説明

苗移植機

【課題】 本発明は、苗横送り装置によって供給される苗を適正な位置及び姿勢で保持し、その保持した苗を苗植込具で植え付ける構成とすることにより、植付精度の向上を図るものである。
【解決手段】 苗植付装置には、苗横送り装置によって供給された苗の苗床部を苗保持位置(R)で保持する左右のローラ(185)と、該左右のローラ(185)を互いに近づく側に付勢する付勢手段(186)と、苗保持位置(R)にある苗床部に上側から作用して付勢手段(186)に抗して左右のローラ(185)の間隔を広げて苗床部を植付ガイド(115)に沿って下方に移送して苗を圃場に植え付ける苗植込具(122)を設けた苗移植機とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗移植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
乗用走行車体の後側にリンク装置を介して苗植付部を昇降可能に設け、該苗植付部は、苗取出位置に向けて苗箱を搬送する苗箱主搬送部と、苗取出位置で苗箱から苗を取り出す苗取出装置と、該苗取出装置で取り出された苗を苗ホルダーで保持して搬送する苗搬送装置と、苗抜き位置で苗搬送装置から苗を抜き出す苗抜き装置と、該苗抜き装置によって抜き出される苗を載せて横送りする苗送りベルトを備える苗横送り装置と、該苗横送り装置によって供給された苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置を備えた苗移植機において、苗植付装置には、苗を植付ガイドに沿って下方に移送して圃場に植え付ける苗植込具を設けた構成がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−4856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術の構成は、苗横送り装置によって供給される苗は、植付ガイドの上端部に支えられ、該植付ガイドの上端部に支えられた苗を苗植込具が植え付けることになる。
本発明は、苗横送り装置によって供給される苗を適正な位置及び姿勢で保持し、その保持した苗を苗植込具で植え付ける構成とすることにより、植付精度の向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、乗用走行車体(2)の後側にリンク装置(3)を介して苗植付部(4)を昇降可能に設け、該苗植付部(4)は、苗取出位置(P)に向けて苗箱を搬送する苗箱主搬送部(31)と、苗取出位置(P)で苗箱から苗を取り出す苗取出装置(33)と、該苗取出装置(33)で取り出された苗の苗床部を苗ホルダー(83)で保持して苗を搬送する苗搬送装置(34)と、苗抜き位置(Q)で苗搬送装置(34)から苗を抜き出す苗抜き装置(35)と、該苗抜き装置(35)によって抜き出される苗を載せて横送りする苗送りベルト(113)を備える苗横送り装置(36)と、該苗横送り装置(36)によって供給された苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置(37)を備えた苗移植機において、苗植付装置(37)には、苗横送り装置(36)によって供給された苗の苗床部を苗保持位置(R)で保持する左右のローラ(185)と、該左右のローラ(185)を互いに近づく側に付勢する付勢手段(186)と、苗保持位置(R)にある苗床部に上側から作用して付勢手段(186)に抗して左右のローラ(185)の間隔を広げて苗床部を植付ガイド(115)に沿って下方に移送して苗を圃場に植え付ける苗植込具(122)を設けた苗移植機とした。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、苗搬送装置(34)は、苗ホルダー(83)を苗取出位置(P)から苗抜き位置(Q)までの間で往復移動させる揺動リンク(84,85)と、該揺動リンク(84,85)の作動で苗ホルダー(83)が苗取出位置(P)に到達するのに連動して、苗箱主搬送部(31)における苗取出位置(P)よりも苗箱の搬送下手側の位置で苗箱の育苗ポット(C1)内に突入して該育苗ポット(C1)を清掃する清掃具(182)を備えた請求項1に記載の苗移植機とした。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、苗搬送装置(34)は、苗ホルダー(83)を苗取出位置(P)から苗抜き位置(Q)までの間で往復移動させる揺動リンク(84,85)と、苗ホルダー(83)内の苗床部を検出する検出手段(183)を備え、苗ホルダー(83)が苗取出位置(P)から苗抜き位置(Q)へ移動する工程以外のタイミングで検出手段(183)の検出により、警報を発するか又は苗植付部(4)の作動を停止する制御装置(181)を設けた請求項1又は請求項2に記載の苗移植機とした。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、苗横送り装置(36)は、載せられる苗の葉側で苗送りベルト(113)に隣接する葉案内板(210)を備えた請求項1から請求項3の何れか1項に記載の苗移植機とした。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、苗ホルダー(83)又は苗送りベルト(113)を洗浄する洗浄ノズル(116)と、該洗浄ノズル(116)へ供給する洗浄液を貯留する洗浄液タンク(17)と、該洗浄液タンク(17)から洗浄ノズル(116)へ洗浄液を供給する洗浄液ポンプ(174)を設け、洗浄液タンク(17)を、主タンク(17a)と該主タンク(17a)よりも少なくとも上端部を高位に配置した副タンク(17b)で構成し、主タンク(17a)と副タンク(17b)を連通する連通ホース(171)と、主タンク(17a)内の洗浄液の液面が所定以上であれば副タンク(17b)から主タンク(17a)への洗浄液の供給を規制する規制バルブ(172)を設けた請求項1から請求項4の何れか1項に記載の苗移植機とした。
【0010】
また、請求項6に係る発明は、乗用走行車体(2)から苗植付部(4)を着脱可能に構成し、苗植付部(4)が装着状態であることを検出し且つ乗用走行車体(2)を後進させるための操作を検出すると、苗植付部(4)を上昇させると共に、原動機(E)の回転数を上昇させて苗植付部(4)の上昇速度の向上を図るが、苗植付部(4)が非装着状態であることを検出し且つ乗用走行車体(2)を後進させるための操作を検出したときは、原動機(E)の回転数を所定以下に規制する制御装置(181)を設けた請求項1から請求項5の何れか1項に記載の苗移植機とした。
【0011】
また、請求項7に係る発明は、乗用走行車体(2)の走行距離を検出する走行距離センサ(176)を設け、苗植付部(4)は複数条に苗を植え付ける構成とし、苗植付部(4)の植付条のうちの一部の植付条のみの苗の植付を部分的に停止する停止クラッチ(64b)を複数設け、複数の停止クラッチ(64b)は、各々の別個の植付条で且つ同じ植付条数の苗の植付を停止する構成とし、走行距離センサ(176)で検出される走行距離が所定距離に到達するごとに左右方向一外側の停止クラッチ(64b)から内側の停止クラッチ(64b)へかけて順次操作する制御装置(181)を設けた請求項1から請求項6の何れか1項に記載の苗移植機とした。
【0012】
また、請求項8に係る発明は、前記所定距離を変更して設定できる設定手段(180)を設けた請求項7に記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によると、苗横送り装置によって供給される苗は左右のローラ(185)の間の上方に安定して保持されるから、苗を適正な位置及び姿勢で保持でき、苗植込具(122)が苗保持位置(R)にある苗床部に上側から作用すると、付勢手段(186)に抗して左右のローラ(185)の間隔が広がり、苗床部は左右のローラ(185)の間を通って下方に移送されるが、苗床部の最大幅部分が左右のローラ(185)間の最小間隔部を通り過ぎると付勢手段(186)により左右のローラ(185)が苗床部を下方に押し出して植え付けガイド(115)に円滑に引き継がれて移送される。従って、苗植込具(122)により適正な深さ及び姿勢で苗を植え付けることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の発明の効果に加えて、清掃具(182)により、苗取出位置(P)で苗を取り出した後の空になった育苗ポット(C1)内を清掃でき、育苗ポット(C1)内に土や根が残存することで以降の苗箱搬送の抵抗になったり空になった苗箱を複数枚積み重ねる支障となったりするのを防止し、苗箱を円滑に搬送できると共に、複数枚の空の苗箱を容易にコンパクトに積み重ねることができ、苗移植機からの空箱の回収作業が容易になる。ひいては、空の苗箱を再度育苗に使うときに苗箱を清掃する手間を省くことができ、育苗作業も容易になる。そして、この苗箱の清掃は、苗搬送装置(34)の作動に連動して行われるので、格別な清掃装置が不要で構造の簡素化が図れる。
【0015】
