説明

苗運搬用のコンテナ

【課題】育苗箱を、斜めに起立した姿勢に支持せしめて、多数枚並列させて支架する架台を用いて、運搬車により圃場に運搬するときの、運搬車の荷台上の架台に対する育苗箱の積み込みと、荷降ろしとが楽に行えるようにする。
【解決手段】育苗箱が斜めに起立する姿勢で並列装架される架台を、運搬車の荷台の前後の長さまたは左右の巾に略対応する長さの左右の側枠と、それら側枠間に渡架する育苗箱の支持枠とで、はしご状に組み立て、その架台に長手方向に沿う軌条を装設し、別に、運搬車の架台の床面に略対応する広さの基台を形成して、運搬車の荷台の上面に取り下ろし可能に装架し、その基台には、前記架台を並列させて載架した状態において各架台に装設せる軌条と対応する位置に、その軌条に嵌り合う軌道を形設し、この軌道と前記架台の軌条との嵌合により、多連に並列せる架台を、運搬車の荷台に対し引き出し自在に装架せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植え作業の際に、苗床で仕立てた苗を、移植する圃場にまで運搬する苗運搬用のコンテナについての改良に関する。
【背景技術】
【0002】
苗床で仕立てた水稲の苗を、本田において田植え作業により移植する際の、圃場までの苗の運搬は、水稲の苗が、育苗箱(苗箱)内に床土を入れ、播種して、育苗することで、育苗箱内に填め込まれた状態にあることから、この仕立てた苗を収容している育苗箱ごと、トラック等の運搬車の荷台に積み込み、その運搬車により、移植(田植え)作業を行う圃場の隣側の畦畔まで運び、そこで、運搬車の荷台から、育苗箱を降ろし、育苗箱から苗を引き抜き、これを圃場内で待機している田植機に装填し、その田植機により圃場面に植え付けていくようにしている。
【0003】
この仕立てた苗の運搬を、それを密植状態に収容している苗箱ごと運搬車の荷台に積み込んで運搬する手段は、運搬車の荷台に対する育苗箱の積み込みと荷降ろしの作業性を良くするため、図1に示しているように、左右の巾方向の内寸法が、育苗箱1の横巾に対応する長方形の枠体を組み立て、これに、育苗箱1の一端側を斜めに差し込んだときに、その育苗箱1を斜めの姿勢で起立する状態に保持する支持杆3を、育苗箱1内に収容されている苗群を含めた育苗箱1の、底面から苗の先端側に至る高さ寸法に対応する間隔を置いて、枠体に、並列させて設け、これにより、多数枚の育苗箱1を、斜めの姿勢で重合して並列するように載架する架台Aを構成し、この架台Aを、図2にあるように、軽トラック等の運搬車Tの荷台t上に積み込むようにする手段が行われてきている。
【0004】
この手段は、架台Aに多数枚の育苗箱1を支架せしめることで、一度に多数枚の育苗箱1を運搬車Tの荷台t上に積み込め、また荷降ろしできるようになるが、仕立てた苗を収容している育苗箱1は、一枚の重量が約6kgあることで、1つの架台Aに育苗箱1を12〜15枚並列装架するようにした場合に、1つの架台Aの重量が70〜90kgとなるので、これを運搬車Tの荷台t上に積み込む作業が、架台Aの前後の端部にそれぞれ位置する2人の作業員で担荷する2人がかりの作業となるので、複数の作業員と重度の労働を要する問題がある。
【0005】
しかも、運搬車Tの荷台t上へのこの架台Aの積み込みは、運搬の効率を高めるため、荷台t上面に隙間なく整列させて積み込むことから、荷台t上に載架した架台Aを、荷台tの奥の隅々まで移動させることが必要で、この移動も少なくとも2人がかりで行わなければならず、複数の作業員と重度の作業労力を要する問題がある。
【0006】
さらに、田植え作業を行う圃場の隣側の畦畔まで運搬車Tの荷台tに載架して運搬したとき、そこで、荷台t上から架台Aを降ろして、育苗箱1を取り出し、それから苗を抜き出す作業を行うが、この作業の際、荷台tの奥に積み込んだ架台Aを荷台tの縁まで移動させ、それを抱え持って降ろすのに、少なくとも2人の作業員を要し、複数の作業員とヘビーな労働を必要とする問題がある。
