説明

苗移植機

【課題】
苗の積込作業や取出作業を行う際に、作業者が能率的に作業を行える構成とした予備苗枠を備える苗移植機を提供する。
【解決手段】
圃場を走行する走行車体12の後部にリンク機構を介して圃場に苗を植え付ける植付部を昇降自在に設け、走行車体12の前部に予備の苗を積載する予備苗枠4を設けた苗移植機において、予備苗枠4は、複数の苗載せ台4a,4bを上下方向に間隔を空けて配置し、苗載せ台4a,4bを前後のリンクアーム5,6で連結し、前後のリンクアーム5,6を操作して苗載せ台4a,4bが前後方向に並ぶ展開状態と苗載せ台4a,4bが上下方向に並ぶ収納状態とに切替自在に構成し、前後のリンクアーム6に湾曲部8を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
植付部の苗タンクに供給する予備のマット苗を積載する予備苗枠を機外から苗を積み込みやすい構成とし、この予備苗枠を走行車体に備えた、圃場に苗を植え付ける苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上段の補助苗載せ台を下段の補助苗載せ台に対して前側へ移動させて補助苗載せ台を直線状に配置し、マット苗を前端側から後端側へ移動案内可能にすることのできる補助苗載装置の技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−232809号公報(第3頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補助苗載せ台を連結する直線状のリンク機構が補助苗載せ台の側方に位置するため、機体の前側からマット苗を積み込む際や、機体の後側からマット苗を取り出す際に、このリンク機構が作業者の手や腕の動作を規制するため、マット苗の把持や出し入れ操作等の邪魔になリアすく、作業能率が低下する問題がある。
【0005】
本発明は、この問題を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、圃場を走行する走行車体(12)の後部にリンク機構(15)を介して圃場に苗を植え付ける植付部(19)を昇降自在に設け、該走行車体(12)の前部に予備の苗を積載する予備苗枠(4)を設けた苗移植機において、該予備苗枠(4)は、複数の苗載せ台(4a,4b)を上下方向に間隔を空けて配置し、該苗載せ台(4a,4b)を前後のリンクアーム(5,6)で連結し、該前後のリンクアーム(5,6)を操作して前記苗載せ台(4a,4b)が前後方向に並ぶ展開状態と苗載せ台(4a,4b)が上下方向に並ぶ収納状態とに切替自在に構成し、前記リンクアーム(5,6)に湾曲部(7,8)を形成したことを特徴とする苗移植機とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記後側リンクアーム(6)に前向湾曲部(8)を形成し、該前向湾曲部(8)の後側に作業用の後側空間部(R)を形成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記前側リンクアーム(5)に後向湾曲部(7)を形成し、該後向湾曲部(7)の前側に作業用の前側空間部(F)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0009】
請求項4記載の発明は、リンクアーム(5,6)の回動範囲を、予備苗枠を展開状態にしたとき、前側の上段の苗載せ台(4a)の底部(9)が下段の苗載せ台(4b)の上端部よりも上位となるまでに設定し、該下段の苗載せ台(4b)の左右両側部に、展開状態で機体前側に位置する上段の苗載せ台(4a)の底部(9)よりも高い側壁(10,10)を形成し、該左右の側壁(10,10)は、前記上段の苗載せ台(4a)側から後方に移送される苗を下段の苗載せ台(4b)上に案内する構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機とした。