説明

茸菌駒のセット方法及び装置

【課題】 この発明は、原木へ茸菌駒を全自動でセットすることを目的としたものである。
【解決手段】
ドリルの下降に伴って原木の所定位置へ穿孔し、茸菌駒を挿入位置の近辺に待機させると共に、茸菌駒をセットするハンマーを打撃準備位置に持ち上げ、前記ドリルの上昇に伴って茸菌駒を移動させて、前記穿孔による駒孔内へ挿入させ、ついでハンマーで前記茸菌駒の頭部を叩いて茸菌駒を駒孔へセットすることを特徴とした茸菌駒のセット方法により上記目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、茸栽培用原木の適所に穿孔し、この孔に茸菌駒を自動的にセットすることを目的とした茸菌駒のセット方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、茸菌駒のセットについては、原木へのドリルによる穿孔と、原木支持装置、茸菌駒の送り装置又は茸菌駒の自動打込み及び原木の自動排出装置など夫々について幾多の提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−91604号公報
【特許文献2】特開平7−155057号公報
【特許文献3】特開平7−135850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来茸菌駒をセットするには、原木の所定位置にドリルで穿孔し、該孔に手動で茸菌駒をセットしていた。しかし、原木又はドリル装置を手で移動させていたので、手動作業が多大に介在する問題点があった(特許文献1、2、3)。
【0005】
この発明は、ドリルによる穿孔、茸菌駒の整理、移送及び打ち込みを総て自動化することにより、前記従来の問題点たる手動作業を大幅に軽減したのである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ドリル装置を下降して穿孔する際に、茸菌駒の移送と送入装置と、打ち込みハンマーをセットし、前記ドリル装置の上昇に伴って、前記送入装置により茸菌駒を前記穿孔上へ送入し、前記打ち込みハンマーの先端により、前記茸菌駒の頭部を叩いて打ち込むようにしたものである。
【0007】
また、茸菌駒は、保持パイプ内へ上下方向に一列に収容されており、自重により下降する。前記保持パイプの上端は、茸菌駒を収容した漏斗容器の中央部に挿通されている。そこで、保持パイプはドリル装置の昇降に伴い、漏斗容器又はパイプが昇降し、容器内側の中央底部の面−高さから中央部までの間を往復することになるので、前記保持パイプの上端が漏斗容器の底部から中央部まで昇降する間に茸菌駒が保持パイプの上端開口部から内部へ入る。
【0008】
前記保持パイプは、茸菌駒が縦に並ぶ太さになっているので、保持パイプの昇降に伴って、漏斗容器の内部に収容されている茸菌駒は、保持パイプの上端口から内側へ自動的にかつ自重によって収容される。
【0009】
この場合に、茸菌駒は、両端部を面取した柱状であり、かつ直径よりも長さが大きいので、自動的に縦状に収容される。即ち、茸菌駒はその寸法上横になって保持パイプ内へ入るおそれはなく、悉く縦に収容される。例えば、保持パイプの内径が12mm、茸菌駒の外径が10mm、長さ20mmならば、保持パイプの昇降により茸菌駒は縦に整然と収容される(茸菌駒は寸法上横にしては入らないから)。
【0010】
次に、茸菌駒の上部を打撃するハンマーは、ドリルの下降に伴って反打撃準備の方向へ回転する。前記におけるハンマーは、打撃方向へスプリングによって付勢され、一定の位置まで回転して掛止されている。この掛止片を外すことにより前記スプリングによりハンマーが回転して、その先端が茸菌駒の頭部を打撃する。
