説明

苗移植機

【課題】
苗移植機の苗載せ台に供給する苗を複数積載する補助苗載装置について、補助苗載装置の形態を変更可能に構成し、苗を補助苗載装置に積み込み易くする。
【解決手段】
複数段の補助苗載台を設け、補助苗載台4を構成する最上段の苗載台4Aと下側の苗載台4Bをリンク機構Lで連結し、リンク機構Lを操作すると最上段の苗載台4Aが移動する構成とし、最苗載台4Aと苗載台4Bが前後方向に並ぶ展開状態Bと、苗載台4Aと苗載台4Bが上下方向に並ぶ積載状態Aに切替可能に構成した補助苗載装置4を設けた苗移植機において、前後の連繋部材5,6の基部側と苗支持枠41を連結する前後の連結支持体61,62よりも下端側に、前後の連繋部材5,6よりも短い延長連結部50,60を形成し、延長連結部50,60の下端部と下段の苗載台4Bを下部連結支持体63,64で連結する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
苗移植機の苗載せ台に供給する苗を複数積載する補助苗載装置について、補助苗載装置の形態を変更可能に構成し、苗を補助苗載装置に積み込み易くするものである。
【背景技術】
【0002】
上段の補助苗載台を下段の補助苗載台に対して前側へ移動させて、前後に一連に接続させて、苗を前端側から後端側へ移動案内する補助苗載装置の技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−232809号公報(第3頁、図3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リンク機構を介して複数段の補助苗載台を前後方向へ起伏回動させて、各段の補助苗載台に対して、前側から苗を積込んだり、この苗を後側から取り出すような場合に、この補助苗載台がリンク機構によって前側へ大きく引き出された状態で板状形態の重い苗を搭載すると、苗移植機車体が傾斜する等して苗支持枠の支持形態が不安定になりやすく、リンク機構による段積み形態の苗を積込、取出しするときの作業操作に長時間を要し易く、作業能率が低下する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、操縦操作部(1)の側部の側部搭乗部(2)の外側部に、支柱(3)によって支持される苗支持枠(41)に複数段の補助苗載台を設け、該補助苗載台を構成する最上段の苗載台(4A)と下側の苗載台(4B)を前後の連繋部材(5,6)で構成するリンク機構(L)で連結し、該リンク機構(L)を操作すると前記最上段の苗載台(4A)が前後方向に平行移動する構成とし、前記最上段の苗載台(4A)と下段の苗載台(4B)が前後方向に並ぶ展開状態(B)と、最上段の苗載台(4A)と下段の苗載台(4B)が上下方向に並ぶ積載状態(A)に切替可能に構成した補助苗載装置(4)を設けた苗移植機において、前記前後の連繋部材(5,6)の基部側と苗支持枠(41)を連結する前後の連結支持体(61,62)よりも下端側に、前後の連繋部材(5,6)よりも短い延長連結部(50,60)を形成し、該延長連結部(50,60)の下端部と前記下段の苗載台(4B)を下部連結支持体(63,64)で連結する構成とし、補助苗載装置(4)を展開状態に切り替えても下段の苗載台(4B)の前後位置が移動しない構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記前側の連繋部材(5)の前側連結支持体(61)を、後側の連繋部材(6)の後側連結支持体(62)よりも低位置(H1)に設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記前側の連繋部材(5)及び後側の連繋部材(6)を下段の苗載台(4B)と連結する下部連結支持体(63,64)と、上段の苗載台(4A)と連結する上部連結支持体(65,66)の配置間隔を前後方向でずれる位相として前記リンク機構(L)を台形状の支持形態で構成し、積載姿勢(A)の上段の苗載台(4A)を移動させて展開姿勢(B)に変更した際、下段の苗載台(4B)が後下りの傾斜姿勢で上端の苗載台(4A)に隣接する構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機とした。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記後側の連繋部材(6)に、機体前側に向かう湾曲部を形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機とした。
