説明

茶畝跨走型茶刈装置

【課題】 充分な収容量の確保、作業時の安全性の確保、使い勝手の向上、小型化の達成、十分な剛性の確保、シンプルな構造の達成等の相反する技術的要請を満たす装置を提供する。
【解決手段】 本発明の茶畝跨走型茶刈装置Mは、走行機体1と、茶刈機ユニット2と、茶葉Aを収容する収容ユニット50を含む収容系装置5とを具えて成り、前記収容ユニット50は、設置高さを走行機体1に対して昇降設定自在にするとともに、収容ユニット50は、底板54と、この底板54とは別体の側周ケージ55とを具え、この底板54をほぼ水平近くの基準姿勢に維持しながら、側周ケージ55は、その底縁が底板部からはみ出るように傾倒できる構成とし、このはみ出たことにより形成される底板54と側周ケージ55との間隙から収容ユニット50内に収容していた茶葉Aを順次下方に落下させて取り出すようにしたことを特徴として成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶畝を跨ぎながら走行し、茶葉を収穫する摘採作業や、茶樹の育成管理のための刈り均し作業等を行うことができる茶刈装置に関するものであって、特に摘採した茶葉の収容部の新規な構成にかかるものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、乗用型摘採装置と称される茶畝跨走型茶刈装置は、その作業性の向上や、作業労力の軽減の点で、高く評価されている。一方でこのような、茶葉摘採作業の効果率が上がるにつれて、更にそれに付随した作業についても改善の要求が出されている。そのひとつとして、摘採した後の茶葉の収容までと、更にここからトラック等の輸送手段への積み替え(荷おろし)に至るまでの作業性の改善が求められている。
この段階での作業上ないしは構造上技術的な要請としては、
(1)茶刈装置における茶葉の収容量を多く確保できること、
(2)収容した茶葉をトラック等に積み替えるにあたり、作業の安全が確保できること、
(3)中小規模茶園に適した比較小型の茶刈装置を、小型トラックにより搬送する際に支 障が出ないように、装置寸法に配慮すること、
(4)このような配慮から収容装置に折り畳み構造を採用すること、
(5)加えて前記折り畳み構造を採用した場合には、収容装置の剛性低下は免れないが、 全体としての強度を十分に確保しうる構造であること、
等の種々の技術課題が存在する。
【0003】
このような技術課題を念頭に置くと、大前提というべき十分な茶葉収容量の確保という点では、装置後方に茶葉をバラ収容できるコンテナ状の収容ユニットを備える構成が必然的に求められてくる。このコンテナタイプの収容ユニットを具えたものの従来技術においてトラック等へ茶葉の積み替え手法に着眼したものとしては、特開2000−50719号公報、特開2000−125643号公報が挙げられる(特許文献1、特許文献2)。
このうち、特開2000−50719号公報は本出願人の開発に係るものであり、コンテナの底床部がコンベヤ状に移動するとともに、その上方の側周ケージは、走行機体後方にずれ動くことができるような構成をとっている(特許文献1)。これによって、底床部とケージとの間によってできた間隙、即ち底床部先端から茶葉が順次円滑に落下するような移動態様が実現し得た。このような手法は、当然ながら重心移動が少なく、且つ順次茶葉が排出されるため、移載作業時の安全性が高まり、茶葉の損傷がなくユーザからは高い評価が得られている。
しかしながら、床底面にコンベヤ構造等を採用することによる構造の複雑さをある程度甘受せざるを得ず、大型装置には好適であるものの、装置全体の小型化が前提とされ、それに伴い構造の単純化を求められる場合には、適用することに一定の限界があった。
【0004】
一方、一般的には、特開2000−125643号公報のように機体側とコンテナとを平行リンクで結び、コンテナの床面を扉構造としてこれを開くことによって茶葉を取り出すような形態のものが実用化されている(特許文献2)。しかしながら、この場合には、茶葉を満載した状態のままコンテナを全体的にずらすため、後方への重心移動が大きく作業の安全性を確保する点では十分ではない。また、コンテナの床面が下開き状になるため、一気に摘採した茶葉が落下し、茶葉が痛むことは避けられない。加えて床面がハッチ状に開く構造の場合には、必然的に剛性低下は免れ得ない。このように現状の手法に鑑みると、前記要請に応えるための技術開発の余地は更に存在していた。
