を示す。
走行車両1のエンジン12の駆動力が伝動ケース38内のチェーン40aなどからなる伝動機構40に伝達され、該伝動機構40からの駆動力を受けて植付駆動ケース171の2つずつ噛合した複数のギヤ100a,101a,102aの組と2つずつ噛合した複数のギヤ100b,101b,102bの組が伝動ケース38を中心として左右一対設けられ、それぞれギヤ100a,101a,102aの組とギヤ100b,101b,102bの組は左右一対の回転軸170、104,174にそれぞれ軸着している。
【0048】
太陽ギヤ100a,100bは植付駆動ケース回転軸170に遊嵌し、遊星ギヤ101a,101bは遊星ギヤ軸104と一体回転し、植付ギヤ102a,102bは植付ケース軸174と一体回転する。これら複数のギヤ100a,101a,102aの組(第1苗取り伝動機構(多))と複数のギヤ100b,101b,102bの組(第2苗取り伝動機構(少))及びそれぞれのギヤの回転軸170,104,174からなる構成を植付駆動機構121と称する。
【0049】
該第1苗取り伝動機構(多)を構成するギヤ100a,101a,102aは植付駆動ケース171の外側方向、即ち植付体176側に寄せて設け、第2苗取り伝動機構(少)を構成するギヤ100b,101b,102bは植付駆動ケース171の内側方向、即ち伝動ケース38側に寄せて設ける。
また、第1苗取り伝動機構(多)のうち、植付駆動ケース回転軸170の回転によって回転する太陽ギヤ100aは、第2苗取り伝動機構(少)の太陽ギヤ100bよりも大径に構成する。
該植付駆動機構121が回転軸170を中心に回転することによって、苗載せ台39に載置された苗マットから苗を植付装置41の複数の植付体176で取って圃場に植え付ける構成である。
【0050】
伝動ケース38の後端部に植付駆動ケース回転軸170が回転自在に支承されており、この回転軸170の左右突出部に植付駆動ケース171の中央部を一体回転するよう固定して取り付け、さらに該植付駆動ケース171の両端部に軸受172,173によって植付ケース軸(取付軸)174を回転自在に支承し、該植付ケース軸174に植付ケース175を固定して取り付けている。植付ケース175には、苗分離爪176aと苗押出体としての苗押出爪176b(図8)からなる植付体176が設けられている。
【0051】
植付駆動ケース171の固定方法について説明すると、植付駆動ケース回転軸170には角軸面が形成されていて、植付駆動ケース171のボス部171aに植付駆動ケース回転軸170の端部を貫通させ、該植付駆動ケース回転軸170の端部を前記ボス部171aにボルト170aにより締結し、植付駆動ケース回転軸170に植付駆動ケース171を固定する。
【0052】
植付駆動ケース171の中央部は植付駆動ケース回転軸170の外周部に嵌合し、植付駆動ケース回転軸170が回転すると、これと一体に植付駆動ケース171も回転するが、植付駆動ケース回転軸170には太陽ギヤ100aが遊嵌し、該太陽ギヤ100aと太陽ギヤ100aに噛合する遊星ギヤ101aと該遊星ギヤ101aに噛合する植付ギヤ102aとからなるギヤの組及び植付駆動ケース回転軸170に太陽ギヤ100bが遊嵌し、該太陽ギヤ100bに噛合する遊星ギヤ101bと該遊星ギヤ101bに噛合する植付ギヤ102bとからなるギヤの組が収納されている。太陽ギヤ100a,100bと遊星ギヤ101a,101bと植付ギヤ102a,102bはそれぞれ並列配置しており、これらのギヤ群が伝動ケース38の左右に一対配置されている。
【0053】
そして後述する機構でシフタ122により太陽ギヤ100a又は太陽ギヤ100bのいずれかに伝動ケース38の伝動機構40からの動力を伝達するかを決定する。前述のとおり、太陽ギヤ100aは太陽ギヤ100bよりも大径に構成しているため、ギヤ100a,101a,102aからなる第1苗取り伝動機構(多)を選択すると植付体176の軌跡が苗載せ台43から多くの苗を掻き取る軌跡(図6の軌跡P1)となるので、苗取り量が多くなり、適切な量の苗を圃場に植え付けることができるため、従来より苗が強風や病害虫への対抗力が強くなり、収穫量の増加を図ることができる。
また、従来のように苗載せ台39を作業者が上下動させて苗取り量を調節する必要がなく作業者の労力が軽減される。
【0054】
なお、ギヤ100b,101b,102bからなる第2苗取り伝動機構(少)を選択すると、植付体176の軌跡が苗載せ台43から少ない量の苗を掻き取る軌跡(図6の軌跡P)となるので、植付体176の苗取り量が少なくなり、一度に圃場に植え付けられる苗の量が少なくなり、苗の消費を抑えることができる。