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記予備苗枠(4)を支持する支柱(3)の基部を前記走行車体(12)の前部に設け、予備苗枠(4)を支持する補助支柱(11)の基部を走行車体(12)の前部に設け、前記支柱(3)の端部と補助支柱(11)の端部を接近させて予備苗枠(4)に取り付けたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明の効果は、前後のリンクアーム(5,6)を操作して、予備苗枠(4)を苗載せ台(4a,4b)が前後方向に直線状に並ぶ展開状態にすることによって、予備苗枠(4)の前端部を走行車体(12)の前端部よりも前方に突出させることができるので、圃場端に用水路等の間隔部があっても、補助作業者は予備苗枠(4)に苗を載せて、後方に向かって押すだけで容易に苗を補充することができるので、苗の補充作業能率が向上すると共に、用水路等を気を配りながら作業する必要が無く、作業者の労力が軽減される。
【0012】
また、予備苗枠(4)を苗載せ台(4a,4b)が上下方向に並ぶ収納状態にすることによって、予備苗枠(4)の前端部が走行車体(12)の前端部よりも後方に位置するので、圃場端で旋回する際に予備苗枠(4)の前端部が壁や畦際に接触することが防止され、機体の破損が防止されると共に、倉庫等に機体を収納する際に機体の前後幅がコンパクトになり、狭いスペースであっても収納しやすくなる。
【0013】
そして、前後のリンクアーム(5,6)に屈曲部(7,8)を形成したことにより、作業者の手や腕が動かせるスペースが多くなるので、苗の積み込み作業や取り出し作業を容易に行うことができ、作業能率が向上する。
【0014】
請求項2記載の発明の効果は、請求項1記載の発明の効果に加えて、後側リンクアーム(6)に前向湾曲部(8)を形成したことにより、前向湾曲部(8)の後側に後側空間部(R)が形成されるので、予備苗枠(4)に積み込まれた苗を作業者が取る際に、後側リンクアーム(6)が作業者の手や腕の動作を妨げることを防止でき、植付部(19)への苗の補充作業能率が向上する。
【0015】
請求項3記載の発明の効果は、請求項1記載の発明の効果に加えて、前側リンクアーム(5)に後向湾曲部(7)を形成したことにより、後向湾曲部(7)の前側に前側空間部(F)が形成されるので、圃場の外から補助作業者が予備苗枠(4)に苗を積み込む際に、前側リンクアーム(5)が補助作業者の手や腕の動作を妨げることを防止でき、予備苗枠(4)への苗の積み込み作業能率が向上する。
【0016】
請求項4記載の発明の効果は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、展開時に機体前側に位置する上段の苗載せ台(4a)の底部(9)が機体後側に位置する下段の苗載せ台(4b)の上端部よりも上位となる設定としたことにより、予備苗枠(4)に苗を積み込んでいる途中で苗が前方に移動しても、上段の苗載せ台(4a)の底部(9)で苗の移動を止めることができるので、補助作業者が前に戻ろうとする苗を押し直す必要が無く、作業者の労力が軽減されると共に、戻ってきた苗が予備苗枠(4)から落下することが防止され、苗が傷付くことを防止できる。
【0017】
そして、下段の苗載せ台(4b)の左右両側に展開状態で機体前側に位置する上段の苗載せ台(4a)の底部(9)よりも高い側壁(10,10)を形成したことにより、上段の苗載せ台(4a)から後方に移動する苗の後端部が浮いた状態で下段の苗載せ台(4b)に移動した際、苗が側壁(10,10)に乗り上げて下段の苗載せ台(4b)から左右外側にはみ出すことを防止することができるので、苗が下方に落下して傷付くことが防止される。
【0018】
また、苗が確実に下段の苗載せ台(4)に案内されるので、苗の積み込み作業が滞ることが防止され、作業能率が向上する。
