説明

葉タバコ幹刈機

【課題】走行機体に挟持搬送装置とこの搬送手段により搬送される葉タバコの幹を切断する切断装置とを設けた葉タバコ幹刈機において、幹刈上下位置を簡単に調節できる葉タバコ幹刈機を提供する。
【解決手段】葉タバコの植付畝を跨いで走行する走行台車3に、走行台車の前方部にあってタバコの幹を挟持しながら刈取る刈取作業部4を設け、この刈取作業部は走行台車に平行リンク30を介して載設されていて、これにより上下に平行移動して刈高さ位置を調節できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培圃場の畝に植えられている葉タバコの幹を葉が付いている状態で切断して収穫する葉タバコ幹刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、上記のような葉タバコ幹刈機においては、例えば特開2004−173578号公報などで開示されているように、走行機体に挟持搬送装置と該挟持搬送装置により挟持搬送される葉タバコの幹を切断する切断装置とを設けた葉タバコ幹刈機が公知である。
【特許文献1】特開2004−173578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術における葉タバコ幹刈機の場合、幹刈上下位置を調節する場合は後輪を上下させることにより収穫機全体を上下させ、さらにこれに合わせて前輪の高さを上下に調節する必要があった。この場合、重量のある収穫機全体を持ち上げながら前輪の高さを調節する必要があり、畝の高さや圃場条件の相異および幹の生育状況により頻繁に高さ調節する場合には煩わしく、また前輪と後輪がそれぞれ高さ調節を独立させているため、機体を水平に簡単に調節することは難しく、挟持搬送装置が水平でないために機体の性能を十分に発揮できない問題があった。
【0004】
このため本発明の目的は、走行機体に挟持搬送装置と該挟持搬送装置により搬送される葉タバコの幹を切断する切断装置とを設けた葉タバコ幹刈機において、葉タバコの幹刈上下位置を簡単に調節することのできる葉タバコ幹刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、葉タバコの植付畝を跨いで走行する走行台車と、該台車部の前方部にあって葉タバコの幹を挟持しながら刈取る刈取作業部とで構成された葉タバコ幹刈機において、前記刈取作業部を走行台車に対し、上下に平行移動可能に設けたことを特徴とする葉タバコ幹刈機を提供する。
【発明の効果】
【0006】
上記に記載の発明によると、葉タバコの幹刈上下位置を調節する場合は、走行台車に対して刈取作業部のみを上下に平行移動させて調節するため、重量のある機体全体を上下させることなく調節することができ、強靭な部材による昇降機構を必要とせず、製造コストも低く抑えることが可能で、さらに平行に上下移動するため。上下に調節することによる刈取作業部の前後姿勢が変化することがなく、刈取性能等に影響することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の葉タバコ幹刈機の側面図、図2は本発明の葉タバコ幹刈機の平面図、図3は刈取作業部の要部側面図、図4は本発明の葉タバコ刈取機の駆動部説明図、図5は刈取作業部の駆動部要部平面図、図6は吊り下げ用溝切り作業時の溝切部の正面図、および図7は刈取作業時の切断部の正面図を示したものである。
【0008】
走行台車3は、前輪1,1と後輪2,2をそれぞれ左右に設けて葉タバコの植えられている畝Aを跨いで走行できるように構成されていて、後方部には走行台車3を操縦するためのハンドル3bおよび操作部31が設けられ、その前方部には本発明の葉タバコ幹刈機の動力源となるエンジン5が載設されて、さらにその前方部には葉タバコの幹を刈取るための刈取作業部4が載置されていて、刈取作業部4は、走行台車3のフレーム3aに昇降させるためのリンク機構である昇降リンク部30を介して、載置されている。
【0009】
走行台車3の走行は後輪2,2の駆動により行われ、前輪1,1はキャスタアーム1aに前車軸1bにより正逆回転自在に取り付けられ、キャスタアーム1aの他端はフレーム3aに垂直方向に回動軸を有した前輪回動軸1cにより支持されて回動自在に取り付けられている。
【0010】
