説明

荷重計測装置

【課題】油圧シリンダの静止摩擦による誤差を低減することのできる、建設機械のフロント装置に積載した積載物の荷重計測装置の提供。
【解決手段】フロント装置1の姿勢及び油圧シリンダの圧力に基づいてフロント装置1に積載した積載物の重量を計測する荷重計測装置において、駆動状態判定手段24により判定した油圧シリンダの駆動状態のうち、油圧シリンダの駆動停止直前の駆動状態に基づいて摩擦力推定手段26により前記油圧シリンダの静止摩擦力を推定し、圧力センサ19及び20の検出結果に基づき推力判定手段23により停止状態の油圧シリンダのシリンダ推力を演算し、停止直前の油圧シリンダの駆動状態に基づいて摩擦力推定手段26が推定した静止摩擦力と、推力判定手段23が演算したシリンダ推力と、姿勢判定手段22により判定した姿勢検出結果と、を用いて補正した荷重値を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解体作業、建築作業、土木作業等に使用される油圧ショベル等の建設機械のフロント装置に積載した積載物の荷重を計測する荷重計測装置に係り、特に荷重計測時の計測精度を向上させるのに好適な荷重計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは、積載物をある個所から別の個所へ移送する作業を行う。このような作業として、建設現場において掘削した土砂あるいはスクラップ処理場において発生した金属スクラップをトラックに積み込む場合、製鉄所において電気炉へ材料を投入する場合等が考えられる。これらの作業において、トラックに積み込んだ土砂や金属スクラップの荷重が判ればトラック積載量の調整が可能であり、又、電気炉に投入するために把持した材料の荷重が判れば定められた一定量の投入が可能である。そして、これら積載物を油圧ショベルに積載した状態でその荷重を計測することができれば、計量の手間を省き、作業効率を向上させることができる。
【0003】
従来より、例えば油圧ショベルをベースとして製作され、運搬作業を行うショベルクレーンの荷重計測装置として,ブームシリンダに圧力センサを設け,計測時にシリンダを微小振動させることで静止摩擦による誤差を軽減できる荷重計測装置が知られている。(特許文献1参照)。
【0004】
この荷重計測装置は、ブームシリンダのボトム室及びロッド室に交互にブームシリンダが伸縮しない程度の圧油を供給してブームシリンダを微小振動させて、シリンダチューブとピストンロッドとの間の静止摩擦力を低減し、荷重計測を行うとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−197133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術によるこの荷重計測装置では,ブームシリンダに圧力センサを設け,計測時にはブームシリンダのボトム室およびロッド室に交互に油圧を供給して微小振動させることで,荷重の誤差要因である静止摩擦力の偏りを低減し,計測精度が低下することを防ぐことができる。しかし,正確な荷重検出のためには静止摩擦力の偏りが十分低減されるまでの時間、フロント動作を止める必要があり,作業が中断され,効率の低下を招く。またブームシリンダが伸縮しない程度の微小振動に必要な圧油の供給には、高度な制御が必要であった。そこで、実稼動状態における摩擦力の影響を低減し、高精度な荷重計測が短時間で可能な油圧ショベルの荷重計測装置が待望されていた。
【0007】
本発明は、前述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、実稼働中に変動する摩擦力に対してもこの影響を推定し、精度良く荷重計測を行うことができる油圧ショベルの荷重計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る荷重計測装置は、油圧シリンダにより駆動されるブーム、アーム及びバケットなどのアタッチメントからなる建設機械のフロント装置に備えられ、このフロント装置の姿勢を検出する姿勢判定手段と、前記油圧シリンダのボトム側及びロッド側圧力を検出する圧力検出手段と、前記姿勢判定手段及び前記圧力検出手段の検出結果に基づいて荷重を演算する荷重演算手段とを備え、このフロント装置に積載した積載物の重量を計測し、表示装置に表示する荷重計測装置において、前記油圧シリンダ駆動時の速度や加速度及び伸縮方向などから油圧シリンダの駆動状態を判定する駆動状態判定手段と、前記油圧シリンダの駆動停止時に停止直前の駆動状態を記憶する駆動状態記憶手段と、この駆動状態記憶手段の記憶情報に基づいて前記油圧シリンダの静止摩擦力を推定する摩擦力推定手段と、前記圧力検出手段により停止状態の前記油圧シリンダの圧力検出結果からシリンダ推力を演算する推力判定手段と、停止直前の前記油圧シリンダの駆動状態に基づいて前記摩擦力推定手段が推定した静止摩擦力と、前記推力判定手段が演算したシリンダ推力と、前記姿勢判定手段により判定した姿勢検出結果と、を用いて補正荷重値を出力する荷重演算手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明では、たとえば油圧ショベルのバケットで積載物を運搬する作業において、シリンダ推力を、フロント装置の姿勢を考慮した演算をし、さらに油圧シリンダの静止摩擦力に基づいて補正することで、正確な荷重計測を行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る荷重計測装置は、前記摩擦力推定手段が、前記荷重演算手段により前記バケットを空にした状態で荷重を演算することで得られる荷重値から真の値である零値を差し引いて得た差分値を、予め複数の駆動状態から前記フロント装置を静止した時に各々算出し、これらの差分値を停止直前の駆動状態と関連付けてデータテーブルに保持しておき、保持した前記複数の差分値から、前記駆動状態記憶手段の記憶している駆動状態と最も近い駆動状態と関連付けられた差分値を1つ選択し、静止摩擦力として出力することを特徴としている。このように構成した本発明では、予めフロント装置が無荷重の状態で、様々な駆動方向、停止加速度でシリンダ駆動を停止し、計測した荷重値及びフロント姿勢の検出結果から静止摩擦力を算出して駆動状態記憶手段が記憶しておき、実際の荷重計測時にはシリンダ駆動停止直前の停止加速度、駆動方向、フロント姿勢に応じた静止摩擦力をデータテーブルの中から適切な値を選択して出力することで、計測のたびに摩擦力推定手段が静止摩擦力を演算する負荷をなくし、計算時間が短くなるので、応答性の良い演算が可能になる。
【0011】
また、本発明に係る荷重計測装置は、前記摩擦力推定手段が出力する静止摩擦力が、予め複数の駆動状態で前記フロント装置を静止して静止摩擦力を算出し、得られた複数の静止摩擦力の値を通る近似式によって、各点の間における静止摩擦力を補完したデータテーブルに基づいて算出した値であることを特徴としている。このように構成した本発明では、摩擦力推定手段が予め複数の駆動状態を満たす近似式でデータ間を補完しているので、特に荷重計測時の駆動状態が予め計測して取得したデータの駆動状態と大きく異なる場合において、摩擦力推定手段が予め複数の駆動状態でフロント装置を静止して得た静止摩擦力のデータテーブルの中から値を選択するよりも、より精度の高い静止摩擦力を出力することが可能になる。
【0012】
また、本発明に係る荷重計測装置は、前記摩擦力推定手段が出力する静止摩擦力が、シリンダ駆動停止直前の停止加速度と伸縮方向及びフロント姿勢に基づいて算出した値であることを特徴としている。このように構成した本発明では、静止摩擦力が最も安定する時点であるシリンダ駆動停止直前の停止加速度を用いて算出しているので、摩擦力推定手段がさらに精度の高い静止摩擦力を出力することが可能になる。
【0013】
また、本発明に係る荷重計測装置は、前記荷重値出力手段が出力した荷重値を報知する報知手段を作業機械に備えることを特徴としている。このように構成した本発明では、計測完了を作業機械のオペレータに確実に認識させることができるので、計測を忘れるミスを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、荷重計測装置は、油圧シリンダにより駆動されるブーム、アーム及びバケットなどのアタッチメントからなる建設機械のフロント装置に備えられ、このフロント装置の姿勢を検出する姿勢判定手段と、シリンダのボトム側及びロッド側圧力を検出する圧力検出手段と、姿勢判定手段及び圧力検出手段の検出結果に基づいて荷重を演算する荷重演算手段とを備え、このフロント装置に積載した積載物の重量を計測する荷重計測装置において、シリンダ駆動時の速度や加速度及び伸縮方向などからシリンダの駆動状態を判定する駆動状態判定手段と、シリンダの駆動停止時に停止直前の駆動状態を記憶する駆動状態記憶手段と、この駆動状態記憶手段の記憶情報に基づいてシリンダの静止摩擦力を推定する摩擦力推定手段と、このシリンダの静止摩擦力により補正した荷重値を出力する荷重値出力手段とを備え、荷重値は、圧力検出手段により停止状態の前記シリンダの圧力検出結果から演算したシリンダ推力と、停止直前の駆動状態に基づいて前記摩擦力推定手段が出力した静止摩擦力による補正値と、姿勢検出結果を用いて演算することから、シリンダ推力を、油圧シリンダの静止摩擦力に基づいて補正することができる。そしてさらに、フロント装置の姿勢を考慮した演算を行うことにより、たとえば油圧ショベルのバケットで積載物を運搬する作業において、フロント装置の姿勢によらず、正確な荷重計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る荷重計測装置を備えた油圧ショベルの側面図である。