請求項3に記載の発明によると、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、苗抜き装置(35)が苗抜き位置(Q)で苗ホルダー(83)から苗を抜き出すことができなかったり苗ホルダー(83)に苗床部から崩れた土が残ったりしたとき、検出手段(183)の検出により警報を発するか又は苗植付部(4)の作動を停止し、植付作業を継続することによる植付欠株の発生や不適正な植付を回避することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によると、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、苗丈が長くて苗送りベルト(113)から外に苗の葉の先端部が突出する状態でも、苗の葉の先端部は葉案内板(210)に案内されながら移送されるので、突出する苗の葉が苗送りベルト(113)の内側に巻き込まれることを防止でき、苗の損傷を防止できると共に、苗送りベルト(113)上で苗の姿勢が不適正になることで植付深さや植付姿勢が不適正になるのを防止できる。
【0017】
請求項5に記載の発明によると、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、副タンク(17b)へ主タンク(17a)よりも高位まで洗浄液を供給しても、連通ホース(171)を介して主タンク(17a)へ洗浄液が供給されて主タンク(17a)の洗浄液供給口(173a)から洗浄液が溢れるようなことを防止できる。ひいては、副タンク(17b)の容積を有効利用でき、主タンク(17a)及び副タンク(17b)による洗浄液の貯留量を増加させることができ、植付作業中に洗浄液を補給する回数を削減でき、植付作業能率の向上が図れる。
【0018】
請求項6に記載の発明によると、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、苗植付部(4)が装着状態であれば、乗用走行車体(2)を後進させるための操作に連動して、苗植付部(4)を上昇させると共に、原動機(E)の回転数を上昇させて苗植付部(4)の上昇速度の向上を図り、苗植付部(4)を素早く対地浮上させて機体の後進で苗植付部(4)を地面に引きずって損傷させることを防止できる。そして、苗植付部(4)が非装着状態であれば、原動機(E)の回転数を所定以下に規制し、低速で後進することにより苗植付部(4)の装着作業の容易化及び安全性向上が図れる。
【0019】
請求項7に記載の発明によると、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、機体の進行方向に対して畦が斜めであるとき、畦からの未植付幅が均等になるべく、自動的に畦側となる左右方向一外側の停止クラッチ(64b)から内側の停止クラッチ(64b)へかけて順次操作でき、停止クラッチ(64b)を順次操作する操作を省略できて操作の簡略化が図れ、ひいては植付作業能率の向上が図れる。
【0020】
請求項8に記載の発明によると、請求項7に記載の発明の効果に加えて、機体の進行方向に対する畦の角度に対応して畦からの未植付幅が均等になるべく、走行距離が所望の所定距離に到達するごとに停止クラッチ(64b)を順次操作でき、圃場での汎用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】苗移植機の側面図
【図2】同上平面図
【図3】苗植付部の要部の側面図
【図4】苗箱供給部及び苗箱搬送部の側面図
【図5】苗箱供給の制御ブロック図
【図6】苗箱供給用フローチャート
【図7】各部材の動作表
【図8】苗箱送り不良の警報フローチャート
【図9】植付不良の警報フローチャート
【図10】苗箱検出センサの(a)側面図、及び(b)正面図
【図11】苗叩き及び苗送りベルトの背面図
【図12】苗抜き装置の側面図
【図13】洗浄装置の背面図
【図14】植付部の伝動機構図
【図15】植付伝動機構部の一部の背断面図
【図16】駆動ケースの背断面図
【図17】図16のS1−S1断面図
【図18】図16のS2−S2断面図
【図19】苗搬送駆動ケースの側断面図
【図20】苗ホルダーを示す背面図
【図21】水タンクの周辺構成を判り易く示す図
【図22】異なる苗移植機の後部を示す側面図
【図23】着脱ヒッチの周辺構成を示す側面図
【図24】整地ロータの周辺構成を判り易く示す平面図
【図25】ブロック図
【図26】2人乗り苗移植機の側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲を拘束するものではない。
苗移植機1は、8条植えの施肥田植機であって、乗用走行車体2の後側にリンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部には施肥装置5の肥料ホッパ5aと、各条ごとに肥料を繰り出す肥料繰出装置5bが配設されている。尚、施肥装置5には肥料を搬送する圧力風を発生させるブロア170を設けており、このブロア170は機体の内側(右側)に回動させて格納できる構成となっている。
【0023】
走行車体2は、駆動回転する左右一対の操向可能な前輪6,6と駆動回転する左右一対の後輪7,7を備え、前後フレーム8上の前側にミッションケース9、その後側にエンジンEが搭載され、エンジンEの回転動力は、第一ベルト伝動装置10、第二ベルト伝動装置11を介してミッションケース9内に伝動されるようになっている。そして、ミッションケース9内のミッションで変速された動力が前輪6,6及び後輪7,7に伝達されると共に、伝動軸9a、中間ギヤケース9b、伝動軸9cを介して苗植付部4に伝動される。車体2の前側には前輪6,6を操向操舵するステアリングハンドル12が設けられ、また、該ハンドル12の後側には操縦者が着座する操縦座席13が設置されている。14はステップフロア、15は予備苗枠、16は線引きマーカを示す。
【0024】
施肥装置5の肥料ホッパ5aの前方位置で且つ操縦座席13の左右両側方位置には、洗浄液となる水を貯留する洗浄液タンクである水タンク17を配置しており、この水タンク17は、操縦座席13の右側(機体右側)に配置した主タンク17aと、操縦座席13の左側(機体左側)に配置した副タンク17bで構成される。主タンク17aと副タンク17bは同じ形状で同じ容積となっているが、副タンク17bが主タンク17aよりも若干高位に配置されている。そして、ブロア170を機体の内側(右側)に格納したとき、ブロア170の一部が副タンク17bの下方に位置する構成となっており、高位に配置される副タンク17bの下方のスペースの有効利用を図っている。主タンク17aと副タンク17bを連通ホース171で連通し、主タンク17aと連通ホース171の接続部となる連通ホース171の流路には、規制バルブ172を設けている。この規制バルブ172は、主タンク17a内で略充満状態に主タンク17a内の水の液面が到達すると、連通ホース171の連通を遮断して副タンク17bから主タンク17aへの水の供給を規制し、主タンク17a内の水の液面が前記略充満状態よりも低くなると、連通ホース171を連通させて副タンク17bから主タンク17aへの水の供給を許容する。これにより、副タンク17bへ主タンク17aよりも高位まで水を供給しても、連通ホース171を介して主タンク17aへ水が供給されて主タンク17aの水供給口173aから水が溢れるようなことを防止できる。尚、副タンク17bにも水供給口173bを設けている。尚、規制バルブ172により制御される主タンク17a内の水の液面を、通常の植付作業で機体が前後あるいは左右に傾斜する範囲(傾斜角度15度以内)では主タンク17aから水が溢れ出ない高さに設定すればよい。尚、規制バルブ172は、主タンク17a内の液面を検出する液面センサの検出に基づき流路を開閉する周知の構成であり、機械式の構成でも電気式の構成でもよい。そして、主タンク17a内の水が水ポンプ174を介して洗浄ノズル116へ供給され、後述する苗搬送装置34の苗ホルダー83又は苗横送り装置36の苗送りベルト113へ噴霧して洗浄する構成となっている。
【0025】
前記予備苗枠15は、ステアリングハンドル12の下部に設けたフロントカバー150の左右すなわち乗用走行車体2の前部の左右に配置され、予備苗載台151a,151b,151cを上下方向に複数段(3段)備えている。予備苗載台151a,151b,151cより下側には予備苗枠15を支持する支持フレーム152を設けており、この支持フレーム152は、乗用走行車体2の前輪アクスルケース153に固着されている。
【0026】
また、L1はミッションケース9内の変速ギヤを切り替えるチェンジレバー、L2は油圧式無段変速装置を変速操作する変速レバー、L3は植付部の伝動入・切及び植付部を昇降させる植付昇降レバー、L4は植付部の作業状態と非作業状態とを切り替えるフィンガアップレバー、L5は植付部昇降制御の感度を調節する副感度調節レバー、L6は植付部の下降を規制する下降ロックレバー、Dは対地昇降制御の感度を調節する感度調節ダイヤルである。前記変速レバーL2は、左右に延びる前後進中立操作域と、該前後進中立操作域の左端から前方へ操作する前進操作域と、前後進中立操作域の右端から後方へ操作する後進操作域を備えるクランク状のレバー操作パターン(レバー操作ガイド)で操作する構成であり、前進操作域では前側に操作するほど高速となり後進操作域では後側に操作するほど高速となり、前後進中立操作域では左側(前進操作域側)に付勢されている。前後進中立操作域の右側部に変速レバーL2が操作されたことを検出する後進操作センサ175を設け、該後進操作センサ175により後進する直前に乗用走行車体2を後進させるための操作が行われたことを検出する構成となっている。
