説明

苦渋味の低減された高ポリフェノール含有飲料

【課題】高ポリフェノール含有飲料の苦渋味の低減された、飲みやすい高ポリフェノール含有容器詰め飲料を提供すること。
【解決手段】飲料100ml当たり、ポリフェノールをタンニン量として80〜200mgの濃度で含む高ポリフェノール含有飲料において、飲料当たり、マルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオースを1.5〜6重量%の範囲で配合することにより、高ポリフェノール含有飲料の苦渋味を低減させ、ポリフェノールの苦渋味の低減された容器詰め飲料を提供する。本発明の苦渋味の低減化方法は、ポリフェノールを高濃度で含む飲料において、飲料の甘味を強くすることなく、ポリフェノールの苦渋味を低減することができるため、該飲料は、甘味を感じることなくポリフェノールの苦渋味だけを低減した、飲料本来の香味を生かした飲みやすい容器詰め飲料として提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高ポリフェノール含有飲料の苦渋味の低減された容器詰め飲料、及びその製造方法に関する。特に、高ポリフェノール含有飲料において、飲料の甘味を強くすることなく、ポリフェノールの苦渋味を低減することによって、甘味を感じることなくポリフェノールの苦渋味だけを低減して飲みやすい容器詰め飲料を製造し、提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリフェノール類の健康機能が着目されており、それらを高濃度に含む飲料が開発されている。しかし、ポリフェノール類は苦渋味が強いので濃度を高めるにしたがって、苦渋味が強くなり飲み辛くなる。甘味を強くすれば、ある程度苦渋味を抑制することは可能だが、甘味が強くなると、飲料本来の味覚が薄れ、また、茶類を初めとするポリフェノールが有する健康感を損なってしまうことにもなる。
【0003】
そこで、従来より、ポリフェノールの苦渋味を低減する種々の方法が提案されている。しかしながら、従来提案されているポリフェノール類の苦渋味の低減化方法を、ポリフェノール類を高濃度に含む飲料等に適用した場合には、飲料本来の味覚への影響があって、ポリフェノールの苦渋味を低減し、かつ、飲料本来の味覚を保持した飲料とすることが難しく、したがって、ポリフェノール類を高濃度に含む飲料の苦渋味を低減する方法として、必ずしも満足のいくものにはならないという問題がある。
【0004】
例えば、特開平3−168046号公報、特開平10−4919号公報には、緑茶等のカテキンに対してサイクロデキストリンを含有せしめることにより、飲料等の苦渋味を低減することが開示されている。この方法により、飲料等の苦渋味が低減され、結果としてカテキン類の大量摂取が可能になることが示されているが、ここで使用しているサイクロデキストリンは、苦渋味を抑えることは可能なものの、香り成分までも包接してしまうため、香り立ちが弱くなり、この方法をポリフェノール類を高濃度に含む飲料等に適用した場合には、飲料本来の香味が失われる恐れがある。
【0005】
また、特開2006−67895号公報、特開2006−67896号公報には、シクロデキストリン(サイクロデキストリン)に加えて、シクロフラクタンを特定比率で含有させることにより、ポリフェノールの苦渋味を抑制する方法が開示されている。しかし、該方法も、シクロデキストリンを用いることによって、上記と同じ問題があり、また、シクロフラクタンは、原料素材として販売されていないためにこの技術を実用化するためには、この糖を製造することからはじめる必要があることから、実用的対応が難しいという問題がある。
【0006】
更に、特開平8−298930号公報には、茶飲料等をデキストリン、サイクロデキストリン、又は澱粉等と混ぜ、これにサイクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させて、茶飲料等に含まれるポリフェノール類を配糖化することにより、ポリフェノール類の渋味を低減する方法が開示されている。しかし、この方法は、茶飲料等に含まれるポリフェノール類を配糖化する方法であるため飲料本来の香味のバランスへの影響が避けられないという問題がある。
【0007】
また、特開2005−124540号公報には、ポリフェノールにカゼインを含有させ、ポリフェノールの苦渋味を改善した、飲料等に添加して用いるポリフェノール組成物について、特開2005−245291号公報には、ポリフェノール類を含む食品に、キシログルカンを添加して、食品中のフェノール類の渋味や収斂味を低減した加工食品について、開示されている。しかし、カゼインやキシログルカン等も、飲料成分としては飲料本来の香味に適合するものではないため、飲料本来の香味を保持しつつ、ポリフェノールの苦渋味を改善するという目的からは、満足できるものではない。