【0007】
また、苗の運搬車による運搬を、仕立てた苗を収容している育苗箱1を並列支架する架台Aを用いて行う際、育苗箱1を並列支架せしめた架台Aが一人では扱いきれない重量となることから、運搬車Tの荷台t上には、空の架台Aを並列載架しておき、これら架台Aに、仕立てた苗を収容している育苗箱1を、一個ずつ差し込んで並列支架せしめていき、その育苗箱1の架台Aに対する差し込み装填が終えたところで、運搬車Tの運転走行により圃場まで運搬し、圃場においては、運搬車Tの荷台tに載架してある架台Aはそのままにして、その荷台t上の架台Aから、育苗箱1を一個ずつ抜き出して取り降ろすようにすることも行われている。
【0008】
このように、架台Aを用いて行う苗の運搬作業は、育苗箱1を、運搬車Tの荷台t上に並列させて載架した架台Aに差し込み装填していくときに、荷台tの周縁部に位置する架台Aに対しては楽な作業となるが、荷台tの奥に位置する架台Aに対し育苗箱1を差し込んでいくときに、作業員に、荷台tに乗り上がるか、無理な姿勢を強いることになるので、厄介な作業となる問題がある。
【0009】
また、積み込む育苗箱1の集積場所が、運搬車Tの荷台tの一側にある場合には、荷台tの他側に位置する架台Aに対しては、荷台tの周縁に位置する架台Aであっても、そこまで育苗箱1を持って運ばなければならず、作業性が悪い問題がある。そして、この問題は、育苗箱1を取り降ろすときにも同様に生じてくる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明において解決しようとする課題は、仕立てた苗を収容している育苗箱を、それの一端側の支持により斜めに起立した姿勢に支持せしめて、多数枚並列させて支架する架台を用いて、運搬車により圃場に運搬するときの、運搬車の荷台上の架台に対する育苗箱の積み込みと、荷降ろしとが楽に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては、上述の課題を解決するための手段として、
仕立てた苗を収容している育苗箱が前後の一端側を下にして斜めに起立する姿勢で並列装架される架台を、運搬車の荷台の前後の長さ寸法または左右の巾寸法に略対応する長さの左右の側枠と、それら側枠間に並列させて組み付ける育苗箱の支持枠とで、はしご状に組み立て、その架台の下面側に長手方向に沿う軌条または軌導輪を装設し、別に、運搬車の架台の床面積に略対応する広さの基台を形成して、運搬車の荷台の上面に取り下ろし可能に装架し、その基台の上面側には、前記架台を並列させて載架した状態において各架台の下面側に装設せる軌条または軌導輪と対応する位置に、それらに嵌り合う軌道を形設し、この軌道と前記架台の軌条または軌導輪との嵌合により、基台の上面側に多連に並列させて載架せる架台を、運搬車の荷台に対し引き出し自在に装架せしめたことを特徴とする苗運搬用のコンテナを提起するものである。
また、これに併せて、上述の苗運搬用のコンテナにおける基台に設ける軌道を、金属板の成形加工により横向きのチャンネル状に形成して基台の横枠の上面側に組み付け、架台に設ける軌条を、金属板の成形加工により開放口が前記基台のチャンネル状の軌道の開放口と対向する横向きのチャンネル状に形成して架台の側枠の下端側に設け、これらチャンネル状の軌道と軌条とを互いに喰い合う状態に嵌め合わせて、軌道に対し軌条をスライド自在に支承せしめることを特徴とする手段、および、
上述の苗運搬用のコンテナにおいて、架台に設ける軌条には、前端側に、軌道輪を設け、基台に設ける軌道には、後端より軌道の全長の略4分の1程度の距離で前方に寄る部位に、前記架台に設けた軌道輪と衝合して、以後の架台の引き出し方向の移動を停止せしめるストッパーを設けておく手段、および、
