説明

荷役機械

【課題】多種類の荷役物をバランス状態にして移載するエアー式荷役機械において装置構成の簡素化及び低コスト化を達成する技術を提供する。
【解決手段】本発明の荷役機械は、上下方向及び水平方向に移動自在に構成され、所定の荷役物Qを保持して移動させるためのアームを有する昇降機構5と、アームを鉛直方向に駆動するための空気圧シリンダ20と、所定のエアー源から供給されるエアーの圧力を調整して空気圧シリンダ20に出力する電空レギュレータ22と、電空レギュレータ22から空気圧シリンダ20に出力するエアーの圧力を荷役物Qの重量に対応して記憶するバランス圧記憶部28と、バランス圧記憶部28に記憶された情報に基づいて電空レギュレータ22における出力エアー圧を制御する制御回路24とを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役物を昇降して移動するための荷役機械に関し、特に空気圧式の駆動源によって昇降機構を動作させる荷役機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のエアー式荷役機械には、作業者が直接荷役物を掴んで無重力感覚で自在に移動・移載できるバランスモードという制御モードがある。
【0003】
このバランスモードにおけるエアー回路動作を、図6の荷役機械動作原理図を用いて説明する。
図6に示すように、荷役機械100で荷役物101をクランプし持ち上げると、荷役機械100のアーム側には下方向にf1(荷役物101の重量W1+荷役機械100のアーム102の重量W2)が働く。
この力f1は、てこの原理によって空気圧シリンダ103側で上方向に作用する力f2となる。
【0004】
荷役物101を吊り上げた状態(バランス状態)を維持するためには、f2と同じ大きさで逆方向の力f2’を発生させるようシリンダの内圧を上げる必要がある。ここで、空気圧シリンダ103のピストン104の面積をSとすると、バランス状態におけるシリンダ内圧Pは、P=f2’/Sで求めることができる。
【0005】
次に、精密パイロットレギュレータ105の動作について説明する。
精密パイロットレギュレータ105は、そのエアー供給側Aにエアー源106を接続し、パイロット圧入力ポートBにエアー圧P(この場合バランス時のエアー圧)を入力すると、出力ポートCにはパイロット入力圧Pと同じ大きさのエアー圧を発生させることができる。
【0006】
バランス状態では、バランス時の空気圧シリンダ103内のエアー圧Pと精密パイロットレギュレータ105の出力ポート圧を一致させる必要がある。
【0007】
精密パイロットレギュレータ105のパイロット圧入力ポートBには、負荷圧設定レギュレータ107が接続され、この負荷圧設定レギュレータ107の出力エアー圧で精密パイロットレギュレータ105の出力ポート圧を制御するようにしている。
【0008】
このような荷役機械100を実際に使用する場合は、搬送する荷役物101に合わせて負荷圧設定レギュレータ107の出力エアー圧を予め負荷バランス時のエアー圧に設定しておき、次に同じ荷役物101をクランプしたときは精密パイロットレギュレータ105の出力エアー圧を負荷圧設定レギュレータ107の出力エアー圧、すなわちバランス状態におけるエアー圧に設定することにより、荷役機械100を即座にバランス状態に移行させることができる。
【0009】
バランス状態では作業者がクランプした荷役物101に力を加え上下方向に動かすことにより、空気圧シリンダ103内のエアー圧は、設定されているバランス時の空気圧シリンダ103内のエアー圧(以下、バランス圧と略す)から操作力によって変動することになるが、精密パイロットレギュレータ105は、この空気圧シリンダ103内の変動圧を給気又は排気等を行うことにより吸収するため、空気圧シリンダ103内のエアー圧は常に一定に保たれる。
【0010】
その結果、バランス状態では、作業者の操作によって空気圧シリンダ103内のピストンが動いた場合であっても、空気圧シリンダ103内にはこの操作力に反発する力が発生しないため、荷役物101は力を加えた方向に動くことになる。このような動作原理によりバランスモード時においては、荷役機械100は作業者の僅かな操作力により荷役物101を自由に昇降させて搬送することが可能になる。
【0011】
しかしながら、従来技術においては、次のような問題点がある。
例えば、図示しない生産ライン上で、上流側からコンベヤで搬送されてきた荷役物101を荷役機械100でクランプして例えばパレットに積み付ける作業を行う場合において、同じ重量の荷役物101がコンベヤによって搬送される場合、荷役機械100のバランス圧は同じエアー圧で対応できるためバランス圧の変更の必要はないが、ランダムに複数種の荷役物が搬送された場合には、上述のように固定されたバランス圧では対応することができない。