【0011】
前記動作は総てドリル装置の下降により準備され、ドリル装置が穿孔し、ハンマーの上昇により茸菌駒の送入と、送入後の打撃が行われる。
【0012】
前記におけるドリル装置の昇降は、例えばエアシリンダによって自動的に昇降作動される。前記エアシリンダの上部に加圧空気を送入すれば、ロッドを介してドリル装置を下降させることができ、エアシリンダの下部に加圧空気を送入すれば、ロッドを介してドリル装置を上昇させることができる。そこでドリル装置を上昇させると、茸菌駒の送入と茸菌駒頭への打撃が時間差をもって行われ、茸菌駒を穿孔内へ緊密にセットすることができる。
【0013】
前記において、ドリル装置は下降と上昇により仕事を完了するので、上昇位置では次の下降に備えており、全自動に際して齟齬するおそれはない。また、エアシリンダによるドリル装置の昇降高さは一定にしてあるから、各部の運動に支障を来すおそれはない。ドリル装置の下降量により駒孔の深さが決まる。当然のことながら、駒孔の内径も駒の外径を勘案して定めてある。
【0014】
次に、原木には、長手方向及び外周方向に夫々一定間隔で茸菌駒をセットしなければならない。そこで長手方向に対しては、茸菌駒のセット間隔に対応して複数のドリル装置を並列設置し、又は1つのドリル装置を長手方向に順次定距離宛摺動させることにより目的を達成することができる。
【0015】
また、外周方向に対して茸菌駒をセットするには、茸菌駒をセット終了毎に原木を一定角度回転させる必要がある。例えば、外周方向に茸菌駒を六箇所セットするには、セット終了毎に、原木を60度宛回転させれば目的を達成することができる。この場合に、回転角度を一定に保持しなければならないので、例えば原木を支えた支持輪を正確に60度回転させる必要がある。原木を左右二箇所で支持輪に支持させ、その支持輪を60度宛回転させれば目的を達成することができる。
【0016】
前記の他に、支持輪の軸をステッピングモータで回転させ、回転角度を正確に維持させることもできる。
【0017】
本願における方法の発明は以下のとおりである。請求項1の発明は、ドリルの下降に伴って原木の所定位置へ穿孔し、茸菌駒を挿入位置の近辺に待機させると共に、茸菌駒をセットするハンマーを打撃準備位置に持ち上げ、前記ドリルの上昇に伴って茸菌駒を移動させて、前記穿孔による駒孔内へ挿入させ、ついでハンマーで前記茸菌駒の頭部を叩いて茸菌駒を駒孔へセットすることを特徴とした茸菌駒のセット方法である。
【0018】
請求項2の発明は、原木の全長に亘って、茸菌駒のセット装置を所定間隔で配置し、各セット装置のドリルの下降に伴って、原木の所定位置へ穿孔し、茸菌駒を挿入位置の近辺に待機させると共に、茸菌駒をセットするハンマーを打撃準備位置に持ち上げ、前記ドリルの上昇に伴って茸菌駒を移動させて、前記穿孔による駒孔内へ挿入させ、ついでハンマーで前記茸菌駒の頭部を叩いて茸菌駒を駒孔へセットすることを特徴とした茸菌駒のセット方法である。
【0019】
請求項3の発明は、ドリルの下降に伴って原木の所定位置へ穿孔し、茸菌駒を挿入位置の近辺に待機させると共に、茸菌駒をセットするハンマーを打撃準備位置に持ち上げ、前記ドリルの上昇に伴って茸菌駒を移動させて、前記穿孔による駒孔内へ挿入させ、次いでハンマーで、前記茸菌駒の頭部を叩いて茸菌駒を駒孔へセットし、ついで、原木を一定角度回転して、前記と同様に茸菌駒をセットすることを特徴とした請求項1又は2記載の茸菌駒のセット方法である。
【0020】