【0027】
苗植付部4は、8条植えの構成で、昇降用油圧シリンダ26によって昇降用油圧(電磁)バルブ27を介して上下に昇降する構成であり、隣接する2条づつで共用の後下がりに傾斜した上下2段の苗箱供給部30が左右並列に4組設けられ、これら各組の苗箱供給部の後端部に苗箱主搬送部31が接続されて苗箱搬送路が構成されている。各苗箱主搬送部31は、上下2段の苗箱供給部30,30から順に1個づつ供給される苗箱を前半は下向きに搬送し、途中で搬送方向を徐々に変え、後半は上向きに搬送する側面視略U字条に形成されている。苗箱搬送部31の終端部に接続して、後記苗取出位置Pで苗を取り出された後の空の苗箱を複数個上下に重ねた状態で収容することのできる空箱収容枠38が設けられている。空箱ガイドレール39aと39bとの繋ぎ目に対応する部位には、空箱を上側から案内するガイド体40が設けられ、苗箱の周回移動が円滑に行われるようにしている。ところで、苗が取出された後の空の苗箱は、空箱ガイドレール39がU字状に上方に屈曲するよう設けているので、再び上方に搬送されていき、その上端部から排出される空の苗箱は、空箱収容枠38内に収容されることになる。
【0028】
なお、この種の移植機に使用される苗箱Cとしては、縦横に多数配列した育苗ポットC1に苗が一株づつ収容された可撓性を有する苗トレイが使用される。
苗箱供給部30にある苗箱を主搬送部31へ供給する苗箱供給装置29が備えられている。苗箱供給部30の底面には空転ローラ20,…が設けられていて、載置されている苗箱が自重で後方に滑り落ちるようになっている。各苗箱供給部30の後端部には、苗箱主搬送部31の搬送路へ苗箱を供給する供給装置29として、苗箱の左右縁部を把持して苗箱を主搬送部側に繰り出す左右各一対の供給ローラ21,22と、該供給ローラの前方に位置し、外周部に形成された突起がポットとポットの隙間に下側から係合して苗箱を送る幅広の送りローラ23とが設けられている。上下苗箱供給部の下側供給ローラ22及び送りローラ23は、それぞれモータM1,M2で回転駆動される。
【0029】
また、各苗箱主搬送部31に対応して、苗箱を苗箱搬送路に沿って搬送させる苗箱送り装置32と、苗箱主搬送部31の苗取出位置Pで搬送中の苗箱からポット横一列分づつ苗を取り出す苗取出装置33と、取り出された苗を下側前方に弧を描くような軌跡でもって搬送する苗搬送装置34と、該苗搬送装置から苗を抜き出す苗抜き装置35と、該苗抜き装置によって抜き出される横1列分の苗を半分づつ左右両側に横送りする苗横送り装置36と、該苗横送り装置によって供給される苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置37が設けられている。
【0030】
駆動ケース41と一体のフレーム42の下側左右水平部分から植付伝動フレーム45が後方に延出され、駆動ケース41の上面には苗載台支持フレーム46が固着され、これで上下2段の苗箱供給部(供給台)30を支持している。ローリング支持軸24は、フレーム42の左右中央部分に固着の植付部支持ブラケット48に取り付けた軸受ケース50に回動自在に軸受され、植付部全体がローリング自在に支持されている。この植付部全体は、駆動ケース41上に設けた水平センサ43の検出値に基づきこの検出値が設定値に維持されるように、制御装置からの操作信号によりローリングモータ25を正逆転駆動することで、該植付部がローリングスプリング28を介して支持軸24回りに左右ローリング制御されるようになっている。なお、前記水平センサ43は、植付部の脱着部より後側に設置するようにしておくことで、植付部を交換しても作動の狂いをなくすことができる。
【0031】
各ユニットの下方には、植付作業時に圃場面を整地しながら滑走する4個のフロート52,52,53,53が設けられ、支持アーム56の後端部に上下回動自在に枢着されている。これらフロートの左右両側には、各条の苗植付位置の近傍の圃場面に施肥用の溝を形成する作溝器54と、その後側に施肥ガイド5cとが取り付けられ、この施肥ガイド5cには肥料繰り出し装置5bからの肥料を移送する施肥ホース5dが連設されている。
【0032】
苗箱送り装置32は、左右一対の送り爪60,60及び係止爪61,61とからなり、送り爪60,60は苗箱搬送路に沿って上下に往復動し、下動するときには苗箱の左右端縁部にポットのピッチと同ピッチで穿設された苗箱送り用の角孔に係合し、上動するときは角孔との係合が外れて次の角孔まで乗り越すように作動する。係止爪61,61は、送り爪60,60の動作と連動し、送り爪60,60が下動するときには、角孔から外れ、送り爪60,60が上動するときには、角孔に係合して苗箱を支えるように作動する。これら送り爪60,60及び係止爪61,61の作動により、苗箱搬送路31に沿って苗箱がポット配列の1ピッチ分づつ間欠的に送られる。この苗箱送り装置32の送り作動は、後記苗取出装置33の苗押出しピン72,…が苗箱のポット内に挿入されていない時に行われる。また、送り爪60,60及び係止爪61,61の搬送上手側には、係止爪61,61が先行する苗箱の角孔から抜け出るのに連動して苗箱搬送路に突出し、苗箱搬送路31を滑り落ちてくる後続の苗箱を一旦受け止める遮断爪63,63が設けられている。
【0033】
苗箱送り装置32の作動機構は、駆動ケース41の上部を貫通する第一伝動軸64に苗箱送りカム65を設け、苗箱作動アーム66に回動自在に支承されたローラ67をカム65の外周面に常時当接するように苗箱送り作動アーム66をスプリング68で付勢している。苗箱送りカム65の回転により、苗箱送り作動アーム66が揺動し、その苗箱送り作動アーム66の揺動が苗箱送り駆動軸69を介して苗箱送り駆動アーム70,70に伝えられ、送り爪60,60を上下に往復動させる。カム65がローラ67を押す時に送り爪60,60が下動して苗箱を送るようになっている。
【0034】
苗箱供給部30,30と苗箱主搬送部31の搬送路には、苗箱の有無を検出する苗箱検出センサSW1〜SW7が設けられている。SW1(SW5)は、上段(下段)苗箱供給部30に苗箱が載置されているとき苗箱有りとなる。SW2(SW6)は、上段(下段)の供給ローラ21,22が苗箱を把持しているとき苗箱有りとなる。SW3は、上段搬送路と下段搬送路の合流部に設けられていて、上段又は下段の供給ローラ21,22が苗箱を開放する寸前まで繰り出しているとき苗箱有りとなる。
【0035】
SW4は、SW3の位置と苗取出位置Pの直前位置との間に設けられていて、上段又は下段の供給ローラ21,22が苗箱を開放した直後に苗箱有りとなる。また、この苗箱検出センサSW4は、接触式のセンサにて構成され、このセンサの接触作用部tが遮断爪63の作用位置の搬送上手側から下手側にかけて位置するように配置されてあり、そして、このセンサが苗箱が無いことを検出すると、これに連動して苗箱供給装置29の供給ローラ21,22の作動により次の苗箱を繰り出し供給するようになっている。このようにして供給される苗箱が遮断爪63によって受け止められる直前に至っては、接触式検出センサ自体の押圧スプリング力によって接触抵抗を受けることになり、苗箱に制動作用が付与されて落下速度が緩和さるようになっている。
【0036】
SW7は、苗箱送り駆動アーム70を駆動する苗箱作動アーム66の位置を検出する検出センサで、つまり、送り爪60及び係止爪61の作動位置を検出するセンサであり、苗箱作動アーム66が上動したときに押されてOFFになる構成である。
【0037】
図4に示す構成例において、苗箱検出センサSW1〜SW7は、図5に示すように、コントローラに接続されている。そして、各センサからの情報に基づき、コントローラがモータM1,M2、苗減少ランプ、及び減少ブザーに出力する。図6は、コントローラにおける制御のフローチャートであって、各検出センサSW1〜SW7からの入力を読み込み、それを図7に示す動作表と比較し、該当する入力条件のパターンに応じて出力を行う。いづれの入力条件にも該当しない時には出力は行なわない。
【0038】
図7に示す動作表において、SW1〜SW6については、「0」は苗箱無し、「1」は苗箱有り、空白部は苗箱無し又は苗箱有りとする。SW7については、「1」はOFF時とし、空白部はON又はOFF時とする。また、「優先」はプログラム処理上のフラグで、その切換条件はNO.8とNO.13とする。「優先」の空白部は「1」又は「2」とし、電源投入時の「優先」は「1」とする。
【0039】
