説明

菜種ミールの製造方法

【課題】菜種粕から高蛋白質の菜種ミールを簡便かつ安価に製造する方法であって、しかも廃棄部分の少ないか全くない製造方法を提供する。
【解決手段】菜種粕を32〜60メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が32〜60メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が32〜60メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することを特徴とする、菜種ミールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菜種ミールの製造方法に関し、より詳細には、産業的利用価値の高い菜種ミールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
菜種から油分を搾り取った後に残る菜種粕は、現在、菜種ミールとして飼料や肥料用途へ利用されている。しかし、菜種ミールは、大豆ミールと比べると、蛋白質含量が低い、栄養価が低い、動物の嗜好性が悪い、色が悪いなどの点で劣っている。この原因は、菜種ミールが繊維質や苦味物質を多く含み、蛋白質分が比較的少ないことにある。
【0003】
菜種ミールに含まれる窒素分やミネラルは、栄養源として飼肥料用途に重要な成分であるが、その含有量は菜種種子そのものの組成に影響され、収穫時期や品種によってばらつきが生じる。栄養分が低い菜種から得られる菜種ミールは、製品規格値を下回るリスクが増す。逆に、栄養分が高い場合、飼肥料として利用した際に有効量よりも過剰となり、環境負荷物質の排出量が増加する要因となってしまう。
【0004】
菜種ミールの持つ栄養分の量をコントロールする方法として、加熱の度合いによって水分を調節する方法がある。しかし、菜種ミールは、水分が高くなく、調整幅が狭い。したがって、加熱は根本的な解決法となっていない。
【0005】
菜種ミール中の蛋白質分を調整する施策として、Ileal apparent protein and amino acid digestibilities and endogenous nitrogen losses in pigs fed soybean and rapeseed products (W. Grala, et.al. Journal of Animal Science, 1998, 76,557-568、非特許文献1)やNitrogen utilization in pigs fed diets with soybean and rapeseed products leading to different ileal endogenous nitrogen losses (W. Grala,et.al. Journal of Animal Science, 1998, 76,569-577、非特許文献2)では、菜種を脱皮してから搾油した際の菜種ミールの栄養価が評価されている。
【0006】
特開2000-316472(菜種胚芽の分離方法及び菜種胚芽油脂、特許文献1)には、菜種胚芽を機械的に砕き、風力分級機や篩によって菜種胚芽のみを得る方法が記載されている。また、国際公開WO2000/027222(油糧種子又は穀類の特定組織の分級法、及び微細粉化物、特許文献2)には、菜種種子などの油糧種子の特定組織を分級する方法が記載されている。
【非特許文献1】Journal of Animal Science, 1998, 76, 557-568
【非特許文献2】Journal of Animal Science, 1998, 76, 569-577
【特許文献1】特開2000-316472
【特許文献2】国際公開WO2000/027222
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1および2のように粒径の小さい菜種を脱皮してから搾油する方法は、高コストになりやすく、産業的利用に向いていない。
【0008】
特許文献1の方法により菜種胚芽を分離した後、菜種ミールに利用しようとすると、菜種胚芽画分とそれ以外の画分とを別々に搾油する必要がある。したがって、抽出機、原料保管用サイロなどの設備が通常の2倍必要となり、作業の手間も増える。
【0009】
特許文献2の方法は、食品としての舌触り、保水性、懸濁保持性などの改善が図られるものの、高蛋白質含量の菜種ミールは得られない。
【0010】
このように、従来の方法は、菜種ミールの栄養調整のために産業的利用可能な技術とは言い難い。そこで、本発明の目的は、菜種粕から蛋白質を代表とした栄養価を調節した菜種ミールを簡便かつ安価に製造する方法であって、しかも廃棄部分の少ないかあるいは全く出ない製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、意外にも以下の発明によれば上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、菜種粕を32〜60メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することを特徴とする、菜種ミールの製造方法を提供するものである。本明細書では、32〜60メッシュのいずれかの篩にかけた際に篩上と篩下とに得られる二種類の菜種ミールを区別するために、篩上の粒度の比較的大きい菜種ミールを粗粒度菜種ミールといい、篩下の粒度の比較的小さい菜種ミールを細粒度菜種ミールという。なお、本明細書では、Tyler標準篩を採用する。
【0012】
本発明は、また、菜種粕を32〜60メッシュのいずれかの篩にかけて得られる、蛋白質含量の増加した粒径32〜60メッシュ篩下の細粒度菜種ミールを提供する。上記細粒度菜種ミールは、特に窒素含量が6%以上である。
【0013】
本発明は、また、菜種粕を48〜60メッシュの篩にかけて得られる、窒素含量6.5%以上の粒径48〜60メッシュ篩下の細粒度菜種ミールを提供する。
【0014】
