落雪機能を備えた太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置
【課題】 太陽光パネルの雪を効果的に落下させることにより積雪による太陽光パネルの発電効率の低下を抑制することのできる落雪機能を備えた太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置を提供する。
【解決手段】 複数の太陽光パネル3を複数段に配置してなる太陽光パネル群3,3・・・と、太陽光パネル群3,3・・・を所定の角度に傾斜させて支持するとともに略水平な設置面8に設置される太陽光パネル架台4とを有しており、太陽光パネル群3,3・・・と設置面8との間には、落雪用の空隙9が設けられているとともに、太陽光パネル群3,3・・・のうち下段に配置される下段側太陽光パネル3aと、これの上段に配置される上段側太陽光パネル3bとの間には、下段側太陽光パネル3aの傾斜面に対して垂直方向に落とし込んだ逆段差10と、平行方向に形成された平行隙間11aと、垂直方向に形成された垂直隙間11bとを有する。
【解決手段】 複数の太陽光パネル3を複数段に配置してなる太陽光パネル群3,3・・・と、太陽光パネル群3,3・・・を所定の角度に傾斜させて支持するとともに略水平な設置面8に設置される太陽光パネル架台4とを有しており、太陽光パネル群3,3・・・と設置面8との間には、落雪用の空隙9が設けられているとともに、太陽光パネル群3,3・・・のうち下段に配置される下段側太陽光パネル3aと、これの上段に配置される上段側太陽光パネル3bとの間には、下段側太陽光パネル3aの傾斜面に対して垂直方向に落とし込んだ逆段差10と、平行方向に形成された平行隙間11aと、垂直方向に形成された垂直隙間11bとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜をさせた太陽光パネルに降り積もる雪をパッシブに落下させる落雪機能を備えた太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光パネルに雪が降り積もると発電効率が低下するため、太陽光パネルに積もった雪を除去するための発明が種々提案されている。
【0003】
例えば、図34に示すような無落雪屋根の上などに設置される一般的な太陽光パネルにおいては、降り積もる雪を滑落させられるように適度な傾斜面をつけて配置されている。
【0004】
また、特開平11−298028号公報において、太陽電池の直流電力を所定の交流電力に変換する電力変換装置を持ち、第1の開閉手段で配電系統と前記電力変換装置を接続する発電システムにおいて、電力変換装置の交流側に抵抗器とこの抵抗器に並列に第2の開閉手段を挿入し、電力変換装置の直流側と太陽電池の間にダイオードとこのダイオードに並列に第3の開閉手段を設け、系統連系運転制御系と融雪運転制御系を備え、系統連系運転と融雪運転を選別して系統連系運転制御と融雪運転制御を切り換える切り換え部と融雪運転の搬送波を生成する搬送波発生部と系統連系運転と融雪運転の搬送波と変調波を切り換える切り換え部を持った太陽光発電システムが提案されている(特許文献1)。特許文献1によれば、この太陽光発電システムは、外部からの信号により運転モードを融雪運転へと切り換え、商用電源の電力を太陽電池パネルに供給し、そのエネルギーでパネルを暖めることにより融雪して積雪を防止することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−298028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、まず図34に示すような傾斜された一般の太陽光パネルにおいては、図35に示すように、太陽光パネルから傾斜に沿って滑り落ちた雪が、屋根とパネルとの間やパネルの下側に堆積して凍結し固まってしまうという問題がある。このようにパネル下側で固まった雪は極めて融けにくく、時間経過により上側へと成長しながら太陽光パネルを覆って全く発電しなくなるといった問題の原因になる。この様な問題に対して、太陽光パネルを載置する架台の脚を高くする対処方法がある。しかし、年間の積雪が1mを越えるような降雪地域では、それ以上の脚高を必要とするため、特に一般住宅の屋根に設ける場合等では屋根の強度に配慮するとそのような高い脚高にすることは困難である。
【0007】
また、太陽光パネルの露出面積と発電量との関係は必ずしも比例関係とならず、積雪により露出面積が減少すると急激に発電能力が低下するといった問題がある。一般に、太陽光パネルのセルは電気的に直列接続されており、一部のセルが陰になっても発電能力が低下しないようにバイパス回路を設けているが、陰になるセルが多くなるとそのバイパス回路が機能しなくなり、他のセルに悪影響を及ぼすためである。
【0008】
また、特許文献1に記載された発明においては、商用電源からの電力を必要とするため運転にかかる電力量が発電量よりも多くなるという問題がある。また、図34に示すような従来の傾斜させた太陽光パネルに特許文献1に記載された発明等の融雪装置を併用するような場合、上述のように太陽光パネルの上側と下側とでは積雪量や氷結具合が異なるため、上側と下側とで融雪温度や方法を変える等の改善が必要であり、そのためにシステムが複雑になり、かつ製造コストおよびランニングコストが高額になるといった問題もある。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、太陽光パネルの雪を効果的に落下させることにより積雪による太陽光パネルの発電効率の低下を抑制することのできる落雪機能を備えた太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る太陽光パネルユニットは、複数の太陽光パネルを複数段に配置してなる太陽光パネル群と、前記太陽光パネル群を所定の角度に傾斜させて支持するとともに略水平な設置面に設置される太陽光パネル架台とを有しており、前記太陽光パネル群と前記設置面との間には、落雪用の空隙が設けられているとともに、前記太陽光パネル群のうち下段に配置される下段側太陽光パネルと、これの上段に配置される上段側太陽光パネルとの間には、前記下段側太陽光パネルの傾斜面に対して垂直方向に落とし込んだ逆段差と、前記傾斜面に対して平行方向に形成された平行隙間と、前記傾斜面に対して垂直方向に形成された垂直隙間とを有している。
【0011】
また、本発明に係る太陽光パネルユニットの一態様として、前記逆段差、前記平行隙間および前記垂直隙間は、最下段の太陽光パネルとこれの上段側太陽光パネルとの間に形成されていることに加え、少なくともその他の1つ以上の段における太陽光パネル間にも形成されていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る太陽光パネルユニットの一態様として、前記太陽光パネル架台と前記太陽光パネルとの間には、前記太陽光パネルをその下端を支点として上端を前記太陽光パネル架台から離間させるように傾斜させて前記逆段差を構成するためのパネル載置部が設けられていてもよい。
【0013】
また、本発明に係る太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置は、前記太陽光パネルユニットと、この太陽光パネルユニットで発電した電力を蓄える蓄電設備とを備えている。
【0014】
また、本発明に係る太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置は、前記太陽光パネルユニットと、この太陽光パネルユニットで発電した直流電流を交流電流に変換するパワーコンディショナとを備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽光パネルの雪を効果的に落下させることにより積雪による太陽光パネルの発電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る太陽光パネルユニットの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【図3】本第1実施形態の太陽光パネルユニットにおける太陽光パネルの配置を示す模式図である。
【図4】本発明に係る太陽光パネルユニットの他の実施形態の例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る太陽光パネルユニットにおける落雪のメカニズムを示す模式図である。
【図6】本発明に係る太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る太陽光パネルユニットの第3実施形態を示す側面図である。
【図8】本発明に係る太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置の第3実施形態を示すブロック図である。
【図9】本実施例1において架台A〜Fの設置態様を示す側面からみた模式図である。
【図10】本実施例1において架台Aの設置状態を示す写真である。
【図11】本実施例1において用いた架台Aから架台Fまでの各傾斜角度、段差および水平・垂直隙間に関する数値を示す表である。
【図12】実施例1において架台A、架台Dおよび架台Eの設置状態を示す写真である。
【図13】実施例1において1年目シーズンにおける試験日毎の測定時間、発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量をまとめた表である。
【図14】実施例1において1年目シーズンの2月中旬頃の架台A、架台Bおよび架台Cの積雪状態を示す写真である。
【図15】実施例1の架台Cにおいて最下段の太陽光パネルとこの上段側の太陽光パネルとの段差部分における積雪状態を示す拡大写真である。
【図16】実施例1において2年目シーズンにおける12月25日から2月3日までの各試験日毎の測定時間、発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量をまとめた表である。
【図17】実施例1において2年目シーズンにおける2月4日から3月9日までの各試験日毎の測定時間、発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量をまとめた表である。
【図18】実施例1において2年目シーズンにおける架台A、架台Eおよび架台Fの発電効率を折れ線グラフにしたものである。
【図19】実施例1における架台Dおよび架台Fの積雪状態を示す写真である。
【図20】実施例1における午前8時頃から11時ごろまでの融雪状態の変化を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図21】実施例1における午前11時半頃から午後4時半頃までの融雪状態の変化を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図22】実施例2における1月8日の架台Gおよび架台Hの積雪状態を示す写真である。
【図23】実施例2における12月26日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図24】実施例2における12月29日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図25】実施例2における1月1日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図26】実施例2における1月8日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図27】実施例2における1月15日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図28】実施例2における1月21日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図29】実施例2における1月29日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図30】実施例2における2月2日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図31】実施例2における試験日毎の測定時間、発電量、段位面積当たりの発電量、単位面積当たりの積算発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量をまとめた表である。
【図32】実施例2における日射量および架台Aと架台Gと架台Hの発電効率を折れ線グラフにしたものである。
【図33】実施例2における降雪量および架台Aと架台Gと架台Hの発電効率を折れ線グラフにしたものである。
【図34】従来の傾斜配置された太陽光パネルを示す斜視図である。
【図35】従来の太陽光パネルユニットにおける落雪メカニズムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置の第1実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本第1実施形態の太陽光パネルユニット1Aを示す斜視図である。また、図2は本第1実施形態の太陽光発電装置2Aの各構成を示すブロック図である。
【0018】
本第1実施形態の太陽光パネルユニット1Aは、複数の太陽光パネル3からなる太陽光パネル群3,3・・・と、この太陽光パネル群3,3・・・を支持する太陽光パネル架台4とから構成されている。また、図2に示すように、本第1実施形態の太陽光発電装置2Aは、前記太陽光パネルユニット1Aと、発電された直流電流を交流電流に変換するパワーコンディショナ5と、交流電流を建物内の電気器具E等へ分配する分電盤6と、送電線等の商用電源Pと連結された電力量計7とから構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0019】