【0012】
このような生産ラインに対応するため、従来の荷役機械では、図7に示すように、荷役機械にエアー制御回路を設けることによって対応してきた。
この場合、コンベヤでn品種の荷役物101が搬送されると仮定すると、荷役機械100に各荷役物101の重量に対応させた[n+1](品種n+無負荷時)個の負荷圧設定レギュレータ108を用意し、それぞれの負荷圧設定レギュレータ108の出力圧を予め設定しておき、搬送されてきた荷役物101に合わせて対応する負荷圧設定レギュレータ108をセレクト弁109で選択して精密パイロットレギュレータ105の出力ポート圧をバランス圧に設定し対応してきた。
【0013】
しかし、このような従来技術では、搬送される品種数に合わせて負荷圧設定レギュレータ108、方向切換弁110、セレクト弁109等が必要であるため、多種類の荷役物に対応する場合に多量の部品が必要でコスト高となり、さらにこれらの部品を装置内に実装する場合は広い実装スペースが必要になる。
【0014】
また、従来技術では、荷役機械100の設置後、新たに対応する荷役物を追加する場合、負荷圧設定レギュレータ108などの部品を追加する必要があるため、追加部品の費用が発生する上、追加した部品の実装スペースも確保しなければならない。
【0015】
従来、このような多品種の荷役物が搬送される生産ラインでは、搬送されてきた荷役物毎にバランス圧を検出し、精密パイロットレギュレータのパイロット入力圧ポートに検出したバランス圧を入力してバランス状態にする制御方法も知られているが、搬送される全ての荷役物に対してその都度バランス圧を検出する操作が必要になるので、操作が煩雑になる上、バランス圧の検出処理に時間がかかってしまうため、荷役物の搬送量が多い生産ラインには不向きであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、多種類の荷役物をバランス状態にして移載するエアー式荷役機械において装置構成の簡素化及び低コスト化を達成する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、上下方向及び水平方向に移動自在に構成され、所定の荷役物を保持して移動させるためのアームと、前記アームを鉛直方向に駆動するための空気圧式駆動機構と、所定のエアー源から供給されるエアーの圧力を調整して前記空気圧式駆動機構に出力する圧力調整手段と、前記圧力調整手段から前記空気圧駆動機構に出力するエアーの圧力を前記荷役物の重量に対応して記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された情報に基づいて前記圧力調整手段における出力エアー圧を制御する制御部とを有する荷役機械である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記圧力調整手段として、電空レギュレータを用いるものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2のいずれか1項記載の発明において、前記圧力調整手段として、精密パイロットレギュレータと、当該精密パイロットレギュレータのパイロット入力圧ポートに接続された電空レギュレータを用いるものである。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の発明において、前記記憶手段として、半導体メモリを用いるものである。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の発明において、当該荷役機械を操作する操作部を有し、前記操作部に、前記圧力調整手段における出力エアー圧を前記荷役物の重量に対応して設定するための複数のエアー圧設定スイッチが設けられているものである。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の発明において、前記エアー圧設定スイッチが、タッチパネル方式の表示部に表示されるように構成されているものである。
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の発明において、前記圧力調整手段における出力エアー圧を前記荷役物の重量に対応して予め設定記憶し、この設定記憶された情報に基づいて前記圧力調整手段における出力エアー圧を制御するように構成されているものである。
【0018】