請求項4の発明は、ドリルの下降に伴って、原木の所定位置へ穿孔し、茸菌駒を挿入位置の近辺に待機させると共に、茸菌駒をセットするハンマーを打撃準備位置に持ち上げ、前記ドリルの上昇に伴って茸菌駒を移動させて、前記穿孔による駒孔内へ挿入させ、ついでハンマーで前記茸菌駒の頭部を叩いて茸菌駒を駒孔へセットし、ついで、原木を一定角度回転して、前記と同様に茸菌駒をセットして、原木の周方向における茸菌駒のセット完了後、前記茸菌駒のセット位置を長手方向に所定長さだけ移動して、前記原木の周囲に茸菌駒をセットし、前記セットを繰り返して原木の周方向と長さ方向の全長に亘って茸菌駒をセットすることを特徴とした請求項1記載の茸菌駒のセット方法である。
【0021】
請求項5の発明は、茸菌駒は保持パイプに縦列収容され、前記保持パイプの一部と、漏斗容器との相対的昇降位置の変化によって漏斗容器内の茸菌駒が前記保持パイプの上端から保持パイプ内へ自動的に収容されるようにしたことを特徴とした請求項1記載の茸菌駒のセット方法である。
【0022】
請求項6の発明は、ドリル装置は、縦に設置したエアシリンダに固定され、該エアシリンダの上側内又は下側内への加圧空気を給排することによりエアシリンダと共に昇降することを特徴とした請求項1又は2記載の茸菌駒のセット方法である。
【0023】
請求項7の発明は、茸菌駒の打撃は、ドリルの上昇時にハンマーを回転し、該ハンマーの先端側で茸菌駒の頭部を打撃することを特徴とした請求項1又は2記載の茸菌駒のセット方法である。
【0024】
次に、本願における装置の発明は以下のとおりである。請求項8の発明は、原木上へ載置する枠体上へ基板を固定し、該基板に支柱と支持板よりなる構造体に、穿孔用ドリル装置と、茸菌駒の送り装置と、茸菌駒の打撃装置とを組み合わせてセットとしたことを特徴する請求項1記載の方法を実施する茸菌駒のセット装置。である。
【0025】
請求項9の発明は、ドリル装置は、下部に、茸菌駒の駒孔を穿孔するドリルを有し、支柱の支板に縦に固定し、空気の給排により昇降する空気圧シリンダーに固定したことを特徴とする請求項8記載の茸菌駒のセット装置である。
【0026】
請求項10の発明は、茸菌駒の送り装置は、茸菌駒の送り管と、該送り管の下端に横設した茸菌駒の横移送装置とよりなり、茸菌駒を1つ宛送り出すようにしたことを特徴とした請求項8記載の茸菌駒のセット装置である。
【0027】
請求項11の発明は、茸菌駒の打撃装置は、基板上へ、ハンマー板を横軸で回転自在に架設し、前記ハンマー板の先端は、ドリルにより設けた穿孔に収容された茸菌駒の上部を打撃すべくセットされ、前記横軸に装着したスプリングにより付勢され、ドリル装置の下降によりハンマーを予備位置に待機させ、ロックを外すことによりハンマー板を回転させて打撃することを特徴とした請求項8記載の茸菌駒のセット装置である。
【0028】
請求項12の発明は、茸菌駒を収容した漏斗容器の中心部に茸菌駒の保持パイプを貫通し、ドリル装置の昇降に伴って前記保持パイプを昇降させて、漏斗容器内の茸菌駒を保持パイプに収容することを特徴とした請求項8記載の茸菌駒のセット装置である。
【0029】
前記のように、茸菌駒のセットを1台のセット装置で行う場合と複数台のセット装置で行う場合とでは作業様式と作業効率が異なるが、ドリルによる穿孔と、茸菌駒の供給と、茸菌駒の打ち込みとは何れも連繋技術である。
【0030】
然して原則的には、茸菌駒をセットすることと、原木の回転又は長手方向に移動することとは異質の技術であり、少なくとも2つの技術を共同して行う必要がある。また、茸菌駒のセットを周方向セットの位置の数と等しい数の複数台の装置で行う場合には、セットに使用する装置を移動させる必要がなく、原木を一定の角度回転させるだけで目的を達成することができる。然しながら、1台の装置でセットを行う場合には、原木の長手方向への移動(又はセット装置の移動)と原木の回転を行う必要がある。
【0031】
