説明

蒸気タービン

【課題】複数の段落からなる蒸気タービンにおいて、環帯面積を大きくする、すなわち翼長や平均直径を大きくすると、大きく4つの問題が発生する。動翼とロータに作用する応力が大きくなること、動翼先端側で流入速度が超音速になり損失が増加する可能性が増えること、外周側の拡大流路部ではく離が起きる可能性が増大すること、動翼先端側の水滴によるエロージョン量が大きくなる可能性が増大することである。本発明によれば、これら4つの問題の発生を抑制しつつ、蒸気タービンの環帯面積を増加させることができ、効率向上、出力増大、タービンサイズを小さくすることができる。
【解決手段】静翼と動翼とからなるタービン段落を作動流体の流れ方向に複数有する蒸気タービンにおいて、最終段落の動翼の回転数を、上流側に設けられたタービン段落の動翼の回転数に対して小さくする変速機構をタービンロータ部に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、ケーシングに固定された外周側ダイアフラムと内周側ダイアフラムとの間に設けられた静翼と、静翼の下流側に対向してロータに固定された動翼とを有する段落構造を備える。
【0003】
高圧の蒸気が低圧部に向かって膨張する時に生じる運動エネルギーを、静翼と動翼から構成される複数の段落により回転エネルギーに変える機能を持つ蒸気タービンに対して、大きく三つの機能上の要求がある。一つめは、高温高圧蒸気の熱エネルギーをロータの回転エネルギーに変換するエネルギー変換効率を向上させること、二つめは出力を大きくすること、三つめはタービンの大きさを小さくすることである。
【0004】
初めに、効率向上に関して説明する。最終段を出た蒸気の運動エネルギーは、その一部が圧力として回収されるものの、大部分は回転に使えないエネルギーとなる。そのため、効率向上のためには、最終段を出る蒸気の流速を小さくして、捨てる運動エネルギーを小さくすることが有効である。排出運動エネルギーを小さくするためには、流体が流れる部分の回転軸方向からみた面積である環帯面積を大きくすることが有効である。環帯面積は、翼長と、翼の外周端直径と内周端直径とを足して2で割った平均直径との積に円周率をかけたものとなるため、環帯面積の増加のために、翼長と平均直径を大きくすることが行われる(特許文献1等参照)。
【0005】
次に、出力増加について説明する。出力を増加させるために、単位時間当たりに流れる流体の質量である質量流量を増加させることが有効である。質量流量を増加させるためには、流体が流れるための面積である環帯面積を大きくすることが有効である。環帯面積の増加のために、翼長と平均直径を大きくすることが行われる。
【0006】
最後に、タービンの大きさを小さくすることについて説明する。タービンの大きさに最も影響の大きいのは車室の数である。体積流量の大きい低圧車室は、出力の大きいタービンでは、流路の数であるフロー数が複数有り、この数が大きいほどタービンは大きくなる。例えば、蒸気が中央から入り、両端に分れて流下するタイプの低圧車室は、二つのフローを持つ。その車室が二つあると、四つのフロー、三つあると六つのフローとなる。1フローあたりの流路面積である、環帯面積を大きくできればフロー数を減らせて、蒸気タービンの大きさを小さくできる。環帯面積の増加のために、翼長と平均直径を大きくすることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−27901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
背景技術で述べたように、環帯面積を大きくする、すなわち翼長や平均直径を大きくするためには、大きく四つの課題がある。すなわち、動翼とロータに作用する応力が大きくなること、動翼先端側で流入速度が超音速になり損失が増加する可能性が増えること、外周側の拡大流路部ではく離が起きる可能性が増大すること、動翼先端側の水滴によるエロージョン量が大きくなる可能性が増大することである。
【0009】
初めに応力について説明する。回転する翼に作用する応力は、ほぼ環帯面積に比例して増加する。遠心力が大きくなるためである。また、ロータに作用する応力も、径が大きくなるに従い大きくなる。
