茸栽培用カバー
【課題】製造コストを低減すると共に、栽培用瓶への装着作業の作業効率を向上させ得る栽培用カバーを提供する。
【解決手段】茸栽培用の栽培瓶に装着されて整列状態で茸を生長可能に構成され、樹脂材料によって帯状に形成されたシート体100における互いに対向する2つの端部101a,101bを重ね合わせてその端部101a,101bを溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成されると共に、筒状体の外側に突出する突出部としての突起部12,16、溶着痕14、第1凸部21および第2凸部22がその筒状体に形成されている。
【解決手段】茸栽培用の栽培瓶に装着されて整列状態で茸を生長可能に構成され、樹脂材料によって帯状に形成されたシート体100における互いに対向する2つの端部101a,101bを重ね合わせてその端部101a,101bを溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成されると共に、筒状体の外側に突出する突出部としての突起部12,16、溶着痕14、第1凸部21および第2凸部22がその筒状体に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茸栽培用の栽培瓶に装着されて整列状態で茸を生長させるための茸栽培用カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の茸栽培用カバーとして、特開平8−37927号公報に開示された巻紙が知られている。この巻紙は、栽培瓶を用いた茸栽培において、栽培瓶に装着されて栽培瓶内の培地から子実体をまっすぐに伸長させるために用いられる栽培用の資材であって、長辺を円弧状に湾曲させた長方形状に形成されている。この巻紙を栽培瓶に装着する際には、栽培瓶の瓶口に巻紙を巻きつけて、その端縁部に粘着テープを貼付して固定する。
【0003】
しかしながら、上記したように、巻紙を栽培瓶の瓶口に巻きつけて端縁部を粘着テープで固定する装着方法では、作業効率が悪く、また、湿気などによって栽培中に粘着テープが剥がれて巻紙が栽培瓶から脱落するおそれがある。このような課題を解決可能な茸栽培用カバーとして、特開2007−20479号公報には、プラスチック材を用いて予め筒状に成形した巻紙代用筒体(以下、単に「筒体」ともいう)が開示されている。この筒体では、予め筒形に形成されていることから、巻きつけの作業や粘着テープを用いた固定作業が不要で、その分、作業効率の向上が可能な上に、粘着テープの剥がれに起因する脱落防止も可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−37927号公報(第2頁、第2図)
【特許文献2】特開2007−20479号公報(第5−6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、予め筒形に成形した上記の茸栽培用カバー(筒体)にも、以下の問題点がある。すなわち、この茸栽培用カバーは、プラスチック材を成形(射出成形)して製造されるため、射出成形用金型が高価なことに起因して、製造コストの削減が困難となっている。また、この種の茸栽培用カバーは、栽培瓶の形状や大きさに応じてその形状や大きさ(特に、下側の開口部の直径)を異ならせる必要があり、多くの茸栽培者の需要に対応するためには、形状や大きさの異なる数多くの種類の茸栽培用カバーを製造する必要がある。このためには、高価な射出成形用金型をその種類分用意する必要がある結果、製造コストの削減がさらに困難となっている。一方、筒形の茸栽培用カバーを搬送したり保管したりする際には、かさばりを少なくするために、茸栽培用カバーにおける大径の開口部側に他の茸栽培用カバーにおける小径の開口部側を差し込んで積み重ねた状態で箱や袋に詰めるのが好ましい。この場合、プラスチック材を射出成形して製造した茸栽培用カバーは、表面が滑らかなため、上記のように積み重ねたときには互いに密着する。このため、この茸栽培用カバーには、積み重ねた状態における茸栽培用カバー同士の密着により、栽培瓶への装着作業において積み重ねた状態の茸栽培用カバーからその1つ1つをそれぞれスムーズに引き抜くのが困難で、これに起因してさらなる作業効率の向上が困難であるという問題点も存在する。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストを低減すると共に、栽培用瓶への装着作業の作業効率を向上させ得る栽培用カバーを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の茸栽培用カバーは、茸栽培用の栽培瓶に装着されて整列状態で茸を生長させるための茸栽培用カバーあって、樹脂材料によって帯状に形成されたシート体における互いに対向する2つの端部を重ね合わせて当該端部を溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成されると共に、当該筒状体の外側および内側の少なくとも一方に突出する突出部が当該筒状体に形成されている。
【0008】
また、請求項2記載の茸栽培用カバーは、請求項1記載の茸栽培用カバーにおいて、前記突出部は、前記溶着による溶着痕で形成された第1突起部と、当該第1突起部の形成部位とは異なる部位に形成された第2突起部とで構成されている。
【0009】
また、請求項3記載の茸栽培用カバーは、請求項2記載の茸栽培用カバーにおいて、前記筒状体には、通気孔が形成され、前記第2突起部は、前記通気孔の縁部に形成されている。
【0010】
また、請求項4記載の茸栽培用カバーは、請求項2または3載の茸栽培用カバーにおいて、前記2つの端部の重ね合わせの際の位置合わせに用いる孔または切り欠きが当該各端部に形成され、前記第2突起部は、当該孔または当該切り欠きの縁部に形成されている。
【0011】
また、請求項5記載の茸栽培用カバーは、請求項2から4のいずれかに記載の茸栽培用カバーにおいて、前記2つの端部の重ね合わせの際の当該各端部の仮止めに用いる仮止め部が形成され、前記仮止め部は、一方の前記端部に形成された雌側の前記第2突起部と、他方の前記端部に形成されて前記雌側の前記第2突起部と嵌合可能な雄側の前記第2突起部とで構成されている。
【0012】
また、請求項6記載の茸栽培用カバーは、請求項1記載の茸栽培用カバーにおいて、前記突出部は、前記溶着による溶着痕で構成されている。
【0013】
また、請求項7記載の茸栽培用カバーは、請求項1から6のいずれかに記載の茸栽培用カバーにおいて、前記突出部が前記外側に突出すると共に、当該突出部の形成部位の前記内側が非突出状態に形成されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の茸栽培用カバーによれば、樹脂材料によって帯状に形成したシート体における互いに対向する2つの端部を重ね合わせて端部を溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成したことにより、例えば、切断機、鋏、およびカッター等の簡易な構成の機具を用いて帯状に切断したシート体における2つの端部を、一般的に簡易に構成されている溶着機を用いて溶着することでこの茸栽培用カバーを製造することができる。このため、この茸栽培用カバーによれば、高価な射出成形用金型を用いる射出成形によって製造される従来の茸栽培用カバーと比較して、製造に必要な機具のコストが低い分、製造コストを十分に低減させることができる。また、この茸栽培用カバーによれば、切断の際にシート体の長さや幅などを変更するだけで、形状や大きさの異なる数多くの種類の茸栽培用カバーを製造することができる。このため、この茸栽培用カバーによれば、形状や大きさの異なる茸栽培用カバー毎に高価な射出成形用金型を用意する必要がある従来の茸栽培用カバーとは異なり、栽培瓶の形状や大きさに応じて形状や大きさの異なる数多くの種類の茸栽培用カバーを低コストで製造することができる。
【0015】
また、この茸栽培用カバーによれば、茸栽培用カバー(筒状体)の外側および内側の少なくとも一方に突出する突出部を形成したことにより、茸栽培用カバーを積み重ねたときに、これらの突起部によって隣り合う他の茸栽培用カバーとの間に隙間を生じさせることができるため、茸栽培用カバー同士の密着を確実に回避することができる。したがって、この茸栽培用カバーによれば、一方の開口部側を栽培瓶の口部側に嵌め込むだけの極めて簡易な装着作業で装着することができることに加えて、装着作業の際に積み重ねた状態の茸栽培用カバーからその1つ1つをスムーズに引き抜くことができる結果、装着作業をさらに向上させることができる。
【0016】
また、請求項2記載の茸栽培用カバーによれば、溶着による溶着痕で形成された第1突起部と、第1突起の形成部位とは異なる部位に形成した第2突起部とで突出部を構成したことにより、茸栽培用カバーを積み重ねたときに、これらの突出部によって茸栽培用カバーの複数の部位で隙間を生じさせることができるため、茸栽培用カバー同士の密着をさらに確実に回避することができる。
【0017】
また、請求項3記載の茸栽培用カバーによれば、通気孔を形成したことにより、栽培中の茸に対して空気を十分に供給することができるため、茸の成長を促進させることができる。また、通気孔の縁部に第2突起部を形成したことにより第2突起部を形成するための別途の工程を行うことなく、通気孔を穿孔する穿孔工程において第2突起部を通気孔と共に形成することができる。このため、この茸栽培用カバーによれば、第2突起部を形成する工程に要するコストの上昇を抑えつつ茸に対して空気を供給する機能を付加することができる。
