説明

蒲焼風魚肉練製品の製造方法

【課題】蒲焼に近い風味及び食感を有する蒲焼風魚肉練り製品の製造方法を提供する。
【解決手段】肉すり身と、大豆加工品と、油脂とを含有する食品ペースト素材を成形し、該成形物を加熱処理してゲル化させた後、タレを付けて焼成する。ゲル化のための加熱処理は、蒸煮及び/又は油ちょうによって行うことが好ましい。また、食品ペースト素材として、色の薄い素材と、色の濃い素材とを用い、色の薄い素材の表層の少なくとも一部に、色の濃い素材を被覆することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚肉すり身を用いた、蒲焼様の外観、風味、食感を有する食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚肉練製品は、魚肉すり身を主原料とした食品ペースト素材を所望の形状に成形し、加熱処理して得られる加工食品であって、形状、加熱方法などの違いによって、様々なタイプの食品がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、油を添加し、必要に応じて調味料、フレーバー、着色料などを加えて調製した魚肉すり身にてそれぞれ皮様組織肉と肉様組織肉とを作り、この両者を貼り合わせて蒲焼形に成型し、蒸煮後、タレを塗って焼成し、蒲焼様食品を製造することが開示されている。
【特許文献1】特開昭60−259162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の食品は、形状こそ蒲焼に近いものであるが、その食感は弾力性が強く、うなぎの身の様な柔らかい食感を有するものではなかった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、より蒲焼に近い風味及び食感を有する蒲焼風魚肉練り製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の蒲焼風魚肉練製品の製造方法は、魚肉すり身と、大豆加工品と、油脂とを含有する食品ペースト素材を成形し、該成形物を加熱処理してゲル化させた後、タレを付けて焼成することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、食品ペースト素材の成形物を加熱処理してゲル化させた後、タレを付けて焼成するので、蒲焼のような外観及び風味を備えた魚肉練り製品を製造できる。また、食品ペースト素材として、魚肉すり身と、大豆加工品と、油脂とを含有するものを用いることで、魚肉すり身の風味と大豆加工品の風味とが融合した淡泊な風味と、大豆加工品及び油脂を添加したことによるソフトで歯切れが良く滑らかな食感が得られ、得られる魚肉練製品の食感を、より蒲焼に近づけることができる。
【0008】
本発明の蒲焼風魚肉練製品の製造方法において、前記大豆加工品は、豆腐、豆乳、大豆蛋白ペーストから選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
【0009】
本発明の蒲焼風魚肉練製品の製造方法において、前記魚肉すり身100質量部に対し、前記大豆加工品を20〜200質量部含有することが好ましい。
【0010】
本発明の蒲焼風魚肉練製品の製造方法において、前記ゲル化のための加熱処理は、蒸煮及び/又は油ちょうによって行うことが好ましい。そして、前記成形物を蒸煮し、油ちょうし、タレを付けて焼成することが更に好ましい。
【0011】
本発明の蒲焼風魚肉練製品の製造方法において、前記食品ペースト素材として、色の薄い素材と、色の濃い素材とを用い、色の薄い素材の表層の少なくとも一部に、色の濃い素材を被覆することが好ましい。この態様によれば、色の濃い素材からなる層が、ウナギの皮のような外観を与え、色の薄い素材からなる層がウナギの身の様な外観を与えるので、魚肉練製品の外観をより蒲焼に近づけることができる。
【0012】