【特許文献1】特開2000−50719号公報
【特許文献2】特開2000−125643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景を考慮してなされたものであって、充分な収容量の確保、作業時の安全性の確保、使い勝手の向上、小型化の達成、十分な剛性の確保、シンプルな構造の達成等の相反する技術的要請のある中、これらを総合的に解決できる新規な茶畝跨走型茶刈装置の開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の茶畝跨走型茶刈装置は、茶畝を跨いで走行する走行機体と、これに搭載され茶枝葉を刈り取る茶刈機ユニットと、走行機体後方に設けられ刈り取られた茶葉をバラ状態で収容する収容ユニットを含む収容系装置とを具えて成り、前記収容ユニットは、設置高さを走行機体に対して昇降設定自在にするとともに、収容ユニットは、底板と、この底板とは別体の側周ケージとを具え、この底板をほぼ水平近くの基準姿勢に維持しながら、側周ケージは、その底縁が底板部からはみ出るように傾倒できる構成とし、このはみ出たことにより形成される底板と側周ケージとの間隙から収容ユニット内に収容していた茶葉を順次下方に落下させて取り出すようにしたことを特徴として成るものである。
【0007】
請求項2記載記載の茶畝跨走型茶刈装置は、前記要件に加え、前記側周ケージが底板からはみ出るように傾倒する移動形態については、側周ケージ底縁が装置後方に向かって移動する形態であることを特徴として成るものである。
【0008】
請求項3記載記載の茶畝跨走型茶刈装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記側周ケージの底縁が装置後方に向かって傾倒しながら移動する場合において、側周ケージの背面側上方における側縁回動支点は、上下方向に自由動が許容されて回動することを特徴として成るものである。
【0009】
請求項4記載記載の茶畝跨走型茶刈装置は、前記要件に加え、前記側周ゲージ側周ケージの底縁は、底板上を転動するコロが設けられていることを特徴として成るものである。
【0010】
請求項5記載記載の茶畝跨走型茶刈装置は、前記要件に加え、前記側周ゲージ側周ケージの底縁のうち、底板に沿って移動する縁辺には、押出フラップが設けられていることを特徴として成るものである。
【0011】
請求項6記載の茶畝跨走型茶刈装置は、前記要件に加え、前記側周ケージついては、その妻板側板面が中折れ可能とされ、背面板と引出し面板とを接近させて側周ケージ全体が折り畳みできるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0012】
請求項7記載の茶畝跨走型茶刈装置は、前記請求項6記載の要件に加え、前記収納ユニット収容ユニットにおける底板及び天板については、途中で中折れ状態に構成され、側周ケージを折り畳んだ状態において、その外側となる引出し面板を覆うように折り畳まれることを特徴として成るものである。
【0013】
請求項8記載の茶畝跨走型茶刈装置は、前記要件に加え、前記収容ユニットの昇降については、茶刈高さの調整を可能とした走行フレームに対し平行リンク機構を介して、収容ユニットフレームが接続され、円弧状に移動することにより行われることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0014】
まず請求項1記載の発明によれば、充分な収容量を確保することができることはもとより、作業時の安全性の確保、使い勝手の向上、充分な剛性の確保、小型で且つシンプルな構成の実現等を図ることができる。
【0015】
また請求項2記載の発明によれば、摘採茶葉のトラック等への移載作業をより安全に行うことができ、且つその作業性もよい。
【0016】
また請求項3記載の発明によれば、摘採茶葉を移載するにあたり、側周ケージの回動支点の工夫により、その移動が円滑に行われる。
【0017】
また請求項4記載の発明によれば、摘採茶葉を移載するにあたり、側周ケージの荷重が移動するコロで支えられることにより、側周ケージの移動が円滑に行われる
【0018】
また請求項5記載の発明によれば、摘採茶葉を移載するにあたり、収容ユニット内の底板上に残留しがちな茶葉を確実に排出することができる。
【0019】