【0010】
二番目に、超音速流入について説明する。一般的には、段落入口における、単位質量当たりのエンタルピー(比エンタルピー)と流速の二乗を2で割った単位質量当たりの運動エネルギーとの和である比全エンタルピーH0は、回転軸に近い内周側から外周側にかけて、ほぼ一定の値とされる。一方、静翼と動翼との間の比エンタルピーh1は、静動翼間の旋回流とバランスするように内周側に比べ外周側にいくほど大きくなる。したがって、比エンタルピー差H0−h1は、外周側ほど小さくなる。静翼から出る流れの速度は、この比エンタルピー差H0−h1の二乗根に比例する。すなわち、静翼流出速度は外周側ほど小さくなる。背景技術で述べたように、環帯面積を大きくする、すなわち翼長や平均直径を大きくすると、外周側の比エンタルピー差H0−h1は、ますます小さくなり、静翼流出速度もますます小さくなる。このように、環帯面積を大きくすることにより、外周側の比エンタルピー差H0−h1と静翼流出速度が小さくなる。一方、動翼の回転速度である周速は半径に比例して大きくなる。動翼の周速は半径位置が一番大きい外周端、すなわち動翼先端部で最も大きくなる。先端部の周速を音速で割った周速マッハ数が1を越えて超音速となると、静翼からの流れの回転方向成分が十分でないと、動翼に流入してくる流れの相対速度が超音速となる。周速は半径位置が大きくなると大きくなり、静翼流出速度は半径位置が大きくなると小さくなるために、半径位置が大きくなるほど、動翼に対する相対流入速度が超音速となる可能性は大きくなる。相対流入速度が超音速となると、動翼上流側で不連続な圧力上昇を伴う衝撃波が発生する。衝撃波そのものによるエントロピー上昇に加え、衝撃波が翼面の境界層と干渉して、その不連続な圧力上昇により境界層厚さが増加する、さらに、はく離を生じさせることなどによるエントロピー上昇が生じる。この衝撃波によるエントロピー上昇により、タービン段落の環帯面積を増加させ、作動流体の流量を増加させたにも関わらず、増加流量に相当する回転力すなわち出力が増えないことがある。
【0011】
三番目に、外周側の拡大流路部で、はく離が起きる可能性が増大することを説明する。段落の環帯面積、特に下流段の環帯面積を大きくすると、子午面流路の拡大率、すなわち段落入口流路高さに対する、段落出口の流路高さの増加率が大きくなる。一方、段落の環帯面積を大きくしても、段落の軸方向長さはタービン全体の長さに制約があるために一般にはあまり大きくできず、子午面流路の拡大率の増大は、静翼部の外周端や内周端の子午面流路形状の拡がり角を大きくすることで実現されることが一般的である。子午面流路形状の拡がり角が大きくても、静翼部の比エンタルピー差H0−h1が大きいと、翼間で流れが加速されるためはく離が起きるなどの問題は起きないが、環帯面積を大きくするために、翼長や平均直径を大きくすると、外周側の静翼部の比エンタルピー差H0−h1が小さくなり、子午面流路の外周端の拡大流路部で、流れの加速が小さくなり、流れが翼面や側壁面からはく離して、損失が増大する可能性が大きくなる。
【0012】
最後に、動翼先端側の水滴によるエロージョン量が大きくなることを説明する。エロージョン量は、動翼先端周速の約三乗に比例して増加すると言われている。エロージョンを引き起こす液滴は、上流の側壁や静翼翼面の水膜が、蒸気中に再放出されることで発生する。
【0013】
本発明の目的は、動翼とロータに作用する応力が大きくならず、動翼先端側で流入速度が超音速にならず、外周側の拡大流路部ではく離が起きず、動翼先端側の水滴によるエロージョン量が大きくならずに、蒸気タービンの環帯面積を増加させ、効率向上、出力増大、タービンサイズを小さくすることを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、多段落で構成される蒸気タービンの、下流側のタービン段落の動翼の回転数を、上流側のタービン段落の動翼回転数に対して小さくする変速機構を有する。
【発明の効果】
【0015】
