説明

苗移植機

【課題】搬送ベルトのオーバーランを抑制すること。
【解決手段】多数の苗ホルダーを設けた無端帯状の搬送ベルトを間欠的に搬送作動させて、苗ホルダーに保持させた苗を所定の位置まで搬送するとともに、移植爪により苗を圃場に移植する。前記搬送ベルトを駆動する駆動軸に、ワンウェイクラッチ部を介して間欠搬送作動機構を連動連結して、間欠搬送作動機構により搬送ベルトを間欠的に搬送作動可能となすとともに、間欠搬送作動機構には駆動軸の過剰な回動を規制する規制機構部を連動連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
甘藷苗等の蔓状苗を圃場に移植する甘藷挿苗機等の苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗移植機の一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、特許文献1には、苗移植機としての甘藷挿苗機に、蔓状の甘藷苗の茎部を一対の移植爪で挟持して圃場の畝中に茎部を挿入して甘藷苗を移植するようにしたものが開示されている。そして、かかる甘藷挿苗機には甘藷苗を移植爪に渡す苗渡し位置まで搬送する苗搬送部を設けている。
【0003】
すなわち、苗搬送部は、背面視で略逆三角形状に掛け廻した無端帯状の搬送ベルトの表面部に、多数の苗ホルダー体を搬送ベルトの伸延方向に間隔を開けて取り付けて、各苗ホルダー体に一つの甘藷苗の茎部を挟持させるようにしている。そして、搬送ベルトを駆動させる駆動軸にワンウェイクラッチ部を設けて、ワンウェイクラッチ部を介して駆動軸に駆動力を間欠的に伝達することで、搬送ベルトを間欠的に搬送作動させて、甘藷苗を一対の移植爪が受け継ぐ苗受継ぎ位置まで搬送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−99号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、苗移植効率を向上させるために搬送ベルトを高速で間欠的に搬送動作させるようにすると、つまり、ワンウェイクラッチ部を介して駆動軸に高速で駆動力を伝達するすると、ワンウェイクラッチ部が慣性力により所定回転角度よりも過剰に回転して、駆動軸を介して搬送ベルトがオーバーランしてしまうことがあった。その場合は、苗受継ぎ位置が変わり甘藷苗の受け継ぎミスが発生することがあった。
【0006】
そこで、本発明は、搬送ベルトのオーバーランを抑制することができる苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る苗移植機は、多数の苗ホルダーを設けた無端帯状の搬送ベルトを間欠的に搬送作動させて、苗ホルダーに保持させた苗を所定の位置まで搬送するとともに、移植爪により苗を圃場に移植する苗移植機であって、前記搬送ベルトを駆動する駆動軸に、ワンウェイクラッチ部を介して間欠搬送作動機構を連動連結して、間欠搬送作動機構により搬送ベルトを間欠的に搬送作動可能となすとともに、間欠搬送作動機構には駆動軸の過剰な回動を規制する規制機構部を連動連結したことを特徴とする。
【0008】
かかる苗移植機では、間欠搬送作動機構に連動連結した規制機構部が駆動軸の過剰な回動を規制するため、ワンウェイクラッチ部が慣性力により所定回転角度よりも過剰に回転するのを規制することができる。したがって、間欠的な回転停止作動を堅実化させて、搬送ベルトのオーバーランを抑制することができる。
【0009】
請求項2記載の本発明に係る苗移植機は、請求項1記載の本発明に係る苗移植機であって、前記規制機構部は、先端係合部をフック状となして進退作動する係合体と、係合体を間欠搬送作動機構に連動連結する連動連結体を具備して、前記間欠搬送作動機構の間欠搬送動作と係合体の進出動作を連動させる一方、前記駆動軸に前記搬送ベルトを支持する駆動ローラを設けるとともに、駆動ローラの外側端面には搬送ベルトを間欠的に搬送作動させる回転駆動ピッチ毎に周方向に間隔を開けて複数の係合突片を放射状に突設して、複数の係合突片を搬送ベルトの側縁部に形成した係合孔に係合させることで、回転駆動ピッチ毎の駆動ローラの回転動作と搬送ベルトの間欠的な搬送動作を連動させ、駆動ローラの回転駆動ピッチ毎の回転動作と、それに伴って回転移動される係合突片への係合体の進出動作及びその先端係合部の係合動作を連動させたことを特徴とする。