【0018】
また、請求項4記載の茸栽培用カバーによれば、2つの端部の重ね合わせの際の位置合わせに用いる孔または切り欠きを形成したことにより、各端部を正確に位置合わせすることができるため、開口部の直径などの寸法が設計値通りとなるように茸栽培用カバーを形成することができる。このため、開口部の直径が設計値よりも小さくなって装着の際に栽培瓶の口部への嵌め込みが困難となったり、開口部の直径が設計値よりも大きくなって装着の際に茸栽培用カバーが栽培瓶の下部に滑り落ちたりする事態を確実に防止することができる。この結果、これらに起因する無駄な作業の発生を回避することができるため、その分作業効率をさらに向上させることができる。
【0019】
また、位置決め用の孔または切り欠きの縁部に第2突起部を形成したことにより、第2突起部を形成するための別途の工程を行うことなく、位置決め用の孔または切り欠きを形成する工程において第2突起部を位置決め用の孔または切り欠きと共に形成することができる。このため、この茸栽培用カバーによれば、第2突起部を形成する工程に要するコストの上昇を抑えつつ各寸法が設計値通りのカバーを製造することができる。
【0020】
また、請求項5記載の茸栽培用カバーによれば、2つの端部の重ね合わせの際の各端部の仮止めに用いる仮止め部を形成したことにより、各端部同士を重ね合わせた状態を確実に維持しつつ両者を溶着することができるため、各寸法がより正確に設計値通りとなるようにカバーを形成することができる。また、各端部にそれぞれ形成して互いに嵌合可能な雌側の第2突起部と雄側の第2突起部とで仮止め部を構成したことにより、カバーを積み重ねたときに、仮止め部(仮止め部を構成する各第2突起部)によって隣り合う他のカバーとの間に隙間を生じさせることができるため、カバー同士の密着をさらに確実に回避することができる。
【0021】
また、請求項6記載の茸栽培用カバーによれば、溶着による溶着痕で突出部を構成したことにより、溶着加工の際に溶着痕を筒状体の外側および内側の少なくとも一方に突出させることができるため、例えば、溶着痕とは別に突出部を形成する構成とは異なり、その別の突出部を形成するための専用の工程を省略することができる分、茸栽培用カバーの製造コストをさらに低減することができる。
【0022】
また、請求項7記載の茸栽培用カバーによれば、突出部を外側に突出させると共に、突出部の形成部位の内側を非突出状態に形成したことにより、茸の成長過程において、茸が突出部に接触して傷付いたり、茸の成長が妨げられる事態を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】茸栽培用カバー1の構成を示す斜視図である。
【図2】シート体100の平面図である。
【図3】茸栽培用カバー1を用いた茸400の栽培方法を説明する説明図である。
【図4】茸栽培用カバー1の製造方法を説明する第1の説明図である。
【図5】茸栽培用カバー1の製造方法を説明する第2の説明図である。
【図6】茸栽培用カバー1の製造方法を説明する第3の説明図である。
【図7】茸栽培用カバー1の製造方法を説明する第4の説明図である。
【図8】茸栽培用カバー1の製造方法を説明する第5の説明図である。
【図9】複数の茸栽培用カバー1を積み重ねた状態を示す斜視図である。
【図10】茸栽培用カバー1の使用方法を説明する第1の説明図である。
【図11】茸栽培用カバー1の使用方法を説明する第2の説明図である。
【図12】茸栽培用カバー601の構成を示す斜視図である。
【図13】シート体110の平面図である。
【図14】シート体120の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、茸栽培用カバーの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0025】
最初に、図1に示す茸栽培用カバー1(以下、単に「カバー1」ともいう)の構成について説明する。このカバー1は、図3に示すように、えのき茸などの丈の長い茸(子実体)400を栽培瓶200を用いて栽培する際に、その栽培瓶200の口部201に装着して使用する資材であって、茸400の成長過程における横方向への伸び(広がり)を規制して、茸400を真っ直ぐで見栄えの良い状態(整列状態)で成長させる機能を有している。
【0026】
具体的には、カバー1は、熱可塑性樹脂(一例として、PET(ポリエチレンテレフタレート))で形成された扇形で帯状のシート体100(図2参照)の端部101a,101bを重ね合わせて、後述する溶着加工によって溶着して接合することにより(以下、この接合部分を「接合部13」ともいう)、図1に示すように、一方(同図における下側)の開口部が他方(同図における上側)の開口部よりも小径の円錐台形(側面視逆台形)の筒状に形成した筒状体で構成されている。
【0027】
また、カバー1には、図1に示すように、カバー1外の空気をカバー1内に通気させる機能を有する複数の通気孔11が形成されている。また、この通気孔11の縁部には、後述する穿孔加工によって通気孔11が穿孔される際に生じたリング状の突起部12(突出部および第2突起部の一例)がカバー1の外側に突出するようにして形成されている。また、突起部12の形成部位の内側は非突出状態(平面状態、または凹んだ状態)となるように形成されている。
【0028】
また、図1に示すように、カバー1の接合部13には、シート体100の端部101a,101bを溶着する際に生じた平面視円形の溶着痕14(突出部および第1突起部の一例)がカバー1の外側に突出するようにして形成されている。また、溶着痕14の形成部位の内側は非突出状態(平面状態、または凹んだ状態)となるように形成されている。また、接合部13には、シート体100の端部101a,101bを溶着する際に端部101a,101bを位置決めするために用いられる位置決め孔15が形成されている。また、この位置決め孔15の縁部には、後述する穿孔加工によって位置決め孔15が穿孔される際に生じたリング状の突起部16(突出部および第2突起部の一例)がカバー1の外側に突出するようにして形成されている。また、突起部16の形成部位の内側は非突出状態(平面状態、または凹んだ状態)となるように形成されている。
【0029】
さらに、図1に示すように、接合部13には、シート体100の端部101a,101bを溶着する際に端部101a,101bを仮止めする機能を有する仮止め部17が形成されている。この場合、仮止め部17は、図6に示すように、端部101a(カバー1の内側に位置する端部)に形成されてカバー1の外側に突出する第1凸部21(突出部および雄側の第2突起部の一例)と、端部101b(カバー1の外側に位置する端部)に形成されてカバー1の外側に突出すると共に第1凸部21がその内側に嵌め込まれる第2凸部22(突出部および雌側の第2突起部の一例)とで構成されている。また、両凸部21,22の形成部位(つまり仮止め部17の形成部位)の内側は非突出状態(平面状態、または凹んだ状態)となるように形成されている。
【0030】
次に、カバー1を製造する製造工程の一例について、図面を参照して説明する。
【0031】
最初に、図2に示すシート体100を製作する。具体的には、例えば、熱可塑性樹脂の一例としてのPETで形成された厚みが0.2mm程度の樹脂シートを、切断機、はさみおよびカッター等を用いて同図に示す扇形の帯状に切断する(以下、切断した樹脂シートを「シート体材料300」ともいう)。
【0032】
次いで、シート体材料300に通気孔11および位置決め孔15を形成する。具体的には、通気孔11および位置決め孔15の形成位置に対応する配列パターンで孔あけ用ポンチが配置された図外の雄型と、孔あけ用ポンチに対応する位置に凹部が形成された図外の雌型とで、複数枚重ね合わせた状態のシート体材料300を挟み込んで穿孔加工を行う。この穿孔加工では、挟み込みの際に雄型の孔あけ用ポンチがシート体材料300に押し込まれることによって通気孔11および位置決め孔15が穿孔される。また、孔あけ用ポンチの押込みに伴って通気孔11および位置決め孔15の周囲が押込み方向に突出し、これによってシート体材料300における通気孔11の周囲にリング状の突起部12が形成されると共に、シート体材料300における位置決め孔15の周囲に突起部16が形成される。
【0033】
続いて、通気孔11および位置決め孔15を形成したシート体材料300における一方の端部101aに、仮止め部17を構成する第1凸部21を形成すると共に、シート体材料300における他方の端部101bに、仮止め部17を構成する第2凸部22を形成する。具体的には、第1凸部21に対応する凸部および凹部が形成された金型を、シート体材料300が熱変形可能な温度に加熱し、その金型でシート体材料300の端部101aを挟み込む。この際に、金型の凸部および凹部によって挟まれた部位が熱変形して端部101aに第1凸部21が形成される。同様にして、凸部22に対応する凸部および凹部が形成された金型を加熱し、その金型でシート体材料300の端部101bを挟み込む。この際に、金型の凸部および凹部によって挟まれた部位が熱変形して端部101bに凸部22が形成される。これにより、シート体100が製作される。
【0034】
