説明

荷役車両

【課題】従来の荷役車両では、スプリングの付勢力により固縛状態が維持されていたため、車台に加わる上下方向の動揺により固縛状態が強制的に解除され易いという問題があった。
【解決手段】本発明の荷役車両では、固縛装置13の回動部材14の回転動作に連動して、一対の固縛装置18、19が、荷役フレーム6側からダンプフレーム5側へと導出し、導出した固縛装置18、19が、ダンプフレーム5側の固縛受け部材24、25の開口部内へと導入し、固縛状態が成される。この構造により、車台に加わる上下方向の動揺により影響を受け難く、その動揺により固縛状態が強制的に解除され難く、固縛状態が安定し、安全性に優れた荷役車両1が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプフレームと荷役フレームとの固縛状態の安定性を向上させる荷役車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の荷役車両の一実施例として、下記の構造が知られている。図6(A)は、荷役車両の側面図である。図6(B)は、ダンプフレームと荷役フレームとの固縛状態を説明する側面図である。
【0003】
図6(A)に示す如く、コンテナ搭載用の荷役車両51は、主に、車台52と、車台52前方に設置された運転席53と、運転席53後方の車台52上に設置されたサブシャーシ54と、サブシャーシ54上に設置されたコンテナ55の積み降ろし装置56とから構成される。そして、コンテナ55の積み降ろし装置56は、主に、ダンプフレーム57と、ダンプフレーム57よりも前方に配置された略L字状の荷役フレーム58と、ダンプフレーム57と荷役フレーム58とを固縛する固縛装置59とから構成される。尚、荷役フレーム58の先端部には、コンテナ運搬用フック60が配置される。
【0004】
一点鎖線にて示すように、サブシャーシ54の後端部の枢軸61を起点に、一体に個縛されたダンプフレーム57と荷役フレーム58とが傾動することで、コンテナ55内の荷物が降ろされる。一方、図示していないが、ダンプフレーム57と荷役フレーム58との固縛状態が解除され、荷役フレーム58がサブシャーシ54上を移動し、傾動することで、車台52に対しコンテナ55の積み下ろしが行われる。
【0005】
図6(B)に示す如く、固縛装置59では、荷役フレーム58側に固定されたフック状の固縛部材62が、ダンプフレーム57側に固定されたロッド状の被固縛部材63に係合し、ダンプフレーム57と荷役フレーム58とが固縛状態と成る。このとき、固縛部材62には、矢印方向64に付勢するスプリング65が連結し、その付勢力を利用し、前述した固縛状態が維持される。尚、車台52に対してコンテナ55の積み降ろしを行う際には、荷役フレーム58の動作に連動し、固縛部材62に連結した連結ロッド66により固縛部材62を付勢力に抗する方向へ引っ張ることで、点線にて示すように、前述した固縛状態が解除される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−285369号公報(第4−6頁、第1、7、8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、ダンプフレーム57と荷役フレーム58との固縛状態は、固縛部材62が、ロッド状の被固縛部材63に係合し、成される。その固縛状態は、矢印64方向に働くスプリング64の付勢力により維持される。例えば、固縛状態時の荷役車両51では、コンテナ55内の荷物(産業用廃棄物等)を降ろすダンプ動作やコンテナ55を積載した走行動作等が行われる。
【0008】
先ず、荷役車両51のダンプ動作における問題点を以下に説明する。コンテナ55内の荷物をゴミ処理場等へと降ろす際、一体に固縛された状態のダンプフレーム57と荷役フレーム58とを傾動する。そして、コンテナ55内の全ての荷物(産業用廃棄物等)を一回のダンプ動作により降ろすために、固縛状態のダンプフレーム57と荷役フレーム58を動揺する場合がある。
【0009】
