説明

荷保管用ラックの荷支持装置

【課題】荷収納区画1の左右両隔壁枠2の内側に荷出し入れ方向に長い左右一対の荷受け部材3が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に免震構造を採用して耐震性を高める。
【解決手段】荷収納区画1の左右両隔壁枠2の内側に、当該荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に長い左右一対の荷受け部材3が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記荷受け部材3は、その真下に位置する前記前後奥行き方向(X方向)と平行な水平軸心(水平支軸8の軸心)と同心円弧状の荷受け面3aを有すると共に、前記水平軸心(水平支軸8の軸心)に沿った前後方向の移動と当該水平軸心(水平支軸8の軸心)の周りでの一定範囲内の回転とが可能に支持され、この荷受け部材3を前後移動領域内の定位置と回転領域内の中立位置とに付勢保持する付勢手段10が併設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の荷保管用ラックにおいて、地震時にラックが荷収納区画の前後奥行き方向(荷出し入れ方向)に揺れることによって、保管中の荷が当該ラックの通路側(ラックに沿って設けられた入出庫用クレーンの走行通路のある側)へ荷受け部材上を滑動して落下する事故が発生している。このような事故を未然に防止する一つの手段として、各荷収納区画が備える左右一対の荷受け部材を免震構造とすることが考えられている。例えば特許文献1に記載されるように、この種の荷保管用ラックの荷支持装置における免震構造は、荷収納区画の左右両隔壁枠から連設された支持部材に対して各荷受け部材をその長さ方向(荷収納区画の前後奥行き方向)にスライド可能に支持し、荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段を設けるものであった。
【特許文献1】特許第3729316号公報(特開2000−226111号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された従来の免震構造では、ラックが荷収納区画の前後奥行き方向に揺れたときに、荷受け部材に支持されている荷がラックの通路側へ飛び出して落下する事故を防止できるが、ラックが左右横方向に揺れたとき、荷が荷受け部材上で荷収納区画の左右横方向に滑動して、片側の荷受け部材から外れ落ちるような事故を防止することができない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る荷保管用ラックの荷支持装置を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の荷支持装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、荷収納区画1の左右両隔壁枠2の内側に、当該荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に長い左右一対の荷受け部材3が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記荷受け部材3は、その真下に位置する前記前後奥行き方向と平行な水平軸心(水平支軸8の軸心)と同心円弧状の荷受け面3aを有すると共に、前記水平軸心(水平支軸8の軸心)に沿った前後方向の移動と当該水平軸心(水平支軸8の軸心)の周りでの一定範囲内の回転とが可能に支持され、この荷受け部材3を前後移動領域内の定位置と回転領域内の中立位置とに付勢保持する付勢手段10が併設された構成となっている。
【0005】
上記構成の本発明による荷保管用ラックの荷支持装置を実施する場合、具体的には、請求項2に記載のように、前記隔壁枠2の内側には、前記水平軸心と同心状の水平支軸8を架設し、この水平支軸8に、その長さ方向の移動と軸心の周りの回転とが可能に外嵌された可動体9の上側に前記荷受け部材3を載置固定し、前記付勢手段10は、前記可動体9を前記水平支軸8の長さ方向に付勢するように前記水平支軸8に遊嵌されたコイルバネ11a,11bと、前記可動体9の下側に取り付けられて当該可動体9を正立姿勢に付勢する重錘11cとから構成することができる。この場合、請求項3に記載のように、前記コイルバネ11a,11bは、前記可動体9の前後両側に介装して、当該可動体9を前後移動領域内の中立位置に付勢保持するように構成することができる。
【0006】
