荷保管用ラックの荷支持装置
【課題】荷収納区画１の左右両隔壁枠２の内側に荷出し入れ方向に長い左右一対の荷受け部材３が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に免震構造を採用して耐震性を高める。
【解決手段】荷受け部材３の下側には、左右両隔壁枠から連設された支持部材７が配置され、この支持部材７と荷受け部材３との間には、当該荷受け部材３を少なくともその長さ方向の一定範囲内でスライド可能に支持する支持手段９と、当該荷受け部材３をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段１１とが配設され、この付勢手段１１は、支持部材７から上向きに突設された下側バネ受け部材１３と荷受け部材３から下向きに突設された上側バネ受け部材２２、及び上下両バネ受け部材２３，２５に上下両端を嵌合させたコイルバネ２６とから成る少なくとも１つの付勢ユニット１２Ａ、１２Ｂを備えた構成。
【解決手段】荷受け部材３の下側には、左右両隔壁枠から連設された支持部材７が配置され、この支持部材７と荷受け部材３との間には、当該荷受け部材３を少なくともその長さ方向の一定範囲内でスライド可能に支持する支持手段９と、当該荷受け部材３をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段１１とが配設され、この付勢手段１１は、支持部材７から上向きに突設された下側バネ受け部材１３と荷受け部材３から下向きに突設された上側バネ受け部材２２、及び上下両バネ受け部材２３，２５に上下両端を嵌合させたコイルバネ２６とから成る少なくとも１つの付勢ユニット１２Ａ、１２Ｂを備えた構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
この種の荷保管用ラックにおいて、地震時にラックが荷収納区画の前後奥行き方向（荷出し入れ方向）に揺れることによって、保管中の荷が当該ラックの通路側（ラックに沿って設けられた入出庫用クレーンの走行通路のある側）へ荷受け部材上を滑動して落下する事故が発生している。このような事故を未然に防止する一つの手段として、各荷収納区画が備える左右一対の荷受け部材を免震構造とすることが考えられている。例えば特許文献１に記載されるように、この種の荷保管用ラックの荷支持装置における免震構造は、荷収納区画の左右両隔壁枠から連設された支持部材に対して各荷受け部材をその長さ方向（荷収納区画の前後奥行き方向）にスライド可能に支持し、荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段として、支持部材の横側方に荷受け部材長さ方向と平行向きのコイルバネを設けるものであった。即ち、支持部材に対して荷受け部材を後方（通路のある側とは反対側）へ押圧付勢するコイルバネと、支持部材に対して荷受け部材を前方（通路のある側）へ押圧付勢するコイルバネとを直列に配設し、両コイルバネの押圧付勢力で荷受け部材を前後奥行き方向の中間定位置に保持する構成であった。
【特許文献１】特許第３７２９３１６号公報（特開２０００−２２６１１１号公報）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
特許文献１に記載された従来の構成における付勢手段では、１つの付勢ユニットを構成する部品として、２つのコイルバネと、これら両コイルバネの外端部を支持部材で受ける２つの外側バネ受け座と、両コイルバネの内端部を荷受け部材側で受ける１つの内側バネ受け座と、水平に直列する２つのコイルバネを支持する長いボルトナットとが必要であって、部品点数が多く、コスト高になるばかりでなく、付勢ユニットが荷受け部材や支持部材の横側方に露出するので、荷支持装置全体の平面視における占有スペースが大きくなるばかりでなく、塵埃の付着や他物との接触による不都合も考えられる。
【課題を解決するための手段】
【０００４】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る荷保管用ラックの荷支持装置を提供することを目的とするものであって、請求項１に記載の荷支持装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、荷収納区画１の左右両隔壁枠２の内側に、当該荷収納区画１の前後奥行き方向（Ｘ方向）に長い左右一対の荷受け部材３が水平に架設され、この荷受け部材３の下側には、前記左右両隔壁枠２から連設された支持部材７が配置され、この支持部材７と荷受け部材３との間には、当該荷受け部材３を水平二次元方向一定範囲内でスライド可能に支持する支持手段９と、当該荷受け部材３をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段１１とが配設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記付勢手段１１は、前記荷受け部材３の長さ方向の少なくとも２箇所に配設された付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂを備え、各付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂは、前記支持部材７と荷受け部材３との内の一方の部材から他方の部材側に向かって突設された中心バネ受け部材１３と、この中心バネ受け部材１３を取り囲むように前記他方の部材から前記一方の部材側に向かって突設された外側バネ受け部材２２と、これら中心バネ受け部材１３と外側バネ受け部材２２との間に渦巻き状コイルバネ１５が介装される構成となっている。
【０００５】
上記の本発明に係る荷保管用ラックの荷支持装置を実施する場合、請求項２に記載のように、前記中心バネ受け部材１３は、前記支持部材７から上向きに突設し、前記外側バネ受け部材２２は、前記中心バネ受け部材１３に被せた倒立有底円筒体１４の周壁で構成すると共に、当該倒立有底円筒体１４の上端天板部２１を前記荷受け部材３の下側に固着することができる。この場合、請求項３に記載のように、前記中心バネ受け部材１３の上端には、前記倒立有底円筒体１４の上端天板部２１の下側被支持面２４ａをスライド可能に支持する水平支持面１９ａを形成し、この中心バネ受け部材１３と前記倒立有底円筒体１４とで前記支持手段９を構成することができる。更にこの場合、請求項４に記載のように、前記倒立有底円筒体１４は、前記荷受け部材３の巾よりも大きな外径を有するものとし、この倒立有底円筒体１４を前記荷受け部材３に設けられた切欠き部２５に下側から嵌合した状態で当該荷受け部材３に固着することができる。
【０００６】
又、請求項５に記載のように、前記中心バネ受け部材１３と外側バネ受け部材２２との内、少なくとも一方には、前記渦巻き状コイルバネ１５が入り込む凹溝部１３ａ，２２ａを形成することができる。
【０００７】