次いで、例えば図6に示す固定側溶着ヘッド501および移動側溶着ヘッド503を備えた溶着機500を用いて、シート体100の端部101a,101bを重ね合わせて、その端部101a,101bを溶着して接合する溶着加工を行う。この溶着加工では、各突出部12,16および各凸部21,22の突出する向きが上向きとなるようにして、図4に示すように、固定側溶着ヘッド501の上面に形成されている位置決用の突起502をシート体100の端部101aに形成されている位置決め孔15に挿通させる。
【0035】
続いて、図4に示す矢印で示すように、シート体100で固定側溶着ヘッド501を巻き込み、図5に示すように、シート体100で筒体を形作る。次いで、固定側溶着ヘッド501の突起502を、端部101bに形成されている位置決め孔15に挿通させる。
【0036】
続いて、図6に示すように、端部101bに形成されている第2凸部22を、端部101aに形成されている第1凸部21に向けて押し付けることにより、両凸部21,22を嵌合させる。これにより、端部101a,101bが位置決めされると共に、端部101a,101bが仮止めされる。
【0037】
次いで、溶着機500の移動側溶着ヘッド503をシート体100を溶着可能な温度に加熱し、図7に示すように、その移動側溶着ヘッド503を固定側溶着ヘッド501に向けて押し下げることにより、溶着ヘッド501,503によってシート体100の端部101a,101bを挟み込む。この際に、端部101bにおける移動側溶着ヘッド503との接触部位、および端部101aにおけるこの接触部位に対向する部位が加熱されて溶融し、その結果両者が溶着される。この場合、同図に示すように、固定側溶着ヘッド501には、複数の凸部が形成され、移動側溶着ヘッド503には、固定側溶着ヘッド501の凸部に対向する部位に凹みを有する凸部が形成されている。このため、上記したように溶着ヘッド501,503によってシート体100の端部101a,101bを挟み込んだときに、両凸部によって溶着された部位(溶着痕14)が外側に突出するように形成される。以上により、図8に示すように、カバー1の製造が完了する。
【0038】
このカバー1は、切断機、鋏、およびカッター等の簡易な構成の機具を用いて帯状に切断したシート体100の端部101a,101bを、上記のように一般的に簡易に構成されている溶着機500を用いて溶着して接合することで筒状に形成して製造される。このため、このカバー1では、高価な射出成形用金型を用いる射出成形によって製造される従来の茸栽培用カバーと比較して、製造に必要な機具のコストが低い分、製造コストを十分に低減させることが可能となっている。また、このカバー1では、切断の際にシート体100の長さや幅などを変更するだけで、栽培瓶200の形状や大きさに応じて形状や大きさの異なる数多くの種類のカバー1を製造することが可能となっている。このため、このカバー1では、形状や大きさの異なるカバー1毎に高価な射出成形用金型を用意する必要がある従来の茸栽培用カバーとは異なり、数多くの種類のカバー1を製造する際においても、製造コストを十分に低減させることが可能となっている。
【0039】
続いて、完成したカバー1をパッケージングする。この場合、かさばりを少なくするために、図9に示すように、カバー1における大径の開口部側に他のカバー1における小径の開口部側を差し込んで積み重ねる。このカバー1では、通気孔11の縁部に外側に突出する突起部12が形成され、位置決め孔15の縁部にも外側に突出する突起部16が形成されている。また、このカバー1では、溶着痕14が外側に突出するように形成され、さらに、仮止め部17が外側に突出するように形成されている。このため、上記のようにカバー1を積み重ねたときに、これらの溶着痕14、突起部12、突起部16および仮止め部17によって隣り合う他のカバー1との間に隙間が生じる結果、カバー1同士の密着が回避されている。次いで、複数を積み重ねた状態のカバー1を袋や箱などの包装資材に詰め込む。以上により、パッケージングが終了する。
【0040】
次に、茸の瓶栽培におけるカバー1の使用方法について、図面を参照して説明する。
【0041】
茸の瓶栽培を行うには、まず、栽培瓶200に培地を充填し、続いて、滅菌処理を行った後に種菌を植え付ける。次いで、栽培瓶200にカバー1を装着する。具体的には、上記のように積み重ねた状態でパッケージングされたカバー1(図9参照)を包装資材から取り出す。続いて、図10に示すように、積み重ねた各カバー1のうちの1つ(例えば、最上部のカバー1)を引き抜く。この場合、上記したように、積み重ねた状態において、隣り合う他のカバー1との間に隙間が生じてカバー1同士の密着が回避されているため、積み重ねた状態のカバー1からその1つをスムーズに引き抜くことができる。
【0042】
次いで、図11に示すように、種菌を植え付けた培地入りの栽培瓶200における口部201側に引き抜いたカバー1の小径の開口部側を嵌め込む。これにより、カバー1の装着が完了する。このカバー1では、このように小径の開口部側を栽培瓶200の口部201側に嵌め込むだけの極めて簡易な作業で装着が完了するため、帯状のシート体を栽培瓶200の口部201に巻き付けて粘着テープによって固定する構成と比較して、装着作業の効率を十分に向上させることが可能となっている。また、このカバー1では、積み重ねた状態のカバー1からその1つ1つをスムーズに引き抜くことができるため、装着作業の作業効率をさらに向上させることが可能となっている。
【0043】
続いて、カバー1の装着が完了した栽培瓶200を栽培室に保管する。このカバー1を装着したことで、図3に示すように、成長過程における茸400の横方向への伸び(広がり)が規制されて、茸400が真っ直ぐで見栄えの良い状態に成長する。また、突起部12,16、溶着痕14および仮止め部17の全てが外側に突出するように形成され、これらの形成部位の全ての内側が非突出状態となるように形成されているため、茸400の成長過程において、突起部12,16、溶着痕14および仮止め部17に茸400が接触して傷付いたり茸400の成長が妨げられたりする事態が確実に防止される。
【0044】
このように、このカバー1によれば、樹脂材料によって帯状に形成したシート体100における端部101a,101bを重ね合わせて溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成したことにより、例えば、切断機、鋏、およびカッター等の簡易な構成の機具を用いて帯状に切断したシート体100の端部101a,101bを、一般的に簡易に構成されている溶着機500を用いて溶着することでこのカバー1を製造することができる。このため、このカバー1によれば、高価な射出成形用金型を用いる射出成形によって製造される従来の茸栽培用カバーと比較して、製造に必要な機具のコストが低い分、製造コストを十分に低減させることができる。また、このカバー1によれば、切断の際にシート体100の長さや幅などを変更するだけで、形状や大きさの異なる数多くの種類のカバー1を製造することができる。このため、このカバー1によれば、形状や大きさの異なるカバー1毎に高価な射出成形用金型を用意する必要がある従来の茸栽培用カバーとは異なり、栽培瓶200の形状や大きさに応じて形状や大きさの異なる数多くの種類のカバー1を低コストで製造することができる。
【0045】
また、このカバー1によれば、カバー1(筒状体)から突出する突出部としての突起部12,16、溶着痕14、第1凸部21および第2凸部22を形成したことにより、カバー1を積み重ねたときに、これらの突起部によって隣り合う他のカバー1との間に隙間を生じさせることができるため、カバー1同士の密着を確実に回避することができる。したがって、このカバー1によれば、小径の開口部側を栽培瓶200の口部201側に嵌め込むだけの極めて簡易な装着作業で装着することができることに加えて、装着作業の際に積み重ねた状態のカバー1からその1つ1つをスムーズに引き抜くことができる結果、装着作業をさらに向上させることができる。
【0046】
また、このカバー1によれば、溶着による第1突起部としての溶着痕14と、溶着痕14の形成部位とは異なる部位に形成した第2突起部としての突起部12,16、第1凸部21および第2凸部22とで突出部を構成したことにより、カバー1を積み重ねたときに、これらの突出部によってカバー1の複数の部位で隙間を生じさせることができるため、カバー1同士の密着をさらに確実に回避することができる。
【0047】
また、このカバー1によれば、通気用の通気孔11を形成したことにより、栽培中の茸400に対して空気を十分に供給することができるため、茸400の成長を促進させることができる。また、通気孔11の縁部に第2突起部としての突起部12を形成したことにより、突起部12を形成するための別途の工程を行うことなく、通気孔11を穿孔する穿孔工程において突起部12を通気孔11と共に形成することができる。このため、このカバー1によれば、突起部12を形成する工程に要するコストの上昇を抑えつつ茸400に対する空気の供給機能を付加することができる。
【0048】
また、このカバー1によれば、端部101a,101bの重ね合わせの際の位置合わせに用いる位置決め孔15を形成したことにより、端部101a,101bを正確に位置合わせすることができるため、各寸法(特に、開口部の直径)が設計値通りとなるようにカバー1を形成することができる。このため、開口部の直径が設計値よりも小さくなって装着の際に栽培瓶200の口部201への嵌め込みが困難となったり、開口部の直径が設計値よりも大きくなって装着の際にカバー1が栽培瓶200の下部に滑り落ちたりする事態を確実に防止することができる。この結果、これらに起因する無駄な作業の発生を回避することができるため、その分作業効率をさらに向上させることができる。