また請求項6、7記載の発明によれば、収容ユニットの非使用時において、これをコンパクトに折り畳むことができる。
【0020】
また請求項8記載の発明によれば、収容ユニットの移動軌跡が円弧状であるため、摘採茶葉の移送を担う移送ダクトと、収容ユニット側との両者の接続、並びにその解除を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の最良の形態は、以下の実施例に述べる通りである。なお説明にあたっては、まず本発明の茶畝跨走型茶刈装置として摘採装置を例に挙げながら、その全体構成を概略的に説明し、併せて本発明の特徴的な構成部分である茶葉の収容系装置について説明する。また、この摘採装置としては、乗用式摘採装置(茶畝跨走型茶刈装置M)であって、刈り取った茶葉Aを上昇移送して収容部に収容するタイプのものを例に挙げて説明する。
なお本明細書中において前後の定義は、茶畝跨走型茶刈装置の刈り取り作業時の進行方向を基準にして、これを前、または前方といい、その反対側を後、後方とする。
【実施例】
【0022】
本発明の茶畝跨走型茶刈装置Mは、一例として図1、2、4、5にその全体形状を示すものであって、茶畝Tを跨ぐように走行する走行機体1と、この走行機体1によって茶畝T上面に位置するように支持される茶刈機ユニットの一例としての摘採機体2と、摘採した茶葉Aを摘採機体2の後方へ移送する移送装置3と、摘採機体2の後方に設けられ摘採した茶葉Aを収容する収容系装置5とを具えて成るものである。以下、各構成部について説明する。
【0023】
まず走行機体1について説明する。このものは、茶畝Tを跨いで茶畝間の畝地を接地走行するものであり、走行方向から見て概ね門型状に形成されたフレーム11を骨格部材とする。このフレーム11は、畝間に立ち上げ状態に設けられる脚部フレーム11Aと、この脚部フレーム11Aを繋ぐ連結フレーム11Bと、脚部フレーム11Aに対し昇降自在に取り付けられる昇降フレーム11Cとを具えて成るものである。そして、脚部フレーム11Aの下端には一例としてクローラを適用した走行体12を設ける。もちろん、この走行体12は、このようなクローラに限らず、畝地を過剰に押し付けないような空気タイヤ、あるいは双方を適用した形態(例えば前側に空気タイヤ、後側にクローラを適用した形態)等が適宜採り得る。
【0024】
更に連結フレーム11Bの上部には、搭乗した作業者が座る操縦者用シート13、操縦桿14、該装置の制御や操作等を行うためのコントロールボックス15を設けるものである。そして操縦者用シート13の側傍には、例えばディーゼルエンジン等を適用した原動機16を搭載するものであり、一例として、この原動機16により図示を省略する油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプにより供給される作動油によって前記走行体12の駆動や、後述する摘採機体2の刈刃22の駆動、更には前記昇降フレーム11Cの昇降動を担うシリンダ(図示略)等の駆動を行う。
【0025】
また前記連結フレーム11B上には、刈刃22によって刈り取った茶葉Aを風送するための送風機17を設けるものであって、この送風機17は前記原動機16により回転数を増速されながら駆動される。そして、この送風機17からは送風ダクト18を介して圧力風が移送装置3(摘採機体2側)に供給される。なお送風ダクト18は、一部または全部が、フレキシブルダクト18Aによって構成され、移送装置3に対し接続されている。
【0026】
次に茶刈機ユニットの一例である摘採機体2について説明する。このものは茶葉Aの摘採を実質的に行うものであり、刈刃22を主要部材として成るものである。この刈刃22は、例えば上下一対の刈刃体22Aと、これら刈刃体22Aを摺動自在に支持する刈刃支持フレーム22Bと、刈刃体22Aを偏心板やエキセントリックシャフト等によって往復摺動させる駆動部22Cとを具えて成り、上下一対の刈刃体22Aを交互に往復動させることで、各刈刃体22Aに形成した刃(歯)のバリカン作用により茶葉Aを刈り取るものである(図2参照)。
【0027】
このように刈刃22は、刈刃体22A、刈刃支持フレーム22B、駆動部22C等を一体的に組み付けた、いわゆるカセット式替刃の形態を採り、刈刃22の取り替えにより、容易に摘採機から浅刈機・中刈機等の剪枝機に仕様変更できるものである。なお摘採機体2は、全体として上記昇降フレーム11Cに支持され、刈刃22の高さが自在に設定できる構成となっている。