前記渦巻き状コイルバネとしては、請求項６に記載のように、水平二次元平面上で線状鋼材を渦巻き状に巻回させて成る渦巻き状コイルバネ１５の他、請求項７に記載のように、水平二次元平面上で帯状鋼材を渦巻き状に巻回させて成る渦巻き状コイルバネ２６や、請求項８に記載のように、円錐面に沿って線状鋼材を渦巻き状に巻回させた、側面視が台形状の渦巻き状コイルバネ２７などが利用できる。
【発明の効果】
【０００８】
本発明に係る荷保管用ラックの荷支持装置によれば、ラックが地震発生時に荷収納区画の前後奥行き方向（荷受け部材の長さ方向）に揺れ動いたとき、ラックと一体に前後に揺れ動く支持部材と荷を支持している荷受け部材との間に付勢手段の付勢力に抗しての相対移動が生じ、荷を支持している荷受け部材がラックと一体に同一速度、同一振幅で前後方向に揺れ動くことがなくなる。従って、開放された通路側（前方）にラックが揺れ動いたときに荷受け部材及び当該荷受け部材上の荷が一体に前方に揺れ動くことにより、慣性で荷が荷受け部材上を通路側へ滑動し、場合によっては通路側へ落下してしまう恐れがなくなり、所期の免震効果が得られる。この支持部材と荷受け部材との間の前後方向の相対移動は、付勢手段を構成する付勢ユニットの渦巻き状コイルバネの中心部と外周部とを弾性に抗して水平二次元方向に相対移動させることで実現しており、相対移動後は当該渦巻き状コイルバネが、その中心部と外周部とが同心状態に弾性復帰することにより、荷受け部材は支持部材上の原点位置に自動復帰するので、荷受け部材上で荷が滑動しない限り荷の位置が前後方向に不測に変動することはなく、安全に荷を継続保管することができる。
【０００９】
而して、上記請求項１に記載の本発明の構成によれば、荷収納区画の左右両隔壁枠から連設された支持部材とこの上に位置する荷受け部材との間に、当該荷受け部材の支持手段と当該荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段とが配設されているので、従来のように平面視において荷受け部材の横側方にコイルバネなどの付勢手段が突出する場合と比較して、荷支持装置全体の平面視における占有スペースが従来の免震構造を持たない荷支持装置と同程度に小さくなり、ラック全体の収納効率を高めるのに役立つ。
【００１０】
又、付勢手段を構成する付勢ユニットも、支持部材と荷受け部材との内の一方の部材から他方の部材側に向かって突設された中心バネ受け部材と、この中心バネ受け部材を取り囲むように前記他方の部材から前記一方の部材側に向かって突設された外側バネ受け部材と、これら中心バネ受け部材と外側バネ受け部材との間に介装された渦巻き状コイルバネとから構成され、支持部材に対する荷受け部材の水平方向の相対移動時に前記渦巻き状コイルバネの中心部と外周部とを弾性に抗して水平二次元方向に相対移動させ、その反力で支持部材に対し荷受け部材を原点位置に復帰させる方式のものとしたので、水平方向３６０度あらゆる方向に対して免震効果を発揮させることができる。又、荷の重量に応じて渦巻き状コイルバネの線径などを大きくし、大きな原点復帰力（センタリング力）、延いては迅速な原点復帰を実現させることができるにもかかわらず、使用部品としては渦巻き状コイルバネと内外一対のバネ受け部材だけで済み、部品点数が少なく安価に構成することができると共に、支持部材と荷受け部材との間の狭い上下空間内にも無理なく配設することができる。換言すれば、上記のような方式の付勢手段としたため、支持部材と荷受け部材との間の限られた空間内を利用して付勢手段を構成することができるに至ったのである。
【００１１】
尚、請求項２に記載の構成によれば、支持部材と荷受け部材との間に介装される渦巻き状コイルバネが荷受け部材下側に取り付けられた倒立有底円筒体で上側からカバーされて保護されるので、荷受け部材の巾が渦巻き状コイルバネの外径より小さくて、荷受け部材から渦巻き状コイルバネが張り出すような状況でも、当該渦巻き状コイルバネに他物が接触したり、塵埃が付着することがなくなる。従って、荷受け部材や外側バネ受け部材を互いに制約されることなくそれぞれに好適なサイズに構成できる。
【００１２】
この場合、請求項３に記載の構成によれば、付勢ユニットを構成する中心バネ受け部材と前記倒立有底円筒体、換言すれば、支持部材と荷受け部材との間に渦巻き状コイルバネを介装するために必要な中心バネ受け部材と前記倒立有底円筒体とで、荷受け部材を水平二次元方向にスライド可能に支持するための支持手段を兼用させることができるので、この付勢ユニットとは別に支持手段を独立して構成しなければならない場合と比較して、荷支持装置全体の部品点数を大巾に減らし、荷支持装置をコンパクトに且つ安価に構成できる。更に、請求項４に記載の構成によれば、荷受け部材の巾よりも十分に大きな外径を有する渦巻き状コイルバネを利用することができ、しかも支持部材の上面から荷受け部材の上面までの高さを低く抑えることができ、荷支持装置全体をコンパクトの構成できる。
【００１３】
又、請求項５に記載の構成によれば、渦巻き状コイルバネの両端を中心バネ受け部材と外側バネ受け部材とに固定しなくとも、渦巻き状コイルバネを所定位置に保持することができるだけでなく、中心バネ受け部材と外側バネ受け部材との間の水平二次元方向の相対移動領域が渦巻き状コイルバネの圧縮側によって制約されるのを抑制でき、荷受け部材の水平二次元方向の許容変位量を大きくするのに役立つ。
【００１４】
渦巻き状コイルバネとしては、請求項６に記載の線状鋼材を使用したものや、請求項７に記載の帯状鋼材を使用したものなどが利用できるが、特に請求項８に記載のように、円錐面に沿って渦巻き状に巻回する線状鋼材から成る、側面視が台形状の渦巻き状コイルバネを利用するときは、請求項５に記載の構成を採用した場合と同様に、中心バネ受け部材と外側バネ受け部材との間の水平二次元方向の相対移動領域が渦巻き状コイルバネの圧縮側によって制約されるのを抑制でき、荷受け部材の水平二次元方向の許容変位量を大きくすることができるにもかかわらず、外側バネ受け部材を肉厚大径にする必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
図１は本発明の荷支持装置が適用できるラックの基本的な構成を示しており、１は上下左右両方向に碁盤目状に配置された荷収納区画であって、左右横方向に隣接する荷収納区画１間には垂直に隔壁枠２が立設され、上下に隣接する荷収納区画１は、左右一対の荷受け部材３によって区切られている。
【００１６】
各隔壁枠２は、前後一対の支柱材４ａ，４ｂを連結部材５によって互いに連結したラチス構造のものであって、荷収納区画１の背面側では、各隔壁枠２の後側支柱材４ｂが水平や斜めの連結部材６で連結され、荷収納区画１の正面側、即ち、荷収納区画１に対して荷の出し入れを行う入出庫用クレーンの走行通路側では、荷収納区画１に対する荷の出し入れに邪魔にならないレベルで水平連結材（図示省略）により各隔壁枠２の前側支柱材４ａどうしが連結されることが知られている。左右一対の荷受け部材３は、荷収納区画１に対する荷の出し入れ方向、即ち、荷収納区画１の前後奥行き方向（Ｘ方向）に長い棒状のもので、その前後両端部が、外側に隣接する隔壁枠２の前後両支柱材４ａ，４ｂに取り付けられた前後一対の支持部材７に支持される。