【0049】
また、位置決め孔15の縁部に第2突起部としての突起部16を形成したことにより、突起部16を形成するための別途の工程を行うことなく、位置決め孔15を穿孔する穿孔工程において突起部16を位置決め孔15と共に形成することができる。このため、このカバー1によれば、突起部16を形成する工程に要するコストの上昇を抑えつつ各寸法が設計値通りのカバー1を製造することができる。
【0050】
また、このカバー1によれば、端部101a,101bの重ね合わせの際の端部101a,101bの仮止めに用いる仮止め部17を形成したことにより、端部101a,101b同士を重ね合わせた状態を確実に維持しつつ両者を溶着することができるため、各寸法がより正確に設計値通りとなるようにカバー1を形成することができる。また、端部101a,101bにそれぞれ形成して互いに嵌合可能な雄側の第2突起部としての第1凸部21および雌側の第2突起部としての第2凸部22で仮止め部17を構成したことにより、カバー1を積み重ねたときに、仮止め部17を構成する各凸部21,22によって隣り合う他のカバー1との間に隙間を生じさせることができるため、カバー1同士の密着をさらに確実に回避することができる。
【0051】
また、このカバー1によれば、突出部をカバー1の外側に突出するように形成すると共に、突出部の形成部位の内側が非突出状態(平面または窪んだ状態)となるように形成したことにより、茸400の成長過程において、茸400が突出部に接触して傷付いたり、茸400の成長が妨げられる事態を確実に防止することができる。
【0052】
なお、カバー1は、上記の構成に限定されず、適宜変更することができる。例えば、平面視円形の溶着痕14を形成した例について上記したが、図12に示すように、接合部13の長さ方向に沿って端部101a,101bを溶着することによって生じさせる線状(筋状)の溶着痕614を外側または内側に突出するように形成した茸栽培用カバー601を採用することもできる。なお、上記したカバー1と同じ機能を有する構成要素については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0053】
また、カバー1の外側および内側の少なくとも一方に突出させた溶着痕14だけで突出部を構成することもできる。この構成によれば、溶着加工の際に溶着痕14を突出させることができるため、例えば、溶着痕14とは別に突出部を形成する構成とは異なり、その別の突出部を形成するための専用の工程を省略することができる分、カバー1の製造コストをさらに低減することができる。
【0054】
また、突起部12,16の全部に代えて、または突起部12,16と共に、外側または内側に突出する突起部(突起部12,16とは異なる突起部)を通気孔11の縁部や位置決め孔15の縁部以外の部位に形成する構成を採用することもできる。具体的には、図13に示すように、通気孔11の縁部および位置決め孔15の縁部以外の部位(一例として、通気孔11(突起部12)の形成部位の間)に突起部18(シボ)を形成したシート体110を用いて、このシート体110の端部111a,111bを重ね合わせて溶着することによって筒状に形成する構成を採用することができる。この場合、突起部18は、例えば、上記した雄型および雌型(通気孔11および位置決め孔15の形成用の型)に押し出し形成用の凸部および凹部をそれぞれ配置し、この雄型および雌型でシート体材料300を挟み込むことで、通気孔11および位置決め孔15と共に形成することができる。
【0055】
また、図14に示すように、通気孔11および通気孔11の縁部の突起部12を備えずに、突起部12に代えて突起部18を形成したシート体120を用いて、このシート体120の端部121a,121bを重ね合わせて溶着することによって筒状に形成する構成を採用することができる。
【0056】
また、通気孔11、突起部12、位置決め孔15、突起部16、仮止め部17および突起部18のうちの一部を備えていない構成、つまり、通気孔11、突起部12、位置決め孔15、突起部16、仮止め部17および突起部18のうちの1つ以上と溶着痕14とを突出部として備えた構成を採用することもできる。
【0057】
また、樹脂の一例としてのPETで形成されたシート体100,110,120を用いてカバー1を構成した例について上記したが、シート体100,110,120の材料は、これに限定されず、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)等の溶着可能な各種の樹脂を用いることができる。また、通気性および熱可塑性を有するシート(例えば、樹脂繊維で形成された織布や不織布)を用いてシート体100,110,120を製作することもできる。
【0058】
また、扇形の帯状に形成したシート体100,110,120を用いる例について上記したが、長方形(正方形)の帯状に形成したシート体100,110,120を用いてカバー1を形成することもできる。また、シート体100,110,120の厚みも、上記した0.2mm程度に限定されず、任意に規定することができる。また、2つの開口部の直径が互いに異なる円錐台形(側面視逆台形)の筒状にカバー1を形成した例について上記したが、両開口部の直径が等しい円筒状にカバー1を形成することができる。
【0059】
また、図2,13,14に示すように、位置決め孔15に代えて、シート体100,110,120の端部101a,101b,111a,111b,121a,121bにおける幅方向(図2における左右方向、図13,14における上下方向)の縁部に位置決め用の切り欠き19を形成する構成を採用することもできる。また、図13に示すように、カバー1の外側および内側の少なくとも一方に突出する突起部(第2突起部)20をその切り欠き19の縁部に形成する構成を採用することもできる。なお、図2,13,14以外の各図における切り欠き19の図示、および図13以外の各図における突起部20の図示を省略する。この場合、上記した位置決め孔15の穿孔加工と同様用にして、切り欠き形成用ポンチを配置した雄型と切り欠き形成用ポンチに対応する位置に凹部が形成された雌型とで、複数枚重ね合わせた状態のシート体材料300を挟み込んで切り欠き19を形成することにより、挟み込みの際に切り欠き形成用ポンチの押込みに伴って切り欠き19の周囲が押込み方向に突出し、これによってシート体材料300における切り欠き19の縁部に突起部20を形成することができる。
【0060】
さらに、突起部12、溶着痕14、突起部16および仮止め部17をいずれも外側に突出するように形成した構成例について上記したが、これらの一部または全部を内側に突出するように形成する構成を採用することもできる。
【0061】
また、移動側溶着ヘッド503を加熱するタイプの溶着機500を用いてシート体100の端部101a,101bを溶着する例について上記したが、高周波による溶着(高周波溶着)を行う高周波溶着機を用いてシート体100の端部101a,101b(または、シート体110の端部111a,111bや、シート体120の端部121a,121b)を溶着することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1,601 茸栽培用カバー
11 通気孔
12,16,18 突起部
13 接合部
14,614 溶着痕
15 位置決め孔
17 仮止め部
19 切り欠き
20 突起部
21 第1凸部
22 第2凸部
100,110,120 シート体
101a,101b,111a,111b,121a,121b 端部
200 栽培瓶
400 茸
【技術分野】
【0001】
本発明は、茸栽培用の栽培瓶に装着されて整列状態で茸を生長させるための茸栽培用カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の茸栽培用カバーとして、特開平8−37927号公報に開示された巻紙が知られている。この巻紙は、栽培瓶を用いた茸栽培において、栽培瓶に装着されて栽培瓶内の培地から子実体をまっすぐに伸長させるために用いられる栽培用の資材であって、長辺を円弧状に湾曲させた長方形状に形成されている。この巻紙を栽培瓶に装着する際には、栽培瓶の瓶口に巻紙を巻きつけて、その端縁部に粘着テープを貼付して固定する。
【0003】
しかしながら、上記したように、巻紙を栽培瓶の瓶口に巻きつけて端縁部を粘着テープで固定する装着方法では、作業効率が悪く、また、湿気などによって栽培中に粘着テープが剥がれて巻紙が栽培瓶から脱落するおそれがある。このような課題を解決可能な茸栽培用カバーとして、特開2007−20479号公報には、プラスチック材を用いて予め筒状に成形した巻紙代用筒体(以下、単に「筒体」ともいう)が開示されている。この筒体では、予め筒形に形成されていることから、巻きつけの作業や粘着テープを用いた固定作業が不要で、その分、作業効率の向上が可能な上に、粘着テープの剥がれに起因する脱落防止も可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−37927号公報(第2頁、第2図)