本発明の場合、圧力調整手段から空気圧駆動機構に出力するエアーの圧力を荷役物の重量に対応して記憶し、この記憶された情報に基づいて圧力調整手段における出力エアー圧を制御するようにしたことから、例えば多種類の荷役物をバランス状態にして移載する場合に、多種類の荷役物の重量に対応させて負荷レギュレータなどの部品を用意する必要がなくなり、装置構成の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0019】
また、新たな重量の荷役物を移載する場合であっても、負荷レギュレータなどの部品を追加する必要なくソフトウェアで対応することができるため生産ラインに柔軟に対応できるエアー式荷役機械を提供することができる。
【0020】
本発明において、圧力調整手段として、電空レギュレータを用いることにより、電気制御によって空気圧駆動機構内のエアー圧の設定及び調整を自在に行うことが可能になる。
【0021】
本発明において、前記圧力調整手段として、精密パイロットレギュレータと、当該精密パイロットレギュレータのパイロット入力圧ポートに接続された電空レギュレータを用いることにより、電空レギュレータのみでは吸排気能力が劣っている場合において、これら両レギュレータを組み合わせることにより精密パイロットレギュレータとして吸排気能力の優れたものを使用することが可能になる。
【0022】
本発明において、記憶手段として、記憶容量大きい半導体メモリを用いることにより、仮にコンベヤ上に何百、何千種類の荷役物が搬送されたとしても、制御回路のハード構成を変えることなく荷役物の出力エアー圧(例えばバランス圧)を容易に記憶し再生することが可能になる。また、半導体メモリを使用することにより、出力エアー圧が記憶されているメモリのデータ書き換え、更新も簡単にできる。
【0023】
本発明において、操作部に複数のエアー圧設定スイッチを設けるようにすれば、圧力調整手段における出力エアー圧を各荷役物の重量に対応して容易に設定することができる。
【0024】
特に、エアー圧設定スイッチが、タッチパネル方式の表示部に表示されるように構成すれば、スイッチ構成を複雑にすることなくスイッチ群を配置することが可能になるとともに、タッチパネル表示器は一般的に複数の画面から構成されているため、多数の負荷エアー圧設定スイッチが必要な場合に、同スイッチを複数の画面に分散して見やすく配置することが可能になる。
【0025】
また、新たにエアー圧設定スイッチを追加する場合であっても、タッチパネル方式の表示部の画面上に追加・配置することができるため、メカニカルなスイッチを追加する必要がなく、スイッチの追加などの仕様変更に対して容易に対応することが可能になる。
【0026】
本発明において、圧力調整手段における出力エアー圧を荷役物の重量に対応して予め設定記憶し、この設定記憶された情報に基づいて圧力調整手段における出力エアー圧を制御するように構成すれば、多種類の荷役物を搬送するラインにおいて、作業者は搬送されてきた荷役物の種類を識別し、またその場で荷役物の重量を測定することなく、例えば1個だけ設けた負荷エアー圧設定スイッチによって直ちに荷役機械をバランス状態に設定し荷役物を移載することが可能になるため、作業性を格段に向上させることができる。また、装置構成をより簡素化することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、多種類の荷役物をバランス状態にして移載するエアー式荷役機械において、装置構成の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0028】
また、本発明によれば、生産ラインに柔軟に対応できるエアー式荷役機械を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る荷役機械の実施の形態の外観構成を示す概略図、図2は、同荷役機械の全体を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施の形態の荷役機械1は、鉛直に立設された支柱2を有し、この支柱2の上部に制御ボックス3が設けられている。
【0030】
図2に示すように、この制御ボックス3内には、従来技術と同様の空気圧シリンダ(空気圧式駆動機構)20が設けられている。この空気圧シリンダ20は、後述するエアー制御系10を介してエアー源21に接続されている。
【0031】
荷役機械1は、第1〜第3のアーム4a〜4cを有する昇降機構5を備えている。ここで、第1のアーム4aは、上下方向に所定の角度回動可能な状態で、てこを構成するように支持され、空気圧シリンダ20によって駆動されるようになっている。