【0010】
かかる苗移植機では、駆動ローラの回転駆動ピッチ毎の回転動作と、それに伴って回転移動される係合突片への係合体の進出動作及びその先端係合部の係合動作を連動させているため、係合突片に係合体の先端係合部を係合させて、駆動ローラが過剰に回動するのを堅実に規制することができる。この際、係合突片は駆動ローラに搬送ベルトを係合させるものであり、かかる係合突片を有効利用して係合突片に係合体の先端係合部を係合させるようにしているため、規制機構部をコンパクトな構造となすことができるとともに、規制機能を良好に確保することができる。
【0011】
請求項3記載の本発明に係る苗移植機は、請求項2記載の本発明に係る苗移植機であって、前記間欠搬送作動機構は、搬送動作と復帰動作を繰り返し行って、搬送ベルトを間欠的に搬送作動可能となすとともに、間欠搬送作動機構の復帰動作と、係合突片からの前記規制機構部の係合体の後退動作及びその先端係合部の係合解除動作を連動させたことを特徴とする。
【0012】
かかる苗移植機では、間欠搬送作動機構の復帰動作と、係合突片からの規制機構部の係合体の後退動作及びその先端係合部の係合解除動作を連動させているため、間欠搬送作動機構が搬送動作した際の搬送ベルトの間欠的な搬送動作を円滑かつ堅実なものとなすことができる。その結果、搬送ベルトの間欠的な搬送動作を高速となした場合でも搬送動作を良好に確保することができて、移植作業能率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、次のような効果を奏する。すなわち、本発明では、苗移植効率を向上させるために搬送ベルトの高速化を図った際にも、ワンウェイクラッチ部の間欠的な回転停止作動を堅実化させて、搬送ベルトのオーバーランを抑制することができる。そのため、苗受継ぎ位置を良好に確保することができて、苗の受け継ぎが堅実になされる。その結果、苗移植効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る苗移植機の側面説明図。
【図2】同苗移植機の平面説明図。
【図3】苗搬送部の断面側面説明図。
【図4】移植部の説明図。
【図5】苗搬送部の一部切欠平面説明図。
【図6】同苗搬送部の背面説明図。
【図7】駆動機構の平面説明図。
【図8】苗ホルダー体の待機姿勢の平面図。
【図9】規制機構部の平面説明図。
【図10】規制機構部の側面説明図。
【図11】強制挟持作用体の背面説明図。
【図12】予備苗載台の平面説明図。
【図13】予備苗載台の側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1及び図2に示すAは苗移植機であり、苗移植機Aは、図1及び図2に示すように、前後方向に伸延する平面視四角形枠状に形成した機体フレーム1の前部にエンジン2を搭載し、同機体フレーム1の後端部に上下縦長に形成したミッションケース3の下部を取り付けて、同ミッションケース3と上記エンジン2とを連動ケース4を介して連動連結している。機体フレーム1の直前方にはブラケット5を介して左右方向に伸延する前輪支持体6をその軸線廻りに揺動自在に取り付け、同前輪支持体6の左右側端部より後下方へ支持アーム7,7を垂設して、各支持アーム7,7の下端部に前輪8,8を転動自在に取り付けている。ミッションケース3の左右側下部には外側方へ伸延する軸ケース9,9の基端部を連動連設し、各軸ケース9,9の先端部に後下方へ伸延する伝動ケース10,10の上端部を各軸ケース9,9の軸線廻りに揺動自在に連動連設して、伝動ケース10,10の下端部に後輪11,11を連動連結している。上記前輪支持体6と伝動ケース10,10は昇降機構12に連動連結して、機体を昇降自在としている。