この場合、矢印68にて示すように、固縛装置59にもその動揺による外力が加わり、スプリング65には付勢力に抗する方向へ外力が加わる。そして、その外力によりスプリング65が伸びることで、固縛部材62と被固縛部材63から外れ易くなる。その結果、ダンプフレーム57と荷役フレーム58との固縛状態が解除されることで、中折れ状態となり、コンテナ55自体がゴミ処理場の焼却場や産業廃棄物の処理分別場へと落下するという問題がある。そして、落下したコンテナ55が処理分別場内の作業員に衝突し、大怪我や死亡事故等が発生するという問題がある。また、コンテナ55が、荷役フレーム58先端のコンテナ運搬用フック60のみで支えられた宙吊り状態となり、荷役車両51のバランスが不安定となり、荷役車両51が横転する等の問題も発生する。特に、コンテナを積載する荷役車両51では、日常的にコンテナ55内の荷物を降ろす作業が行われ、固縛状態のダンプフレーム57と荷役フレーム58を動揺する動作がよく見受けられ、前述した問題が大きな問題となる。
【0010】
次に、荷役車両51の走行動作における問題点を以下に説明する。荷役車両51が、砂利道等の路面状況が悪い道路を走行する際、車台52が上下方向(荷役車両51の高さ方向)に動揺し、矢印68にて示すように、固縛装置59にもその動揺による外力が加わる。前述したように、固縛部材62が被固縛部材63から外れた場合には、ダンプフレーム57と荷役フレーム58との固縛状態も解除される。そして、ダンプフレーム57と荷役フレーム58とが個別に動くことで、走行中のコンテナ55の安定性が失われ、荷役車両51の走行性が悪化するという問題がある。
【0011】
つまり、従来の構造の荷役車両では、前述した固縛状態が、スプリング64の付勢力により維持され、その付勢力が、荷役車両51に発生し易い矢印68方向の動揺に対し影響を受け易い構造であることに問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した各事情に鑑みて成されたものであり、本発明の荷役車両では、車台の後部に回動自在に連結されたダンプフレームと、前記ダンプフレームに回動自在に連結された荷役フレームと、前記ダンプフレームと前記荷役フレームとを固縛する固縛状態と、前記固縛状態が解除された非固縛状態とを調整する固縛装置と、一端側が前記荷役フレームと連結し、他端側が前記車台上に連結した伸縮自在のシリンダとを有する荷役車両において、前記荷役フレーム側に配置された前記固縛装置は、回動自在の回動部材と、前記回動部材と連結し、前記回動部材が回動することで動作する一対の固縛部材とを有し、前記固縛部材が前記荷役フレーム側から前記ダンプフレーム側に導出し、前記導出した前記固縛部材が、前記ダンプフレーム側に設けられた固縛受け部材の開口部内に導入することで、前記固縛状態を成すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、荷役フレーム側から導出する固縛部材が、ダンプフレーム側の固縛受け部材内に導入されることで、固縛状態が成される。この構造により、車台の上下方向の動揺により、固縛状態が強制的に解除され難い荷役車両が実現される。
【0014】
また、本発明では、固縛部材が、車台表面に対して水平方向に動作することで、車台の上下方向の動揺に影響を受け難い荷役車両が実現される。
【0015】
また、本発明では、固縛状態を成す際に固縛伝達部材に引っ張り力を加える構造とすることで、固縛伝達部材の薄型化が実現される。
【0016】
また、本発明では、荷役フレームの動作に連動して固縛状態から非固縛状態への動作を行うことで、荷役車両の軽量化が実現される。
【0017】
また、本発明では、固縛装置の回動部材及び固縛部材が、その間に配置される伝達部材とピン連結することで、効率的な固縛部材の動作が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における荷役車両を説明するための(A)側面図、(B)側面図である。
【図2】本発明の実施の形態における荷役車両を説明するための(A)平面図、(B)側面図、(C)側面図である。
【図3】本発明の実施の形態における荷役車両を説明するための(A)平面図、(B)側面図、(C)側面図である。
【図4】本発明の実施の形態における荷役車両を説明するための(A)平面図、(B)平面図である。
【図5】本発明の実施の形態における荷役車両を説明するための(A)側面図、(B)側面図である。