先に挙げた四つの課題は、すべて翼の周方向に移動する速度である回転速度が大きくなることに起因している。回転速度は、半径と回転数の積で与えられる。環帯面積を大きくするために、流路部の半径を大きくする。しかし、径を大きくした分、回転数を小さくすれば、翼の回転速度は大きくならない。すなわち、回転速度を大きくすることなく、環帯面積のみを大きくすることが可能となる。
【0016】
本発明によれば、動翼とロータに作用する応力が大きくなること、動翼先端側で流入速度が超音速になること、外周側の拡大流路部ではく離が起きること、および動翼先端側の水滴によるエロージョン量が大きくなることを抑制しつつ、蒸気タービンの環帯面積を増加させることで、効率向上、出力増大、タービンサイズを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の要部構造を表す子午面断面図である。
【図2】減速機能を有する遊星歯車機構の図である。
【図3】一般的な蒸気タービンのタービン段落部の基本構造を表す子午面断面図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の要部構造を表す子午面断面図である。
【図5】本発明の第4の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の要部構造を表す子午面断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の要部構造を表す子午面断面図である。
【図7】一般的な蒸気タービンのタービン段落部の基本構造を表す機構図である。
【図8】本発明の第3の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の基本構造を表す機構図である。
【図9】本発明の第3の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の基本構造を表す機構図である。
【図10】本発明の第4の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の基本構造を表す機構図である。
【図11】本発明の第4の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の基本構造を表す機構図である。
【図12】本発明の第3の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の基本構造を表す機構図である。
【図13】本発明の第1の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の基本構造を表す機構図である。
【図14】本発明の第2の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の基本構造を表す機構図である。
【図15】本発明の第1の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の、はすば歯車の角度とスラストとの関係を表す図である。
【図16】本発明の第2の実施例に係る蒸気タービンのタービン段落部の、はすば歯車の角度とスラストとの関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例として、蒸気タービンの最終段を例にとって、以下に説明する。なお、以下各図面において同等の構成要素については同符号を付している。
【実施例1】
【0019】
初めに図3を用いて、一般的な蒸気タービン最終段のタービン段落部の基本構造を説明する。
【0020】