又、請求項4に記載のように、前記荷受け部材3の回転領域を、回転軸心の真上の中立位置を中心に左右一定角度内に制限する、回転制限手段を併設することができる。
【0007】
更に、請求項5に記載のように、前記水平支軸8は、前記隔壁枠2に支持された前後一対のアーム材7a,7bに取り付けられた軸受部材14に両端を嵌合して支持し、当該アーム材7a,7bには、前記水平支軸8に外嵌するバネ受け座23を有する部材21a,21bを取り付け、このバネ受け座23と可動体9との間で前記水平支軸8に前記コイルバネ11a,11bを遊嵌し、前記バネ受け座23を有する部材21a,21bに、前記コイルバネ11a,11bに抗しての可動体9の移動を制限するストッパー部材25a,25bを取り付けることができる。この場合、請求項6に記載のように、前記荷受け部材3が前記水平支軸8の真上の中立位置を中心に左右の回転したとき、当該荷受け部材3の左右両側辺が前記アーム材7a,7b又はバネ受け座23を有する部材21a,21bに当接して、荷受け部材3の回転が制限されるように構成することができる。
【0008】
前記可動体9は、請求項7に記載のように、前側可動体9aと後側可動体9b、及びこの前後2つの可動体9a,9bの下側で両者を連結する連結部材9cにより構成し、この連結部材9cに前記重錘11cを取り付けることができる。
【0009】
又、請求項8に記載のように、前記コイルバネ11a,11bと可動体9との間には、両者の相対回転滑り抵抗を減じるためのスラスト受け部材26a,26bを介装することができるが、逆に、請求項9に記載のように、前記コイルバネ11a,11bの内端は前記可動体9に係止すると共に、前記コイルバネ11a,11bの外端は、前記水平支軸8の周りでの回転ができない状態に係止し、前記可動体9が水平支軸8の周りで回転したときに前記コイルバネ11a,11bが捩じられるように構成することも可能である。
【0010】
更に、請求項10に記載のように、荷収納区画1の左右両隔壁枠2を構成する前後一対の支柱材4a,4bは、互いに対向する内側が開放した横断面形状に構成し、これら前後両支柱材4a,4bの側壁板部4cに取り付けられて荷収納区画1側に延出する前後一対のアーム材7a,7bに前記水平支軸8の両端を取り付けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る荷保管用ラックの荷支持装置においては、ラックが地震発生時に荷収納区画の前後奥行き方向(荷受け部材の長さ方向)に揺れ動いたときには、前後に揺れ動くラック側の隔壁枠と荷を支持している荷受け部材との間に付勢手段の付勢力に抗しての前後方向の相対移動を生じさせ、荷を支持している荷受け部材がラックと一体に同一速度、同一振幅で前後方向に揺れ動くことをなくし、以て、開放された通路側(前方)にラックが揺れ動いたときに慣性で荷が荷受け部材上を通路側へ滑動し、場合によっては通路側へ落下してしまうような現象を生じさせないで済む。又、ラックが左右横方向に揺れ動いたときには、慣性で荷受け部材上を左右横方向に移動しょうとする荷が荷受け部材の荷受け面との間の摩擦力を介して当該荷受け部材を、前後方向の水平軸心の周りに回転させるので、当該荷と荷受け部材の荷受け面との間には左右横方向の相対滑りを生じさせないで済む。そして荷受け部材の前後方向の移動や前後方向水平軸心の周りの回転は付勢手段の付勢力に抗して行われており、荷受け部材に作用していた前後方向の外力や水平軸心の周りの回転力が減少したり無くなったときには、前記付勢手段の付勢力により、荷受け部材は前後移動領域内の定位置に復帰し、或いは回転領域内の中立位置に自動復帰するので、荷受け部材(荷受け面)上で荷が相対的に滑動しない限り荷の位置が前後方向或いは左右方向に変動することはなく、安全に荷を継続保管することができる。
【0012】
上記のように、本発明に係る荷保管用ラックの荷支持装置によれば、ラックが荷収納区画の前後奥行き方向だけでなく左右横方向に揺れ動いたときにも、荷受け部材上での荷の滑動を防止することができる。従って、地震発生時に荷が荷収納区画から通路側へ飛び出して落下するような事故だけでなく、荷が荷収納区画内で左右横方向に滑動して荷受け部材の片側からずり落ちるなどの事故も未然に防止することができ、高い免震効果が期待できる。
【0013】
尚、請求項2に記載の構成によれば、1つの荷受け部材に対して1本の水平支軸を架設するだけで、当該水平支軸を荷受け部材の前後方向移動時のガイドレールと水平軸心周りの回転の中心軸との両方に兼用させることができ、又、荷受け部材を水平軸心周りの回転領域の中立位置に付勢保持する付勢手段が、バネではなく重錘によって構成されるので、全体として、請求項1に記載の本発明を簡単な構成で容易に実施することができる。この場合に請求項3に記載の構成によれば、荷受け部材をして、その前後移動領域内の中間位置を中心にして前後何れ側にも相対移動させることができ、ラックの前後方向の揺れに対する免震効果を一層高めることができる。