本発明の蒲焼風魚肉練製品の製造方法において、色の濃い素材を押出す吐出口と、色の薄い素材を押出す吐出口とを有する2重ノズルを用い、幅方向の中間部が薄く両側が厚い板状をなし、色の薄い素材の片面に色の濃い素材の層が被覆された形状となるように同時に押出成形することが好ましい。この態様によれば、一体成形により製造できるので、生産性が高い。
【0013】
本発明の蒲焼風魚肉練製品の製造方法において、前記色の濃い素材が、昆布、鰹節、ひじき、炭、黒豆、イカスミ、胡麻、海苔、色素から選ばれた少なくとも一種を含有する素材を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より蒲焼に近い、外観、風味、食感を有する魚肉練製品を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の製造方法によって得られる魚肉練製品の第一の実施形態の斜視図であり、図2は同魚肉練製品の裏面側から見た斜視図であり、図3は同魚肉練製品の正面図であり、図4は同魚肉練製品の背面図であり、図5は同魚肉練製品の平面図であり、図6は、同魚肉練製品の底面図であり、図7は同魚肉練製品の右側面図であり、図8は、同魚肉練製品の左側面図である。
【0016】
この魚肉練製品10は、色の薄い素材からなる食品ペースト素材Aで構成された第1の魚肉すり身層11と、色の濃い素材からなる食品ペーストBで構成された第2の魚肉すり身層12とで構成されており、全体として矩形状をなし、その下面の幅方向のほぼ中央に長手方向に沿って窪む凹部を有する第1の魚肉すり身層11上に、矩形状の第2の魚肉すり身層12が比較的薄い層をなして積層されて、第1の魚肉すり身層11と第2の魚肉すり身層12とが一体となっている。そして、魚肉練製品10の少なくとも表層面はタレを塗布されて焼成されている。表層面には、焦げ目が付いていてもよい。
【0017】
第1の魚肉すり身層11をなす食品ペースト素材Aは、魚肉すり身と、大豆加工品と、油脂とを含有する。
【0018】
上記魚肉すり身としては、スケソウダラ、グチ、ホッケなどの白身魚の魚肉すり身が好ましく用いられる。白身魚の魚肉すり身を用いることで、ウナギの身の様な色調に近づけることができる。
【0019】
上記大豆加工品としては、豆腐が最も好ましいが、大豆蛋白質と油脂と水とを混合した大豆蛋白ペーストや、豆乳、ご汁等を用いることもできる。大豆加工品は、魚肉すり身100質量部に対し、20〜200質量部含有することが好ましく、40〜100質量部含有するがより好ましい。大豆加工品の含有量が20質量部未満では、食感が硬くなり易く、200質量部を超えると、水っぽくなり、食感がベタついた感じとなり易い。
【0020】
上記油脂としては、各種の食用油が使用でき、特に大豆油、菜種油、米糠油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、落花生油、パーム油、ヤシ油等の各種の植物性油脂が好ましく使用される。油脂は、魚肉すり身100質量部に対し、20〜90質量部含有することが好ましく、30〜80質量部含有するがより好ましい。油脂の含有量が20質量部未満では、食感がバサついた感じとなり易く、90質量部を超えると、油っぽくなり、食感がベタついた感じとなり易い。なお、上記油脂の量は、大豆加工品として大豆蛋白ペーストを用いる場合は、該大豆蛋白ペースト中の油脂も含んだ量を意味する。
【0021】
第2の魚肉すり身層12をなす食品ペースト素材Bは、魚肉すり身と、大豆加工品と、油脂と、後述する着色素材とを含有する。
【0022】
上記魚肉すり身としては、スケソウダラ、グチ、ホッケなどの白身魚の魚肉すり身、イワシ、アジ、サバなどの赤身魚の魚肉すり身などを用いることができ、赤身魚の魚肉すり身がより好ましく用いられる。赤身魚の魚肉すり身であれば、より、蒲焼の皮に近い外観を呈することができる。
【0023】
上記大豆加工品としては、豆腐が最も好ましいが、大豆蛋白質と油脂と水とを混合した大豆蛋白ペーストや、豆乳、ご汁等を用いることもできる。大豆加工品は、魚肉すり身100質量部に対し、20〜200質量部含有することが好ましく、50〜100質量部含有するがより好ましい。大豆加工品の含有量が20質量部未満では、食感が硬くなり易く、200質量部を超えると、水っぽくなり、食感がベタついた感じとなり易い。
