説明

荷役車両の垂直搬送装置

【課題】フロアにキャリッジ収納用のピットを形成する工事が不要で、しかも荷役車両の搬送にあたって高精度の位置制御を必要とせず、簡単かつ安価に実現できる垂直搬送装置を提供する。
【解決手段】荷役車両6の車両本体7の左右両側に、側方および前後の3方向に開口した凹部11を備えた掛止部10を設ける。キャリッジ4の可動突片5の初期位置は、可動突片5が掛止部10の凹部11へ挿入された状態において、可動突片5と凹部11の内壁との間に間隙が形成されるような位置に設定されている。可動床Pを垂直状態とし、キャリッジ4を上昇させて、可動突片5を掛止部10に掛けた状態で荷役車両6を可動床Pの水平位置よりも上方位置まで搬送する。可動床Pが回動して水平状態になった後、キャリッジ4を下降させて荷役車両6を可動床Pに着地させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車などの荷役車両を下のフロアから上のフロアへ搬送する際に用いる垂直搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送車を例えば1階のフロアから2階のフロアへ移動させる場合、従来は、1階で無人搬送車がエレベータに乗り込み、エレベータの自動運転によって無人搬送車を2階まで搬送し、2階で無人搬送車がエレベータから出て目的の場所まで走行してゆくのが一般的であった。しかしながら、無人搬送車を載置して搬送するキャリッジとフロアとの間で無人搬送車が段差なくスムーズに移動できるようにするには、キャリッジの床面とフロアの床面とを同一面にする必要があるため、キャリッジを収めるピット(窪み)をフロアに形成する工事が必要となって、費用がかさむという問題がある。また、キャリッジとフロアの床面が同一になるようにキャリッジを高精度に位置制御する必要があり、キャリッジの位置決めに時間がかかるという問題もある。
【0003】
下記の特許文献1には、昇降可能なキャリッジを支柱に装備し、キャリッジに設けた支持アームにより車両を昇降させるリフト装置が示されている。しかしながら、これは車両整備用の装置であり、車両は単に垂直移動するだけであって、上昇位置からフロアへ水平移動するものではないので、上述したようなキャリッジとフロアの面一性や、キャリッジの位置決め精度は問題とならない。一方、下記の特許文献2には、支柱に装備した昇降可能なキャリッジにより、荷搬送用パレットをパレット授受箇所と中継箇所との間で昇降させるパレット搬送装置が示されている。この装置は荷役車両を搬送するためのものではないが、パレット授受箇所に位置する荷搬送用パレットの下面が床面と同一面となるように床面にキャリッジが入り込む凹部を形成しているので、上述したようなフロア工事が必要となるとともに、パレットの受け渡しのためにキャリッジ位置を高精度に制御する必要があり、コストが高くなるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−128482号公報(段落0018〜0022、図2)
【特許文献2】特開2005−330044号公報(段落0032、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、フロアにキャリッジ収納用のピットを形成する工事が不要で、しかも荷役車両の搬送にあたって高精度の位置制御を必要とせず、簡単かつ安価に実現できる垂直搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る垂直搬送装置は、車両本体に荷を積載して走行する荷役車両を垂直に搬送するための装置であって、車両本体に設けられた掛止部に掛かる可動突片を有するキャリッジと、フロアに立設されキャリッジを昇降自在に支持する支柱と、フロアの上方に設けられ垂直位置から水平位置へ回動可能な可動床とを備える。車両本体の走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向としたとき、掛止部は、車両本体の左右両側に設けられていて、側方および前後の3方向に開口した凹部を備えている。キャリッジの可動突片の初期位置は、当該可動突片が掛止部の凹部へ挿入された状態において可動突片と凹部内壁との間に間隙が形成されるような位置に設定されている。そして、可動床を垂直状態とし、初期位置にある可動突片が掛止部の凹部へ挿入されるように荷役車両をフロア上に位置させた後、キャリッジを上昇させて、可動突片を掛止部に掛けた状態で荷役車両を可動床の水平位置よりも上方位置まで搬送する一方、可動床を垂直位置から水平位置へ回動させる。可動床が水平状態になった後、キャリッジを下降させて荷役車両を可動床に着地させる。この着地状態において、可動突片と凹部内壁との間には間隙が形成される。