【図2】本発明に係る荷重計測装置の第1実施形態における荷重計測装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す油圧ショベルにおいて、フロント装置にかかる荷重とモーメントの関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る荷重計測装置を実施するための最良の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
[第1実施形態]
第1図は本発明に係る荷重計測装置を備えた油圧ショベルの側面図である。油圧ショベルは、フロント装置1とこれを備えた旋回体2、旋回体2を旋回自在に結合する走行体3と、旋回体2に備えられ、オペレータが搭乗するキャブ4とにより構成される。本発明に係る荷重計測装置5と、計測された加重値を表示する表示装置6はキャブ4の内部に備えられる。
【0018】
フロント装置1は、ブーム揺動支点10を中心に揺動可能に旋回体2に支持されたブーム7、アーム揺動支点11を中心に揺動可能にブーム7に支持されたアーム8、バケット揺動支点12を中心に揺動可能にアーム8に支持されたバケット9を備えている。バケット9はアタッチメントの一例であり、他のアタッチメントとして例えばフォークグラップルやリフティングマグネットを備える場合もある。さらにフロント装置1は、ブーム7を起伏させるブームシリンダ13、アーム8を起伏させるアームシリンダ14、バケット9を起伏させるバケットシリンダ15を備えている。
【0019】
油圧ショベルは、フロント装置1の姿勢を検出するセンサとして、揺動支点10に設けられ、旋回体2とブーム7の相対角度を検出するブーム角度センサ16、揺動支点11に設けられ、ブーム7とアーム8の相対角度を検出するアーム角度センサ17、揺動支点12に設けられ、アーム8とバケット9の相対角度を検出するバケット角度センサ18を備えている。
【0020】
またブームシリンダ13のシリンダ室圧力を検出するセンサとして、ボトム側シリンダ室内圧力を検出するブームシリンダボトム室圧力センサ19、ロッド側シリンダ室内圧力を検出するブームシリンダロッド室圧力センサ20を備えている。さらにブームシリンダ13の伸縮速度、伸縮加速度を検出するブーム角加速度センサ21を備えている。
【0021】
図2は本発明に係る荷重計測装置5の構成を示すブロック図である。荷重計測装置5は、フロント装置1の姿勢を判定する姿勢判定手段22、ブームシリンダ13のシリンダ推力を判定する推力判定手段23、ブームシリンダ13の駆動状態を判定する駆動状態判定手段24、判定した駆動状態を記憶する駆動状態記憶手段27、ブームシリンダ13の摩擦力を推定する摩擦力推定手段26、さらにこれらの手段から得られた結果を元に積載物の荷重を荷演算する荷重演算手段27から構成される。
【0022】
次に荷重計測の概要を、図2を用いて説明する。荷重計測装置5を構成する各ブロックは、以下の動作を行う。まず姿勢判定手段22は、角度センサ16〜18の検出値から各アクチュエータの相互角度を算出し、フロント装置1の姿勢を判定する。推力判定手段23は、ブームシリンダ13のボトム室及びロッド室内の圧力を圧力センサ19及び20から算出し、ボトム室側圧力とロッド室側圧力の差からシリンダロッドに対する推力を推定する。
【0023】
駆動状態判定手段24は、ブーム角加速度センサ21と姿勢判定手段22の判定結果に基づいてシリンダの伸縮速度、伸縮加速度を演算する。駆動状態記憶手段27は、荷重演算手段27による荷重計測のために、フロント動作の停止、すなわちシリンダ駆動の停止に至るまでの一連の駆動状態判定手段24によるシリンダの伸縮速度、伸縮加速度に関する判定結果を一時記憶する。また、駆動状態記憶手段27は、記憶した一連の判定結果からシリンダ駆動の停止直前の駆動状態判定手段24の判定結果を特定する。
【0024】
摩擦力推定手段26は、駆動状態判記憶手段25が特定したシリンダ駆動停止直前の停止加速度、駆動方向で決まる駆動状態に応じた静止摩擦力を推定し、荷重演算手段27に出力する。このとき推定される静止摩擦力は、無荷重の状態で伸長及び縮小それぞれの方向に対し、操作可能な範囲での停止加速度最大及び最小でシリンダ駆動を停止する駆動状態において、それぞれ荷重値とフロント姿勢から静止摩擦力を予め算出しておき、算出した静止摩擦力の値を通る近似式を求めることで得られるデータテーブルから、フロント動作時の駆動状態に応じた値が演算され、出力される。
【0025】