基台の後端側で、その基台の上面側に多連に並列させて支架せる架台を左右に相い隣なる2連ずつの群に分けたときの各群における2連の架台の隣接部の後面に対応する位置に、常態において、2連の架台の両方の引き出しを阻止し、回動操作により一方の架台の引き出しを阻止して他方の架台の引き出しを許容する状態に切り換わる牽制手段を装設したことを特徴とする手段、および、
基台の後端側で、その基台の上面側に多連に並列させて装架せる架台のそれぞれと対応する部位に、架台の引き出し作動により係止片が架台に設けた規制部材に対向する位置に動くよう作動する牽制装置をそれぞれ設け、それら牽制装置を、一つの架台を引き出す動作により、同調して作動するよう連繋せしめて、一つの架台を引き出したときに他の荷台の引き出しを不能とするようにする手段とを提起するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明による苗運搬用のコンテナは、仕立てた苗を収容している育苗箱を、架台に並列支架せしめてその架台を運搬車の荷台に載架して圃場まで運搬する際、架台に対し育苗箱を支架せしめる作業を、運搬車の荷台上に載架した架台を荷台の側方に引き出して、それに育苗箱を1枚ずつ差し込み支架せしめながら、架台を順次荷台の奥にスライドさせていくことで行え、また、育苗箱を取り降ろすときは、架台の引き出し方向の前端側から育苗箱を引き抜いて取り降ろしながら架台を順次引き出すか、架台を引き出した状態として、育苗箱を取り降ろすことで、荷台の奥に積み込んだ育苗箱まで、楽に取り降ろせるようになる。
【0013】
本発明手段は、請求項2にあるように、基台に設ける軌道と架台に設ける軌条または軌導輪との嵌め合いを、上下方向の動きを規制するようにしておくことで、架台を引き出しながら順次育苗箱を取り降ろしていくときに、架台が長く引き出されて、架台の引き出した部分の重量が基台上に残る部分の重量より大きくなることで、架台の引き出し方向における終端側が浮き上がり、架台の軌条または軌導輪が、基台の軌道から外れるようになるのを防止するようになる。
【0014】
また、請求項3にあるように、架台の引き出しを、その引き出し作動のエンドの少し手前の位置でストップさせるストッパーを設けておくときは、架台を引き出すことで、架台が引き出された状態位置に保持されるようになるから、架台に対する育苗箱の差し込み装填と、差し込み支架せしめた育苗箱の抜き出しとが、引き出した架台のすぐそばに位置する作業者により楽に行われるようになる。
【0015】
また、請求項4にあるように、基台に架台の引き出しを規制する規制金具を設けておくときは、架台の引き出しを、望む架台だけに制限して、意図しない架台が運搬車の架台上から突出してきて、多数の架台が一度に引き出された状態になって、基台を含めた全体のバランスが崩れて、荷台から転落するようになる不都合を防止するようになる。
【0016】
また、請求項5にあるように、1つの架台を引き出したときに、他の架台の引き出しを不能とするようにしておくときは、作業員が、複数の荷台を引き出すことで生ずる前述の全体のバランスの崩れを防止するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施の態様を、実施例につき図面に従い詳述する。
【実施例1】
【0018】
図3乃至図5は、本発明を実施せる苗運搬用のコンテナの第1の実施例を示し、図3は、同上のコンテナの全体の側面図、図4は正面図、図5は分解斜視図である。これら図において、Tは運搬車、tはその運搬車Tの荷台、Aは多数の育苗箱1を並列支架する架台、Bはその架台Aを並列させてスライド自在に載架せしめる基台を示す。
【0019】
Wは、荷台t上に基台Bを装架し、その基台Bの上面側に、多連に並列させた架台Aを、それぞれスライド自在に載架して構成せる苗運搬用のコンテナの全体を示す。運搬車Tは、この例においてはトラックであり、荷台tはそのトラックの荷台で、左右のあおり板および後方のあおり板は省略している。