太陽光パネルユニット1Aを構成する太陽光パネル3は、太陽光を直接的に電力に変換する薄膜型の素子を板状の基板に貼り付け、樹脂や強化ガラスで表面を保護したものである。本第1実施形態における前記素子には、p型とn型の半導体を接合した構造のものを使用しているが、特に限定されるものではなく、有機色素を用いて光起電力を得る色素増感太陽電池等、種々のものの中から適宜選択してよい。また、表面には滑雪しやすくするための加工や薬品の塗布等を施してもよい。
【0020】
太陽光パネル架台4は、複数の太陽光パネル3からなる太陽光パネル群3,3・・・を所定の角度に傾斜させ、かつ、各太陽光パネル3の間に逆段差10と、傾斜面に対して垂直方向の垂直隙間11aと、傾斜面に対して平行方向の平行隙間11bとを設けて配置するためのものである。前記逆段差10、垂直隙間11aおよび水平隙間11bは、後述するように、上段側太陽光パネルから滑落する雪を太陽光パネル群3,3・・・裏の設置面8へ落下させて空隙9に収容するために形成されている。
【0021】
本第1実施形態における太陽光パネル架台4は、図1に示すように、金属製のフレームにより形成されており、無落雪屋根あるいは地面等の略水平な設置面8上に配置される底面フレーム41と、この底面フレーム41から略垂直に立ち上げられた縦フレーム42と、縦3段で各段横2列の太陽光パネル3を所定の角度に傾斜させつつ各段毎に逆段差10と隙間11a,11bを設けて固定するパネル固定傾斜フレーム43とにより構成されている。なお、本第1実施形態では、前記各フレーム41,42,43同士の間には、任意の補強フレーム44が設けられている。
【0022】
本第1実施形態における太陽光パネルユニット1Aは、無落雪屋根等の略水平な設置面8に設置され、前記太陽光パネル群3,3・・・と前記設置面8との間に落雪用の空隙9を構成する。なお、設置面8は、無落雪屋根等の建物の屋上に限られず、地面や船舶等の移動物体上でもよく、十分な落雪用の空隙9が確保できるのであれば傾斜している面であってもよい。また、太陽光パネルユニット1Aは設置面8に対して複数連設させることによりメガソーラー発電に用いてもよい。
【0023】
次に、太陽光パネル群3,3・・・の傾斜角度θ、逆段差10、垂直隙間11a、および水平隙間11bについてより詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本第1実施形態の太陽光パネル群3,3・・・は縦3段、横2列の太陽光パネル3で構成されているが、その段数や列数は適宜選択されるものである。本第1実施形態においては、最下段の太陽光パネル3,3を第1段太陽光パネル3aとし、中段の太陽光パネル3,3を第2段太陽光パネル3bとし、最上段の太陽光パネル3,3を第3段太陽光パネル3cとしている。なお、本第1実施形態において、上段側太陽光パネルと下段側太陽光パネルは、前記第1段太陽光パネル3aと前記第2段太陽光パネル3bとの関係においては、前記第1段太陽光パネル3aが下段側太陽光パネルに相当し、前記第2段太陽光パネル3cが上段側太陽光パネルに相当する。同様に、前記第2段太陽光パネルと前記第3段太陽光パネルとの関係においては、前記第2太陽光パネルが下段側太陽光パネルに相当し、前記第3段太陽光パネルが上段側太陽光パネルに相当する。
【0025】
以下、本第1実施形態における下段側太陽光パネル3aは、第1段太陽光パネル3aないし第2段太陽光パネル3bとし、上段側太陽光パネル3bは第2段太陽光パネル3bないし第3段太陽光パネル3cとして説明をする。
【0026】
本第1実施形態における各太陽光パネル3は、設置面8に対して約30度の傾斜角度θとなるように設置されている。この傾斜角度θは、縦3段の太陽光パネル3を設置する場合に用いられる一般的な角度であるが、特に限定されるものではなく、太陽光パネル3の段数、設置場所の緯度やその場所で想定される風の強さ等を考慮して適宜選択されるものである。
【0027】
太陽光パネル群3,3・・・の逆段差10と各隙間11a,11bは、主に上段側太陽光パネル3bから滑り落ちる雪を太陽光パネル群3,3・・・と設置面8との間に形成された落雪用の空隙9へ落下させるための開口部分である。また、後述する実験の結果、太陽光パネル3を縦方向に3段以上並べて太陽光パネル群3,3・・・を構成する場合、前記逆段差10、前記垂直隙間11a、および前記水平隙間11bは、最下段の太陽光パネル3とこれの上段の太陽光パネル3との間に形成することに加え、少なくともその他の1つ以上の段における太陽光パネル3同士の間にも形成することがより好ましい。
【0028】
本第1実施形態では、図3に示すように、上段側太陽光パネル3b,3cが、下段側太陽光パネル3a,3bの傾斜面に対して垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差10となるように、傾斜面に対して略垂直でかつ下方向に段違いで設置されている。本発明ではこのような段差を「逆段差」として定義する。また、本第1実施形態における逆段差10と隙間11a,11bは、上段側太陽光パネル3b,3cが下段側太陽光パネル3a,3bの陰に隠れないようにするため、前記傾斜面に対して垂直方向の垂直隙間11aと、前記傾斜面に対して水平方向の水平隙間11bとを有している。なお、これらの逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bとの位置関係については、後述する実施例1および実施例2において図3を参照して説明する。
【0029】
なお、逆段差10と各隙間11a,11bは、図4に示すように、各太陽光パネル3のいずれかの段に形成されていれば一定の効果を発揮できるが、図1に示すように各段毎に形成されている方がより好ましい。すなわち、垂直隙間11aおよび水平隙間11bまでの滑走距離を短くすることで、太陽光パネル上の雪が逐一それらの隙間11a,11bから滑落するようになり、太陽光パネル上を少しでも広くかつ長い間、露出させることができると考えられるからである。また、大きな塊の状態で雪が滑落すると、逆段差10や各隙間11a,11bを飛び越えて、下段側の太陽光パネル3,3に積雪するおそれがあるが、各段毎に落雪させる構成であれば、積雪を細分割して小さな塊の状態で落下させることができ、より確実に落雪効果を得ることができると考えられるからである。
【0030】
次に、本第1実施形態の太陽光発電装置2Aにおける太陽光パネルユニット1A以外の各構成について説明する。
【0031】
パワーコンディショナ5は、太陽光パネルユニット1Aにより発電された直流電流を商用電源Pと等しい交流電流に変換するためのものである。また、本第1実施形態におけるパワーコンディショナ5は、太陽光パネルユニット1Aにより発電される電力量が建物等で消費される電力量よりも多い場合には余った電力を商用電源Pへと供給し、逆に、発電される電力量が消費される電力量よりも少ない場合には、足りない電力を商用電源Pからの供給を受ける等の太陽光発電装置2A全体の運転を管理する機能を有する。なお、商用電源Pとは、電力会社の発電所等で発電された電力を建物等に送電する送電線等のことである。
【0032】
分電盤6は、パワーコンディショナ5によって変換された交流電流を建物内の各所へ分配するためのものである。各部屋のコンセントや照明器具等の電気器具Eに接続され、太陽光パネル3によって発電された電力を分配するようになっている。
【0033】
電力量計7は、分電盤6と商用電源Pとの間に設置されており、太陽光パネルユニット1Aで発電した電力が商用電源Pへと供給された電力量および商用電源Pから供給された電力量をそれぞれ計測するものである。
【0034】
次に、本第1実施形態の太陽光パネルユニット1Aおよびこれを用いた太陽光発電装置2Aの各構成の作用について詳細に説明する。
【0035】
まず、太陽光パネルユニット1Aにおける太陽光パネル群3,3・・・の逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bによる作用について詳しく説明する。
【0036】
逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bによる主な作用は、図5に示すように、上段側太陽光パネル3b,3cから滑り落ちる雪を前記落雪用の空隙9に落下させることである。
【0037】
また、逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bは、下段側太陽光パネル3a,3b上の雪と上段側太陽光パネル3b,3c上の雪とを分断する作用も有する。各段の太陽光パネル3a,3b,3cに降り積もった雪は、逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bにより分断されて前記落雪用の空隙9へと落下する。特に、本第1実施形態の太陽光パネルユニット1Aでは、上段側太陽光パネル3b,3cとの逆段差10を下段側太陽光パネル3a,3bの傾斜面に対して垂直方向に落とし込んだ下り階段状に構成しているため、より分断されやすい。この様に、各段毎に雪を分断させることにより、滑走距離が短くなるとともに、各段毎に確実に落雪させることができるようになる。
【0038】
さらに、短時間に大量の雪が降った場合、滑り落ちる前に逆段差10と各隙間11a,11bを埋める程の雪が積もることもある。しかし、本第2実施形態では、各段の太陽光パネル3a,3b,3cに降り積もった雪は下段側太陽光パネル3a,3bにより一旦堰き止められるが、垂直隙間11aおよび水平隙間11bから小塊状になって空隙9へ落下する。また、下段側太陽光パネル3a,3bにより一旦堰き止められ雪は、太陽光により暖められた太陽光パネル3からの熱を均等に受けるためより速やかに融ける。
【0039】
その他、一旦堰き止められた上段側太陽光パネル3b,3c上の雪が小さな塊になると、上段側太陽光パネル3b,3cの側方に移動しやすく、上段側太陽光パネル3b,3cの側方から落雪することもある。
【0040】
また、本第1実施形態における隙間11a,11bは、垂直隙間11aだけでなく、水平隙間11bを形成することにより、上段側太陽光パル3b,3cが下段側太陽光パネル3a,3bの陰に隠れないようになっている。これにより、落雪効果を高めつつ下段側の太陽光パネル3a,3bの陰に隠れることによる発電効率の低下を回避できる。また、両方の隙間11a,11bによって太陽光パネルユニット1Aの高さを低く抑えつつ、落雪のための開口部分を大きくとることができる。
【0041】
以上のように、下段側太陽光パネル3a,3bと上段側太陽光パネル3b,3cとの間に逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bを設けることにより、上段側太陽光パネル3b,3cの雪が下段側太陽光パネル3a,3b上に滑落して堆積してしまうのを防止できる。また、各段の太陽光パネル3a,3b,3c上に極端に積雪する部分をなくし、できるだけ平均的に雪を降り積もるようにすることもできる。さらに、逆段差10を形成しても、上段側太陽光パネル3b,3cが下段側太陽光パネル3a,3bの陰に隠れてしまうことがなく、従来のものと比較して基本的な発電能力が低下してしまうこともない。
【0042】
次に、太陽光パネルユニット1Aを用いた太陽光発電装置2Aの発電時における各構成の作用について説明する。
【0043】
太陽光パネルユニット1Aの各太陽光パネル3,3・・・は、太陽光を受けて直流電流を発生する。本第1実施形態において、各太陽光パネル3,3・・・で発生した直流電流はパワーコンディショナ5へと送られる。
【0044】
パワーコンディショナ5では、直流電流を商用電源Pと同じ交流電流へと変換する。また、本第1実施形態におけるパワーコンディショナ5では、太陽光パネルユニット1Aの発電量と消費される電力量との差に応じて、商用電源Pからの電力の出入量を制御する。例えば、太陽光パネルユニット1Aの発電量が消費される電力量よりも多い場合には、余った電力を商用電源Pへと供給し、逆に、発電される電力量が消費される電力量よりも少ない場合には、足りない電力を商用電源Pからの供給を受けるように制御を行う。
【0045】
分電盤6は、パワーコンディショナ5から供給された電流を分配して建物内各所の各電気器具Eへと供給する。
【0046】
電力量計7は、太陽光パネルユニット1Aで発電した電力が商用電源Pへと供給された電力量および商用電源Pから供給された電力量をそれぞれ計測する。使用者は、それぞれの電力量を比較して、太陽光パネルユニット1Aで発電した電力量が多ければその分の電力を電力会社に買い取らせ、足りない分の電力があれば買い取りを行う。
【0047】
以上のような本第1実施形態の落雪機能を備えた太陽光パネルユニット1Aおよびこれを用いた太陽光発電装置2Aによれば、以下の効果を得ることができる。
1.太陽光パネル3,3・・・上に降り積もった雪の滑落距離を短くし、を落雪用の空隙9へ落下させて積雪による発電効率の低下を抑制することができる。
2.各太陽光パネル3に降り積もる雪の連続性を分断し、より滑り落ちやすくして太陽光パネル3,3・・・上への積雪を抑制することができる。
3.短時間に大量の雪が降ったとしても、下段側太陽光パネル3a,3bによって上段側太陽光パネル3b,3c上の雪を一旦堰き止め、太陽光により暖められた太陽光パネルからの熱により速やかに融かすことができる。
4.短時間に大量の雪が降ったとしても、逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bとによって雪を小さな塊に分断し、雪が上方側太陽光パネル3b,3cの側方へ移動してそのまま落下させられることもある。
5.下段側太陽光パネル3a,3bに大量の雪が滞留してしまうのを回避できるため、時間経過と共に太陽光パネル3上で積雪が凍り固まってしまうのを防止できる。
【0048】