【図6】従来の実施の形態における荷役車両を説明するための(A)側面図、(B)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施の形態である荷役車両について説明する。図1(A)は、ダンプ時の荷役車両を説明する側面図である。図1(B)は、キャリー時の荷役車両を説明する側面図である。図2(A)は、固縛装置を説明する平面側からの概略図である。図2(B)は、図2(A)に示す固縛装置のA−A線方向側面からの概略図である。図2(C)は、図2(A)に示す固縛装置のB−B線方向側面からの概略図である。図3(A)は、固縛装置を説明する平面側からの概略図である。図3(B)は、図3(A)に示す固縛装置のC−C線方向側面からの概略図である。図3(C)は、図3(A)に示す固縛装置のD−D線方向側面からの概略図である。図4(A)及び(B)は、固縛装置を説明する平面側からの概略図である。図5(A)は、キャリー時の荷役車両を説明する側面図である。図5(B)は、搭載時の荷役車両を説明する側面図である。
【0020】
図1(A)に示す如く、荷役車両1は、主に、車台2と、車台2前方に配置される運転席3と、車台2上に固定される外枠フレーム4と、車台2の後方にて外枠フレーム4に固定されるダンプフレーム5と、ダンプフレーム5よりも車台2の前方に配置される略L字型の荷役フレーム6と、丸印7にて示す領域にはダンプフレーム5と荷役フレーム6とを固縛する固縛装置13(図2(A)参照)とを有する。そして、荷役フレーム6の先端部には、図示したように、コンテナ8を引っ掛け、運搬するためのフック9が配置される。尚、詳細は図5を用いて後述するが、荷役フレーム6は、コンテナ8を車台2上に搭載させるため、例えば、油圧式により水平移動する略L字型の荷役フレーム6Aと、荷役フレーム6Aと連結し、水平移動しない荷役フレーム6Bとを有する。
【0021】
図1(A)では、荷役車両1のダンプ時の状況を示すが、一体に固縛されたダンプフレーム5と荷役フレーム6は、外枠フレーム4と荷役フレーム6との間に連結された伸縮式の油圧シリンダ10により上斜め後方へと傾動される。このとき、ダンプフレーム5は、外枠フレーム4の連結軸11に連結し、一体に固縛されたダンプフレーム5と荷役フレーム6は、その連結軸11を回転軸として傾動する。尚、ダンプフレーム5は、固縛状態時に荷役フレーム6と一体に動作する構造である。また、他の構成部材等により隠れる領域のダンプフレーム5及び荷役フレーム6も実線にて描いている。
【0022】
図1(B)では、荷役車両1のコンテナ8のキャリー時の状況を示すが、丸印7にて示す領域の固縛装置13にて、ダンプフレーム5と荷役フレーム6との固縛状態が解除される。そして、固縛装置13後方のダンプフレーム5の連結軸21(図2(A)参照)にて荷役フレーム6がダンプフレーム5と連結する構造により、非固縛状態では、連結軸21を回転軸とし、荷役フレーム6のみが油圧シリンダ10にて上斜め後方へと傾動する。この動作により、コンテナ8は、車台2の後端部から車外へと搬出され、コンテナ8の車輪12を利用し滑らかに地面上を移動する。尚、ダンプフレーム5は、キャリー時にはその自重により外枠フレーム4内に固定される。また、他の構成部材等により隠れる領域のダンプフレーム5及び荷役フレーム6も実線にて描いている。
【0023】
図2(A)〜(C)では、荷役車両1のダンプ時または走行時等のダンプフレーム5と荷役フレーム6とが、固縛装置13にて固縛された状態を示す。尚、以下の説明では、紙面X軸方向は、荷役車両1の横幅方向とし、紙面Y軸方向は、荷役車両1の奥行き方向とし、紙面Z軸方向は、荷役車両1の高さ方向とする。また、固縛装置13は、他の構成部材により隠れる部分も実線にて描いている。
【0024】
図2(A)に示す如く、固縛装置13は、主に、固縛状態または非固縛状態をコントロールする回動部材14と、回動部材14とピン連結し、固縛状態にする際に回動部材14を回転させる固縛伝達部材15と、回動部材14とピン連結し、回動部材14の動きに連動する一対の伝達部材16、17と、それぞれの伝達部材16、17とピン連結し、固縛状態または非固縛状態を成す固縛部材18、19とを有する。尚、固縛部材18、19は、伝達部材16、17と一体の構造にて形成される場合でも良い。また、ピン連結とは、例えば、焼入れ加工された炭素鋼鋼材から成るピンにより連結された部材同士が、ピンを同一の回転軸として、それぞれXY平面(車台2表面に対して水平面)にて回動自在に動くことが可能な連結である。そして、ピン連結では、例えば、ピンの上端側はピン自体のフランジ部により、また、ピン下端側はボルトや締付リングにより部材の抜けを防止する場合でも良く、また、ピンの上下端部側においてもボルトや締付リングにより部材の抜けを防止する場合でも良い。