【0020】
架台Aは、図6乃至図8に示しているように、金属板により板状に形成した左右の側枠2・2と、それらの間に並列させて渡架する育苗箱1の支持杆3とで、はしご状に組み立てられ、後端側には、引き出すときの持ち手20が設けてある。
【0021】
左右の側枠2・2は、前後の長さが運搬車Tの荷台tの前後長さに略対応する長さに形成してあり、それらの左右の間隔は、育苗箱1の横巾の寸法に対応するように設定してあって、育苗箱1の前後方向の一端側を、この間隔内に差し込めるようにしてある。
【0022】
左右の側枠2・2の対向する内縁側には、図8において鎖線に示しているように差し込まれる育苗箱1の端縁の左右の端部に当接して支承する縁枠状の底板21がそれぞれ形成してある。
【0023】
支持杆3は、仕立てた苗が収容されている育苗箱1を、図9にあるように斜めの姿勢として差し込んだときに、その姿勢で起立する状態に保持するもので、斜めに差し込んだ育苗箱1の底板側を支承するよう左右の側枠2・2間に渡架するように設ける長い支持杆3aと、斜めの姿勢で差し込んだ育苗箱1の上面側に当接して支承するよう左右の側枠2・2の内壁面から短く突出する短い支持杆3bとからなる。そしてこの長短一組の支持杆3a・3bは、育苗箱1の底面から育苗箱1内に収容されている苗の先端に至る高さ寸法に対応する間隔をおいて、左右の側枠2・2の長手方向に並列するように設けてある。
【0024】
aは、上述の架台Aを、運搬車Tの荷台t上に載置する基台Bの上面に載架したときに、その基台Bの上面側に設けた軌道bに嵌合して、該架台Aを基台Bに対しスライド自在に載架せしめるよう該架台Aの下面側に設けた軌条である。軌条aは、この例においては、金属板の折曲げ成形により横向きのチャンネル状に形成し、そのチャンネルの開放部が、図8にあるように、組み立てられる架台Aの左右の両外側に向かい、チャンネルの外周壁が、左右の側枠2・2の各内側に棚段状に突出する状態として側枠2・2の下端側に装設している。
【0025】
この軌条aは、前述の左右の側枠2・2を構成する鉄板等の板材に連続させて成形することで、前述の図8にあるように、側枠2・2と一体に連結して側枠2・2を補強し、また、横向きのチャンネル状の軌条aの上面が差し込んだ育苗箱1の下端を支承する架台Aの底板21を構成するようにしている。
【0026】
そして、この軌条aには、架台Aを基台Bにスライド自在に組み付けて運搬車Tの荷台tに載架したときの、荷台tの前方に向かう側の前端部位に、軌道輪cが軸支される。
【0027】
基台Bは、架台Aを、運搬車Tの荷台tに対し引き出し自在に載架するために、上面側に架台Aをスライドさせる軌道bを設けて、その運搬車Tの荷台t上に載置しておく台枠であり、図5にあるように、運搬車Tの荷台tの前後方向に並列する複数本の横方向に沿う横枠60と、その横枠60の上面に載置して組み付ける左右方向に並列する複数本の縦枠61とで、運搬車Tの荷台tの広さに対応する大きさの平らな台枠状に形成している。
【0028】
この基台Bの上面側に、前述の架台Aをスライド自在に支架せしめるよう設ける軌道bは、この例においては、前述の縦枠61を、鉄板等の金属材をチャンネル状に成形加工し、このチャンネル材を、それの開放口が側方に向かう横向きの姿勢として、横枠60の上面で、前述の架台Aを左右に並列させて載架したときの、それら架台Aに設けられる前述の軌条aと対応する位置を占める部位に、図10にあるように横向きのチャンネルの下端側の水平な底面を当接し、溶接、またはボルトの締着で固着することで装設するようにしている。そして、この軌道bはそれの後端側に架台Aの軌条aを支承してガイドするガイド輪62が軸支される。
【0029】
