説明

荷保管用ラックの荷支持装置

【課題】荷収納区画の左右両隔壁枠2の内側に荷出し入れ方向に長い左右一対の荷受け部材3が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に免震構造を採用して耐震性を高める。
【解決手段】荷収納区画の左右両隔壁枠2の内側に左右一対の支持部材10が架設され、これら両支持部材10に荷受け部材3がそれぞれ荷収納区画の前後奥行き方向(X方向)に一定範囲内で前後移動自在に支持された荷保管用ラックの荷支持装置であって、荷受け部材3と支持部材10との間には、荷受け部材3をその前後移動領域内の定位置に付勢保持するガスダンパー25が介装され、荷受け部材3は、前記ガスダンパー25の付勢力に抗して少なくとも前記定位置から前方に移動可能に構成し、当該ガスダンパー25は、平面視において、前記隔壁枠2を構成する前後一対の支柱材4a,4b間に前後向きに配置された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の荷保管用ラックにおいて、地震時にラックが荷収納区画の前後奥行き方向(荷出し入れ方向)に揺れることによって、保管中の荷が当該ラックの通路側(ラックに沿って設けられた入出庫用クレーンの走行通路のある側)へ荷受け部材上を滑動して落下する事故が発生している。このような事故を未然に防止する一つの手段として、各荷収納区画が備える左右一対の荷受け部材を免震構造とすることが考えられている。例えば特許文献1に記載されるように、この種の荷保管用ラックの荷支持装置における免震構造は、荷収納区画の左右両隔壁枠から連設された支持部材に対して各荷受け部材をその長さ方向(荷収納区画の前後奥行き方向)にスライド可能に支持し、荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段を設けるものであった。
【特許文献1】特許第3729316号公報(特開2000−226111号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された従来の構成における免震構造では、コイルバネから成る付勢手段を使用するものであったため、ラック(支持部材)に対する荷(荷受け部材)の揺れを速やかに減衰させる効果に乏しく、実用的ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る荷保管用ラックの荷支持装置を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の荷保管用ラックの荷支持装置は、荷収納区画1の左右両隔壁枠2の内側に左右一対の支持部材10が架設され、これら両支持部材10に荷受け部材3がそれぞれ荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に一定範囲内で前後移動自在に支持された荷保管用ラックの荷支持装置であって、荷受け部材3と支持部材10との間には、荷受け部材3をその前後移動領域内の定位置に付勢保持するガスダンパー25が介装され、荷受け部材3は、前記ガスダンパー25の付勢力に抗して少なくとも前記定位置から前方に移動可能に構成し、当該ガスダンパー25は、平面視において、前記隔壁枠2を構成する前後一対の支柱材4a,4b間に前後向きに配置された構成となっている。
【0005】
上記構成の本発明を実施するについて、具体的には請求項2に記載のように、荷受け部材3は下側開放の門形材から構成し、支持部材10は、平面視において荷受け部材3と重なる位置に配置し、当該支持部材10の上には、荷受け部材3の内側に入り込んで当該荷受け部材3の天板部3aを前後方向移動自在に支持する支持具11a〜11dを支持部材長さ方向複数箇所に配設すると共に、支持部材10に対する荷受け部材3の移動領域規制手段13を設け、荷受け部材3の隔壁枠2に隣接する側には、支持部材10の横位置まで垂下する柱状体29を取り付け、ガスダンパー25は、支持部材10の真横位置で、荷受け部材3側の前記柱状体29と支持部材10との間に介装することができる。
【0006】