【0017】
図1中、13は昇降センサ機構であり、昇降センサ機構13に畝Uの上面を転動しながらセンシングするセンシングローラ13aを設け、センシングローラ13aのセンシング結果に基づいて昇降機構12により機体を自動的に昇降させて、後述する苗の植え付け(移植)深さを略一定に保つことができるようにしている。14は予備苗載台であり、予備苗載台14は甘藷苗等の蔓状の苗Nを予備的に載置しておくための台である。25は機体の昇降操作用レバーと植付クラッチの接続・切断操作用レバーを兼用する昇降兼植付レバー、26は走行変速レバー、27は株間調節ハンドルである。33はミッションケース3の左右側方にそれぞれ配設したタンク支持フレーム、Tは各タンク支持フレーム33上に載置した灌水用の水タンクである。34は鎮圧ローラである。Gは圃場、Uは同圃場Gに形成した畝,Mは同畝Uの表面を被覆するように張設したマルチフィルムである。
【0018】
そして、図3及び図4にも示すように、ミッションケース3の後部には立体枠状に形成した支持フレーム20を後方へ張り出し状に取り付けている。支持フレーム20は、ミッションケース3の後上部から後方へ伸延させて平面視U字状に形成した上部支持フレーム形成体21と、ミッションケース3の後下部から後方へ伸延させて後方伸延部22aを形成すると共に上方へ立ち上げて立ち上がり部22bを形成し、上端部を上部支持フレーム形成体21の中途部に連結した下部支持フレーム形成体22と、同下部支持フレーム形成体22の立ち上がり部22bに連結した補助フレーム形成体23とを具備している。上部支持フレーム形成体21は後部をハンドル24となしている。
【0019】
また、図3にも示すように、下部支持フレーム形成体22上には、甘藷苗等の蔓状の苗Nを搬送する苗搬送部30を配設し、同下部支持フレーム形成体22の直後方位置には、図4にも示すように、上記苗搬送部により搬送された苗Nを畝U中に移植する移植部31を配設して、同移植部31の直前方位置でかつ苗搬送部30の下方位置には、下部支持フレーム形成体22の後方伸延部22aを介してフィルム切断部32を配設している。
【0020】
苗搬送部30は、図3,図5及び図6に示すように、無端帯状の搬送ベルト40の表面部上にかつ後端縁部に沿わせて、多数の苗ホルダー体41を搬送ベルト40の伸延方向に間隔を開けて取り付けて、搬送ベルト40を複数のローラを介して正面視ないしは背面視略逆三角形状に掛け廻すことで、上部の苗供給域Xと右側下部の苗搬送域Yと左側下部の苗ホルダー戻り域Zを形成している。
【0021】
すなわち、苗搬送部30は、図3,図5及び図6に示すように、下部支持フレーム形成体22の後方伸延部22aに前後一対の搬送部支持フレーム形成体42を連設している。そして、各搬送部支持フレーム形成体42は上下方向に伸延する上下方向伸延部42aと、同上下方向伸延部42aの上端部の中途部を連設して左右方向に伸延する左右方向伸延部42bとを具備している。前後に対向する左右方向伸延部42b,42bの左側端部と右側端部には、それぞれ前後方向に軸線を向けた左側上部ローラ支軸43と右側上部ローラ支軸44とを架設し、各上部ローラ支軸43,44の前後部にローラ45,45,46,46を前後に対向させて取り付けている。前後に対向する上下方向伸延部42a,42aの下部間には前後方向に軸線を向けた左右一対の下部ローラ47,47を近接させて配置している。このようにして、上記したローラ45〜47間に搬送ベルト40を掛け廻している。
【0022】
図5及び図6中、48は右側上部のローラ46の端面より放射方向に突設した係合ピンであり、係合ピン48はローラ46の周方向に複数個(本実施形態では6個)を均等に間隔に配置している。49は搬送ベルト40の前後側縁部に形成した係合孔であり、係合孔49は搬送ベルト40の伸延方向に一定の間隔を開けて形成すると共に、係合孔49に上記係合ピン48が係合して、ローラ46の回動に連動して搬送ベルト40が移送されるようにしている。50は搬送ベルト40の内周面に突設した前後方向への位置ずれ防止用突条片、51は左側上部ローラ支軸43に取り付けた回転体であり、回転体51の周端縁部に形成した凹条部に上記位置ずれ防止用突条片50を係合させて、搬送ベルト40の前後方向への位置ずれを防止している。52はガード体、53は苗ホルダー体41に保持されて搬送される苗搬送域Yの苗Nを下方から保護する保護体、54は左側の下部ローラ47よりも左側上方に配置して苗ホルダー戻り域Zの中途部を上方へ凸状に折曲させて案内するガイドローラである。