植付作業を行う前に、上段搬送路に苗箱を1個装填すると共に、上下両苗箱供給部に苗箱を2個づつ載置する。この作業開始状態では、SW1〜SW7は「1」、優先は「1」となっており、いづれの入力条件にも該当しないので、モータM1,M2は停止している。上記状態から植付作業を開始すると、送り爪60と係止爪61が作動して、苗箱を1ピッチづつ間欠的に送る。これと同期して植付部4の各部が作動し、苗取出位置Pで苗箱の横一列分づつのポットから苗を取出し、それを圃場に植え付ける。作業が進行して、苗取出し中の苗箱(第一苗箱)の最後尾が苗取出位置Pの直前位置まで来て、SW3及びSW4が「0」になると、NO.5の入力条件となり、モータM1が作動する。これにより、上段苗箱供給部の次の苗箱(第二苗箱)が上段搬送部に繰り出される。この第二苗箱を開放する寸前まで繰り出すと、第二苗箱の先頭部が上下搬送路の合流部に達し、SW3が「1」になる。この状態は、SW1〜SW6については、NO.6−1の入力条件に該当している。従って、送り爪60の送り作動時即ち係止爪61が苗箱を支えていない時にはモータM1が一旦停止し、その後、係止爪61が苗箱を支えた状態で且つ苗箱遮断爪63が苗箱搬送路内に突入して苗箱の下端を受け止める状態になっている時(SW7が「1」)になった時点でモータM1が再作動して、第二苗箱を開放する。すると、第二苗箱は遮断爪63にて一旦受け止められる。
【0040】
そして、第二苗箱を開放してSW2が「0」になると、NO.4の入力条件に切り替わり、モータM1の作動が継続され、次の第3苗箱の先頭部が供給ローラに把持される。すると、SW2が「1」になり、いづれの入力条件にも該当しなくなるので、モータM1は停止する。このようにして作業が進行し、第三苗箱の再後尾が苗取出位置Pの直前位置を通過し、SW3及びSW4が「0」になると、NO.13の入力条件となり、「優先」が「1」から「2」に切り替わる。すると、今度はモータM2が作動し、下段苗箱供給部の苗箱(第4苗箱)を繰り出す。 以下、上段苗箱供給部の第二苗箱、第三苗箱を上段搬送部に供給する場合と同様に、モータM2が適時作動して、下段苗箱供給部の第四苗箱、第五苗箱が順に下段搬送部に供給され、それぞれの苗箱から苗が取り出される。最後の第五苗箱が下段供給ローラから開放されると、NO.1の入力条件となり、苗減少ランプに出力する。苗減少ランプが点灯すると、上下苗供給部に苗補給する。また、苗減少ランプが点灯しても苗補給せず、第五苗箱の最後尾が苗取出位置Pの直前位置を通過してSW3及びSW4が「0」になると、NO.3の入力条件が4秒以上継続されることになるので、条件が成立してから4秒後に苗減少ブザーに出力する。
【0041】
以上のような経過を経て苗箱供給部の苗箱が主搬送部の所定位置まで自動供給されるが、この作業中において、上記苗取出し中の苗箱の最後尾が苗取出位置Pの直前位置まで来て、苗箱検出センサSW3及びSW4が「0」になると、NO.5(又はNO・10、NO・13)の入力条件となり、モータM1又はM2の作動により、苗箱供給部にある次の苗箱が主搬送部の所定位置に繰り出されることになるが、このとき、図8のフローチャートで示すように、モータM1又はM2が所定時間(約5秒程度)以上作動しても、苗箱が所定位置まで送られて来ない場合には、苗箱検出センサSW3がOFF作動し、苗箱送り不良警報装置BZに出力してオペレータに告知するようにしている。これにより、オペレータは苗箱送り不良と判断して速やかに対処することができる。同様に、モータM1が所定時間(約5秒程度)以上作動しても苗箱検出センサSW2がONのまま、又はモータM2が所定時間(約5秒程度)以上作動しても苗箱検出センサSW6がONのままのとき、苗箱送り不良警報装置BZに出力してオペレータに告知する構成としてもよい。
【0042】
上記苗箱の自動供給装置において、上段搬送路と下段搬送路で苗箱を送るモータM1,M2の回転速度を切り替えできる構成としている。上段のモータM1の回転速度は、下段のモータM2の回転速度より遅くしている。つまり、図6に示すように、モータM2の連続出力に対し、モータM1のパルス出力によって回転速度を遅くしている。これは、上段搬送路は、下段搬送路に対し苗箱の落下する傾斜角度が大きいため、遮断爪に当たった時に苗箱の両端が破損し易い。自動供給時の上段を送るときは、モータM1の回転速度を遅くすることで、遮断爪に当たる時の速度が上下段共、同じになり、苗箱両端の破損を防ぐことができる。
【0043】
なお、図7に示すように、モータM2のパルス出力に対し、モータM1を微小パルス出力とすることによってこの回転速度を遅くすることもできる。また、モータの回転速度と検出センサSW1からSW2間の苗箱の自由落下速度を略同じにすることで、苗箱がモータ部のローラへ激突する時の衝撃力が少なくなり、苗箱の破損を防ぐことができる。
【0044】
なお、図10に示す苗箱検出センサSWは、このセンサの接触作用部tが苗箱CのポットC1部に作用して感知する構成としてあり、前記SW1〜SW6の検出センサに利用することができる。これら各検出センサはポット部側面にて感知させるので、泥の影響を受けることがなく、ポット部は規則正しく成形された丸形状のため、確実に感知することができる。
【0045】
苗取出装置33は、苗箱横方向のポットに対し同数同ピッチで並んだ苗押出しピン72,…が、前後方向に摺動自在に支持された左右一対のスライド軸73,73と一体に作動するように設けられている。スライド軸73にはラック73aが形成され、そのラックに第一扇形ギヤ74が噛み合っている。また、第一扇形ギヤ74が取り付けられているギヤ軸75には、別の第二扇形ギヤ76が取り付けられ、第二扇形ギヤ76は、支持軸78に回動自在に支持された苗取出作動アーム79のギヤ部79aと噛み合っている。苗取出作動アーム79のギヤ部79aと反対側の端部にはローラ80が回転自在に支承されており、そのローラ80が苗取出カム81のガイド溝81aに嵌り込んでいる。苗取出カム81の回転によりスライド軸73,73が前後にスライドし、該スライド軸が後方にスライドするときに、苗押出しピン72,…が苗取出位置Pにある苗箱の横一列分のポットに対し、ポット底部の切れ目からポット内に挿入され、苗を後方に押し出す。
【0046】
尚、横一列の苗押出しピン72,…は、苗箱の底部を受ける受け板164に設けた横一列の孔を通過して押出作動する。前記受け板164には苗箱のポット間に位置して苗箱の搬送方向に延びる突条165を設け、この突条165により苗箱搬送作動でポット間にわたって延びる根を切断して苗押出しピン72,…による苗押出し及び以降の苗搬送を適正に行えるようにしている。この突条165は、苗箱搬送経路において送り爪60が作動する位置にあるので、苗箱搬送の抵抗となることで苗箱の搬送を阻害するようなことがなく、また苗箱搬送作用が確実であるため根の切断も確実になる。尚、突条165は、受け板164の各孔の間に配置される。
【0047】
また、前記孔又は受け板164にブラシ又はスクレーパを設け、苗押出しピン72,…がそのスライドでブラシ又はスクレーパに接触するように構成すれば、苗押出しピン72,…に付着する泥を除去することができる。これに代えて、苗押出しピン72,…に水等の洗浄液を吐出する吐出ノズルを設けてもよい。
【0048】
また、前記ギヤ軸75には、ギヤ軸75以後の伝動系に所定以上の負荷がかかった場合には第一扇形ギヤ74からギヤ軸75への伝動を断つ安全クラッチ75aが設けられている。
【0049】
さらに、ギヤ軸75には、苗押出しピン72,…の前後スライドのストロークを調節する機構75b、左右のスライド軸73,73の位置を調節する機構75cとが設けられている。苗箱送りカム66と苗取出カム81は第一伝動軸64に回転自在に嵌合する共通の筒体64aに一体形成され、該筒体と第一伝動軸64を外部操作する定位置停止クラッチ64bによって伝動入・切可能に連結している。尚、定位置停止クラッチ64bによって伝動切としたとき、後述する苗ホルダ83が空の状態で上昇し、且つ苗押出しピン72,…が苗を押し出す直前で、苗箱送り装置32、苗取出装置33及び苗搬送装置34が停止する。従って、定位置停止クラッチ64bが、苗植付部4の植付条(8条)のうちの一部の植付条(2条)のみの苗の植付を部分的に停止する停止クラッチとなる。尚、前記定位置停止クラッチ64bは、苗箱送り装置32、苗取出装置33及び苗搬送装置34を停止する構成としたが、従来のような苗植付装置37を停止する構成としてもよい。そして、苗植付部4の植付条が8条であり単一の定位置停止クラッチ64bにより停止される植付条が2条であるから、定位置停止クラッチ64bは4個設けられ、4個の定位置停止クラッチ64bは、ユニットごとの各々の別個の植付条で且つ同じ植付条数(2条)の苗の植付を停止する構成となっている。
【0050】