つぎに、本発明に係る太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の構成のうち、上述した第1実施形態の構成と同等または相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。図6は、本第2実施形態の太陽光発電装置2Bの各構成を示すブロック図である。
【0049】
図6に示すように、本第2実施形態の太陽光発電装置2Bは、太陽光パネルユニット1Aと、蓄電設備12とから構成される。以下、蓄電設備12について詳細について説明する。
【0050】
本第2実施形態における蓄電設備12は、ナトリウム・硫黄電池(以下、「NAS電池」という)からなり太陽光パネルユニット1Aと照明器具等の電気器具Eに接続される。この蓄電設備12は、太陽光パネルユニット1Aで発電した電力を蓄電し、必要に応じて電気器具E等に供給するように作用する。
【0051】
なお、本第2実施形態ではNAS電池を使用したが、特に限定されるものではなくリチウムイオン電池等、種々の蓄電池から適宜選択してよい。
【0052】
以上のような本第2実施形態の太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置2Bは、商用電源Pから離れた場所や小規模な夜間照明として利用される場合にその効力を発揮し、安定した電源となる。
【0053】
次に、本発明に係る太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置の第3実施形態について説明する。なお、本第3実施形態の構成のうち、上述した第1実施形態および第2実施形態の構成と同等または相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0054】
図7は、本第3実施形態における太陽光パネルユニット1Cを示す側面図であり、図8は、本第3実施形態の太陽光発電装置2Cの各構成を示すブロック図である。
【0055】
図7に示すように、本第3実施形態の太陽光パネルユニット1Cは、太陽光パネル3と太陽光パネル架台4のパネル固定傾斜フレーム43との間にパネル載置部45を配置している。このパネル載置部45は、長辺が前記太陽光パネル3の縦方向の長さに略等しく、その長辺の一方の角部が所定の角度を有するように、長尺の金属板を略三角形状に折り曲げることにより形成されている。このようにパネル載置部45は側面視で略三角形状に形成されているが、これに限定されるものではなく、太陽光パネル3を所定の角度で傾斜させられて逆段差10を構成できるものであれば適当な形状を採用してよい。また、板状やフレーム状等、適当な構造を採用してよい。
【0056】
よって、本第3実施形態における太陽光パネル3は、そのパネル載置部45に載置されることにより、その下端を支点として上端が前記太陽光パネル架台4から離れるように傾斜されて固定される。
【0057】
なお、本第3実施形態では、パネル載置部45が太陽光パネル3の間に垂直隙間11aおよび水平隙間11bを形成するように、各段毎に間隔をあけてパネル固定傾斜フレーム43に配置されている。これにより太陽光パネル3をパネル載置部45に固定するだけで、適切な範囲での逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bを構成することができ、熟練を要しなくても効率的に設置作業が進められる。
【0058】
また、本第3実施形態における太陽光パネル3は、図8に示すように、第1段太陽光パネル3a、第2段太陽光パネル3bおよび第3段太陽光パネル3cの各段毎に電気的に直列接続されており、パワーコンディショナ5に接続されている。
【0059】
以上のような本第3実施形態の太陽光パネルユニット1Cおよびこれを用いた太陽光発電装置2Cの各構成の作用について説明する。
【0060】
まず、本第3実施形態におけるパネル載置部45は、その下端を支点として上端が前記太陽光パネル架台4から離間されるように傾斜させることにより容易に逆段差10、垂直隙間11aおよび水平隙間11bを形成することができる。
【0061】
すなわち、太陽光パネルユニット1Cの逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bを設ける場合において、図1に示すような太陽光パネル架台4のパネル固定傾斜フレーム43と平行になるような載置部を使用する場合、下段ほど高くしなければならず、各段毎に載置部の形状を変えなければならない。
【0062】
一方、本第3実施形態におけるパネル載置部45を使用することにより、図7に示すように、各段によってパネル載置部45の形状を変えずに、逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bとを形成することができる。また、太陽光パネルユニット1Cの全体の高さを低く保つことができる。
【0063】
次に、本第3実施形態では太陽光パネル3は、各段毎に電気的に直列接続されていることによる作用について説明する。
【0064】
通常、太陽光パネルユニット1Cにおける積雪は、下方に流れて積雪するため、下段ほど大きく雪に覆われてしまう。そして、そのような下段側の太陽光パネル3において受光できずに発電量が0になってしまうと、回路の抵抗値が増えた状態となり、全体の発電量に影響を及ぼす場合がある。
【0065】
そこで、本第3実施形態における太陽光パネル3は、各段毎に電気的に直列接続されることで、全体がダウンすることを回避している。
【0066】
以上のように、本第3実施形態においては、パネル載置部45を利用することによって逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bを容易に構成することができる。また、各段毎に電気的に直列接続されることで、太陽光パネルユニット1Cの一部が雪に覆われたとしても、その影響を最小限にとどめるとができる。
【実施例1】
【0067】
以下、実施例1において本発明に係る太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置を用いて行った実証実験について説明する。
【0068】
実証試験は、平成20年1月11日から平成20年3月13日まで(以下、「1年目シーズン」という)と、平成20年12月25日から平成21年3月9日まで(以下、「2年目シーズン」という)の2シーズンにおいて行われた。
【0069】
本実施例1において使用した太陽光パネル発電システムは以下の通りである。
【0070】
太陽光パネル3は、シャープ株式会社製のND−157ARを用いた。このND−157AR1枚当たりの外形寸法は縦方向の長さ約1165mm、幅約990mm、厚さ約45mmである。また、公称最大出力は157W、モジュール変換効率は13.6%、重量は約14.5kgである。
【0071】
太陽光パネル架台には、図9に示す、比較用の架台としての架台A,架台B、架台Cおよび架台Dの4種類の架台と、本実施例1の架台として架台Eおよび架台Fの2種類の架台とを用いた。
【0072】
架台Aは、従来からある一般的なものであって、図10に示すように、縦3段で横4列の計12枚の太陽光パネルが約30度の傾斜角度θで段差も隙間もなく略平面状に設置されている。なお、傾斜角度θは架台A〜Fの全てにおいて約30度に設定している。
【0073】
架台Bは、太陽光パネル上を滑りやすくすることにより雪の除去の促進を狙ったものであり、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルを段差も隙間もなく略平面状に設置し、傾斜面から少し間隔をあけて、雪を滑り易くするための透明なビニールを展張してある。
【0074】
架台Cは、各段の太陽光パネル同士の間に上り階段状の段差(「正段差」ともいう)を設けて雪の連続性を分断することにより雪の除去の促進を狙ったものであり、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルに段差のみを設けて設置されている。段差および隙間については図3および図11に示す通りである。したがって、架台Cでは、下段側太陽光パネルに対して上段側太陽光パネルを傾斜面に略垂直方向(=Gy12=Gy23)に約−15mm、傾斜面に略平行方向(=Gx12=Gx23)に間隔を設けず(約0mm)、上段側に上り階段状の段差(正段差)のみを形成している。
【0075】
架台Dは、架台Cよりも大きな上り階段状の段差(正段差)を設けて雪の連続性を分断することにより更なる雪の除去の促進を狙ったものである。つまり、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルに段差のみを設けて、下段側太陽光パネルに対して上段側太陽光パネルを傾斜面に略垂直方向(=Gy12=Gy23)に約−45mm、傾斜面に略平行方向(=Gx12=Gx23)に間隔を設けず(約0mm)、上段側に上り階段状の段差(正段差)のみを形成している。
【0076】
架台Eは、本発明の太陽光パネルユニットに相当し、各段の太陽光パネル同士の間に垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差を設けて雪の連続性を分断することにより雪の除去の促進を狙ったものである。そして、太陽光パネルユニットは、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルを用い、各段の太陽光パネル同士の間には下段側太陽光パネルに対して上段側太陽光パネルを傾斜面に略垂直方向(=Gy12=Gy23)に約+45mm、傾斜面に略平行方向(=Gx12=Gx23)に約+80mmの垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差および隙間を形成した。
【0077】
架台Fは、本発明の太陽光パネルユニットに相当し、最下段の太陽光パネルとこれに対して上段側の太陽光パネルの間のみに段差および隙間を設けた場合に、架台Eとどの程度の効果の差が生じるかを確かめるためのものである。そして、太陽光パネルユニットは、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルを用い、最下段の太陽光パネルとこの上段側の太陽光パネルとの間には傾斜面に略垂直方向(=Gy12)に約+15mm、傾斜面に略平行方向(=Gx12)に約+80mmの垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差および隙間を形成した。
【0078】
1年目シーズンの実証試験は、架台A、B、Cを用いた。また、2年目シーズンの実証試験は、架台A、D、E、Fを用い、1年目シーズンと同じ設置位置で行った。但し、2年目シーズの途中で架台Eを架台Fに交換した。つまり、2年目シーズンの平成20年12月25日〜平成21年2月1日までは架台Eを使用し、同2月2日〜同3月9までは架台Fを使用した。これにより段差および隙間の大きさや段数等の違いによる発電効率の影響を確認した。
【0079】
なお、各架台は、図12に示すように、無落雪屋根上に互いの陰が干渉しないように適当な距離を隔てて設置した。
【0080】
本実施例1における実証試験では、デジタルカメラによる写真撮影、ビデオ撮影および架台A〜Fのそれぞれにおける発電量の計測を行った。また、試験期間中の日照時間及び降雪量は気象庁のデータベースから得た。発電量から発電効率を計算し、日照時間からは日射量を計算した。
【0081】
まず、1年目シーズンにおける試験結果について説明する。図13は、1年目シーズンにおける試験日毎の測定時間、発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量を表にまとめたものである。
【0082】
図13より、1年目シーズンの平均の発電効率は、架台Aで約1.1%、架台Bで約0.9%、本実施例1の架台Cで約0.8%であり、架台Bおよび架台Cともに、従来からの架台Aの発電効率を上回ることができなかった。
【0083】
1年目シーズンのはじめの平成20年1月12日から1月18日あたりまでは、降雪量も少なく、架台Aから架台Cのすべてにおいて高い発電効率を維持している。しかし、同19日から3月4日まで、発電効率が約0%の日が続いた。その後、3月5日くらいから徐々に発電効率が上昇していった。
【0084】
図14は、発電効率が約0%であったときに撮影された写真である。この写真画像からわかるとおり、下段側へ滑り落ちた雪が徐々に堆積していき、年間で最も気温の低い1月から2月にかけては、融けきることなく溜まって上側へと成長することにより、太陽光パネルの全面にわたって雪が覆い隠してしまっていることが観察される。なお、架台Bのビニールシートは雪の重みによって展張状態を維持できず、ほとんど機能しなかった。
【0085】
また、図15は、架台Cにおける最下段の太陽光パネルと、この上段側の太陽光パネルの雪との段差部分を撮影した写真である。この写真からわかるとおり、下段側から堆積し、上段側へ成長した雪に対しては降り積もった雪の連続性を分断するに至ってないことが観察される。
【0086】
したがって、1年目シーズンにおいては、ビニールで被覆したり、上り階段状の段差(正段差)を形成したことによって、太陽光パネル上の雪が下段側に滑り落ち易くなったとしても、滑り降りた雪が次第に下側に堆積し、上側へと成長することにより太陽光パネルを覆ってしまい、発電効率が著しく低下することが確認できた。
【0087】
そこで2年目シーズンでは、1年目シーズンの結果を踏まえ、垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差と、隙間の両方を設けることにより、上段側太陽光パネルから滑り降りてくる雪を太陽光パネル群の下方の空隙に落とし、雪が下側に堆積しないように、架台Eおよび架台Fを作製して実証試験を行った。また、上り階段状の段差(正段差)の効果を再度調べるため、架台Cよりも大きな段差を形成した架台Dについても同様に実証試験を行った。
【0088】