【0014】
又、請求項4に記載の構成によれば、荷受け部材の左右回転領域を安全角度範囲内に制限して安全性を高めることができる。又、請求項5に記載の構成によれば、水平支軸の架設が容易になり、しかも、当該水平支軸に遊嵌されるコイルバネの長さを、水平支軸の端部を支持するアーム材と可動体との間の距離よりも短くし、可動体(荷受け部材)の前後方向移動を制限するストッパー部材を可動体に近い位置に簡単容易に配設することができる。この場合、請求項6に記載の構成によれば、荷受け部材の回転制限手段として特別な部材を追加する必要がなくなり、荷受け部材の回転制限手段を組み込んだ構成を簡単にして安価に実施することができる。
【0015】
又、請求項7に記載の構成によれば、長尺の荷受け部材も前後方向に適当に離した前側可動体と後側可動体とを介して安定的に水平支軸で支持させることができ、しかも、この前後2つの可動体を互いに連結する連結部材に重錘を取り付けるようにしたので、前後方向長さの短い重錘であっても、前後両可動体の下側に安定的に取り付けることができる。
【0016】
尚、請求項8に記載の構成によれば、荷受け部材が水平支軸の周りに回転動作するとき、コイルバネにその回転力を作用させないで済み、荷受け部材の回転動作を円滑に行わせることができるが、請求項9に記載の構成によれば、荷受け部材が水平支軸の周りに回転動作するとき、当該可動体(荷受け部材)の回転力を、前後移動領域内の定位置に荷受け部材を付勢保持させるためのコイルバネに捩じり力として作用させることができるので、そのコイルバネの捩じり反力で荷受け部材を復帰回転方向に付勢することができ、単に重錘による復帰回転力を補えるだけでなく、当該回転力を速やかに減衰させる効果も期待でき、免震効果をより一層高めることができる。
【0017】
更に、請求項10に記載の構成によれば、ラックの隔壁枠を構成する支柱材の側壁板部の左右横方向の弾性変形を利用して、荷受け部材に対する免震効果を補わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の荷支持装置が適用できるラックの基本的な構成を示しており、1は上下左右両方向に碁盤目状に配置された荷収納区画であって、左右横方向に隣接する荷収納区画1間には垂直に隔壁枠2が立設され、上下に隣接する荷収納区画1は、左右一対の荷受け部材3によって区切られている。
【0019】
各隔壁枠2は、前後一対の支柱材4a,4bを連結部材5によって互いに連結したラチス構造のものであって、荷収納区画1の背面側では、各隔壁枠2の後側支柱材4bが水平や斜めの連結部材6で連結され、荷収納区画1の正面側、即ち、荷収納区画1に対して荷の出し入れを行う入出庫用クレーンの走行通路側では、荷収納区画1に対する荷の出し入れに邪魔にならないレベルで水平連結材(図示省略)で各隔壁枠2の前側支柱材4aどうしが連結されることが知られている。左右一対の荷受け部材3は、荷収納区画1の左右両隔壁枠2に隣接するように同一レベルで架設されている。
【0020】
以下、本発明の一実施形態を具体的に説明すると、図2に示すように、隔壁枠2を構成する前後一対の支柱材4a,4bには、荷受け部材3の架設レベルに対応する高さで、前後一対のアーム材7a,7bが取り付けられ、この前後一対のアーム材7a,7b間に、各荷受け部材3の真下位置で前後水平向きに位置する水平支軸8が架設されている。この水平支軸8には、前側可動体9aと後側可動体9b、及び前後両可動体9a,9bどうしをその下側で連結一体化する連結部材9cから成る可動体9が、前記水平支軸8の軸心方向(前後水平方向)の移動と当該水平支軸8の軸心の周りでの回転とが可能なように外嵌支持され、この可動体9の前側可動体9aと後側可動体9bの上側に前記荷受け部材3が載置固定されている。10は付勢手段であって、可動体9の前側可動体9aと前側アーム材7aとの間で水平支軸8に遊嵌された圧縮コイルバネ11aと、可動体9の後側可動体9bと後側アーム材7aとの間で水平支軸8に遊嵌された圧縮コイルバネ11bと、前記連結部材9cの下側に取り付けられた重錘11cとから構成されている。
【0021】