前記における茸菌としては、椎茸菌となめこ菌などがあるが、その他の茸菌であっても原木へ茸菌駒を埋設する場合には、何れも使用することができる。
【0032】
この発明においては、ドリル装置の昇降による穿孔動作により、茸菌駒の送りと茸菌駒への打撃とを一連の動作として関連づけている。穿孔、茸菌駒の送り、及び茸菌駒への打撃との間に相互関連はなくとも、各動作を連続させることにより、同一効果を得ることができる。例えばセンサによって一方の動作を他方の動作に関連させれば、穿孔、茸菌駒の送り、及び茸菌駒への打撃とを連係させることができる。
【発明の効果】
【0033】
この発明によれば、ドリル装置の昇降によって、穿孔、茸菌駒送入、茸菌駒への打ち込みを連続的に行い、原木へ茸菌駒をセットすることができる効果がある。
【0034】
また、原木の長手方向及び周壁方向の何れに対しても、自動的に茸菌駒をセットし得る効果がある。
【0035】
さらに、この発明によれば、ドリル装置の昇降という一元的動作を利用して駒孔の穿孔と、茸菌駒の挿入と、菌駒の打撃とにより茸菌駒の自動セットができるので、センサなどを使用することなく、各部を簡単かつ正確に動作させることができる。従って、動作を同期させるためのセンサなどは不必要の場合が多い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)この発明の実施例の一部を省略した正面図、(b)同じく(a)中漏斗部の断面拡大図、(c)茸菌駒の拡大斜視図。
【図2】(a)同じく実施例の一部を省略した側面図、(b)同じくエアシリンダの一部を省略した断面拡大図。
【図3】同じくハンマー打撃及び茸菌駒送りを示す一部省略し、一部断面した拡大図。
【図4】(a)同じく茸菌駒送りの動作を示す一部断面した説明図、(b)同じく当接枠と基板との離接の説明図。
【図5】同じくハンマー板の掛止機構を示す一部を省略した拡大図。
【図6】(a)同じくハンマー板の掛止及び回動の一部を省略した正面図、(b)同じく一部を省略した側面図。
【図7】(a)同じく原木の支持装置を示し、一部を拡大し、一部を省略した正面図、(b)同じく一部を破切し、一部を省略した平面図。
【図8】(a)同じく原木支持装置の一部を省略した拡大側面図、(b)同じく原木支持輪の回転の説明図、(c)同じく原木へ茸菌駒の嵌入した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
原木上へセットする構造体へドリル装置が昇降自在に取り付けてあり、前記ドリル装置のドリルを回転させながらドリル装置を下降させると、前記ドリルにより原木へ穿孔することができる。前記ドリル装置の下降に伴い、茸菌駒の送り装置が茸菌駒の送り始動状態になると共に、ハンマーが打撃準備位置に待機する。
【0038】
次に、ドリル装置を持ち上げると、前記茸菌駒の送り装置が始動して茸菌駒を駒孔位置に送り出し、駒孔内に茸菌駒を挿入する。次いでハンマー板が回転し、その先端が茸菌駒の後部を打撃して茸菌駒を孔内へ押し込む。前記茸菌駒は、長手方向の端部が面取りしてあるので(図1(c))、駒孔内へ容易に押し込むことができる。
【0039】
茸菌駒の中央部には溝が設けてあり、茸菌が付着しているので、前記孔内において十分な空気が供給され、駒孔内に菌糸を容易に繁殖させることができる。
【実施例1】
【0040】
この発明のドリル装置の実施例を図1、2、3、4、5に基づいて説明する。下面へ原木との当接片1a、1aを有する当接枠1、1に案内杆5、5を縦に固定し(図2)、案内管3、3は下部3a、3aを介して基板2に固定し、案内杆5、5に案内管3、3の下部3a、3aを昇降自在に嵌装する。
【0041】