図16および図17は、図13と同様に、2年目シーズンにおける試験日毎の測定時間、発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量を表にまとめたものである。2年目シーズンの平均の発電効率は、2月2日より前では架台Aで約3.8%、架台Dで約3.2%、本実施例1の架台Eで約4.5%であった。また、2月2日以降では、架台Aで約2.7%、架台Dで約2.0%、架台Fで約2.8%であった。すなわち、2年目シーズンの前半では、本発明に相当する架台Eの太陽光パネルの発電効率が最もよく、続いて架台A、そして上り階段状の段差(正段差)を有する架台Dが最も悪かった。そして、2年目シーズンの後半では、逆段差および隙間を最下段の太陽光パネルにのみ形成した架台Fの発電効率が最もよく、続いて架台A、架台Dの順になった。このようにいずれも本発明に相当する架台Eないし架台Fの発電効率が他の架台A,Dよりも高い結果となった。
【0089】
図18は、図16および図17の中の架台Aと、本発明に相当する架台Eと架台Fの発電効率を折れ線グラフにしたものである。図18に示すように、架台A、架台E、および架台Fの発電効率を比較すると、12月下旬から1月上旬、および2月下旬頃は架台Aの方が発電効率のよい期間があるが、本格的な冬季に入った1月下旬から2月上旬においては本実施例1の架台Eないし架台Fの発電効率が架台Aの効率に比較して高い水準を維持している。このように冬季シーズンを通して比較すると、本発明に相当する架台Eないし架台Fの発電効率が高いことがわかる。
【0090】
図19は、2月4日以降に本発明に相当する架台Fを側面から写した写真である。図19に示すように、太陽光パネル群の下の空隙に、上段側太陽光パネルから滑り落ちてきた雪が落下しているのが確認できる。また、架台Fは隣に設けられている架台Dよりも堆積している雪の量が少ないことも観察でき、融雪効果が高いことも確認できる。
【0091】
図20は、本実施例1の架台Eについて、発電効率が高かった1月24日の午前8時頃から11時半頃までの様子をビデオ撮影した画像である。各画像は適当な箇所を抜粋したものである。この日は、明け方に約3cmの積雪があり、その後日中は雪が降らなかった。
【0092】
図20より、午前8時頃は架台A、架台Dおよび架台Eの太陽光パネル上には薄く雪が積もっている。午前9時頃になると、各架台の太陽光パネル上の雪は、太陽光パネルが太陽光により暖められることにより融け始める。午前11時半頃になると、本発明に相当する架台Eの太陽光パネル上の雪は殆ど融けて消失した。しかし、架台Aおよび架台Dの下段側の太陽光パネルには雪が残った。この理由としては、本実施例1の架台Eは他の架台Aや架台Dに比べて元々下段側に堆積している雪の量が少ないためと思われる。また、架台Eの太陽光パネルに積もっている雪のムラが少なく、平均的に積もっているため、太陽光により暖められた太陽光パネルからの熱を均等に受けてより速く融けるように作用したものと考えられる。
【0093】
また、架台Eにおいて下段側に堆積しないメカニズムとして、大雪のときに太陽光パネル上の雪が側面から落ちることが確認された。図21は、1月21日の午前11時半頃から午後4時半頃までの様子をビデオ撮影した画像である。各画像は適当な箇所を抜粋したものである。この日の前日は積雪量が約32cmの大雪であった。
【0094】
図21より、午前11時半頃の本発明に相当する架台Eの太陽光パネル上には、前日の大雪のためほぼ全面にわたり雪が堆積している。午後1時頃になると、最上段の太陽光パネル上に堆積している雪が重さで耐えられなくなり側方側から垂れ下がり、午後4時半頃は更に垂れ下がっている。
【0095】
これは、本発明に相当する架台Eでは、各太陽光パネルの上側面で上段側太陽光パネルの雪が堰き止められて下段へと滑り落ちにくくなり、一定量に達すると自重に耐えきれなくなって、側方に案内されるように逃げて側面から落ちてしまうものと考えられる。
【0096】
以上、本実施例1における実証実験により、架台Eおよび架台Fにおいて、太陽光パネル同士の間の段差と隙間を両方形成することにより、上段側太陽光パネル上に積もった雪が、太陽光パネル群の下方の空隙へ落下し、各太陽光パネル上の雪が融けやすくなり、また、大雪の際には太陽光パネルの側方に逃がして落下させる等の従来の太陽光パネルユニットでは得られない効果を確認することができた。また、上り階段状の段差(正段差)では十分な融雪効果および発電効率の低下の抑制が得られなかった。
【実施例2】
【0097】
次に、実施例2において太陽光パネルユニットの太陽光パネル群に下り階段状の逆段差を設けた場合における効果について、より詳細な実証実験を行った。実証試験は、平成21年12月24日から平成22年2月18日(以下、「3年目シーズン」という)に行った。
【0098】
本実施例2において使用した太陽光パネル3は、実施例1において使用したものと同じである。また、本実施例2における太陽光パネル架台には、実施例1で使用した架台Aと、図22に示す架台Gおよび架台Hを用いた。
【0099】
架台Gは、架台Fと同様に、最下段の太陽光パネルと、それに対する上段側の太陽光パネルの間の一段のみに逆段差および隙間を設けたものである。その太陽光パネルユニットは、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルを用い、最下段の太陽光パネルとこの上段側の太陽光パネルとの間には傾斜面に略垂直方向(=Gy12)に約+145mm、傾斜面に略平行方向(=Gx12)に約+155mmの垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差および垂直・水平隙間を形成した。
【0100】
架台Hは、架台Eと同様に、太陽光パネルの設置にパネル載置部を使用し、最下段に加えて、その他の各段の太陽光パネルの間にも垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差を設けたものである。その太陽光パネルユニットは、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルを用い、各段の太陽光パネル同士の間には下段側太陽光パネルに対して上段側太陽光パネルを傾斜面に略垂直方向(=Gy12=Gy23)に約+115mm、最下段の太陽光パネルとその上段側の太陽光パネルの間の傾斜面に略平行方向(=Gx12)に約+160mm、2段目の太陽光パネルと最上段の太陽光パネルの間の傾斜面に略平行方向(=Gx23)に約+115mmの垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差および垂直・水平隙間を形成した。
【0101】
なお、パネル載置部は載置面に対して約4.5度で傾斜されている。よって、太陽光パネルの傾斜角度θは、略水平な設置面に対しては約34.5度である。
【0102】
以下に、本実施例2における実証実験の結果を示す。
【0103】
図23から図30までは、12月26日、12月29日、1月1日、1月8日、1月15日、1月21日、1月29日および2月2日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。また、図31は、3年目シーズンにおける試験日毎の測定時間、発電量、単位面積当たりの発電量、単位面積当たりの積算発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量を表にまとめたものである。
【0104】
図31より、3年目シーズンの平均の発電効率は、架台Aが約0.4%、架台Gが約0.5%、架台Hが約4.7%と、各段に逆段差と垂直・水平隙間を設けた架台Hの発電効率が他の架台の場合に比べ非常に高かった。以下、詳細に検討する。
【0105】
図32は各架台の発電効率とアメダスのデータによる日射量を示したものである。この図32に示すように、架台Aの場合は、12月27日以降はほとんど発電されなかった。図31および図33に示すように、実証実験開始の12月24から12月8日にかけては、継続的に雪が降り、トータルで約27cmの降雪量があったため、図24から図30に示すように、雪が太陽光パネル上方まで覆ってしまい、その後落雪しなかったことが原因として考えられる。
【0106】
また、架台Hの場合は、12月29日前後に一旦、発電量が回復している。図24からわかるように、第2段太陽光パネルおよび第3段太陽光パネルの積雪がほとんどなくなっている。
【0107】
しかし、その後12月30日以降はほとんど発電されなかった。この架台Hの場合は、図25から図30に示すように、第2段太陽光パネルの半分以上が雪に覆われており、時折、最上段の第3段太陽光パネルまで覆われる場合があった。
【0108】
これは、太陽光パネルの上下段の隙間から落雪せずに、第1段太陽光パネルの上側面で雪が堰き止められ、第2段太陽光パネルを雪が覆ってしまい、太陽光パネルのバイパス回路が機能しなくなって、太陽光パネルユニット全体の発電に悪影響を及ぼしたためであると考えられる。
【0109】
一方、架台Hの発電効率の変化と日射量の変化とを比較すると、おおよそ一致している。また、図23から図30に示すように、3年目シーズンにおいては、第2段太陽光パネルおよび第3段太陽光パネルの雪がほとんど落下していることがわかる。
【0110】
なお、12月31日〜1月6日、1月17日前後、1月21日前後、1月27日前後においては、日射量が多いにもかかわらず発電効率が低かったが、図33に示すように、これら日射量の多い日は当日または前日に降雪量が多かった日である。
【0111】
以上より、架台Hにおいて、降雪があった日またはその直後においては、従来の架台A等と同様に発電量は低下するが、各段に設けた逆段差と垂直・水平隙間により太陽光パネル上の雪が太陽光パネル下の空隙に効果的に落下するため、パッシブに発電量を回復させることができることが証明された。
【0112】
ここで、この架台Hによってどれくらいの発電効果の向上があったかを数値的に検討してみた。
【0113】
架台Hにおける3年目シーズンの積算した発電量は約5.2kWh/m2である。一方、当該実証実験期間中の積算した日射量は約100.3kWh/m2である。ここで、本実施例2で用いた太陽光パネルのモジュール変換効率は13.6%であることより、架台Hによって得られる発電量は最大で約13.6kWh/m2である。
【0114】
ここで、架台Hの実際の発電量と最大発電量とを比較すると、最大値の約38%の発電を行っていた。同様に架台Aについても計算してみると、その発電量は最大値の約2%しか発電できていなかった。
【0115】
この差は大きな差であり、架台Hを使用すれば、これまで降雪地域では普及が困難とされてきた太陽光発電を、本発明に係る太陽光パネルユニットおよびそれを用いた太陽光発電装置によって充分に普及させることが可能であることを示すものである。
【0116】
なお、本発明に係る太陽光パネルユニットおよびそれを用いた太陽光発電装置は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0117】
例えば、本発明の太陽光パネルユニット、若しくは太陽光発電装置に、特許文献1に記載されている太陽光発電システムのような電力を供給してパネルを暖める融雪装置や、温風や温水でパネルを暖める融雪装置、または雪に直接散水して融雪する融雪装置等と組み合わせてもよい。
【0118】
本発明の太陽光パネルユニット、若しくは太陽光発電装置では、各段における太陽光パネル上の積雪量にあまり差がないため、従来の融雪装置による融雪の効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0119】
1A,1B 太陽光パネルユニット
2A,2B 太陽光発電装置
3 太陽光パネル
4 架台
5 パワーコンディショナ
6 分電盤
7 電力量計
8 設置面
9 空隙
10 逆段差
11a 傾斜面に垂直方向の隙間
11b 傾斜面に平行方向の隙間
12 蓄電設備
3a 第1段太陽光パネル、下段側太陽光パネル
3b 第2段太陽光パネル、上段側太陽光パネル
3c 第3段太陽光パネル
41 底面フレーム
42 縦フレーム
43 パネル固定傾斜フレーム
44 補強フレーム
45 パネル載置部
11a 傾斜面に平行方向の隙間
11b 傾斜面に垂直方向の隙間
E 電気器具
P 商用電源
θ 傾斜角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜をさせた太陽光パネルに降り積もる雪をパッシブに落下させる落雪機能を備えた太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光パネルに雪が降り積もると発電効率が低下するため、太陽光パネルに積もった雪を除去するための発明が種々提案されている。
【0003】
例えば、図34に示すような無落雪屋根の上などに設置される一般的な太陽光パネルにおいては、降り積もる雪を滑落させられるように適度な傾斜面をつけて配置されている。
【0004】