請求項5記載の発明の効果は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、予備苗枠(4)を支柱(3)と機体前側に基部を有する補助支柱(11)で支持することにより、予備苗枠(4)を展開状態にして重心位置が変化しても、予備苗枠(4)が前傾することなく支持されるので、苗載せ台(4a,4b)に載置した苗が落下することが防止され、落下した苗を拾う作業が省略され、作業者の労力が軽減されると共に作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】苗移植機の側面図
【図2】苗移植機の平面図
【図3】変形可能な予備苗枠を装着した苗移植機の側面図
【図4】変形可能な予備苗枠を装着した苗移植機の側面図
【図5】変形可能な予備苗枠を装着した苗移植機の平面図
【図6】苗の積込移動状態を示す予備苗枠の側面断面図
【図7】前後の苗載せ台の配置を示す部分図
【図8】(a)リンク機構の別実施例を示す側面図、(b)リンク機構の別実施例を示す側面図
【図9】補助ライトの取付状態を示す別実施例の側面図
【図10】(a)補助ライト部の拡大側面図、(b)補助ライト部の正面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本件の苗移植機は、乗用四輪走行形態の走行車体12の後部に、平行リンク形態のリフトリンク15を介して、多条(6条)植形態の植付部19を連結したものである。前記走行車体12には、エンジン13を設け、該エンジン12の上側に運転席14を搭載する。そして、該運転席14の前側にステアリングポスト1を設け、該ステアリングポスト1の上部には、ステアリングハンドル16、変速レバー17、フィンガーアッププレバー形態の植付操作レバー18等を設け、該ステアリングポスト1の下部の左右両側部に位置するサイドフロア2の外側には、補給用のマット苗(マット苗に収容した状態のマット苗)を支持する予備苗枠4を設ける。
【0021】
前記走行車体12の前部には、エンジン13からベルト伝動される油圧無段変速装置21、及びミッションケース22を配置し、該ミッションケース22の左右両側部に張り出すフロントアクスルハウジング23の両端部に、それぞれ操向前輪20,20を軸装している。
【0022】
また、ミッションケース22から後方のリアクスルハウジング24にわたって車輪連動軸25が取り出されると共に、PTO軸26が取出されている。
前記車体12の後端部には、リアフレーム27を上下方向に立設し、該リアフレーム27に前記リフトリンク15を連結し、該リアフレーム27の上方且つ走行車体12の後部に、苗の植付位置周辺に肥料を供給する施肥装置28を設ける。
【0023】
そして、前記車体12とリフトリンク15の間には、油圧回路によって伸縮されるリフトシリンダ20を設け、該リフトシリンダ20の油圧回路における昇降制御弁(図示省略)の切替制御によって、リフトシリンダ20が伸縮されて、植付部19を昇降する構成としている。
【0024】
前記リフトリンク15の後端のヒッチリンク29に対してローリング軸30周りにローリング回動自在に装着される植付部19は、前記PTO軸26から連動される伝動機構を内装した植付伝動ケース31を主体として、この植付伝動ケース31の下方に、中央部と、この左右両側部とのセンタフロート52、サイドフロート53,53を配置し、該センタフロート52及びサイドフロート53,53を土壌面に接触させ、滑走させて支持推進させる。
【0025】
また、該植付伝動ケース31の上側には、後下り傾斜姿勢の多条植形態(本実施例では6条分)の苗タンク35を配置し、リードカム軸(図示省略)の回転により1枚マット苗幅相当間隔に亘って左右方向へ往復移動する案内構成とし、該苗タンク35の後下端に形成する苗繰出口を、植付装置54の苗植付爪33の作用する苗取口34を形成した苗取口枠32に案内させる。
【0026】
該苗取口枠32は前記植付伝動ケース31側に取り付けられ、この植付伝動ケース31の後部の各植付条位置に配置の植付装置54の先端の植付爪33を作用させる。各植付装置54は、先端の植付爪33を略楕円形状の植付軌跡線Dに作動させて、上支点位置を下降するとき前記苗取口枠32の苗取口34に介入して苗タンク35から繰出される苗を分離して保持する構成とすると共に、下支点部に下降することによって、この保持している苗を土壌面に一定深さに挿植するもの構成とする。これら各苗植付爪33は、前記センタフロート52及びサイドフロート53,53で均平された均平跡の土壌面に植え付け可能となる、多条植形態で構成される。