案内管3、3に所定の間隔をおいて、上板9を固定する。中間板4にエアシリンダ6の下端を縦に固定し、エアシリンダ6、6のロッド7は基板2上の取り付け片10に固定する(図1)。
【0042】
エアシリンダ6、6はドリル装置8に固定してあり、エアシリンダ6、6の上部又は下部へ加圧空気を給排することにより、エアシリンダ6は昇降し、これに伴ってドリル装置8も昇降する。図中78、78aは加圧空気給排用のエアパイプである。
【0043】
ドリル装置8は、ドリル8a、外匣8b、ハンドル8c、及びドリル8aに直結した外匣8b内のモータ(非図示)からなる。コード77からの入力によりモータドリルを回転させる。ドリル装置8はその先端部に中間板4を固定してあるので、ドリル装置8と中間板4とは共に昇降する。
【0044】
中間板4の一側下部に固定した取付片38には、カムロール11が軸39により回転自在に架設され、カムロール11はカム板12の一側斜面に当接している(図1)。前記カム板12は枠杆13に固定され、枠杆13の上部は、上板9の一側の軸74へ回転自在に取り付けられている。枠杆13の下部に固定した枠片14に駒押しロッド15の一端を固定する。駒押しロッド15の他端部の押筒15aは、駒送り筒16内に摺動自在に設置されている(図4)。
【0045】
駒送り筒16の一側(図4の右側)に茸菌駒17の保持パイプ18の下端が臨まされ、保持パイプ18の上部は、上板9を貫通して駒を収容した駒漏斗19内を昇降する昇降パイプ20に嵌装されている(図1)。
【0046】
前記押筒15aは、図4(a)中、枠杆13が鎖線図示の位置に後退し、保持パイプ18の下端が開いた時に、保持パイプ18の下端から茸菌駒17が自動落下し、枠杆13が実線図示の位置に前進した時に、茸菌駒17が駒孔上へ到達するような長さにしてある(図4(a))。
【0047】
昇降パイプ20は、ドリル装置8のハンドル8cに連結片21を介して連結されている。従って、前記ハンドル8cを昇降させれば、連結片21を介して昇降パイプ20が駒漏斗19内で昇降するので、昇降パイプ20の上部が駒漏斗19の内口部から中間部辺りまで昇降する。従って、駒漏斗19内の茸菌駒17は、昇降パイプ20の上端から入り、保持パイプ18内へ整然と収容される。
【0048】
保持パイプ18内には、下端から上端まで茸菌駒17が縦に収容されているので、保持パイプ18の下端が開放されると、茸菌駒17は駒送り筒16内へ1つ宛落下する。前記駒送り筒16内には駒押しロッド15が摺動自在に収容されているので、駒押しロッド15が、枠片14の移動により矢示21の方向へ移動し、スプリング22により矢示23の方向へ移動するように、往復運動して駒を押し出すことができる(図4(a))。押筒15aが茸菌駒17を押し出す時には、押筒15aが保持パイプ18の下端を塞ぐので、茸菌駒が落下するおそれはない(図4(a))。
【0049】
基板2の他側(駒送り筒16の反対側)下部に、ハンマー板24の下部を軸30で回転自在に取り付ける。ハンマー板24の一側(図3中軸30の右側)に受圧突起25を設け、受圧突起25は下圧板26の下端と当接する。下圧板26の上端部は中間板4の支持板31へ軸32により回転自在に取り付けてある。また、軸30に取り付けられたスプリング27により、ハンマー板24は図3中矢示28の方向へ回転力を付与している。従って、下圧板26の下圧力(矢示29)とは互いに反対方向へ回転力を付与していることになる。前記下圧板26は、軸32を中心にして、矢示84の方向へ傾動するが、軸32に設置したスプリング85、85により復帰する。
【0050】