また、特開平11−298028号公報において、太陽電池の直流電力を所定の交流電力に変換する電力変換装置を持ち、第1の開閉手段で配電系統と前記電力変換装置を接続する発電システムにおいて、電力変換装置の交流側に抵抗器とこの抵抗器に並列に第2の開閉手段を挿入し、電力変換装置の直流側と太陽電池の間にダイオードとこのダイオードに並列に第3の開閉手段を設け、系統連系運転制御系と融雪運転制御系を備え、系統連系運転と融雪運転を選別して系統連系運転制御と融雪運転制御を切り換える切り換え部と融雪運転の搬送波を生成する搬送波発生部と系統連系運転と融雪運転の搬送波と変調波を切り換える切り換え部を持った太陽光発電システムが提案されている(特許文献1)。特許文献1によれば、この太陽光発電システムは、外部からの信号により運転モードを融雪運転へと切り換え、商用電源の電力を太陽電池パネルに供給し、そのエネルギーでパネルを暖めることにより融雪して積雪を防止することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−298028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、まず図34に示すような傾斜された一般の太陽光パネルにおいては、図35に示すように、太陽光パネルから傾斜に沿って滑り落ちた雪が、屋根とパネルとの間やパネルの下側に堆積して凍結し固まってしまうという問題がある。このようにパネル下側で固まった雪は極めて融けにくく、時間経過により上側へと成長しながら太陽光パネルを覆って全く発電しなくなるといった問題の原因になる。この様な問題に対して、太陽光パネルを載置する架台の脚を高くする対処方法がある。しかし、年間の積雪が1mを越えるような降雪地域では、それ以上の脚高を必要とするため、特に一般住宅の屋根に設ける場合等では屋根の強度に配慮するとそのような高い脚高にすることは困難である。
【0007】
また、太陽光パネルの露出面積と発電量との関係は必ずしも比例関係とならず、積雪により露出面積が減少すると急激に発電能力が低下するといった問題がある。一般に、太陽光パネルのセルは電気的に直列接続されており、一部のセルが陰になっても発電能力が低下しないようにバイパス回路を設けているが、陰になるセルが多くなるとそのバイパス回路が機能しなくなり、他のセルに悪影響を及ぼすためである。
【0008】
また、特許文献1に記載された発明においては、商用電源からの電力を必要とするため運転にかかる電力量が発電量よりも多くなるという問題がある。また、図34に示すような従来の傾斜させた太陽光パネルに特許文献1に記載された発明等の融雪装置を併用するような場合、上述のように太陽光パネルの上側と下側とでは積雪量や氷結具合が異なるため、上側と下側とで融雪温度や方法を変える等の改善が必要であり、そのためにシステムが複雑になり、かつ製造コストおよびランニングコストが高額になるといった問題もある。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、太陽光パネルの雪を効果的に落下させることにより積雪による太陽光パネルの発電効率の低下を抑制することのできる落雪機能を備えた太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る太陽光パネルユニットは、複数の太陽光パネルを複数段に配置してなる太陽光パネル群と、前記太陽光パネル群を所定の角度に傾斜させて支持するとともに略水平な設置面に設置される太陽光パネル架台とを有しており、前記太陽光パネル群と前記設置面との間には、落雪用の空隙が設けられているとともに、前記太陽光パネル群のうち下段に配置される下段側太陽光パネルと、これの上段に配置される上段側太陽光パネルとの間には、前記下段側太陽光パネルの傾斜面に対して垂直方向に落とし込んだ逆段差と、前記傾斜面に対して平行方向に形成された平行隙間と、前記傾斜面に対して垂直方向に形成された垂直隙間とを有している。
【0011】
また、本発明に係る太陽光パネルユニットの一態様として、前記逆段差、前記平行隙間および前記垂直隙間は、最下段の太陽光パネルとこれの上段側太陽光パネルとの間に形成されていることに加え、少なくともその他の1つ以上の段における太陽光パネル間にも形成されていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る太陽光パネルユニットの一態様として、前記太陽光パネル架台と前記太陽光パネルとの間には、前記太陽光パネルをその下端を支点として上端を前記太陽光パネル架台から離間させるように傾斜させて前記逆段差を構成するためのパネル載置部が設けられていてもよい。
【0013】
また、本発明に係る太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置は、前記太陽光パネルユニットと、この太陽光パネルユニットで発電した電力を蓄える蓄電設備とを備えている。
【0014】
また、本発明に係る太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置は、前記太陽光パネルユニットと、この太陽光パネルユニットで発電した直流電流を交流電流に変換するパワーコンディショナとを備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽光パネルの雪を効果的に落下させることにより積雪による太陽光パネルの発電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る太陽光パネルユニットの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【図3】本第1実施形態の太陽光パネルユニットにおける太陽光パネルの配置を示す模式図である。
【図4】本発明に係る太陽光パネルユニットの他の実施形態の例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る太陽光パネルユニットにおける落雪のメカニズムを示す模式図である。
【図6】本発明に係る太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る太陽光パネルユニットの第3実施形態を示す側面図である。
【図8】本発明に係る太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置の第3実施形態を示すブロック図である。
【図9】本実施例1において架台A〜Fの設置態様を示す側面からみた模式図である。
【図10】本実施例1において架台Aの設置状態を示す写真である。
【図11】本実施例1において用いた架台Aから架台Fまでの各傾斜角度、段差および水平・垂直隙間に関する数値を示す表である。
【図12】実施例1において架台A、架台Dおよび架台Eの設置状態を示す写真である。
【図13】実施例1において1年目シーズンにおける試験日毎の測定時間、発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量をまとめた表である。
【図14】実施例1において1年目シーズンの2月中旬頃の架台A、架台Bおよび架台Cの積雪状態を示す写真である。
【図15】実施例1の架台Cにおいて最下段の太陽光パネルとこの上段側の太陽光パネルとの段差部分における積雪状態を示す拡大写真である。
【図16】実施例1において2年目シーズンにおける12月25日から2月3日までの各試験日毎の測定時間、発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量をまとめた表である。
【図17】実施例1において2年目シーズンにおける2月4日から3月9日までの各試験日毎の測定時間、発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量をまとめた表である。
【図18】実施例1において2年目シーズンにおける架台A、架台Eおよび架台Fの発電効率を折れ線グラフにしたものである。
【図19】実施例1における架台Dおよび架台Fの積雪状態を示す写真である。
【図20】実施例1における午前8時頃から11時ごろまでの融雪状態の変化を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図21】実施例1における午前11時半頃から午後4時半頃までの融雪状態の変化を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図22】実施例2における1月8日の架台Gおよび架台Hの積雪状態を示す写真である。
【図23】実施例2における12月26日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図24】実施例2における12月29日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図25】実施例2における1月1日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図26】実施例2における1月8日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図27】実施例2における1月15日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図28】実施例2における1月21日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図29】実施例2における1月29日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図30】実施例2における2月2日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。
【図31】実施例2における試験日毎の測定時間、発電量、段位面積当たりの発電量、単位面積当たりの積算発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量をまとめた表である。
【図32】実施例2における日射量および架台Aと架台Gと架台Hの発電効率を折れ線グラフにしたものである。
【図33】実施例2における降雪量および架台Aと架台Gと架台Hの発電効率を折れ線グラフにしたものである。
【図34】従来の傾斜配置された太陽光パネルを示す斜視図である。
【図35】従来の太陽光パネルユニットにおける落雪メカニズムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置の第1実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本第1実施形態の太陽光パネルユニット1Aを示す斜視図である。また、図2は本第1実施形態の太陽光発電装置2Aの各構成を示すブロック図である。
【0018】
本第1実施形態の太陽光パネルユニット1Aは、複数の太陽光パネル3からなる太陽光パネル群3,3・・・と、この太陽光パネル群3,3・・・を支持する太陽光パネル架台4とから構成されている。また、図2に示すように、本第1実施形態の太陽光発電装置2Aは、前記太陽光パネルユニット1Aと、発電された直流電流を交流電流に変換するパワーコンディショナ5と、交流電流を建物内の電気器具E等へ分配する分電盤6と、送電線等の商用電源Pと連結された電力量計7とから構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0019】
太陽光パネルユニット1Aを構成する太陽光パネル3は、太陽光を直接的に電力に変換する薄膜型の素子を板状の基板に貼り付け、樹脂や強化ガラスで表面を保護したものである。本第1実施形態における前記素子には、p型とn型の半導体を接合した構造のものを使用しているが、特に限定されるものではなく、有機色素を用いて光起電力を得る色素増感太陽電池等、種々のものの中から適宜選択してよい。また、表面には滑雪しやすくするための加工や薬品の塗布等を施してもよい。
【0020】
太陽光パネル架台4は、複数の太陽光パネル3からなる太陽光パネル群3,3・・・を所定の角度に傾斜させ、かつ、各太陽光パネル3の間に逆段差10と、傾斜面に対して垂直方向の垂直隙間11aと、傾斜面に対して平行方向の平行隙間11bとを設けて配置するためのものである。前記逆段差10、垂直隙間11aおよび水平隙間11bは、後述するように、上段側太陽光パネルから滑落する雪を太陽光パネル群3,3・・・裏の設置面8へ落下させて空隙9に収容するために形成されている。
【0021】
本第1実施形態における太陽光パネル架台4は、図1に示すように、金属製のフレームにより形成されており、無落雪屋根あるいは地面等の略水平な設置面8上に配置される底面フレーム41と、この底面フレーム41から略垂直に立ち上げられた縦フレーム42と、縦3段で各段横2列の太陽光パネル3を所定の角度に傾斜させつつ各段毎に逆段差10と隙間11a,11bを設けて固定するパネル固定傾斜フレーム43とにより構成されている。なお、本第1実施形態では、前記各フレーム41,42,43同士の間には、任意の補強フレーム44が設けられている。
【0022】
本第1実施形態における太陽光パネルユニット1Aは、無落雪屋根等の略水平な設置面8に設置され、前記太陽光パネル群3,3・・・と前記設置面8との間に落雪用の空隙9を構成する。なお、設置面8は、無落雪屋根等の建物の屋上に限られず、地面や船舶等の移動物体上でもよく、十分な落雪用の空隙9が確保できるのであれば傾斜している面であってもよい。また、太陽光パネルユニット1Aは設置面8に対して複数連設させることによりメガソーラー発電に用いてもよい。
【0023】
次に、太陽光パネル群3,3・・・の傾斜角度θ、逆段差10、垂直隙間11a、および水平隙間11bについてより詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本第1実施形態の太陽光パネル群3,3・・・は縦3段、横2列の太陽光パネル3で構成されているが、その段数や列数は適宜選択されるものである。本第1実施形態においては、最下段の太陽光パネル3,3を第1段太陽光パネル3aとし、中段の太陽光パネル3,3を第2段太陽光パネル3bとし、最上段の太陽光パネル3,3を第3段太陽光パネル3cとしている。なお、本第1実施形態において、上段側太陽光パネルと下段側太陽光パネルは、前記第1段太陽光パネル3aと前記第2段太陽光パネル3bとの関係においては、前記第1段太陽光パネル3aが下段側太陽光パネルに相当し、前記第2段太陽光パネル3cが上段側太陽光パネルに相当する。同様に、前記第2段太陽光パネルと前記第3段太陽光パネルとの関係においては、前記第2太陽光パネルが下段側太陽光パネルに相当し、前記第3段太陽光パネルが上段側太陽光パネルに相当する。
【0025】