また、第1のアーム4は、支柱2の中心軸を中心にして水平方向に旋回するように支持されている。
【0032】
第1のアーム4aの先端部には、第2のアーム4bが、関節部6を介して常に水平状態を保持する状態で連結され、さらに、第2のアーム4bの先端部(下端部)には、鉛直方向に延びる第3のアーム4cが水平方向に回転可能な状態で連結されている。
【0033】
第3のアーム4cの下端部には、例えばエアーの吸引により荷役物Qを保持するクランプ機構8が取り付けられている。このクランプ機構8は、図示しないクランプ/アンクランプスイッチを操作することによって荷役物Qをクランプし又はクランプを解除するように構成されている。
また、第3のアーム4cの下部には、操作ボックス(操作部)9が取り付けられている。
【0034】
図3は、本実施の形態のエアー制御系の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施の形態においては、空気圧シリンダ20内のエアー圧を制御するため、電気制御が可能な電空レギュレータ(圧力調整手段)22がエアー源21の後段に設けられている。この電空レギュレータ22は、エアー源21から供給されるエアーの圧力を調整して出力するもので、その制御用入力端子がデジタル−アナログ変換部23を介してマイクロコンピュータ等の制御回路(制御部)24に接続されている。
【0035】
一方、空気圧シリンダ20と電空レギュレータ22との間には、電空レギュレータ22と空気圧シリンダ20との間のエアー流路の開閉制御を行う電磁弁25が設けられており、この電磁弁25は、上述した制御回路24に接続されている。
【0036】
また、空気圧シリンダ20には、その内部のエアー圧、即ち負荷バランス圧を測定するためのエアー圧力センサー26が設けられている。
このエアー圧力センサー26は、アナログ−デジタル変換部27を介して制御回路24に接続されている。
【0037】
さらに、制御回路24には、測定した負荷バランス圧情報を記憶しておくために例えば半導体メモリで構成されたバランス圧記憶部(記憶手段)28が接続されている。
【0038】
一方、本実施の形態においては、荷役機械1の制御モードを選択・管理するため、次のスイッチ群が操作ボックス(操作部)9に設けられている。
すなわち、操作ボックス9には、アームを上下方向に動作させる上昇及び下降スイッチ、バランスモード時のシリンダ圧の測定を行うためのタイミング信号を発行するバランスモード設定スイッチ、荷役物をクランプしない状態のバランス圧を設定するための無負荷バランス圧設定スイッチ、バランスモード時にバランス圧記憶部28から該当する負荷バランス圧データを読み出し電空レギュレータ22の出力エアー圧を設定しバランスモードに移行させる負荷1〜nバランス圧設定スイッチ、負荷バランス圧を記憶する際のタイミング信号を発行する負荷バランス圧記憶スイッチが設けられ、これら各種スイッチは、制御回路24に接続されている。
【0039】
<負荷バランス圧の測定及び記憶方法>
まず、クランプ機構8によって例えば第1の荷役物Q1をクランプし、操作ボックス9の上昇スイッチを操作して第1の荷役物Q1を吊り上げる。
【0040】
そして、この状態でバランスモード設定スイッチをオンにして電磁弁25を遮断する。これにより空気圧シリンダ20へのエアー供給が断たれるため、空気圧シリンダ20は隔離された状態となる。
【0041】
この状態で、空気圧シリンダ20内のエアー圧(バランス圧)をエアー圧力センサー26によって測定する。そして、測定された空気圧シリンダ20内のエアー圧情報を、デジタル変換して制御回路24に読み込ませる。
【0042】
そして、負荷バランス圧記憶スイッチをオンにした状態で、負荷1バランス圧設定スイッチをオンにし、読み込まれた負荷バランス圧情報をバランス圧記憶部28に転送し、第1の荷役物Q1用のメモリ領域に記憶する。
【0043】
以下、第1の荷役物Q1と重量が異なる第2の荷役物Q2〜第nの荷役物Qnについて同様の操作を行うことにより、複数の荷役物Q1〜Qnについての負荷バランス圧情報をバランス圧記憶部28に記憶させる。
【0044】
<バランスモード移行時の処理方法>
上述した操作を行い、無負荷時のバランス圧及び荷役物の重量に対応したバランス圧が既に記憶されている状態において、生産ライン(図示せず)に複数の荷役物Q1〜Qnが搬送されてきたときの荷役機械1による移載処理について以下に説明する。
【0045】
まず、荷役物Qを把持していない状態(アンクランプ状態)において、無負荷バランス圧設定スイッチを押し、空気圧シリンダ20を無負荷時のエアー圧に設定する。
【0046】