【0023】
図5及び図6に示すように、搬送ベルト40の上面には、多数の仕切り壁55を係合孔49一つ置きに整合させて配置している。そして、隣接する仕切り壁55,55間に位置する搬送ベルト40の部分を一本分の苗Nの載置部40aとして、各載置部40aの後端縁部に苗ホルダー体41を配設している。
【0024】
また、右側上部ローラ支軸44は、図5及び図6に示すように、ミッションケース3の右側上部から右側方へ突出させた第1駆動軸56に駆動機構57を介して連動連結して、駆動機構57により右側上部ローラ支軸44を介してローラ46,46を間欠的に同一方向(本実施形態では図6の背面視で時計廻り)にのみ回動させることで、搬送ベルト40を所定の回転駆動ピッチ毎(本実施形態では係合ピン48及び係合孔49の間隔を一ピッチとして二ピッチ毎)に搬送させるようにしている。
【0025】
駆動機構57は、図5〜図7に示すように、揺動機構部58と間欠搬送作動機構としての回動機構部59とを具備している。
【0026】
揺動機構部58は、図7に示すように、前記第1駆動軸56の後上方位置に揺動レバー体60を上下方向に軸線を向けた揺動支軸61を中心に左右揺動自在に枢支している。揺動レバー体60には左側方に伸延する左側方伸延片60aと後上方へ伸延する後上方伸延片60bを形成している。そして、前記第1駆動軸56の先端部に円板62の中心部を取り付け、同円板62の外側面部に第1連結ピン63aを介して連結リンク63の前端部を枢支連結する一方、同連結リンク63の後端部を左側方伸延片60aの先端部に第2連結ピン63bを介して枢支連結している。
【0027】
回動機構部59は、図5〜図7に示すように、駆動軸としての前記右側上部ローラ支軸44の後端部にボス部65を回転自在に嵌合し、ボス部65の後端面に駆動スプロケット66を同軸的に連設している。そして、ボス部65と右側上部ローラ支軸44の後端部との間にはワンウェイクラッチ部としてのラチェット機構部67を介設している。ラチェット機構部67は、図9及び図10に示すように、右側上部ローラ支軸44に嵌合させて取り付けたラチェット本体67aと、ラチェット本体67aの一方向の回転のみを許容するとともに他方向の回転を規制する規制体67bとを具備する。本実施形態では、規制体67bをラチェット本体67aに対して進退自在となして、規制体67bが図10に示す時計廻りのみラチェット本体67aの回転を三分の一ずつ許容するとともに、反時計廻りのラチェット本体67aの回転を規制する。
【0028】
また、揺動レバー体60の後上方伸延片60bの後端部には紐状片68の一側端部を連結し、中途部を上記駆動スプロケット66に掛け廻わして、他側端部を前記した搬送部支持フレーム形成体42の後側の左右方向伸延部42bより垂下した支持ブラケット69に連結している。ここで、紐状片68の中途部は駆動スプロケット66の歯部と係合可能なチェン68aで形成して紐状片68の耐久性を向上させている。68bはターンバックル、68c,68dは引張スプリング、68eは連結ピンである。図5及び図7において、70は略逆三角形状に掛け廻わされた搬送ベルト40の内方に配設した灌水機構である。
【0029】
このように構成して、第1駆動軸56に連動させて円板62を回動させると、円板62の周縁部に連結した連結リンク63が前後方向に進退摺動して、揺動レバー体60に形成した左側方伸延片60aの先端部を前後方向に揺動させると共に、後上方伸延片60bの後端部を左右方向に揺動させる。そして、後上方伸延片60bの後端部に連結した紐状片68が左右方向に引張摺動されて、駆動スプロケット66を正・逆回転させる。その結果、右側上部ローラ支軸44はラチェット機構部67を介して間欠的に正回転(図6の背面視で時計廻り)される。