【0027】
前記植付部19の昇降制御は、前記リフトシリンダ20を作動させる油圧回路の昇降制御弁を、コントローラから出力することによって行わせる。前記植付部19の中央部に配置するセンタフロート52の上下揺動によって、車体12の走行する土壌耕盤が深いときは、リフトシリンダ20を伸長させて植付部19を上昇し、耕盤が浅いときは逆に下降させて植付装置54による苗植付深さが略一定となる昇降制御を行う構成とする。
【0028】
前記植付装置54は、植付伝動ケース31の前部上側に、苗タンク35の上端底部を左右移動自在に支持する植付部フレーム36を有し、該植付部フレーム36の前側に、フロート支持アーム37を介してセンタフロート52及びサイドフロート53,53の後端部が上下回動自在に支持されている。
【0029】
また、前記植付部フレーム36の前側に、上下動自在の整地フレーム40を取り付けて、該整地フレーム40の下端部で且つセンタフロート52及びサイドフロート53,53の前側に、圃場面を回転力で整地する整地ロータ44,45,45を有するロータフレーム46を上下動自在に取り付ける。
【0030】
前記センタフロート52及びサイドフロート53の前側に配置した整地ロータ44,45,45によって、センタフロート52及びサイドフロート53によって均平する土壌面を予めこれら整地ロータ44,45,45によって砕土して均平し易くするものである。
【0031】
該整地ロータ44,45,45は、前記リアクスルハウジング24の伝動機構部から連動軸42を介して駆動力を受け、整地ロータ44,45,45を駆動回転する形態である。
【0032】
43は前記ロータフレーム46の前端部を植付部フレーム36の上端部に吊下げるロータ吊下スプリングであり、前記植付部19が大きく上下動すると、リンクアーム38、及びフロート支持アーム37等を介して整地ロータ44,45,45を連動して昇降する構成となっており、この整地ロータ44,45,45を装着するフロート支持アーム37が、植付部フレーム36に対して上下動することができるため、土壌面に対する整地位置を上下に調節しながら、しかもロータフレーム46の傾斜角度を変えながら、機体中央のセンタロータ44及び機体左右両側のサイドロータ45,45を土壌面に均等に接圧させて、圃場面が均平となるように整地する。
【0033】
また、前記ステアリングポスト1の側方のサイドフロア2の外側部に、支柱3によって支持される複数の苗載せ台4a,4b…を備える予備苗枠4を配置する。そして、該予備苗枠4の上段に配置する苗載せ台4aを下側の苗載せ台4bと前後一対のフロントリンク5とリアリンク6で構成するリンク機構で連結し、上段の苗載せ台4aを前後方向に移動自在に構成する。
【0034】
これにより、予備苗枠4は、前記上段の苗載せ台4aが下段の苗載せ台4bの前端部に位置し、苗載せ台4a,4bが直線状に並ぶ展開状態と、上段の苗載せ台4aと下段の苗載せ台4bが上下方向に間隔を空けて位置する収納状態を切替可能に構成される。
【0035】
前記フロントリンク5には後側へ湾曲する後向湾曲部7を形成し、該後向湾曲部7の前側に操作作業用の前側空間部Fを形成する。
また、前記リアリンク6には前側へ湾曲する前向湾曲部8を形成し、該前向湾曲部8の後側に操作作業用の後側空間部Rを形成する。
【0036】
苗移植機による苗の植付作業を行うにあたり、予め植付作業に必要な予備の苗を予備苗枠4に積載しておき、植付部5の苗タンクに積載した苗が使い切られると、作業者がこの苗を掴んで後側の苗タンクへ供給する。
【0037】
マット苗を収容したマット苗を予備苗枠4に供給載置するときは、リンク機構によって立体状態にある上段の苗載せ台4aを、前側へ倒伏回動して、直下の下段の苗載せ台4bの前側に位置させ、上段の苗載せ台4aと下段の苗載せ台4bを直線状に配置する。
