説明

蒸散器

【課題】 容器内の薬液を確実に蒸散させることができる蒸散器を提供する。
【解決手段】 薬液Lを貯留する容器4と、容器4に挿入され一部が容器4の外部に露出する吸液体2とを備え、容器4内の薬液Lが吸液体2の露出部2aから蒸散するように構成された蒸散器1において、容器4を加熱する蒸発用加熱体10を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を蒸散させることにより消臭、芳香、除菌などを行う蒸散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蒸散器として、特許文献1に開示された構成が知られている。図3に示すように、この蒸散器50は、薬液51が収容された容器52の口部に、吸液芯53が挿入されて構成されている。吸液芯53は、下端が容器52の底面中央に当接する一方、上部が容器52の外部に露出して、発熱体54の中心部に挿入されている。発熱体54は、コンセント55からプラグ56を介して通電されることにより発熱する。この蒸散器によれば、発熱体54によって吸液芯53を加熱することにより、吸液芯53により吸い上げられた薬液の蒸散が促進され、消臭や芳香などを行うことができる。このように、薬液を蒸散させる吸液芯を加熱可能な蒸散器は、特許文献2や特許文献3にも開示されている。
【特許文献1】特開平8−148号公報
【特許文献2】特開2002−200156号公報
【特許文献3】特表2002−543929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した蒸散器50は、容器52内の薬液51が吸液芯53からの蒸散によって徐々に少なくなっていくので、容器52を交換可能に構成されており、容器52の材料は、交換時期を目視により把握できるように、透明なものが使用される。
【0004】
ところが、装飾性や質感などを考慮して容器52をガラスから構成した場合には、成形上の問題から容器52の底面を平らにすることが困難であるので、薬液の消費に伴い、吸液芯53により吸い上げることができない薬液51が容器52の底隅部に残留するおそれがあった。この場合、薬液が蒸散できないにも拘わらず目視上は薬液が残存するため、使用者が容器52の交換時期を正確に把握することができない結果、所望の消臭効果や芳香効果などが得られないという問題があった。
【0005】
このような問題は、容器52の材料がガラスの場合に限られるものではなく、透明樹脂など他の材料からなる場合であっても、蒸散器50が傾斜していたり、吸液芯53の下端が容器52の底面から離れている場合には、容器52内の薬液51を完全に消費することができず、上記と同様の問題が生じる。
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、容器内の薬液を確実に蒸散させることができる蒸散器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、薬液を貯留する容器と、前記容器に挿入され一部が前記容器の外部に露出する吸液体とを備え、前記容器内の薬液が前記吸液体の露出部から蒸散するように構成された蒸散器において、前記容器を加熱する蒸発用加熱体を備えることを特徴とする蒸散器により達成される。
【0007】
この蒸散器において、前記蒸発用加熱体は、少なくとも一部が、前記吸液体の露出部の下端よりも下方に配置されることが好ましい。具体的には、前記蒸発用加熱体は、前記容器の側壁に隣接して配置されることが好ましい。
【0008】
或いは、前記蒸発用加熱体は、前記容器の下部を加熱するように配置されることが好ましい。ここで、「容器の下部を加熱する」ための蒸発用加熱体の配置位置は、容器の近傍位置で且つ収容された薬液の最大高さよりも下方位置であることが好ましく、容器の底板を重点的に加熱するような位置がより好ましい。特に、容器の底面と近接するように蒸発用加熱体を配置することにより、薬液の加熱効率を最大限に発揮することができる。
【0009】
上述した蒸散器は、前記吸液体の露出部に送風する送風手段を更に備えることができる。また、前記送風手段の代わりに、或いは、前記送風手段と併用して、前記吸液体の露出部を加熱する蒸散用加熱体を更に備えることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器内の薬液を確実に蒸散させることができる蒸散器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る蒸散器を一部切り欠いて示す側面図である。図1に示すように、蒸散器1は、吸液体2を備えた容器4を、本体部6とカバー部8との間に装着することにより構成される。