次いで、無負荷バランス状態にある第3のアーム4cを操作して、クランプ機構8を生産ラインの上方に移動させ、搬送されてきた荷役物Q(例えば第1の荷役物Q1)をクランプする。
【0047】
この状態で、負荷1エアー圧設定スイッチをオンにすることにより、空気圧シリンダ20を、第1の荷役物Q1に対応する負荷バランス圧1に設定し、昇降機構5を第1の荷役物Q1把持時のバランス状態にする。
【0048】
そして、把持部8にクランプされている第1の荷役物Q1を掴んで所望の場所に移動し、無負荷エアー圧設定スイッチをオンにして、荷役機械1を無負荷バランス圧に設定する。
最後に、第1の荷役物Q1をアンクランプして所定の位置に配置する。
【0049】
以下、搬送されてきた複数の荷役物Q1〜Qnについて、上記同様の操作を行うことにより、各荷役物Q1〜Qnに対応した負荷バランス圧1〜nを設定し、各荷役物Q1〜Qnの移載を行う。
【0050】
以上述べたように本実施の形態によれば、操作ボックス9に複数のバランス圧設定スイッチを設け、電空レギュレータ22から空気圧シリンダに出力するエアーの圧力を荷役物Qの重量に対応して記憶し、この記憶された情報に基づいて電空レギュレータ22における出力エアー圧を制御するようにしたことから、多種類の荷役物Qをバランス状態にして移載する場合に、多種類の荷役物Qの重量に対応させた負荷レギュレータなどの部品を用意する必要がなくなり、装置構成の簡素化及び低コスト化が図ることができる。
【0051】
また、新たな重量の荷役物Qを移載する場合であっても、負荷レギュレータなどの部品を追加する必要なくソフトウェアで対応することができるため生産ラインに柔軟に対応できる装置を提供することができる。
【0052】
特に本実施の形態においては、バランス圧記憶部28として、記憶容量大きい半導体メモリを用いることにより、エアー制御系10のハード構成を変えることなく大量の荷役物Qの出力エアー圧(バランス圧)を容易に記憶し再生することが可能になる。また、半導体メモリを使用することにより、出力エアー圧が記憶されているメモリのデータ書き換え、更新も簡単に行うことができる。
【0053】
図4及び図5は、本発明の他の実施の形態を示すものであり、以下上記実施の形態と対応する部分には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0054】
上述の実施の形態では、多種類の荷役物Qに対応しようとした場合、荷役物Qの種類分だけ負荷エアー圧設定スイッチが必要になるため、操作ボックス9に多数のスイッチを配置することになり、スイッチの実装スペースが必要になる。このような場合には、図4に示すようなタッチパネル表示器30を使用し、このタッチパネル表示器30上に、無負荷バランス圧設定スイッチ、負荷1〜nバランス圧設定スイッチ、負荷バランス圧記憶スイッチ等を表示するように構成することができる。
【0055】
このような構成を有する本実施の形態によれば、スイッチ構成を複雑にすることなくスイッチ群を配置することが可能になるとともに、タッチパネル表示器30は一般的に複数の画面から構成されているため、多数の負荷エアー圧設定スイッチが必要な場合に、同スイッチを複数の画面に分散して見やすく配置することが可能になる。
【0056】
また、新たにエアー圧設定スイッチを追加する場合であっても、タッチパネル方式の表示部の画面上に追加・配置することができるため、メカニカルなスイッチを追加する必要がなく、スイッチの追加などの仕様変更に対して容易に対応することが可能になる。
【0057】
その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
【0058】
一方、操作ボックス9に多数の負荷エアー圧設定スイッチを配置して操作する場合、搬送されてきた荷役物Qに対してどのスイッチが該当スイッチなのか即座に識別し選択することが難しい。この場合、負荷エアー圧設定スイッチが多ければ多い程スイッチを選択することが難しくなり、操作性も悪くなる。
【0059】
このような生産ラインで本発明による荷役機械1を使用する場合は、図4に示すように、荷役機械1の上流にバーコードリーダー40など荷役物Q情報を読み取る装置を設け、同装置と荷役機械1を通信手段などで接続し荷役物Qが荷役機械1に到達時には既に読み取った荷役物Qの情報をバランス圧記憶部28内に取り込んでおき、その荷役物Qの情報に基づき、到達した荷役物Qの負荷バランス圧を予めバランス圧記憶部28から読み出して動作の準備しておくように構成することもできる。
【0060】
このような構成によれば、作業者は搬送されてきた荷役物Qを識別し該当する負荷エアー圧設定スイッチを選択する必要がなくなるため、多品種の荷役物Qが搬送されてくる生産ラインでも、負荷エアー圧設定スイッチを1個だけ用意しておくことで対応できるようになり操作性は格段に向上する。また、装置構成をより簡素化することが可能になる。