図3に示すように、蒸気タービンのタービン段落は、作動流体流れ方向上流側(以下単に上流側と記載する)の高圧部P0と、作動流体流れ方向下流側(以下単に下流側と記載する)の低圧部P1との間に設けられている。タービン段落は、タービンケーシング18の内周側に固設された外周側ダイアフラム11と内周側ダイアフラム14との間に固設された静翼13と、タービン中心軸90周りに回転するタービンロータ10に設けられた動翼12とからなる。タービン段落が複数の段落から構成される蒸気タービンの場合、この段落構造が作動流体流れ方向に複数回繰り返されて設けられている。各段落において、静翼の下流側に動翼が設置される。最終段の下流側には、排出運動エネルギーを静圧回復させる排気室92がある。低圧タービン最終段出口では、排気室92は外ケーシング16に囲まれた空間で、排気室92の内周側には外ケーシング16に固設された補強リブ17で支持された円筒状カバー15が設けられている。円筒状カバー15は、タービンロータ10を覆う円筒状のカバーである。蒸気の膨張に従い、静翼と動翼の翼長は下流段ほど長くなる。なお、矢印91は作動流体の流れ方向を表す。
【0021】
以上を踏まえ、本実施例に係る蒸気タービンの構造を以下に説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施例に係る、蒸気タービンの低圧タービン段落部の要部構造を表す子午面断面図である。遊星歯車機構を用いて、最終段落の動翼12の回転数を、タービンロータ10の回転数に対し小さくした蒸気タービンについて説明する。
【0023】
まず初めに、図2を用いて、下流側に設けられた下流側段落の動翼の回転数を、上流側に設けられた上流側段落の動翼の回転数に対して小さくする変速機構である遊星歯車機構について説明する。本実施例の遊星歯車機構は、中央には歯数z1の外歯を持つ太陽歯車83があり、太陽歯車83の外周側には歯数z3の内歯を持つ内歯車80がある。太陽歯車83と内歯車80をタービン段落部に設置する際には、タービンロータ10と太陽歯車83と内歯車80とが同心となるように配置される。太陽歯車83と内歯車80の間を歯数z2の遊星歯車82が複数(図では三つの例を示す)回転しており、複数の遊星歯車82はリング状の遊星キャリヤ81で互いに連結されている。太陽歯車83、遊星キャリヤ81、内歯車80のうち一つの要素は固定され、残りの二つの要素は回転する。回転する二つの要素の回転数が互いに異なることで、遊星歯車機構は、二つの回転数の異なる回転体どうしの軸動力を伝達する変速機能を持つ。例えば、内歯車80が固定された場合、太陽歯車83の回転数に対し、遊星キャリヤ81の回転数は小さく、その速度比(遊星キャリヤの回転数/太陽歯車の回転数)は、次式により表される。
速度比=1/(Z3/Z1+1) (1)
【0024】
また遊星歯車機構の歯数は、以下の条件を満たさなくてはいけない。
Z3=Z1+2×Z2 (2)
(Z3+Z1)/N=整数 (3)
Z2+2<(Z1+Z2)sin(180°/N) (4)
【0025】
ここでNは遊星歯車の数である。
【0026】
式(1)と式(2)より、太陽歯車83に対して遊星キャリヤ81は半分より小さい回転数で回転することがわかる。
【0027】
一方、遊星キャリヤ81が固定された場合、太陽歯車83の回転数に対し、内歯車80の回転数は小さく、その速度比(内歯の回転数/太陽歯車の回転数)は、次式により表される。
速度比=−Z1/Z3 (5)
【0028】
ここで速度比にマイナスがつくのは、太陽歯車83と内歯車80の回転方向が逆になることを意味する。
【0029】
図1に戻り、タービン段落部への遊星歯車機構の設置例を説明する。図1のタービンロータ10の最終段動翼部の外周側には、タービンロータ10に遊星歯車機構の太陽歯車の機能を持たせるための外歯1を焼きばめ等により設置する。最終段落の静翼13の内周側ダイアフラム14の内周端には、遊星歯車機構の内歯車の機能を持たせるため内歯5を設け、軸方向下流側から上流側に挿入する。最終段落の動翼12は、動翼ダイアフラム20の外周側に設けられる。動翼ダイアフラム20は、遊星歯車機構の遊星キャリヤの機能を持たせるため上流側端面に遊星歯車3を複数設ける。動翼ダイアフラム20を軸方向下流側から挿入し、遊星歯車3と外歯1、内歯5とをかみ合わせた後、動翼ダイアフラム20下流側に位置するタービンロータ10に遊星歯車機構の太陽歯車の機能を持たせるための外歯2を焼きばめ等により設置する。また、動翼ダイアフラム20の下流側端面に遊星歯車4を周方向に複数設ける。内周端に遊星歯車機構の内歯車の機能を持たせるための内歯6を設けたダイアフラム19を軸方向下流側から挿入する。ダイアフラム19は、外ケーシング16に固設された円筒状カバー15に溶接などで固設される。