【0007】
本発明ではこのように、初期状態で車両本体に設けた掛止部の凹部へキャリッジの可動突片が挿入された際に、可動突片と凹部内壁との間に間隙が形成されるようになっているので、荷役車両を前進させるだけで、掛止部の凹部にキャリッジの可動突片を容易に挿入することができ、可動突片の上下位置に多少の誤差があっても、可動突片が掛止部に衝突するおそれはない。また、荷役車両を上の階へ上昇させる場合は、可動床の水平位置より上方へ荷役車両を搬送するとともに、可動床を垂直位置から水平位置へ回動させ、その後キャリッジを下降させるようにしたので、キャリッジの下降により荷役車両は自動的に可動床に着地する。したがって、この可動床と当該階のフロアとを同一面にしておけば、キャリッジの位置制御がラフであっても、荷役車両は可動床によって正確に垂直方向に位置決めされる。また、荷役車両が可動床に着地した状態では、初期状態と同様に、可動突片と凹部内壁との間に間隙が形成されるので、可動突片の上下位置に多少の誤差があっても、荷役車両が可動床からフロアへ移る際に、可動突片と掛止部との間で摩擦が生じることはない。以上のことから、本発明では荷役車両の搬送にあたって、キャリッジの位置を高精度に制御する必要がなく、ラフな制御で済むことになる。また、キャリッジは側方から荷役車両を支持するので、フロアにキャリッジを収納するためのピットを形成する工事も不要となる。
【0008】
本発明では、掛止部が車両本体の左右の側面より側方へ張り出さないように設けられていることが好ましい。このようにすると、キャリッジを支持する支柱の間隔が広がるのを抑制でき、垂直搬送装置をコンパクトに構成することができる。
【0009】
また、本発明では、キャリッジの可動突片が車両本体の前後方向の長さ以上にわたって設けられていることが好ましい。このようにすると、長尺の可動突片によって車両本体を安定に支持することができ、たとえ搬送中に車両本体が前後方向に動いたとしても、掛止部から可動突片が外れるのを防止することができ、安全を確保することができる。
【0010】
また、本発明の好ましい実施形態では、可動床を回動させるリンク機構と、可動床を水平位置に固定するロック機構とが設けられ、可動床は、リンク機構により回転する回転軸に一端が支持され、リンク機構により垂直位置から水平位置を若干超えるまで回動した後、水平位置に戻る。この水平位置において可動床の他端がロック機構によりロックされ、これによって可動床は水平位置を維持する。可動床を垂直位置から90°回転させて水平位置で正確に停止させようとすると、正確な位置決め制御が必要となるが、上記のようにすれば、可動床を90°より若干多めに回転させた後に水平位置に戻すことで、可動床は水平位置でロック機構により機械的に位置決めされるので、リンク機構を駆動するモータの制御はラフなものでよい。また、従来のように荷役車両をキャリッジ上に載置して搬送し、キャリッジ上からフロアへ移す場合は、キャリッジを吊るチェーンが車両の重量で伸びることにより、キャリッジが目的の階で停止した状態においてキャリッジとフロアとの間に段差が生じるが、本発明では、チェーンの伸びに関係なく可動床をフロアに対して正確に位置決めできるので、段差が生じることはなく、荷役車両はスムーズにフロアへ移ることができる。
【0011】
さらに、本発明の垂直搬送装置は、可動床に着地した荷役車両が当該可動床と同じ階のフロアへ移る際に落下するのを防止するための落下防止手段を備えていることが好ましい。この落下防止手段は、着地した荷役車両の掛止部の凹部に挿入されている可動突片と高さが略同じで、当該可動突片と隣接して可動突片の延長方向に延びる固定突片を有している。このようにすると、荷役車両が可動床からフロアへ移る際に、何らかの原因で可動床が水平位置を維持しなくなって下方へ回動したとしても、荷役車両の掛止部の凹部には固定突片が挿入されているため、固定突片が掛止部に掛かることにより荷役車両が落下するのが阻止され、可動突片だけで荷役車両を支持する場合に比べて、安全性をより高めることができる。
【0012】