本発明は、また、32〜60メッシュ以下の画分を含まない嗜好性の改善された菜種ミールを提供する。該菜種ミールは、菜種粕を32〜60メッシュのいずれかの篩にかけて得られる、嗜好性の改善された粒径32〜60メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールであることが好ましい。
【0015】
本発明は、また、菜種粕を32〜60メッシュのいずれかの篩にかけることを特徴とする、菜種ミールの窒素含量の調整方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、搾油後の菜種粕を篩うという簡便かつ安価な操作で、細粒度菜種ミールと粗粒度菜種ミールという粒度の揃った二種類の菜種ミールを製造することができる。
【0017】
32〜60メッシュ篩下の細粒度菜種ミールは、蛋白質含量が高い。しかも、飼料としての利用価値の高い特定のアミノ酸を通常の菜種ミールよりも高い比率で含有するので栄養価も優れる。細粒度菜種ミールは、色目も改善される。さらに、48〜60メッシュ篩下のより細粒度の菜種ミールは、窒素含量6%以上、条件によっては7%以上のより高蛋白質含量の菜種ミールとなる。
【0018】
一方、32〜60メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールは、栄養価を維持しながら、嗜好性、特に苦味が改善される。これは、苦味物質が除去されるとともに、残存する苦味物質が搾油時に造粒されてマスキングされたと考えられる。このようなものは、菜種の皮と子実部を分離した後に搾油する従来方法では得られない。本発明の製造方法によれば、従来は苦味物質のために製品価値が低かったものを、良質の製品に転換することができる。さらに、過剰な窒素分が調整されることで、飼肥料として利用した際の環境負荷が軽減される。このように、得られる二種類の菜種ミールの産業上利用性は非常に高く、捨てる部分が少ないか全くない。したがって、本発明の製造方法は、廃棄物を出さない点でも環境に優しい方法といえる。
【0019】
本発明の菜種粕を32〜60メッシュのいずれかの篩にかけることを特徴とする、菜種ミールの窒素含量の調整方法によれば、菜種ミールの窒素含量の移行が任意に調整可能である。これは、収穫時期や品種に応じて、窒素含量および栄養価の低い原料菜種粕を得た場合に、窒素含量および栄養価を高めるのに有用である。また、窒素含量および栄養価が高い原料菜種粕を得た場合に、窒素含量を適正量に調整した菜種ミールおよびそれを配合した飼肥料を調製することで、環境負荷物質を発生させないようにするのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、発明の菜種ミールの製造方法の一実施の形態を説明する。本発明の製造方法の原料として用いる菜種粕は、菜種から搾油した残渣を意味する。菜種の品種は特に限定されず、すべての菜種を用いることができる。好ましくは、エルカ酸やグルコシノレートが低減された品種であり、キャノーラ種が例示される。
【0021】
菜種からの搾油は、通常、2工程に分かれている。まず、菜種を圧搾機により搾油し、続いて、圧搾粕に残された油分をn-ヘキサンなどの有機溶剤を用いて抽出し、上記圧搾油と抽出油を合わせて精製する。2段階の搾油工程を経てできた菜種粕は、搾油工程で一部が造粒されることにより、特徴のある粒度分布を持つようになる。これを篩で篩うことで、画分に応じて特徴のある菜種ミールを得ることができる。なお、圧搾粕を砕いて、有機溶剤抽出した時と同様の粒度分布を持たせた物を本発明の製造方法の原料としてもよい。
【0022】
上記菜種粕を32〜60メッシュ、好ましくは35〜60メッシュ、さらに好ましくは35〜48メッシュ、特に好ましくは35〜42メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画する。これにより、篩上と篩下とで菜種ミールの性状が異なるものが得られる。なお、本発明は、上記の篩が含まれる限り、複数の篩を使用することを妨げるものではない。本発明は、また、分画して得られた粗粒度菜種ミールをさらに分級し、また、分画して得られた細粒度菜種ミールをさらに分級することを妨げるものではない。したがって、これらの分級物も本発明に含まれる。
【0023】
具体的には、32〜60メッシュの篩下には窒素含量6%以上で、蛋白含量37.50%以上の栄養価の優れた細粒度菜種ミールが選別される。細粒度菜種ミールは、消化率が向上する。細粒度菜種ミールは、色目が薄くて、飼料原料として好適である。
【0024】
さらに48〜60メッシュ篩下に限定された細粒度菜種ミールは、原料となる菜種粕の窒素含量が5.8%以上のときに窒素含量7%以上で蛋白含量43.75%以上、原料となる菜種粕の窒素含量が5.8%以下のときでも窒素含量6.5%以上で蛋白含量40.625%以上となり、原料菜種粕に対して窒素含量及び蛋白含量を平均して約1.2倍高めることができる。
【0025】
上記特性を有する細粒度菜種ミールは、通常の菜種ミールよりも蛋白質などの栄養価が高いために、飼肥料としての添加量が少なくてすむほか、豚、牛、鳥、魚の飼養効率の改善に有効である。
【0026】
一方、32〜60メッシュ篩上には、細粒度菜種ミールほど窒素含量および蛋白質含量が高くは無いが、栄養価が維持されつつも、過剰となることがない粗粒度菜種ミールが選別される。通常の菜種ミールにおける蛋白質含量は、収穫時期や品種でばらつきが見られるが、本発明の範囲内で篩のメッシュを調節することで、細粒度菜種ミールへの窒素含量や蛋白質の移行量を調節することができる。
【0027】
粗粒度菜種ミールは、タンニンのような苦味物質の含有量が篩分け無しの通常品よりやや低い。さらに、粗粒度菜種ミールは、搾油時に苦味物質が種皮と混ざって粒状となるため、苦味物質が含まれていても、その含量から予想されるほど苦くはなくなる。この種皮と混ざって粒状となった部分は粗粒度菜種ミール中において栄養価が比較的高く、この部分の存在が粗粒度菜種ミールの栄養価の維持に役立つ。苦味の低減と高栄養価は、家畜の嗜好性を改善し、家畜の成長促進につながる。
【0028】