以下、本第1実施形態における下段側太陽光パネル3aは、第1段太陽光パネル3aないし第2段太陽光パネル3bとし、上段側太陽光パネル3bは第2段太陽光パネル3bないし第3段太陽光パネル3cとして説明をする。
【0026】
本第1実施形態における各太陽光パネル3は、設置面8に対して約30度の傾斜角度θとなるように設置されている。この傾斜角度θは、縦3段の太陽光パネル3を設置する場合に用いられる一般的な角度であるが、特に限定されるものではなく、太陽光パネル3の段数、設置場所の緯度やその場所で想定される風の強さ等を考慮して適宜選択されるものである。
【0027】
太陽光パネル群3,3・・・の逆段差10と各隙間11a,11bは、主に上段側太陽光パネル3bから滑り落ちる雪を太陽光パネル群3,3・・・と設置面8との間に形成された落雪用の空隙9へ落下させるための開口部分である。また、後述する実験の結果、太陽光パネル3を縦方向に3段以上並べて太陽光パネル群3,3・・・を構成する場合、前記逆段差10、前記垂直隙間11a、および前記水平隙間11bは、最下段の太陽光パネル3とこれの上段の太陽光パネル3との間に形成することに加え、少なくともその他の1つ以上の段における太陽光パネル3同士の間にも形成することがより好ましい。
【0028】
本第1実施形態では、図3に示すように、上段側太陽光パネル3b,3cが、下段側太陽光パネル3a,3bの傾斜面に対して垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差10となるように、傾斜面に対して略垂直でかつ下方向に段違いで設置されている。本発明ではこのような段差を「逆段差」として定義する。また、本第1実施形態における逆段差10と隙間11a,11bは、上段側太陽光パネル3b,3cが下段側太陽光パネル3a,3bの陰に隠れないようにするため、前記傾斜面に対して垂直方向の垂直隙間11aと、前記傾斜面に対して水平方向の水平隙間11bとを有している。なお、これらの逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bとの位置関係については、後述する実施例1および実施例2において図3を参照して説明する。
【0029】
なお、逆段差10と各隙間11a,11bは、図4に示すように、各太陽光パネル3のいずれかの段に形成されていれば一定の効果を発揮できるが、図1に示すように各段毎に形成されている方がより好ましい。すなわち、垂直隙間11aおよび水平隙間11bまでの滑走距離を短くすることで、太陽光パネル上の雪が逐一それらの隙間11a,11bから滑落するようになり、太陽光パネル上を少しでも広くかつ長い間、露出させることができると考えられるからである。また、大きな塊の状態で雪が滑落すると、逆段差10や各隙間11a,11bを飛び越えて、下段側の太陽光パネル3,3に積雪するおそれがあるが、各段毎に落雪させる構成であれば、積雪を細分割して小さな塊の状態で落下させることができ、より確実に落雪効果を得ることができると考えられるからである。
【0030】
次に、本第1実施形態の太陽光発電装置2Aにおける太陽光パネルユニット1A以外の各構成について説明する。
【0031】
パワーコンディショナ5は、太陽光パネルユニット1Aにより発電された直流電流を商用電源Pと等しい交流電流に変換するためのものである。また、本第1実施形態におけるパワーコンディショナ5は、太陽光パネルユニット1Aにより発電される電力量が建物等で消費される電力量よりも多い場合には余った電力を商用電源Pへと供給し、逆に、発電される電力量が消費される電力量よりも少ない場合には、足りない電力を商用電源Pからの供給を受ける等の太陽光発電装置2A全体の運転を管理する機能を有する。なお、商用電源Pとは、電力会社の発電所等で発電された電力を建物等に送電する送電線等のことである。
【0032】
分電盤6は、パワーコンディショナ5によって変換された交流電流を建物内の各所へ分配するためのものである。各部屋のコンセントや照明器具等の電気器具Eに接続され、太陽光パネル3によって発電された電力を分配するようになっている。
【0033】
電力量計7は、分電盤6と商用電源Pとの間に設置されており、太陽光パネルユニット1Aで発電した電力が商用電源Pへと供給された電力量および商用電源Pから供給された電力量をそれぞれ計測するものである。
【0034】
次に、本第1実施形態の太陽光パネルユニット1Aおよびこれを用いた太陽光発電装置2Aの各構成の作用について詳細に説明する。
【0035】
まず、太陽光パネルユニット1Aにおける太陽光パネル群3,3・・・の逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bによる作用について詳しく説明する。
【0036】
逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bによる主な作用は、図5に示すように、上段側太陽光パネル3b,3cから滑り落ちる雪を前記落雪用の空隙9に落下させることである。
【0037】
また、逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bは、下段側太陽光パネル3a,3b上の雪と上段側太陽光パネル3b,3c上の雪とを分断する作用も有する。各段の太陽光パネル3a,3b,3cに降り積もった雪は、逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bにより分断されて前記落雪用の空隙9へと落下する。特に、本第1実施形態の太陽光パネルユニット1Aでは、上段側太陽光パネル3b,3cとの逆段差10を下段側太陽光パネル3a,3bの傾斜面に対して垂直方向に落とし込んだ下り階段状に構成しているため、より分断されやすい。この様に、各段毎に雪を分断させることにより、滑走距離が短くなるとともに、各段毎に確実に落雪させることができるようになる。
【0038】
さらに、短時間に大量の雪が降った場合、滑り落ちる前に逆段差10と各隙間11a,11bを埋める程の雪が積もることもある。しかし、本第2実施形態では、各段の太陽光パネル3a,3b,3cに降り積もった雪は下段側太陽光パネル3a,3bにより一旦堰き止められるが、垂直隙間11aおよび水平隙間11bから小塊状になって空隙9へ落下する。また、下段側太陽光パネル3a,3bにより一旦堰き止められ雪は、太陽光により暖められた太陽光パネル3からの熱を均等に受けるためより速やかに融ける。
【0039】
その他、一旦堰き止められた上段側太陽光パネル3b,3c上の雪が小さな塊になると、上段側太陽光パネル3b,3cの側方に移動しやすく、上段側太陽光パネル3b,3cの側方から落雪することもある。
【0040】
また、本第1実施形態における隙間11a,11bは、垂直隙間11aだけでなく、水平隙間11bを形成することにより、上段側太陽光パル3b,3cが下段側太陽光パネル3a,3bの陰に隠れないようになっている。これにより、落雪効果を高めつつ下段側の太陽光パネル3a,3bの陰に隠れることによる発電効率の低下を回避できる。また、両方の隙間11a,11bによって太陽光パネルユニット1Aの高さを低く抑えつつ、落雪のための開口部分を大きくとることができる。
【0041】
以上のように、下段側太陽光パネル3a,3bと上段側太陽光パネル3b,3cとの間に逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bを設けることにより、上段側太陽光パネル3b,3cの雪が下段側太陽光パネル3a,3b上に滑落して堆積してしまうのを防止できる。また、各段の太陽光パネル3a,3b,3c上に極端に積雪する部分をなくし、できるだけ平均的に雪を降り積もるようにすることもできる。さらに、逆段差10を形成しても、上段側太陽光パネル3b,3cが下段側太陽光パネル3a,3bの陰に隠れてしまうことがなく、従来のものと比較して基本的な発電能力が低下してしまうこともない。
【0042】
次に、太陽光パネルユニット1Aを用いた太陽光発電装置2Aの発電時における各構成の作用について説明する。
【0043】
太陽光パネルユニット1Aの各太陽光パネル3,3・・・は、太陽光を受けて直流電流を発生する。本第1実施形態において、各太陽光パネル3,3・・・で発生した直流電流はパワーコンディショナ5へと送られる。
【0044】
パワーコンディショナ5では、直流電流を商用電源Pと同じ交流電流へと変換する。また、本第1実施形態におけるパワーコンディショナ5では、太陽光パネルユニット1Aの発電量と消費される電力量との差に応じて、商用電源Pからの電力の出入量を制御する。例えば、太陽光パネルユニット1Aの発電量が消費される電力量よりも多い場合には、余った電力を商用電源Pへと供給し、逆に、発電される電力量が消費される電力量よりも少ない場合には、足りない電力を商用電源Pからの供給を受けるように制御を行う。
【0045】
分電盤6は、パワーコンディショナ5から供給された電流を分配して建物内各所の各電気器具Eへと供給する。
【0046】
電力量計7は、太陽光パネルユニット1Aで発電した電力が商用電源Pへと供給された電力量および商用電源Pから供給された電力量をそれぞれ計測する。使用者は、それぞれの電力量を比較して、太陽光パネルユニット1Aで発電した電力量が多ければその分の電力を電力会社に買い取らせ、足りない分の電力があれば買い取りを行う。
【0047】
以上のような本第1実施形態の落雪機能を備えた太陽光パネルユニット1Aおよびこれを用いた太陽光発電装置2Aによれば、以下の効果を得ることができる。
1.太陽光パネル3,3・・・上に降り積もった雪の滑落距離を短くし、を落雪用の空隙9へ落下させて積雪による発電効率の低下を抑制することができる。
2.各太陽光パネル3に降り積もる雪の連続性を分断し、より滑り落ちやすくして太陽光パネル3,3・・・上への積雪を抑制することができる。
3.短時間に大量の雪が降ったとしても、下段側太陽光パネル3a,3bによって上段側太陽光パネル3b,3c上の雪を一旦堰き止め、太陽光により暖められた太陽光パネルからの熱により速やかに融かすことができる。
4.短時間に大量の雪が降ったとしても、逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bとによって雪を小さな塊に分断し、雪が上方側太陽光パネル3b,3cの側方へ移動してそのまま落下させられることもある。
5.下段側太陽光パネル3a,3bに大量の雪が滞留してしまうのを回避できるため、時間経過と共に太陽光パネル3上で積雪が凍り固まってしまうのを防止できる。
【0048】
つぎに、本発明に係る太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の構成のうち、上述した第1実施形態の構成と同等または相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。図6は、本第2実施形態の太陽光発電装置2Bの各構成を示すブロック図である。
【0049】
図6に示すように、本第2実施形態の太陽光発電装置2Bは、太陽光パネルユニット1Aと、蓄電設備12とから構成される。以下、蓄電設備12について詳細について説明する。
【0050】
本第2実施形態における蓄電設備12は、ナトリウム・硫黄電池(以下、「NAS電池」という)からなり太陽光パネルユニット1Aと照明器具等の電気器具Eに接続される。この蓄電設備12は、太陽光パネルユニット1Aで発電した電力を蓄電し、必要に応じて電気器具E等に供給するように作用する。
【0051】
なお、本第2実施形態ではNAS電池を使用したが、特に限定されるものではなくリチウムイオン電池等、種々の蓄電池から適宜選択してよい。
【0052】
以上のような本第2実施形態の太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置2Bは、商用電源Pから離れた場所や小規模な夜間照明として利用される場合にその効力を発揮し、安定した電源となる。
【0053】
次に、本発明に係る太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置の第3実施形態について説明する。なお、本第3実施形態の構成のうち、上述した第1実施形態および第2実施形態の構成と同等または相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0054】
図7は、本第3実施形態における太陽光パネルユニット1Cを示す側面図であり、図8は、本第3実施形態の太陽光発電装置2Cの各構成を示すブロック図である。
【0055】
図7に示すように、本第3実施形態の太陽光パネルユニット1Cは、太陽光パネル3と太陽光パネル架台4のパネル固定傾斜フレーム43との間にパネル載置部45を配置している。このパネル載置部45は、長辺が前記太陽光パネル3の縦方向の長さに略等しく、その長辺の一方の角部が所定の角度を有するように、長尺の金属板を略三角形状に折り曲げることにより形成されている。このようにパネル載置部45は側面視で略三角形状に形成されているが、これに限定されるものではなく、太陽光パネル3を所定の角度で傾斜させられて逆段差10を構成できるものであれば適当な形状を採用してよい。また、板状やフレーム状等、適当な構造を採用してよい。
【0056】
よって、本第3実施形態における太陽光パネル3は、そのパネル載置部45に載置されることにより、その下端を支点として上端が前記太陽光パネル架台4から離れるように傾斜されて固定される。
【0057】
なお、本第3実施形態では、パネル載置部45が太陽光パネル3の間に垂直隙間11aおよび水平隙間11bを形成するように、各段毎に間隔をあけてパネル固定傾斜フレーム43に配置されている。これにより太陽光パネル3をパネル載置部45に固定するだけで、適切な範囲での逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bを構成することができ、熟練を要しなくても効率的に設置作業が進められる。
【0058】