請求項5に記載の発明は、前記下段の苗載台(4B)を苗支持枠(41)を中心として前後方向に移動自在に取り付け、前記上段の苗載台(4A)を前側へ引き出す操作をすると下段の苗載台(4B)を係合して前側へ連出移動する構成としたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、前後の連携部材(5,6)の連結支持体(61,62)を連携部材(5,6)の下端部よりも上側に設け、前側の連繋部材(5)の下端部に形成する前側の延長連結部(50)を後側の連繋部材(6)の下端部に形成する後側の連結延長部(60)よりも下方に位置させて設けたことにより、補助苗載装置(4)を展開状態(B)に切り替えると上段の苗載台(4A)が機体前側に移動するため、補助苗載装置(4)を機体前側に突出させることができるので、圃場端に用水路等があっても苗の積込作業者は補助苗載装置(4)に近付くことができ、苗の積込作業の能率が向上する。
【0010】
また、展開状態(B)に切り替えると下段の苗載台(D)は機体後側に移動するため、展開状態(B)の補助苗載装置(4)の重心位置が機体前側に偏り過ぎることを防止できるので、補助苗載装置(4)を展開状態(B)としても機体の走行姿勢が乱れたり、機体が揺れたりすることが防止され、苗の植付精度が向上すると共に、作業者が不快感を覚えることがなく、労力が軽減される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、前側の連繋部材(5)の前側連結支持体(61)を後側の連繋部材(6)の後側連結支持体(62)よりも低位置(H1)に設けたことにより、後側の連繋部材(6)の上下の連結支持体(64,66)の直線距離を前側の連繋部材(5)の上下の連結支持体(63,65)の直線距離よりも長く構成したことにより、リンク機構(L)が台形リンクとなるため、補助苗載装置(4)を展開状態(B)に切り替えると後側に位置する予補助苗載装置(4)が後下がり傾斜姿勢となるため、積み込んだ苗を確実に補助苗載装置(4)の後端部まで移動させることができるので、作業能率が向上する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、前後の連繋部材(5,6)の下側の苗載台(4B)の連結支持体(61,62)を、上側の苗載台(4A)の前後の上段連結支持体(65,66)と前後の連繋部材(5,6)の連結支持体(5,6)が上下方向の直線上に並ばない移送に配置したことにより、補助苗載装置(4)を展開状態(B)に切り替えても下段の苗載台(4B)の上下位置が変化しない構成とすることができるので、展開状態(B)で前側に位置する苗載台(4A)と後側に位置する苗載台(4B)の上下位置がずれにくくなり、苗の積み込みが容易となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、後側の連結支持体(6)に機体前側に向かう湾曲部を形成したことにより、作業者が補助苗載装置(4)から苗を取り出して植付部(19)に移動させる際、後側の連結支持体(6)が作業者の手や腕に接触することがなく、植付部への苗の補充が能率的に行なえる。
【0014】
また、補助苗載装置(4)を展開状態(B)としたときに、湾曲部を前側の連繋部材(5)の連結支持体(61)に接触させることができるので、後側の連繋部材(6)の回動を規制する規制部材が不要となり、部品点数が削減される。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、最上段の苗載台(4A)が下段の苗載台(4B)の上方に位置する積載状態(A)であるときは、下段の苗載台(4B)が後退した位置に移動しているので、下段の苗載台(4B)に積載されて苗を後側へ取り出す際、この苗を取り出す力が軽減され、作業者の労力が軽減される。