【0008】
一方で、近年、食生活の向上に伴い、甘味の強すぎない食品の需要が増加している。このような需要に対応するために、従来、甘味を抑える方法として、蔗糖等に代えて、各種デキストリンなどの比較的高分子のデンプン糖が用いられてきた。しかし、デキストリンは、粉臭がしたり、溶解性が悪いという点で、食品に用いられる場合に制約がある。そこで、近年、単糖類や二糖類と、高分子デキストリンとの中間に位置するオリゴ糖が、低甘味のデンプン糖として注目されるようになった。最近、このオリゴ糖を飲料等の風味や味覚の改善に用いることが提案されている。
【0009】
例えば、特開平11−253101号公報には、可溶性紅茶成分に、マルトテトラオース、マルトペンタオース等の澱粉分解物を含有させることにより、紅茶飲料の製造時の加熱殺菌に対する、紅茶本来の香りの喪失を防止し、その風味を改善することが開示されている。また、特開2001−108号公報には、茶葉から抽出したエキスと、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースから選ばれる少なくても1種を主成分とするマルトオリゴ糖を含む粉末状物質を調製し、該マルトオリゴ糖を含む粉末状物質とすることにより、長期間の保存においても本来の茶の風味及び水色を有し、しかも秤量が容易な即席茶とすることが、開示されている。
【0010】
また、特開2000−166504号公報には、固形物当たりのマルトヘキサオース(G6)以上の含量が30〜50重量%で、75重量%水溶液の20℃における粘度が8,000〜12,000cpである糖組成物とすることにより、コク味があり、しかもデキストリンのような糊臭のない、アルコール飲料等の味質改良効果のある糖組成物を提供することが開示されている。このように従来、マルトオリゴ糖を、飲食品等の添加成分として利用することは知られているが、しかし、これまでに、上記のようなマルトオリゴ糖を、ポリフェノールの苦渋味の低減化に用いた例は、報告されていない。
【0011】
【特許文献1】特開平3−168046号公報。
【特許文献2】特開平8−298930号公報。
【特許文献3】特開平10−4919号公報。
【特許文献4】特開平11−253101号公報。
【特許文献5】特開2000−166504号公報。
【特許文献6】特開2001−108号公報。
【特許文献7】特開2005−124540号公報。
【特許文献8】特開2005−245291号公報。
【特許文献9】特開2006−67895号公報。
【特許文献10】特開2006−67896号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、高ポリフェノール含有飲料の苦渋味の低減された容器詰め飲料の製造方法、及び該方法によって製造されたポリフェノールの苦渋味の低減された容器詰め飲料を提供することにある。特に、本発明の課題は、茶由来のポリフェノールを高濃度で含む飲料において、飲料の甘味を強くすることなく、ポリフェノールの苦渋味を低減することによって、甘味を感じることなくポリフェノールの苦渋味だけを低減して、飲料本来の香味を生かした飲みやすい容器詰め飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、マルトオリゴ糖のうち、マルトヘキサオース、及び、マルトヘプタオースが、ポリフェノールによる苦渋味に対して、その低減化効果があることを見い出し、かつ、該マルトオリゴ糖を高ポリフェノール含有飲料の苦渋味の低減化に用いることにより、苦渋味の低減化された高ポリフェノール含有飲料を製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、飲料100ml当たり、ポリフェノールをタンニン量として80〜200mgの濃度で含む高ポリフェノール含有容器詰め飲料を製造するに際して、飲料当たり、マルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオースを1.5〜6重量%の範囲で配合することを特徴とする苦渋味の低減された高ポリフェノール含有容器詰め飲料の製造方法、及び該方法によって製造されたポリフェノールの苦渋味の低減された容器詰め飲料からなる。
【0015】