更に詳細構造を図2〜図8に基づいて説明すると、隔壁枠2の前後両支柱材4a,4bは、互いに対向する内側が開放する横断面形状のもので、前後一対のアーム材7a,7bの内端に固着された取付部材12は、支柱材4a,4bの横向きに突出する横断面角形の側壁板部4cに外嵌する状態でピン13により係止されている。水平支軸8は、前後一対のアーム材7a,7bに取り付けられた軸受部材14に両端が内嵌することにより水平に架設されている。前記荷受け部材3は、ハット形断面形状のもので、水平支軸8と同心円弧状の荷受け面3aと、左右両側への張出板部3b,3cとを備えており、この左右両側への張出板部3b,3cが前後両可動体9a,9bの上面に載置された状態でボルト3dにより固定されている。
【0022】
前後両可動体9a,9bには、水平支軸8に対する移動と回転とが円滑に行えるようにするためのスライド回転両用軸受15が内装され、連結部材9cはアングル材から成るもので、その水平板部16の前後両端部が前後両可動体9a,9bの下側面にボルト17で固定され、当該水平板部16の一側辺から垂下する垂直板部18の側面に複数枚の重錘板19が重ねられた状態で前後2本のボルトナット20により取り付けられることにより、重錘11cが構成されている。
【0023】
水平支軸8の両端を支持する前後一対のアーム材7a,7bには、水平支軸8の両端部が貫通する下側開放の箱型部材21a,21bが、水平支軸8の周囲に配置された複数本のボルトナット22により、アーム材7a,7bからの距離調整可能に取り付けられ、当該箱型部材21a,21bのアーム材7a,7bに近い側の垂直板部がバネ受け座23となり、当該箱型部材21a,21bの各可動体9a,9bに近い側の垂直板部24には、各可動体9a,9bに向かって突出する左右一対のストッパー部材25a,25bが取り付けられている。而して、圧縮コイルバネ11a,11bは、前記箱型部材21a,21bの垂直板部24を貫通する状態で水平支軸8の両端部に遊嵌されて軸方向に圧縮され、一端がバネ受け座23に当接すると共に他端が各可動体9a,9bに取り付けられたスラスト受け部材(スラストワッシャーなど)26a,26bに当接するように、バネ受け座23と各可動体9a,9bとの間に介装されている。
【0024】
上記構成によれば、荷受け部材3は、水平支軸8の軸心方向に可動体9及び重錘11cと共に前後移動自在に支承されているが、可動体9がその前後両側から付勢手段11の付勢力、即ち、圧縮コイルバネ11a,11bの付勢力を受けることにより、前後移動領域内の中央定位置に保持されている。係る状態の荷受け部材3に荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)の外力が作用すると、その外力が圧縮コイルバネ11a,11bの付勢力に打ち勝つとき、荷受け部材3は、可動体9及び重錘11cと共にその外力の作用方向に水平支軸8に沿って移動し、当該外力が圧縮コイルバネ11a,11bの付勢力より小さくなると、荷受け部材3は、圧縮コイルバネ11a,11bの付勢力により元の前後移動領域内の中央定位置に押し戻されて保持される。
【0025】
又、荷受け部材3は、水平支軸8の軸心の周りで可動体9及び重錘11cと共に回転可能に支承されているが、図5〜図7に示すように、付勢手段11の重錘11cに作用する重力による付勢力で、回転領域内の中立位置、即ち、水平支軸8の真上位置、に保持されている。係る状態荷受け部材3に水平支軸8の軸心周りの回転力が作用すると、その回転力が重錘11cの重力による付勢力に打ち勝つとき、図5及び図6の仮想線と図8に示すように、荷受け部材3は、可動体9及び重錘11cと共にその回転力の方向に水平支軸8の周りに回転し、当該回転力が重錘11cの重力による付勢力より小さくなると、荷受け部材3は、重錘11cの重力による付勢力により元の回転領域内の中立位置に復帰保持される。この荷受け部材3の回転動作のとき、図5及び図6の仮想線で示すように、荷受け部材3が水平支軸8の真上の中立位置から左右に一定角度回転したとき、当該荷受け部材3の左右両側辺(張出板部3b,3c)がアーム材7a,7b又はバネ受け座23を有する箱型部材21a,21bの上辺に当接し、荷受け部材3の回転領域が角度θに制限される。
【0026】
荷は、付勢手段11で付勢保持されるホームポジションにある左右一対の荷受け部材3間に跨がって支持されるが、このとき荷の底面は、各荷受け部材3の円弧状荷受け面3a上に載置される。この使用状態において、地震などによりラックが荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に揺れ動いたとき、荷を支持している荷受け部材3に対し、ラックと一体の水平支軸8が付勢手段11の圧縮コイルバネ11a,11bの付勢力に抗して同方向に揺動し、荷を支持している荷受け部材3と水平支軸8との間で前後方向の相対移動が生じ、荷受け部材3上の荷は殆ど揺れ動かないか又は、ラック(水平支軸8)の揺れよりも遅れて小さな振幅で揺れ動くことになり、揺れの速度や振幅が想定範囲内であれば所期の免震効果が得られる。そしてラックの揺れが収まったときには、圧縮コイルバネ11a,11bの付勢力で荷受け部材3は所期の定位置に自動的に戻される。