粗粒度菜種ミールは、種皮が比較的多く含まれるため繊維質分が高くなる。これは、繊維分が必要とされる牛などの飼料や、土壌改良剤用として好ましい。グルコシノレートは通常品より低減される。グルコシノレートは、畜産動物に対して有害であるので、本発明の製造方法により低グルコシノレートの菜種ミールが得られることは有益である。上記特性を有する粗粒度菜種ミールは、主に、鶏、牛、豚、魚の嗜好性の改善に有効であり、また、一般に環境負荷の少ない飼肥料原料となる。
【0029】
本発明は、また、菜種粕を32〜60メッシュ、好ましくは35〜60メッシュ、さらに好ましくは35〜48メッシュ、さらに好ましくは35〜42メッシュのいずれかの篩にかけることを特徴とする、菜種ミールの窒素含量の調整方法を提供する。この方法によれば、窒素含量は、4.5〜7.5%の間で任意の適当な値に調整される。本調整方法の使用例は、以下の二通りである。まず、菜種の収穫時期や品種に応じて、菜種粕の窒素含量が高く、環境負荷が高すぎる場合、本調整方法によって上記メッシュ篩上に得られる画分を採用することにより、窒素含量が低く調整された環境負荷の低い飼肥料が得られる。次に、菜種粕の窒素含量が低く、栄養価が低すぎる場合、本調整方法によって上記メッシュ篩下に得られる画分を採用することにより、窒素含量の高く調整された栄養価の高い飼肥料が得られる。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例および比較例を用いて、本発明をより詳細に説明する。しかし、実施例の内容が本発明の技術的範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕
上から順に12メッシュ(目開き1.4mm、以下、メッシュをMということがある)、20M(目開き850μm)、32M(目開き500μm)、35M(目開き425μm)、48M(目開き300μm)および60M(目開き250μm)の篩を積み上げ、その最上部に菜種粕((株)J-オイルミルズ製)を500g載せ、手作業にて10分間篩分けした。
【0031】
篩分けの結果を観察すると、12メッシュ上には、皮と子葉および胚軸部とが一度はがれた後に造粒されたものが大部分を占めた。12メッシュ以下では、造粒物が減少した。20〜32メッシュでは、皮部分が最も多くなった。菜種ミール通常品(篩分け無し)、粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールを粉砕機により粉砕し、色差計(製品名:カラーリーダーCR-10、コニカミノルタ(株)製)を用いて色目評価を行った。図1に菜種ミールの色調の測定結果を示す。特に35メッシュ下の画分において、白色および黄色が強く、明るい色調となっていた。
【0032】
篩分けされた画分の重量割合、水分、窒素含量(N分)、油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その際、水分は、飼料分析基準の加熱乾燥法、N分は基準油脂分析試験法のケルダール法、そして、油分は基準油脂分析試験法のエーテル抽出法により求めた。蛋白分は、測定されたN分に蛋白質換算係数6.25を乗じて求めた。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示すとおり、12〜35メッシュ篩上を合わせた粗粒度菜種ミールと、48メッシュ篩上〜60メッシュ篩下を合わせた細粒度菜種ミールとの間には、窒素含量と蛋白質含量に有意差が見られた。特に、48メッシュ下の画分は、N分7%を超える高蛋白質菜種ミールとなった。この方法により、菜種粕の水分をほとんど変えることなく、N分5.34〜7.27%、原料菜種粕N分の約0.8〜1.2倍の間で任意に調節された菜種ミールを得ることが可能となった。
【0035】
菜種ミール通常品、粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールのアミノ酸分析を行った。その結果を図2に示す。細粒度菜種ミールのアミノ酸組成では、とりわけ筋力増強に役立つアルギニン、メチオニン、トリプトファンおよびグルタミン酸の割合が、単純なN分の増加よりもさらに2〜4%程度増加していることがわかった。Distribution of Napin and Cruciferin in Developing Rape Seed Embryos (Hoglund et al., Plant Physiol. 1992,98,509-515)によれば、菜種における主要な蛋白質は、クルシフェリン、ナピンといった貯蔵蛋白質であり、その他の蛋白質も含め、種子、胚軸および子葉において偏りが無いとされている。したがって、本発明の製造方法により得られる細粒度菜種ミールのアミノ酸組成が通常品と異なることは意外なことである。
【0036】
表1に示した菜種ミール通常品、粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールのタンニン、グルコシノレート、繊維質、水溶性窒素指数(NSI)の分析を行った。タンニンは、Folin-Denis法に従うタンニン酸としての量で示す。グルコシノレートは、HPLCによるAOCS公定法により、繊維質およびNSIは、基準油脂分析試験法の方法により測定した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
粗粒度菜種ミールは、苦味物質であるタンニンの量が通常品よりも若干下がっており、繊維質は若干高めになり、NSIは若干低めの数値となった。反対に、細粒度菜種ミールでは対照的な数値となった。グルコシノレートについては、粗粒度菜種ミールで特に減っており、粗粒度菜種ミール、細粒度菜種ミールともに、飼料原料として問題になるレベルの量では無いことが確認された。
【0039】
菜種ミール通常品、粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミールについて、4人のパネラーによる味覚テストを行った。評価基準は、表3の香ばしさ、苦味、甘味および好ましさの4項目を採用した。いずれの項目も、得点が高いほど、好ましい傾向を示す。
【表3】