【0012】
吸液体2は、従来の吸液芯と同様、フェルトやパルプなどからなる棒状の部材であり、下端が容器4の底面に当接すると共に上部が容器4の外部に露出した状態で、容器4の口部を封止する蓋体4aに保持されている。吸液体2は、薬液を吸い上げ可能であれば形状は特に限定されず、筒状やハニカム状など任意の形状とすることができる。吸液体2の材料は、フェルトやパルプ以外に、木綿、レーヨン、アセテート、合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン+ポリプロピレン混合物、ポリエチレンテレフタレート、メラミン等)、不織布、石綿、無機質成型物等を例示することができるが、特に、フェルト芯、素焼芯、パルプ芯、合成樹脂芯または無機質成型芯が好ましい。また、吸液体2は、必ずしも単一の部材から構成する必要はなく、2以上の部材を複合して構成することも可能である。例えば、複数の吸液芯から吸液体を構成してもよく、或いは、吸液芯と、この吸液芯の上端に下面が当接するように配置した蒸散用マットとから吸液体を構成し、吸液芯が吸い上げた薬液をマット全体に拡げて蒸散させるように構成してもよい。容器4は、本実施形態においてはガラスにより構成しており、内部に芳香剤、消臭剤、除菌剤などの薬液Lが貯留されている。容器4の材料についても特に限定はなく、例えば、透明性樹脂から構成することができる。
【0013】
本体部6は、吸液体2及び容器4の上部を所定の位置に保持する保持部18を備えており、更に、発熱体10及びファン12を備えている。発熱体10及びファン12は、プラグ14を外部のコンセント(図示せず)に差し込んだ状態でスイッチ16をオンにすることにより、通電作動する。発熱体10は、ブロック状に形成されており、長手方向が水平となるように容器4の側壁に隣接して設けられている。発熱体10としては、正特性サーミスタ(PTC)、セラミックヒータ、ペルチェ素子、白金触媒式発熱体、白金ハニカム触媒式発熱体、化学反応発熱式発熱体、シート状ヒータ、無底籠型ヒータ、ニクロム線ヒータなどを例示することができる。また、蒸散器1が照明装置を備える場合には、光源を白熱球などとして、この光源を発熱体10として利用することもできる。ファン12は、吸液体2の露出部2aに隣接するように配置されている。
【0014】
カバー部8は、ファン12と対向する位置に蒸散口20が形成されており、本体部6に嵌合されている。また、カバー部8の内面には、容器4の側壁外面に形成された係合部と係合する突片22が設けられており、本体部6とカバー部8との間に下方から挿入された容器4は、突片22との係合によって着脱自在に支持される。
【0015】
以上の構成を備える蒸散器によれば、スイッチ16の操作により発熱体10及びファン12に通電すると、吸液体2の下端から吸い上げられた薬液Lが露出部2aにおいて蒸散し、ファン12からの送風によりカバー8の蒸散口20を介して外部へ放出される。このような薬液Lの消費に伴って、容器4の内部の液面は徐々に低下するが、本実施形態の蒸散器によれば、容器4が発熱体10により加熱されるため、容器4の内部に残る薬液Lの蒸発が促される。したがって、容器4の底隅部などに薬液Lが残留するなどして吸液体2による薬液Lの吸い上げが困難な場合でも、残留する薬液Lを全て蒸発させて、吸液体2を介して外部に蒸散させることができる。この結果、容器4内の薬液Lが完全になくなるまで薬液Lを蒸散し続けることができるので、薬液Lの蒸散効果を最大限に発揮できると共に、使用者が容器4の交換時期を正確に把握することができる。尚、容器4の取り外す際には、本体部6又はカバー部8を把持した状態で容器4を下方に引くことにより、突片22の撓みを利用して容器4との係合状態を解除して、容器4を抜き取ることができる。
【0016】
容器4の加熱温度は、薬液Lに含まれる薬剤の蒸発を促して未使用の薬液Lが残留するのを防止できる程度の温度が好ましく、薬剤の種類に応じて適宜設定すればよいが、加熱温度が高すぎると薬剤が劣化するおそれがある。このため、薬剤が芳香剤の場合には、容器4に収容されている薬液Lの温度を20〜50℃に制御することが好ましく、25〜40℃がより好ましい。尚、使用環境温度が高いために薬液Lを上記温度に維持することが困難な場合には、容器4を冷却するための冷却装置を設けてもよい。
【0017】
薬液Lの温度は、薬液Lの蒸散を所望の蒸散速度で行うために、使用期間中は常時一定に維持することが好ましいが、実際には環境温度の影響を受けて変動する。したがって、環境温度や容器4の表面又は内部の温度を測定する温度センサを更に設け、温度センサの検出結果に基づいて発熱体12の発熱量を制御することにより、薬液Lの温度を略一定にすることが好ましい。これによって、環境温度が低い場合には、発熱体12の発熱量を大きくして蒸散効率の低下を防止することができる一方、環境温度が高い場合には、発熱体12の発熱量を小さくして過蒸散を防止することができるので、容器4内の薬液Lの蒸散を、ほぼ予定通りの製品寿命となるように安定して行うことができる。
【0018】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、吸液体2の露出部2aに対してファン12から送風することにより、薬液Lの蒸散を促進するようにしているが、露出部2aに送風する送風手段としては、露出部2aからファン12に向けたエア流れを生じさせる吸引ファンであってもよい。また、ファン12を設けずに露出部2aから薬液Lを自然蒸散させるように構成してもよい。
【0019】
また、吸液体2の露出部2aからの薬液Lの蒸散を促すため、上記特許文献1〜3に記載されているように、吸液体2を加熱する蒸散用加熱体を、露出部2aの近傍に設けてもよい。この蒸散用加熱体は、ファン12と併用して、或いはファン12の代わりに設けることができる。露出部2aからの薬液Lの蒸散を促す方法としては、その他に、超音波振動発生装置の振動子を露出部2aに接触させる方法などを例示することができる。
【0020】
また、本実施形態においては、発熱体10を容器4の側壁に隣接して設けているが、容器4の内部における薬液Lの蒸発を促す蒸発用加熱体として機能するものであれば、形状や配置などは特に限定されない。例えば、発熱体10の形状を本実施形態のようにブロック状とする代わりにリング状に形成して、容器4の外周面を均一に加熱するようにしてもよい。
【0021】
容器4の加熱効率を高めるためには、発熱体10が、吸液体2の露出部2aの下端よりも下方に配置されることが好ましいが、必ずしも発熱体10の全体が上記位置に配置される必要はなく、発熱体10の少なくとも一部が、吸液体2の露出部2aの下端よりも下方に配置されていればよい。例えば、棒状の発熱体を、上部が吸液体2の露出部2aに隣接し、下部が容器4の側壁に隣接するように配置することで、吸液体2からの薬液蒸散用と、容器4内における薬液蒸発用とを、1つの発熱体で兼用することができる。
【0022】
また、図2に示すように、表面に面状発熱体110を備える加熱板112を、本体部6の下部にスライド収納可能に構成し、容器4を本体部6とカバー部8との間に挿入した後に、加熱板112を矢示方向に引き出すことで、面状発熱体110を容器4の底面に接触させることができる。これにより、面状発熱体110が、容器4の下部を加熱する蒸発用加熱体として機能する。尚、図2において、図1と同様の構成部分には同一の符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る蒸散器を一部切り欠いて示す側面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る蒸散器を一部切り欠いて示す側面図である。
【図3】従来の蒸散器を一部切り欠いて示す側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 蒸散器
2 吸液体
2a 露出部
4 容器
6 本体部
8 カバー部
10,110 発熱体(蒸発用加熱体)
12 ファン
L 薬液



【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を貯留する容器と、
前記容器に挿入され一部が前記容器の外部に露出する吸液体とを備え、
前記容器内の薬液が前記吸液体の露出部から蒸散するように構成された蒸散器において、
前記容器を加熱する蒸発用加熱体を備えることを特徴とする蒸散器。
【請求項2】
前記蒸発用加熱体は、少なくとも一部が、前記吸液体の露出部の下端よりも下方に配置される請求項1に記載の蒸散器。
【請求項3】
前記蒸発用加熱体は、前記容器の側壁に隣接して配置される請求項2に記載の蒸散器。
【請求項4】
前記蒸発用加熱体は、前記容器の下部を加熱するように配置される請求項2に記載の蒸散器。
【請求項5】
前記吸液体の露出部に送風する送風手段を更に備える請求項1から4のいずれかに記載の蒸散器。
【請求項6】
前記吸液体の露出部を加熱する蒸散用加熱体を更に備える請求項1から5のいずれかに記載の蒸散器。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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