【0025】
一点鎖線20は荷役フレーム6の外枠を示し、固縛装置13は荷役フレーム6内に配置される。荷役フレーム6は、ダンプフレーム5の連結軸21に対して回動自在に連結する。そして、ダンプフレームの連結軸21の両端部が、外枠フレーム4の受け部材22、23内に載置され、ダンプフレーム5は、非動作時には外枠フレーム4の内に固定される。一方、ダンプフレーム5には、固縛装置13の配置領域であり、荷役フレーム6の側面近傍に固縛受け部材24、25が配置される。固縛受け部材24、25には、点線にて示すように、固縛部材18、19の径よりも大きい開口径を有する開口部が形成され、固縛状態時には、固縛部材18、19が荷役フレーム6側から導出し、固縛部材18、19の一部が固縛受け部材24、25内へと導入する。
【0026】
図2(B)に示す如く、矢印26にて示すように、回動部材14の動きに連動し、固縛部材18、19が、略紙面X軸方向(車台2表面に対して水平方向)に動き、固縛受け部材24、25の開口部内に導入することで、ダンプフレーム5と荷役フレーム6との固縛状態が成される。課題の欄にて前述したように、従前の荷役車両では、荷役車両1に対して矢印27に示す上下方向(車台2に対して垂直方向)の動揺が加わることで、固縛状態が外力により強制的に解除され、様々な事故の原因となっていた。
【0027】
そこで、本実施の形態では、先ず、荷役車両1に対し問題となる上下方向の動揺(矢印27)に対処するため、付勢力を有するスプリングではなく、固縛部材18、19が、略紙面X軸方向に動く構造とする。そして、図5(A)にて後述するが、荷役フレーム6Aが車台2後方側へと水平移動しない限り、固縛状態は解除されず、固縛部材18、19が、固縛受け部材24、25の開口部内から抜けることはない。この構造により、矢印27に示す上下方向の動揺により固縛状態が強制的に解除され難くなる。
【0028】
次に、矢印27に示す上下方向の動揺により、固縛受け部材24、25の開口部内にて、固縛部材18、19が固縛受け部材24、25と衝突し、固縛部材18、19には、せん断方向の外力が加わる。また、荷役車両1のダンプ時には、固縛部材18、19が、固縛受け部材24、25を引っ掛けた状態にて、ダンプフレーム5を動作させるため、固縛部材18、19には、両部材の当接面からせん断方向の外力が加わる。そこで、固縛部材18、19が、例えば、炭素鋼鋼材から形成され、その表面にメッキ処理加工を行うことで、固縛部材18、19は、材料の特性上せん断破壊には強い構造となる。
【0029】
また、固縛部材18、19を円柱形状とし、固縛受け部材24、25の開口部の内周面も曲面とすることで、固縛部材18、19と固縛受け部材24、25とが当接した際には、応力集中が起こり難い構造となる。
【0030】
つまり、固縛装置13の構造上、固縛状態が強制的に解除されるのは、主に、固縛部材18、19が、せん断破壊した場合である。そのため、荷役車両1の使用用途、大きさ等に応じて固縛部材18、19に加わるせん断力は異なるため、荷役車両1の用途等に応じて固縛部材18、19の材料、寸法及び形状は、任意の設計変更が可能である。また、固縛部材18、19に加わるせん断力が大きくなる場合には、焼入れ加工等、熱処理加工を行うことで、更に、せん断力に対処することも可能である。
【0031】
尚、点線にて示すように、荷役フレーム6を構成する部材であり、固縛部材18、19が動作する開口部28の内側に無給油ブッシュを設けることで、開口部28内の固縛部材18、19の動作性、摺動性が向上される。
【0032】
図2(C)に示す如く、固縛指示部材29は、荷役フレーム6Aに固定され、荷役フレーム6Aの動作に合わせて略紙面Y軸方向に動き、固縛状態をコントロールする。図2(A)にも示すように、固縛指示部材29は、例えば、直方体形状である。そして、固縛指示部材29の表面側には、略紙面Y軸方向に沿って溝30が形成され、この溝30を利用して固縛伝達部材15が固縛指示部材29とピン31により連結する。この構造により、固縛伝達部材15は、常時、固縛指示部材29と連動して動くのではなく、ピン31が溝30の端部30A、30Bに引っ掛かることで、固縛伝達部材15は固縛指示部材29と連動して動く。