このチャンネル材よりなる軌道bは、上述の横枠60に対して固定装着するとき、チャンネルの開放口が、架台Aに設ける各チャンネル状の軌条aの開放口とそれぞれ対向する状態に組み付けている。
【0030】
そして、この軌道bを構成している縦枠61は、基台Bの左右の両側に位置する縦枠61を除いた左右の中間に位置する縦枠61にあっては、図10にあるように、隣り合うチャンネル材よりなる軌道bが背中合わせに当接して、ダブルに組み合わせた態様にしている。
【0031】
この基台Bに設けた軌道bに対する架台Aに設けた軌条aの挿し込み嵌め合わせは、基台Bを運搬車Tの荷台t上に載架した状態を規準として、基台Bの前端側から、架台Aに設けた軌条aの後端側を、基台Bに設けた軌道bの前端部に嵌挿し、その状態で架台Aを後方にスライドさせることで行う。
【0032】
基台Bの軌道bに対する架台Aの軌条aの嵌め合わせを終えて、基台Bに対しスライド自在に支架された架台Aが、基台Bを通り越して基台Bの後方に抜け出るのを阻止するため、基台Bの軌道bの途中で、基台Bの後端から前後長さの略4分の1程度前方に寄る部位には、架台Aの軌条aの前端側に軸支した軌道輪cと衝合することで、それ以上の架台Aの後方へのスライドを阻止するストッパーSが設けられる。
【0033】
基台Bおよび架台Aは、架台Aに設けた軌条aを基台Bに設けた軌道bにスライド自在に嵌め合わせた状態で、運搬車Tの荷台t上に載置する。このとき、基台Bは、それの前端側が荷台tの前方に向かう状態として載架し、それにスライド自在に装架した架台Aが、荷台tの後縁から後方に引き出されるようにする。
【0034】
dは、架台Aをスライド自在に支架せる基台Bを運搬車Tの荷台t上に載置したとき、その基台Bを荷台t上に固定保持せしめる固定手段で、この例においては、基台Bの前端部に支柱eを設け、その支柱eの上部にロープを通すループfを設けておき、このループfに通したロープを、運搬車Tの車体に設けられているフックに緊縛することで行うように構成しているが、基台Bに、運搬車Tの車体に対し固定するネジジャッキ等の組付金具を設けてそれにより固定するようにするなど適宜に行ってよい。
【0035】
Yは、運搬車Tの荷台t上に、多連に並列させた架台Aをそれぞれスライド自在に支架せしめた基台Bをセットした状態において、並列する架台Aの一つを、荷台tからその後方に引き出したときに、引き出しを意図した架台Aとは別の他の架台Aが荷台tから突出してきて、一度に複数の架台Aが引き出された状態となって、重量バランスの崩れにより、架台Aが基台Bごと荷台t上から転落するようになるのを防止するために、架台Aの引き出しが、意図した架台A一つだけに規制するよう基台Bに設けた牽制手段を示す。
【0036】
牽制手段Yは、この例においては、図11乃至図13に示しているように、荷台t上に載置した基台Bの後端部で、基台B上に多連に並列する架台Aのうちの相い隣なる2連の架台Aの隣接部位の後面に対応する部位に、ハンドル70の操作により、基台Bの後端の横枠60を前後に貫通する前後方向の支軸71中心に左右に回動する回動体72を設け、その回動体72の上部に、前面が、隣接する2連の架台A・Aのそれぞれの軌条a・aの後端部に対向する堰止部材73を、立ち上げるように設け、かつ、この堰止部材73の形状を、前記支軸71中心とする回動体72の回動により、左方または右方に傾斜回動させたときに、一方の架台Aの軌条aの後端の後方を塞いだ状態を保持して他方の架台Aの軌条aの後端の後方から外れるように形成しておく。また、この回動体72には、ハンドル70に手を触れない常態においては、堰止部材73が隣接する架台A・Aのそれぞれの軌条a・aの後端部の後方を塞ぐ位置に保持されるように、撓曲自在のバネ材75により付勢しておくことで構成している。
【0037】