【0028】
また、上記刈刃22の駆動部22Cも、前記油圧ポンプ(走行機体1に搭載された原動機16によって駆動される)から供給される作動油によって駆動することが望ましい構成であるが、刈刃22の駆動は別途エンジンによって行うことも可能である。
なお刈刃22としては、必ずしもこのようなバリカン式のものに限らず、例えばロータリー式の回転刃を適用することも可能である。
【0029】
次に茶葉Aの移送装置3について説明する。
移送装置3は、刈り取った茶葉Aを所定の位置に向けて移送する部材であり、ここでは茶葉Aを摘採機体2から後述する収容系装置5まで中継移送するものである。具体的には図2、3、6等に示すように刈り取り直後の茶葉Aを収容系装置5の導入フード57の導入口571に向けて刈刃22のほぼ真上に向かって移送ダクト30内を上昇移送する形態を採る。
すなわち移送ダクト30は、一例として図1〜3に示すように、ほぼ全体として垂直配置されたものであって、下端側を移送開始部31、上端側を移送終端部32とし、その間を垂直部33とする。そして移送ダクト30は、下側後方に送風チャンバ35を具え、ここに送風機17からの圧力風Wが送風ダクト18を介して送り込まれる。そしてこの圧力風Wは、刈刃22の背面側から供給され、前記移送ダクト30内において上昇流移送風Wとして作用するのである。
なお、このような摘採茶葉A等の移送形態は、本出願人の開発に係るものであるが、移送形態については、従来型のように分岐吹出管を具えた風導管を刈刃22前方に配したものを適用することも、もとより差し支えない。また茶葉Aの上昇移送に当たって、コンベヤを用いることも差し支えない。
【0030】
次に本発明の主要部である収容系装置5について、説明する。
まず収容系装置5の主要部材である収容ユニット50は、実質的に摘採した茶葉Aを収容するコンテナ部材である。このものは、一体的なコンテナ状ではなく、各部材が別体に且つ相互に可動状態に構成されている。基本的な支持部材である収容ユニットフレーム51は、図3に示すように側面視でほぼL字状をなす部材であり、このものは、昇降フレーム11Cに対して一例として平行リンク52を介して昇降自在に移動しうるように構成されている。なお符号52aは、前記平行リンク52において4点形成されるリンクピボットを示す。
そして、収容ユニットフレーム51の昇降シフトを担う部材としては、昇降シフトシリンダ53が適用されるものであって、昇降シフトシリンダ53の基部を走行機体のフレーム11側の昇降フレーム11Cに接続させるとともに、摺動子53aの先端を一例として下方側の平行リンク52のほぼ中間部に回動自在に接続させる。
【0031】
更に、この収容ユニットフレーム51は、その下方の部材が収容ユニット50の底板54を形成する。すなわち、収容ユニット50の直立フレーム51aは、その下端部から後方に張り出すように適宜の寸法の固定基部54aが形成され、それを更に延長させるように、折り上げ部54bが設けられ、その両者の間は、回動ピン54cによって回動自在に構成されている。
【0032】
これら固定基部54aと折り上げ部54bとは、ともにその上面は一連のフラットな形状とされており、この底板54が収容ユニット50の底部として機能している。
【0033】
この底板54の4周縁から立ち上がるように側周ケージ55が設けられ、これらによって茶葉Aの収容スペースが構成される。側周ケージ55の具体的構成は、前記直立フレーム51a寄りに矩形状の背面枠550を設け、フレーム部材として一定の強度を保たせるとともに、この背面枠550に対して背面板551を張設する。更にこの背面枠550には、その左右の側面上方に側縁回動支点となるコロ550Pを設け、これを前記直立フレーム51aにおける受け溝51G内において上下動が許容されて回動できるよう組み付ける。
【0034】
一方、背面板551に対向する面は、矩形状の適宜の枠構造を有する抽出板552とするものであり、その中央部に後述する折り畳み操作のための把手552aを設ける。そして、背面板551と抽出板552との間には、左右両側面に側板553を設ける。この側板553は、図8に示すように中央折込部553aによって内側に折れ込むように構成されており、このものを完全に内側に折り込んだ際には、いわゆるガゼット構造により、抽出板552が背面板551に接近し、側周ケージ55が前後方向に折り畳まれる。