【0033】
図示の如く、本実施の形態では、固縛伝達部材15と固縛指示部材29との位置調整により、ピン31は溝30の端部30Bにのみ引っ掛かり、略紙面Y軸方向の車台2前方へと引っ張られる構造となる。つまり、固縛伝達部材15は、固縛状態を成す際に固縛指示部材29と連動して動き、回動部材14を回転させる。そして、非固縛状態では、ピン31は、固縛指示部材29と連動することなく、溝30内を自由に動くことで、固縛伝達部材15により、回動部材14が回転することはない。この構造により、固縛伝達部材15には、引っ張り方向の外力は加わるが、圧縮方向(座屈する方向)の外力は加わらないため、その部材厚みを薄くすることが可能となり、荷役車両1の軽量化へと繋がる。
【0034】
尚、図2(A)〜(C)の固縛装置13においても、図3(A)〜(C)に示す固縛解除当接部材32が、同様な位置に固定されているが、固縛状態を説明する際には固縛解除当接部材32は機能しないため、図面上では省略する。また、固縛伝達部材15、固縛指示部材29は、例えば、一般圧延鋼材から成るが、その材料は任意の設計変更が可能である。
【0035】
図3(A)〜(C)では、荷役車両1のキャリー時において、ダンプフレーム5と荷役フレーム6とが、固縛装置13により固縛されない状態を示す。尚、図2(A)〜(C)の説明と同様に固縛装置13の説明では、他の構成部材により隠れる部分も実線にて描くものとする。
【0036】
図3(A)に示す如く、固縛指示部材29の近傍には固縛解除当接部材32が配置され、固縛解除当接部材32は、荷役フレーム6Aに固定され、荷役フレーム6Aの動作に合わせて略紙面Y軸方向(車台2の奥行き方向)に動く。そして、固縛解除当接部材32は、固縛指示部材29よりも車台2後方側に突出するように配置され、図3(B)に示すように、固縛解除当接部材32は、回動部材14と固縛伝達部材15とのピン連結部33と当接する。ピン連結部33は、固縛解除当接部材32により車台2の後方側へと押されることで、回動部材14を回転させ、非固縛状態を成す。矢印34にて示すように、固縛伝達部材15の端部に配置されるピン31は、溝30の端部30Aまで到達しない構造であり、前述したように、非固縛状態時への動作の際に、固縛伝達部材15に圧縮力が加わることはない。
【0037】
図3(B)に示す如く、ピン連結部33が、固縛解除当接部材32により車台2の後方側へと押され、回動部材14が回転することで、一対の伝達部材16、17が回動部材14側へと戻る。そして、その回動部材14等の動きに連動して矢印35にて示すように、固縛部材18、19が、略紙面X軸方向(車台2表面に対して水平方向)に動き、固縛受け部材24、25の開口部内から導出することで、ダンプフレーム5と荷役フレーム6とは非固縛状態と成る。
【0038】
図3(C)に示す如く、ピン連結部33は、例えば、連結用のピン36の周囲を板状部材37で覆うようして構成される。固縛解除当接部材32は、その板状部材37と当接し、ピン連結部33を車台2後方へと押すことで、回動部材14が回転する。そして、板状部材37は、固縛解除当接部材32と当接し易い直方体形状と成ることで、両者間の当接面積が広くなり、固縛解除当接部材32からの押圧力がピン連結部33に確実に伝わる。また、荷役フレーム6Aは、例えば、油圧により駆動し、固縛解除当接部材32からピン連結部33には大きな押圧力が加えられるため、ピン36が、直接、固縛解除当接部材32と当接することなく、ピン36の耐久性が向上される。尚、ピン36の耐久性の対策を行うことで、固縛解除当接部材32が、直接、ピン36と当接し、回動部材14を回転させる構造の場合でも良い。
【0039】
図4(A)及び(B)では、固縛装置13の回動部材14及び一対の伝達部材16、17の構造及び動作について示す。そして、図4(A)では、固縛状態時の位置関係を示し、図4(B)では、非固縛状態時の位置関係を示す。つまり、回動部材14が、図4(A)に示す状態から図4(B)に示す状態へと回転することで、固縛状態から非固縛状態となり、その逆の回転動作により、非固縛状態から固縛状態となる。
【0040】