【００１７】
以下、本発明の一実施形態を図２〜図６に基づいて具体的に説明すると、各荷受け部材３は、下側開放の門形材８から成り、この各荷受け部材３の前後両端部とこれらの下側に延出している前記支持部材７の遊端部との間に、支持手段９を構成する前後一対の支持ユニット１０Ａ，１０Ｂと、付勢手段１１を構成する前後一対の付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂとが配設されている。付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂは同一構造のもので、支持部材７の上面に突設された中心バネ受け部材１３と、この中心バネ受け部材１３に対して上側から被さる倒立有底円筒体１４、及び渦巻き状コイルバネ１５から構成されている。
【００１８】
中心バネ受け部材１３は、支持部材７の上面に複数本の取付けボルト１６で取り付けられ且つ上端円周角部に切欠き段部１７ａ（図６参照）を備えた円柱体１７と、この円柱体１７の上端に重ねられ且つ前記円柱体１７と同一径の円形押さえ板１８と、この円形押さえ板１８の上に重ねられ且つ前記円柱体１７と同一径の円形スライド板１９と、この円形スライド板１９と円形押さえ板１８とを円柱体１７に固定する複数本の取付けネジ２０とから構成されている。この取付けネジ２０の頭部上面は、円形スライド板１９の上面と面一か又は若干窪んでいるように構成されている。而して、円柱体１７の上端円周角部に形成された切欠き段部１７ａと円形押さえ板１８との周辺部とによって、この中心バネ受け部材１３の円柱面に環状の凹溝部１３ａが形成されている。
【００１９】
倒立有底円筒体１４は、荷受け部材３の下側に固着される天板部２１の周縁から下向きに一体に連設された環状周壁で円筒状の外側バネ受け部材２２を構成するもので、天板部２１の下側に複数本の取付けネジ２３で取り付けた円形スライド板２４で構成した被支持面２４ａを中心バネ受け部材１３の上端、即ち、円形スライド板１９で構成した水平支持面１９ａに載置したとき、当該中心バネ受け部材１３の凹溝部１３ａと同一レベルになる位置において、外側バネ受け部材２２の内周面に環状の凹溝部２２ａが形成されている。この倒立有底円筒体１４は、図３及び図４に示すように、荷受け部材３の長さ方向の両端部において下側開放の門形材８の両側垂直板部８ａ，８ｂに形成した切欠き部２５に、平面視において当該倒立有底円筒体１４の天板部２１が門形材８の左右両側辺と端辺とから突出するように嵌合させた状態で、溶接により天板部２１を門形材８に固着している。
【００２０】
渦巻き状コイルバネ１５は、水平二次元平面上で線状鋼材を渦巻き状に巻回して成るもので、その内端側Ｃ字状部分１５ａを中心バネ受け部材１３の凹溝部１３ａに嵌合させた状態で弾性に抗して縮径させ、その外端側Ｃ字状部分１５ｂを外側バネ受け部材２２の凹溝部２２ａに嵌合させている。具体的には、中心バネ受け部材１３を構成する円形押さえ板１８と円形スライド板１９とを円柱体１７に取り付ける前に、当該円柱体１７の上端円周角部の切欠き段部１７ａに渦巻き状コイルバネ１５の内端側Ｃ字状部分１５ａを上から嵌合させ、この後、円形押さえ板１８と円形スライド板１９とを円柱体１７の上端に取付けネジ２０により取り付けることができる。
【００２１】
支持ユニット１０Ａ，１０Ｂは、付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂにおける支持部材７側の中心バネ受け部材１３（上端円形スライド板１９の水平支持面１９ａ）と荷受け部材３側の倒立有底円筒体１４（円形スライド板２４の下側被支持面２４ａ）とで構成されている。
【００２２】
上記構成の支持ユニット１０Ａ，１０Ｂ及び付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂによって支持部材７に支持された荷受け部材３は、支持部材７側の中心バネ受け部材１３の上端水平支持面１９ａ（円形スライド板１９の上側面）で荷受け部材３側の倒立有底円筒体１４の下側被支持面２４ａ（円形スライド板２４の下側面）が支持されているため、倒立有底円筒体１４の周壁（外側バネ受け部材２２）の内側領域内、具体的には、図５に示すように渦巻き状コイルバネ１５が中心バネ受け部材１３と外側バネ受け部材２２との間で水平方向に圧縮されて互いに密着するか又は、外側バネ受け部材２２が中心バネ受け部材１３に当接するまでの範囲内で、一定レベルの水平二次元方向に３６０度如何なる方向にもスライド可能である。又、渦巻き状コイルバネ１５は、弾性に抗して縮径された状態で中心バネ受け部材１３と外側バネ受け部材２２との間に介装されているから、その反力で荷受け部材３の位置が、外側バネ受け部材２２が中心バネ受け部材１３に対し同心状になる位置に保持される。
【００２３】
上記のように支持された左右一対の荷受け部材３上に荷が跨がって載置されたとき、荷重は、前後２つの支持ユニット１０Ａ，１０Ｂにおける倒立有底円筒体１４の天板部２１と中心バネ受け部材１３とを介して支持部材７に受け止められる。係る状態で、渦巻き状コイルバネ１５を水平方向に変形させることができるだけの強さの水平向きの外力が荷受け部材３と支持部材７との間に相対的に作用すると、荷受け部材３と支持部材７とは、図５に示すように渦巻き状コイルバネ１５が中心バネ受け部材１３と外側バネ受け部材２２との間で水平方向に圧縮されて互いに密着するか又は、外側バネ受け部材２２が中心バネ受け部材１３に当接するまでの範囲内で、中心バネ受け部材１３の上端水平支持面１９ａ（円形スライド板１９の上側面）と倒立有底円筒体１４の下側被支持面２４ａ（円形スライド板２４の下側面）との間の相対滑動を伴って、渦巻き状コイルバネ１５を水平方向に変形させながら水平に相対移動することができる。
【００２４】
従って、地震などによりラックが荷収納区画１の前後奥行き方向（Ｘ方向）に揺れ動いたとき、荷を支持している荷受け部材３に対し、ラックと一体の支持部材７が付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂの渦巻き状コイルバネ１５の弾性に抗して同方向に揺動し、荷を支持している荷受け部材３と支持部材７との間で相対移動が生じ、荷受け部材３上の荷は殆ど揺れ動かないか又は、支持部材７の揺れよりも遅れて小さな振幅で揺れ動くことになり、揺れの速度や振幅が想定範囲内であれば所期の免震効果が得られる。勿論、付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂの渦巻き状コイルバネ１５は、常に弾性復帰力で内端側Ｃ字状部分１５ａと外端側Ｃ字状部分１５ｂとが略同心状態になるように自動復帰しようとするので、ラックの揺れが収まったときには、当該渦巻き状コイルバネ１５の弾性復帰力で荷受け部材３は所期の定位置に自動的に戻される。このとき渦巻き状コイルバネ１５の弾性復帰力は、荷が搭載されている荷受け部材３を、支持ユニット１０Ａ，１０Ｂの水平支持面１９ａと被支持面２４ａとの間の摩擦力に抗して原点復帰させることになるので、支持ユニット１０Ａ，１０Ｂの水平支持面１９ａと被支持面２４ａとの間の摩擦力はできる限り小さくなるように構成しなければならない。このため、水平支持面１９ａや被支持面２４ａは、中心バネ受け部材１３（円形押さえ板１８）や倒立有底円筒体１４とは別の摩擦抵抗の少ない材質から成る別部材の円形スライド板１９や円形スライド板２４で構成するのが望ましい。