【0030】
回動機構部59には、図9及び図10に示すように、駆動軸としての右側上部ローラ支軸44の過剰な回動を規制する規制機構部90を連動連結している。すなわち、規制機構部90は、先端係合部91をフック状となして進退作動する係合体92と、係合体92を揺動レバー体60に連動連結する連動連結体93を具備しており、揺動レバー体60の揺動動作に規制機構部90と回動機構部59が連動するようにしている。
【0031】
そして、係合体92は、上下方向に伸延させて形成した係合本片96と調節支持片97を上下方向にスライド位置調節自在に取り付けて構成している。調節支持片97は、その中途部を左右方向伸延部42bの右側部に垂設した支持片94に、前後方向に軸線を向けた支持片揺動支軸95を介して左右方向に揺動自在に枢支している。調節支持片97にスライド位置調節自在に取り付けた係合本片96の上端部には、係合ピン48に係合・離脱自在に係合する先端係合部91を一体成形している。
【0032】
また、連動連結体93は、左右方向に伸延させるとともに伸縮調節自在とした連動連結本片100と、連動連結本片100の右側端部に左側端部を連結した弾性付勢体としての進出側付勢スプリング101と、調節支持片97の上端部と左右方向伸延部42bに設けた係止ブラケット102との間に介設した弾性付勢体としての後退側付勢スプリング103とから形成している。連動連結本片100は連結ピン104を介して揺動機構部58に設けた後上方伸延片60bの基端部に左側端部を連結している。進出側付勢スプリング101の右側端部は調節支持片97の下端部に連結している。
【0033】
このように構成することで、揺動機構部58の揺動動作に連動させて、回動機構部59の搬送動作と係合体92の進出動作を連動させるとともに、回動機構部59の復帰動作と係合体92の後退動作を連動させている。すなわち、回動機構部59は、ローラ46,46の外側端面に突設した係合ピン48を係合孔49に係合させることで、回転駆動ピッチ毎のローラ46,46の間欠的な回転動作と搬送ベルト40の間欠的な搬送動作を連動させる。そして、規制機構部90は、ローラ46,46の回転駆動ピッチ毎の回転動作と、それに伴って回転移動される左側中途部の係合ピン48への係合体92の進出動作(図10における時計廻り揺動動作)及びその先端係合部91の係合動作を連動させる。
【0034】
この際、回動機構部59に連動連結した規制機構部90が係合ピン48を介してローラ46、つまり、右側上部ローラ支軸44の過剰な回動を規制するため、ラチェット機構部67が慣性力により所定回転角度(二ピッチ分)よりも過剰に回転するのを規制する。したがって、間欠的な回転停止作動を堅実化させて、搬送ベルト40のオーバーランを抑制することができる。
【0035】
このように、係合ピン48に係合体92の先端係合部91を係合させることで、ローラ46が過剰に回動するのを堅実に規制することができる。この際、係合ピン48はローラ46に搬送ベルト40を係合させるものであり、かかる係合ピン48を有効利用して係合ピン48に係合体92の先端係合部91を係合させるようにしているため、規制機構部90をコンパクトな構造となすことができるとともに、規制機能を良好に確保することができる。
【0036】
また、回動機構部59の復帰動作と、規制機構部90に設けた後退側付勢スプリング103の弾性付勢力による係合ピン48からの係合体92の後退動作(図10における反時計廻り揺動動作)及びその先端係合部91の係合解除動作が連動する。
【0037】
したがって、回動機構部59が搬送動作した際の搬送ベルト40の間欠的な搬送動作を円滑かつ堅実なものとなすことができる。その結果、搬送ベルト40の間欠的な搬送動作を高速となした場合でも搬送動作を良好に確保することができて、移植作業能率を向上させることができる。
【0038】