本発明では、キャリッジの可動突片の上面に円錐状の突起を設け、掛止部の凹部の上部内壁に、キャリッジで荷役車両を搬送する際に上記突起が嵌合する位置決め用の穴を設けてもよい。このようにすると、荷役車両が垂直搬送装置へ進入して停止した際に多少の前後左右の位置ずれが生じても、キャリッジを上昇させると可動突片の円錐状突起が掛止部の穴に自然に嵌合し、位置ずれを補正して荷役車両をキャリッジに対して正確に位置決めすることができる。また、荷役車両の搬送過程においても、円錐状突起と穴との嵌合により、荷役車両を安定した姿勢でキャリッジに支持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フロアにキャリッジ収納用のピットを形成する工事が不要となるとともに、荷役車両の搬送にあたってキャリッジの位置を高精度に制御する必要がないので、垂直搬送装置を簡単な構成で安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る垂直搬送装置100の正面図、図2は同側面図である。1はフロアFに立設された鋼材からなるフレームであって、上部に天板15を備えており、この天板15には、後述する荷役車両6を昇降させるためのモータ16が設けられている。2は左右に1対設けられた昇降板であって、ガイドローラ3とキャリッジ4を備えている。5はキャリッジ4に設けられている可動突片である。昇降板2は、図示しないチェーンを介してモータ16と連結されているとともに、図2に示す支柱17に昇降自在に支持されている。支柱17はフロアFに立設されたH鋼などからなり、昇降板2のガイドローラ3が挿入される案内溝(図示省略)を有している。そして、モータ16の回転により昇降板2がチェーンで吊り上げられ、昇降板2はガイドローラ3で案内されつつ支柱17に沿って上昇する。
【0015】
荷役車両6は、車両本体7、ホイール8、荷受台9および掛止部10を備えている。この荷役車両6は、例えば無人搬送車であって、図示しない制御装置や通信装置を搭載しており、自律走行により荷受台9に積載された荷Wを所定の場所まで搬送する。図1で車両本体7の走行方向(紙面に垂直な方向)を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向としたとき、掛止部10は、車両本体7の左右両側に溶接やボルト等により取り付けられており、側方および前後の3方向に開口した凹部11を備えている。図2に示すように、掛止部10および凹部11は、車両本体7の前後方向の全幅にわたる長さを有している。
【0016】
掛止部10の凹部11には、図1に示すように、キャリッジ4の可動突片5が挿入される。この可動突片5は、図2に示すように、車両本体7の前後方向の長さ以上にわたって設けられており、掛止部10の凹部11へ挿入された状態では、凹部11の両端から突出するようになっている。キャリッジ4の上昇時に、可動突片5が掛止部10に掛かることにより、荷役車両6はキャリッジ4とともに上方へ移動する。図1および図2において、下側に実線で示す荷役車両6は1階のフロアFにある荷役車両を表しており、上側に破線で示す荷役車両6は2階へ搬送された荷役車両を表している。
【0017】
キャリッジ4の可動突片5の初期位置、すなわち図1の下側に実線で示す可動突片5の位置(フロアFからの高さ)は、図3の凹部11の拡大図に示すように、可動突片5が掛止部10の凹部11へ挿入された状態において、可動突片5と凹部11の内壁11a〜11cとの間に間隙Ga〜Gcが形成されるような位置に設定されている。なお、図3において、5aは摩擦係数の大きいゴム等の材質からなるプレートであって、可動突片5の上面に接着等により固着されている。また、7aは車両本体7の側面であって、掛止部10は側面7aより側方へ張り出さないように設けられている。これにより、キャリッジ4を支持する支柱17の間隔が広がるのを抑制でき、垂直搬送装置100をコンパクトに構成することができる。
【0018】
図1、図2に示すように、フレーム1には梁14が架設されており、この梁14にモータ12が取り付けられている。13はモータ12により駆動されるリンク機構であって、モータ12の左右に1対設けられている。PはフロアFの上方に設けられた可動床であって、モータ12の回転によりリンク機構13を介して回動する。この可動床Pは、図2に破線で示した垂直位置から、一点鎖線で示した水平位置まで略90°回転可能となっている。28は可動床Pの基端が支持された回転軸であって、リンク機構13の作動により回転する。この回転軸28は、図1に示すように、梁14に固定されたアーム30に設けられている軸受29に支持されている。