なお、これらの背面板551と、抽出板552と、側板553とは、いずれもその下方半分程度の高さは密閉状態のパネルとするものであるが、その上方は金網、ラス板等により通気性を確保した窓状としている。
【0035】
そして側周ケージ55は、図3、7に示すように背面枠550の下端縁にコロ554を設け、側周ケージ55全体がコロ554の部位において前記底板54に接し、傾斜しながらずれるように構成されているものである。
なお詳細は後述するが、側周ケージ55における背面板551の下端縁には、押出フラップ555を設け、このものは、フラップヒンジ555aにおいて回動し得るように構成され、その自由端は、常に底板54上を密に摺擦しながら移動する構成とされている。
【0036】
一方、側周ケージ55における背面枠550の上端には、天板56が設けられるものであって、天板56自体は、図3、6、8等に示すように、前記側周ケージ55の上部開放面を塞ぐ様な構成としている。まず天板56の背面枠550側は、固定部561として背面枠550に固定的に取り付けられている。この固定部561には、これを後方に延長するにように設けた折り下げ部562が回動部562aを介して接続されて成るものである。
なお天板56には、一例として左右一対のフード受口563を開口させ、その周囲は透気性を有する金網等によって形成する。更にフード受口563の外側両側部には、摘採した茶葉を導き入れる導入フード57を組み付けるための嵌込みレール563aを具え、更にその固定状態を確実にするためのクランプボルト563bを前記嵌込みレール563aの反対側の部位に設けるものである。
【0037】
次に、この天板56に取り付けられる導入フード57について説明する。この導入フード57は、図6に示すように側面視でほぼ三角形状をなす中空箱状部材であり、走行機体1側に導入口571を開口させ、この部位が走行機体側における移送装置3の移送終端部32に摘採作業時には接続されるように構成されている。なお、この移送装置3と導入口571との間は、少なくとも接続部位において摘採した茶葉Aが円滑に収容ユニット50内に導入できれば良いので、その限りで密閉性は要求されるが、厳密に完全な気密状態にする必要はない。もちろん、その間における摘採茶葉の導入案内を確実にするために前記背面枠550に対しては、その上方に案内シュート572を設けて、円滑にフード受口563から摘採茶葉が側周ケージ55内に移送されるように構成する。
【0038】
また導入フード57の内側には、この案内シュート572に対向する位置に可動規制シュート573を設け、茶葉Aの投入位置を設定できるようにする。すなわち可動規制シュート573は、前記導入フード57の後端寄りに設けられた回動軸573aにおいて回動し、適宜その角度設定がしうるようにダンパ状に構成されている。具体的には、回動軸573aの外側に固定されたシフトレーバー574が調整ロッド575とリンク接続されて、更に調整ロッド575の自由端がクランプボルト575aによって調整用長穴576の適宜の位置に固定されるように構成され、可動規制シュート573の設定角度を調整できるようにしている。
【0039】
更に、このような収容ユニット50の構成部材の一部である側周ケージ55は、図7に示すように天板56を伴いながら全体として下縁側が後方に移動できるように構成するものであって、この動作は、前記収容ユニットフレーム51と側周ケージ55との間に取り付けた押し出しシフトシリンダ58の伸長によって行われるものである。具体的には、押し出しシフトシリンダ58の摺動子58a端側の接続部は、押し出しシフトシリンダ58の押し出し動作による応力等を考慮して、側板553に取り付けられている。因みに、この側板553の部位は、中折れ状に折り畳まれることから折り畳み時に押し出しシフトシリンダ58との接続状態を容易に解除できるように、レバー付のクランプピン58Pを用いているものである。
【0040】
本発明の茶畝跨走型茶刈装置Mは、以上述べたような構造を有するものであり、茶葉Aの移送態様を述べながら収容状態を説明し、その後収容系装置5内に満たされた摘採茶葉Aをトラック等に移載する作業を説明し、更に収容ユニット50の格納手法を説明しながら実質的に本発明の収容系装置5の作用態様について説明する。
【0041】
(1)移送装置内における茶葉Aの移送態様