摩擦力推定手段で用いるデータテーブルは、例えばシリンダ伸縮加速度は最大と最小の場合のみ実測して作成し、中間の加速度は線形補完によって補ってもよい。実測するデータが少ないほどテーブル作成を簡略化することができるが、静止摩擦力による荷重の補正精度は低下する。そこで、3点以上の実測値からテーブル作成する場合は、線形補完のみではなく、より高次の近似式で補完してもよい。
【0026】
荷重演算手段27は、姿勢判定手段22、推力判定手段23の判定結果及び摩擦力推定手段26の出力したシリンダ静止摩擦力を用いて、モーメントの釣り合いから荷重演算を行い、荷重演算値を表示装置6に出力し、表示する。演算の手順としては、摩擦力推定手段26により推定したシリンダ静止摩擦力を用いて、推力判定手段23の判定結果であるシリンダ推力を補正した上で、補正後のシリンダ推力と姿勢判定手段22の判定結果から荷重演算を行ってもよいし、シリンダ静止摩擦力による補正の前にシリンダ推力と姿勢判定手段22の判定結果から荷重演算を行った後で、シリンダ静止摩擦力による荷重値の誤差を補正するように順番を入れ替えても、荷重計測は可能である。
【0027】
次にブームシリンダ13におけるモーメントの釣り合いについて、図3を参照して述べる。図3における各符号は下記を示す。
【0028】
W:フロント装置1にかかる積載物の荷重
W1:ブームシリンダ13を除いたフロント装置1の自重
lbm:ブーム揺動中心10と荷重点間の水平方向長さ
hbm:ブーム揺動支点10からブームシリンダ13に対して引いた垂線の長さ
l1:ブーム揺動支点10とブームシリンダ13を除いたフロント装置1の重心位置間の水平方向長さ
P1b:ブームシリンダ13のボトム側圧力
P1r:ロッド側圧力
A1b:ボトム側受圧面積
A1r:ロッド側受圧面積
R:静止摩擦力
Fbm:ブームシリンダ13の推力
ブームシリンダ13のボトム側とロッド側にかかる荷重の差が推力Fbmであることから、以下の式が成り立つ。
【0029】
Fbm=P1b・A1b−P1r・A1r−R
さらにこの推力Fbmは、荷重Wによるモーメント及びフロント自重W1によるモーメントと釣り合っているので、以下の式が成り立つ。
【0030】
Fbm・hbm=W・lbm+W1・l1
したがって荷重Wは、
W=(Fbm・hbm−W1・l1)/lbm
となる。ここで、ブームシリンダ13のボトム側受圧面積A1b及びロッド側受圧面積A1r、フロント自重W1は既知である。ボトム側圧力P1b及びロッド側圧力P1rは、それぞれブームシリンダボトム室圧力センサ19及びロッド室圧力センサ20により検出される。静止摩擦力Rは摩擦力推定手段26により推定される。長さlbm、hbm、l1は、角度センサ16、17、18の検出結果と既知であるブーム7、アーム8、バケット9の各寸法により演算される。以上より,ブームシリンダ13について,ブーム揺動支点10におけるモーメント釣り合い式から荷重Wを演算することができる。
【0031】
このように構成した第1実施形態によれば、荷重計測を行うためにシリンダ駆動を停止する際の停止加速度、駆動方向などのシリンダ条件に基づいて、予め記憶しておいた静止摩擦力を考慮したシリンダ推力により荷重を演算することで、フロント動作を停止した後、速やかに静止摩擦力による誤差を補正した荷重計測を行うことができる。
【0032】
[第2実施形態]
上記第1実施形態の実施例では、フロント装置1にかかる積載物の荷重計測をブームシリンダに設けた圧力センサ及び角加速度センサにより行う場合について説明したが、アームシリンダまたはバケットシリンダにこれらのセンサを設ける構成でも、同様な手順により荷重計測は可能である。これらのアクチュエータにおける圧力の検出を基にした荷重計測では、アームまたはバケットの揺動支点からフロント装置1までの姿勢判定において、これらの揺動支点からフロント装置1の重心位置間の距離がブーム揺動支点からの距離に比べて小さいため、モーメントの釣り合いに関する演算精度が低下する可能性があるが、ブーム揺動支点における姿勢判定よりも考慮すべき可動部分が少ないため、判定が容易である。
【0033】
[第3実施形態]
上記第1及び第2実施形態の実施例では、シリンダ伸縮加速度の検出手段として角加速度センサを設けたが、角度センサの検出値の時間変化から角加速度を求め、シリンダの伸縮加速度を演算することもできる。演算されるシリンダ伸縮加速度の精度は、角速度センサを設ける構成に比べて低下する可能性があるが、必要なセンサ数を減らすことができるので、システムを簡略化することができる。また、シリンダにストロークセンサを設け、ストロークセンサの検出値からシリンダ伸縮加速度を演算することもできる。この構成でも、演算されるシリンダ伸縮加速度の精度は、角速度センサを設ける構成より低下する可能性があるが、ストロークセンサの検出値は姿勢検出にも用いることができるため、必要なセンサ数を減らすことでシステムを簡略化することができる。さらに、例えばブームなどのフロント構造物に加速度センサを設け、加速度センサの検出値から演算する構成でもシリンダ伸縮加速度を演算することは可能である。