【0019】
図2において、フレーム1には、ロック機構を構成するモータ18およびロックカム19が装備されている。ロックカム19はモータ18により回動し、可動床Pが水平位置(一点鎖線)になったときに、可動床Pの先端に係合して、可動床Pを水平位置に保持する。この水平状態にある可動床Pに、上方へ搬送された荷役車両6が載置される。荷役車両6を搬送する手順の詳細については後述する。20は2階のフロアであって、このフロア20の上面と、水平位置にある可動床Pの上面とは、同一面になっている。23は2階に設けられている扉であって、図4の平面図に示されるように、いわゆる観音開きの構造をした1対の開閉自在な扉からなる。23aは扉23の回転軸であって、図2に示すモータ24に連結されている。扉23は、普段は閉じており、2階に搬送された荷役車両6が可動床Pからフロア20へ移動する際に、モータ24の作動により図2の状態に開くようになっている。
【0020】
25はフロア20へ移動する荷役車両6の落下を防止するためのレールであって、フレーム1に溶接等により固定されている。これに代えて、フロア20に設けた支柱(図示省略)にレール25を取り付けてもよい。レール25は、図8に示すように、キャリッジ4と同様の形状をしていて、固定突片26を備えており、図4に示すように、1対設けられている。扉23には、開閉時にレール25を逃がすための切欠き部27が形成されている。21は1階に設けられている扉、22は扉21を開閉するためのモータである。扉21は、普段は閉じており、荷役車両6が垂直搬送装置100に進入する際に、モータ22の作動により図2の状態に開くようになっている。扉21も、扉23と同様の観音開きの構造をしているが、扉23のような切欠き部27は設けられていない。
【0021】
次に、以上のような構成からなる垂直搬送装置100において、荷役車両6を1階から2階へ搬送する手順について説明する。1階のフロアFに敷設された所定の走行路(図示省略)を走行してきた荷役車両6は、図2の左方向から垂直搬送装置100のフレーム1の間に進入し、図の位置で停止する。この場合、昇降板2は図1、図2に示す初期位置にあり、荷役車両6が進入すると、キャリッジ4の可動突片5が掛止部10の凹部11へ前方から挿入される。そして、図3で説明したように、可動突片5と凹部11の内壁11a〜11cとの間に間隙Ga〜Gcが形成されるようになっているので、荷役車両6を前進させるだけで、掛止部10の凹部11にキャリッジ4の可動突片5を容易に挿入することができ、可動突片5の上下位置に多少の誤差があっても、可動突片5が掛止部10に衝突するおそれはない。
【0022】
次に、掛止部10の凹部11に可動突片5が挿入された状態の荷役車両6を、キャリッジ4により図1の実線位置から図5に示す位置まで上昇させる。このときの手順は以下の通りである。すなわち、モータ16を駆動し、図示しないチェーンを介して昇降板2とともにキャリッジ4を上昇させると、キャリッジ4に設けられた可動突片5が、掛止部10の凹部11の内壁11a(図3)と当接し、可動突片5が掛止部10に掛かった状態で荷役車両6が持ち上げられ、キャリッジ4の上昇とともに荷役車両6は上方へ搬送される。このとき、可動床Pは、荷役車両6が上昇するのを妨げないように、図1、図2で破線で示した垂直位置にある。
【0023】
荷役車両6の上昇中は、掛止部10の凹部11の内壁11a(図3)に、可動突片5の上面に設けられたゴム等のプレート5a(図3)が当接するので、プレート5aの大きな摩擦力によって、可動突片5と掛止部10とは確実に掛かり合い、両者の間で滑りは生じない。また、前述のように、可動突片5が車両本体7の前後方向の長さ以上にわたって設けられているので、長尺の可動突片5によって車両本体7を安定に支持することができ、たとえ搬送中に車両本体7が前後方向に動いたとしても、掛止部10から可動突片5が外れるのを防止することができ、安全を確保することができる。
【0024】