【特許文献2】特開2007−20479号公報(第5−6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、予め筒形に成形した上記の茸栽培用カバー(筒体)にも、以下の問題点がある。すなわち、この茸栽培用カバーは、プラスチック材を成形(射出成形)して製造されるため、射出成形用金型が高価なことに起因して、製造コストの削減が困難となっている。また、この種の茸栽培用カバーは、栽培瓶の形状や大きさに応じてその形状や大きさ(特に、下側の開口部の直径)を異ならせる必要があり、多くの茸栽培者の需要に対応するためには、形状や大きさの異なる数多くの種類の茸栽培用カバーを製造する必要がある。このためには、高価な射出成形用金型をその種類分用意する必要がある結果、製造コストの削減がさらに困難となっている。一方、筒形の茸栽培用カバーを搬送したり保管したりする際には、かさばりを少なくするために、茸栽培用カバーにおける大径の開口部側に他の茸栽培用カバーにおける小径の開口部側を差し込んで積み重ねた状態で箱や袋に詰めるのが好ましい。この場合、プラスチック材を射出成形して製造した茸栽培用カバーは、表面が滑らかなため、上記のように積み重ねたときには互いに密着する。このため、この茸栽培用カバーには、積み重ねた状態における茸栽培用カバー同士の密着により、栽培瓶への装着作業において積み重ねた状態の茸栽培用カバーからその1つ1つをそれぞれスムーズに引き抜くのが困難で、これに起因してさらなる作業効率の向上が困難であるという問題点も存在する。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストを低減すると共に、栽培用瓶への装着作業の作業効率を向上させ得る栽培用カバーを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の茸栽培用カバーは、茸栽培用の栽培瓶に装着されて整列状態で茸を生長させるための茸栽培用カバーあって、樹脂材料によって帯状に形成されたシート体における互いに対向する2つの端部を重ね合わせて当該端部を溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成されると共に、当該筒状体の外側および内側の少なくとも一方に突出する突出部が当該筒状体に形成されている。
【0008】
また、請求項2記載の茸栽培用カバーは、請求項1記載の茸栽培用カバーにおいて、前記突出部は、前記溶着による溶着痕で形成された第1突起部と、当該第1突起部の形成部位とは異なる部位に形成された第2突起部とで構成されている。
【0009】
また、請求項3記載の茸栽培用カバーは、請求項2記載の茸栽培用カバーにおいて、前記筒状体には、通気孔が形成され、前記第2突起部は、前記通気孔の縁部に形成されている。
【0010】
また、請求項4記載の茸栽培用カバーは、請求項2または3載の茸栽培用カバーにおいて、前記2つの端部の重ね合わせの際の位置合わせに用いる孔または切り欠きが当該各端部に形成され、前記第2突起部は、当該孔または当該切り欠きの縁部に形成されている。
【0011】
また、請求項5記載の茸栽培用カバーは、請求項2から4のいずれかに記載の茸栽培用カバーにおいて、前記2つの端部の重ね合わせの際の当該各端部の仮止めに用いる仮止め部が形成され、前記仮止め部は、一方の前記端部に形成された雌側の前記第2突起部と、他方の前記端部に形成されて前記雌側の前記第2突起部と嵌合可能な雄側の前記第2突起部とで構成されている。
【0012】
また、請求項6記載の茸栽培用カバーは、請求項1記載の茸栽培用カバーにおいて、前記突出部は、前記溶着による溶着痕で構成されている。
【0013】
また、請求項7記載の茸栽培用カバーは、請求項1から6のいずれかに記載の茸栽培用カバーにおいて、前記突出部が前記外側に突出すると共に、当該突出部の形成部位の前記内側が非突出状態に形成されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の茸栽培用カバーによれば、樹脂材料によって帯状に形成したシート体における互いに対向する2つの端部を重ね合わせて端部を溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成したことにより、例えば、切断機、鋏、およびカッター等の簡易な構成の機具を用いて帯状に切断したシート体における2つの端部を、一般的に簡易に構成されている溶着機を用いて溶着することでこの茸栽培用カバーを製造することができる。このため、この茸栽培用カバーによれば、高価な射出成形用金型を用いる射出成形によって製造される従来の茸栽培用カバーと比較して、製造に必要な機具のコストが低い分、製造コストを十分に低減させることができる。また、この茸栽培用カバーによれば、切断の際にシート体の長さや幅などを変更するだけで、形状や大きさの異なる数多くの種類の茸栽培用カバーを製造することができる。このため、この茸栽培用カバーによれば、形状や大きさの異なる茸栽培用カバー毎に高価な射出成形用金型を用意する必要がある従来の茸栽培用カバーとは異なり、栽培瓶の形状や大きさに応じて形状や大きさの異なる数多くの種類の茸栽培用カバーを低コストで製造することができる。
【0015】
また、この茸栽培用カバーによれば、茸栽培用カバー(筒状体)の外側および内側の少なくとも一方に突出する突出部を形成したことにより、茸栽培用カバーを積み重ねたときに、これらの突起部によって隣り合う他の茸栽培用カバーとの間に隙間を生じさせることができるため、茸栽培用カバー同士の密着を確実に回避することができる。したがって、この茸栽培用カバーによれば、一方の開口部側を栽培瓶の口部側に嵌め込むだけの極めて簡易な装着作業で装着することができることに加えて、装着作業の際に積み重ねた状態の茸栽培用カバーからその1つ1つをスムーズに引き抜くことができる結果、装着作業をさらに向上させることができる。
【0016】
また、請求項2記載の茸栽培用カバーによれば、溶着による溶着痕で形成された第1突起部と、第1突起の形成部位とは異なる部位に形成した第2突起部とで突出部を構成したことにより、茸栽培用カバーを積み重ねたときに、これらの突出部によって茸栽培用カバーの複数の部位で隙間を生じさせることができるため、茸栽培用カバー同士の密着をさらに確実に回避することができる。
【0017】
また、請求項3記載の茸栽培用カバーによれば、通気孔を形成したことにより、栽培中の茸に対して空気を十分に供給することができるため、茸の成長を促進させることができる。また、通気孔の縁部に第2突起部を形成したことにより第2突起部を形成するための別途の工程を行うことなく、通気孔を穿孔する穿孔工程において第2突起部を通気孔と共に形成することができる。このため、この茸栽培用カバーによれば、第2突起部を形成する工程に要するコストの上昇を抑えつつ茸に対して空気を供給する機能を付加することができる。
【0018】
また、請求項4記載の茸栽培用カバーによれば、2つの端部の重ね合わせの際の位置合わせに用いる孔または切り欠きを形成したことにより、各端部を正確に位置合わせすることができるため、開口部の直径などの寸法が設計値通りとなるように茸栽培用カバーを形成することができる。このため、開口部の直径が設計値よりも小さくなって装着の際に栽培瓶の口部への嵌め込みが困難となったり、開口部の直径が設計値よりも大きくなって装着の際に茸栽培用カバーが栽培瓶の下部に滑り落ちたりする事態を確実に防止することができる。この結果、これらに起因する無駄な作業の発生を回避することができるため、その分作業効率をさらに向上させることができる。
【0019】
また、位置決め用の孔または切り欠きの縁部に第2突起部を形成したことにより、第2突起部を形成するための別途の工程を行うことなく、位置決め用の孔または切り欠きを形成する工程において第2突起部を位置決め用の孔または切り欠きと共に形成することができる。このため、この茸栽培用カバーによれば、第2突起部を形成する工程に要するコストの上昇を抑えつつ各寸法が設計値通りのカバーを製造することができる。
【0020】
また、請求項5記載の茸栽培用カバーによれば、2つの端部の重ね合わせの際の各端部の仮止めに用いる仮止め部を形成したことにより、各端部同士を重ね合わせた状態を確実に維持しつつ両者を溶着することができるため、各寸法がより正確に設計値通りとなるようにカバーを形成することができる。また、各端部にそれぞれ形成して互いに嵌合可能な雌側の第2突起部と雄側の第2突起部とで仮止め部を構成したことにより、カバーを積み重ねたときに、仮止め部(仮止め部を構成する各第2突起部)によって隣り合う他のカバーとの間に隙間を生じさせることができるため、カバー同士の密着をさらに確実に回避することができる。
【0021】
また、請求項6記載の茸栽培用カバーによれば、溶着による溶着痕で突出部を構成したことにより、溶着加工の際に溶着痕を筒状体の外側および内側の少なくとも一方に突出させることができるため、例えば、溶着痕とは別に突出部を形成する構成とは異なり、その別の突出部を形成するための専用の工程を省略することができる分、茸栽培用カバーの製造コストをさらに低減することができる。
【0022】
また、請求項7記載の茸栽培用カバーによれば、突出部を外側に突出させると共に、突出部の形成部位の内側を非突出状態に形成したことにより、茸の成長過程において、茸が突出部に接触して傷付いたり、茸の成長が妨げられる事態を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】茸栽培用カバー1の構成を示す斜視図である。