本発明によって提供される容器詰め飲料は、マルトヘキサオース或いはマルトヘプタオースの作用によって、ポリフェノールの苦渋味を効果的に低減することができ、しかも、該マルトオリゴ糖の抑えた甘味によって、飲料本来の香味と調和する味覚を得ることができ、したがって、茶由来のポリフェノール等を高濃度で含む飲料において、飲料の甘味を強くすることなく、ポリフェノールの苦渋味を低減することによって、甘味を感じることなくポリフェノールの苦渋味だけを低減して、飲料本来の香味を生かした飲みやすい容器詰め飲料とすることができる
【0016】
本発明において、高ポリフェノール含有飲料のポリフェノールとしては、緑茶、紅茶、又はウーロン茶由来のポリフェノールを挙げることができ、本発明における高ポリフェノール含有飲料としては、該ポリフェノールを濃縮や添加によって高含量に含有する飲料を挙げることができる。該飲料としては、緑茶、紅茶、又はウーロン茶を挙げることができる。
【0017】
すなわち具体的には本発明は、(1)飲料100ml当たり、ポリフェノールをタンニン量として80〜200mgの濃度で含む高ポリフェノール含有容器詰め飲料を製造するに際して、飲料当たり、マルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオースを1.5〜6重量%の範囲で配合することを特徴とする苦渋味の低減された高ポリフェノール含有容器詰め飲料の製造方法からなる。
【0018】
また本発明は、(2)ポリフェノールが、緑茶、紅茶、又はウーロン茶由来のポリフェノールであることを特徴とする上記(1)記載の苦渋味の低減された高ポリフェノール含有容器詰め飲料の製造方法や、(3)上記(1)又は(2)記載の飲料の製造方法によって製造された苦渋味の低減された高ポリフェノール含有容器詰め飲料や、(4)飲料が、緑茶、紅茶、又はウーロン茶であることを特徴とする上記(3)記載の苦渋味の低減された高ポリフェノール含有容器詰め飲料からなる。
【発明の効果】
【0019】
ポリフェノール類の健康機能が着目され、それらを高濃度に含む飲料が開発されている中で、本発明により、ポリフェノールの苦渋味を効果的に低減した、飲み易い高ポリフェノール含有容器詰め飲料を提供することができる。特に、本発明において、ポリフェノールの苦渋味の低減に用いられるマルトヘキサオース或いはマルトヘプタオースは、抑えた甘味によって、飲料本来の香味と調和する味覚を得ることができ、したがって、茶由来のポリフェノール等を高濃度で含む飲料において、飲料の甘味を強くすることなく、ポリフェノールの苦渋味を低減することによって、甘味を感じることなくポリフェノールの苦渋味だけを低減して、飲料本来の香味を生かした飲みやすい容器詰め飲料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、飲料100ml当たり、ポリフェノールをタンニン量として80〜200mgの濃度で含む高ポリフェノール含有容器詰め飲料を製造するに際して、飲料当たり、マルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオースを1.5〜6重量%の範囲で配合することを特徴とする苦渋味の低減された高ポリフェノール含有容器詰め飲料を製造する方法、及び該方法によって製造されたポリフェノールの苦渋味の低減された容器詰め飲料からなる。
【0021】
(ポリフェノール)
ポリフェノールは、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基をもつ植物成分のことを指し、カテキンやアントシニンなどのフラボノイド類、クロロゲン酸などのフェノール酸が代表的なものである。様々な生理機能が知られているが、ほとんどのポリフェノールは強い苦渋味を有していることから、高濃度のものを摂取することは難しい。本発明におけるポリフェノールとしては、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の茶類をはじめ、ぶどう、りんご、ライチ、カシスなどの果実や、コーヒー、ココア、カカオなど、食用植物由来であればいずれのポリフェノールをも対象として挙げることができる。しかし、苦渋味低減効果の強さの観点から、茶類のポリフェノールを対象とするのが好ましく、その中でも紅茶のポリフェノールを対象とすることが最も好ましい。本発明における高ポリフェノール含有飲料としては、原料や抽出液等に含有されるポリフェノールを濃縮等によってそのポリフェノール含量を増加させたものや、ポリフェノールを添加することによって高含量に含有する飲料に調製したもののいずれをも挙げることができる。
【0022】
(タンニン量)
本発明において、「タンニン量」は、茶類のポリフェノール量を評価する際の基準である酒石酸鉄法(中林敏郎他著「緑茶・紅茶・烏龍茶の化学と機能」弘学出版、137頁参照)を用いて測定した値を指す。すなわち、液中のポリフェノール類と酒石酸鉄試薬を反応させて生じた紫色成分を、吸光度(540nm)測定することにより、没食子酸エチルを標準物質として作製した検量線を用いて定量する。最終的に定量値を1.5倍したものを「タンニン量」とする。