荷役車両6が一定距離上昇したことが図示しないセンサ等で検知されると、モータ12が駆動され、リンク機構13が作動する。そして、リンク機構13を介して回転軸28を回転させることにより、可動床Pを破線の垂直位置から一点鎖線の水平位置に向けて回転させる。この場合、可動床Pが水平位置を若干超えるまで回動した後、水平位置に戻るようにリンク機構13が設計されている。したがって、可動床Pは実際には垂直位置から90°+α(αは例えば1°)だけ回転し、その後−αだけ逆転して水平位置に戻ることになる。この水平位置において、可動床Pはロック機構によりロックされ、水平状態を維持する。すなわち、可動床Pが水平位置に戻る際に、図2に示したロックカム19がモータ18により駆動され、可動床Pの先端に形成された溝や切欠きなどの係合部(図示省略)にロックカム19が係合することにより、可動床Pはロックされる。可動床Pを垂直位置から90°回転させて水平位置で正確に停止させようとすると、正確な位置決め制御が必要となるが、上記のようにすれば、可動床Pを90°より若干多めに回転させた後に水平位置に戻すことで、可動床Pは水平位置に戻ったときにこの位置でロックカム19により機械的に位置決めされるので、リンク機構13を駆動するモータ12の制御はラフなものでよい。
【0025】
図5からわかるように、荷役車両6は、キャリッジ4によって可動床Pの水平位置よりも上方位置まで搬送される。したがって、可動床Pが水平になった状態では、荷役車両6のホイール8は可動床Pから浮いている。この状態からキャリッジ4を下降させると、荷役車両6もキャリッジ4とともに下降し、やがて荷役車両6のホイール8が可動床Pに着地する。この後、さらにキャリッジ4を若干下降させると、荷役車両6は下降せずにキャリッジ4だけが下降し、図6に示すように、荷役車両6が可動床Pに着地した状態で、可動突片5と凹部11の内壁との間に間隙が形成される。図6の荷役車両6は、図1に破線で示した荷役車両6と同じ状態にある。こうして、荷役車両6の1階から2階への搬送動作が終了する。
【0026】
このように、本実施形態では、可動床Pの水平位置より上方へ荷役車両6を搬送するとともに、可動床Pを垂直位置から水平位置へ回動させ、その後キャリッジ4を下降させるようにしたので、キャリッジ4の下降により荷役車両6は自動的に可動床Pに着地する。そして、可動床Pとフロア20は同一面となっているので、キャリッジ4の位置制御がラフであっても、荷役車両6は可動床Pによって正確に垂直方向に位置決めされる。また、従来のように荷役車両をキャリッジ上に載置して搬送し、キャリッジ上からフロアへ移す場合は、キャリッジを吊るチェーンが車両の重量で伸びることにより、キャリッジが目的の階で停止した状態においてキャリッジとフロアとの間に段差が生じるが、本実施形態では、チェーンの伸びに関係なく、ロックカム19によって可動床Pをフロア20に対して正確に位置決めできるので、可動床Pとフロア20との間に段差が生じることはなく、荷役車両6は可動床Pからフロア20へスムーズに移ることができる。
【0027】
2階へリフトされた荷役車両6は、図7に示したように、フロア20の方向へ自走によって移動する。荷役車両6の移動とともに、可動突片5は相対的に掛止部10の凹部11から抜け出てゆく。この場合、上述したように、可動突片5と凹部11の内壁との間に間隙が形成されているので、可動突片5の上下位置に多少の誤差があっても、荷役車両6が可動床Pからフロア20へ移る際に、可動突片5と掛止部10との間で干渉が生じることはなく、荷役車両6はスムーズにフロア20へ向かって移動する。
【0028】
一方、2階には前述のレール25が設けられており、このレール25の固定突片26は、可動床Pに着地した荷役車両6の掛止部10の凹部11に挿入されている可動突片5と高さが略同じで、可動突片5と隣接して可動突片5の延長方向に延びるように設けられている。図8は、キャリッジ4とレール25の隣接部分の拡大斜視図である。ここでのレール25は、図4における上側のレール25に相当している。なお、図8では便宜上、キャリッジ4は簡略化して描いてある。図からわかるように、キャリッジ4とレール25は同様の断面形状(L字形)をしており、一定距離γを隔てて隣接している。したがって、荷役車両6がフロア20の方向へ移動すると、図9に示すように、掛止部10の凹部11に、可動突片5の延長線上にある固定突片26が相対的に挿入される。この挿入状態では、レール25の固定突片26と掛止部10の凹部11との位置関係は、図3に示した可動突片5と凹部11との位置関係と同じとなり、固定突片26と凹部11の内壁との間に間隙が形成される。このため、荷役車両6がフロア20へ移る際に、固定突片26と掛止部10との間に干渉は発生せず、荷役車両6はスムーズにフロア20へ移動する。