【0061】
その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
【0062】
他方、図3及び図4に示す実施の形態では、空気圧シリンダ20内のエアー圧制御に電空レギュレータ22を用いたが、この電空レギュレータ22に代えて、精密パイロットレギュレータ29を使用し同パイロットレギュレータ29のパイロット入力圧ポートを電空レギュレータ22で制御することもできる。
【0063】
このような構成を有する本実施の形態によれば、電空レギュレータ22のみでは吸排気能力が劣っている場合において、これら両レギュレータ22、29を組み合わせることにより精密パイロットレギュレータ29として吸排気能力の優れたものを使用することが可能になる。
【0064】
その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る荷役機械の実施の形態の外観構成を示す概略図である。
【図2】同荷役機械の全体を示す概略構成図である。
【図3】本実施の形態のエアー制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】他の実施の形態のエアー制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】さらに他の実施の形態のエアー制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】従来のエアー式荷役機械の動作原理を示す概略構成図である。
【図7】従来のエアー制御系の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0066】
1…荷役機械 2… 3… 4a…第1のアーム、4b…第2のアーム、4c…第3のアーム、5…昇降機構、9…操作ボックス(操作部)、10…エアー制御系 11… 12… 20…空気圧シリンダ(空気圧式駆動機構) 21…エアー源 24…制御回路(制御部) 28…バランス圧記憶部(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向及び水平方向に移動自在に構成され、所定の荷役物を保持して移動させるためのアームと、
前記アームを鉛直方向に駆動するための空気圧式駆動機構と、
所定のエアー源から供給されるエアーの圧力を調整して前記空気圧式駆動機構に出力する圧力調整手段と、
前記圧力調整手段から前記空気圧駆動機構に出力するエアーの圧力を前記荷役物の重量に対応して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて前記圧力調整手段における出力エアー圧を制御する制御部とを有する荷役機械。
【請求項2】
前記圧力調整手段として、電空レギュレータを用いる請求項1記載の荷役機械。
【請求項3】
前記圧力調整手段として、精密パイロットレギュレータと、当該精密パイロットレギュレータのパイロット入力圧ポートに接続された電空レギュレータを用いる請求項1又は2のいずれか1項記載の荷役機械。
【請求項4】
前記記憶手段として、半導体メモリを用いる請求項1乃至3のいずれか1項記載の荷役機械。
【請求項5】
当該荷役機械を操作する操作部を有し、前記操作部に、前記圧力調整手段における出力エアー圧を前記荷役物の重量に対応して設定するための複数のエアー圧設定スイッチが設けられている請求項1乃至4のいずれか1項記載の荷役機械。
【請求項6】
前記エアー圧設定スイッチが、タッチパネル方式の表示部に表示されるように構成されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の荷役機械。
【請求項7】
前記圧力調整手段における出力エアー圧を前記荷役物の重量に対応して予め設定記憶し、この設定記憶された情報に基づいて前記圧力調整手段における出力エアー圧を制御するように構成されている請求項1乃至6のいずれか1項記載の荷役機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−290556(P2006−290556A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114295(P2005−114295)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000110022)トーヨーコーケン株式会社 (19)