【0027】
又、地震などによりラックが左右横方向に揺れ動いたとき、荷を支持している荷受け部材3は水平支軸8と共にラックと一体に左右横方向に揺れ動くことになるが、このとき、荷は慣性により元の静止位置に残ろうとするので、荷の底面と荷受け部材3の円弧状荷受け面3aとの間の摩擦力により水平支軸8の軸心の周りに荷受け部材3を回転させながら、即ち、荷の底面と荷受け部材3の円弧状荷受け面3aとの間の左右横方向の相対摺接運動は伴わずに、荷受け部材3と荷とが相対的に左右横方向に移動することになり、左右横方向の揺れの速度や振幅が想定範囲内であれば所期の免震効果が得られる。そしてラックの揺れが収まったときには、重錘11cに作用する重力による付勢力で荷受け部材3が水平支軸8の軸心の周りに元の中立位置に戻されることにより、当該荷受け部材3上で支持されていた荷は、荷収納区画1内の左右横方向の元の位置に復帰することになる。
【0028】
尚、上記実施形態では、アーム材7a,7bを介して水平支軸8を支持している隔壁枠2の前後一対の支柱材4a,4bが横断面形状が開放断面であって、当該アーム材7a,7bを取付部材12を介して取り付けている支柱材4a,4bの横向きに突出する横断面角形の側壁板部4cが内外水平方向に弾性変形できるものであるから、この支柱材4a,4bの横断面角形の側壁板部4cの内外水平方向の弾性変形を伴う方向であれば、支持部材9と隔壁枠2との間の水平方向の相対移動がある程度許容されている。従って、地震などによるラック(隔壁枠2)の揺れ方向によっては、水平支軸8と隔壁枠2との間の水平方向の相対移動が、荷受け部材3で支持されている荷に対する免震効果を高めることにもなる。
【0029】
図9は、本発明の別の実施形態の要部を示しており、この図に示すように、圧縮コイルバネ11a,11bと前後各可動体9a,9bとの間に介装したスラスト受け部材26a,26bを省き、圧縮コイルバネ11a,11bの可動体9側の端部11cを、前後各可動体9a,9bに設けたバネ係止部27に係止すると共に、当該圧縮コイルバネ11a,11bのバネ受け座23側の端部11dを当該バネ受け座23に設けたバネ係止部28に係止している。この構成によれば、圧縮コイルバネ11a,11bは、水平支軸8の周りでの可動体9(荷受け部材3)の回転によりその回転方向に捩じられることになる。このため、ラックの左右横方向の揺れによって荷受け部材3が水平支軸8の周りで左右に回転するとき、圧縮コイルバネ11a,11bが荷受け部材3と一体に回転する可動体9を介してその回転方向に弾性に抗して捩じられ、その反力が荷受け部材3を逆方向に回転させる付勢力として作用する。従って、左右横方向にラックが揺れて、先に説明したように荷が荷受け部材3を水平支軸8の周りに回転させながら左右横方向に横動したとき、慣性で荷受け部材3と荷との左右横方向の横動が長く続くことが圧縮コイルバネ11a,11bの捩じり反力で抑制され、荷の左右横方向の揺れが速やかに収束し、安定することになる。
【0030】
尚、荷受け部材3を水平支軸8の周りの回転領域内の中立位置に付勢保持する付勢手段として、捩じりコイルバネなどのスプリングを利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】A図は荷保管用ラックの基本構成を説明する要部の横断平面図、B図は同要部の正面図である。
【図2】A図は荷支持装置を示す一部切欠き平面図、B図は同荷支持装置の片側を示す側面図である。
【図3】荷支持装置の片側の要部を示す縦断側面図である。
【図4】同要部を示す横断平面図である。
【図5】同要部の荷支持状態を示す正面図である。
【図6】同要部の荷支持状態を示す箱型部材位置での縦断正面図である。
【図7】同要部の荷支持状態を示す可動体直前位置での縦断正面図である。
【図8】図7と同一箇所を、支持する荷が左右横方向に移動した状態で示す縦断正面図である。
【図9】本発明の別の実施形態の要部を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 荷収納区画
2 隔壁枠
3 荷受け部材
3a 円弧状荷受け面
4a,4b 支柱材
5,6 連結部材
7a,7b アーム材
8 水平支軸
9 可動体
9a 前側可動体
9b 後側可動体