前記において、ドリル装置8が矢示33の方向に下降すると、中間板4と共に下圧板26も矢示29のように下降する。従って下圧板26の下端と当接している受圧突起25も同方向へ下圧される。そこで、ハンマー板24は軸30を回転中心として矢示34のように、図3中実線図示の位置から鎖線図示の位置まで回転し、中間板4の下降停止と共に停止する。
【0051】
次に、中間板4が上昇し始めると、ハンマー板24もスプリング27により追随回転して図3中鎖線図示の位置から実線図示の位置に戻り、安定してセットされる。この場合に、ハンマー板24のコ状切り込み部24aに制止板35が掛止するので、ハンマー板24が過度に回転するおそれはない。ハンマー板24の先端突起24bは、茸菌駒17の後部を打撃するので、原木36がある場合には、過度に回転することはないが、原木36がない場合には、過度に回転するおそれがあるので、ハンマー板24を掛止する制止板35を設けた方がよいことになる。
【0052】
ハンマー40はハンマー板24(突片24c、コ状切り込み部24a、突起24bとを含む)と、その軸30とスプリング27とによって構成される。制止板35の一側は、基板2に固定した突板41へ回転自在に軸42で取り付けてあり、制止板35の他側は、引張スプリング43で常時矢示44の方向へ引っ張られている(図5)。
【0053】
制止板35とハンマー板24のコ状切り込み部24aとは、ドリル装置8が下降しているときには常時掛止状態にあるが(図3)、ドリル装置8が上昇し始めて茸菌駒17が駒孔37へ収容されたときには、引張スプリング43が引張杆45により、矢示46のように引き上げられる(図5)。従って、制止板35は、その軸42を中心として矢示47の方向へ回転するので、制止板35とハンマー板24との掛止が外れ、ハンマー板24が図3中矢示28のように回転し、ハンマー板24の突起24bが茸菌駒17の後部を打撃することになる。
【0054】
前記におけるドリル装置8のドリルの退避と、茸菌駒17の挿入と、茸菌駒17への打撃とはタイミングよく順次行わなければならないので、引張杆45の引き上げ開始長さをねじ48の位置で調節する。即ち、引張杆45に遊嵌した筒体49は、中間板4と共に矢示46の方向へ上昇するが、引張杆45は、スプリング43によってそのままの位置に停止している。ついで筒体49の上部がねじ48の下部に達すると、筒体49の上昇と共に、ねじ48も上昇し、ねじ48を介して引張杆45が引張スプリング43に抗して上昇することになる。
【0055】
このようにして、引張杆45が上昇し、制止板35を図5中矢示47のように回転させて、制止板35がハンマー板24から外れると、ハンマー板24はスプリング27の弾力により矢示28の方向へ回転し、茸菌駒17を打撃することになる。
【0056】
前記のように、中間板4の上昇(ドリル装置8も同時)度合に応じてハンマー板24を作動させるのは、ドリル装置8の退避と、茸菌駒17の挿入直後とのタイミングを考慮するものであり、ハンマー板24によるトラブルを避けるためである。ハンマー板24の打撃が遅きに失すると、茸菌駒17のセット効率が悪くなり、早きに失すると、茸菌駒17の挿入終了前、或いはドリルとの接触事故が生じる可能性があるので、ねじ48の高さ調節は慎重に行わなければならない。
【0057】
前記のように、ドリル装置8を設置した中間板4の昇降によって、ドリルによる穿孔、茸菌駒17の送りと挿入及びハンマー板24による茸菌駒17への打撃の一連の作業が行われ、茸菌駒17を原木36の駒孔37へ自動的にセットすることができる。
【0058】
前記当接枠1に案内杆5を植設し、案内杆5を基板2に固定した案内管3の下部3aへ摺動自在に挿入する。基板2と当接枠1の水平部との間に、掛止ボルト79を挿通し、ナット81により基板2と当接枠1との離接長さを制限している。案内杆5の先端は、案内管3内に収容したスプリング82の座金83に当接してある。そこで、基板2と当接枠1とは、掛止ボルト79の長さの制限内で自由に離接(昇降)することができる(図4)。