【図2】シート体100の平面図である。
【図3】茸栽培用カバー1を用いた茸400の栽培方法を説明する説明図である。
【図4】茸栽培用カバー1の製造方法を説明する第1の説明図である。
【図5】茸栽培用カバー1の製造方法を説明する第2の説明図である。
【図6】茸栽培用カバー1の製造方法を説明する第3の説明図である。
【図7】茸栽培用カバー1の製造方法を説明する第4の説明図である。
【図8】茸栽培用カバー1の製造方法を説明する第5の説明図である。
【図9】複数の茸栽培用カバー1を積み重ねた状態を示す斜視図である。
【図10】茸栽培用カバー1の使用方法を説明する第1の説明図である。
【図11】茸栽培用カバー1の使用方法を説明する第2の説明図である。
【図12】茸栽培用カバー601の構成を示す斜視図である。
【図13】シート体110の平面図である。
【図14】シート体120の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、茸栽培用カバーの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0025】
最初に、図1に示す茸栽培用カバー1(以下、単に「カバー1」ともいう)の構成について説明する。このカバー1は、図3に示すように、えのき茸などの丈の長い茸(子実体)400を栽培瓶200を用いて栽培する際に、その栽培瓶200の口部201に装着して使用する資材であって、茸400の成長過程における横方向への伸び(広がり)を規制して、茸400を真っ直ぐで見栄えの良い状態(整列状態)で成長させる機能を有している。
【0026】
具体的には、カバー1は、熱可塑性樹脂(一例として、PET(ポリエチレンテレフタレート))で形成された扇形で帯状のシート体100(図2参照)の端部101a,101bを重ね合わせて、後述する溶着加工によって溶着して接合することにより(以下、この接合部分を「接合部13」ともいう)、図1に示すように、一方(同図における下側)の開口部が他方(同図における上側)の開口部よりも小径の円錐台形(側面視逆台形)の筒状に形成した筒状体で構成されている。
【0027】
また、カバー1には、図1に示すように、カバー1外の空気をカバー1内に通気させる機能を有する複数の通気孔11が形成されている。また、この通気孔11の縁部には、後述する穿孔加工によって通気孔11が穿孔される際に生じたリング状の突起部12(突出部および第2突起部の一例)がカバー1の外側に突出するようにして形成されている。また、突起部12の形成部位の内側は非突出状態(平面状態、または凹んだ状態)となるように形成されている。
【0028】
また、図1に示すように、カバー1の接合部13には、シート体100の端部101a,101bを溶着する際に生じた平面視円形の溶着痕14(突出部および第1突起部の一例)がカバー1の外側に突出するようにして形成されている。また、溶着痕14の形成部位の内側は非突出状態(平面状態、または凹んだ状態)となるように形成されている。また、接合部13には、シート体100の端部101a,101bを溶着する際に端部101a,101bを位置決めするために用いられる位置決め孔15が形成されている。また、この位置決め孔15の縁部には、後述する穿孔加工によって位置決め孔15が穿孔される際に生じたリング状の突起部16(突出部および第2突起部の一例)がカバー1の外側に突出するようにして形成されている。また、突起部16の形成部位の内側は非突出状態(平面状態、または凹んだ状態)となるように形成されている。
【0029】
さらに、図1に示すように、接合部13には、シート体100の端部101a,101bを溶着する際に端部101a,101bを仮止めする機能を有する仮止め部17が形成されている。この場合、仮止め部17は、図6に示すように、端部101a(カバー1の内側に位置する端部)に形成されてカバー1の外側に突出する第1凸部21(突出部および雄側の第2突起部の一例)と、端部101b(カバー1の外側に位置する端部)に形成されてカバー1の外側に突出すると共に第1凸部21がその内側に嵌め込まれる第2凸部22(突出部および雌側の第2突起部の一例)とで構成されている。また、両凸部21,22の形成部位(つまり仮止め部17の形成部位)の内側は非突出状態(平面状態、または凹んだ状態)となるように形成されている。
【0030】
次に、カバー1を製造する製造工程の一例について、図面を参照して説明する。
【0031】
最初に、図2に示すシート体100を製作する。具体的には、例えば、熱可塑性樹脂の一例としてのPETで形成された厚みが0.2mm程度の樹脂シートを、切断機、はさみおよびカッター等を用いて同図に示す扇形の帯状に切断する(以下、切断した樹脂シートを「シート体材料300」ともいう)。
【0032】
次いで、シート体材料300に通気孔11および位置決め孔15を形成する。具体的には、通気孔11および位置決め孔15の形成位置に対応する配列パターンで孔あけ用ポンチが配置された図外の雄型と、孔あけ用ポンチに対応する位置に凹部が形成された図外の雌型とで、複数枚重ね合わせた状態のシート体材料300を挟み込んで穿孔加工を行う。この穿孔加工では、挟み込みの際に雄型の孔あけ用ポンチがシート体材料300に押し込まれることによって通気孔11および位置決め孔15が穿孔される。また、孔あけ用ポンチの押込みに伴って通気孔11および位置決め孔15の周囲が押込み方向に突出し、これによってシート体材料300における通気孔11の周囲にリング状の突起部12が形成されると共に、シート体材料300における位置決め孔15の周囲に突起部16が形成される。
【0033】
続いて、通気孔11および位置決め孔15を形成したシート体材料300における一方の端部101aに、仮止め部17を構成する第1凸部21を形成すると共に、シート体材料300における他方の端部101bに、仮止め部17を構成する第2凸部22を形成する。具体的には、第1凸部21に対応する凸部および凹部が形成された金型を、シート体材料300が熱変形可能な温度に加熱し、その金型でシート体材料300の端部101aを挟み込む。この際に、金型の凸部および凹部によって挟まれた部位が熱変形して端部101aに第1凸部21が形成される。同様にして、凸部22に対応する凸部および凹部が形成された金型を加熱し、その金型でシート体材料300の端部101bを挟み込む。この際に、金型の凸部および凹部によって挟まれた部位が熱変形して端部101bに凸部22が形成される。これにより、シート体100が製作される。
【0034】
次いで、例えば図6に示す固定側溶着ヘッド501および移動側溶着ヘッド503を備えた溶着機500を用いて、シート体100の端部101a,101bを重ね合わせて、その端部101a,101bを溶着して接合する溶着加工を行う。この溶着加工では、各突出部12,16および各凸部21,22の突出する向きが上向きとなるようにして、図4に示すように、固定側溶着ヘッド501の上面に形成されている位置決用の突起502をシート体100の端部101aに形成されている位置決め孔15に挿通させる。
【0035】
続いて、図4に示す矢印で示すように、シート体100で固定側溶着ヘッド501を巻き込み、図5に示すように、シート体100で筒体を形作る。次いで、固定側溶着ヘッド501の突起502を、端部101bに形成されている位置決め孔15に挿通させる。
【0036】
続いて、図6に示すように、端部101bに形成されている第2凸部22を、端部101aに形成されている第1凸部21に向けて押し付けることにより、両凸部21,22を嵌合させる。これにより、端部101a,101bが位置決めされると共に、端部101a,101bが仮止めされる。
【0037】
次いで、溶着機500の移動側溶着ヘッド503をシート体100を溶着可能な温度に加熱し、図7に示すように、その移動側溶着ヘッド503を固定側溶着ヘッド501に向けて押し下げることにより、溶着ヘッド501,503によってシート体100の端部101a,101bを挟み込む。この際に、端部101bにおける移動側溶着ヘッド503との接触部位、および端部101aにおけるこの接触部位に対向する部位が加熱されて溶融し、その結果両者が溶着される。この場合、同図に示すように、固定側溶着ヘッド501には、複数の凸部が形成され、移動側溶着ヘッド503には、固定側溶着ヘッド501の凸部に対向する部位に凹みを有する凸部が形成されている。このため、上記したように溶着ヘッド501,503によってシート体100の端部101a,101bを挟み込んだときに、両凸部によって溶着された部位(溶着痕14)が外側に突出するように形成される。以上により、図8に示すように、カバー1の製造が完了する。
【0038】
このカバー1は、切断機、鋏、およびカッター等の簡易な構成の機具を用いて帯状に切断したシート体100の端部101a,101bを、上記のように一般的に簡易に構成されている溶着機500を用いて溶着して接合することで筒状に形成して製造される。このため、このカバー1では、高価な射出成形用金型を用いる射出成形によって製造される従来の茸栽培用カバーと比較して、製造に必要な機具のコストが低い分、製造コストを十分に低減させることが可能となっている。また、このカバー1では、切断の際にシート体100の長さや幅などを変更するだけで、栽培瓶200の形状や大きさに応じて形状や大きさの異なる数多くの種類のカバー1を製造することが可能となっている。このため、このカバー1では、形状や大きさの異なるカバー1毎に高価な射出成形用金型を用意する必要がある従来の茸栽培用カバーとは異なり、数多くの種類のカバー1を製造する際においても、製造コストを十分に低減させることが可能となっている。