9c 連結部材
10 付勢手段
11a,11b 圧縮コイルバネ
11c 重錘
12 取付部材
14 軸受部材
15 スライド回転両用軸受
19 重錘板
21a,21b 箱型部材
23 バネ受け座
25a,25b ストッパー部材
26a,26b スラスト受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記荷受け部材は、その真下に位置する前記前後奥行き方向と平行な水平軸心と同心円弧状の荷受け面を有すると共に、前記水平軸心に沿った前後方向の移動と当該水平軸心の周りでの回転とが可能に支持され、この荷受け部材を前後移動領域内の定位置と回転領域内の中立位置とに付勢保持する付勢手段が併設されている、荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項2】
前記隔壁枠の内側には、前記水平軸心と同心状の水平支軸が架設され、この水平支軸に、その長さ方向の移動と軸心の周りの回転とが可能に外嵌された可動体の上側に前記荷受け部材が載置固定され、前記付勢手段は、前記可動体を前記水平支軸の長さ方向に付勢するように前記水平支軸に遊嵌されたコイルバネと、前記可動体の下側に取り付けられて当該可動体を正立姿勢に付勢する重錘とから成る、請求項1に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項3】
前記コイルバネは、前記可動体の前後両側に介装されて、当該可動体を前後移動領域内の中立位置に付勢保持するように構成された、請求項2に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項4】
前記荷受け部材の回転領域を、回転軸心の真上の中立位置を中心に左右一定角度内に制限する、回転制限手段が設けられた、請求項1〜3の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項5】
前記水平支軸は、前記隔壁枠に支持された前後一対のアーム材に取り付けられた軸受部材に両端が嵌合して支持され、当該アーム材には、前記水平支軸に外嵌するバネ受け座を有する部材が取り付けられ、このバネ受け座と可動体との間で前記水平支軸に前記コイルバネが遊嵌され、前記バネ受け座を有する部材に、前記コイルバネに抗しての可動体の移動を制限するストッパー部材が取り付けられている、請求項2〜4の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項6】
前記荷受け部材が前記水平支軸の真上の中立位置を中心に左右の回転したとき、当該荷受け部材の左右両側辺が前記アーム材又はバネ受け座を有する部材に当接して、荷受け部材の回転が制限されるように構成された、請求項5に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項7】
前記可動体は、前側可動体と後側可動体、及びこの前後2つの可動体の下側で両者を連結する連結部材により構成され、前記重錘は、前記連結部材に取り付けられている、請求項2〜6の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項8】
前記コイルバネと可動体との間には、両者の相対回転滑り抵抗を減じるためのスラスト受け部材が介装されている、請求項2〜7の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項9】
前記コイルバネの外端は、前記水平支軸の周りでの回転ができない状態に係止され、前記コイルバネの内端は前記可動体に係止され、前記可動体が水平支軸の周りで回転したときに前記コイルバネが捩じられるように構成された、請求項2〜7の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項10】
荷収納区画の左右両隔壁枠は、前後一対の支柱材を備え、各支柱材は互いに対向する内側が開放した横断面形状のものであって、これら前後両支柱材の側壁板部に取り付けられて荷収納区画側に延出する前後一対のアーム材に前記水平支軸の両端が取り付けられている、請求項1〜9の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−56453(P2008−56453A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237383(P2006−237383)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】