図2に示すように、一例として刈刃22の作用部近傍の移送開始部31にある摘採茶葉Aは、移送風Wの作用を受けて、まず刈刃22の後方側に送られる。そして茶葉Aは、送風ダクトユニット35内の管路形状に沿って垂直部33を上昇しながら、その移送終端部32から収容系装置5の導入フード57まで移送される。
【0042】
(2)収容系装置内における茶葉Aの移送収容態様
このように摘採された茶葉Aは、図6に示すように移送装置3の送風ダクトユニット35を通って導入フード57の導入口571に至り、案内シュート572、可動規制シュート573の案内を受けて、収容ユニット50内にバラ収容される。
なお、可動規制シュート573の自由端を、最も導入口571寄りに偏寄させた状態では茶葉Aは、それに当たって収容ユニット50内における比較的走行機体1寄りに投入される。実際の作業では、この可動規制シュート573を逐次位置設定して、収容ユニット50内に平均して摘採茶葉Aが積み上げられることが好ましい。
【0043】
(3)茶葉Aのトラック等への荷降ろし作業
次に摘採された茶葉Aが、収容ユニット50に満杯になった場合には、トラックP等への積替え作業に移る。具体的には、摘採作業位置から茶畝Tに沿って、例えば茶園の側道等まで移動し、待機しているトラックP等に積替えるものである。この積替え(荷降ろし)作業は、作業地点近くにおいて、まず収容系装置5を上昇させることにより開始する。すなわち図4に示すように昇降シフトシリンダ53を伸長させることにより平行リンク52の自由端側を上昇させる。当然ながらこの動きは、収容ユニット50としては、全体として、円弧を描くような軌跡を描いて上昇するものであり、この動きが導入フード57の導入口571と送風ダクトユニット35の移送終端部32との切り離しを円滑にするものである。
【0044】
このようにして収容ユニット50を上昇させたのち、図5、7に示すように押し出しシフトシリンダ58を伸長させる。この操作により、押し出しシフトシリンダ58の摺動子は、側周ケージ55をほぼその後方に押し出すようにシフトする。この時、側周ケージ55は、背面枠550と直立フレーム51aとの間は、コロ550Pと受け溝51Gとの関係で上下方向には可動できるように遊嵌されたピボット接続であるから、この部位は少なくとも水平方向には、動きが規制され、一方この動きを受けて、底板54と側周ケージ55の下端縁との間は、後方にずれ出すように移動する。すなわち、側周ケージ55における背面板551の下端縁にあるコロ554が底板54上を転動しながら後方に移動して行く。この結果、側周ケージ55は、図7に示すように背面板551の下縁が底板54に沿った状態で摺動移動すると共に抽出板552の下端縁は後方にずれながら上方に移動するような形となり、側周ケージ55は全体として後方下端が後方わずか上方に張り出したように傾斜した状態で移動するのである。
【0045】
この移動が開始された直後から、前記底板54における折り上げ部54bの先端と側周ケージ55の抽出板552の内側との間には、一定寸法の間隙Gが生ずるから、そこから茶葉Aが順次こぼれ落ちるように下方に落下してゆくのである。
すなわち、完全に側周ケージ55の下端を後方に押し出した状態においては、側周ケージ55の下面の開放空間は、底板54の先端から完全に張り出しているが、現実に茶葉Aが落下する位置は、底板54における折り上げ部54bの先端近くにおいてなされるものであり、全体としてみれば、極端な重心移動がない状態で茶葉Aの積み替え作業が行われるのである。しかも、この茶葉Aの落下は、一挙に塊状になって落下するのではなく、順次バラバラに分離しながら落下するものである。
【0046】
なおこのとき、側周ケージ55における背面板551の下端には、押出フラップ555が設けられているものであり、このものが底板54上を緩やかに接しながら移動して行き、この結果、この底板54上に茶葉Aを残すことなく後方に押し出してゆくものである。
このような作業が完了した後、更に摘採作業が継続される場合には、押し出しシフトシリンダ58を収縮させて、側周ケージ55を元の作業位置に戻し、且つ昇降シフトシリンダ53を収縮させて、収容ユニット50を作業位置に降下させて次の作業に移るのである。
【0047】
(4)収容系装置の格納作業