【0030】
動翼12の回転方向は、タービンロータ10の回転方向と同じで、回転数は小さい。流体により回転力を受けた動翼12は、遊星キャリヤとしての動翼ダイアフラム20を回転させ、その回転力は動翼ダイアフラム20の軸方向両端に複数設けられた遊星歯車3によって、タービンロータ10に固設された外歯1、外歯2を介して、タービンロータ10に伝達される。このとき、径の大きい遊星キャリヤの回転数が、外歯径の小さいタービンロータ10の回転数よりも小さく、その比は内歯車と太陽歯車の歯数比により、式(1)を使って決めることができる。
【0031】
遊星歯車部に蒸気が流入するのを防止するためのシール構造70が、タービンロータ10と最終段落の静翼13の内周側ダイアフラム14の上流側面との間に設けられている。同じく遊星歯車部に蒸気が流入するのを防止するためのシール構造71が、動翼ダイアフラム20の上流側面と最終段静翼13の内周側ダイアフラム14の下流側面との間に設けられている。同じく遊星歯車部に蒸気が流入するのを防止するためのシール構造72が、動翼ダイアフラム20の下流側面とダイアフラム19の上流側面との間に設けられている。
【0032】
最終段落の動翼12、動翼ダイアフラム20には、軸方向下流側向きのスラスト力が作用する。そのスラスト力を受けるためのスラストベアリング75を、遊星歯車4の下流端と、ダイアフラム19に固設された支持円板74との間に設ける。また、遊星歯車機構の歯車に、はすば歯車(ヘリカルギア)を用いると、歯車部でスラスト力を受けることができる。このことを、図15を用いて説明する。最終段落の動翼12の動翼ダイアフラム20にはスラスト力100が作用している。太陽歯車(外歯1、外歯2)に、図15に示すように左上から右下に下がる方向に傾く歯を持つはすば歯車を用いる。遊星歯車3と4には、図15に示すように左下から右上に上がる方向に傾く歯を持つはすば歯車を用いる。内歯車(内歯5、内歯6)に、図15に示すように左上から右下に下がる方向に傾く歯を持つはすば歯車を用いる。太陽歯車(外歯1)の回転方向を矢印111の方向、太陽歯車(外歯2)の回転方向を矢印114の方向とすると、遊星歯車3の自転方向は矢印112の方向、遊星歯車4の自転方向は矢印115の方向、内歯車(内歯5)の回転方向は矢印113の方向、内歯車(内歯6)の回転方向は矢印116の方向になる。この場合、被駆動側である太陽歯車、すなわちタービンロータ10には上流から下流に向かう矢印101と104方向のスラスト力が発生する。このスラスト力は、タービンロータ10に設けられているスラスト軸受けで支えられる。駆動側である遊星歯車3と4、すなわち遊星キャリヤの機能を持つ動翼ダイアフラム20には下流から上流に向かう矢印102と105方向のスラスト力が発生する。このスラスト力は、動翼ダイアフラム20にかかるスラスト力100と逆方向となり、スラスト力100を支える。内歯車、最終段静翼の内周側ダイアフラム14とダイアフラム19には上流から下流に向かう矢印103と106方向のスラスト力が発生する。静止部にかかるこれらのスラスト力は、静止部が支える。以上のように、最終段動翼にかかるスラスト力100は、スラストベアリング75もしくははすば歯車、もしくはその両方を併用することにより支えることができる。加えて、はすば歯車は、同じ大きさの平歯車に比べて強度が大きく、高速回転での使用に適しているため、大型蒸気タービンに本発明を適用するときには、有利になる。
【0033】
図13の機構図を用いて、本実施例の動力の伝達機構を再度説明する。
【0034】
図7に示すように、通常蒸気タービンのタービン段落60により発生した回転エネルギーは、回転数を変えることなく駆動軸61を介して発電機や圧縮機などの被駆動体62に伝達される。一方、本実施例では、図13に示すように、最終段を除くタービン段落60により発生した回転エネルギーは、駆動軸61を介して回転数を変えることなく被駆動体62に伝達されるが、最終段落63により発生した回転エネルギーは、静翼内周側ダイアフラムに固設された内歯69と、駆動軸61の外周側に固設された外歯67(太陽歯車)の間を回転する遊星歯車68を介して、また、ケーシングに固設された内歯169と、駆動軸61の外周側に固設された外歯167(太陽歯車)の間を回転する遊星歯車168を介して、駆動軸61に伝達される。このとき最終段落63の回転数は、駆動軸61の回転数より小さい。従って、下流側段落である最終段落の動翼の回転数を、上流側段落の動翼の回転数より小さくできる。