【0038】
上段の苗載せ台4aを前側に展開した状態で、圃場端の農道等から運搬してきたマット苗を一枚ずつこの苗載せ台4aの載置面9上に載置して、後側の苗載せ台4b上に向けて手で押し込む。このとき、この下段の苗載せ台4bよりも下段に配置する固定苗載せ台4c…にマット苗を積載するときは、サイドフロア2上に搭乗している作業者が下段の苗載せ台4bに供給されたマット苗を後側へ取り出して、固定苗載せ台4c…に載せ替えて積み込み作業を行う。
【0039】
このように、マット苗を上段の苗載せ台4aの前側から積み込んだり、取り出したりするときには、作業者がフロントリンク5の後向湾曲部7の前側に形成される前側空間部Fに、マット苗の左右両側部を把持したままの手や腕を差し込むことができるので、マット苗の積み込み作業や、取り出し作業等を行い易くなるので、作業能率が向上する。
【0040】
また、運転者が下段の苗載せ台4bや固定苗載せ台4c…からマット苗を取って苗タンクへ供給するときは、このリアリンク6の前向湾曲部8の後側に形成される後側空間部Rに、マット苗の左右両側部を把持したままの手や腕を差し込むことができるので、機体後側からのマット苗の出し入れ操作が行い易くなり、作業能率が向上する。
【0041】
さらに、前記下段の苗載せ台4bの左右両側部には、この前側位置に引き出される上段の苗載せ台4aの載置面(底部)9よりも上下方向に長い(高い)左右の側壁10,10を形成し、機体前側に位置する上段の苗載せ台4aから送られてくるマット苗が、下段の苗載せ台4bの左右側部からはみ出すことを該左右の側壁10,10で防止し、マット苗の下方への落下を防止し、下段の苗載せ台4bの載置面9へマット苗を案内する。
【0042】
上記により、苗が傷付いて植付作業に適さなくなり、苗を無駄にしてしまうことが防止されると共に、マット苗の予備苗枠4への積み込み作業が能率よく行えるようになる。
さらには、前記予備苗枠4を下方から支持する、側面視で前上り傾斜姿勢の支柱3の基部を走行車体12の前部に設け、該支柱3の基部よりも機体前側に、下方から予備苗枠4を支持する、側面視で後上り傾斜姿勢の補助支柱11を設ける。そして、該支柱3と補助支柱11の上端部同士を近づけ、該支柱3と補助支柱11の接触点の上部に、予備苗枠4を載置する。
【0043】
上記の通り、上段の苗載せ台4aをこの下段の苗載せ台4bの前側へ引出して直線状に配置することによって、走行車体12の前方部から重いマット苗を積み込む作業を行うときには、この予備苗枠4が支柱3と前側の補助支柱11によって支持されるので、安定した支持構成となり、マット苗を供給作業する作業者にとって安定した作業姿勢をとることができる。これにより、機体の走行による前記リンク機構(フロントリンク5とリアリンク6)の揺動が少なくなり、上段の苗載せ台4aの前側引出姿勢位置の支持、及び植付作業が安定するため、作業者がステアリングポスト1と外側の予備苗枠4との間のサイドフロア2上を移動する際に前記補助支柱11が邪魔にならないので、作業能率が向上する。
【0044】
前記左右の各予備苗枠4,4を支持する支柱3,3は、下端部をフロントアクスルハウジング23上部に取付けて、この上側部を覆うサイドフロア2を慣通して、このサイドフロア2の上方位置に立設する。
【0045】
該支柱3,3の上端部には、下段の苗載せ台4bと固定苗載せ台4cを上下方向の所定間隔を開けて配置し、該下段の苗載せ台4bと固定苗載せ台4cで基部苗載せ台枠41を構成する。該基部苗載せ台枠41は、基部苗載せ台枠41の内側端に取付支柱47の下端部48を嵌合させて支持し、セットボルト等の締付けによって固着して構成する。
【0046】
また、これら下段の苗載せ台4bと固定苗載せ台4cの間の前側には、左右両側部にフロントアーム49,49を配置し、前記基部苗載せ台枠41の剛性を保持させている。