【００２５】
尚、上記実施形態では、支持部材７を支持している隔壁枠２の前後一対の支柱材４ａ，４ｂは横断面形状が開放断面であって、図２Ｃに示すように、支持部材７を取り付けている支柱材４ａ，４ｂの横向きに突出する横断面角形の側壁板部４ｃが内外水平方向に弾性変形できるものであるから、この支柱材４ａ，４ｂの横断面角形の側壁板部４ｃの内外水平方向の弾性変形を伴う方向であれば、支持部材７と隔壁枠２との間の水平方向の相対移動がある程度許容されている。従って、地震などによるラック（隔壁枠２）の揺れ方向によっては、支持部材７と荷受け部材３との間の水平方向相対移動に加えて、支持部材７と隔壁枠２との間の水平方向の相対移動が、荷受け部材３で支持されている荷に対する免震効果を高めることにもなる。図２Ｃにおいて、７ａは支持部材７の内端に付設した取付け板であって、この取付け板７ａが支柱材４ａ，４ｂの横向きに突出する横断面角形の側壁板部４ｃに外嵌する状態で、結合ピン７ｂにより当該支柱材４ａ，４ｂに係止される。
【００２６】
渦巻き状コイルバネは、図７に示すように、水平二次元平面上で帯状鋼材を渦巻き状に巻回させて成る渦巻き状コイルバネ２６であっても良いし、図８に示すように、円錐面に沿って線状鋼材を渦巻き状に巻回させて成る、側面視が台形状の渦巻き状コイルバネ２７であっても良い。又、中心バネ受け部材１３を荷受け部材３側から下向きに突設し、外側バネ受け部材２２を支持部材７側に設けることもできる。この場合、倒立有底円筒体１４を支持部材７上に正立状態に付設し、その天板部（底板部）２１の上側に付設された円形スライド板２４の上面を支持部材７側の水平支持面とし、中心バネ受け部材１３の下端に付設した円形スライド板１９の下側面を荷受け部材３側の被支持面とすることができる。更に、左右一対の荷受け部材３は、入出庫用クレーンの荷移載用フォークなどによる荷の出し入れに影響しない箇所、例えば荷受け部材３の後端部や、前記荷移載用フォークの出退空間より下側で、荷受け部材３どうしを連結部材で互いに連結することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】Ａ図は荷保管用ラックの基本構成を説明する要部の横断平面図、Ｂ図は同要部の正面図である。
【図２】Ａ図は荷支持装置を示す平面図、Ｂ図は同正面図、Ｃ図はＡ図のＣ部拡大図である。
【図３】荷支持装置の片側を示す一部切欠き平面図である。
【図４】図３のＸ−Ｘ線断面図である。
【図５】図３のＹ−Ｙ線断面図を、荷受け部材が一側方に変位した状態で示す図である。
【図６】１つの支持ユニット及び付勢ユニットを示す一部切欠き分解斜視図である。
【図７】付勢ユニットの変形例を示す縦断側面図である。
【図８】付勢ユニットの他の変形例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【００２８】
１ 荷収納区画
２ 隔壁枠
３ 荷受け部材
４ａ，４ｂ 支柱材
５，６ 連結部材
７ 支持部材
８ 門形材
９ 支持手段
１０Ａ，１０Ｂ 支持ユニット
１１ 付勢手段
１２Ａ，１２Ｂ 付勢ユニット
１３ 中心バネ受け部材
１３ａ，２２ａ 凹溝部
１４ 倒立有底円筒体
１５，２６，２７ 渦巻き状コイルバネ
１７ 円柱体（中心バネ受け部材）
１８ 円形押さえ板
１９ 円形スライド板（中心バネ受け部材）
１９ａ 水平支持面
２１ 天板部
２２ 外側バネ受け部材
２４ 円形スライド板
２４ａ 被支持面
２５ 切欠き部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
この種の荷保管用ラックにおいて、地震時にラックが荷収納区画の前後奥行き方向（荷出し入れ方向）に揺れることによって、保管中の荷が当該ラックの通路側（ラックに沿って設けられた入出庫用クレーンの走行通路のある側）へ荷受け部材上を滑動して落下する事故が発生している。このような事故を未然に防止する一つの手段として、各荷収納区画が備える左右一対の荷受け部材を免震構造とすることが考えられている。例えば特許文献１に記載されるように、この種の荷保管用ラックの荷支持装置における免震構造は、荷収納区画の左右両隔壁枠から連設された支持部材に対して各荷受け部材をその長さ方向（荷収納区画の前後奥行き方向）にスライド可能に支持し、荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段として、支持部材の横側方に荷受け部材長さ方向と平行向きのコイルバネを設けるものであった。即ち、支持部材に対して荷受け部材を後方（通路のある側とは反対側）へ押圧付勢するコイルバネと、支持部材に対して荷受け部材を前方（通路のある側）へ押圧付勢するコイルバネとを直列に配設し、両コイルバネの押圧付勢力で荷受け部材を前後奥行き方向の中間定位置に保持する構成であった。
【特許文献１】特許第３７２９３１６号公報（特開２０００−２２６１１１号公報）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
特許文献１に記載された従来の構成における付勢手段では、１つの付勢ユニットを構成する部品として、２つのコイルバネと、これら両コイルバネの外端部を支持部材で受ける２つの外側バネ受け座と、両コイルバネの内端部を荷受け部材側で受ける１つの内側バネ受け座と、水平に直列する２つのコイルバネを支持する長いボルトナットとが必要であって、部品点数が多く、コスト高になるばかりでなく、付勢ユニットが荷受け部材や支持部材の横側方に露出するので、荷支持装置全体の平面視における占有スペースが大きくなるばかりでなく、塵埃の付着や他物との接触による不都合も考えられる。
【課題を解決するための手段】