風害や病害虫の影響を受けにくい圃場であれば、一植え当たりの苗の数を減らしても、稲が成長する際に多く分けつして、多くの米を実らせることができるため、苗の準備に必要な種籾の数が減り、稲作にかかるコストの低減を図ることができる。
【0055】
なお、前記植付駆動ケース171は軸受103(図4)を介して植付駆動ケース回転軸170に支持されており、植付駆動ケース回転軸170と植付駆動ケース171は互いに摺動自在である。
【0056】
前記太陽ギヤ100a,101aは植付駆動ケース回転軸170に遊嵌しているが、遊星ギヤ101a,101bは遊星ギヤ軸104に一体的に取り付けられ、植付ギヤ102a,102bは植付ケース軸174に一体回転するように取り付けられている。
またギヤ100a,101a,102a及びギヤ100b,101b,102bは偏心ギヤになっていて、植付ケース175の移動速度は図6に示す植付ケース175の軌跡の苗取出位置A及び苗植付位置B付近では遅く、両位置A,B間を移動する時は速くなるようにしてある。
【0057】
植付駆動ケース回転軸170が回転すると、植付駆動ケース171が一定方向に回転し、左右一対の太陽ギヤ100a又は100bの回りを遊星ギヤ101a又は101bが公転するとともに、1回公転する間に公転方向とは逆向きに植付ギヤ102a又は102bが1回自転する。これにより、植付ギヤ102a又は102bと一体に設けられている植付ケース175が一定姿勢のまま所定の軌道上を移動する。このとき苗の植付体176の先端は図6に実線で示す軌跡P又はP1で回転する。
【0058】
次に伝動ケース38と植付駆動ケース171を貫通して設けられた植付駆動ケース回転軸170により植付ケース175を経由して植付体176の回転軌跡P、P1又はP、P2のそれぞれ2種類に切り替えて伝達するシフタ122を有する切替装置123について説明する。
【0059】
シフタ122は伝動ケース38と植付駆動ケース171に亘って設けられており、植付駆動ケース回転軸170の外周に設けられ、シフタ122は植付駆動ケース回転軸170上を摺動可能に配置されている。シフタ122は、図示しない手動レバーに連結されたワイヤケーブル124と、前記シフタ122を移動させるシフタアーム122a,122bと、該シフタアーム122a,122bを互いに接近する方向に引っ張るスプリング125からなる切替装置123を操作することによって切り替えられる。
【0060】
作業者が切替装置123の手動レバーを苗取り量(多)側に操作すると、ワイヤケーブル124がスプリング125を引き伸ばして左右のシフタアーム122a,122bを強制的に左右方向に離間させるので、これにより前記シフタ122が植付駆動ケース回転軸170に沿って外側、即ち植付体176側に向かって摺動し、第1苗取り伝動機構(多)の太陽ギヤ100aに勘合して第1苗取り伝動機構(多)を作動させる構成となる。
また、作業者が手動レバーを苗取り量(少)側に操作すると、ワイヤケーブル124によるスプリング125の引き伸ばし状態が解除されて、左右のシフタアーム122a,122bはスプリング125の張力によって左右間隔が狭くなる方向に移動するため、前記シフタ122が植付駆動ケース回転軸170に沿って内側、即ち伝動ケース38側に向かって摺動し、第2苗取り伝動機構(少)の太陽ギヤ100bに勘合して第2苗取り伝動機構(少)を作動させる構成となる。
【0061】
なお、切替装置123は一度の操作で伝動ケース38の左右両側に装着させる苗植付体176,176の苗取り量を同時に切り替えるものであり、少なくとも2条分の苗取り量を同時に切り替えるものとし、四条植用の田植機であれば切替装置123を二つ、六条植用の田植機であれば切替装置123を三つ設けるものとする。ただし、切替用の手動レバーに複数の切替装置123…のワイヤケーブル124…を連結し、一つの切替用の手動レバーの操作で複数条の苗取り量の切り替えを行う構成としてもよい。
【0062】
植付体176の苗取り量を増減させる構成は、シフタ122の操作により植付駆動ケース171の中の太陽ギヤ100a(太陽ギヤ100bより径が大きい)と爪クラッチ式(突起が太陽ギヤ100aまたは太陽ギヤ100bに入り込んで植付駆動ケース回転軸170の回転に連動させる方式であり、噛み合ってない方は遊転している。なお、本構成ではシフタ122は常に太陽ギヤ100aか太陽ギヤ100b(または後述する太陽ギヤ100cか太陽ギヤ100d)のどちらかに常に噛み込んでおり、両方が同時に遊転することはない構成である(基本位置は、苗取り量“少”の太陽ギヤ100b側、植付深さ“浅”の太陽ギヤ100d側となる。)。