又、請求項3に記載のように、前記各支持具11a〜11dは、支持部材10上に取り付けられた軸受部材15とこれに軸支された水平軸ローラー17a,17bとから構成し、荷受け部材3の天板部3aには、前記水平軸ローラー17a,17bが当接する帯状レール板18a,18bを付設することができる。この場合、請求項4に記載のように、支持部材10上には、荷受け部材3の左右両側板部3b,3cに隣接する左右一対の垂直軸ローラー19a,19bを備え且つ荷受け部材3の内側に嵌まり込む振れ止め用ローラーユニット12a,12bを、支持部材長さ方向の複数箇所に配設することができる。
【0007】
支持具としては、請求項5に記載のように、荷受け部材3の天板部3aと平行な平坦支持面36と、荷受け部材3の左右両側板部3b,3cに隣接する平坦側面37a,37bとを有するブロック材38から構成することもできる。
【0008】
又、請求項6に記載のように、前記移動領域規制手段13は、荷受け部材3の左右両側板部3b,3cに荷受け部材長さ方向に沿って設けられた長孔21a,21bと、この長孔21a,21bを貫通する水平軸22と、この水平軸22の両端を荷受け部材3の左右両外側で支持し且つ支持部材10に取り付けられた軸受部材23とから構成することができる。
【0009】
更に、請求項7に記載のように、荷収納区画1の左右両隔壁枠2を構成する前後一対の支柱材4a,4bは、互いに対向する内側が開放した横断面形状のものとし、前記支持部材10は、前後両支柱材4a,4bの側壁板部4cに取り付けられたアーム材7a,7bに長さ方向両端部を支持させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る荷保管用ラックの荷支持装置によれば、ラックが地震発生時に荷収納区画の前後奥行き方向(荷受け部材の長さ方向)に揺れ動いたとき、ラックと一体に前後に揺れ動く支持部材と荷を支持している荷受け部材との間に前後方向の相対移動が生じ、荷を支持している荷受け部材がラックと一体に同一速度、同一振幅で前後方向に揺れ動くことがなくなる。例えば、支持部材に対して荷受け部材がその前後移動領域の後端位置にガスダンパーの付勢力で付勢保持されている場合、ラック(支持部材)が前方(荷収納区画が開放している通路側)に揺動するときは、荷受け部材は支持部材と一体に前方に揺動するが、ラック(支持部材)が後方に揺動するときは、荷を搭載している荷受け部材は慣性によりその位置で留まろうとするので、支持部材から見て荷受け部材は、ガスダンパーの付勢力に抗して相対的に前方に移動することになる。換言すれば、支持部材上に荷受け部材が固定されているときのように、ラック(支持部材)が後方に揺動するときに荷受け部材上の荷が慣性で当該荷受け部材上を前方に滑動することがなくなり、荷受け部材そのものが搭載している荷と一体に支持部材に対し相対的に前方に移動することになるので、荷受け部材に対して荷が前方に滑動することがなくなる。そして、ラック(支持部材)が後方に揺動し始めた後、荷を搭載している荷受け部材に作用している前方への慣性力よりもガスダンパーの付勢力が勝ったとき、荷を搭載している荷受け部材がガスダンパーの付勢力で支持部材上を後方に追従移動し、元の後退限位置に復帰する。
【0011】
上記作用の繰り返しにより、ラックが地震発生時に荷収納区画の前後奥行き方向(荷受け部材の長さ方向)に揺れ動いたときに、荷受け部材及び当該荷受け部材上の荷が一体に前方に揺れ動くことにより、慣性で荷が荷受け部材上を通路側へ滑動し、場合によっては通路側へ落下してしまう恐れがなくなり、所期の免震効果が得られる。勿論、支持部材と荷受け部材との間の前後方向の相対移動後は、ガスダンパーの付勢力が荷受け部材を原点位置(後退限位置)に自動復帰させるので、荷受け部材上で荷が滑動しない限り荷の位置が前後方向に不測に変動することはなく、安全に荷を継続保管することができる。
【0012】