【０００４】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る荷保管用ラックの荷支持装置を提供することを目的とするものであって、請求項１に記載の荷支持装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、荷収納区画１の左右両隔壁枠２の内側に、当該荷収納区画１の前後奥行き方向（Ｘ方向）に長い左右一対の荷受け部材３が水平に架設され、この荷受け部材３の下側には、前記左右両隔壁枠２から連設された支持部材７が配置され、この支持部材７と荷受け部材３との間には、当該荷受け部材３を水平二次元方向一定範囲内でスライド可能に支持する支持手段９と、当該荷受け部材３をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段１１とが配設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記付勢手段１１は、前記荷受け部材３の長さ方向の少なくとも２箇所に配設された付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂを備え、各付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂは、前記支持部材７と荷受け部材３との内の一方の部材から他方の部材側に向かって突設された中心バネ受け部材１３と、この中心バネ受け部材１３を取り囲むように前記他方の部材から前記一方の部材側に向かって突設された外側バネ受け部材２２と、これら中心バネ受け部材１３と外側バネ受け部材２２との間に渦巻き状コイルバネ１５が介装される構成となっている。
【０００５】
上記の本発明に係る荷保管用ラックの荷支持装置を実施する場合、請求項２に記載のように、前記中心バネ受け部材１３は、前記支持部材７から上向きに突設し、前記外側バネ受け部材２２は、前記中心バネ受け部材１３に被せた倒立有底円筒体１４の周壁で構成すると共に、当該倒立有底円筒体１４の上端天板部２１を前記荷受け部材３の下側に固着することができる。この場合、請求項３に記載のように、前記中心バネ受け部材１３の上端には、前記倒立有底円筒体１４の上端天板部２１の下側被支持面２４ａをスライド可能に支持する水平支持面１９ａを形成し、この中心バネ受け部材１３と前記倒立有底円筒体１４とで前記支持手段９を構成することができる。更にこの場合、請求項４に記載のように、前記倒立有底円筒体１４は、前記荷受け部材３の巾よりも大きな外径を有するものとし、この倒立有底円筒体１４を前記荷受け部材３に設けられた切欠き部２５に下側から嵌合した状態で当該荷受け部材３に固着することができる。
【０００６】
又、請求項５に記載のように、前記中心バネ受け部材１３と外側バネ受け部材２２との内、少なくとも一方には、前記渦巻き状コイルバネ１５が入り込む凹溝部１３ａ，２２ａを形成することができる。
【０００７】
前記渦巻き状コイルバネとしては、請求項６に記載のように、水平二次元平面上で線状鋼材を渦巻き状に巻回させて成る渦巻き状コイルバネ１５の他、請求項７に記載のように、水平二次元平面上で帯状鋼材を渦巻き状に巻回させて成る渦巻き状コイルバネ２６や、請求項８に記載のように、円錐面に沿って線状鋼材を渦巻き状に巻回させた、側面視が台形状の渦巻き状コイルバネ２７などが利用できる。
【発明の効果】
【０００８】
本発明に係る荷保管用ラックの荷支持装置によれば、ラックが地震発生時に荷収納区画の前後奥行き方向（荷受け部材の長さ方向）に揺れ動いたとき、ラックと一体に前後に揺れ動く支持部材と荷を支持している荷受け部材との間に付勢手段の付勢力に抗しての相対移動が生じ、荷を支持している荷受け部材がラックと一体に同一速度、同一振幅で前後方向に揺れ動くことがなくなる。従って、開放された通路側（前方）にラックが揺れ動いたときに荷受け部材及び当該荷受け部材上の荷が一体に前方に揺れ動くことにより、慣性で荷が荷受け部材上を通路側へ滑動し、場合によっては通路側へ落下してしまう恐れがなくなり、所期の免震効果が得られる。この支持部材と荷受け部材との間の前後方向の相対移動は、付勢手段を構成する付勢ユニットの渦巻き状コイルバネの中心部と外周部とを弾性に抗して水平二次元方向に相対移動させることで実現しており、相対移動後は当該渦巻き状コイルバネが、その中心部と外周部とが同心状態に弾性復帰することにより、荷受け部材は支持部材上の原点位置に自動復帰するので、荷受け部材上で荷が滑動しない限り荷の位置が前後方向に不測に変動することはなく、安全に荷を継続保管することができる。
【０００９】
而して、上記請求項１に記載の本発明の構成によれば、荷収納区画の左右両隔壁枠から連設された支持部材とこの上に位置する荷受け部材との間に、当該荷受け部材の支持手段と当該荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段とが配設されているので、従来のように平面視において荷受け部材の横側方にコイルバネなどの付勢手段が突出する場合と比較して、荷支持装置全体の平面視における占有スペースが従来の免震構造を持たない荷支持装置と同程度に小さくなり、ラック全体の収納効率を高めるのに役立つ。
【００１０】
又、付勢手段を構成する付勢ユニットも、支持部材と荷受け部材との内の一方の部材から他方の部材側に向かって突設された中心バネ受け部材と、この中心バネ受け部材を取り囲むように前記他方の部材から前記一方の部材側に向かって突設された外側バネ受け部材と、これら中心バネ受け部材と外側バネ受け部材との間に介装された渦巻き状コイルバネとから構成され、支持部材に対する荷受け部材の水平方向の相対移動時に前記渦巻き状コイルバネの中心部と外周部とを弾性に抗して水平二次元方向に相対移動させ、その反力で支持部材に対し荷受け部材を原点位置に復帰させる方式のものとしたので、水平方向３６０度あらゆる方向に対して免震効果を発揮させることができる。又、荷の重量に応じて渦巻き状コイルバネの線径などを大きくし、大きな原点復帰力（センタリング力）、延いては迅速な原点復帰を実現させることができるにもかかわらず、使用部品としては渦巻き状コイルバネと内外一対のバネ受け部材だけで済み、部品点数が少なく安価に構成することができると共に、支持部材と荷受け部材との間の狭い上下空間内にも無理なく配設することができる。換言すれば、上記のような方式の付勢手段としたため、支持部材と荷受け部材との間の限られた空間内を利用して付勢手段を構成することができるに至ったのである。
【００１１】
尚、請求項２に記載の構成によれば、支持部材と荷受け部材との間に介装される渦巻き状コイルバネが荷受け部材下側に取り付けられた倒立有底円筒体で上側からカバーされて保護されるので、荷受け部材の巾が渦巻き状コイルバネの外径より小さくて、荷受け部材から渦巻き状コイルバネが張り出すような状況でも、当該渦巻き状コイルバネに他物が接触したり、塵埃が付着することがなくなる。従って、荷受け部材や外側バネ受け部材を互いに制約されることなくそれぞれに好適なサイズに構成できる。
【００１２】
この場合、請求項３に記載の構成によれば、付勢ユニットを構成する中心バネ受け部材と前記倒立有底円筒体、換言すれば、支持部材と荷受け部材との間に渦巻き状コイルバネを介装するために必要な中心バネ受け部材と前記倒立有底円筒体とで、荷受け部材を水平二次元方向にスライド可能に支持するための支持手段を兼用させることができるので、この付勢ユニットとは別に支持手段を独立して構成しなければならない場合と比較して、荷支持装置全体の部品点数を大巾に減らし、荷支持装置をコンパクトに且つ安価に構成できる。更に、請求項４に記載の構成によれば、荷受け部材の巾よりも十分に大きな外径を有する渦巻き状コイルバネを利用することができ、しかも支持部材の上面から荷受け部材の上面までの高さを低く抑えることができ、荷支持装置全体をコンパクトの構成できる。