【0039】
続いて、完成したカバー1をパッケージングする。この場合、かさばりを少なくするために、図9に示すように、カバー1における大径の開口部側に他のカバー1における小径の開口部側を差し込んで積み重ねる。このカバー1では、通気孔11の縁部に外側に突出する突起部12が形成され、位置決め孔15の縁部にも外側に突出する突起部16が形成されている。また、このカバー1では、溶着痕14が外側に突出するように形成され、さらに、仮止め部17が外側に突出するように形成されている。このため、上記のようにカバー1を積み重ねたときに、これらの溶着痕14、突起部12、突起部16および仮止め部17によって隣り合う他のカバー1との間に隙間が生じる結果、カバー1同士の密着が回避されている。次いで、複数を積み重ねた状態のカバー1を袋や箱などの包装資材に詰め込む。以上により、パッケージングが終了する。
【0040】
次に、茸の瓶栽培におけるカバー1の使用方法について、図面を参照して説明する。
【0041】
茸の瓶栽培を行うには、まず、栽培瓶200に培地を充填し、続いて、滅菌処理を行った後に種菌を植え付ける。次いで、栽培瓶200にカバー1を装着する。具体的には、上記のように積み重ねた状態でパッケージングされたカバー1(図9参照)を包装資材から取り出す。続いて、図10に示すように、積み重ねた各カバー1のうちの1つ(例えば、最上部のカバー1)を引き抜く。この場合、上記したように、積み重ねた状態において、隣り合う他のカバー1との間に隙間が生じてカバー1同士の密着が回避されているため、積み重ねた状態のカバー1からその1つをスムーズに引き抜くことができる。
【0042】
次いで、図11に示すように、種菌を植え付けた培地入りの栽培瓶200における口部201側に引き抜いたカバー1の小径の開口部側を嵌め込む。これにより、カバー1の装着が完了する。このカバー1では、このように小径の開口部側を栽培瓶200の口部201側に嵌め込むだけの極めて簡易な作業で装着が完了するため、帯状のシート体を栽培瓶200の口部201に巻き付けて粘着テープによって固定する構成と比較して、装着作業の効率を十分に向上させることが可能となっている。また、このカバー1では、積み重ねた状態のカバー1からその1つ1つをスムーズに引き抜くことができるため、装着作業の作業効率をさらに向上させることが可能となっている。
【0043】
続いて、カバー1の装着が完了した栽培瓶200を栽培室に保管する。このカバー1を装着したことで、図3に示すように、成長過程における茸400の横方向への伸び(広がり)が規制されて、茸400が真っ直ぐで見栄えの良い状態に成長する。また、突起部12,16、溶着痕14および仮止め部17の全てが外側に突出するように形成され、これらの形成部位の全ての内側が非突出状態となるように形成されているため、茸400の成長過程において、突起部12,16、溶着痕14および仮止め部17に茸400が接触して傷付いたり茸400の成長が妨げられたりする事態が確実に防止される。
【0044】
このように、このカバー1によれば、樹脂材料によって帯状に形成したシート体100における端部101a,101bを重ね合わせて溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成したことにより、例えば、切断機、鋏、およびカッター等の簡易な構成の機具を用いて帯状に切断したシート体100の端部101a,101bを、一般的に簡易に構成されている溶着機500を用いて溶着することでこのカバー1を製造することができる。このため、このカバー1によれば、高価な射出成形用金型を用いる射出成形によって製造される従来の茸栽培用カバーと比較して、製造に必要な機具のコストが低い分、製造コストを十分に低減させることができる。また、このカバー1によれば、切断の際にシート体100の長さや幅などを変更するだけで、形状や大きさの異なる数多くの種類のカバー1を製造することができる。このため、このカバー1によれば、形状や大きさの異なるカバー1毎に高価な射出成形用金型を用意する必要がある従来の茸栽培用カバーとは異なり、栽培瓶200の形状や大きさに応じて形状や大きさの異なる数多くの種類のカバー1を低コストで製造することができる。
【0045】
また、このカバー1によれば、カバー1(筒状体)から突出する突出部としての突起部12,16、溶着痕14、第1凸部21および第2凸部22を形成したことにより、カバー1を積み重ねたときに、これらの突起部によって隣り合う他のカバー1との間に隙間を生じさせることができるため、カバー1同士の密着を確実に回避することができる。したがって、このカバー1によれば、小径の開口部側を栽培瓶200の口部201側に嵌め込むだけの極めて簡易な装着作業で装着することができることに加えて、装着作業の際に積み重ねた状態のカバー1からその1つ1つをスムーズに引き抜くことができる結果、装着作業をさらに向上させることができる。
【0046】
また、このカバー1によれば、溶着による第1突起部としての溶着痕14と、溶着痕14の形成部位とは異なる部位に形成した第2突起部としての突起部12,16、第1凸部21および第2凸部22とで突出部を構成したことにより、カバー1を積み重ねたときに、これらの突出部によってカバー1の複数の部位で隙間を生じさせることができるため、カバー1同士の密着をさらに確実に回避することができる。
【0047】
また、このカバー1によれば、通気用の通気孔11を形成したことにより、栽培中の茸400に対して空気を十分に供給することができるため、茸400の成長を促進させることができる。また、通気孔11の縁部に第2突起部としての突起部12を形成したことにより、突起部12を形成するための別途の工程を行うことなく、通気孔11を穿孔する穿孔工程において突起部12を通気孔11と共に形成することができる。このため、このカバー1によれば、突起部12を形成する工程に要するコストの上昇を抑えつつ茸400に対する空気の供給機能を付加することができる。
【0048】
また、このカバー1によれば、端部101a,101bの重ね合わせの際の位置合わせに用いる位置決め孔15を形成したことにより、端部101a,101bを正確に位置合わせすることができるため、各寸法(特に、開口部の直径)が設計値通りとなるようにカバー1を形成することができる。このため、開口部の直径が設計値よりも小さくなって装着の際に栽培瓶200の口部201への嵌め込みが困難となったり、開口部の直径が設計値よりも大きくなって装着の際にカバー1が栽培瓶200の下部に滑り落ちたりする事態を確実に防止することができる。この結果、これらに起因する無駄な作業の発生を回避することができるため、その分作業効率をさらに向上させることができる。
【0049】
また、位置決め孔15の縁部に第2突起部としての突起部16を形成したことにより、突起部16を形成するための別途の工程を行うことなく、位置決め孔15を穿孔する穿孔工程において突起部16を位置決め孔15と共に形成することができる。このため、このカバー1によれば、突起部16を形成する工程に要するコストの上昇を抑えつつ各寸法が設計値通りのカバー1を製造することができる。
【0050】
また、このカバー1によれば、端部101a,101bの重ね合わせの際の端部101a,101bの仮止めに用いる仮止め部17を形成したことにより、端部101a,101b同士を重ね合わせた状態を確実に維持しつつ両者を溶着することができるため、各寸法がより正確に設計値通りとなるようにカバー1を形成することができる。また、端部101a,101bにそれぞれ形成して互いに嵌合可能な雄側の第2突起部としての第1凸部21および雌側の第2突起部としての第2凸部22で仮止め部17を構成したことにより、カバー1を積み重ねたときに、仮止め部17を構成する各凸部21,22によって隣り合う他のカバー1との間に隙間を生じさせることができるため、カバー1同士の密着をさらに確実に回避することができる。
【0051】
また、このカバー1によれば、突出部をカバー1の外側に突出するように形成すると共に、突出部の形成部位の内側が非突出状態(平面または窪んだ状態)となるように形成したことにより、茸400の成長過程において、茸400が突出部に接触して傷付いたり、茸400の成長が妨げられる事態を確実に防止することができる。
【0052】
なお、カバー1は、上記の構成に限定されず、適宜変更することができる。例えば、平面視円形の溶着痕14を形成した例について上記したが、図12に示すように、接合部13の長さ方向に沿って端部101a,101bを溶着することによって生じさせる線状(筋状)の溶着痕614を外側または内側に突出するように形成した茸栽培用カバー601を採用することもできる。なお、上記したカバー1と同じ機能を有する構成要素については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0053】
また、カバー1の外側および内側の少なくとも一方に突出させた溶着痕14だけで突出部を構成することもできる。この構成によれば、溶着加工の際に溶着痕14を突出させることができるため、例えば、溶着痕14とは別に突出部を形成する構成とは異なり、その別の突出部を形成するための専用の工程を省略することができる分、カバー1の製造コストをさらに低減することができる。