また、本第3実施形態における太陽光パネル3は、図8に示すように、第1段太陽光パネル3a、第2段太陽光パネル3bおよび第3段太陽光パネル3cの各段毎に電気的に直列接続されており、パワーコンディショナ5に接続されている。
【0059】
以上のような本第3実施形態の太陽光パネルユニット1Cおよびこれを用いた太陽光発電装置2Cの各構成の作用について説明する。
【0060】
まず、本第3実施形態におけるパネル載置部45は、その下端を支点として上端が前記太陽光パネル架台4から離間されるように傾斜させることにより容易に逆段差10、垂直隙間11aおよび水平隙間11bを形成することができる。
【0061】
すなわち、太陽光パネルユニット1Cの逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bを設ける場合において、図1に示すような太陽光パネル架台4のパネル固定傾斜フレーム43と平行になるような載置部を使用する場合、下段ほど高くしなければならず、各段毎に載置部の形状を変えなければならない。
【0062】
一方、本第3実施形態におけるパネル載置部45を使用することにより、図7に示すように、各段によってパネル載置部45の形状を変えずに、逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bとを形成することができる。また、太陽光パネルユニット1Cの全体の高さを低く保つことができる。
【0063】
次に、本第3実施形態では太陽光パネル3は、各段毎に電気的に直列接続されていることによる作用について説明する。
【0064】
通常、太陽光パネルユニット1Cにおける積雪は、下方に流れて積雪するため、下段ほど大きく雪に覆われてしまう。そして、そのような下段側の太陽光パネル3において受光できずに発電量が0になってしまうと、回路の抵抗値が増えた状態となり、全体の発電量に影響を及ぼす場合がある。
【0065】
そこで、本第3実施形態における太陽光パネル3は、各段毎に電気的に直列接続されることで、全体がダウンすることを回避している。
【0066】
以上のように、本第3実施形態においては、パネル載置部45を利用することによって逆段差10と垂直隙間11aおよび水平隙間11bを容易に構成することができる。また、各段毎に電気的に直列接続されることで、太陽光パネルユニット1Cの一部が雪に覆われたとしても、その影響を最小限にとどめるとができる。
【実施例1】
【0067】
以下、実施例1において本発明に係る太陽光パネルユニットおよびこれを用いた太陽光発電装置を用いて行った実証実験について説明する。
【0068】
実証試験は、平成20年1月11日から平成20年3月13日まで(以下、「1年目シーズン」という)と、平成20年12月25日から平成21年3月9日まで(以下、「2年目シーズン」という)の2シーズンにおいて行われた。
【0069】
本実施例1において使用した太陽光パネル発電システムは以下の通りである。
【0070】
太陽光パネル3は、シャープ株式会社製のND−157ARを用いた。このND−157AR1枚当たりの外形寸法は縦方向の長さ約1165mm、幅約990mm、厚さ約45mmである。また、公称最大出力は157W、モジュール変換効率は13.6%、重量は約14.5kgである。
【0071】
太陽光パネル架台には、図9に示す、比較用の架台としての架台A,架台B、架台Cおよび架台Dの4種類の架台と、本実施例1の架台として架台Eおよび架台Fの2種類の架台とを用いた。
【0072】
架台Aは、従来からある一般的なものであって、図10に示すように、縦3段で横4列の計12枚の太陽光パネルが約30度の傾斜角度θで段差も隙間もなく略平面状に設置されている。なお、傾斜角度θは架台A〜Fの全てにおいて約30度に設定している。
【0073】
架台Bは、太陽光パネル上を滑りやすくすることにより雪の除去の促進を狙ったものであり、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルを段差も隙間もなく略平面状に設置し、傾斜面から少し間隔をあけて、雪を滑り易くするための透明なビニールを展張してある。
【0074】
架台Cは、各段の太陽光パネル同士の間に上り階段状の段差(「正段差」ともいう)を設けて雪の連続性を分断することにより雪の除去の促進を狙ったものであり、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルに段差のみを設けて設置されている。段差および隙間については図3および図11に示す通りである。したがって、架台Cでは、下段側太陽光パネルに対して上段側太陽光パネルを傾斜面に略垂直方向(=Gy12=Gy23)に約−15mm、傾斜面に略平行方向(=Gx12=Gx23)に間隔を設けず(約0mm)、上段側に上り階段状の段差(正段差)のみを形成している。
【0075】
架台Dは、架台Cよりも大きな上り階段状の段差(正段差)を設けて雪の連続性を分断することにより更なる雪の除去の促進を狙ったものである。つまり、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルに段差のみを設けて、下段側太陽光パネルに対して上段側太陽光パネルを傾斜面に略垂直方向(=Gy12=Gy23)に約−45mm、傾斜面に略平行方向(=Gx12=Gx23)に間隔を設けず(約0mm)、上段側に上り階段状の段差(正段差)のみを形成している。
【0076】
架台Eは、本発明の太陽光パネルユニットに相当し、各段の太陽光パネル同士の間に垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差を設けて雪の連続性を分断することにより雪の除去の促進を狙ったものである。そして、太陽光パネルユニットは、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルを用い、各段の太陽光パネル同士の間には下段側太陽光パネルに対して上段側太陽光パネルを傾斜面に略垂直方向(=Gy12=Gy23)に約+45mm、傾斜面に略平行方向(=Gx12=Gx23)に約+80mmの垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差および隙間を形成した。
【0077】
架台Fは、本発明の太陽光パネルユニットに相当し、最下段の太陽光パネルとこれに対して上段側の太陽光パネルの間のみに段差および隙間を設けた場合に、架台Eとどの程度の効果の差が生じるかを確かめるためのものである。そして、太陽光パネルユニットは、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルを用い、最下段の太陽光パネルとこの上段側の太陽光パネルとの間には傾斜面に略垂直方向(=Gy12)に約+15mm、傾斜面に略平行方向(=Gx12)に約+80mmの垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差および隙間を形成した。
【0078】
1年目シーズンの実証試験は、架台A、B、Cを用いた。また、2年目シーズンの実証試験は、架台A、D、E、Fを用い、1年目シーズンと同じ設置位置で行った。但し、2年目シーズの途中で架台Eを架台Fに交換した。つまり、2年目シーズンの平成20年12月25日〜平成21年2月1日までは架台Eを使用し、同2月2日〜同3月9までは架台Fを使用した。これにより段差および隙間の大きさや段数等の違いによる発電効率の影響を確認した。
【0079】
なお、各架台は、図12に示すように、無落雪屋根上に互いの陰が干渉しないように適当な距離を隔てて設置した。
【0080】
本実施例1における実証試験では、デジタルカメラによる写真撮影、ビデオ撮影および架台A〜Fのそれぞれにおける発電量の計測を行った。また、試験期間中の日照時間及び降雪量は気象庁のデータベースから得た。発電量から発電効率を計算し、日照時間からは日射量を計算した。
【0081】
まず、1年目シーズンにおける試験結果について説明する。図13は、1年目シーズンにおける試験日毎の測定時間、発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量を表にまとめたものである。
【0082】
図13より、1年目シーズンの平均の発電効率は、架台Aで約1.1%、架台Bで約0.9%、本実施例1の架台Cで約0.8%であり、架台Bおよび架台Cともに、従来からの架台Aの発電効率を上回ることができなかった。
【0083】
1年目シーズンのはじめの平成20年1月12日から1月18日あたりまでは、降雪量も少なく、架台Aから架台Cのすべてにおいて高い発電効率を維持している。しかし、同19日から3月4日まで、発電効率が約0%の日が続いた。その後、3月5日くらいから徐々に発電効率が上昇していった。
【0084】
図14は、発電効率が約0%であったときに撮影された写真である。この写真画像からわかるとおり、下段側へ滑り落ちた雪が徐々に堆積していき、年間で最も気温の低い1月から2月にかけては、融けきることなく溜まって上側へと成長することにより、太陽光パネルの全面にわたって雪が覆い隠してしまっていることが観察される。なお、架台Bのビニールシートは雪の重みによって展張状態を維持できず、ほとんど機能しなかった。
【0085】
また、図15は、架台Cにおける最下段の太陽光パネルと、この上段側の太陽光パネルの雪との段差部分を撮影した写真である。この写真からわかるとおり、下段側から堆積し、上段側へ成長した雪に対しては降り積もった雪の連続性を分断するに至ってないことが観察される。
【0086】
したがって、1年目シーズンにおいては、ビニールで被覆したり、上り階段状の段差(正段差)を形成したことによって、太陽光パネル上の雪が下段側に滑り落ち易くなったとしても、滑り降りた雪が次第に下側に堆積し、上側へと成長することにより太陽光パネルを覆ってしまい、発電効率が著しく低下することが確認できた。
【0087】
そこで2年目シーズンでは、1年目シーズンの結果を踏まえ、垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差と、隙間の両方を設けることにより、上段側太陽光パネルから滑り降りてくる雪を太陽光パネル群の下方の空隙に落とし、雪が下側に堆積しないように、架台Eおよび架台Fを作製して実証試験を行った。また、上り階段状の段差(正段差)の効果を再度調べるため、架台Cよりも大きな段差を形成した架台Dについても同様に実証試験を行った。
【0088】
図16および図17は、図13と同様に、2年目シーズンにおける試験日毎の測定時間、発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量を表にまとめたものである。2年目シーズンの平均の発電効率は、2月2日より前では架台Aで約3.8%、架台Dで約3.2%、本実施例1の架台Eで約4.5%であった。また、2月2日以降では、架台Aで約2.7%、架台Dで約2.0%、架台Fで約2.8%であった。すなわち、2年目シーズンの前半では、本発明に相当する架台Eの太陽光パネルの発電効率が最もよく、続いて架台A、そして上り階段状の段差(正段差)を有する架台Dが最も悪かった。そして、2年目シーズンの後半では、逆段差および隙間を最下段の太陽光パネルにのみ形成した架台Fの発電効率が最もよく、続いて架台A、架台Dの順になった。このようにいずれも本発明に相当する架台Eないし架台Fの発電効率が他の架台A,Dよりも高い結果となった。
【0089】
図18は、図16および図17の中の架台Aと、本発明に相当する架台Eと架台Fの発電効率を折れ線グラフにしたものである。図18に示すように、架台A、架台E、および架台Fの発電効率を比較すると、12月下旬から1月上旬、および2月下旬頃は架台Aの方が発電効率のよい期間があるが、本格的な冬季に入った1月下旬から2月上旬においては本実施例1の架台Eないし架台Fの発電効率が架台Aの効率に比較して高い水準を維持している。このように冬季シーズンを通して比較すると、本発明に相当する架台Eないし架台Fの発電効率が高いことがわかる。
【0090】
図19は、2月4日以降に本発明に相当する架台Fを側面から写した写真である。図19に示すように、太陽光パネル群の下の空隙に、上段側太陽光パネルから滑り落ちてきた雪が落下しているのが確認できる。また、架台Fは隣に設けられている架台Dよりも堆積している雪の量が少ないことも観察でき、融雪効果が高いことも確認できる。
【0091】
図20は、本実施例1の架台Eについて、発電効率が高かった1月24日の午前8時頃から11時半頃までの様子をビデオ撮影した画像である。各画像は適当な箇所を抜粋したものである。この日は、明け方に約3cmの積雪があり、その後日中は雪が降らなかった。
【0092】
図20より、午前8時頃は架台A、架台Dおよび架台Eの太陽光パネル上には薄く雪が積もっている。午前9時頃になると、各架台の太陽光パネル上の雪は、太陽光パネルが太陽光により暖められることにより融け始める。午前11時半頃になると、本発明に相当する架台Eの太陽光パネル上の雪は殆ど融けて消失した。しかし、架台Aおよび架台Dの下段側の太陽光パネルには雪が残った。この理由としては、本実施例1の架台Eは他の架台Aや架台Dに比べて元々下段側に堆積している雪の量が少ないためと思われる。また、架台Eの太陽光パネルに積もっている雪のムラが少なく、平均的に積もっているため、太陽光により暖められた太陽光パネルからの熱を均等に受けてより速く融けるように作用したものと考えられる。
【0093】
また、架台Eにおいて下段側に堆積しないメカニズムとして、大雪のときに太陽光パネル上の雪が側面から落ちることが確認された。図21は、1月21日の午前11時半頃から午後4時半頃までの様子をビデオ撮影した画像である。各画像は適当な箇所を抜粋したものである。この日の前日は積雪量が約32cmの大雪であった。
【0094】