【0029】
このように、キャリッジ4に隣接して落下防止用のレール25を設けることで、荷役車両6が可動床Pからフロア20へ移る過程で、何らかの原因により可動床Pのロックが外れて可動床Pが下方へ回動したとしても、荷役車両6の掛止部10の凹部11に固定突片26が挿入されているため、固定突片26が掛止部10に掛かることにより荷役車両6が落下するのが阻止され、可動突片5だけで荷役車両6を支持する場合に比べて、安全性をより高めることができる。
【0030】
以上のように、上述した実施形態によれば、キャリッジ4や可動床Pの位置制御がラフでよいので、垂直搬送装置100を簡単かつ安価に実現することができる。また、キャリッジ4は側方から荷役車両6を支持するので、フロアにキャリッジ4を収納するためのピットを形成する工事も不要となる。
【0031】
図10は、本発明の他の実施形態を示す要部の拡大斜視図である。この実施形態では、キャリッジ4の可動突片5の上面に円錐状の突起5bが設けられているとともに、掛止部10の凹部11の上部内壁11aに、突起5bと嵌合可能な位置決め用の穴10aが設けられている。この穴10aも円錐状に形成されている。10bは穴10aの開口部であって、上部内壁11aに開口している。図に示すように、可動突片5が凹部11に挿入された状態で、突起5bは穴10aの開口部10bの下に位置する。この状態からキャリッジ4を上昇させると、可動突片5の突起5bが掛止部10の穴10aに嵌合する。この場合、突起5bは円錐状であることから、荷役車両6が垂直搬送装置100へ進入して停止した際に多少の前後左右の位置ずれが生じても、キャリッジ4を上昇させると、可動突片5の円錐状突起5bが掛止部10の開口部10bから穴10aに自然に嵌合し、位置ずれを補正して荷役車両6をキャリッジ4に対して正確に位置決めすることができる。また、荷役車両6の搬送過程においても、円錐状突起5bと穴10aとの嵌合により、荷役車両6を安定した姿勢でキャリッジ4に支持することができる。
【0032】
荷役車両6が垂直搬送装置100へ進入した際に位置ずれが生じた場合、そのずれた状態のまま荷役車両6を垂直搬送すると、上の階において荷役車両6は予め定められた走行路に対して位置ずれした状態となるから、荷役車両6はそのずれを自ら修正しようと制御する。このため、荷役車両6で左右の操舵によるショックが発生し、これが垂直搬送装置100へ伝達されるので、垂直搬送装置100の揺れを抑制するために、大型のフレーム1や支柱17を設ける必要がある。しかるに、図10の実施形態によれば、たとえ荷役車両6の進入時に位置ずれが生じたとしても、キャリッジ4の上昇により突起5bが穴10aに嵌合して位置ずれが補正されるので、荷役車両6には上述したような位置ずれの修正制御に基づくショックは発生せず、フレーム1や支柱17が大型化しない。
【0033】
本発明では、以上述べた実施形態以外にも、種々の実施形態を採用することができる。例えば、上記実施形態では、車両本体7の前後方向の全幅にわたる掛止部10を設けた例を挙げたが、掛止部10を例えば車両本体7の4隅だけに設けるようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、キャリッジ4の可動突片5や、レール25の固定突片26を車両本体7の前後方向に連続する長尺のものとしたが、これらの突片は車両本体7の前後方向に分断して設けてもよい。
【0035】
さらに、上記実施形態では、荷役車両6を1階から2階へ搬送する垂直搬送装置100を例に挙げたが、本発明は、荷役車両を3階以上のフロアへ搬送する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る垂直搬送装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る垂直搬送装置の側面図である。
【図3】掛止部の凹部の拡大図である。
【図4】扉の平面図である。
【図5】荷役車両を搬送する手順を説明する正面図である。
【図6】荷役車両を搬送する手順を説明する正面図である。
【図7】荷役車両を搬送する手順を説明する側面図である。
【図8】キャリッジとレールの隣接部分の拡大斜視図である。