【0035】
遊星歯車部に蒸気が流入するのを防止するためのシール構造70が、タービンロータ10と最終段落の静翼13の内周側ダイアフラム14の内周端面との間に設けられている。同じく遊星歯車部に蒸気が流入するのを防止するためのシール構造71が、タービンロータ10とダイアフラム19の内周端面との間に設けられている。
【0036】
遊星歯車機構に用いられる潤滑油は、周方向に複数設置された最終段の静翼13の1本か2本を中空にし、給油管を通し、静翼の内周側ダイアフラム14を通して、内歯(内歯車)5に供給する。また、ダイアフラム19を通し内歯(内歯車)6に供給する。
【0037】
本実施例の作用効果について説明する。
【0038】
動翼の回転速度は、半径と回転数の積で与えられる。従って、環帯面積を大きくするために、流路部の半径を大きくすると動翼の回転速度も上昇する。しかし、径を大きくした分、回転数を小さくすれば、翼の回転速度自体は大きくならない。本実施例によれば、タービン段落部に設けられた遊星歯車機構からなる変速機構により、タービンロータの回転数に対して、最終段動翼の回転数を小さく変速できる。言い換えれば、下流側段落の動翼の回転数を、上流側段落の動翼の回転数に対して小さくできる。そのため、環帯面積を大きくしても、動翼の回転数の増加を抑え、動翼の回転速度の増加を抑制できる。
【0039】
本実施例によれば、動翼の回転速度の増加を抑制できるため、遠心力を低減し、回転する翼に作用する応力とロータに作用する応力を小さくできる。
【0040】
また、動翼先端部の周速を小さくできる。静翼流出速度ベクトルと動翼先端の周速ベクトル、動翼相対流入速度ベクトルからなる翼の速度三角形において、動翼先端の周速を小さくできるので、動翼に対する相対流入速度が超音速となることを抑制できる。
【0041】
エロージョン量は、動翼先端周速の約三乗に比例して増加すると言われているが、動翼先端周速を抑制できるため、エロージョン量も低減できる。タービン段落の負荷は、動翼周速の二乗に比例する。最終段の回転数を小さくして、周速を小さくできると、最終段の負荷は小さくできる。そのため最終段段落入口と段落出口の蒸気の容積差が小さくなるため、子午面での流路拡大を小さくできる。外周側の拡大流路部における剥離は、長翼化した場合に子午面での流路拡大が大きくなるために起きるが、本発明によれば、子午面での流路拡大を大きくすることなく長翼化が可能で、外周側の拡大流路部における剥離を抑止することができる。
【0042】
従って、本実施例によれば、タービンロータの回転数に対して、最終段動翼の回転数を小さく変速できるので、動翼とロータに作用する応力が大きくなることなく、動翼先端側で流入速度が超音速になることなく、外周側の拡大流路部ではく離が起きることなく、動翼先端側の水滴によるエロージョン量が大きくなることなしに、効率向上、出力増大、タービンサイズを小さくすることができる。
【実施例2】
【0043】
次に、本発明の第2の実施例を、図6と図14を用いて説明する。
【0044】
図6は、蒸気タービンの低圧タービン段落部の要部構造を表す子午面断面図である。タービンロータ10の最終段動翼部の外周側には、タービンロータ10に遊星歯車機構の太陽歯車の機能を持たせるための外歯1を焼きばめ等により設置する。最終段落の静翼13の内周側ダイアフラム14と、外ケーシング16に固設された円筒状カバー15に溶接などで固設されたダイアフラム19は、遊星歯車機構の遊星キャリヤの機能を持たせるため、遊星歯車3に対し両側から接続する。遊星歯車3は、周方向に複数設置されており、それぞれが、内周側ダイアフラム14とダイアフラム19とに支持されている。最終段落の動翼12は、動翼ダイアフラム20の外周側に設けられ、動翼ダイアフラム20の内周端には、遊星歯車機構の内歯車の機能を持たせるための内歯5を設ける。この場合、遊星キャリヤが静止するため、動翼12は、タービンロータ10とは逆方向に回転する。