図21より、午前11時半頃の本発明に相当する架台Eの太陽光パネル上には、前日の大雪のためほぼ全面にわたり雪が堆積している。午後1時頃になると、最上段の太陽光パネル上に堆積している雪が重さで耐えられなくなり側方側から垂れ下がり、午後4時半頃は更に垂れ下がっている。
【0095】
これは、本発明に相当する架台Eでは、各太陽光パネルの上側面で上段側太陽光パネルの雪が堰き止められて下段へと滑り落ちにくくなり、一定量に達すると自重に耐えきれなくなって、側方に案内されるように逃げて側面から落ちてしまうものと考えられる。
【0096】
以上、本実施例1における実証実験により、架台Eおよび架台Fにおいて、太陽光パネル同士の間の段差と隙間を両方形成することにより、上段側太陽光パネル上に積もった雪が、太陽光パネル群の下方の空隙へ落下し、各太陽光パネル上の雪が融けやすくなり、また、大雪の際には太陽光パネルの側方に逃がして落下させる等の従来の太陽光パネルユニットでは得られない効果を確認することができた。また、上り階段状の段差(正段差)では十分な融雪効果および発電効率の低下の抑制が得られなかった。
【実施例2】
【0097】
次に、実施例2において太陽光パネルユニットの太陽光パネル群に下り階段状の逆段差を設けた場合における効果について、より詳細な実証実験を行った。実証試験は、平成21年12月24日から平成22年2月18日(以下、「3年目シーズン」という)に行った。
【0098】
本実施例2において使用した太陽光パネル3は、実施例1において使用したものと同じである。また、本実施例2における太陽光パネル架台には、実施例1で使用した架台Aと、図22に示す架台Gおよび架台Hを用いた。
【0099】
架台Gは、架台Fと同様に、最下段の太陽光パネルと、それに対する上段側の太陽光パネルの間の一段のみに逆段差および隙間を設けたものである。その太陽光パネルユニットは、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルを用い、最下段の太陽光パネルとこの上段側の太陽光パネルとの間には傾斜面に略垂直方向(=Gy12)に約+145mm、傾斜面に略平行方向(=Gx12)に約+155mmの垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差および垂直・水平隙間を形成した。
【0100】
架台Hは、架台Eと同様に、太陽光パネルの設置にパネル載置部を使用し、最下段に加えて、その他の各段の太陽光パネルの間にも垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差を設けたものである。その太陽光パネルユニットは、縦3段横2列の計6枚の太陽光パネルを用い、各段の太陽光パネル同士の間には下段側太陽光パネルに対して上段側太陽光パネルを傾斜面に略垂直方向(=Gy12=Gy23)に約+115mm、最下段の太陽光パネルとその上段側の太陽光パネルの間の傾斜面に略平行方向(=Gx12)に約+160mm、2段目の太陽光パネルと最上段の太陽光パネルの間の傾斜面に略平行方向(=Gx23)に約+115mmの垂直方向に落とし込んだ下り階段状の逆段差および垂直・水平隙間を形成した。
【0101】
なお、パネル載置部は載置面に対して約4.5度で傾斜されている。よって、太陽光パネルの傾斜角度θは、略水平な設置面に対しては約34.5度である。
【0102】
以下に、本実施例2における実証実験の結果を示す。
【0103】
図23から図30までは、12月26日、12月29日、1月1日、1月8日、1月15日、1月21日、1月29日および2月2日の午後2時ごろの各架台上の積雪状態を示すビデオ画像の抜粋写真である。また、図31は、3年目シーズンにおける試験日毎の測定時間、発電量、単位面積当たりの発電量、単位面積当たりの積算発電量、発電効率、日照時間、日射量および降雪量を表にまとめたものである。
【0104】
図31より、3年目シーズンの平均の発電効率は、架台Aが約0.4%、架台Gが約0.5%、架台Hが約4.7%と、各段に逆段差と垂直・水平隙間を設けた架台Hの発電効率が他の架台の場合に比べ非常に高かった。以下、詳細に検討する。
【0105】
図32は各架台の発電効率とアメダスのデータによる日射量を示したものである。この図32に示すように、架台Aの場合は、12月27日以降はほとんど発電されなかった。図31および図33に示すように、実証実験開始の12月24から12月8日にかけては、継続的に雪が降り、トータルで約27cmの降雪量があったため、図24から図30に示すように、雪が太陽光パネル上方まで覆ってしまい、その後落雪しなかったことが原因として考えられる。
【0106】
また、架台Hの場合は、12月29日前後に一旦、発電量が回復している。図24からわかるように、第2段太陽光パネルおよび第3段太陽光パネルの積雪がほとんどなくなっている。
【0107】
しかし、その後12月30日以降はほとんど発電されなかった。この架台Hの場合は、図25から図30に示すように、第2段太陽光パネルの半分以上が雪に覆われており、時折、最上段の第3段太陽光パネルまで覆われる場合があった。
【0108】
これは、太陽光パネルの上下段の隙間から落雪せずに、第1段太陽光パネルの上側面で雪が堰き止められ、第2段太陽光パネルを雪が覆ってしまい、太陽光パネルのバイパス回路が機能しなくなって、太陽光パネルユニット全体の発電に悪影響を及ぼしたためであると考えられる。
【0109】
一方、架台Hの発電効率の変化と日射量の変化とを比較すると、おおよそ一致している。また、図23から図30に示すように、3年目シーズンにおいては、第2段太陽光パネルおよび第3段太陽光パネルの雪がほとんど落下していることがわかる。
【0110】
なお、12月31日〜1月6日、1月17日前後、1月21日前後、1月27日前後においては、日射量が多いにもかかわらず発電効率が低かったが、図33に示すように、これら日射量の多い日は当日または前日に降雪量が多かった日である。
【0111】
以上より、架台Hにおいて、降雪があった日またはその直後においては、従来の架台A等と同様に発電量は低下するが、各段に設けた逆段差と垂直・水平隙間により太陽光パネル上の雪が太陽光パネル下の空隙に効果的に落下するため、パッシブに発電量を回復させることができることが証明された。
【0112】
ここで、この架台Hによってどれくらいの発電効果の向上があったかを数値的に検討してみた。
【0113】
架台Hにおける3年目シーズンの積算した発電量は約5.2kWh/m2である。一方、当該実証実験期間中の積算した日射量は約100.3kWh/m2である。ここで、本実施例2で用いた太陽光パネルのモジュール変換効率は13.6%であることより、架台Hによって得られる発電量は最大で約13.6kWh/m2である。
【0114】
ここで、架台Hの実際の発電量と最大発電量とを比較すると、最大値の約38%の発電を行っていた。同様に架台Aについても計算してみると、その発電量は最大値の約2%しか発電できていなかった。
【0115】
この差は大きな差であり、架台Hを使用すれば、これまで降雪地域では普及が困難とされてきた太陽光発電を、本発明に係る太陽光パネルユニットおよびそれを用いた太陽光発電装置によって充分に普及させることが可能であることを示すものである。
【0116】
なお、本発明に係る太陽光パネルユニットおよびそれを用いた太陽光発電装置は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0117】
例えば、本発明の太陽光パネルユニット、若しくは太陽光発電装置に、特許文献1に記載されている太陽光発電システムのような電力を供給してパネルを暖める融雪装置や、温風や温水でパネルを暖める融雪装置、または雪に直接散水して融雪する融雪装置等と組み合わせてもよい。
【0118】
本発明の太陽光パネルユニット、若しくは太陽光発電装置では、各段における太陽光パネル上の積雪量にあまり差がないため、従来の融雪装置による融雪の効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0119】
1A,1B 太陽光パネルユニット
2A,2B 太陽光発電装置
3 太陽光パネル
4 架台
5 パワーコンディショナ
6 分電盤
7 電力量計
8 設置面
9 空隙
10 逆段差
11a 傾斜面に垂直方向の隙間
11b 傾斜面に平行方向の隙間
12 蓄電設備
3a 第1段太陽光パネル、下段側太陽光パネル
3b 第2段太陽光パネル、上段側太陽光パネル
3c 第3段太陽光パネル
41 底面フレーム
42 縦フレーム
43 パネル固定傾斜フレーム
44 補強フレーム
45 パネル載置部
11a 傾斜面に平行方向の隙間
11b 傾斜面に垂直方向の隙間
E 電気器具
P 商用電源
θ 傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽光パネルを複数段に配置してなる太陽光パネル群と、前記太陽光パネル群を所定の角度に傾斜させて支持するとともに略水平な設置面に設置される太陽光パネル架台とを有しており、
前記太陽光パネル群と前記設置面との間には、落雪用の空隙が設けられているとともに、前記太陽光パネル群のうち下段に配置される下段側太陽光パネルと、これの上段に配置される上段側太陽光パネルとの間には、前記下段側太陽光パネルの傾斜面に対して垂直方向に落とし込んだ逆段差と、前記傾斜面に対して平行方向に形成された平行隙間と、前記傾斜面に対して垂直方向に形成された垂直隙間とを有している太陽光パネルユニット。
【請求項2】
前記逆段差、前記平行隙間および前記垂直隙間は、最下段の太陽光パネルとこれの上段側太陽光パネルとの間に形成されていることに加え、少なくともその他の1つ以上の段における太陽光パネル間にも形成されている請求項1に記載の太陽光パネルユニット。
【請求項3】
前記太陽光パネル架台と前記太陽光パネルとの間には、前記太陽光パネルをその下端を支点として上端を前記太陽光パネル架台から離間させるように傾斜させて前記逆段差を構成するためのパネル載置部が設けられている請求項1または請求項2に記載の太陽光パネルユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載される太陽光パネルユニットと、この太陽光パネルユニットで発電した電力を蓄える蓄電設備とを備えた前記太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載される太陽光パネルユニットと、この太陽光パネルユニットで発電した直流電流を交流電流に変換するパワーコンディショナとを備えた前記太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置。
【請求項1】
複数の太陽光パネルを複数段に配置してなる太陽光パネル群と、前記太陽光パネル群を所定の角度に傾斜させて支持するとともに略水平な設置面に設置される太陽光パネル架台とを有しており、
前記太陽光パネル群と前記設置面との間には、落雪用の空隙が設けられているとともに、前記太陽光パネル群のうち下段に配置される下段側太陽光パネルと、これの上段に配置される上段側太陽光パネルとの間には、前記下段側太陽光パネルの傾斜面に対して垂直方向に落とし込んだ逆段差と、前記傾斜面に対して平行方向に形成された平行隙間と、前記傾斜面に対して垂直方向に形成された垂直隙間とを有している太陽光パネルユニット。
【請求項2】
前記逆段差、前記平行隙間および前記垂直隙間は、最下段の太陽光パネルとこれの上段側太陽光パネルとの間に形成されていることに加え、少なくともその他の1つ以上の段における太陽光パネル間にも形成されている請求項1に記載の太陽光パネルユニット。
【請求項3】
前記太陽光パネル架台と前記太陽光パネルとの間には、前記太陽光パネルをその下端を支点として上端を前記太陽光パネル架台から離間させるように傾斜させて前記逆段差を構成するためのパネル載置部が設けられている請求項1または請求項2に記載の太陽光パネルユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載される太陽光パネルユニットと、この太陽光パネルユニットで発電した電力を蓄える蓄電設備とを備えた前記太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載される太陽光パネルユニットと、この太陽光パネルユニットで発電した直流電流を交流電流に変換するパワーコンディショナとを備えた前記太陽光パネルユニットを用いた太陽光発電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図31】
【図34】
【図5】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図32】
【図33】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図31】
【図34】
【図5】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図32】
【図33】
【図35】
【公開番号】特開2011−119643(P2011−119643A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140404(P2010−140404)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(507093558)株式会社アクアグレース (1)
【出願人】(310010575)地方独立行政法人北海道立総合研究機構 (51)
【出願人】(509303372)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(507093558)株式会社アクアグレース (1)
【出願人】(310010575)地方独立行政法人北海道立総合研究機構 (51)
【出願人】(509303372)
【Fターム(参考)】
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