【0023】
本発明において、高ポリフェノール含有飲料としては、飲料100ml当たり、ポリフェノールをタンニン量として80〜200mgの濃度で含むものが対象として挙げられる。すなわち、飲料100ml当たり、80mg以上だと苦渋味を強く感じるようになるので本発明を効果的に適用できる対象となりうる。実用的な濃度として、好ましくは100mg以上、最も好ましくは120mg以上である。最大値は200mgであり、これ以上になると本発明の方法を適用しても苦渋味は非常に強くなり飲用に適さなくなる。
【0024】
本発明において、飲料のタンニン量を本発明における所定の含量に調整するためには、茶類やコーヒーなど抽出工程を介する場合において、使用原料の使用率をあげる(濃く抽出する)方法や、抽出液を濃縮する方法でも対応できるが、通常は、ポリフェノールを多く含む食品素材を添加使用することで調整することができる。茶由来のポリフェノールは、対象となる茶葉を水や有機溶媒を使用して抽出した後に、必要に応じて分画や吸着などの手法で精製して製造する。市販の「ポリフェノン」(三井農林)「サンフェノン」(太陽化学)、「テアフラン」(伊藤園)を使用してもよい。
【0025】
(マルトヘキサオース、マルトヘプタオース)
本発明において用いられる、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースは、それぞれ、グルコースが6つ若しくは7つ結合したオリゴ糖のことを指す。該オリゴ糖は、澱粉から酵素などにより分解することで得られる。本発明においては、これらのオリゴ糖類が、飲料当たり、1.5〜6重量%の範囲で添加される。これ以下だと効果が弱く、これ以上だと効果が頭打ちになるためである。特に好ましい範囲としては、3〜4重量%の範囲で添加するのが好ましい。本発明において、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースは、該オリゴ糖を主体とする糖組成のものを用いることができるが、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースを多く含むオリゴ糖の糖組成のものも用いることができる。
【0026】
本発明において用いられる、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースを調製するには、澱粉分解物からこれらのオリゴ糖を精製して調製することもできるが、実用性を重要視すれば特定の酵素(例えば麦芽α−アミラーゼ)を用いて澱粉を分解して得た、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースを多く含むオリゴ糖の形で調整し、使用することが望ましい。該オリゴ糖の製造方法は、特開平4−210597号公報に開示されており、また、該方法によって製造されたオリゴ糖は、市販されているので(フジオリゴG67;日本食品化工)、該市販のものを用いることもできる。そのほか、TK16(松谷化学)等、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースを比較的多く含む市販品は使用可能である。
【0027】
本発明において、マルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオースは、上記配合割合の範囲内で、適宜、添加される。例えば、フジオリゴG67には、マルトヘキサオース及びマルトヘプタオースが40重量%含まれていることから、このオリゴ糖としては3.7重量%以上添加することになる。また、好適添加量は7.5−10重量%程度である。本発明におけるオリゴ糖を使用する場合には、12重量%以上添加すると混在する低分子のオリゴ糖の影響で甘味を感じるようになる。甘味を感じさせないためにはそれ以下の使用であることが望ましい。
本発明では、マルトヘキサオース及びマルトヘプタオースが用いられるが、これ以上の糖鎖を有するデキストリン類を用いると、苦渋味を低減させる濃度で添加した場合には、デキストリン特有の香味が目立ってしまい、飲料の本来の香味のバランスが失われるので、飲料の香味改善には適さない。
【0028】
(容器詰め飲料)