そして、この牽制手段Yは、多連に並列する架台Aを、相い隣なる2連ごとの群に分けたときの、各群における架台Aと架台Aとの隣接部位の後方位置にそれぞれ装設する。そして、これにより、ハンドル70を掴んで回動体72を図13の如く左方に回して、堰止部材73を右方の架台Aの軌条aの後端部の後方から側方に外し、右方の架台Aを持ち手20を握って引き出すときに、引き出しを意図しない左方の架台Aが追従して引き出される不都合が生じないようにしている。
【実施例2】
【0038】
図14乃至図22は、前述の、多連に並列する架台Aをそれぞれスライド自在に支架した基台Bを、運搬車Tの荷台t上にセットした状態において、一つの架台Aを引き出したときに、他の架台が引き出されるのを規制するよう基台Bに装設する牽制手段の別の例を示している。
【0039】
この例は、並列する架台Aのうちの一つの架台Aを引き出したときには、作業者が他の架台Aを併せて引き出そうとしても、引き出しができないようにして、一度に複数の架台Aが引き出された状態となるのを阻止するようにしている牽制手段である。
【0040】
さらに具体的にいえば、基台B上に並列装架した各架台Aは、それぞれの軌条aの後端部に固定して設けた係止ピン80の下端側を、基台Bの後端側で、軌道bの後端部の下面側に設けておく板バネ81に開設した穴に嵌挿させることで、基台B上に押し込んだ状態位置に固定しておき、架台Aを引き出すときは、板バネ81を下方に押し下げて、係止ピン80との係合を外すことで、架台Aの引き出しが行えるようにして、架台Aの引き出しが、意図した架台Aだけについてしか行えるようにしている場合においても、作業者が一つの架台Aを引き出したときには、他の架台Aの引き出しができないようにする牽制手段である。
【0041】
そして、このための牽制手段は、この実施例においては、架台Aの引き出し口となる基台Bの後端部に、左右方向に沿う支軸90を軸支し、この支軸90の、並列支架している架台Aのそれぞれの軌条aの隣側となる部位に、該支軸90を中心として、前後の両端部が上下に揺動回動する作動部材91をそれぞれ配設し、それら作動部材91には、後端側に、架台Aに設けた軌条aの底面の下方に臨む作動片92を設け、前端側には、前記後端側の作動片92が軌条aの底壁の下面に当接して押し下げられることによる該作動部材91の揺動回動によって、架台Aの軌条aの外側面に設けた規制部材93と衝合する位置に上昇してくる係止片94を設けておく。
【0042】
そして、この作動部材91は、支軸90に対し底面を溶接により固着しておくことで、前述の作動片92が架台Aの軌条aの底面に当接して図18にあるよう支軸90中心に右回りに回動したときに、支軸90が一緒に回動するようにして、その支軸90に巻き付けたねじりバネ95を、作動部材91が支軸90中心に図18において左回りに回動するよう基台Bの横枠60と作動部材91との間に作用させて、作動部材91を図20にあるように前端側に設けた係止片94が下降した状態に保持せしめておく。
【0043】
この状態時においては、上昇位置を占める作動片92が架台Aに設けた軌条aの底壁の下面に当接するようになるが、架台Aに設けた軌条aは底壁の後端部位に切欠部96を形設しておいて、この切欠部96に作動片92が嵌入していくことで、軌条aの底壁の下面に対する作動片92の当接はなく、これにより、図20に示している状態となるようにしている。
【0044】
この切欠部96は、軌条aの後端から距離Dをおいた位置までの範囲に設けてあり、この距離Dだけ架台Aの引き出しにより軌条aが後方に動くことで、作動片92の軌条aの底壁の下面との接触が始まり、それにより、作動部材91は、支軸90中心に右回りに回動し、図18にて実線に示しているように、係止片94が規制部材93に衝合していく位置を占める状態となる。
【0045】