ミッションケース9内には、後輪7への伝動軸の回転数を検出することで乗用走行車体2の走行距離を検出する走行距離センサ176を設けている。また、定位置停止クラッチ64bを操作する停止クラッチソレノイド177を、定位置停止クラッチ64bごとに設けている。また、ハンドル12近傍の操作パネル上には、切状態(植付停止状態)にする植付条の定位置停止クラッチ64bを設定するダイヤル式の停止クラッチ操作スイッチ178と、機体右側に畦際が近づいたときに右側の定位置停止クラッチ64bから自動的に順次切にするための右畦際処理スイッチ179aと、機体左側に畦際が近づいたときに左側の定位置停止クラッチ64bから自動的に順次切にするための左畦際処理スイッチ179bと、定位置停止クラッチ64bを順次操作する走行距離(所定距離)を設定するダイヤル式の所定距離設定スイッチ180を設けている。そして、停止クラッチ操作スイッチ178、右畦際処理スイッチ179a、左畦際処理スイッチ179b及び走行距離センサ176からの信号がコントローラである制御部(制御装置)181に入力され、制御部181の出力により停止クラッチソレノイド177を作動させる。制御部181は、停止クラッチ操作スイッチ178からの信号に基づき、停止クラッチ操作スイッチ178で設定された植付を停止する植付条の定位置停止クラッチ64bを切状態とするべく、該植付条に対応する停止クラッチソレノイド177を作動する。これにより、圃場の畦際近くで該畦際に沿って平行に進行しながら植付作業をするとき、例えば圃場で最後に行う回り植えのために畦からの未植付幅を苗植付部4の乗数分(8条分)にする等、畦からの未植付幅を所望の幅に設定できる。また、停止クラッチ操作スイッチ178に基づいて定位置停止クラッチ64bを走行距離センサ176とした状態で、右畦際処理スイッチ179aが入操作されている信号が入力されると、走行距離センサ176の検出による走行距離が所定距離設定スイッチ180の設定に基づく所定距離に到達するごとに、切状態となっている定位置停止クラッチ64bを左から順に入状態にするべく停止クラッチソレノイド177を作動する。これにより、機体右側の畦際が機体の進行につれて遠ざかる斜めであるとき、斜めの畦からの未植付幅を均一にするべく定位置停止クラッチ64bが順次入状態となるので、例えば圃場で最後に行う回り植えのために畦からの未植付幅を苗植付部4の乗数分(8条分)にする等、畦からの未植付幅を所望の幅に設定できる。また、停止クラッチ操作スイッチ178に基づいて定位置停止クラッチ64bを走行距離センサ176とした状態で、左畦際処理スイッチ179bが入操作されている信号が入力されると、走行距離センサ176の検出による走行距離が所定距離設定スイッチ180の設定に基づく所定距離に到達するごとに、切状態となっている定位置停止クラッチ64bを右から順に入状態にするべく停止クラッチソレノイド177を作動する。これにより、機体左側の畦際が機体の進行につれて遠ざかる斜めであるとき、斜めの畦からの未植付幅を均一にするべく定位置停止クラッチ64bが順次入状態となるので、例えば圃場で最後に行う回り植えのために畦からの未植付幅を苗植付部4の乗数分(8条分)にする等、畦からの未植付幅を所望の幅に設定できる。
【0051】
また、上述の構成によると、所定距離設定スイッチ180により、進行方向に対する畦の斜めの角度に対応して、斜めの畦からの未植付幅を均一にすることができる。尚、右畦際処理スイッチ179aが入操作されているにも拘らず停止クラッチ操作スイッチ178により最も右側の定位置停止クラッチ64bが既に植付状態に設定されているときや、左畦際処理スイッチ179bが入操作されているにも拘らず停止クラッチ操作スイッチ178により最も左側の定位置停止クラッチ64bが既に植付状態に設定されているときは、異常な設定と判断し、警報を発する構成となっている。尚、上述では走行距離センサ176の検出による走行距離が所定距離に到達するごとに切状態となっている定位置停止クラッチ64bを順に入状態にする順次入の制御の構成について説明したが、畦際が機体の進行につれて近づく斜めであるときを想定して、走行距離センサ176の検出による走行距離が所定距離に到達するごとに入状態となっている定位置停止クラッチ64bを順に切状態にする順次切の制御の構成にすることもできる。また、機体の進行につれて畦が近づく側の斜め及び遠ざかる側の斜めの何れにも対応するべく、前記順次入の制御及び前記順次切の制御を切り替えられるようにしてもよい。また、撮影装置や距離センサ等により畦の斜めの角度を自動的に検出し、検出した畦の角度に基づいて、前記所定距離を自動的に設定したり順次入の制御及び前記順次切の制御の切替をしたりする構成としてもよい。
【0052】
苗搬送装置34は、苗押出しピン72により苗箱から押し出される苗の床土部(苗床部)を保持する苗ホルダー83を備えている。苗ホルダー83は、横一列の苗押出しピン72に対応して横一列分複数個設けられ、各々左右の側壁部83aと底部で囲まれる保持空間83bを形成し、上下2本づつの揺動リンク84,85に連結された支持部材86に左右両端が固定されており、上記揺動リンク84,85の揺動により円弧軌跡を描いて往復動するようになっている。苗搬送装置の駆動機構は、図16及び図19に示すように、第一伝動軸64の回転を、アーム88、伸縮ロッド89、アーム90を介して苗搬送伝動ケース91の入力軸92に反復回動運動として伝達し、更に、該入力軸92から一対の伝動ギヤ93、94を介して、揺動リンク85に取り付けられている苗搬送駆動軸95に反復回動運動を伝達するように構成されている。
【0053】
また、苗搬送装置34には、苗箱の育苗ポットC1内に突入して該育苗ポットC1を清掃する清掃具182を、苗箱の横一列分の育苗ポットC1に対応させて横一列に複数個設けている。この清掃具182は、先端部を可撓性のあるブラシで覆った構成となっており、苗ホルダー83から一体的に支持されている。そして、清掃具182は、苗ホルダー83から苗箱搬送路の苗箱Cの育苗ポットC1の配列ピッチ分下方に配置されている。従って、揺動リンク84,85の作動により、空の苗ホルダー83が苗取出位置Pに戻るのに連動して、苗箱主搬送部31における苗取出位置Pよりも育苗ポットの配列の1ピッチ分苗箱の搬送下手側の位置で、清掃具182が苗が取り出されて空になった育苗ポットC1内に突入して付着する土等を除去して該育苗ポットC1を清掃する。
【0054】
また、図3に示すように、前記苗ホルダー83は、苗植付時において、植付クラッチ又は畦クラッチを切った時の苗ホルダーの停止位置が、苗を取りに行く方向で洗浄ノズル116から噴水される噴水圏(イ)内にあって停止するように構成している。これによれば、苗を植え付けしていない状態のときでも苗ホルダーを効率よく洗浄でき、泥の付着が少なくなって苗のキャッチングが安定することになる。これに代えて、苗ホルダー83専用の清掃ブラシを設け、該清掃ブラシが苗ホルダー83の上昇過程で該苗ホルダー83の作動経路上に突出して苗ホルダー83上の土を落として清掃する構成とすることもできる。
【0055】
苗ホルダー83の左右の側壁部83aに各々電極を設け、この一対の電極間の電気抵抗を検出する苗床部検出センサ183を構成している。従って、この苗床部検出センサ183により、苗ホルダー83内の苗床部を検出する検出手段を構成している。一方、苗搬送装置34の駆動源となる第一伝動軸64の回転位相を検出するべく、第一伝動軸64に取り付けた突起64cに対向して該突起64cを検出する位相検出センサ184を設けている。尚、この位相検出センサ184は、突起64cが近づくことによる磁性変化により、第一伝動軸64が所定の回転位相であることを検出するセンサであり、前記所定の回転位相であるとき、苗ホルダー83が苗取出位置Pから苗抜き位置Qへ移動する工程に相当するべく、第一伝動軸64における突起64cの位置を設定している。そして、苗床部検出センサ183及び位相検出センサ184の検出信号が制御部(制御装置)181へ入力され、位相検出センサ184の検出に基づいて苗ホルダー83が苗取出位置Pから苗抜き位置Qへ移動する工程以外と判断するのに、複数のうちの何れかの苗床部検出センサ183が苗ホルダー83内に苗床部又はそれ以外の障害物を検出すると、苗抜き装置35が苗抜き位置Qで苗ホルダー83から苗を抜き出すことができなかったり苗ホルダー83に苗床部から崩れた土が残ったりする植付不良と判断し、制御部181からの出力で主クラッチモータを駆動して主クラッチを「切」作動し、機体の走行及び植付作動を停止すると共に、制御部181からの出力で警報装置(警報ブザー、警報ランプ等)を作動させる構成となっている。
【0056】
苗抜き装置35は、苗ホルダ83の苗保持部を前後に通り抜け可能な櫛状の苗叩き100を備えている。回動自在に設けた左右方向の苗叩き取付軸101に苗叩きアーム102を取り付け、更にその苗叩きアーム102に回動可能に取り付けた回動アーム103に苗叩き100を一体的に取り付けている。回動アーム103は長孔103aの範囲内でボルト102aを介して回動可能である。叩きアーム102に取り付けたローラ104が、カム軸105に取り付けられた苗叩きカム106のカム面に当接するようにスプリング107にて付勢している。苗叩きカム106が回転すると、該カムの凹部にローラ104嵌り込むときスプリング107の張力により苗叩き100が素早く下向きに回動し、直ぐに元の位置に復帰するように作動する。
【0057】
苗ホルダー83が移動軌跡下端に移動してきたとき、苗抜き位置Qで苗ホルダ83の各苗保持部に保持されている苗を苗叩き100が受け止め苗ホルダー83のみを通過させて苗を抜き出すと共に、苗叩き100が下向きに回動し、抜き出された苗を後記苗横送り装置36の苗送りベルト113上に叩き落とす。
【0058】