【００１３】
又、請求項５に記載の構成によれば、渦巻き状コイルバネの両端を中心バネ受け部材と外側バネ受け部材とに固定しなくとも、渦巻き状コイルバネを所定位置に保持することができるだけでなく、中心バネ受け部材と外側バネ受け部材との間の水平二次元方向の相対移動領域が渦巻き状コイルバネの圧縮側によって制約されるのを抑制でき、荷受け部材の水平二次元方向の許容変位量を大きくするのに役立つ。
【００１４】
渦巻き状コイルバネとしては、請求項６に記載の線状鋼材を使用したものや、請求項７に記載の帯状鋼材を使用したものなどが利用できるが、特に請求項８に記載のように、円錐面に沿って渦巻き状に巻回する線状鋼材から成る、側面視が台形状の渦巻き状コイルバネを利用するときは、請求項５に記載の構成を採用した場合と同様に、中心バネ受け部材と外側バネ受け部材との間の水平二次元方向の相対移動領域が渦巻き状コイルバネの圧縮側によって制約されるのを抑制でき、荷受け部材の水平二次元方向の許容変位量を大きくすることができるにもかかわらず、外側バネ受け部材を肉厚大径にする必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
図１は本発明の荷支持装置が適用できるラックの基本的な構成を示しており、１は上下左右両方向に碁盤目状に配置された荷収納区画であって、左右横方向に隣接する荷収納区画１間には垂直に隔壁枠２が立設され、上下に隣接する荷収納区画１は、左右一対の荷受け部材３によって区切られている。
【００１６】
各隔壁枠２は、前後一対の支柱材４ａ，４ｂを連結部材５によって互いに連結したラチス構造のものであって、荷収納区画１の背面側では、各隔壁枠２の後側支柱材４ｂが水平や斜めの連結部材６で連結され、荷収納区画１の正面側、即ち、荷収納区画１に対して荷の出し入れを行う入出庫用クレーンの走行通路側では、荷収納区画１に対する荷の出し入れに邪魔にならないレベルで水平連結材（図示省略）により各隔壁枠２の前側支柱材４ａどうしが連結されることが知られている。左右一対の荷受け部材３は、荷収納区画１に対する荷の出し入れ方向、即ち、荷収納区画１の前後奥行き方向（Ｘ方向）に長い棒状のもので、その前後両端部が、外側に隣接する隔壁枠２の前後両支柱材４ａ，４ｂに取り付けられた前後一対の支持部材７に支持される。
【００１７】
以下、本発明の一実施形態を図２〜図６に基づいて具体的に説明すると、各荷受け部材３は、下側開放の門形材８から成り、この各荷受け部材３の前後両端部とこれらの下側に延出している前記支持部材７の遊端部との間に、支持手段９を構成する前後一対の支持ユニット１０Ａ，１０Ｂと、付勢手段１１を構成する前後一対の付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂとが配設されている。付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂは同一構造のもので、支持部材７の上面に突設された中心バネ受け部材１３と、この中心バネ受け部材１３に対して上側から被さる倒立有底円筒体１４、及び渦巻き状コイルバネ１５から構成されている。
【００１８】
中心バネ受け部材１３は、支持部材７の上面に複数本の取付けボルト１６で取り付けられ且つ上端円周角部に切欠き段部１７ａ（図６参照）を備えた円柱体１７と、この円柱体１７の上端に重ねられ且つ前記円柱体１７と同一径の円形押さえ板１８と、この円形押さえ板１８の上に重ねられ且つ前記円柱体１７と同一径の円形スライド板１９と、この円形スライド板１９と円形押さえ板１８とを円柱体１７に固定する複数本の取付けネジ２０とから構成されている。この取付けネジ２０の頭部上面は、円形スライド板１９の上面と面一か又は若干窪んでいるように構成されている。而して、円柱体１７の上端円周角部に形成された切欠き段部１７ａと円形押さえ板１８との周辺部とによって、この中心バネ受け部材１３の円柱面に環状の凹溝部１３ａが形成されている。
【００１９】
倒立有底円筒体１４は、荷受け部材３の下側に固着される天板部２１の周縁から下向きに一体に連設された環状周壁で円筒状の外側バネ受け部材２２を構成するもので、天板部２１の下側に複数本の取付けネジ２３で取り付けた円形スライド板２４で構成した被支持面２４ａを中心バネ受け部材１３の上端、即ち、円形スライド板１９で構成した水平支持面１９ａに載置したとき、当該中心バネ受け部材１３の凹溝部１３ａと同一レベルになる位置において、外側バネ受け部材２２の内周面に環状の凹溝部２２ａが形成されている。この倒立有底円筒体１４は、図３及び図４に示すように、荷受け部材３の長さ方向の両端部において下側開放の門形材８の両側垂直板部８ａ，８ｂに形成した切欠き部２５に、平面視において当該倒立有底円筒体１４の天板部２１が門形材８の左右両側辺と端辺とから突出するように嵌合させた状態で、溶接により天板部２１を門形材８に固着している。
【００２０】
渦巻き状コイルバネ１５は、水平二次元平面上で線状鋼材を渦巻き状に巻回して成るもので、その内端側Ｃ字状部分１５ａを中心バネ受け部材１３の凹溝部１３ａに嵌合させた状態で弾性に抗して縮径させ、その外端側Ｃ字状部分１５ｂを外側バネ受け部材２２の凹溝部２２ａに嵌合させている。具体的には、中心バネ受け部材１３を構成する円形押さえ板１８と円形スライド板１９とを円柱体１７に取り付ける前に、当該円柱体１７の上端円周角部の切欠き段部１７ａに渦巻き状コイルバネ１５の内端側Ｃ字状部分１５ａを上から嵌合させ、この後、円形押さえ板１８と円形スライド板１９とを円柱体１７の上端に取付けネジ２０により取り付けることができる。
【００２１】
支持ユニット１０Ａ，１０Ｂは、付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂにおける支持部材７側の中心バネ受け部材１３（上端円形スライド板１９の水平支持面１９ａ）と荷受け部材３側の倒立有底円筒体１４（円形スライド板２４の下側被支持面２４ａ）とで構成されている。
【００２２】
上記構成の支持ユニット１０Ａ，１０Ｂ及び付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂによって支持部材７に支持された荷受け部材３は、支持部材７側の中心バネ受け部材１３の上端水平支持面１９ａ（円形スライド板１９の上側面）で荷受け部材３側の倒立有底円筒体１４の下側被支持面２４ａ（円形スライド板２４の下側面）が支持されているため、倒立有底円筒体１４の周壁（外側バネ受け部材２２）の内側領域内、具体的には、図５に示すように渦巻き状コイルバネ１５が中心バネ受け部材１３と外側バネ受け部材２２との間で水平方向に圧縮されて互いに密着するか又は、外側バネ受け部材２２が中心バネ受け部材１３に当接するまでの範囲内で、一定レベルの水平二次元方向に３６０度如何なる方向にもスライド可能である。又、渦巻き状コイルバネ１５は、弾性に抗して縮径された状態で中心バネ受け部材１３と外側バネ受け部材２２との間に介装されているから、その反力で荷受け部材３の位置が、外側バネ受け部材２２が中心バネ受け部材１３に対し同心状になる位置に保持される。