このとき、架台Aの軌条aの外側面に設けた規制部材93は、架台Aを図18において鎖線に示している位置まで引き出したことで、鎖線に示す位置まで移動している。このため、架台Aの引き出しにより上昇回動する係止片94は、移動した規制部材93を越したところに上昇していくようになる。
【0046】
このことから、引き出した架台Aは、規制部材93による規制を受けることなく、そのまま、基台Bの軌道bに設けたストッパーSに架台Aの軌条aの前端部に装設せる軌道輪cが当接して引き出しが制限される状態位置まで引き出される。
【0047】
しかし、並列する他の架台Aの軌条aの隣側位置にそれぞれ設けた牽制位置の作動部材91は、前述の一つの架台Aを引き出す作動により回動する作動部材91と共に回転する支軸90によって、図18に示している作動部材91と同じ状態に回動していることから、並列する他の架台Aは、それを引き出そうとすると、規制部材93が作動部材91の前端側の係止片94に衝合して引き出しが規制するようになる。
【0048】
従って、一つの架台Aを引き出すと、それの引き出し作動により並列する他の架台Aの引き出しができないようになる。
【実施例3】
【0049】
図21乃至図23は、さらに別の実施例を示している。この例は、基台Bの上面側に、育苗箱1を並列、装填する架台Aを、多連に並列させて、それぞれ引き出し自在に装架し、この基台Bを、運搬車Tの荷台t上に載架して、苗運搬用のコンテナを構成する際に、架台Aを並列支架せる基台Bを、それの前後方向が、運搬車Tの荷台tの左右方向に沿う状態として荷台t上に載架し、基台B上に装架した架台Aの引き出しが、運搬車Tの荷台tの側方において行われるようにしている例である。
【0050】
この例における基台Bおよび架台Aは、それらの前後方向の長さが、運搬車Tの荷台tの左右の巾方向の長さに対応するように構成してあることを除いて、前述した実施例のものと変わりなく構成してある。このことから、各構成部材については、同じ構成部材に同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】仕立てた苗を収容する育苗箱を並列させて支架する架台の斜視図である。
【図2】同上の架台を運搬車の荷台上に載架して構成する苗運搬用のコンテナの斜視図である。
【図3】本発明を実施せる苗運搬用のコンテナの全体の概要側面図である。
【図4】同上のコンテナの後面図である。
【図5】同上のコンテナの、基台に架台を支架して運搬車の荷台上にセットするときの全体を分解して示す説明図である。
【図6】同上のコンテナの架台の平面図である。
【図7】同上の同上架台の側面図である。
【図8】同上の同上架台の後面図である。
【図9】同上の同上架台を基台上に装架した状態の側面図である。
【図10】同上の同上状態の後面図である。
【図11】同上の基台の後端部に装設せる牽制装置の側面図である。
【図12】同上の同上装置の後面図である。
【図13】同上の同上装置の、並列する2連の架台の一方を引き出し可能とした状態の後面図である。
【図14】同上の、架台の引き出しを牽制する牽制手段の別の実施例の全体の平面図である。
【図15】同上の同上牽制手段の要部の拡大側面図である。
【図16】同上の同上手段の要部の拡大平面図である。
【図17】同上の同上手段の要部の拡大後面図である。
【図18】同上の同上手段の要部の、架台が引き出されて作動部材が作動した状態の側面図である。
【図19】同上の同上手段を実施せる実施例の一つの架台を引き出した状態の平面図である。
【図20】同上の同上手段の要部の、架台が基台上に押し込まれている状態時の側面図である。
【図21】同上の、別の実施例で基台をそれの前後方向が運搬車の荷台の左右方向に沿う状態として、荷台上に載架して、架台の引き出しが荷台の側方において行われるようにした例の全体の概要側面図である。
【図22】同上の同上実施例の全体の概要側面図である。
【図23】同上の同上実施例の全体の概要後面図である。