【0045】
図14の機構図を用いて、本実施例の動力の伝達機構を説明する。最終段を除くタービン段落60により発生した回転エネルギーは、駆動軸61を介して回転数を変えることなく被駆動体62に伝達されるが、最終段落63により発生した回転エネルギーは、動翼ダイアフラムに固設された内歯69と、駆動軸61の外周側に固設された外歯67の間を回転する遊星歯車68を介して、駆動軸61に伝達される。このとき最終段落63の回転数は、駆動軸の回転数より小さく、その速度比は歯車の歯数比により、式(5)を用いて決めることができる。
【0046】
最終段の動翼12にかかるスラスト力は、はずば歯車(ヘリカルギア)を用いることにより支える。その構造について、図16を用いて説明する。最終段の動翼12の動翼ダイアフラム20にはスラスト力100が作用している。太陽歯車(外歯1)に、図16に示すように左上から右下に下がる方向に傾く歯を持つはすば歯車を用いる。遊星歯車3には、図16に示すように左下から右上に上がる方向に傾く歯を持つはすば歯車を用いる。内歯車(内歯5)に、図16に示すように左上から右下に下がる方向に傾く歯を持つはすば歯車を用いる。太陽歯車(外歯1)の回転方向を矢印111の方向とすると、遊星歯車3の自転方向は矢印112の方向、内歯車(内歯5)の回転方向は矢印113の方向になる。この場合、駆動側の内歯車(内歯5)には、下流から上流に向かう矢印103方向のスラスト力が発生する。このスラスト力103は、動翼ダイアフラム20にかかるスラスト力100と逆方向となり、スラスト力100を支える。
【0047】
本実施例においても、実施例1と同様に遊星歯車機構により、タービンロータの回転数に対して、最終段動翼の回転数を小さく変速できる。そのため、環帯面積を大きくしても、動翼の回転数の増加を抑え、回転速度の増加を抑制できる。その結果、本実施例によれば動翼とロータに作用する応力が大きくなることなく、動翼先端側で流入速度が超音速になることなく、外周側の拡大流路部ではく離が起きることなく、動翼先端側の水滴によるエロージョン量が大きくなることなしに、効率向上、出力増大、タービンサイズを小さくすることができる。
【実施例3】
【0048】
次に、本発明の第3の実施例を、図4、図8、図9と図12を用いて説明する。
【0049】
本実施例は、図8の機構図に示すように、上流側のタービン段落60で発生した回転エネルギーは駆動軸61に伝達され、減速機64を介して小さい回転数で別の駆動軸65に伝達される。下流側のタービン段落63で発生した回転エネルギーは直接駆動軸65に伝達される。被駆動体62は、下流側の駆動軸65に連結されており、下流側のタービン段落63と同じ回転数で回転する。なお、図9の機構図に示すように、被駆動体62は、上流側の駆動軸61に連結してもよい。即ち、上流側のタービン段落60で発生した回転エネルギーは駆動軸61に伝達され、減速機64を介して小さい回転数で別の駆動軸65に伝達される。下流側のタービン段落63で発生した回転エネルギーは駆動軸65に伝達される。被駆動体62は、上流側の駆動軸61に連結されており、上流側のタービン段落60と同じ回転数で回転するようにしてもよい。図8、図9に示した実施例の場合、タービンロータを上流側と下流側に分け、駆動軸は2本有り、減速機64はその間に一カ所だけ設ければよい。
【0050】
減速機構を遊星歯車機構とし、下流側段落を蒸気タービン最終段とした場合の、要部構造を表す子午面断面図が図4である。図4に示すように、本実施例では、蒸気タービンの低圧タービン段落部の、上流段駆動軸30と下流側駆動軸40が、太陽歯車1と遊星歯車3により連結されている。上流段駆動軸30の下流端には太陽歯車を構成する外歯1が設けられている。最終段の動翼12により駆動される下流側駆動軸40の上流端には周方向に複数の遊星歯車3が設けられ、下流側駆動軸40が遊星歯車3の遊星キャリヤの機能を持つ。最終段の静翼13の内周側ダイアフラム14の内周端には内歯車を構成する内歯5が設けられている。そのため、上流側駆動軸30の回転数に対し、最終段落の動翼12の回転数は小さくなる。上流段駆動軸30と最終段の動翼12の回転方向は同じとなる。