【実施例2】
【0059】
この発明の原木支持装置の実施例を図7、8に基づいて説明する。駒セット装置50の支持板51の前面下部に、原木の両端部を支持する支持輪52、52と支持輪53、53とを所定間隔で並列架設し、夫々軸54、55で連結する。一方の軸54にラチェットギア56を固着し、足踏み作動する梃子杆57に取り付けた送り片58を掛脱自在に掛止させてある。
【0060】
送り片58の先端側は、ラチェットギア56の歯と掛止し、基端側は梃子杆57へ回転自在に軸止されている。梃子杆57の先端部に取り付けた送り片58は、ラチェットギア56の歯とスプリング59とによって弾性的に掛止されている。そこで、梃子杆57の基端側57aを踏み、矢示60のように下降させると、梃子杆57は取付軸61を中心にして矢示62のように回動する。ついで、送り片58は矢示63のように上昇し、送り片58の先端部に掛止したラチェットギア56は送り片58の上昇に見合う分だけ矢示64の方向へ回転する。従って、ラチェットギア56と同軸に固定した支持輪53、53が矢示65の方向へ回転し、この回転により原木36が矢示66の方向へ回転するので、支持輪52が矢示67の方向へ回転する。
【0061】
前記における梃子杆57の端部57aの下降量を楔片70により調節し、これにより原木の回転量を穿孔間隔に合致させれば、梃子杆57を踏む毎に原木の穿孔位置を隣接穿孔位置に移すことができる。そこで、原木の直径が変化する毎に、楔片70の位置を矢示71又は72の方向に摺動させることにより、茸菌駒17の穴を原木36の外周へ等間隔にあけ、この穴に茸菌駒17をセットすることができる。図中73は梃子杆57の復帰スプリングである。
【0062】
前記実施例においては、茸菌駒17のセット装置50を複数台設置(例えば原木の長手方向の駒セット位置に並列)すれば、原木36の複数の周方向へ茸菌駒17を同時にセットすることができる。前記実施例はセット装置50を5台セットし、一本の原木へ同時に5箇所茸菌駒をセットできるようにしたものである。この場合に、原木は同じ位置で回転するのみで、所定の位置へ茸菌駒をセットすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 当接枠
2 基板
3 案内管
4 中間板
5 案内杆
6 エアシリンダ
8 ドリル装置
9 上板
12 カム板
15 駒押しロッド
16 駒送り筒
17 茸菌駒
18 保持パイプ
19 駒漏斗
24 ハンマー板
26 下圧板
36 原木
40 ハンマー
45 引張杆
48 ねじ
49 筒体
51 支持板
52、53 支持輪
57 梃子杆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルの下降に伴って原木の所定位置へ穿孔し、茸菌駒を挿入位置の近辺に待機させると共に、茸菌駒をセットするハンマーを打撃準備位置に持ち上げ、前記ドリルの上昇に伴って茸菌駒を移動させて、前記穿孔による駒孔内へ挿入させ、ついでハンマーで前記茸菌駒の頭部を叩いて茸菌駒を駒孔へセットすることを特徴とした茸菌駒のセット方法。
【請求項2】
原木の全長に亘って、茸菌駒のセット装置を所定間隔で配置し、各セット装置のドリルの下降に伴って、原木の所定位置へ穿孔し、茸菌駒を挿入位置の近辺に待機させると共に、茸菌駒をセットするハンマーを打撃準備位置に持ち上げ、前記ドリルの上昇に伴って茸菌駒を移動させて、前記穿孔による駒孔内へ挿入させ、ついでハンマーで前記茸菌駒の頭部を叩いて茸菌駒を駒孔へセットすることを特徴とした茸菌駒のセット方法。
【請求項3】