【0016】
また、最上段の苗載台(4A)を前側へ引き出して展開状態(B)としたときは、下段の苗載台(4B)が機体前側へ移動されるため、この苗載台(4A)から苗載台(4B)への苗の移動操作が行い易くなり、作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】苗移植機の側面図
【図2】苗移植機の平面図
【図3】(a)苗移植機の補助苗載装置の積載状態を示す平面図(b)苗移植機の補助苗載装置の積載状態を示す側面図
【図4】(a)苗移植機の補助苗載装置の展開状態を示す平面図(b)苗移植機の補助苗載装置の積載状態を示す側面図
【図5】補助苗載装置の平行リンク機構部の側面図
【図6】補助苗載装置の展開状態の平面図
【図7】平行リンク機構の別例を示す側面図
【図8】別実施例の補助苗載装置の側面図
【図9】(a)苗移植機前照灯部の正面図(b)苗移植機前照灯部の平面図(c)苗移植機前照灯部の側面図
【図10】(a)苗移植機前照灯部の正面図(b)苗移植機前照灯部の平面図(c)苗移植機前照灯部の側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図例に基づいて、苗移植機は、乗用四輪走行形態のトラクタ走行車体12の後部に、平行リンク形態のリフトリンク15を介して、多条(6条)植形態の植付装置19を連結したものである。前記車体12には、エンジン13、及びこの上側の運転席14を搭載し、この前側のステアリングポスト1上にはステアリングハンドル16や、変速レバー17、フィンガップレバー形態の苗植操作レバー18等を設け、下部の左右両側部に位置するサイドフロア2の外側には、補給用の苗(苗トレイに収容した状態の苗)を支持する補助苗載台4を設ける。
【0019】
前記走行車体12の前部には、エンジン13からベルト伝動される油圧無段変速装置21、及びミッションケース22が配置されて、このミッションケース22の左右両側部に張出するフロントアクスルハウジング23の両端部に、操向前輪11を軸装している。又、ミッションケース22から後方のリヤアクスルハウジング24にわたって後輪38を連動する連動軸25が取出されると共に、PTO軸26が取出されている。
【0020】
前記車体12の後端部には、リヤフレーム27を立設して、前記リフトリンク15を連結し、上端に施肥装置28を取付けている。前記車体12とリフトリンク15との間には、油圧回路によって伸縮されるフリフトシリンダ20を設け、このリフトシリンダ20の油圧回路における昇降制御弁の切替制御によって、リフトシリンダ20が伸縮されて、植付装置19を昇降することができる。
【0021】
前記リフトリンク15の後端のヒッチリンク29に対してローリング軸30周りにローリング回動自在に装着される植付装置19は、前記PTO軸26から連動される伝動機構を内装した苗植伝動ケース31を主体として、この苗植伝動ケース31の下方に、中央部と、この左右両側部との各センタフロート52、サイドフロート53を配置して、各フロート52、53を土壌面に滑走させて支持推進させる。又、苗植伝動ケース31の上側には、後端下りに傾斜の多条植形態の苗載せ台35を支持して、リードカム軸の回転により1枚苗幅相当間隔にわたって左右方向へ往復移動するように案内し、この苗載せ台35の後下端の苗繰出口を、植付装置54の苗植付爪33の作用する苗取口34を形成した苗取口枠32に案内させる。
【0022】
この苗取口枠32は苗植伝動ケース31側に取付けられて、この苗植伝動ケース31の後部の各苗植条位置に配置の植付装置54の先端の植付爪33を作用させる。各植付装置54は、先端の植付爪33を略楕円形状の植付軌跡線Dに作動させて、上支点位置を下降するとき前記苗取口枠32の苗取口34に介入して苗載せ台35から繰出される苗を分離して保持することができ、下支点部に下降することによって、この保持している苗を土壌面に一定深さに挿植するものである。これら各苗植付爪33は、各フロート52、53で均平された均平跡の土壌面に植付けるように多条植形態に構成される。