【図9】キャリッジとレールの隣接部分の拡大斜視図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
2 昇降板
4 キャリッジ
5 可動突片
5b 突起
6 荷役車両
7 車両本体
10 掛止部
10a 穴
11 凹部
11a〜11c 内壁
13 リンク機構
17 支柱
18 モータ
19 ロックカム
25 レール
28 回転軸
26 固定突片
100 垂直搬送装置
F フロア
Ga〜Gc 間隙
P 可動床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に荷を積載して走行する荷役車両を垂直に搬送するための装置であって、
車両本体に設けられた掛止部に掛かる可動突片を有するキャリッジと、フロアに立設され前記キャリッジを昇降自在に支持する支柱と、前記フロアの上方に設けられ垂直位置から水平位置へ回動可能な可動床とを備え、
前記車両本体の走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向としたとき、
前記掛止部は、前記車両本体の左右両側に設けられていて、側方および前後の3方向に開口した凹部を備えており、
前記キャリッジの可動突片の初期位置は、当該可動突片が前記掛止部の凹部へ挿入された状態において可動突片と凹部内壁との間に間隙が形成されるような位置に設定されており、
前記可動床を垂直状態とし、前記初期位置にある可動突片が前記掛止部の凹部へ挿入されるように前記荷役車両をフロア上に位置させた後、前記キャリッジを上昇させて、前記可動突片を前記掛止部に掛けた状態で前記荷役車両を可動床の水平位置よりも上方位置まで搬送する一方、前記可動床を垂直位置から水平位置へ回動させ、可動床が水平状態になった後、前記キャリッジを下降させて前記荷役車両を可動床に着地させ、当該着地状態において前記可動突片と凹部内壁との間に間隙が形成されるようにしたことを特徴とする荷役車両の垂直搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷役車両の垂直搬送装置において、
前記掛止部は、前記車両本体の左右の側面より側方へ張り出さないように設けられていることを特徴とする荷役車両の垂直搬送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の荷役車両の垂直搬送装置において、
前記キャリッジの可動突片は、前記車両本体の前後方向の長さ以上にわたって設けられていることを特徴とする荷役車両の垂直搬送装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の荷役車両の垂直搬送装置において、
前記可動床を回動させるリンク機構と、前記可動床を水平位置に固定するロック機構とを備え、
前記可動床は、前記リンク機構により回転する回転軸に一端が支持され、前記リンク機構により垂直位置から水平位置を若干超えるまで回動した後、水平位置に戻り、当該水平位置において他端が前記ロック機構によりロックされて水平状態を維持することを特徴とする荷役車両の垂直搬送装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の荷役車両の垂直搬送装置において、
前記可動床に着地した荷役車両が当該可動床と同じ階のフロアへ移る際に落下するのを防止するための落下防止手段を備え、
前記落下防止手段は、着地した荷役車両の掛止部の凹部に挿入されている前記可動突片と高さが略同じで、当該可動突片と隣接して可動突片の延長方向に延びる固定突片を有していることを特徴とする荷役車両の垂直搬送装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の荷役車両の垂直搬送装置において、
前記キャリッジの可動突片の上面に円錐状の突起を設け、
前記掛止部の凹部の上部内壁に、キャリッジで荷役車両を搬送する際に前記突起が嵌合する位置決め用の穴を設けたことを特徴とする荷役車両の垂直搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−1472(P2008−1472A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172520(P2006−172520)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)