このような予備苗枠4を取付支持する支柱3の前側に、前記補助支柱11が設けられる。この補助支柱11の上端部は、前記支柱3の上端部に取付ブラケット49によって一体的に取付け、下端部は前記サイドフロア2の側部を慣通して、または、このサイドフロア2の外側部を迂回して、車体12前端部と一体的に構成される左右横方向のブラケットパイプ50の側端ソケット51部に嵌合して支持固定する。
【0047】
このブラケットパイプ50は、車体12の左右両側部を前後方向にわたって平行状に設けられる縦フレーム60の前端部間を連結した形態で、この左右横端部にはブラケット61を有して、前記サイドフロア2や、ステアリングポスト1、乃至ミッションケース22等と連結する形態としている。
【0048】
前記支柱3と補助支柱11は、上部が側面視で三角状形態に構成されて、サイドフロア2よりも外側へ偏倚させて屈曲形成し、前記基部苗載せ台枠41の内側後部に形成される下端部48を、この支柱3上端のソケット47に嵌合支持させて着脱可能の形態としている。
【0049】
前記基部苗載せ台枠41を構成する下段の苗載せ台4bと固定苗載せ台4cは、この上方に位置される上段の苗載せ台4aと略同形態に構成されて、各々略一枚のマット苗を収容できるマット苗Wを載置支持することができる。
【0050】
各予備苗枠4の前後左右の四辺周部に沿って低いストッパ62を形成し、マット苗Wの滑出しを防止する。前記上段の苗載せ台4aは、基部苗載せ台枠41の下段の苗載せ台4bの上方に適宜高さ間隔を有して支持されるもので、前後一対のフロントリンク5とリアリンク6とによって、水平平行状態を保った状態で前後に移動される。
【0051】
下段の苗載せ台4bの左右両外側に、フロントリンク5とリアリンク6の下端部を、前後方向に回動自在に第1枢支部63、64を構成し、該フロントリンク5とリアリンク6の上端部を上段側の上段の苗載せ台4aの左右両外側に第2枢支部65、66を構成する。そして、前記フロントリンク5とリアリンク6を所定の角度域を前後に回動することにより、上段の苗載せ台4aを、基部苗載せ台枠41の直上位置Aに移動させたり、この上段の苗載せ台4aを前側へ引出移動させて、この基部苗載せ台枠41上の下段の苗載せ台4bの前端部に連接させる引出位置Bとに切替移動させるものである。
【0052】
このような移動操作のために、この上段の苗載せ台4aの後端左右両側部にはハンドル67を設けている。
前記フロントリンク5、及びリアリンク6は、前記上段の苗載せ台4aが直上位置に回動されると、下段の苗載せ台4bとの上下間隔が狭く規制されるが、特にこの下段の苗載せ台4b上面のマット苗Wを後側へ取出すときは、図3のようにリアリンク6の後側に後側空間部Rを形成していることによって、このマット苗Wを把持して後方へ取出す取出作業操作が行われ易くなる。
【0053】
また、この上段の苗載せ台4aの直上位置Aの状態で、フロントリンク5を湾曲形成して前側に前側空間部Fを形成する形態(図8参照)では、この下段の苗載せ台4bの前側から直接マット苗Wを出し入れすることが容易である。前後リンク5、6共に湾曲部7、8を形成する形態としては、図8(a)(b)のように側面視でS字状の形態としたり、X字状の形態とすることができる。
【0054】
前記基部苗載せ台枠41上の下段の苗載せ台4bの左右両側部には、前記ストッパ62に代えて高くした側壁10を形成する。この側壁10は、この下段の苗載せ台4bの前側に取出連接される上段の苗載せ台4aの苗載面9、または、この後端部のストッパ62を形成している場合は、このストッパ62上縁よりも高く形成している。
【0055】
これら上段の苗載せ台4aを引出位置Bに移動させた状態で、マット苗Wの積込作業を行うときは、この上段の苗載せ台4aの苗載面9から後側の下段の苗載せ台4bの苗載面へマット苗が押込まれるとき、これら苗載面9の高低差があったり、または前後端縁部のストッパ62が形成されていることによって(図6参照)、マット苗W押込端部が浮上しても、この後側の下段の苗載せ台4bに形成の側壁10で案内させることが容易であるため、マット苗Wの押込操作を簡単、容易に行わせることができる。
【0056】
このため、これら上段の苗載せ台4aの前端部と下段の苗載せ台4bの後端部にストッパ62を形成する形態にあっては、側壁10,10の高さを、これらのストッパ62よりも高く形成することができる。