而して、上記請求項1に記載の本発明の構成によれば、支持部材に対して前後方向に移動自在に支持された荷受け部材を前後移動領域内の定位置、例えば前後移動領域の後端位置に付勢保持する付勢手段として、ガスダンパーを利用する構成であるから、コイルバネを利用する従来の構成と比較して、ラック(支持部材)に対する荷(荷受け部材)の揺れを速やかに減衰させる効果が期待でき、安全性の高い荷支持装置として実用に供することができる。しかも本発明の構成によれば、長尺で占有空間が大きくなるガスダンパーを利用しながら、当該ガスダンパーを、平面視において、荷受け部材に隣接するラックの隔壁枠の前後両支柱材の間に前後向きに配置したので、ガスダンパーを利用するために、隔壁枠間の間隔や荷受け部材の上下間隔(荷収納区画の高さ)を大きくする必要はなく、ラックの収納効率を低下させることがない。勿論、荷収納区画に対する荷の出し入れ作業時に誤ってガスダンパーに荷や移載装置を衝突させてガスダンパーを破損させるような恐れもなく、ガスダンパーを意識せずに荷の出し入れ作業を安全に行える。
【0013】
尚、請求項2に記載の構成によれば、荷受け部材、支持部材、及びガスダンパーを含む支持装置全体をコンパクトに構成することができる。この場合、請求項3に記載の構成によれば、荷受け部材そのものは比較的薄板材で軽量に構成しながら、支持部材に対する荷受け部材の前後移動を円滑に行わせることができ、ガスダンパーの機能を十分に発揮させることができる。更に、請求項4に記載の構成によれば、支持部材に対して前後移動する荷受け部材が左右横方向に振れることがなくなり、支持部材に対する荷受け部材の前後移動を一層円滑に行わせることができる。勿論、荷受け部材を支持する支持具としては、水平軸ローラーを使用するものに限定されず、請求項5に記載のように構成するときは、高価で耐久性の低い水平軸ローラーを使用しないので済むと共に、荷受け部材の左右横方向の振れ止めのローラーユニットも不要になるので、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0014】
又、請求項6に記載の構成によれば、支持部材に対する荷受け部材の前後移動領域を所定範囲内に規制できるだけでなく、支持部材に対して荷受け部材が浮き上がるような不都合も回避でき、安全性を一層高めることができる。
【0015】
更に、請求項7に記載の構成によれば、ラックの隔壁枠を構成する支柱材の側壁板部の左右横方向の弾性変形を利用して、地震発生時のラックの左右横方向の揺れに対し、支持部材と共に荷を搭載した荷受け部材をラックに対して左右横方向に相対移動させることができるので、免震効果をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の荷支持装置が適用できるラックの基本的な構成を示しており、1は上下左右両方向に碁盤目状に配置された荷収納区画であって、左右横方向に隣接する荷収納区画1間には垂直に隔壁枠2が立設され、上下に隣接する荷収納区画1は、左右一対の荷受け部材3によって区切られている。
【0017】
各隔壁枠2は、前後一対の支柱材4a,4bを連結部材5によって互いに連結したラチス構造のものであって、荷収納区画1の背面側では、各隔壁枠2の後側支柱材4bが水平や斜めの連結部材6で連結され、荷収納区画1の正面側、即ち、荷収納区画1に対して荷の出し入れを行う入出庫用クレーンの走行通路側では、荷収納区画1に対する荷の出し入れに邪魔にならないレベルで水平連結材(図示省略)で各隔壁枠2の前側支柱材4aどうしが連結されることが知られている。左右一対の荷受け部材3は、荷収納区画1に対する荷の出し入れ方向、即ち、荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に長い棒状のもので、その前後両端部が、外側に隣接する隔壁枠2の前後両支柱材4a,4bに支持される。
【0018】
以下、本発明の第一実施形態を具体的に説明すると、図2〜図4に示すように、隔壁枠2の前後両支柱材4a,4bは、互いに対向する内側が開放する横断面形状のもので、荷受け部材3の前後両端部を支持する高さに対応して、横向きに突出するアーム材7a,7bを固着した取付部材8が、図3Bに示すように、支柱材4a,4bの横向きに突出する横断面角形の側壁板部4cに外嵌する状態でピン9により係止されている。而して、前後一対のアーム材7a,7b間には、荷受け部材3の真下に重なる位置で当該荷受け部材3と平行に位置する支持部材10の前後両端部が取り付けられている。
【0019】