【0024】
上記油脂としては、各種の食用油が使用でき、特に大豆油、菜種油、米糠油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、落花生油、パーム油、ヤシ油等の各種の植物性油脂が好ましく使用される。油脂は、魚肉すり身100質量部に対し、20〜90質量部含有することが好ましく、30〜80質量部含有するがより好ましい。油脂の含有量が20質量部未満では、食感がバサついた感じとなり易く、90質量部を超えると、油っぽくなり、食感がベタついた感じとなり易い。
【0025】
食品ペースト素材Bには、蒲焼の皮様の色調に近づけるため、更に、昆布、鰹節、ひじき、炭、黒豆、イカスミ、胡麻、海苔、色素から選ばれた少なくとも一種の着色素材を含有することが好ましい。これらの着色素材を含有することで、蒲焼の皮の色調により近づけることができる。
【0026】
次に、本発明の蒲焼風魚肉練製品の製造方法について説明する。本発明の蒲焼風魚肉練製品の製造方法は、食品ペースト素材を蒲焼様の形状に成形する成形工程と、成形工程で得られた成形物を加熱処理してゲル化するゲル化工程と、ゲル化物にタレを付けて焼成する焼成工程と、で主に構成されている。
【0027】
(成形工程)
成形工程では、第2の魚肉すり身層12上に、該第2の魚肉すり身層12の幅方向のほぼ中央に長手方向に沿って窪むように第1の魚肉すり身層11を積層して第1の魚肉すり身層11と第2の魚肉すり身層12とを一体させ、蒲焼様の形状をなす成形物を製造する。
【0028】
このような成形物の製造方法としては、例えば、図9に示すような、ノズル内側の上壁が幅方向のほぼ中央で長手方向に沿って窪んだ第1吐出口21と、該第1吐出口21の下部に配置された第2吐出口22とを備えた二重ノズル20を用い、図10に示すように、第1吐出口21から食品ペースト素材Aを、第2吐出口22から食品ペースト素材Bをそれぞれ同時に吐出して一体成形し、所定長さ毎にカッター23で切断して成形物を製造する方法などが好ましく挙げられる。食品ペースト素材が吐出口から吐出されると、食品ペースト素材が膨潤して膨らむので、第1の魚肉すり身層11と第2の魚肉すり身層12とが一体化する。このような二重ノズルを用いて成形することで、図1〜8に示すような形状に成形できる。
【0029】
また、所定形状のモールド内に、食品ペースト素材Aと食品ペースト素材Bとを、それぞれ順に充填し、モールド成形して成形加工することもできる。モールド成形することで、例えば、図11に示すような、より蒲焼に近い形状をなす成形物を製造することができる。すなわち、この成形物から得られる魚肉練製品10’は、色の薄い素材からなる食品素材ペーストAで構成された第1の魚肉すり身層11と、その片面に被覆された色の濃い食品素材ペースト素材Bで構成された第2の魚肉すり身層12とで構成され、成形物表面に多数のしわ13が形成されて、より本物の蒲焼に近い形状となっている。ただし、生産性の観点から、二重ノズルを用いて成形する方法が好ましく採用される。
【0030】
(ゲル化工程)
ゲル化工程では、成形工程で得られた成形物を加熱処理してゲル化する。加熱処理としては、蒸煮、油ちょうが好ましく挙げられる。蒸煮後、焼成工程に移ってもよく、また、蒸煮をせずに油ちょうした後、焼成工程に移ってもよいが、なかでも、蒸煮した後、油ちょうして加熱処理した後、焼成工程に移ることがより好ましい。
【0031】
蒸煮することで、弾力性が増し、歯ごたえが得られる。また、油ちょうすることで、色合いがウナギの身に近づき、また、硬さがウナギの皮の食感に近づく。
【0032】
蒸煮は、80〜95℃で、5〜15分間行うことが好ましい。蒸煮温度及び時間が前記範囲内であれば、適度な弾力性が得られる。
【0033】
油ちょうは、120〜185℃で、0.5〜3分間行うことが好ましい。油ちょう温度及び時間が前記範囲内であれば、色調が良好で、適度な硬さが得られる。