【0063】
シフタ122の端部を太陽ギヤ100aに接着させて、太陽ギヤ100aを植付駆動ケース回転軸170と一体回転させると、植付駆動ケース回転軸170の回転をより小径の太陽ギヤ100bでなく、大径の太陽ギヤ100aを経由させて植付体176に伝達するので、植付体176は軌跡P1(図6に示す)を描きながら苗を苗載せ台39から取ることができる。この場合は、太陽ギヤ100bを用いる場合の植付体176の軌跡Pより苗載せ台39からの苗の取り量が多くなる。
【0064】
こうして、伝動ケース38内に伝動機構40を切り替える切替装置123を設けたことにより植付装置41の回転軌跡を切り替えて、植付体176による苗載せ台39からの苗取り量を増減させることができるので、従来より苗取り量の調節の容易化と調節範囲の拡大化が図られる。
【0065】
また、第1苗取り伝動機構(多)100a,101a,102aと第2苗取り伝動機構(少)100b,101b,102bの第1、第2駆動ギヤ(太陽ギア)100a,100bを植付駆動ケース回転軸170に遊嵌させて設けたことにより、切替装置123のシフタ122が接触した側の苗取り伝動機構100a,101a,102a又は苗取り伝動機構100b,101b,102bが駆動力を受けるので、他方の伝動機構100b,101b,102b又は苗取り伝動機構100a,101a,102aに駆動力が伝わって植付装置41の動作が狂うことが防止され、設定した量の苗を掻き取って圃場に確実に植え付けることができ、苗の植付精度が向上すると共に、苗が強風(台風)や病害虫に強くなり、収穫量の増加が図られる。
【0066】
さらに、図7に示すように、図4のギヤ100a,101a,102a、100b,101b,102bをギヤ100c,101c,102c、100d,101d,102dに変更することで、植付体176による深植え又は浅植えが可能となる。例えば、シフタ122により、ギヤ100cを駆動させるようにすると、植付体176は図8に示す深植え軌跡B2の軌道を通るので、ギヤ100dを駆動させる場合の浅植え軌跡B1の軌道を通る場合より深植えができる。
こうして、植付深さの深浅を植付装置41の回転軌跡を変えて切り替えることができるので、苗載せ台39の下部に設けるフロート42,43とフロート42,43のフロート支持アーム47とが干渉して下降しなくなることがなく、植付深さを十分に確保され、植付精度が従来より向上する。
【0067】
第1植付深さ伝動機構100c,101c,102cと第2植付深さ伝動機構100d,101d,102dの第1、第2駆動ギヤ(第1、第2太陽ギヤ)100c,100dを植付駆動ケース171の回転軸170にそれぞれ遊嵌させて並列配置し、植付駆動ケース171の前後両端部に植付体176の取付軸174を軸着する一対の従動ギヤ102c,102dを配置し、第1、第2駆動ギヤ100c,100dと前記一対の従動ギヤ102c,102dの間に第1、第2駆動ギヤ100c,100dからの駆動力をそれぞれ従動ギヤ102c,102dに伝達する一対の遊星ギヤ101c,101dを並列配置し、切替装置123の端部に設けたシフタ122を第1植付深さ伝動機構100c,101c,102c又は第2植付深さ伝動機構100d,101d,102dのいずれかの駆動ギヤ100c,100dに接触させて植付深さの深浅を切り替える構成とした。
【0068】
第1植付深さ伝動機構(深)100c,101c,102cと第2植付深さ伝動機構(浅)100d,101d,102dの第1、第2駆動ギヤ100c,100dと前記一対の従動ギヤ102c,102dの間に第1、第2駆動ギヤ100c,100cからの駆動力をそれぞれ従動ギヤ102c,102dに伝達する一対の遊星ギヤ101c,101dを並列配置し、切替装置123の端部に設けたシフタ122を第1植付深さ伝動機構(100c,101c,102c)又は第2植付深さ伝動機構(100d,101d,102d)の駆動ギヤ100c,100dに接触させて植付深さの深浅を切り替える構成とした。
【0069】