本発明の苦渋味を低減させた高ポリフェノール含有飲料は、容器詰め飲料として調製し、提供することができる。該高ポリフェノール含有容器詰め飲料は、ポリフェノールとマルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオースの含量を特定する以外は、その飲料の原料、製造方法及び製造条件において、特に制限されることはなく、通常の飲料と同様にして製造することができる。マルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオース以外の糖や甘味料、酸味料、香料、着色料、酸化防止剤などは必要に応じて自由に使用することが可能である。飲料のpHについては効果の強さの面からは中性(pH6−7程度)にすることが望ましいが、それに限定されるわけではない。原料を調合した後は、通常通り、UHT殺菌工程を経て、PETボトルなどの容器に詰めたり、ビンや缶などの容器に詰めた後、レトルト殺菌すればよい。もちろん、無菌充填法も使用可能である。
【0029】
(紅茶飲料)
本発明の容器詰め飲料は、緑茶、紅茶、又はウーロン茶等、適宜の容器詰め飲料として調製することができる。該飲料の好適な例として、ポリフェノールを高濃度に含む紅茶飲料の製造方法について詳細に説明する:紅茶飲料の製造に際して、ポリフェノールを高濃度にするためには、茶葉の使用率を上げる方法と、別途紅茶エキスから得たポリフェノール製剤を添加する方法が考えられる。紅茶の抽出によって、ポリフェノールを高濃度にするためには、水又は熱水を茶葉の重量に対して、10倍〜100倍程度使用することで、タンニン量が80mg/100ml以上の抽出液が得られる。抽出時に茶葉量に対してビタミンCを添加することで、その後の工程の沈殿(クリームダウン)の発生を防止することができる。
【0030】
紅茶由来のポリフェノール製剤は、原料の紅茶葉を水や有機溶媒を使用して抽出した後に、必要に応じて分画や吸着などの手法で精製して製造することができる。これを通常の方法で得た紅茶抽出液に添加するか、若しくは水で希釈することでタンニン量80mg/100ml以上のポリフェノール濃度の抽出液を得ることができる。この抽出液に対してマルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオースを1.5重量%以上になるように添加する。フジオリゴG67を使用する場合には3.7重量%以上添加することになる。
【0031】
本発明の飲料の調製に際して、調合液のpHは、中性のストレートティーの場合には、重曹などを用いて中和をおこなえばよいし、レモンティーの場合にはクエン酸などで酸性にすることにより調製することができる。本発明の飲料の調製に際して、そのほか、糖類、香料や果汁など必要に応じて適宜、ほかの原料を配合することができる。完成した調合液は、UHT殺菌を経て、PETボトルなどの容器に詰めるか、缶、ビンなどのホットパック充填した後、レトルト殺菌をおこない、容器詰め飲料として、調製することができる。その際、無菌充填法も使用することができる。
【0032】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
[実施例1〜4;比較例1〜9]
紅茶葉10gに対して、300gの湯(95℃)を加えて時々攪拌しながら8分間抽出を行った。抽出後、茶殻を除去してから抽出液の液温が10℃になるまで冷却した。冷却した抽出液を遠心分離してから最終濾過をおこない清澄な紅茶抽出液を得た。この抽出液を用いて、タンニン量が150mg/100mlに、また、各種素材濃度が所定濃度になるように調整して、実施例1〜4及び比較例1〜9の試験液を作成した。この試験液の官能評価をおこない、苦渋味および甘味の評価をおこなった。各種原料素材の評価結果を表1に示す。表中、苦渋味低減効果については、低減効果が強い(+++)、やや強い(++)、ある(+)、殆どない(±)、ない(−)の評価結果で示し、甘味については、強い(+++)、やや強い(++)、感じる(+)、殆ど感じない(±)、感じない(−)の評価結果で示した。なお、この実験例で使用した素材の説明(各オリゴ糖の組成;社内分析値)を表2に示した。表1において、セルデックスB−100(日本食品化工)は、β−サイクロデキストリン100%のものである。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
<評価>
上記表1に示されるように、マルトヘキサオースとマルトヘプタオースの含量の総和が1.6重量%以上で明確に苦渋味が低減できていた。他の糖類では、甘味を感じない濃度範囲での苦渋味低減効果は弱いかあるいは確認できなかった。比較的高分子のデキストリンは、甘味を感じない濃度で苦渋味を抑える可能性はあったものの、添加量が多くなると特有の香味が目立つため紅茶飲料への適応は難しいと判断された。β―サイクロデキストリンの苦味低減効果は非常に強力であったが、同時に紅茶の香味が失われることから好ましいものではなかった。
