説明

落下位置特定装置

【課題】落下物の落下高さが高い場合でも落下物の落下位置を迅速に特定することが可能な落下位置特定装置を提供する。
【解決手段】重力方向に落下する落下物を取り付け可能な取り付け部材3と、取り付け部材3から重力方向に落下させた落下物を衝突させることによって衝撃耐量が測定される試験対象物10と、の間に配置され、落下物の落下位置を特定する落下位置特定装置において、取り付け部材3に着脱可能な吊り下げ部材2と、一端が吊り下げ部材2に接続され、吊り下げ部材2を介して取り付け部材3から吊り下げられた状態で他端からレーザ光5を重力方向に照射する照射部5と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃試験の対象となる試験対象物に衝突する落下物の落下位置を特定する落下位置特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される電子機器の衝撃耐量を測定するために、鉄球を所定の高さから落下させて電子機器に衝突させる落球試験装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図5は、本発明に関連する落球試験装置の構成を示す模式図である。図5に示す落球試験装置では、試験対象物10がベース11に載置されている。ベース11は、支柱12を支持している。支柱12には、電磁石13が、試験対象物10の上方に位置するように取り付けられている。この落球試験装置において、電磁石13が通電されると、鉄球14は電磁石13に引き付けられる。反対に電磁石13への通電が停止すると、鉄球14は、重力方向(図5の矢印g参照)に落下し、試験対象物10に衝突する。
【0004】
図5に示すような落球試験装置で試験対象物10の衝撃耐量を試験する場合、鉄球14の落下位置の照準を試験対象物10における試験箇所(衝撃を与える箇所)に合わせるための落下位置特定装置が用いられることがある。
【0005】
図6は、本発明に関連する落下位置特定装置の構成を示す模式図である。図6に示す落下位置特定装置100では、磁性を備えた金属15が通電中の電磁石13に引き付けられ、試験対象物10の直上に、円錐の錘17が紐16で電磁石13に吊り下げられている。落下位置特定装置100では、鉄球14の落下位置が錘17の頂点直下に特定される。したがって、錘17の頂点直下に試験対象部10における試験箇所を配置させることによって、鉄球14を試験箇所に落下させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−177352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
落下位置特定装置100では、鉄球14の落下位置を特定するためには錘17を試験対象物10に近接させる必要がある。そのため、鉄球14の落下高さが高い場合には、紐16の長さを長くする必要がある。紐16が長くなるにつれて、錘17が揺れやすくなるので、錘17を静止させるのに手間がかかる。その結果、鉄球14の落下位置を特定するのに多くの時間を要することが懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、落下物の落下高さが高い場合でも落下物の落下位置を迅速に特定することが可能な落下位置特定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明による落下位置特定装置は、重力方向に落下する落下物を取り付け可能な取り付け部材と、前記取り付け部材から前記重力方向に落下させた前記落下物を衝突させることによって衝撃耐量が測定される試験対象物と、の間に配置され、前記落下物の落下位置を特定する落下位置特定装置において、前記取り付け部材に着脱可能な吊り下げ部材と、一端が前記吊り下げ部材に接続され、前記吊り下げ部材を介して前記取り付け部材から吊り下げられた状態で他端からレーザ光を前記重力方向に照射する照射部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、試験対象物における落下物の落下位置を、照射部から照射されたレーザ光で特定できる。そのため、落下物の落下高さ(試験対象物から取り付け部材までの高さ)が高い場合、吊り下げ部材の長さを長くしなくても(照射部が試験対象物から離れても)、落下物の落下位置を特定できる。これにより、落下物の落下位置を迅速に特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の落下位置特定装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の落下位置特定装置から照射されるレーザ光の照射形状を示す平面図である。
【図3】本発明の落下位置特定装置における照射部の他の実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明の落下位置特定装置における照射部の他の実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明に関連する落球試験装置の構成を示す模式図である。
【図6】本発明に関連する落下位置特定装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の落下位置特定装置の一実施形態を示す模式図である。
【0013】
図1に示す落下位置特定装置1は、重力方向に落下する落下物を取り付け可能な取り付け部材3と、取り付け部材3から重力方向に落下させた落下物を衝突させることによって衝撃耐量が測定される試験対象物10との間に配置され、試験対象物10における落下物の落下位置を特定する。本実施形態の落下位置特定装置1では、取り付け部材3は電磁石とし、落下物は鉄球14とし、試験対象物10は携帯電話機とするが、本発明は、これらに限定されない。
【0014】
落下位置特定装置1において、取り付け部材3には、吊り下げ部材2が着脱可能に取り付けられる。また、吊り下げ部材2には、照射部4が接続されている。