【００２３】
上記のように支持された左右一対の荷受け部材３上に荷が跨がって載置されたとき、荷重は、前後２つの支持ユニット１０Ａ，１０Ｂにおける倒立有底円筒体１４の天板部２１と中心バネ受け部材１３とを介して支持部材７に受け止められる。係る状態で、渦巻き状コイルバネ１５を水平方向に変形させることができるだけの強さの水平向きの外力が荷受け部材３と支持部材７との間に相対的に作用すると、荷受け部材３と支持部材７とは、図５に示すように渦巻き状コイルバネ１５が中心バネ受け部材１３と外側バネ受け部材２２との間で水平方向に圧縮されて互いに密着するか又は、外側バネ受け部材２２が中心バネ受け部材１３に当接するまでの範囲内で、中心バネ受け部材１３の上端水平支持面１９ａ（円形スライド板１９の上側面）と倒立有底円筒体１４の下側被支持面２４ａ（円形スライド板２４の下側面）との間の相対滑動を伴って、渦巻き状コイルバネ１５を水平方向に変形させながら水平に相対移動することができる。
【００２４】
従って、地震などによりラックが荷収納区画１の前後奥行き方向（Ｘ方向）に揺れ動いたとき、荷を支持している荷受け部材３に対し、ラックと一体の支持部材７が付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂの渦巻き状コイルバネ１５の弾性に抗して同方向に揺動し、荷を支持している荷受け部材３と支持部材７との間で相対移動が生じ、荷受け部材３上の荷は殆ど揺れ動かないか又は、支持部材７の揺れよりも遅れて小さな振幅で揺れ動くことになり、揺れの速度や振幅が想定範囲内であれば所期の免震効果が得られる。勿論、付勢ユニット１２Ａ，１２Ｂの渦巻き状コイルバネ１５は、常に弾性復帰力で内端側Ｃ字状部分１５ａと外端側Ｃ字状部分１５ｂとが略同心状態になるように自動復帰しようとするので、ラックの揺れが収まったときには、当該渦巻き状コイルバネ１５の弾性復帰力で荷受け部材３は所期の定位置に自動的に戻される。このとき渦巻き状コイルバネ１５の弾性復帰力は、荷が搭載されている荷受け部材３を、支持ユニット１０Ａ，１０Ｂの水平支持面１９ａと被支持面２４ａとの間の摩擦力に抗して原点復帰させることになるので、支持ユニット１０Ａ，１０Ｂの水平支持面１９ａと被支持面２４ａとの間の摩擦力はできる限り小さくなるように構成しなければならない。このため、水平支持面１９ａや被支持面２４ａは、中心バネ受け部材１３（円形押さえ板１８）や倒立有底円筒体１４とは別の摩擦抵抗の少ない材質から成る別部材の円形スライド板１９や円形スライド板２４で構成するのが望ましい。
【００２５】
尚、上記実施形態では、支持部材７を支持している隔壁枠２の前後一対の支柱材４ａ，４ｂは横断面形状が開放断面であって、図２Ｃに示すように、支持部材７を取り付けている支柱材４ａ，４ｂの横向きに突出する横断面角形の側壁板部４ｃが内外水平方向に弾性変形できるものであるから、この支柱材４ａ，４ｂの横断面角形の側壁板部４ｃの内外水平方向の弾性変形を伴う方向であれば、支持部材７と隔壁枠２との間の水平方向の相対移動がある程度許容されている。従って、地震などによるラック（隔壁枠２）の揺れ方向によっては、支持部材７と荷受け部材３との間の水平方向相対移動に加えて、支持部材７と隔壁枠２との間の水平方向の相対移動が、荷受け部材３で支持されている荷に対する免震効果を高めることにもなる。図２Ｃにおいて、７ａは支持部材７の内端に付設した取付け板であって、この取付け板７ａが支柱材４ａ，４ｂの横向きに突出する横断面角形の側壁板部４ｃに外嵌する状態で、結合ピン７ｂにより当該支柱材４ａ，４ｂに係止される。
【００２６】
渦巻き状コイルバネは、図７に示すように、水平二次元平面上で帯状鋼材を渦巻き状に巻回させて成る渦巻き状コイルバネ２６であっても良いし、図８に示すように、円錐面に沿って線状鋼材を渦巻き状に巻回させて成る、側面視が台形状の渦巻き状コイルバネ２７であっても良い。又、中心バネ受け部材１３を荷受け部材３側から下向きに突設し、外側バネ受け部材２２を支持部材７側に設けることもできる。この場合、倒立有底円筒体１４を支持部材７上に正立状態に付設し、その天板部（底板部）２１の上側に付設された円形スライド板２４の上面を支持部材７側の水平支持面とし、中心バネ受け部材１３の下端に付設した円形スライド板１９の下側面を荷受け部材３側の被支持面とすることができる。更に、左右一対の荷受け部材３は、入出庫用クレーンの荷移載用フォークなどによる荷の出し入れに影響しない箇所、例えば荷受け部材３の後端部や、前記荷移載用フォークの出退空間より下側で、荷受け部材３どうしを連結部材で互いに連結することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】Ａ図は荷保管用ラックの基本構成を説明する要部の横断平面図、Ｂ図は同要部の正面図である。
【図２】Ａ図は荷支持装置を示す平面図、Ｂ図は同正面図、Ｃ図はＡ図のＣ部拡大図である。
【図３】荷支持装置の片側を示す一部切欠き平面図である。
【図４】図３のＸ−Ｘ線断面図である。
【図５】図３のＹ−Ｙ線断面図を、荷受け部材が一側方に変位した状態で示す図である。
【図６】１つの支持ユニット及び付勢ユニットを示す一部切欠き分解斜視図である。
【図７】付勢ユニットの変形例を示す縦断側面図である。
【図８】付勢ユニットの他の変形例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【００２８】
１ 荷収納区画
２ 隔壁枠
３ 荷受け部材
４ａ，４ｂ 支柱材
５，６ 連結部材
７ 支持部材
８ 門形材
９ 支持手段
１０Ａ，１０Ｂ 支持ユニット
１１ 付勢手段
１２Ａ，１２Ｂ 付勢ユニット
１３ 中心バネ受け部材
１３ａ，２２ａ 凹溝部
１４ 倒立有底円筒体
１５，２６，２７ 渦巻き状コイルバネ
１７ 円柱体（中心バネ受け部材）
１８ 円形押さえ板
１９ 円形スライド板（中心バネ受け部材）
１９ａ 水平支持面
２１ 天板部
２２ 外側バネ受け部材
２４ 円形スライド板
２４ａ 被支持面
２５ 切欠き部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設され、この荷受け部材の下側には、前記左右両隔壁枠から連設された支持部材が配置され、この支持部材と荷受け部材との間には、当該荷受け部材を水平二次元方向一定範囲内でスライド可能に支持する支持手段と、当該荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段とが配設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記付勢手段は、前記荷受け部材の長さ方向の少なくとも２箇所に配設された付勢ユニットを備え、各付勢ユニットは、前記支持部材と荷受け部材との内の一方の部材から他方の部材側に向かって突設された中心バネ受け部材と、この中心バネ受け部材を取り囲むように前記他方の部材から前記一方の部材側に向かって突設された外側バネ受け部材と、これら中心バネ受け部材と外側バネ受け部材との間に介装された渦巻き状コイルバネとから構成されている、荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項２】