詳細構造を図2〜図6に基づいて説明すると、支持部材10は、詳細が図5に示されるように、天板部10aとこの天板部10aの隔壁枠2に隣接しない側である外側辺から垂下する外側垂直板部10bとを有する倒立L形断面のもので、天板部10aの前後両端が前記アーム材7a,7bの上に載置され、ボルトナット10cで取り付けられている。荷受け部材3は、詳細が図5に示されるように、下側開放の門形材から成り、天板部3aと、当該天板部3aの左右両側辺から垂下する左右両側板部3b,3cとを有し、支持部材10と殆ど同一巾のものである。
【0020】
図2〜図4に示すように、支持部材10の天板部10aの上側には、その長さ方向に4つの支持具11a〜11dと2つの振れ止め用ローラーユニット12a,12bとが設けられている。支持具11a,11bは、支持部材天板部10aの前後両端位置に配置され、支持具11cは、前後両端の支持具11a,11b間の中央位置より後端側の支持具11bに十分に近い位置に配置され、支持具11dは、前端側支持具11aと後端寄り支持具11cとの間の中央位置に配置され、振れ止め用ローラーユニット12a,12bは、前端側支持具11aと後端寄り支持具11cの中間支持具11d側に隣接する位置に配置されている。又、荷受け部材3と支持部材10との間には、中間支持具11dと後端寄り支持具11cとの間の位置において、支持部材10に対する荷受け部材3の前後移動領域の長さを規制する移動領域規制手段13が設けられている。
【0021】
各支持具11a〜11dは同一構造のものであって、詳細が図6に示されるように、支持部材10の天板部10a上に前後2本のボルトナット14で取り付けられて左右一対の軸受板部15a,15bを有するU字形の軸受部材15と、この軸受部材15の左右一対の軸受板部15a,15bの外側にそれぞれ水平支軸16a,16bで同心状に片持ち軸支された左右一対の水平軸ローラー17a,17bとから構成されたもので、荷受け部材3の内側に嵌まり込む状態で、左右一対の水平軸ローラー17a,17bにより荷受け部材3の天板部3aを前後移動自在に支持する。尚、荷受け部材天板部3aには、左右一対の水平軸ローラー17a,17bが当接する箇所に2本の帯状レール板18a,18bが敷設されている。尚、左右一対の水平軸ローラー17a,17bに代えて1つの巾広水平軸ローラーを使用しても良いし、2本の帯状レール板18a,18bに代えて1本の巾広帯状レール板を使用しても良い。勿論、荷受け部材3そのものを厚板材から構成して、帯状レール板を省くこともできる。
【0022】
振れ止め用ローラーユニット12a,12bは同一構造のものであって、詳細が図7に示されるように、支持部材10の天板部10a上に2つの垂直軸ローラー19a,19bをそれぞれローラー支軸兼用のボルトナット20a,20bにより立設したもので、両垂直軸ローラー19a,19bが荷受け部材3の左右両側板部3b,3cの内側面に隣接するように荷受け部材3の内側に嵌まり込んでいる。
【0023】
移動領域規制手段13は、図2〜図4及び図8に示すように、荷受け部材3の左右両側板部3b,3cにその長さ方向に沿って設けられた左右一対の長孔21a,21bと、この両長孔21a,21bを左右横方向に貫通する1本のボルトナット利用の水平軸22と、この水平軸22の両端を支持する左右一対の軸受板23a,23bを荷受け部材3の外側に備え且つ支持部材10の天板部10a上に2本のボルトナット24で取り付けられたU字形の軸受部材23とから構成され、図2及び図3に示すように、荷受け部材3の全長が支持部材10と重なる定位置(ホームポジション)にあるとき、水平軸22が長孔21a,21bの前端に隣接しているように構成している。従って、荷受け部材3は、前記定位置から前方で長孔21a,21bの長さの範囲内でのみ前後移動できる状態に支持されている。
【0024】
荷受け部材3と支持部材10との間には、荷受け部材3を前記定位置に付勢保持するガスダンパー25が介装されている。このガスダンパー25はガススプリングとも呼称されるもので、シリンダー本体25aと、このシリンダー本体25aの一端から延出されたピストンロッド25bとを有し、一定以上の外力がピストンロッド25bを退入させる方向に作用したときにシリンダー本体25aに対するピストンロッド25bの退入運動を許容し、当該外力が作用しなくなったとき又は小さくなったときに内蔵のスプリング力でピストンロッド25bを伸長運動させるものであるが、このピストンロッド25bの伸縮運動の速度を内蔵のガス圧により規制するものである。