【0040】
パネラー評価結果の平均値を表4に示す。
【表4】


今回の試験で用いた粗粒度菜種ミールにおいて細粒度菜種ミールの混入は5%以下であった。すなわち、嗜好性の低いミールは、32〜60メッシュ篩下が5%以下であるといえた。
【0041】
家畜の嗜好性は、香ばしく、甘味があるものに対して高く、反対に苦い物に対しては低くなる。そして、家畜が美味しいと感じる物は、基本的にはヒトが好む物と同様の傾向を持つと考えられている。今回の試験結果から、粒度が細かい画分は、通常品と比較して苦味が強く、総合得点も低く、一方、粒度が粗い画分は、苦味が少なく、総合的に優れていた。また、粗粒度菜種ミールと細粒度菜種ミールの境界を48メッシュの篩で行った際にも同様の傾向となった。
【0042】
粗粒度菜種ミールの評価は、表2に示すタンニン低下量からの予測を超えるものであった。搾油過程で菜種ミールが造粒されることで、残存する苦味物質がマスキングされたためと考えられ、このようなものは脱皮してから搾油した菜種ミールからでは得ることができない。
【0043】
〔実施例2〕
実施例1の菜種粕とは異なる場所で製造された菜種粕を用いて、実施例1と同様の操作で菜種ミールを製造した。篩分けされた画分の重量割合、水分、窒素含量(N分)、油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その結果を、表5に示す。
【0044】
【表5】