図4(A)に示す如く、回動部材14及び伝達部材16、17は、例えば、一般圧延鋼材から成り、図示する形状の板状体として形成される。回動部材14は、固定軸38を回転軸として一定幅回転することで、回動部材14とピン連結した一対の伝達部材16、17が、略紙面X軸方向に連動する。図示したように、伝達部材16、17の取り付け領域近傍であり、矢印39にて示す領域の回動部材14の外周形状は、例えば、インボリュート曲線形状またはインボリュート曲線に近似した曲線形状に加工される。尚、矢印39にて示す領域の形状は、前述したインボリュート曲線形状等に限定されるものではなく、円形状、楕円形状または直線形状の場合でも良い。
【0041】
図示の如く、固縛状態を成すためには、図2(A)〜(C)を用いて前述したように、ピン連結部33が、荷役フレーム6Aの動作に連動し、固縛伝達部材15より略紙面Y軸方向に引っ張られることで、回動部材14は矢印40に示すように回転する。このとき、回動部材14の外周形状に固定軸38を中心としたインボリュート曲線形状またはインボリュート曲線に近似した曲線形状を用いることで、回動部材14と伝達部材16、17とのピン連結部41、42は、略紙面X軸方向に連動して動く。つまり、回動部材14の外周形状や伝達部材16、17と回動部材14や固縛部材18、19との結合にピン連結を用いることで、略紙面Y軸方向の外力が、効率的に略紙面X軸方向への外力として変換される。
【0042】
図4(B)に示す如く、非固縛状態を成すためには、図3(A)〜(C)を用いて前述したように、ピン連結部33が、固縛解除当接部材32により略紙面Y軸方向に押され、回動部材14は矢印40にて示すように回転する。そして、前述したように、略紙面Y軸方向の外力が、効率的に略紙面X軸方向への外力として変換される。
【0043】
尚、前述したように、伝達部材16、17と固縛部材18、19とが一体の構造の場合でも良い。しかしながら、伝達部材16、17の両端部に回動部材14及び固縛部材18、19が、それぞれピン連結する構造では、ピンを同一の回転軸として、それぞれの部材が、XY平面(車台2表面に対して水平面)にて回動自在に動くことが可能となり、回動部材14の外周形状に関わらず、略紙面Y軸方向の外力が、より効率的に略紙面X軸方向への外力として変換される。
【0044】
次に、図5(A)は、キャリー時の荷役車両1の側面図であり、コンテナ8を地上から車台2上へと積み上げた状態を示す。図示した状態では、コンテナ8が車台2の後端部に対して突出した状態であり、コンテナ8を車台2上へと引き込む必要がある。そして、丸印7にて示す領域の固縛装置13は非固縛状態であり、荷役フレーム6はダンプフレーム5に対し自由に動作する。
【0045】
一方、図5(B)は、コンテナ8の搭載を完了した荷役車両1の側面図である。図5(A)に示す状態から、荷役フレーム6Aが、略紙面Y軸方向(車台2の前方方向)へと距離L1だけ水平移動することで、コンテナ8を車台2上へと引き込み、搭載完了の状態となる。そして、図2(A)〜(C)を用いて前述したように、荷役フレーム6Aが、距離L1水平移動することで、ダンプフレーム5と荷役フレーム6が固縛状態となる。逆に、荷役フレーム6Aが、図5(B)の状態から図5(A)の状態へと戻ることで、図3(A)〜(C)を用いて前述したように、ダンプフレーム5と荷役フレーム6が非固縛状態となる。つまり、本実施の形態の荷役車両1では、荷役フレーム6Aが、距離L1水平移動する動作に連動して、固縛状態と非固縛状態とが成される。尚、図5(A)及び(B)では、他の構成部材等により隠れる領域のダンプフレーム5及び荷役フレーム6も実線にて描いている。
【0046】
最後に、回動部材14の回転距離(図4の矢印40)が、荷役フレーム6Aの移動する距離L1に比べて短いため、図2(A)〜(C)にて前述したように、固縛指示部材29の溝30内にてピン31が拘束されない状態を作り、その距離差に対応する。この構造により、回動部材14の縮小化を実現し、固縛装置13全体の縮小化や軽量化が実現される。尚、回動部材14を大きくし、前述した両移動距離を等しくすることで、荷役フレーム6Aが距離L1水平移動する動作に完全に連動させて、固縛状態と非固縛状態とを成すことも可能である。
【0047】
尚、本実施の形態では、固縛装置13は、荷役フレーム6内に配置される場合について説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、荷役フレームの上側面や下側面を利用して荷役フレーム6外側に固縛装置13が配置される場合でも良い。固縛装置13により、ダンプフレーム5と荷役フレーム6との固縛状態と非固縛状態が調整されれば良く、固縛装置13の配置領域は、車台2上のスペースに応じて任意の設計変更が可能である。