第1植付深さ伝動機構(深)100c,101c,102cと第2植付深さ伝動機構(浅)100d,101d,102dの第1、第2駆動ギヤ100c,100dと前記一対の従動ギヤ102c,102dの間に第1、第2駆動ギヤ100c,100dを植付駆動ケース171の回転軸170に遊嵌させて設けたことにより、切替装置123のシフタ122が接触した側の第1植付深さ伝動機構(深)100c,101c,102c又は第2植付深さ伝動機構(浅)100d,101d,102dが駆動力を受けるので、他方の第2植付深さ伝動機構(浅)100d,101d,102d又は第1植付深さ伝動機構(深)100c,101c,102cに駆動力が伝わって植付装置41の動作が狂うことが防止され、設定した植付深さに確実に苗を植え付けることができ、苗の植付精度が従来より向上すると共に、植付深さが浅過ぎて苗が流されることや、深過ぎて生育不良となることが防止され、苗の生育が安定する。
【0070】
また、植付駆動ケース171を伝動ケース38の左右にそれぞれ配置し、切替装置123の端部に左右一対のシフタ122を配置し、切替装置123は左右の植付駆動ケース171に内装する一対の植付駆動機構121を同時に切り替え可能に構成した。
これにより、一度の操作で左右一対の植付装置41を同時に切り替えることができるので、切替作業の時間が短縮され、また、左右一対の植付装置41を左右同じ構造とすることができるので、コストダウンが図られる。
【0071】
図8及び図9で示すとおり、センターフロート42を左右のサイドフロート43,43よりも低位置に配置し、該センターフロート42で整地した後に苗を植え付ける植付装置41のみ、植付体176の苗分離爪176aを押し出すタイミングを遅くして、サイドフロート43,43側の浅植え軌跡B1よりも苗を深く植え付ける深植え軌跡B2となるように苗押出爪176bの形状を苗分離爪176aを押し出すタイミングと同時に押し出す苗押出爪176bとは変更した構成とすることで、前記の泥押し対応をしてもセンターフロート42による植付深さがの変わらない構成とする。
【0072】
上記構成により、センターフロート42とサイドフロート43,43の圃場面に対する高さを変更する際、土質の堅い圃場であっても植付深さが変わることが防止され、苗が流されたり生育不良を起こしたりすることが防止される。
また、センターフロート42を下降させて泥押し対応する場合だけでなく、サイドフロート43,43を上下位置調節可能にする構成とする場合には、上下位置を変更するサイドフロート43に対応する植付体176を、浅植え軌跡B1と深植え軌跡B2に変更可能なものに置き換えて構成しても良い。
【0073】
サイドフロート43の泥押し対応として、図10(a),図10(b)に示すフロート部分の側面図と図10(c)に示すフロート部分の平面図に示すように、フロート操作レバー130の下端部に左右方向に長い固定ロッド132,132を取り付け、該固定ロッド132,132を受ける受ボス133,133をサイドフロート43,43にそれぞれ設けた構成とし、該フロート操作レバー130を操作して固定ロッド132,132を受ボス133,133にそれぞれ差し込むと、センターフロート42及びサイドフロート43,43が連結され、一体型のフロートとして上下回動させることができるので、圃場の凹凸や機体の傾斜等により、サイドフロート43,43のみが大きく傾き、圃場面の泥土を泥押しして苗を押し倒したりすることが防止できる。
【0074】
苗置き台39の苗取出口39a部分の一部平面図(図11(a))と側面図(図11(b))に示すように、苗取出口39aを挟む位置にある一対の苗ガイド135同士の隙間幅をガイド操作レバー134でワイヤ137の引きと戻し(スプリングなどによる)ができる構成としても良い。
【0075】
現在使用されている固定された苗ガイドでは、圃場の土が砂質の場合は一対の苗ガイドの間に苗が植付体176の爪から外れ易く、外れた苗が圃場に落ちて苗の植付姿勢が悪くなる問題があった。それを防止しようとして苗ガイド135の幅を狭めると、今度は粘土質の土が苗ガイド135にこびりつき、この土が抵抗となって苗が崩れ、この場合も苗の植付姿勢が悪くなる問題が起きることがあった。
そこで、図11に示すように、一対のガイド135の基部を結ぶワイヤ137をガイド操作レバー134に接続する。このとき全ての一対のガイド135同士を1本のワイヤ137で接続することで全植付条にわたり、一対の苗ガイド同士の間の隙間幅を調節することができる。この場合は苗の床土の種類によって一対の苗ガイド135の幅を調節できるので、苗の適応性を増やす。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、乗用型田植機などの作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 走行車両 2 昇降用リンク装置
2a,2b 平行リンク部材 3 苗植付装置