苗横送り装置36は、メインフレームに架設された苗横送り駆動軸110の駆動ローラ111と従動ローラ112とに巻き掛けた左右一対の苗送りベルト113を、それぞれの横送り作用部外側へ移動するように左右対称に設けている。横送り部の下側には落下する苗の重みでベルトが橈むのを防止する撓み防止板114が設けられている。苗抜き装置35により抜き落とされた横一列分の苗N,…は、各苗送りベルト113,113の上に整列で落下し、これを受けた苗送りベルト113,113が左右半分づつの苗をそれぞれ左右両側に搬送する。苗送りベルト113で搬送された苗Nは、後述する左右のローラ185の間の上方となる苗保持位置Rへ落し込まれる。苗送りベルト113の直ぐ後方には、苗送りベルト113の上面に連なって配置される葉案内板210を設けている。従って、この葉案内板210は載せられる苗の葉側で苗送りベルト113に隣接しており、苗丈が長くて苗送りベルト113から外(後側)に苗の葉の先端部が突出する状態でも、苗の葉の先端部は葉案内板210に案内されながら移送されるので、突出する苗の葉が苗送りベルト113の内側に巻き込まれることを防止できる。
【0059】
苗送りベルト113,113の上方には該ベルトに付着した泥土を洗い流す洗浄ノズル116が設けられている。洗浄ノズル116が一体に形成された通水パイプ117は、その両端部に一体の取付プレート118をボルト119により植付部フレームに固定することにより支持されている。
【0060】
苗植付装置37は、植付伝動フレーム45の後端部に設けられた植付駆動軸120と一体回転する回転ケース121に一対の苗植込具122が取り付られ、苗植込具122が閉ループの先端軌跡を描いて移動する。また、苗横送り装置36によって供給された苗の苗床部を保持する左右のローラ185を設け、苗は左右のローラ185の間の上方となる苗保持位置Rで安定して保持される。左右のローラ185は、各々の付勢手段となる苗保持用スプリング186により、互いに近づく側(苗保持位置の苗の中央側)に付勢されている。各苗植込具122は、苗保持位置Rにきた苗の苗床部に上側から押し下げるように作用し、その結果苗床部が下方に押し下げられて苗保持用スプリング186に抗して左右のローラ185の間隔が広がり、苗床部は左右のローラ185の間を通って下方に移送されるが、断面円形状である苗床部の最大幅部分(上下中央部分)が同じ高さに配置される左右のローラ185間の最小間隔部(左右のローラ185の回転中心の間)を通り過ぎると、苗保持用スプリング186の付勢力により左右のローラ185が苗床部を下方に押し出す作用をして植付ガイド115の上端部に供給され、苗床部は苗植込具122の作動により植付ガイド115に引き継がれて移送される。尚、一対の苗植込具122により、苗保持位置Rにきた苗を交互に一株づつ取って圃場に植え付ける構成となっている。
【0061】
尚、一対の苗植込具122、122の間には掃除具169を設け、該掃除具169が苗植付の度に植付ガイド115,115の間を移動することにより、植付ガイド115,115の間の土を除去して清掃する構成となっている。尚、掃除具169は、苗植込具122と同じ程度の長さに構成され、苗植込具122と同様に回転ケース121に取り付けられている。
【0062】
植付部の伝動機構について図14及び図15に基づき説明すると、本機側から動力伝達される入力軸130はベベルギヤ131,132を介して第二伝動軸133と連動連結している。そして、第二伝動軸133から、8組のベベルギヤ135,136を介して各条の苗横送り駆動軸110へ伝動する。隣接する一対の苗横送り駆動軸110,110は、互いに逆向きに回転するようになっている。また、各植付伝動フレーム45内には、第二伝動軸133に取り付けたスプロケット137aと植付駆動軸120に取り付けたスプロケット137b掛け渡した伝動チエン137が設けられており、該チエン137により第二伝動軸133から植付駆動軸120へ伝動する。
【0063】
更に、第二伝動軸133は、その外端部でベベルギヤ140,141を介して、左右2本の上下伝動軸142の下端部とそれぞれ連動連結している。左側の上下伝動軸142は、その上端部がベベルギヤ143,144を介して第一ユニット・第二ユニット用の第一伝動軸64と連動連結すると共に、その中間部がベベルギヤ147,148を介して第一ユニット・第二ユニット用の苗叩きカム軸105と連動連結している。同様に右側の上下伝動軸142は、第三ユニット・第四ユニット用の第一伝動軸64及び苗叩きカム軸105と連動連結している。
【0064】
中央2個のセンタフロート52,52は、圃場面の凹凸を検出するものであり、両フロートの圃場面に対する角度(迎い角)がフロート迎い角センサによって検出される。フロート迎い角センサの検出に基づいて、センタフロート52,52の前後傾斜姿勢が前上がり側に変化したときには苗植付部4を上昇させ、逆にセンタフロート52,52の前後傾斜姿勢が前下がり側に変化したときには苗植付部4を下降させるべく昇降用油圧バルブ27を作動させ、苗植付部4を所定の対地高さとなるよう昇降制御する構成となっている。尚、フロート迎い角センサにより、センタフロート52,52の前後傾斜姿勢が前上がり側に変化したままでこの前後傾斜姿勢が所定時間(例えば5秒以上)維持されて昇降用油圧バルブ27により苗植付部4の上昇指令が継続されているようなときには、制御装置により苗植付部4が下降するように昇降用油圧バルブ27へ出力し、苗植付部4を下降させる。これにより、圃場内の夾雑物がセンタフロート52,52に引っ掛かったり、圃場の水深が深かったりしてセンタフロート52,52で圃場面を適正に検出できない場合、苗植付部4を強制的に下降させることにより、夾雑物を土壌内に敷き込んだり苗植付部4の対地浮上を防止したりでき、フロート52,53による圃場面の整地を良好に行えると共に、植え付ける苗が浮き苗になるのを防止できる。
【0065】
ところで、苗移植機1は、乗用走行車体2の後側で且つ苗植付部4の前側に整地装置を設けると共に、リンク装置3に対して苗植付部4を着脱可能な構成とすることができる。その構成について以下に説明するが、乗用走行車体2、苗植付部4及び施肥装置5等、前述と同様の他の構成については説明を省略する。
【0066】
昇降用油圧シリンダ26により昇降するリンク装置3の後部の縦リンク187には、ローリング支持軸24を介して苗植付部4を装着するための装着基部フレーム188を設けている。この装着基部フレーム188の上部溝188aと下部後方溝188bに苗植付部4側の着脱ヒッチ189の上部軸189aと下部軸189bが嵌って係合し、装着基部フレーム188に着脱ヒッチ189を装着して苗植付部4が装着される。従って、装着された苗植付部4は、ローリング支持軸24回りに左右にローリングする。尚、装着基部フレーム188には、嵌った下部軸189bが下部後方溝188bから後側へ抜けて外れないように固定する固定フック190と、該固定フック190に連結される連結リンク191を介して固定フック190を下部軸189bが固定される側(下側)に回動するべく付勢する固定用スプリング192を設け、衝撃等で下部軸189bが下部後方溝188bから脱落しないようにしている。苗植付部4は、着脱ヒッチ189から後方に延びる上下の延設フレーム193を介して支持されている。よって、苗植付部4は、乗用走行車体2から着脱ヒッチ189により着脱でき、苗植付部4に代えて播種部や除草部や溝切部等の他の作業機を装着することができる。
【0067】
装着基部フレーム188から左右に延びる左右フレーム194と、装着基部フレーム188から上方に延びる上フレーム195と、該左右フレーム194の後下側に延びる下フレーム196を各々複数設けている。上フレーム195から前側に延びる上リンク197と下フレーム196から前側に延びる下リンク198を設け、上リンク197及び下リンク198の前端部に整地装置フレーム199を連結し、該整地装置フレーム199から整地装置となる整地ロータ200を支持している。従って、整地ロータ200は、苗植付部4と共にローリング支持軸24回りに左右にローリングし、上リンク197及び下リンク198の上下回動により昇降する。上リンク197はロータ昇降レバー44に連結され、該ロータ昇降レバー44を操作して整地ロータ200を昇降させる構成となっている。尚、乗用走行車体2側からのロータ駆動軸201からの伝動により整地ロータ200が駆動する構成となっており、左右中央の整地ロータ200は、左右両側方の整地ロータ200よりも前側に配置されている。
【0068】
左側の整地ロータ200の側方には該整地ロータ200の駆動軸200aが突出している。この駆動軸200aの突出部の断面形状は六角形となっており、メンテナンス時に別途用意する回転ハンドルを前記突出部に装着して該回転ハンドルを回転させることにより、手動にて中央及び左右の整地ロータ200を回転させることができる。これにより、整地ロータ200に絡まった藁屑や整地ロータ200に付着する土等を除去する整地ロータ200の清掃を容易に行える。尚、第二伝動軸133の左端部も、苗植付部4の伝動ケース部分から突出すると共にこの突出部の断面形状が前記駆動軸200aと同じ形状の六角形となっており、メンテナンス時に回転ハンドルを前記突出部に装着して該回転ハンドルを回転させることにより、手動にて苗植付装置37をはじめとする苗植付部4の各装置を動かすことができる。これにより、苗植付部4の各装置の位相調節等を容易に行える。前記回転ハンドルを整地ロータ200のメンテナンス用と苗植付部4のメンテナンス用で共用し、メンテナンス作業の容易化を図っている。また、整地ロータ200の駆動軸200a及び第二伝動軸133は何れも機体の同じ左右一方側(左側)に突出しているので、作業者は機体の同じ左右一方側(左側)から整地ロータ200と苗植付部4のメンテナンスを容易に行える。