ドリルの下降に伴って原木の所定位置へ穿孔し、茸菌駒を挿入位置の近辺に待機させると共に、茸菌駒をセットするハンマーを打撃準備位置に持ち上げ、前記ドリルの上昇に伴って茸菌駒を移動させて、前記穿孔による駒孔内へ挿入させ、ついでハンマーで前記茸菌駒の頭部を叩いて茸菌駒を駒孔へセットし、ついで、原木を一定角度回転して、前記と同様に茸菌駒をセットすることを特徴とした請求項1又は2記載の茸菌駒のセット方法。
【請求項4】
ドリルの下降に伴って、原木の所定位置へ穿孔し、茸菌駒を挿入位置の近辺に待機させると共に、茸菌駒をセットするハンマーを打撃準備位置に持ち上げ、前記ドリルの上昇に伴って茸菌駒を移動させて、前記穿孔による駒孔内へ挿入させ、ついでハンマーで前記茸菌駒の頭部を叩いて茸菌駒を駒孔へセットし、ついで、原木を一定角度回転して、前記と同様に茸菌駒をセットして、原木の周方向における茸菌駒のセット完了後、前記茸菌駒のセット位置を長手方向に所定長さだけ移動して、前記原木の周囲に茸菌駒をセットし、前記セットを繰り返して原木の周方向と長さ方向の全長に亘って茸菌駒をセットすることを特徴とした請求項1記載の茸菌駒のセット方法。
【請求項5】
茸菌駒は保持パイプに縦列収容され、前記保持パイプの昇降によって漏斗容器内の茸菌駒が前記保持パイプの上端から保持パイプ内へ自動的に収容されることを特徴とした請求項1記載の茸菌駒のセット方法。
【請求項6】
ドリル装置は、縦に設置したエアシリンダに固定され、該エアシリンダの上側内又は下側内への加圧空気を給排することによりエアシリンダと共に昇降することを特徴とした請求項1又は2記載の茸菌駒のセット方法。
【請求項7】
茸菌駒の打撃は、ドリルの上昇時にハンマーを回転し、該ハンマーの先端側で茸菌駒の頭部を打撃することを特徴とした請求項1又は2記載の茸菌駒のセット方法。
【請求項8】
原木上へ載置する枠体上へ基板を固定し、該基板に支柱と支持板よりなる構造体に、穿孔用ドリル装置と、茸菌駒の送り装置と、茸菌駒の打撃装置とを組み合わせてセットとしたことを特徴する請求項1記載の方法を実施する茸菌駒のセット装置。
【請求項9】
ドリル装置は、下部に、茸菌駒の駒孔を穿孔するドリルを有し、支柱の支板に縦に固定し、空気の給排により昇降する空気圧シリンダーに固定したことを特徴とする請求項8記載の茸菌駒のセット装置。
【請求項10】
茸菌駒の送り装置は、茸菌駒の送り管と、該送り管の下端に横設した茸菌駒の横移送装置とよりなり、茸菌駒を1つ宛送り出すようにしたことを特徴とした請求項8記載の茸菌駒のセット装置。
【請求項11】
茸菌駒の打撃装置は、基板上へ、ハンマー板を横軸で回転自在に架設し、前記ハンマー板の先端は、ドリルにより設けた穿孔に収容された茸菌駒の上部を打撃すべくセットされ、前記横軸に装着したスプリングにより付勢され、ドリル装置の下降によりハンマーを予備位置に待機させ、ロックを外すことによりハンマー板を回転させて打撃することを特徴とした請求項8記載の茸菌駒のセット装置。
【請求項12】
茸菌駒を収容した漏斗容器の中心部に茸菌駒の保持パイプを貫通し、ドリル装置の昇降に伴って前記保持パイプを昇降させて、漏斗容器内の茸菌駒を保持パイプに収容することを特徴とした請求項8記載の茸菌駒のセット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−175909(P2012−175909A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39766(P2011−39766)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(508264117)
【Fターム(参考)】