【0023】
前記植付装置19の昇降制御は、前記リフトシリンダ20を作動させる油圧回路の昇降制御弁を、コントローラから出力することによって行わせる。前記植付装置19の中央部に配置するセンタフロート52の上下揺動によって、車体12の走行する土壌耕盤が深いときは、リフトシリンダ20を伸長させて、植付装置19を上昇し、耕盤が浅いときは逆に下降させて、植付装置54による苗植付深さが略一定になるように昇降制御を行う形態としている。
【0024】
前記植付装置19は、苗植伝動ケース31の前部上に、苗載せ台35の上端底部を左右移動自在に支持する植付部フレーム36を有し、この植付部フレーム36の前側に、フロート支持アーム37を介して各フロート52、53の後端部が上下回動自在に支持されている。
【0025】
また、この植付部フレーム36の前側に、上下動自在の代掻フレーム40を取付て、この代掻フレーム40の下端部には、各フロート52、53の前側に対向して配置の代掻ロータ44、45を有するロータフレーム46を上下動可能にして装着する。前記各フロート52、53の前側に配置した代掻ロータ44、45によって、各フロート52、53によって均平する土壌面を予めこれら代掻ロータ44、45によって砕土して均平し易くするものである。
【0026】
この代掻ロータ44、45は、前記リヤアクスルハウジング24の伝動機構部から連動軸42を介して連動して、各ロータ44、45を駆動回転する形態である。43はこのロータフレーム46の前端部を植付部フレーム36の上端部に吊下げるロータ吊下スプリングである。前記植付装置19を大きく上下動すると、リンクアーム、及びフロート支持アーム37等を介して代掻ロータ44、45をも昇降することができるが、この代掻ロータ44、45を装着するフロート支持アーム37が、植付部フレーム36に対して上下動することができるため、土壌面に対する代掻位置を上下に調節しながら、しかもロータフレーム46の傾斜角度を変えながら、各センタロータ44、及びサイドロータ45を土壌面に均等に接圧させて代掻作用を行わせる。
【0027】
ここにおいて、ステアリングポスト1横側のサイドフロア2の外側部に、支柱3によって支持される苗支持枠41に複数段の補助苗載台4を設け、この最上段の苗載台4Aを下側の苗載台4Bに対して前後一対のフロントリンク5とリヤリンク6のリンク機構によって前後平行移動させて、この上段の苗載台4Aを下段の苗載台4Bの前端部に引出連接させたり、この下段の苗載台4Bの直上方位置に立体支持するように切替移動可能の苗移植機において、前記各リンク5、6の基部に前記苗支持枠41に対する支持ヒンジ61、62の下端部側に短いリンクアーム50、60を形成して、各リンクアーム50、60の下端部に下段の苗載台4Bを下部ヒンジ63、64で枢支する補助苗載装置の構成とする。
【0028】
苗植作業を行うにあって予め補助苗載台4にマット状形態に育苗した苗を積載収容するときは、上段の苗載台4Aを前側へ引き出して引出姿勢Aにする。このときフロントリンク5、及びリヤリンク6の支持ヒンジ61、62周りの回動によって、各下端部側のリンクアーム50、60が後側上部へ回動して、これらリンクアーム50、60の下端部に下部ヒンジ63、64で枢支された下段の苗載台4Bが若干の高さH1後上方へ回動上昇して、この苗載台4Bの前端側に上段側の苗載台4Aの後端部を連接して、前側からの苗の押込み供給載置を行わせる。
【0029】
このような上段側の苗載台4Aが前方へ引出姿勢Aにあるとき、下段側の苗載台4Bが後方上位へシーソ状に変移して、これら前後の空状態の苗載台4Aと4Bとの間において、及びこれらに苗を搭載した状態においても、前後重量バランを維持する状態になって、補助苗載台を安定支持する。
【0030】