【0037】
[実施例5〜7;比較例10〜11]
タンニン量を100mg/100mlに調整する以外は、実施例1と全く同様にして試験液を作成した。紅茶試験液に対する官能評価の結果を表3に示す。表3に示されるように、マルトヘキサオースとマルトヘプタオースの含量の総和が1.6重量%以上で明確に苦渋味が低減できていた。
【0038】
【表3】

【0039】
[実施例8〜10;比較例12〜13]
次の方法で各試験液を調製した:緑茶葉10gに対して、300gの湯(95℃)を加えて時々攪拌しながら8分間抽出を行った。抽出後、茶殻を除去してから抽出液の液温が25℃になるまで冷却した。冷却した抽出液を最終濾過を行ない、清澄な緑茶抽出液を得た。この抽出液を用いて、タンニン量が150mg/100ml、また、フジオリゴG67が所定濃度になるように調整して試験液を作成した。この試験液の官能評価を行い、苦渋味及び甘味の評価を行なった。緑茶試験液に対する評価結果を表4に示す。表4に示されるように、マルトヘキサオースとマルトヘプタオースの含量の総和が1.6重量%以上で明確に苦渋味が低減できていた。
【0040】
【表4】

【0041】
[実施例11〜16;比較例14〜17]
市販のポリフェノール製剤を利用して、タンニン量を120mg/100ml若しくは150mg/100mlになるようにまたフジオリゴG67を所定の濃度になるように調整した試験液を得た。この試験液の官能評価をおこない、苦渋味及び甘味の評価をおこなった。ポリフェノール製剤溶解液に対する評価結果を表5に示す。なお、表5の「試験液」の項中、「P」は、ポリフェノールを表し、「緑茶P」は緑茶由来の、「紅茶P」は紅茶由来の、「烏龍茶P」は烏龍茶由来の、ポリフェノール製剤である。表5に示されるように、マルトヘキサオースとマルトヘプタオースの含量の総和が、1.6重量%以上で明確に苦渋味が低減できていた。
【0042】
【表5】

【0043】
[実施例17]
ディンブラ主体の紅茶葉100gを、3000gの湯(90℃)で、時々攪拌しながら6分間抽出を行なった。抽出後、固液分離により茶殻を除いた後、液温が10℃以下になるまで冷却した。冷却した抽出液を遠心分離した後、最終濾過をおこない清澄な紅茶抽出液を得た。この抽出液を用いて、フジオリゴG67が8重量%(マルトヘキサオースとマルトヘプタオースの含量の総和3.2重量%)に、タンニン量が150mg/100mlに、更に、pHが6に(L−アスコルビン酸と炭酸水素ナトリウム使用)なるように調合液を作成した。この調合液を液温が90℃に達するまで昇温したのちに、金属缶に190gずつ充填し、窒素を吹き込みながら缶蓋を巻き閉めした。これをレトルト殺菌することで容器詰め紅茶飲料を調製した。1週間常温に保存した後、開缶して中味を評価した。結果、甘味は感じず、また苦渋味は感じないまでに低減していた。また香りも十分に高く紅茶本来の香味を有していた。更に、外観も非常に清澄化していた。この容器詰め飲料を常温で、更に、3週間保存した後で、再度開缶して評価したが、製造直後と同様な性質を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料100ml当たり、ポリフェノールをタンニン量として80〜200mgの濃度で含む高ポリフェノール含有容器詰め飲料を製造するに際して、飲料当たり、マルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオースを1.5〜6重量%の範囲で配合することを特徴とする苦渋味の低減された高ポリフェノール含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項2】
ポリフェノールが、緑茶、紅茶、又はウーロン茶由来のポリフェノールであることを特徴とする請求項1記載の苦渋味の低減された高ポリフェノール含有容器詰め飲料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の飲料の製造方法によって製造された苦渋味の低減された高ポリフェノール含有容器詰め飲料。
【請求項4】
飲料が、緑茶、紅茶、又はウーロン茶であることを特徴とする請求項3記載の苦渋味の低減された高ポリフェノール含有容器詰め飲料。

【公開番号】特開2008−61593(P2008−61593A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244066(P2006−244066)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】