【0025】
上記のガスダンパー25は、支持部材10の隔壁枠2側の真横位置に前後向き、即ち、支持部材10と平行な向きに配置されており、シリンダー本体25aの遊端部は、図9に詳細が示されるように、支持部材10の天板部10aの内側辺(外側垂直板部10bのある側とは反対側)から下向きに連設された内側垂直板片10dの外側にボルトナット26で取り付けられたガスダンパー取付部材27に垂直支軸28により軸支され、ピストンロッド25bの遊端部は、図10に詳細が示されるように、荷受け部材3の内側の側板部3bに上端部が固着されて支持部材10の真横位置まで垂下する溝形材利用の柱状体29にボルトナット30で取り付けられたガスダンパー取付部材31に垂直支軸32により軸支されている。尚、シリンダー本体25aの遊端部を取り付けるガスダンパー取付部材27は、ボルトナット26の弛緩により若干前後方向に取付位置を調整できる構造であって、取付位置調整後のガスダンパー取付部材27が当該ガスダンパー25に圧縮方向に作用する外力で前方に位置ずれを起こさないように、支持部材10側の前記内側垂直板片10dには、ガスダンパー取付部材27を受け止める調整ボルトナット33がアングル材34を介して取り付けられている。
【0026】
上記構成によれば、荷受け部材3はガスダンパー25の付勢力により後方に押圧され、移動領域規制手段13の長孔21a,21bの前端と水平軸22との当接により規制される後退限位置、即ち、定位置に保持されているが、このガスダンパー25による後方への付勢力に打ち勝つ前方向きの外力が荷受け部材3に作用したときには、図4に示すように、当該荷受け部材3は支持部材10上を前方に滑動することができる。そして当該荷受け部材3に作用する前方向きの外力が消滅したとき又は、前記ガスダンパー25による後方への付勢力よりも前方向きの外力が小さくなったとき、荷受け部材3は支持部材10上を後方に滑動し、元の定位置に自動復帰する。この荷受け部材3の支持部材10上での前後移動は、振れ止め用ローラーユニット12a,12bで左右横方向の横動を阻止されている状態で、各支持具11a〜11dの水平軸ローラー17a,17b上での帯状レール板18a,18bの相対転動を伴って軽く円滑に行われる。
【0027】
従って、地震などによりラックが荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に揺れ動いたとき、荷を支持している荷受け部材3に対してラックと一体の支持部材10が同方向に揺動するが、荷を支持している荷受け部材3と支持部材10との間で前後方向の相対移動が生じ、荷受け部材3に対し当該荷受け部材3上に搭載されている荷が慣性により前方に滑動しなくなるか又は滑動距離が短くなり、荷が荷受け部材3上から前方の通路側(荷収納区画1の開放している側)に落下するなどの危険な事態を回避できるという所期の免震効果が得られる。尚、支持部材10に対して前方に滑動した荷受け部材3がガスダンパー25の付勢力で元の定位置に復帰して、移動領域規制手段13の長孔21a,21bの前端と水平軸22との当接により制止されたとき、荷が慣性で荷受け部材3上を後方に滑動することは考えられるが、付勢手段がガスダンパー25であるから、荷受け部材3の後方への復帰移動時の速度が調整され、荷受け部材3が定位置で制止されたときのショックは殆どない。従って、荷受け部材3上で荷が勢い良く後方に滑動することは考えられず、仮に多少の後方への滑動があったとしても、最初に説明したように、荷収納区画1の後側、即ち、通路側とは反対側は、ラチス構造の連結部材6や壁板材、或いはラックの設置位置によっては建物の壁などにより閉じられた状態(少なくとも荷が荷収納区画1内から後方には飛び出すことができない状態)が普通であるから、実用上は支障がない。
【0028】