このような摘採作業等が終了した後、茶園から茶畝跨走型茶刈装置MをトラックP等に積載して移動することに備え、図8、9に示すように収容ユニット50の折り畳みを行う。この操作は、例えば収容ユニットフレーム51を最も低い位置に合わせて、側周ケージ55の格納や導入フード57の取り外し等の作業を行う。もちろん導入フード57は、ダクト側に残るような構成としておくことももとより差し支えない。
【0048】
この作業に当たっては、図8に示すように、まず押し出しシフトシリンダ58の摺動子58aを留めていたクランプピン58Pを緩め、押し出しシフトシリンダ58を側周ケージ55の側板553から取り外すような、いわゆる縁切りの作業を行う。続いて図8(b)に示すように、それぞれ側板553の中央折込部553aを内側に押し込む。これにより前記抽出板552は、背面板551側に寄るように移動して行く。操作に当たっては更に把手552aで、抽出板552を背面板551側に押し込むようにする。これによって、折り畳まれた抽出板552と側板553とは、図8(c)、(d)に示すようにその全体の厚さが底板54の固定基部54a並びに天板56の固定部561の長さ寸法とほぼ等しく設定されていることから、折り畳み状態の側周ケージ55は、この固定基部54aに乗ったような状態として収められる。この状態で自由状態となった底板54の折り上げ部54bを上方に折り上げて、抽出板552の外側に折り合わせるようにして底板54側の格納を行う。
【0049】
一方、この状態で上方の天板56は、側板553と抽出板552とが格納されると、折り下げ部562が、実質的にこれら抽出板552または側板553による支えを失い、その自由端側を下げるように移動して折り重ねられるものである。
このような状態では、図8(e)に示すように、天板56における折り下げ部562の下端と、底板54における折り上げ部54bの上端とが突き合わされるように位置する。そして、このような格納状態を維持するため、一例としてバックル装置59により両者を保持する。
因みにこのとき、導入フード57も降下してくるので、トラックP等での移送作業時において導入フード57の張り出しを無くすため、クランプボルト563bを緩め、嵌込みレール563aに嵌めこまれていた導入フード57の一端縁を自由状態として取り外すようにする。
【0050】
〔他の実施例〕
本発明の好ましい実施例は、以上述べたような構成を有するものであるが、更にこの技術思想としては、次のような改変が可能である。
まず、収容ユニット50の側周ケージ55は、その底縁が底板部からはみでる構成を不可欠とするが、このはみ出し方向は、先に述べたような方向に限定されない。側方にはみ出るような移動形態をとってもよい。
また、側周ケージ55が移動する際、すなわち摘採した茶葉Aを取り出す際に、底板54は、ほぼ水平近くの基準姿勢を維持しているものであるが、このほぼ水平近くの基準姿勢とは、底板54と側周ケージ55の下縁とが接した状態をいうのであり、その状態で全体が例えば上方が後方にずれて、上部を後傾させるような形態として、より茶葉Aの自由落下が促進されるような形態としてもよい。
【0051】
また、収容ユニット50自体の昇降は、平行リンク機構を適用することにより移送装置との接続ないしは切り離しが円滑にできる点で好ましいが、それらの接続の確実さが確保できる範囲で、収容ユニット50の昇降機構は、例えば上下に摺動する他の形態であっても、もとより差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の茶畝跨走型茶刈装置の荷降ろし時の状態を示す斜視図である。
【図2】同上装置による摘採作業時の状態を示す側面図である。
【図3】本発明の収容装置を分解して示す斜視図である。
【図4】本発明の茶畝跨走型茶刈装置による荷降ろし作業時開始直前の状態を示す側面図である。
【図5】本発明の茶畝跨走型茶刈装置による荷降ろし完了時の状態を示す側面図である。
【図6】本発明の茶畝跨走型茶刈装置における摘採された茶葉の収容状態を示す縦断側面図である。
【図7】本発明の茶畝跨走型茶刈装置の収容装置からの荷降ろし途中の状態を示す側面図である。
【図8】本発明の茶畝跨走型茶刈装置の収容系装置の格納状態を示す説明図である。
【図9】本発明の茶畝跨走型茶刈装置の収容系装置を格納した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 走行機体
11 フレーム
11A 脚部フレーム
11B 連結フレーム
11C 昇降フレーム
12 走行体
13 操縦者用シート
14 操縦桿
15 コントロールボックス