【0069】
乗用走行車体2への苗植付部4への着脱にあたっては、着脱ヒッチ189の着脱の他、伝動軸9cを着脱し、苗箱検出センサSW1〜SW7やモータM1,M2等の苗植付部4側の電装品からの電線をカプラ202の脱着により接続、非接続に切り替え、洗浄ノズル116への水供給ホースをジョイントの脱着により接続、非接続に切り替える。
【0070】
そして、カプラ202からの電線の脱着状態の検出信号が乗用走行車体2側の制御部(制御装置)181へ入力され、後進操作センサ175の検出信号が制御部181へ入力されると、制御部181からの出力により昇降用油圧シリンダ26への油路を切り替える電磁式の油圧切替バルブ203が作動し、制御部181からの出力によりエンジンEのスロットルを操作するスロットルモータ204が作動する構成となっている。尚、油圧切替バルブ203へ油圧を供給する油圧ポンプは、エンジンEからの伝動でエンジンEの回転数に連動した比例回転数で回転駆動する構成となっている。制御部181は、電線が接続状態であることをカプラ202が検出し、且つ乗用走行車体2を後進させるための変速レバーL2の操作がなされたことを後進操作センサ175が検出したとき、苗植付部4を上昇させる状態(昇降用油圧シリンダ26へ油圧を供給する状態)に油圧切替バルブ203を作動させ、エンジンEの回転数を上昇させるべくスロットルモータ204を作動させ、苗植付部4を対地浮上させる。また、電線が非接続状態であることをカプラ202が検出し、且つ乗用走行車体2を後進させるための変速レバーL2の操作がなされたことを後進操作センサ175が検出したとき、油圧切替バルブ203へ格別な信号を出力しないで油圧切替バルブ203は植付昇降レバーL3の操作又はフロート52の上下動に基づいて作動することになり、エンジンEの回転数を所定以下にするべくスロットルモータ204を作動させる。
【0071】
また、乗用走行車体2から取り外された苗植付部4は専用のスタンド205に載せられるが、スタンド205には機体中心位置を示す苗植付部側装着位置マーカ206を設けている。この苗植付部側装着位置マーカ206は、スタンド205の基部から苗植付部4の後方及び上方を介して迂回して該苗植付部4の前方に位置し、苗植付部4を装着したときに装着基部フレーム188の上方近傍に位置する。一方、装着基部フレーム188にも機体中心位置を示す乗用走行車体側装着位置マーカ207を設けている。従って、苗植付部4の装着作業時には、乗用走行車体2を前後進させて苗植付部側装着位置マーカ206と乗用走行車体側装着位置マーカ207の左右位置を合わせながら苗植付部4を装着でき、苗植付部4の装着作業が容易になる。これにより、左右中央にユニット(苗箱搬送路)すなわち構造物が少なく、左右位置合わせが行いにくい苗植付部4の左右位置合わせの容易化が図れる。
【0072】
尚、乗用走行車体2を2人乗りの構成とすることもできる。すなわち、乗用走行車体2の前部の前輪6の上方近くに操縦座席13を配置し、その後側の乗用走行車体2の後部で施肥装置5の肥料ホッパ5aの前側には、苗植付部4への苗箱供給や肥料ホッパ5aへの肥料補給をする補助作業者の作業スペースを配置する。この作業スペースには左右に連続し且つ機体平面視で操縦座席13の左右両側方まで延びる作業フロア208を設けており、該作業フロア208は、面一で水平状で且つ操縦座席13に座るオペレータ用のフロア209よりも低位に配置されている。よって、補助作業者が作業を安全に且つ容易に行えると共に、操縦座席13が高位となるためオペレータの視界が良好になり、オペレータが後を向いて圃場の植付状態を容易に視認できる。
【0073】
以上により、苗移植機1は、乗用走行車体(2)の後側にリンク装置(3)を介して苗植付部(4)を昇降可能に設け、該苗植付部(4)は、苗取出位置(P)に向けて苗箱を搬送する苗箱主搬送部(31)と、苗取出位置(P)で苗箱から苗を取り出す苗取出装置(33)と、該苗取出装置(33)で取り出された苗の苗床部を苗ホルダー(83)で保持して苗を搬送する苗搬送装置(34)と、苗抜き位置(Q)で苗搬送装置(34)から苗を抜き出す苗抜き装置(35)と、該苗抜き装置(35)によって抜き出される苗を載せて横送りする苗送りベルト(113)を備える苗横送り装置(36)と、該苗横送り装置(36)によって供給された苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置(37)を備え、苗植付装置(37)には、苗横送り装置(36)によって供給された苗の苗床部を苗保持位置(R)で保持する左右のローラ(185)と、該左右のローラ(185)を互いに近づく側に付勢する付勢手段(186)と、苗保持位置(R)にある苗床部に上側から作用して付勢手段(186)に抗して左右のローラ(185)の間隔を広げて苗床部を植付ガイド(115)に沿って下方に移送して苗を圃場に植え付ける苗植込具(122)を設けている。
【0074】
よって、苗横送り装置によって供給される苗は左右のローラ(185)の間の上方に安定して保持されるから、苗を適正な位置及び姿勢で保持でき、苗植込具(122)が苗保持位置(R)にある苗床部に上側から作用すると、付勢手段(186)に抗して左右のローラ(185)の間隔が広がり、苗床部は左右のローラ(185)の間を通って下方に移送されるが、苗床部の最大幅部分が左右のローラ(185)間の最小間隔部を通り過ぎると付勢手段(186)により左右のローラ(185)が苗床部を下方に押し出して植え付けガイド(115)に円滑に引き継がれて移送される。従って、苗植込具(122)により適正な深さ及び姿勢で苗を植え付けることができる。
【0075】
また、苗搬送装置(34)は、苗ホルダー(83)を苗取出位置(P)から苗抜き位置(Q)までの間で往復移動させる揺動リンク(84,85)と、該揺動リンク(84,85)の作動で苗ホルダー(83)が苗取出位置(P)に到達するのに連動して、苗箱主搬送部(31)における苗取出位置(P)よりも苗箱の搬送下手側の位置で苗箱の育苗ポット(C1)内に突入して該育苗ポット(C1)を清掃する清掃具(182)を備えている。
【0076】
よって、清掃具(182)により、苗取出位置(P)で苗を取り出した後の空になった育苗ポット(C1)内を清掃でき、育苗ポット(C1)内に土や根が残存することで以降の苗箱搬送の抵抗になったり空になった苗箱を複数枚積み重ねる支障となったりするのを防止し、苗箱を円滑に搬送できると共に、複数枚の空の苗箱を容易にコンパクトに積み重ねることができ、苗移植機からの空箱の回収作業が容易になる。ひいては、空の苗箱を再度育苗に使うときに苗箱を清掃する手間を省くことができ、育苗作業も容易になる。そして、この苗箱の清掃は、苗搬送装置(34)の作動に連動して行われるので、格別な清掃装置が不要で構造の簡素化が図れる。
【0077】
また、苗搬送装置(34)は、苗ホルダー(83)を苗取出位置(P)から苗抜き位置(Q)までの間で往復移動させる揺動リンク(84,85)と、苗ホルダー(83)内の苗床部を検出する検出手段(183)を備え、苗ホルダー(83)が苗取出位置(P)から苗抜き位置(Q)へ移動する工程以外のタイミングで検出手段(183)の検出により、警報を発するか又は苗植付部(4)の作動を停止する制御装置(181)を設けている。
【0078】
よって、苗抜き装置(35)が苗抜き位置(Q)で苗ホルダー(83)から苗を抜き出すことができなかったり苗ホルダー(83)に苗床部から崩れた土が残ったりしたとき、検出手段(183)の検出により警報を発するか又は苗植付部(4)の作動を停止し、植付作業を継続することによる植付欠株の発生や不適正な植付を回避することができる。
【0079】
また、苗横送り装置(36)は、載せられる苗の葉側で苗送りベルト(113)に隣接する葉案内板(210)を備えている。
よって、苗丈が長くて苗送りベルト(113)から外に苗の葉の先端部が突出する状態でも、苗の葉の先端部は葉案内板(210)に案内されながら移送されるので、突出する苗の葉が苗送りベルト(113)の内側に巻き込まれることを防止でき、苗の損傷を防止できると共に、苗送りベルト(113)上で苗の姿勢が不適正になることで植付深さや植付姿勢が不適正になるのを防止できる。
【0080】
また、苗ホルダー(83)又は苗送りベルト(113)を洗浄する洗浄ノズル(116)と、該洗浄ノズル(116)へ供給する洗浄液を貯留する洗浄液タンク(17)と、該洗浄液タンク(17)から洗浄ノズル(116)へ洗浄液を供給する洗浄液ポンプ(174)を設け、洗浄液タンク(17)を、主タンク(17a)と該主タンク(17a)よりも少なくとも上端部を高位に配置した副タンク(17b)で構成し、主タンク(17a)と副タンク(17b)を連通する連通ホース(171)と、主タンク(17a)内の洗浄液の液面が所定以上であれば副タンク(17b)から主タンク(17a)への洗浄液の供給を規制する規制バルブ(172)を設けている。