4 施肥装置 6 前輪
7 後輪 10a,10b メインフレーム
11 ミッションケース 11a,11b リヤ出力軸
12 エンジン 13 油圧ポンプ
14 ステアリングポスト 15 昇降リンク基部フレーム
16 ステアリングハンドル 17 変速操作レバー
18 畦クラッチレバー 19 ステップフロア
20 操縦席 22 前輪支持ケース
23 後輪車軸 24 後輪伝動ケース
24a 回動支点軸 25 伝動軸
26 植付操作レバー 27 プーリ
28 ベルト 29 プーリ
30 後輪支持体
31 油圧式無段変速装置(HST)
32a 入力軸 32b 出力軸
35 左右後輪伝動軸 36 リフトシリンダ
37 左右フレーム 38 伝動ケース
39 苗載せ台 39a 苗取出口
40a チェーン 40 伝動機構
41 植付装置 42 センターフロート
43 サイドフロート 44 サイドマーカ
45 PTO伝動軸 47 フロート支持アーム
51 仰角センサ 62 施肥ホース
67 肥料タンク 68 肥料繰出部
69 ブロア 70a,70b ロータ
71 チェーンケース 72 支持枠体
73 梁部材 76 第一リンク部材
77 第二リンク部材 78 スプリング
79 リンク 80 施肥ガイド
81 ロータ上下位置調節レバー
82 作溝体 86 ペダル
88 フロントアーム 89 センターマスコット
89a マスコットランプ 92 油圧シリンダ
92a ピストン 93 弾性ゴム支持アーム
94 スプリング 96 弾性ゴム体
98 ケーブル
100a,101a,102a 第1苗取り伝動機構(多)
100b,101b,102b 第2苗取り伝動機構(少)
100c,101c,102c 第1植付深さ伝動機構(深)
100d,101d,102d 第2植付深さ伝動機構(浅)
101a,101b 遊星ギヤ
101c,101c 遊星ギヤ
102a,102b 植付ギヤ
102c,102d 植付ギヤ
103 軸受 104 遊星ギヤ軸
121 植付駆動機構 122 シフタ
123 切替装置 124 ワイヤケーブル
125 スプリング 130 フロート操作レバー
132 ロッド 133 受ボス
134 ガイド操作レバー 135 苗ガイド
137 ワイヤ 170 植付駆動ケース回転軸
170a ボルト 171 植付駆動ケース
172,173 軸受
174 植付ケース軸(取付軸)
175 植付ケース 176 植付体
176a 苗分離爪 176b 苗押出爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行車両(1)と、該走行車両(1)の後部にリンク機構(2)を介して上下動自在に設けた苗植付装置(3)を設け、
苗植付装置(3)には圃場に苗マットを積載する苗載せ台(39)と、
該苗載せ台(39)の下部に植付深さを決めるフロート(42,43)と、
該フロート(42,43)の上下位置を変更する回動自在な支持アーム(47)と、
走行車両(1)の駆動力が伝達される伝動機構(40)を有する伝動ケース(38)と、
該伝動ケース(38)内の伝動機構(40)からの駆動力を受けて回転する植付駆動機構(121)を有する植付駆動ケース(171)と、
植付駆動ケース(171)内の複数の植付駆動モードの切替ができる植付駆動機構(121)の回転によって、苗載せ台(39)に載置された苗マットから苗を複数の植付体(176)で取って圃場に植え付ける植付装置(41)
を設けた苗移植機において、
植付駆動機構(121)は、植付駆動モードを切り替えることで植付体(176)の回動支軸である回転軸(174)周りの回転軌跡を変更する切替装置(123)と、
該切替装置(123)の操作により、植付体(176)の苗取り量を増減切替をする第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)と第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)、又は切替装置(123)の操作により植付体(176)の植付深さの深浅の切替をする第1植付深さ伝動機構(100c,101c,102c)と第2植付深さ伝動機構(100d,101d,102d)
を有することを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
植付駆動ケース(171)の中に並列配置して第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)と第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)を配置し、