【符号の説明】
【0052】
A 架台
B 基台
D 距離
S ストッパー
T 運搬車
Y 牽制手段
W コンテナ
a 軌条
b 軌道
c 軌道輪
d 固定手段
e 支柱
f ループ
t 荷台
1 育苗箱
2 側枠
20 持ち手
21 底板
3 支持杆
3a 長い支持杆
3b 短い支持杆
60 横枠
61 縦枠
62 ガイド輪
70 ハンドル
71 支軸
72 回動体
73 堰止部材
75 バネ材
80 係止ピン
81 板バネ
90 支軸
91 作動部材
92 作動片
93 規制部材
94 係止片
95 ねじりバネ
96 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕立てた苗を収容している育苗箱が前後の一端側を下にして斜めに起立する姿勢で並列装架される架台を、運搬車の荷台の前後の長さ寸法または左右の巾寸法に略対応する長さの左右の側枠と、それら側枠間に並列させて組み付ける育苗箱の支持枠とで、はしご状に組み立て、その架台の下面側に長手方向に沿う軌条を装設し、別に、運搬車の架台の床面積に略対応する広さの基台を形成して、運搬車の荷台の上面に取り下ろし可能に装架し、その基台の上面側には、前記架台を並列させて載架した状態において各架台の下面側に装設せる軌条と対応する位置に、それらに嵌り合う軌道を形設し、この軌道と前記架台の軌条との嵌合により、基台の上面側に多連に並列させて載架せる架台を、運搬車の荷台に対し引き出し自在に装架せしめたことを特徴とする苗運搬用のコンテナ。
【請求項2】
基台に設ける軌道を、金属板の成形加工により横向きのチャンネル状に形成して基台の横枠の上面側に組み付け、架台に設ける軌条を、金属板の成形加工により開放口が前記基台のチャンネル状の軌道の開放口と対向する横向きのチャンネル状に形成して架台の側枠の下端側に設け、これらチャンネル状の軌道と軌条とを互いに喰い合う状態に嵌め合わせて、軌道に対し軌条をスライド自在に支承せしめることを特徴とする請求項1記載の苗運搬用のコンテナ。
【請求項3】
架台に設ける軌条には、前端側に、軌道輪を設け、基台に設ける軌道には、後端より軌道の全長の略4分の1程度の距離で前方に寄る部位に、前記架台に設けた軌道輪と衝合して、以後の架台の引き出し方向の移動を停止せしめるストッパーを設けておくことを特徴とする請求項1記載の苗運搬用のコンテナ。
【請求項4】
基台の後端側で、その基台の上面側に多連に並列させて支架せる架台を左右に相い隣なる2連ずつの群に分けたときの各群における2連の架台の隣接部の後面に対応する位置に、常態において、2連の架台の両方の引き出しを阻止し、回動操作により一方の架台の引き出しを阻止して他方の架台の引き出しを許容する状態に切り換わる牽制手段を装設したことを特徴とする請求項1記載の苗運搬用のコンテナ。
【請求項5】
基台の後端側で、その基台の上面側に多連に並列させて装架せる架台のそれぞれと対応する部位に、架台の引き出し作動により係止片が架台に設けた規制部材に対向する位置に動くよう作動する牽制装置をそれぞれ設け、それら牽制装置を、一つの架台を引き出す動作により、同調して作動するよう連繋せしめて、一つの架台を引き出したときに他の荷台の引き出しを不能とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の苗運搬用のコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−11231(P2009−11231A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176478(P2007−176478)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(390027155)
【Fターム(参考)】