【0081】
よって、副タンク(17b)へ主タンク(17a)よりも高位まで洗浄液を供給しても、連通ホース(171)を介して主タンク(17a)へ洗浄液が供給されて主タンク(17a)の洗浄液供給口(173a)から洗浄液が溢れるようなことを防止できる。ひいては、副タンク(17b)の容積を有効利用でき、主タンク(17a)及び副タンク(17b)による洗浄液の貯留量を増加させることができ、植付作業中に洗浄液を補給する回数を削減でき、植付作業能率の向上が図れる。
【0082】
また、乗用走行車体(2)から苗植付部(4)を着脱可能に構成し、苗植付部(4)が装着状態であることを検出し且つ乗用走行車体(2)を後進させるための操作を検出すると、苗植付部(4)を上昇させると共に、原動機(E)の回転数を上昇させて苗植付部(4)の上昇速度の向上を図るが、苗植付部(4)が非装着状態であることを検出し且つ乗用走行車体(2)を後進させるための操作を検出したときは、原動機(E)の回転数を所定以下に規制する制御装置(181)を設けている。
【0083】
よって、苗植付部(4)が装着状態であれば、乗用走行車体(2)を後進させるための操作に連動して、苗植付部(4)を上昇させると共に、原動機(E)の回転数を上昇させて苗植付部(4)の上昇速度の向上を図り、苗植付部(4)を素早く対地浮上させて機体の後進で苗植付部(4)を地面に引きずって損傷させることを防止できる。そして、苗植付部(4)が非装着状態であれば、原動機(E)の回転数を所定以下に規制し、低速で後進することにより苗植付部(4)の装着作業の容易化及び安全性向上が図れる。
【0084】
また、乗用走行車体(2)の走行距離を検出する走行距離センサ(176)を設け、苗植付部(4)は複数条に苗を植え付ける構成とし、苗植付部(4)の植付条のうちの一部の植付条のみの苗の植付を部分的に停止する停止クラッチ(64b)を複数設け、複数の停止クラッチ(64b)は、各々の別個の植付条で且つ同じ植付条数の苗の植付を停止する構成とし、走行距離センサ(176)で検出される走行距離が所定距離に到達するごとに左右方向一外側の停止クラッチ(64b)から内側の停止クラッチ(64b)へかけて順次操作する制御装置(181)を設けている。
【0085】
よって、機体の進行方向に対して畦が斜めであるとき、畦からの未植付幅が均等になるべく、自動的に畦側となる左右方向一外側の停止クラッチ(64b)から内側の停止クラッチ(64b)へかけて順次操作でき、停止クラッチ(64b)を順次操作する操作を省略できて操作の簡略化が図れ、ひいては植付作業能率の向上が図れる。
【0086】
また、前記所定距離を変更して設定できる設定手段(180)を設けている。
よって、機体の進行方向に対する畦の角度に対応して畦からの未植付幅が均等になるべく、走行距離が所望の所定距離に到達するごとに停止クラッチ(64b)を順次操作でき、圃場での汎用性が向上する。
【符号の説明】
【0087】
1:苗移植機、2:乗用走行車体、3:リンク装置、4:苗植付部、17:水タンク、17a:主タンク、17b:副タンク、31:苗箱主搬送部、33:苗取出装置、34:苗搬送装置、35:苗抜き装置、36:苗横送り装置、37:苗植付装置、64b:定位置停止クラッチ、83:苗ホルダー、84,85:揺動リンク、113:苗送りベルト、115:植付ガイド、116:洗浄ノズル、122:苗植込具、171:連通ホース、172:規制バルブ、174:洗浄液ポンプ、175:後進操作センサ、176:走行距離センサ、180:所定距離設定スイッチ、181:制御部、182:清掃具、183:苗床部検出センサ、185:ローラ、186:苗保持用スプリング、202:カプラ、203:油圧切替バルブ、204:スロットルモータ、210:葉案内板、C1:育苗ポット、P:苗取出位置、Q:苗抜き位置、R:苗保持位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用走行車体(2)の後側にリンク装置(3)を介して苗植付部(4)を昇降可能に設け、該苗植付部(4)は、苗取出位置(P)に向けて苗箱を搬送する苗箱主搬送部(31)と、苗取出位置(P)で苗箱から苗を取り出す苗取出装置(33)と、該苗取出装置(33)で取り出された苗の苗床部を苗ホルダー(83)で保持して苗を搬送する苗搬送装置(34)と、苗抜き位置(Q)で苗搬送装置(34)から苗を抜き出す苗抜き装置(35)と、該苗抜き装置(35)によって抜き出される苗を載せて横送りする苗送りベルト(113)を備える苗横送り装置(36)と、該苗横送り装置(36)によって供給された苗を取って圃場に植え付ける苗植付装置(37)を備えた苗移植機において、苗植付装置(37)には、苗横送り装置(36)によって供給された苗の苗床部を苗保持位置(R)で保持する左右のローラ(185)と、該左右のローラ(185)を互いに近づく側に付勢する付勢手段(186)と、苗保持位置(R)にある苗床部に上側から作用して付勢手段(186)に抗して左右のローラ(185)の間隔を広げて苗床部を植付ガイド(115)に沿って下方に移送して苗を圃場に植え付ける苗植込具(122)を設けた苗移植機。
【請求項2】
苗搬送装置(34)は、苗ホルダー(83)を苗取出位置(P)から苗抜き位置(Q)までの間で往復移動させる揺動リンク(84,85)と、該揺動リンク(84,85)の作動で苗ホルダー(83)が苗取出位置(P)に到達するのに連動して、苗箱主搬送部(31)における苗取出位置(P)よりも苗箱の搬送下手側の位置で苗箱の育苗ポット(C1)内に突入して該育苗ポット(C1)を清掃する清掃具(182)を備えた請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
苗搬送装置(34)は、苗ホルダー(83)を苗取出位置(P)から苗抜き位置(Q)までの間で往復移動させる揺動リンク(84,85)と、苗ホルダー(83)内の苗床部を検出する検出手段(183)を備え、苗ホルダー(83)が苗取出位置(P)から苗抜き位置(Q)へ移動する工程以外のタイミングで検出手段(183)の検出により、警報を発するか又は苗植付部(4)の作動を停止する制御装置(181)を設けた請求項1又は請求項2に記載の苗移植機。
【請求項4】
苗横送り装置(36)は、載せられる苗の葉側で苗送りベルト(113)に隣接する葉案内板(210)を備えた請求項1から請求項3の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
苗ホルダー(83)又は苗送りベルト(113)を洗浄する洗浄ノズル(116)と、該洗浄ノズル(116)へ供給する洗浄液を貯留する洗浄液タンク(17)と、該洗浄液タンク(17)から洗浄ノズル(116)へ洗浄液を供給する洗浄液ポンプ(174)を設け、洗浄液タンク(17)を、主タンク(17a)と該主タンク(17a)よりも少なくとも上端部を高位に配置した副タンク(17b)で構成し、主タンク(17a)と副タンク(17b)を連通する連通ホース(171)と、主タンク(17a)内の洗浄液の液面が所定以上であれば副タンク(17b)から主タンク(17a)への洗浄液の供給を規制する規制バルブ(172)を設けた請求項1から請求項4の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項6】
乗用走行車体(2)から苗植付部(4)を着脱可能に構成し、苗植付部(4)が装着状態であることを検出し且つ乗用走行車体(2)を後進させるための操作を検出すると、苗植付部(4)を上昇させると共に、原動機(E)の回転数を上昇させて苗植付部(4)の上昇速度の向上を図るが、苗植付部(4)が非装着状態であることを検出し且つ乗用走行車体(2)を後進させるための操作を検出したときは、原動機(E)の回転数を所定以下に規制する制御装置(181)を設けた請求項1から請求項5の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項7】
乗用走行車体(2)の走行距離を検出する走行距離センサ(176)を設け、苗植付部(4)は複数条に苗を植え付ける構成とし、苗植付部(4)の植付条のうちの一部の植付条のみの苗の植付を部分的に停止する停止クラッチ(64b)を複数設け、複数の停止クラッチ(64b)は、各々の別個の植付条で且つ同じ植付条数の苗の植付を停止する構成とし、走行距離センサ(176)で検出される走行距離が所定距離に到達するごとに左右方向一外側の停止クラッチ(64b)から内側の停止クラッチ(64b)へかけて順次操作する制御装置(181)を設けた請求項1から請求項6の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項8】
前記所定距離を変更して設定できる設定手段(180)を設けた請求項7に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−70697(P2012−70697A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219128(P2010−219128)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】