植付体(176)の回転軸(174)を前記第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)及び第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)の一部の駆動軸として配置し、
切替装置(123)を操作して第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)又は第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)のどちらか一方を駆動させる構成とした
ことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)の第1駆動ギヤ(100a)と第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)の第2駆動ギヤ(100b)を植付駆動ケース(171)に設けた回転軸(170)にそれぞれ遊嵌させて並列配置し、
植付駆動ケース(171)の前後両端部に植付体(176)の取付軸(174)を軸着する一対の従動ギヤ(102a,102b)を配置し、
第1、第2駆動ギヤ(100a,100b)と前記一対の従動ギヤ(102a,102b)の間に第1、第2駆動ギヤ(100a,100b)からの駆動力をそれぞれ従動ギヤ(102a,102b)に伝達する一対の遊星ギヤ(101a,101b)を並列配置し、
切替装置(123)の構成部材である回転軸(170)上を摺動するシフタ(122)により第1苗取り伝動機構(100a,101a,102a)の駆動ギヤ(100a)又は第2苗取り伝動機構(100b,101b,102b)の駆動ギヤ(100b)を駆動させて苗取り量を増減させる構成とした
ことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【請求項4】
植付駆動ケース(171)の中に並列配置して第1植付深さ伝動機構(100c,101c,102c)と第2植付深さ伝動機構(100d,101d,102d)を配置し、
植付体(176)の回転軸(174)を前記第1植付深さ伝動機構(100c,101c,102c)及び第2植付深さ伝動機構(100d,101d,102d)の一部の駆動軸として配置し、
切替装置(123)を操作して第1植付深さ伝動機構(100c,101c,102c)又は第2植付深さ伝動機構(100d,101d,102d)のどちらか一方を駆動させる構成とした
ことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項5】
第1植付深さ伝動機構(100c,101c,102c)と第2植付深さ伝動機構(100d,101d,102d)の第3、第4駆動ギヤ(100c,100d)を植付駆動ケース(171)に設けた回転軸(170)にそれぞれ遊嵌させて並列配置し、
植付駆動ケース(171)の前後両端部に植付体(176)の取付軸(174)を軸着する一対の従動ギヤ(102c,102dを配置し、
第3、第4駆動ギヤ(100c,100d)と一対の従動ギヤ(102c,102d)の間に第3、第4駆動ギヤ(100c,100d)からの駆動力をそれぞれ従動ギヤ(102c,102d)に伝達する一対の遊星ギヤ(101c,101d)を並列配置し、
切替装置(123)の構成部材である回転軸(170)上を摺動するシフタ(122)により第1又は第2植付深さ伝動機構(100c,101c,102c;100d,101d,102d)の駆動ギヤ(100c,100d)を駆動させて植付深さの深浅を切り替える構成とした
ことを特徴とする請求項4記載の苗移植機。
【請求項6】
植付装置(41)を伝動ケース(38)の左右にそれぞれ配置し、
切替装置(123)の端部に左右一対のシフタ(122)を配置し、
切替装置(123)は左右の植付駆動ケース(171)に内装する一対の植付駆動機構(121)を同時に切り替え可能に構成とした
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−152153(P2012−152153A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14883(P2011−14883)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】