苗ホルダー体41は、図8に示すように、搬送ベルト40の上面後縁部に固定した四角形板状の基板片71と、同基板片71の右側縁部より上方へ立ち上げて形成した固定側ホルダー形成片72と、基板片71の左側縁部に起倒自在に枢支した可動側ホルダー形成片73とを具備している。そして、可動側ホルダー形成片73は、固定側ホルダー形成片72に近接して苗Nの茎部kを挟持する挟持姿勢(Fa)と、固定側ホルダー形成片72から離隔して待機する待機姿勢(Fb)との間で姿勢変更自在としている。
【0039】
移植部31は、図4に示すように、前記補助フレーム形成体23に植付回転軸78を左右方向に軸線を向けて軸支し、ミッションケース3から左側外方へ突出させた第2駆動軸64(図示2参照)に伝動軸ケース79(図1及び図2参照)を介して上記植付回転軸78の左側端部を連動連結している。一方、植付回転軸78の右側端部には植付駆動機構80を介して左右一対の移植爪81,81を連動連結して、図11にも示すように、両移植爪81,81の先端部が円弧状の往路軌跡K1と円弧状の復路軌跡K2とからなる移植軌跡Kを描いて往復作動するように構成している。
【0040】
そして、図4に示すように、往路軌跡K1の始端部側に強制挟持作用体82を配設して、強制挟持作用体82で左右一対の移植爪81,81の先端部を強制的に挟持作動させるようにしている。この際、左右一対の下部ローラ47,47の直後下方まで搬送された苗ホルダー体41が挟持している苗Nの茎部kを、強制挟持作用体82を介して左右一対の移植爪81,81の先端部が堅実に挟持して、苗ホルダー体41から苗Nを引き取る。そして、往路軌跡K1の終端部である畝U中に苗Nの茎部kを挿入して移植する。その後、左右一対の移植爪81,81の先端部同士は離隔動作して、茎部kの挟持状態を解除すると共に、復路軌跡K2を描いて元の始動位置に復帰する。そして、復路軌跡K2の中途部にスクレーパー体83を配設して、同スクレーパー体83中に左右一対の移植爪81,81の先端部を通過させることで、両移植爪81,81の先端部の内外側面に付着した泥土を掻き落とすようにしている。
【0041】
前記強制挟持作用体82は、図4に示すように、往路軌跡K1の始端部側に配設すると共に、苗搬送部30に設けた下部ローラ47,47の後下方に配置している。そして、図10に示すように、強制挟持作用体82により左右一対の移植爪81,81の先端部を強制的に挟持方向に作動させることで、下部ローラ47,47の直下方位置(苗搬送域Yの終端部位置)まで搬送された苗ホルダー体41に保持されている苗Nの茎部kを堅実に挟持するようにしている。Lは苗ホルダー体41の苗Nを保持する位置が描く苗保持位置ラインであり、苗搬送域Yにおける苗保持位置ラインLは、苗ホルダー体41に保持された苗Nの基端部が搬送されながら描く苗搬送ラインである。
【0042】
そして、強制挟持作用体82は、図3に示す下部支持フレーム形成体22の立ち上がり部22bに、図11に示すように、左側作用部110と右側作用部120とを左右方向に対向させて配置している。左・右側作用部110,120は、立ち上がり部22bに前後方向に軸線を向けた枢軸111,121を介してボス部112,122を枢支し、ボス部112,122より上方へ向けて連結突片113,123を突出させるとともに、ボス部112,122より下方へ向けてローラ支持アーム114,124を垂設している。ローラ支持アーム114,124の先端部には前後方向に軸線を向けたローラ支軸115,125介して挟持作用ローラ116,126を転動自在に枢支している。117,127は立ち上がり部22bに連設した支持ブラケット、118,128は支持ブラケット117,127と連結突片113,123との間に介設した爪閉じ側付勢スプリング、119,129は進退調節式アームストッパである。
【0043】