実施例1と同様に、35メッシュ篩上と35メッシュ篩下とで、窒素含量および蛋白質含量に有意差が見られた。
【0045】
〔実施例3〕
実施例1および実施例2の菜種粕とは異なる場所で製造された菜種粕を用いて、実施例1と同様の操作で菜種ミールを製造した。篩分けされた画分の重量割合、水分、窒素含量(N分)、油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その結果を表6に示す。
【0046】
【表6】


実施例1と同様に、35メッシュ篩上と35メッシュ篩下とで、窒素含量および蛋白質含量に有意差が見られた。
【0047】
〔実施例4〕
産地や製造工場の異なる原料菜種粕23検体について、それぞれ実施例1と同様の操作で菜種ミールを製造し、篩分けされた画分の窒素含量(N分)を測定した。そして菜種粕のN分が篩分けで増減する割合について計算し、粗粒度菜種ミールと細粒度菜種ミールの境界点によるN分の移行を確認した(表7)。
【0048】
【表7】

【0049】
今回用いた23検体の原料菜種粕は、産地、製造工場などによって窒素含量がばらつき、最低で5.63%、最高で6.15%であった。篩分けをした各画分においては、どのような菜種粕を用いた際にもN分が確実に移行しており、原料によらず、N分が特定の比率で精度良く調整されていた。本方法により、菜種ミールは窒素含量5.627±0.177〜7.129±0.142%、原料菜種粕の約0.95〜1.20倍の間で任意に調節されていた。
【0050】
〔比較例1〕
実施例1の菜種粕に変えて、脱脂大豆((株)J-オイルミルズ製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作で大豆ミールを製造した。篩分けされた画分の重量割合、水分、窒素含量(N分)、油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その結果を表8に示す。
【0051】
【表8】


脱脂大豆を篩分けしても、表8に示すとおり、画分の違いによる窒素含量および蛋白質含量に偏りは見られなかった。
【0052】
〔比較例2〕
実施例1の菜種粕に変えて、ハイプロ脱脂大豆((株)J-オイルミルズ製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作で大豆ミールを製造した。篩分けされた画分の重量割合、水分、窒素含量(N分)、油分および蛋白質含量(蛋白分)を測定した。その結果を表9に示す。
【0053】
【表9】


ハイプロ脱脂大豆を篩分けしても、表9に示すとおり、画分の違いによる窒素含量および蛋白質含量に偏りは見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に従う粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミール、ならびに従来の菜種ミール通常品の色の評価を示すグラフである。
【図2】本発明に従う粗粒度菜種ミールおよび細粒度菜種ミール、ならびに従来の菜種ミール通常品のアミノ酸分析の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
菜種粕を32〜60メッシュのいずれかの篩にかけて、粒径が前記メッシュ篩上の粗粒度菜種ミールと、粒径が前記メッシュ篩下の細粒度菜種ミールとに分画することを特徴とする、菜種ミールの製造方法。
【請求項2】
菜種粕を32〜60メッシュのいずれかの篩にかけて得られる、蛋白質含量の増加した粒径32〜60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。
【請求項3】
窒素含量が6%以上である、請求項2に記載の蛋白質含量の増加した粒径32〜60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。
【請求項4】
菜種粕を48〜60メッシュの篩にかけて得られる、窒素含量6.5%以上の粒径48〜60メッシュ篩下の細粒度菜種ミール。
【請求項5】
32〜60メッシュ以下の画分を含まない嗜好性の改善された菜種ミール。
【請求項6】
菜種粕を32〜60メッシュのいずれかの篩にかけて得られる、嗜好性の改善された粒径32〜60メッシュ篩上の粗粒度菜種ミール。
【請求項7】
菜種粕を32〜60メッシュのいずれかの篩にかけることを特徴とする、菜種ミールの窒素含量の調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−178328(P2008−178328A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13358(P2007−13358)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【特許番号】特許第3970917号(P3970917)
【特許公報発行日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(302042678)株式会社J−オイルミルズ (75)
【Fターム(参考)】