また、下段の苗載台4Bは、支持ヒンジ61、62周りに短いリンクアーム50、60を介して回動されるものであるから、この下側に位置する最下段の苗載台4Cとの高さ間隔を十分に維持することができ、この最下段の苗載台4Cに対する苗載せ作用や、苗取出作用を制限しないように、苗の積込や、後部植付装置19部の苗載せ台35への補給作業を行い易くする。
【0031】
さらに、前記前側のフロントリンク5の下部支持ヒンジ61を、後側のリヤリンク6の下部支持ヒンジ62よりも低い位置に設ける。
前記のように苗を積込むときは、上段の苗載台4Aを前側へ引出して引出姿勢Aにした状態で、この上段の苗載台4Aで受けた苗を、後側の苗載台4Bへ移動させて積込む。苗の積込が終ると、上段の苗載台4Aを上昇回動させるようにしてフロントリンク5、及びリヤリンク6を起立させて、展開状態Bとして苗植作業、及び後部の苗載せ台に対する苗補給作業を行う。
【0032】
このように、苗載台4Aを引出姿勢Aにしたときは、この苗載台4Aが後側の苗載台4Bよりも下位にあって、しかもこれら各苗載台4A,4Bの苗載面が前下りの傾斜状態にあるため、前側からの苗受けの容易な姿勢として、苗の積込作用を行い易くする。
【0033】
また、リンク機構のフロントリンク5とリヤリンク6が、苗載台4の左右同じ側に配置して構成する形態では、引出姿勢A位置において一部上下に重合するも、干渉係合して作動不能状態にはならないように構成することが可能であり、構成を簡潔化することができる。
【0034】
そして、前記上、下段の苗載台4A、4Bを支持するフロントリンク5、及びリヤリンク6の各下部ヒンジ63、64と上部ヒンジ65、66とのリンクヒンジ間隔を異にして台形状のリンク支持形態として、上段の苗載台4Aを引出姿勢Aとすることにより、下段の苗載台4Bが後下りの傾斜になって連接するように構成する。
【0035】
前記平行リンク機構形態に作動して、上段の苗載台4Aを前側へ引き出して引出姿勢Aにしたり、後側へ引き戻し移動して展開状態Bにして切替移動させる形態では、この平行リンクの一辺の長さを異にして台形状に構成する場合の、フロントリンク5、又はリヤリンク6に対する苗載台4A、又は4Bのリンクヒンジの一部を長穴67を形成して勘合支持する形態とすることによって、上段の苗載台4Aを引出姿勢Aに移動させると、下段の苗載台4Bを後下り傾斜にすることができるため、苗載台4Aから苗載台4Bへ押込まれた苗の後側への滑りが行われ易く、苗を積込むときの積込作業を行い易くする。
【0036】
さらに、前記台形状のリンク形態は、図7のように、下部ヒンジ63、64と支持ヒンジ61、62との間の各前、後リンクアーム50、60において、後側のリンクアーム60の長さを若干長くして、この下部賓辞64を下段の苗載台4Bの長穴67に嵌合させて支持するように構成している。
【0037】
このリヤリンク6は、後リンクアーム60部を下部ヒンジ62部で前側、又は後側へ適宜角度に曲げて「ヘ」の字状形態に屈曲して、このリンクアーム60の下端部の下部ヒンジ64の位置を前側、又は後側へ適宜間隔偏倚させて、前側の下部ヒンジ63との間のリンクヒンジ間隔を長、短に設定することも可能である。
【0038】
さらには、前記下段苗載台4Bを、苗支持枠41に対して前後移動可能に設け、上段の苗載台4Aを前側へ引出すことによって前記下段の苗載台4Bを係合して前側へ連出移動するように構成する。
【0039】
上段の苗載台4Aが下段の苗載台4Bの直上位置にあるときは、この下段の苗載台4Bが後退位置にあって、この下段の苗載台4B上面に積込まれている苗を後側へ取出ときは、苗の取出操作を行い易くする。又、上段の苗載台4Aを前側へ引き出して引出形態Aとするときは、下段の苗載台4Bの連出によって前側へ移動されているため、この苗載台4Aから苗載台4Bへの苗の移動操作を行い易くする。
【0040】
また、この下段の苗載台4Bの前側への引出移動は、前記のように上段の苗載台4Aの移動によって連動されるが、後側への移動は、復帰スプリング68を前記苗支持枠41との間に設ける等によって、苗載台4Aが上昇して引出力が解除されるに伴って、自動的に苗載台4Bが後退復帰するように構成することができる。
【0041】