上記のように強制挟持作用体82を構成することで、移植爪81,81の開閉がスムーズになり、苗の受け継ぎ位置が安定して、植付精度が向上する。砂の噛み込みによる作動不良や摩擦がなくなる。苗の太さや品種によって、移植爪81,81の最適位置で苗を挟むことができるように調節することができる。苗の品種や大きさによって移植爪81,81が苗を挟む荷重を調節することができ、弱くすれば苗の折損や茎割れを低減することができ、強くすれば苗受け継ぎミスを低減することができる。
【0044】
予備苗載台14は、図3,図12及び図13に示すように、左右一対のタンク支持フレーム33,33上に架設している。予備苗載台14は、左右方向に伸延する前後一対のスライド支持ロッド130,131に左・右ケース支持枠体132,133を左右方向にスライド自在に取り付けている。左・右ケース支持枠体132,133にはそれぞれ予備苗収容ケース134,135を載置している。後側のスライド支持ロッド131の中央部には立ち上がり片136を取り付け、立ち上がり片136の上端部には左右方向に略水平にそれぞれ伸延するさばき棒137,137の基端部を連設している。
【0045】
このように構成することで、予備苗収容ケース134,135の後部上方にさばき棒137,137を配置して、さばき棒137,137の上に苗束の茎の中途部を載置することができる。そのため、予備の苗Nが軽く浮いている状態となすことができて、茎葉が絡みにくい。常に葉が下を向いているので、苗ホルダー体41に苗Nをセットする時に苗Nの向きを下向きに合わせ直す手間が省ける。苗Nの茎の端部を持って手前に引き、そのまま苗ホルダー体41にセットできるため作業能率が向上する。さばき棒137,137上の苗Nの減り具合に合わせて、作業者が最適位置で苗セットを行うことができるため、作業能率が安定する。
【符号の説明】
【0046】
A 苗移植機
30 苗搬送部
57 駆動機構
58 揺動機構部
59 回動機構部
90 規制機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の苗ホルダーを設けた無端帯状の搬送ベルトを間欠的に搬送作動させて、苗ホルダーに保持させた苗を所定の位置まで搬送するとともに、移植爪により苗を圃場に移植する苗移植機であって、
前記搬送ベルトを駆動する駆動軸に、ワンウェイクラッチ部を介して間欠搬送作動機構を連動連結して、間欠搬送作動機構により搬送ベルトを間欠的に搬送作動可能となすとともに、間欠搬送作動機構には駆動軸の過剰な回動を規制する規制機構部を連動連結したことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記規制機構部は、先端係合部をフック状となして進退作動する係合体と、係合体を間欠搬送作動機構に連動連結する連動連結体を具備して、前記間欠搬送作動機構の間欠搬送動作と係合体の進出動作を連動させる一方、
前記駆動軸に前記搬送ベルトを支持する駆動ローラを設けるとともに、駆動ローラの外側端面には搬送ベルトを間欠的に搬送作動させる回転駆動ピッチ毎に周方向に間隔を開けて複数の係合突片を放射状に突設して、複数の係合突片を搬送ベルトの側縁部に形成した係合孔に係合させることで、回転駆動ピッチ毎の駆動ローラの回転動作と搬送ベルトの間欠的な搬送動作を連動させ、
駆動ローラの回転駆動ピッチ毎の回転動作と、それに伴って回転移動される係合突片への係合体の進出動作及びその先端係合部の係合動作を連動させたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記間欠搬送作動機構は、搬送動作と復帰動作を繰り返し行って、搬送ベルトを間欠的に搬送作動可能となすとともに、間欠搬送作動機構の復帰動作と、係合突片からの前記規制機構部の係合体の後退動作及びその先端係合部の係合解除動作を連動させたことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−187018(P2012−187018A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51873(P2011−51873)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】