【0015】
吊り下げ部材2は、磁性体2aと、紐2bと、を有する。本実施形態では、磁性体2aは、磁性を備えた金属である。磁性体2aは、取り付け部材3(電磁石)が通電されているときに取り付け部材3に取り付けられ(引き付けられ)、取り付け部材3への通電が停止したときに取り付け部材3から取り外される。紐2bは、磁性体2aと、照射部4とを接続する。
【0016】
落下位置特定装置1において、照射部4は、スライドスイッチ6を有するレーザポインターとする。照射部4の一端には、紐2bが接続されている。照射部4が吊り下げ部材2を介して取り付け部材3から吊り下げられた状態で、スライドスイッチ6がオフからオンに切り替わると、照射部4の他端からレーザ光5が重力方向に照射される。レーザ光5は、試験対象物10まで到達する。その結果、試験対象物10において、レーザ光5で照射された箇所が鉄球14の落下位置として特定される。
【0017】
上述したように、本実施形態の落下位置特定装置1は、照射部4からレーザ光5を重力方向に照射することによって、試験対象物10における鉄球14の落下位置を特定している。そのため、鉄球14の落下高さ(試験対象物10から取り付け部材3までの高さ)が高い場合、紐2bの長さを長くしなくても(照射部4が試験対象物10の直上から離れていても)鉄球14の落下位置を特定できる。これにより、落下位置特定装置100(図6参照)のように長い紐16で吊り下げられた錘17を静止させるような手間のかかる作業を省くことが可能となる。これにより、鉄球14の落下高さが高い場合でも鉄球14の落下位置を迅速に特定することが可能となる。
【0018】
なお、本実施形態では、レーザ光5の照射形状は、図2(a)に示すドット状であるが、これに限定されない。例えば、試験対象物10における試験箇所の形状が環状の場合には、レーザ光5の照射形状が、図2(b)に示すような環状であるほうが鉄球14の落下位置の照準を合わせやすくなる。
【0019】
また、本実施形態では、照射部4から単色のレーザ光5を出力する構成であるが、この構成だと、レーザ光5の色と試験対象物10の外表面における色が同じ場合、試験対象物10におけるレーザ光5の照射位置が視認しにくくなる。そこで、本発明では、図3に示すように、照射部4が、互いに異なる複数色のレーザ光5を個別に照射する構成であってもよい。図3に示す照射部4は、電源41と、電源41に接続されたスイッチ42と、スイッチ42を介して電源41に接続された複数の光源43と、を有する。各光源43は、互いに異なる色のレーザ光を出力するように構成されている。この照射部4では、スイッチ42で選択された光源43が、電源41から電力供給を受けて、レーザ光5を照射する。スイッチ42で光源43の選択を行う際には、試験対象物10の外表面の色とのコントラストが大きい色のレーザ光を出力する光源43を選択するのが望ましい。このような光源43を選択することによって、試験対象物10におけるレーザ光5の照射位置、すなわち落下物の落下位置を視認しやすくなる。
【0020】
さらに、本実施形態では、手動でスライドスイッチ6をオフからオンに切り替えてレーザ光5を照射する構成であるが、この構成の場合、スライドスイッチ6に触れることによって照射部4が揺れると照射部4を静止させる作業が必要になる。そこで、本発明では、図4に示すようにレーザ光5の照射をリモートコントロールする構成で行ってもよい。図4に示す照射部4は、予め定められた無線信号8を送信器7から受信したときにレーザ光5を照射する。この構成の場合、照射部4に触れることなくレーザ光5を照射できるので、より一層迅速に落下物の落下位置を特定することが可能となる。
【符号の説明】
【0021】
1、100 落下位置特定装置
2 吊り下げ部材
2a 磁性体
2b、16 紐
3 取り付け部材
4 照射部
5 レーザ光
6 スライドスイッチ
7 送信器
8 無線信号
10 試験対象物
11 ベース
12 支柱
13 電磁石
14 鉄球
15 金属
17 錘
41 電源
42 スイッチ
43 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力方向に落下する落下物を取り付け可能な取り付け部材と、前記取り付け部材から前記重力方向に落下させた前記落下物を衝突させることによって衝撃耐量が測定される試験対象物と、の間に配置され、前記落下物の落下位置を特定する落下位置特定装置において、
前記取り付け部材に着脱可能な吊り下げ部材と、
一端が前記吊り下げ部材に接続され、前記吊り下げ部材を介して前記取り付け部材から吊り下げられた状態で他端からレーザ光を前記重力方向に照射する照射部と、
を有することを特徴とする、落下位置特定装置。
【請求項2】
前記取り付け部材が電磁石であり、前記吊り下げ部材が、通電中の前記電磁石に引き付けられる磁性体と、前記磁性体と前記照射部とを接続する紐と、を有する、請求項1に記載の落下位置特定装置。
【請求項3】
予め定められた無線信号を発信する送信器をさらに有し、
前記照射部が、前記無線信号を受信したときに前記レーザ光を照射する、請求項1または2に記載の落下位置特定装置。
【請求項4】
前記照射部が、互いに異なる複数色の前記レーザ光を個別に出力する複数の光源と、前記複数の光源の各々に接続され、前記レーザ光を出力させる光源を選択可能なスイッチと、を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の落下位置特定装置。
【請求項5】
前記レーザ光の照射形状が、環状である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の落下位置特定装置。
【請求項6】
前記照射部がレーザポインターである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の落下位置特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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