前記苗支持枠41に支持するプレート状の各苗載台4は、図5、図6のように、前後左右の各四辺縁に沿って苗が滑り出さないように適宜高さの案内縁42、43、44、45を形成する。下段部の苗載台4Bの底面には、前後方向の長穴46を形成した横桟47を設けて、この長穴46を苗載台4Bの底部に前後左右の四箇所に形成している。
【0042】
この横桟47を前記支持枠41の上面に対して前後摺動自在に載せて支持させると共に、この支持枠41上面に突出の各係合ピン48に前記横桟47の長穴46に嵌合させて、この苗載台4Bをスプリング68によって後側へ弾発させていて、平常時は、この苗載台4Bは長穴46の長さ分だけ後側へ移動されている。
【0043】
上段側の苗載台4Aの後端外側部には係合フック49を形成して、このフック49を、前記引出姿勢Bへの作動時に下段部の苗載台4Bの前部案内縁42に係合させて、この苗載台4Bを前側へ連出移動することができる。
【0044】
前記ステアリングポスト1横側のサイドフロア2の外側部に、支柱3によって支持される複数段の補助苗載台4を設け、この最上段の苗載台4Aを下側の苗載台4Bに対して前後一対のフロントリンク5とリヤリンク6のリンク機構によって前後平行移動させて、この上段の苗載台4Aを下段の苗載台4B)の前端部に連接させたり、この下段の苗載台4Bの直上方位置に立体支持するように切替移動可能の形態において、前記フロントリンク5は、後側へ湾曲する湾曲部7を形成して、この湾曲部7の前側に操作作業用のフロントスペースFを形成し、又は前記リヤリンク6は前側へ湾曲する湾曲部8を形成して、この湾曲部8の後側に操作作業用のリヤスペースRを形成する。
【0045】
運転者が後側部から前記下段部の補助苗載台4B上の苗トレイを取出して、苗を苗載せ台へ供給するときは、このリヤリンク6の湾曲部8のリヤスペースRが広く形成されているため、この苗トレイの左右両側部を把持操作するときの邪魔になり難く、後側からの苗トレイの出し入れ操作を行い易くする。
【0046】
この苗支持枠41上の補助苗載台4Aを、苗載台4Bの前端部に連接させる引出位置Bへ切替移動させるものであるが、このような移動操作のために、この最上段の補助苗載台4Aの後端左右両側部にはハンドル69を設けている。
【0047】
次に主として図8に基づいて、下段部の苗載台4Bをリンク機構に直接支持させないで、単に支持枠41に支持させた形態において、前記のように段積姿勢Aにある上段の苗載台4Aを引出姿勢Bに移動させることによって、リンク機構を介して下段部の苗載台4Bを後底部の支持軸70の周りに浮上回動させて、苗載台4Bの前端部を適宜高さH3だけ上昇させて、苗載台4Bの上面を後端下がりに傾斜させるもので、前側の苗載台4A側から供給される苗がこの苗載台4Bへ滑り込み易くするものである。
【0048】
前記リヤリンク6の支持ヒンジ62にはクランクピン56が設けられていて、このクランクピン56にリンクロッド57を介してベルクランク59が連結される。このベルクランク59は支持枠41に対して回動軸58周りに揺動されるが、前端部に支持部55を有して、この支持部55を回動軸58周りに上側へ高さH3だけ回動することによって、苗載台4Bを支持軸70の周りに回動して後端下がりに傾斜させることができる。
【0049】
次に、主として図9(a)〜(c)、図10(a)〜(c)に基づいて、前記ステアリングポスト1乃至ダッシュボード71の前側に前照灯を設けている。この前照灯72の前側に下端部の車体12部から立設するハンドルフレーム73上に、ハンドルグリップ74と、ループハンドル75を介して上側に連接するポールマーカ76、及びマーカランプ77を設ける。ループハンドル75は正面視で三角形態(図9の(a))乃至円弧状形態(図10の(a))等のループ状に形成して、前照灯72による照明をできるだけ遮ぎらないように構成する。
【0050】