【0054】
また、突起部12,16の全部に代えて、または突起部12,16と共に、外側または内側に突出する突起部(突起部12,16とは異なる突起部)を通気孔11の縁部や位置決め孔15の縁部以外の部位に形成する構成を採用することもできる。具体的には、図13に示すように、通気孔11の縁部および位置決め孔15の縁部以外の部位(一例として、通気孔11(突起部12)の形成部位の間)に突起部18(シボ)を形成したシート体110を用いて、このシート体110の端部111a,111bを重ね合わせて溶着することによって筒状に形成する構成を採用することができる。この場合、突起部18は、例えば、上記した雄型および雌型(通気孔11および位置決め孔15の形成用の型)に押し出し形成用の凸部および凹部をそれぞれ配置し、この雄型および雌型でシート体材料300を挟み込むことで、通気孔11および位置決め孔15と共に形成することができる。
【0055】
また、図14に示すように、通気孔11および通気孔11の縁部の突起部12を備えずに、突起部12に代えて突起部18を形成したシート体120を用いて、このシート体120の端部121a,121bを重ね合わせて溶着することによって筒状に形成する構成を採用することができる。
【0056】
また、通気孔11、突起部12、位置決め孔15、突起部16、仮止め部17および突起部18のうちの一部を備えていない構成、つまり、通気孔11、突起部12、位置決め孔15、突起部16、仮止め部17および突起部18のうちの1つ以上と溶着痕14とを突出部として備えた構成を採用することもできる。
【0057】
また、樹脂の一例としてのPETで形成されたシート体100,110,120を用いてカバー1を構成した例について上記したが、シート体100,110,120の材料は、これに限定されず、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)等の溶着可能な各種の樹脂を用いることができる。また、通気性および熱可塑性を有するシート(例えば、樹脂繊維で形成された織布や不織布)を用いてシート体100,110,120を製作することもできる。
【0058】
また、扇形の帯状に形成したシート体100,110,120を用いる例について上記したが、長方形(正方形)の帯状に形成したシート体100,110,120を用いてカバー1を形成することもできる。また、シート体100,110,120の厚みも、上記した0.2mm程度に限定されず、任意に規定することができる。また、2つの開口部の直径が互いに異なる円錐台形(側面視逆台形)の筒状にカバー1を形成した例について上記したが、両開口部の直径が等しい円筒状にカバー1を形成することができる。
【0059】
また、図2,13,14に示すように、位置決め孔15に代えて、シート体100,110,120の端部101a,101b,111a,111b,121a,121bにおける幅方向(図2における左右方向、図13,14における上下方向)の縁部に位置決め用の切り欠き19を形成する構成を採用することもできる。また、図13に示すように、カバー1の外側および内側の少なくとも一方に突出する突起部(第2突起部)20をその切り欠き19の縁部に形成する構成を採用することもできる。なお、図2,13,14以外の各図における切り欠き19の図示、および図13以外の各図における突起部20の図示を省略する。この場合、上記した位置決め孔15の穿孔加工と同様用にして、切り欠き形成用ポンチを配置した雄型と切り欠き形成用ポンチに対応する位置に凹部が形成された雌型とで、複数枚重ね合わせた状態のシート体材料300を挟み込んで切り欠き19を形成することにより、挟み込みの際に切り欠き形成用ポンチの押込みに伴って切り欠き19の周囲が押込み方向に突出し、これによってシート体材料300における切り欠き19の縁部に突起部20を形成することができる。
【0060】
さらに、突起部12、溶着痕14、突起部16および仮止め部17をいずれも外側に突出するように形成した構成例について上記したが、これらの一部または全部を内側に突出するように形成する構成を採用することもできる。
【0061】
また、移動側溶着ヘッド503を加熱するタイプの溶着機500を用いてシート体100の端部101a,101bを溶着する例について上記したが、高周波による溶着(高周波溶着)を行う高周波溶着機を用いてシート体100の端部101a,101b(または、シート体110の端部111a,111bや、シート体120の端部121a,121b)を溶着することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1,601 茸栽培用カバー
11 通気孔
12,16,18 突起部
13 接合部
14,614 溶着痕
15 位置決め孔
17 仮止め部
19 切り欠き
20 突起部
21 第1凸部
22 第2凸部
100,110,120 シート体
101a,101b,111a,111b,121a,121b 端部
200 栽培瓶
400 茸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茸栽培用の栽培瓶に装着されて整列状態で茸を生長させるための茸栽培用カバーあって、
樹脂材料によって帯状に形成されたシート体における互いに対向する2つの端部を重ね合わせて当該端部を溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成されると共に、当該筒状体の外側および内側の少なくとも一方に突出する突出部が当該筒状体に形成されている茸栽培用カバー。
【請求項2】
前記突出部は、前記溶着による溶着痕で形成された第1突起部と、当該第1突起部の形成部位とは異なる部位に形成された第2突起部とで構成されている請求項1記載の茸栽培用カバー。
【請求項3】
前記筒状体には、通気孔が形成され、
前記第2突起部は、前記通気孔の縁部に形成されている請求項2記載の茸栽培用カバー。
【請求項4】
前記2つの端部の重ね合わせの際の位置合わせに用いる孔または切り欠きが当該各端部に形成され、
前記第2突起部は、当該孔または当該切り欠きの縁部に形成されている請求項2または3載の茸栽培用カバー。
【請求項5】
前記2つの端部の重ね合わせの際の当該各端部の仮止めに用いる仮止め部が形成され、
前記仮止め部は、一方の前記端部に形成された雌側の前記第2突起部と、他方の前記端部に形成されて前記雌側の前記第2突起部と嵌合可能な雄側の前記第2突起部とで構成されている請求項2から4のいずれかに記載の茸栽培用カバー。
【請求項6】
前記突出部は、前記溶着による溶着痕で構成されている請求項1記載の茸栽培用カバー。
【請求項7】
前記突出部が前記外側に突出すると共に、当該突出部の形成部位の前記内側が非突出状態に形成されている請求項1から6のいずれかに記載の茸栽培用カバー。
【請求項1】
茸栽培用の栽培瓶に装着されて整列状態で茸を生長させるための茸栽培用カバーあって、
樹脂材料によって帯状に形成されたシート体における互いに対向する2つの端部を重ね合わせて当該端部を溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成されると共に、当該筒状体の外側および内側の少なくとも一方に突出する突出部が当該筒状体に形成されている茸栽培用カバー。
【請求項2】
前記突出部は、前記溶着による溶着痕で形成された第1突起部と、当該第1突起部の形成部位とは異なる部位に形成された第2突起部とで構成されている請求項1記載の茸栽培用カバー。
【請求項3】
前記筒状体には、通気孔が形成され、
前記第2突起部は、前記通気孔の縁部に形成されている請求項2記載の茸栽培用カバー。
【請求項4】
前記2つの端部の重ね合わせの際の位置合わせに用いる孔または切り欠きが当該各端部に形成され、
前記第2突起部は、当該孔または当該切り欠きの縁部に形成されている請求項2または3載の茸栽培用カバー。
【請求項5】
前記2つの端部の重ね合わせの際の当該各端部の仮止めに用いる仮止め部が形成され、
前記仮止め部は、一方の前記端部に形成された雌側の前記第2突起部と、他方の前記端部に形成されて前記雌側の前記第2突起部と嵌合可能な雄側の前記第2突起部とで構成されている請求項2から4のいずれかに記載の茸栽培用カバー。
【請求項6】
前記突出部は、前記溶着による溶着痕で構成されている請求項1記載の茸栽培用カバー。
【請求項7】
前記突出部が前記外側に突出すると共に、当該突出部の形成部位の前記内側が非突出状態に形成されている請求項1から6のいずれかに記載の茸栽培用カバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−103776(P2011−103776A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259409(P2009−259409)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(506021949)株式会社長野製作所 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(506021949)株式会社長野製作所 (3)
【Fターム(参考)】
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