又、上記実施形態では、支持部材10の前後両端部をアーム材7a,7bと取付部材8とを介して支持している隔壁枠2の前後一対の支柱材4a,4bは、横断面形状が開放断面のものであって、図3Bに示すように、取付部材8を取り付けている支柱材4a,4bの横向きに突出する横断面角形の側壁板部4cが内外水平方向に弾性変形できるものであるから、この支柱材4a,4bの横断面角形の側壁板部4cの内外水平方向の弾性変形を伴う方向であれば、支持部材10と隔壁枠2との間の水平方向の相対移動がある程度許容されている。従って、地震などによるラック(隔壁枠2)の揺れ方向によっては、支持部材10と荷受け部材3との間の水平前後方向の相対移動に加えて、支持部材10と隔壁枠2との間の左右水平方向の相対移動が、荷受け部材3で支持されている荷に対する免震効果を高めることにもなる。
【0029】
尚、上記実施形態の支持具11a〜11dの配列によれば、図2及び図3に示すように、荷受け部材3が前後移動領域の後端位置である定位置に保持されている平常時は、その前後両端部と中間2箇所の計4箇所が支持具11a〜11dで支持されており、荷受け部材3の前後両端に近い位置に重心が偏っているような荷であっても安全に支持することができ、当該荷受け部材3が図4に示すように前方に移動して、後端支持具11bから荷受け部材3が前方に外れるような状態になっても、当該荷受け部材3の後端部は、後端寄り支持具11cで支持されるので、例えば定位置にある荷受け部材の前後両端位置と中間1箇所の計3箇所で支持具により支持させるときと比較して、単に1つの後端寄り支持具11cを追加するだけで、荷受け部材3が前方に移動したときの安定性は格段に改善される。
【0030】
図11及び図12は、荷受け部材3と支持部材10との間に設けられる支持具の別の実施形態を示している。この実施形態における支持具35a〜35cは、定位置にある荷受け部材3の前端位置と、後端寄り少し前方寄りの位置と、両位置の中間位置の計3箇所で支持部材10の天板部10a上に配置されたもので、各支持具35a〜35cは、荷受け部材3の天板部3aと平行な平坦支持面36と、荷受け部材3の左右両側板部3b,3cに隣接する平坦側面37a,37bとを有するブロック材38で構成されたもので、この図示例では、左右一対のブロック片38a,38bに分けて構成しているが、荷受け部材3の左右両側板部3b,3c間の内巾より若干小さい巾の1つの巾広ブロック材から構成することもできる。このブロック材38(各ブロック片38a,38b)は、複数本のボルトナット39で支持部材10の天板部10a上に取り付けられ、硬質合成樹脂などの摩擦抵抗の少ない材質から成るものが好適である。このような構成の支持具35a〜35cであれば、平坦支持面36の長さを適当に長くすることにより、図示のように3箇所に配置するだけでも、荷受け部材3を常に安定的に支持し得ると共に、荷受け部材3の左右横方向の振れ止めを兼ねさせることができる。
【0031】
尚、図11では、移動領域規制手段13を荷受け部材3の長さ方向の前後2箇所に配置しているが、勿論、先の実施形態のように、荷受け部材の長さ方向の1箇所に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】A図は荷保管用ラックの基本構成を説明する要部の横断平面図、B図は同要部の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る荷支持装置を示す一部横断平面図である。
【図3】A図は荷支持装置の片側を示す縦断側面図、B図は支持部材一端の取付構造を示す拡大平面図である。
【図4】荷受け部材が前方に移動した状態の荷支持装置の片側を隔壁枠側から見た側面図である。
【図5】荷支持装置の片側を示す正面側の端面図である。
【図6】荷支持装置の片側の支持具位置での縦断端面図である。
【図7】荷支持装置の片側の振れ止め用ローラーユニット位置での縦断端面図である。
【図8】荷支持装置の片側の移動領域規制手段位置での縦断端面図である。
【図9】荷支持装置の片側のガスダンパーのシリンダー本体取付位置での縦断端面図である。
【図10】荷支持装置の片側のガスダンパーのピストンロッド取付位置での縦断端面図である。
【図11】別の実施形態に係る荷支持装置の片側の側面図である。
【図12】図11の要部の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 荷収納区画
2 隔壁枠
3 荷受け部材