【0048】
また、固縛伝達部材15は、固縛状態となる場合に固縛指示部材29と連動して動き、回動部材14を回転させる場合について説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、固縛伝達部材15が、座屈(圧縮力)に耐え得る部材厚みとなる場合には、固縛伝達部材15が、溝30の端部30Aに引っ掛かり、回動部材14を回転させ、非固縛状態を成すことも可能である。つまり、固縛伝達部材15の部材厚みや材料を調整することで、固縛解除当接部材32を用いることなく、解除伝達部材15の動作により固縛状態または非固縛状態を行うことも可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 荷役車両
2 車台
5 ダンプフレーム
6 荷役フレーム
13 固縛装置
14 回動部材
15 固縛指示部材
16、17 伝達部材
18、19 固縛部材
24、25 固縛受け部材
29 固縛指示部材
32 固縛解除当接部材
33 ピン連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台の後部に回動自在に連結されたダンプフレームと、
前記ダンプフレームに回動自在に連結された荷役フレームと、
前記ダンプフレームと前記荷役フレームとを固縛する固縛状態と、前記固縛状態が解除された非固縛状態とを調整する固縛装置と、
一端側が前記荷役フレームと連結し、他端側が前記車台上に連結した伸縮自在のシリンダとを有する荷役車両において、
前記荷役フレーム側に配置された前記固縛装置は、回動自在の回動部材と、前記回動部材と連結し、前記回動部材が回動することで動作する一対の固縛部材とを有し、前記固縛部材が前記荷役フレーム側から前記ダンプフレーム側に導出し、前記導出した前記固縛部材が、前記ダンプフレーム側に設けられた固縛受け部材の開口部内に導入することで、前記固縛状態を成すことを特徴とする荷役車両。
【請求項2】
前記固縛部材は、前記車台表面に対し水平方向に動作し、前記固縛状態時の前記ダンプフレームは、前記固縛受け部材が前記固縛部材に引っ掛かることで、前記荷役フレームと一体に動作することを特徴とする請求項1に記載の荷役車両。
【請求項3】
前記荷役フレームの前記車台前方側に伸縮自在なL字型フレームに固定された固縛指示部材と、
一端側が前記回動部材と連結し、他端側が前記固縛指示部材とピン連結する固縛伝達部材とを有し、
前記固縛指示部材の表面側には、前記L字型フレームの伸縮方向に沿った凹部が形成され、前記ピン連結のピンの一部が前記凹部内に収納され、
前記L字型フレームが前記車台前方へと動くことで、前記凹部の長手方向の端部により前記ピンを引っ張り、前記固縛伝達部材が前記回動部材を回動させ、前記固縛状態を成すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の荷役車両。
【請求項4】
前記固縛指示部材よりも前記車台の後方側に突出するように、前記L字型フレームに固定された固縛解除当接部材とを有し、
前記L字型フレームが車台後方へと動くことで、固縛解除当接部材が、前記回動部材と前記固縛伝達部材との連結部を前記車台後方側へと押し、前記回動部材を回動させ、前記非固縛状態を成すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の荷役車両。
【請求項5】
前記回動部材と前記固縛部材との間に配置される一対の伝達部材とを有し、
前記伝達部材は、一端側にて前記回動部材とピン連結し、他端側にて前記固縛部材とピン連結することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の荷役車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−152878(P2011−152878A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16482(P2010−16482)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(510026851)白川鉄工株式会社 (1)