16 原動機
17 送風機
18 送風ダクト
18A フレキシブルダクト
2 摘採機体
22 刈刃
22A 刈刃体
22B 刈刃支持フレーム
22C 駆動部
3 移送装置
30 移送ダクト
31 移送開始部
32 移送終端部
33 垂直部
35 送風チャンバ
5 収容系装置
50 収容ユニット
51 収容ユニットフレーム
51a 直立フレーム
51G 受け溝
52 平行リンク
52a リンクピボット
53 昇降シフトシリンダ
53a 摺動子
54 底板
54a 固定基部
54b 折り上げ部
54c 回動ピン
55 側周ケージ
550 背面枠
550P コロ(側縁回動支点)
551 背面板
552 抽出板
552a 把手
553 側板
553a 中央折込部
554 コロ
555 押出フラップ
555a フラップヒンジ
56 天板
561 固定部
562 折り下げ部
562a 回動部
563 フード受口
563a 嵌込みレール
563b クランプボルト
57 導入フード
571 導入口
572 案内シュート
573 規制シュート
573a 回動軸
574 シフトレーバー
575 調整ロッド
575a クランプボルト
576 調整用長穴
58 押し出しシフトシリンダ
58a 摺動子
58P クランプピン
59 バックル装置
A 茶葉(茶枝葉)
T 茶畝
W 圧力風(移送風)
M 茶畝跨走型茶刈装置
P トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を跨いで走行する走行機体と、これに搭載され茶枝葉を刈り取る茶刈機ユニットと、走行機体後方に設けられ刈り取られた茶葉をバラ状態で収容する収容ユニットを含む収容系装置とを具えて成り、前記収容ユニットは、設置高さを走行機体に対して昇降設定自在にするとともに、収容ユニットは、底板と、この底板とは別体の側周ケージとを具え、この底板をほぼ水平近くの基準姿勢に維持しながら、側周ケージは、その底縁が底板部からはみ出るように傾倒できる構成とし、このはみ出たことにより形成される底板と側周ケージとの間隙から収容ユニット内に収容していた茶葉を順次下方に落下させて取り出すようにしたことを特徴とする茶畝跨走型茶刈装置。
【請求項2】
前記側周ケージが底板からはみ出るように傾倒する移動形態は、側周ケージ底縁が装置後方に向かって移動する形態であることを特徴とする前記請求項1記載の茶畝跨走型茶刈装置。
【請求項3】
前記側周ケージの底縁が装置後方に向かって傾倒しながら移動する場合において、側周ケージの背面側上方における側縁回動支点は、上下方向に自由動が許容されて回動することを特徴とする前記請求項2記載の茶畝跨走型茶刈装置。
【請求項4】
前記側周ゲージ側周ケージの底縁には、底板上を転動するコロが設けられていることを特徴とする前記請求項1、2または3記載の茶畝跨走型茶刈装置。
【請求項5】
前記側周ゲージ側周ケージの底縁のうち、底板に沿って移動する縁辺には、押出フラップが設けられていることを特徴とする前記請求項1、2、3または4記載の茶畝跨走型茶刈装置。
【請求項6】
前記側周ケージは、その妻板側板面が中折れ可能とされ、背面板と引出し面板とを接近させて側周ケージ全体が折り畳みできるように構成されていることを特徴とする前記請求項1、2、3、4または5記載の茶畝跨走型茶刈装置。
【請求項7】
前記収納ユニット収容ユニットにおける底板及び天板は、途中で中折れ状態に構成され、側周ケージを折り畳んだ状態において、その外側となる引出し面板を覆うように折り畳まれることを特徴とする前記請求項6記載の茶畝跨走型茶刈装置。
【請求項8】
前記収容ユニットの昇降は、茶刈高さの調整を可能とした走行フレームに対し並行リンク機構を介して、収容ユニットフレームが接続され、円弧状に移動することにより行われることを特徴とする前記請求項1、2、3、4、5、6または7記載の茶畝跨走型茶刈装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−35704(P2008−35704A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209877(P2006−209877)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000104375)カワサキ機工株式会社 (30)
【Fターム(参考)】