又、図10(a)〜(c)の形態では、ハンドルグリップ74をT字形態に形成して、この上側にループハンドル75を構成している。ポールマーカ76はこれらループハンドル75の中央上部から一体に立設している。ハンドルグリップ74は前記ループハンドル75の横側に張り出して一体に構成している。これら車体前部のハンドルは、苗移植機を台車に積み降ろししたり、圃場へ出入りしたり、または畦越えする等の場合に使用することが多いが、その時の使用状況に応じて前記ハンドルグリップ74部を把持したり、ループハンドル75部を把持して、操作性を向上することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ステアリングポスト(操縦操作部)
2 サイドフロア(側部搭乗部)
3 支柱
4 補助苗載装置
4A 最上段の補助苗載台
4B 下段の補助苗載台
5 フロントリンク(前側の連繋部材)
6 リヤリンク(後側の連繋部材)
41 苗支持枠
50 リンクアーム(延長連結部)
60 リンクアーム(延長連結部)
61 支持ヒンジ(連結支持体)
62 支持ヒンジ(連結支持体)
63 下部ヒンジ(下部連結支持体)
64 下部ヒンジ(下部連結支持体)
65 上部ヒンジ(上部連結支持体)
66 上部ヒンジ(上部連結支持体)
A 段積姿勢
B 引出姿勢
L リンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦操作部(1)の側部の側部搭乗部(2)の外側部に、支柱(3)によって支持される苗支持枠(41)に複数段の補助苗載台を設け、該補助苗載台(4)を構成する最上段の苗載台(4A)と下側の苗載台(4B)を前後の連繋部材(5,6)で構成するリンク機構(L)で連結し、該リンク機構(L)を操作すると前記最上段の苗載台(4A)が前後方向に平行移動する構成とし、前記最上段の苗載台(4A)と下段の苗載台(4B)が前後方向に並ぶ展開状態(B)と、最上段の苗載台(4A)と下段の苗載台(4B)が上下方向に並ぶ積載状態(A)に切替可能に構成した補助苗載装置(4)を設けた苗移植機において、
前記前後の連繋部材(5,6)の基部側と苗支持枠(41)を連結する前後の連結支持体(61,62)よりも下端側に、前後の連繋部材(5,6)よりも短い延長連結部(50,60)を形成し、該延長連結部(50,60)の下端部と前記下段の苗載台(4B)を下部連結支持体(63,64)で連結する構成とし、補助苗載装置(4)を展開状態に切り替えても下段の苗載台(4B)の前後位置が移動しない構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記前側の連繋部材(5)の前側連結支持体(61)を、後側の連繋部材(6)の後側連結支持体(62)よりも低位置(H1)に設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記前側の連繋部材(5)及び後側の連繋部材(6)を下段の苗載台(4B)と連結する下部連結支持体(63,64)と、上段の苗載台(4A)と連結する上部連結支持体(65,66)の配置間隔を前後方向でずれる位相として前記リンク機構(L)を台形状の支持形態で構成し、積載姿勢(A)の上段の苗載台(4A)を移動させて展開姿勢(B)に変更した際、下段の苗載台(4B)が後下りの傾斜姿勢で上端の苗載台(4A)に隣接する構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。
【請求項4】
前記後側の連繋部材(6)に、機体前側に向かう湾曲部を形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記下段の苗載台(4B)を苗支持枠(41)を中心として前後方向に移動自在に取り付け、前記上段の苗載台(4A)を前側へ引き出す操作をすると下段の苗載台(4B)を係合して前側へ連出移動する構成としたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−157289(P2012−157289A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19194(P2011−19194)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】