3a,10a 天板部
3b,3c 左右両側板部
4a,4b 支柱材
7a,7b アーム材
8 取付部材
10 支持部材
10b 外側垂直板部
10d 内側垂直板片
11a〜11d,35a〜35c 支持具
12a,12b 振れ止め用ローラーユニット
13 移動領域規制手段
15 軸受部材
17a,17b 水平軸ローラー
18a,18b 帯状レール板
19a,19b 垂直軸ローラー
21a,21b 長孔
22 水平軸
25 ガスダンパー
27,31 ガスダンパー取付部材
29 柱状体
36 平坦支持面
37a,37b 平坦側面
38 ブロック材
38a,38b ブロック片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に左右一対の支持部材が架設され、これら両支持部材に荷受け部材がそれぞれ荷収納区画の前後奥行き方向に一定範囲内で前後移動自在に支持された荷保管用ラックの荷支持装置であって、荷受け部材と支持部材との間には、荷受け部材をその前後移動領域内の定位置に付勢保持するガスダンパーが介装され、荷受け部材は、前記ガスダンパーの付勢力に抗して少なくとも前記定位置から前方に移動可能に構成し、当該ガスダンパーは、平面視において、前記隔壁枠を構成する前後一対の支柱材間に前後向きに配置されている、荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項2】
荷受け部材は下側開放の門形材から成り、支持部材は、平面視において荷受け部材と重なる位置に配置され、当該支持部材の上には、荷受け部材の内側に入り込んで当該荷受け部材の天板部を前後方向移動自在に支持する支持具が支持部材長さ方向複数箇所に配設されると共に、支持部材に対する荷受け部材の移動領域規制手段が設けられ、荷受け部材の隔壁枠に隣接する側には、支持部材横位置まで垂下する柱状体が取り付けられ、ガスダンパーは、支持部材の真横位置で、荷受け部材側の前記柱状体と支持部材との間に介装されている、請求項1に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項3】
前記各支持具は、支持部材上に取り付けられた軸受部材とこれに軸支された水平軸ローラーとから成り、荷受け部材の天板部には、前記水平軸ローラーが当接する帯状レール板が付設されている、請求項2に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項4】
支持部材上には、荷受け部材の左右両側板部に隣接する左右一対の垂直軸ローラーを備え且つ荷受け部材の内側に嵌まり込む振れ止め用ローラーユニットが、支持部材長さ方向の複数箇所に配設されている、請求項3に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項5】
前記各支持具は、荷受け部材の天板部と平行な平坦支持面と、荷受け部材の左右両側板部に隣接する平坦側面とを有するブロック材から成る、請求項2に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項6】
前記移動領域規制手段は、荷受け部材の左右両側板部に荷受け部材長さ方向に沿って設けられた長孔と、この長孔を貫通する水平軸と、この水平軸の両端を荷受け部材の左右両外側で支持し且つ支持部材に取り付けられた軸受部材とから成る、請求項1〜5の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項7】
荷収納区画の左右両隔壁枠を構成する前後一対の支柱材は、互いに対向する内側が開放した横断面形状のものであって、前記支持部材は、前後両支柱材の側壁板部に取り付けられたアーム材に長さ方向両端部が支持されている、請求項1〜6の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−50127(P2008−50127A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228793(P2006−228793)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】