【0034】
(焼成工程)
焼成工程では、ゲル化工程で得られたゲル化物の表面にタレを塗布して焼成し、必要に応じて、焼成後に更にタレを塗布する。
【0035】
このようにして得られる魚肉練製品は、食品ペースト素材の成形物を加熱処理してゲル化させた後、タレを付けて焼成するので、蒲焼のような外観及び風味を有している。また、食品ペースト素材として、魚肉すり身と、大豆加工品と、油脂とを含有するものを用いるので、魚肉すり身の風味と大豆加工品の風味とが融合した淡泊な風味と、大豆加工品及び油脂を添加したことによるソフトで滑らかな食感を得ることができ、より蒲焼に近い風味・食感を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の製造方法によって得られる魚肉練製品の第一の実施形態の斜視図である。
【図2】同魚肉練製品の裏面側から見た斜視図である。
【図3】同魚肉練製品の正面図である。
【図4】同魚肉練製品の背面図である。
【図5】同魚肉練製品の平面図である。
【図6】同魚肉練製品の底面図である。
【図7】同魚肉練製品の右側面図である。
【図8】同魚肉練製品の左側面図である。
【図9】二重ノズルの概略図である。
【図10】同二重ノズルのA−A断面図であって、該二重ノズルから食品ペースト素材を吐出して成形物を製造する概略図である。
【図11】本発明の製造方法によって得られる魚肉練製品の第二の実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
10,10’:魚肉練製品
11:第1魚肉すり身層
12:第2魚肉すり身層
20:二重ノズル
21:第1吐出口
22:第2吐出口
22:カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚肉すり身と、大豆加工品と、油脂とを含有する食品ペースト素材を成形し、該成形物を加熱処理してゲル化させた後、タレを付けて焼成することを特徴とする蒲焼風魚肉練製品の製造方法。
【請求項2】
前記大豆加工品は、豆腐、豆乳、大豆蛋白ペーストから選ばれた少なくとも一種である、請求項1に記載の蒲焼風魚肉練製品の製造方法。
【請求項3】
前記魚肉すり身100質量部に対し、前記大豆加工品を20〜200質量部含有する、請求項1又は2に記載の蒲焼風魚肉練製品の製造方法。
【請求項4】
前記ゲル化のための加熱処理は、蒸煮及び/又は油ちょうによって行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒲焼風魚肉練製品の製造方法。
【請求項5】
前記成形物を蒸煮し、油ちょうし、タレを付けて焼成する請求項4記載の蒲焼風魚肉練製品の製造方法。
【請求項6】
前記食品ペースト素材として、色の薄い素材と、色の濃い素材とを用い、色の薄い素材の表層の少なくとも一部に、色の濃い素材を被覆する請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒲焼風魚肉練製品の製造方法。
【請求項7】
色の濃い素材を押出す吐出口と、色の薄い素材を押出す吐出口とを有する2重ノズルを用い、幅方向の中間部が薄く両側が厚い板状をなし、色の薄い素材の片面に色の濃い素材の層が被覆された形状となるように同時に押出成形する請求項6記載の蒲焼風魚肉練製品の製造方法。
【請求項8】
前記色の濃い素材として、昆布、鰹節、ひじき、炭、黒豆、イカスミ、胡麻、海苔、色素から選ばれた少なくとも一種を含有する素材を用いる請求項6又は7記載の蒲焼風魚肉練製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−81895(P2010−81895A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255969(P2008−255969)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000248783)有限会社松兵衛 (1)
【Fターム(参考)】