前記中心バネ受け部材は、前記支持部材から上向きに突設され、前記外側バネ受け部材は、前記中心バネ受け部材に被せた倒立有底円筒体の周壁で構成されたもので、当該倒立有底円筒体の上端天板部が前記荷受け部材の下側に固着されている、請求項１に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項３】
前記中心バネ受け部材の上端には、前記倒立有底円筒体の上端天板部の下側被支持面をスライド可能に支持する水平支持面が形成され、この中心バネ受け部材と前記倒立有底円筒体とが前記支持手段を構成している、請求項２に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項４】
前記倒立有底円筒体は、前記荷受け部材の巾よりも大きな外径を有するもので、この倒立有底円筒体が前記荷受け部材に設けられた切欠き部に下側から嵌合した状態で当該荷受け部材に固着されている、請求項３に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項５】
前記中心バネ受け部材と外側バネ受け部材との内、少なくとも一方には、前記渦巻き状コイルバネが入り込む凹溝部が形成されている、請求項１〜４の何れか１項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項６】
前記付勢ユニットの渦巻き状コイルバネは、水平二次元平面上で渦巻き状に巻回する線状鋼材から成る、請求項１〜５の何れか１項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項７】
前記付勢ユニットの渦巻き状コイルバネは、水平二次元平面上で渦巻き状に巻回する帯状鋼材から成る、請求項１〜５の何れか１項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項８】
前記付勢ユニットの渦巻き状コイルバネは、円錐面に沿って渦巻き状に巻回する線状鋼材から成る、請求項１〜５の何れか１項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項１】
荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設され、この荷受け部材の下側には、前記左右両隔壁枠から連設された支持部材が配置され、この支持部材と荷受け部材との間には、当該荷受け部材を水平二次元方向一定範囲内でスライド可能に支持する支持手段と、当該荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段とが配設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記付勢手段は、前記荷受け部材の長さ方向の少なくとも２箇所に配設された付勢ユニットを備え、各付勢ユニットは、前記支持部材と荷受け部材との内の一方の部材から他方の部材側に向かって突設された中心バネ受け部材と、この中心バネ受け部材を取り囲むように前記他方の部材から前記一方の部材側に向かって突設された外側バネ受け部材と、これら中心バネ受け部材と外側バネ受け部材との間に介装された渦巻き状コイルバネとから構成されている、荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項２】
前記中心バネ受け部材は、前記支持部材から上向きに突設され、前記外側バネ受け部材は、前記中心バネ受け部材に被せた倒立有底円筒体の周壁で構成されたもので、当該倒立有底円筒体の上端天板部が前記荷受け部材の下側に固着されている、請求項１に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項３】
前記中心バネ受け部材の上端には、前記倒立有底円筒体の上端天板部の下側被支持面をスライド可能に支持する水平支持面が形成され、この中心バネ受け部材と前記倒立有底円筒体とが前記支持手段を構成している、請求項２に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項４】
前記倒立有底円筒体は、前記荷受け部材の巾よりも大きな外径を有するもので、この倒立有底円筒体が前記荷受け部材に設けられた切欠き部に下側から嵌合した状態で当該荷受け部材に固着されている、請求項３に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項５】
前記中心バネ受け部材と外側バネ受け部材との内、少なくとも一方には、前記渦巻き状コイルバネが入り込む凹溝部が形成されている、請求項１〜４の何れか１項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項６】
前記付勢ユニットの渦巻き状コイルバネは、水平二次元平面上で渦巻き状に巻回する線状鋼材から成る、請求項１〜５の何れか１項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項７】
前記付勢ユニットの渦巻き状コイルバネは、水平二次元平面上で渦巻き状に巻回する帯状鋼材から成る、請求項１〜５の何れか１項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項８】
前記付勢ユニットの渦巻き状コイルバネは、円錐面に沿って渦巻き状に巻回する線状鋼材から成る、請求項１〜５の何れか１項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【公開番号】特開２００８−１２７２０３（Ｐ２００８−１２７２０３Ａ）
【公開日】平成２０年６月５日（２００８．６．５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−３１８０７６（Ｐ２００６−３１８０７６）
【出願日】平成１８年１１月２７日（２００６．１１．２７）
【出願人】（０００００３６４３）株式会社ダイフク (1,209)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年６月５日（２００８．６．５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年１１月２７日（２００６．１１．２７）
【出願人】（０００００３６４３）株式会社ダイフク (1,209)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]