本例において昇降リンク部30は、×字状にリンクアーム30a,30bを中間部において連結ピン30dにより連結し平行リンクを構成し、下方部の一端はフレーム3aにリンクアーム30aがリンクピン30cにより上下回動自在に取り付けられ、一方のリンクアーム30bの下方部はローラ30eが取り付けられ、フレーム3aのコの字状のガイド部を水平方向にスライド可能に設けている。一方上方部の一端は、刈取作業部4を支える刈取作業部フレーム3cにリンクピン30cにより、リンクアーム30bが上下回動自在に取り付けられ、他方のリンクアーム30aの端部にはローラ30eが取り付けられ、刈取作業部フレーム3cのガイド部を水平方向にスライド可能に設けてある。
【0011】
また、下方部のリンクアーム30bの一端は、水平方向に設けたネジシャフト30fを螺入したネジボス30hが回動自在に設けてあり、ネジシャフト30fの一端はフレーム3a側に回転自在に取り付けて、ネジシャフト30fに固着したハンドル30gを回すことで、リンクアーム30bのローラ30e部が水平方向にスライドし、昇降リンク部30は上下に昇降し載置された刈取作業部4が昇降する。
【0012】
本例では、ネジシャフト30fをハンドル30gによって回すことで、リンクを作動させてあるが、ハンドル30gの代わりに電動モータにより回転させたりネジシャフト30f部をシリンダ等の伸縮可能なアクチュエータに置き換えることで遠隔操作が可能となり、操作部31等に設けた操作スイッチ等で昇降リンク部30を作動させることも可能である。
【0013】
刈取作業部4は、葉タバコの幹を機体の中央部で挟持し前方から後方へ搬送するためのチェンを左右に一対右挟持搬送チェン40rと左挟持搬送チェン40lを設け、さらに上下に二段設けて葉タバコを直立させたまま搬送する。搬送途中において、幹を根元部から切断する切断刃4bおよび葉タバコ乾燥時の吊下げ用溝切り刃である溝切刃4aが設けてあり、吊下げ用溝の加工と幹の切断が行われる。
【0014】
右挟持搬送チェン40rと左挟持搬送チェン40lは、刈取スプロケット40a,40aと刈取作業部4の後方側に設けた前記チェンを駆動する刈取チェン駆動スプロケット40b,40bに巻着されてそれぞれ作動する。駆動側のスプロケットである刈取チェン駆動スプロケット40b,40bは、断面が六角形の駆動軸であるスライド軸57に上下スライド自在に嵌入して駆動され刈取作業部4が上下に昇降しても上下に延出されたスライド軸57より動力は伝達され駆動する。
【0015】
図4,図5において、本発明の葉タバコ幹刈機の全体の駆動部の説明をする。
動力源であるエンジン5の出力軸にはエンジンプーリ5aが固着されていて、これに掛け渡されたVベルト50a,50bにより動力は分配され伝達される。Vベルト50aに伝達された動力は、走行台車3の走行と刈取作業部4を駆動し、Vベルト50bに伝達された動力は葉タバコ幹の切断刃4bと溝切刃4aを駆動する。
【0016】
エンジン5下方部には、油圧無断変速装置であるHST5bが設けてあり、該HST5bの入力軸に固着されたHSTプーリ5cと、エンジンプーリ5aに掛け渡されたVベルト50aによりHST5bは駆動される。HST5bは、操作部31に設けた走行レバー31cを前後に操作することで回転数と回転方向を設定することができるように構成されている。
【0017】
エンジンプーリ5aとHSTプーリ5cの間には、動力の伝達・遮断ができるようにテンションローラ50dによるテンションクラッチが設けてあり、操作部31に設けた走行クラッチレバー31bの操作により作動する。
【0018】
HST5bの動力は出力軸である水平方向に延出したHST出力軸5dにより平歯車の組合せで構成された減速部5eに伝達され減速される。減速された動力は、機体左右に延出した駆動軸5fにより出力され、左右の後輪2の駆動用のチェーンケース2b,2bに伝達される。
【0019】
チェーンケース2b内には、駆動軸5fの端部に固着された車輪駆動スプロケット2e,2eとその下方に設けた後輪2の後輪軸2a,2aに固着された車軸スプロケット2d,2dにチェン2cが巻着されて設けられて後輪2は駆動される。
【0020】
また、車輪駆動スプロケット2e,2e部には、駆動軸5fの動力を断続することのできるサイドクラッチ部20が設けてあり、断続することにより動力の伝達が阻止されるとともに後輪は自由に回転できる状態となり、走行台車3の左右旋回を行うことができる。断続は、走行台車後方のハンドル3bの左右に設けたサイドクラッチレバー31a,31aを操作することにより行うことができる。
【0021】
減速部5eより機体左右に延出した駆動軸5fの片側には、サイドクラッチ部20との中間部に一対のベベルギヤ53がベベルギヤケース53aに内蔵されて設けてあり、動力の一部は垂直方向下方に突設させた出力軸である刈取駆動軸54に伝達される。該刈取駆動軸54の下方端部側にはプーリ50aが固着して設けてあり、刈取駆動用の中間軸であるカウンタ軸55に固着されたプーリ50bとにVベルト50cを巻着させて動力を伝達する。