【0057】
また、この側壁10は下段の苗載せ台4bの前後全長にわたって形成することもできるが、前半部等一部の領域のみ形成することもできる。
次に、主として図7、図8に基づいて、サイドフロア2の前部下側に、点灯可能のライト70を設けて、暗い所や、時間帯において、前輪55の操向、乃至走行位置を見易くするものである。
【0058】
このサイドフロア2の下側には取付ブラケット71によって補助ライト70を装着し、このライト70を支持軸72の周りに上下に旋回させて、照射角度Eを調節することができる。このライト70には照射面を開閉するカバー73が、ステアリングポスト1のレバー74操作で上下にガイドレール78に摺動案内させて操作可能に設けられる。
【0059】
そして、このライト70の照明される前輪55の踏圧位置等を、運転席14から透視穴、乃至透視窓等を介して見ることができる。また、前記レバー74には、前記ライト70の回路77スイッチ75をON、OFFするフック76設けて、レバー74を引いてカバー73を開けるとき、このフック76でスイッチ75をONして点灯させることができる。また、レバー74を押し戻して、カバー73を閉めると、スイッチ75がOFFされる。
【符号の説明】
【0060】
3 支柱
4 予備苗枠
4a 上段の補助苗載せ台
4b 下段の補助苗載せ台
5 フロントリンク
6 リアリンク
7 後向湾曲部
8 前向湾曲部
9 苗載面
10 側壁
11 補助支柱
12 走行車体
F 前側空間部
R 後側空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行車体(12)の後部にリンク機構(15)を介して圃場に苗を植え付ける植付部(19)を昇降自在に設け、該走行車体(12)の前部に予備の苗を積載する予備苗枠(4)を設けた苗移植機において、
該予備苗枠(4)は、複数の苗載せ台(4a,4b)を上下方向に間隔を空けて配置し、該苗載せ台(4a,4b)を前後のリンクアーム(5,6)で連結し、該前後のリンクアーム(5,6)を操作して前記苗載せ台(4a,4b)が前後方向に並ぶ展開状態と苗載せ台(4a,4b)が上下方向に並ぶ収納状態とに切替自在に構成し、前記リンクアーム(5,6)に湾曲部(7,8)を形成したことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
後側リンクアーム(6)に前向湾曲部(8)を形成し、該前向湾曲部(8)の後側に作業用の後側空間部(R)を形成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記前側リンクアーム(5)に後向湾曲部(7)を形成し、該後向湾曲部(7)の前側に作業用の前側空間部(F)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項4】
リンクアーム(5,6)の回動範囲を、予備苗枠を展開状態にしたとき、前側の上段の苗載せ台(4a)の底部(9)が下段の苗載せ台(4b)の上端部よりも上位となるまでに設定し、該下段の苗載せ台(4b)の左右両側部に、展開状態で機体前側に位置する上段の苗載せ台(4a)の底部(9)よりも高い側壁(10,10)を形成し、該左右の側壁(10,10)は、前記上段の苗載せ台(4a)側から後方に移送される苗を下段の苗載せ台(4b)上に案内する構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記予備苗枠(4)を支持する支柱(3)の基部を前記走行車体(12)の前部に設け、予備苗枠(4)を支持する補助支柱(11)の基部を走行車体(12)の前部に設け、前記支柱(3)の端部と補助支柱(11)の端部を接近させて予備苗枠(4)に取り付けたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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