【0034】
[第4実施形態]
上記第1〜第3の実施例では、荷重演算手段の出力を報知する報知手段として表示装置を用いたが、報知手段としてはこの限りでなく、荷重値が任意に設定した閾値を超えた時に警報を発したり、警告灯を点灯させる警報装置であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 フロント装置
2 旋回体
3 走行体
4 キャブ
5 荷重計測装置
6 表示装置
7 ブーム
8 アーム
9 バケット
10 ブーム揺動支点
11 アーム揺動支点
12 バケット揺動支点
13 ブームシリンダ
14 アームシリンダ
15 バケットシリンダ
16 ブーム角度センサ
17 アーム角度センサ
18 バケット角度センサ
19 ブームシリンダボトム室圧力センサ
20 ブームシリンダロッド室圧力センサ
21 ブーム角加速度センサ
22 姿勢判定手段
23 推力判定手段
24 駆動状態判定手段
25 駆動状態判記憶手段
26 摩擦力推定手段
27 荷重演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧シリンダにより駆動されるブーム、アーム及びバケットなどのアタッチメントからなる建設機械のフロント装置に備えられ、
このフロント装置の姿勢を検出する姿勢判定手段と、前記油圧シリンダのボトム側及びロッド側圧力を検出する圧力検出手段と、前記姿勢判定手段及び前記圧力検出手段の検出結果に基づいて荷重を演算する荷重演算手段とを備え、このフロント装置に積載した積載物の重量を計測し、表示装置に表示する荷重計測装置において、
前記油圧シリンダ駆動時の速度や加速度及び伸縮方向などから油圧シリンダの駆動状態を判定する駆動状態判定手段と、
前記油圧シリンダの駆動停止時に停止直前の駆動状態を記憶する駆動状態記憶手段と、
この駆動状態記憶手段の記憶情報に基づいて前記油圧シリンダの静止摩擦力を推定する摩擦力推定手段と、
前記圧力検出手段により停止状態の前記油圧シリンダの圧力検出結果からシリンダ推力を演算する推力判定手段と、
停止直前の前記油圧シリンダの駆動状態に基づいて前記摩擦力推定手段が推定した静止摩擦力と、前記推力判定手段が演算したシリンダ推力と、前記姿勢判定手段により判定した姿勢検出結果と、を用いて補正荷重値を出力する荷重演算手段と、
を備えることを特徴とする荷重計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷重計測装置において、
前記摩擦力推定手段は、前記荷重演算手段により前記バケットを空にした状態で荷重を演算することで得られる荷重値から真の値である零値を差し引いて得た差分値を、予め複数の駆動状態から前記フロント装置を静止した時に各々算出し、これらの差分値を停止直前の駆動状態と関連付けてデータテーブルに保持しておき、保持した前記複数の差分値から、前記駆動状態記憶手段の記憶している駆動状態と最も近い駆動状態と関連付けられた差分値を1つ選択し、静止摩擦力として出力することを特徴とする荷重計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷重計測装置において、
前記摩擦力推定手段が出力する静止摩擦力は、予め複数の駆動状態で前記フロント装置を静止して静止摩擦力を算出し、得られた複数の静止摩擦力の値を通る近似式によって、各点の間における静止摩擦力を補完したデータテーブルに基づいて算出した値であることを特徴とする荷重計測装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の荷重計測装置において、
前記摩擦力推定手段が出力する静止摩擦力は、前記油圧シリンダ駆動停止直前の停止加速度と伸縮方向及びフロント姿勢に基づいて算出した値であることを特徴とする荷重計測装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の荷重計測装置において,
前記荷重値出力手段が出力した荷重値を報知する報知手段を作業機械に備えることを特徴とする荷重計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−215495(P2012−215495A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81736(P2011−81736)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)