【0022】
プーリ50aとプーリ50bの間には、動力の伝達・遮断ができるようにテンションローラ50eによるテンションクラッチが設けてあり、操作部31に設けた刈取クラッチレバー31dを操作することにより作動する。
【0023】
カウンタ軸55に伝達された動力は、該カウンタ軸55に固着された刈取駆動スプロケット56より左右の幹挟持搬送チェンを駆動する搬送チェンスプロケット56a,56aに刈取駆動チェン51により伝達される。搬送チェンスプロケット56a,56aは、前記したスライド軸57に固着されていて、刈取チェン駆動スプロケット40b,40bが駆動され、右挟持搬送チェン40rと左挟持搬送チェン40lが作動する。
【0024】
エンジン5の側方には、油圧を発生させる油圧ポンプユニット6が設けてあり、該油圧ポンプユニット6の油圧ポンププーリ6aとエンジンプーリ5aに巻着させたVベルト50bにより動力は伝達され作動する。油圧ポンプユニット6で発生させた油圧により、葉タバコ幹の溝切刃4aと切断刃4bを駆動させる油圧モータ6d,6eとが油圧ホース6bにより連結されて駆動される。直列の油圧経路には絞り弁6cが設けてあり、開度を調節することで溝切刃4aと切断刃4bの回転数を変更できる。
【0025】
図6,図7において、葉タバコの幹を切断する切断部の説明をする。図6は葉タバコを収穫した後に乾燥させるために吊下げる時に使用する吊下げ用溝を加工する溝切刃4aの状態を示した図で、吊下げ時引っ掛けやすいように傾斜させて溝を加工する必要があり、溝切刃4aを駆動する油圧モータ6dは傾斜させてかつ溝切刃4a先端が葉タバコ幹の中間部になるように取り付けられている。
【0026】
図7は、葉タバコ幹を切断し、根元部より切り離すための切断刃4b部分を示したもので、切断刃4bが水平方向となるように、また切断刃4bが完全に葉タバコ幹の通路と交差するように駆動する油圧モータ6eが取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の葉タバコ幹刈機の側面図
【図2】本発明の葉タバコ幹刈機の平面図
【図3】刈取作業部の要部側面図
【図4】本発明の葉タバコ刈取機の駆動部説明図
【図5】刈取作業部の駆動部要部平面図
【図6】吊り下げ用溝切り作業時の切断部の正面図
【図7】刈取作業時の溝切部の正面図
【符号の説明】
【0028】
1 前輪
1a キャスタアーム
1b 前車軸
1c 前輪回動軸
2 後輪
2a 後車軸
2b チェーンケース
2c チェン
2d 車軸スプロケット
3 走行台車
3a フレーム
3b ハンドル
3c 刈取作業部フレーム
30 昇降リンク部
30a リンクアーム
30b リンクアーム
30c リンクピン
30d 連結ピン
30e ローラ
30f ネジシャフト
30g ハンドル
30h ネジボス
31 操作部
31a サイドクラッチレバー
31b 走行クラッチレバー
31c 走行レバー
31d 刈取クラッチレバー
4 刈取作業部
4a 溝切刃
4b 切断刃
40a 刈取スプロケット
40b 刈取チェン駆動スプロケット
40r 右挟持搬送チェン
40l 左挟持搬送チェン
5 エンジン
5a エンジンプーリ
5b HST
5c HSTプーリ
5d HST出力軸
5e 減速部
5f 駆動軸
50a,50b,50c Vベルト
50d,50e テンションローラ
51 刈取駆動チェン
52a,52b プーリ
53 ベベルギヤ
53a ベベルギヤケース
54 刈取駆動軸
55 カウンタ軸
56 刈取駆動スプロケット
56a 搬送チェンスプロケット
57 スライド軸
6 油圧ポンプユニット
6a 油圧ポンププーリ
6b 油圧ホース
6c 絞り弁
6d,6e 油圧モータ
A 畝
B 葉タバコ幹
C 吊下げ用溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉タバコの植付畝を跨いで走行する走行台車と、該台車部の前方部にあって葉タバコの幹を挟持しながら刈取る刈取作業部とで構成された葉タバコ幹刈機において、前記刈取作業部を走行台車に対し、上下に平行移動可能に設けたことを特徴とする葉タバコ幹刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−121903(P2006−121903A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310337(P2004−310337)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】