【0051】
図12の機構図を用いて、動力の伝達機構を説明する。最終段を除くタービン段落60により発生した回転エネルギーは、駆動軸61を介して太陽歯車を構成する外歯67に伝達される。外歯67の回転は、遊星歯車68を回転させるが、内歯車を構成する内歯69が固定されているため、遊星キャリヤの機能を持つ最終段落63を、上流側のタービン段落60よりも小さい回転数で回転させる。以上のように上流側のタービン段落60で発生された駆動力は、最終段落63による駆動力と合わさり、駆動軸161を介して被駆動体62に伝達される。
【0052】
太陽歯車(外歯1)と下流側駆動軸40との間には、スラスト力を伝達するためのスラストベアリング76を設ける。スラスト力は、遊星歯車機構の歯車に、はすば歯車を用いることによっても伝達することが可能である。
【0053】
本実施例においても、実施例1と同様に遊星歯車機構により、下流側段落の動翼の回転数を、上流側段落の動翼の回転数に対して小さくできる。そのため、最終段落の環帯面積を大きくしても、動翼の回転数の増加を抑え、回転速度の増加を抑制できる。その結果、本実施例によれば動翼とロータに作用する応力が大きくなることなく、動翼先端側で流入速度が超音速になることなく、外周側の拡大流路部ではく離が起きることなく、動翼先端側の水滴によるエロージョン量が大きくなることなしに、効率向上、出力増大、タービンサイズを小さくすることができる。
【実施例4】
【0054】
次に、本発明の第4の実施例を、図5、図10、図11を用いて説明する。
【0055】
本実施例は、図10に示すように低速で回転させる最終段落63の上流側に減速機64を、下流側にも変速機66を設けることで、最終段落63の回転数を、上流側のタービン段落60や、被駆動体62の回転数と完全に独立とすることのできる構成である。この場合、駆動軸は61、65、161の3本となる。この構成を用いれば、中央から蒸気が流入し両側分かれるダブルフロー型の低圧タービンや、その低圧タービンが複数つながる4フローや6フロータイプの低圧タービンの最終段においても本発明を適用することが可能となる。
【0056】
変速機構を遊星歯車機構とし、下流部を蒸気タービン最終段とした場合の、要部構造を表す子午面断面図が図5である。図5に示すように、本実施形態では、蒸気タービンの低圧タービン段落部の、上流段駆動軸53と最終段軸54が遊星歯車機構により、また最終段軸54とその下流の駆動軸55も遊星歯車機構により連結されている。上流段駆動軸53の下流端には太陽歯車を構成する外歯1が設けられている。最終段動翼により駆動される最終段軸54の上流端には周方向に複数の遊星歯車3が設けられ、最終段軸54が遊星歯車3の遊星キャリヤの機能を持つ。最終段の静翼13の内周側ダイアフラム14の内周端には内歯車を構成する内歯5が設けられている。そのため、上流側駆動軸53の回転数に対し、最終段動翼の回転数は小さくなる。また、下流側の駆動軸55の上流端にも太陽歯車を構成する外歯2が設けられている。最終段動翼により駆動される最終段軸54の下流端には周方向に複数の遊星歯車4が設けられ、最終段軸54が遊星歯車4の遊星キャリヤの機能を持つ。外ケーシング16に固設された円筒状カバー15に溶接などで固設されたダイアフラム19の内周端には内歯車を構成する内歯6が設けられている。そのため、最終段の動翼12の回転数に対し、下流側の駆動軸55の回転数は大きくなる。3本の駆動軸53、54、55の回転方向はすべて同じである。駆動軸の回転数の比は歯車の半径と歯数により決めることができる。遊星歯車部に蒸気が流入するのを防止するためのシール構造70が、上流側駆動軸53と最終段静翼13の内周側ダイアフラム14の上流側面との間に設けられている。同じく遊星歯車部に蒸気が流入するのを防止するためのシール構造71が、最終段軸54の上流側面と最終段の静翼13の内周側ダイアフラム14の下流側面との間に設けられている。同じく遊星歯車部に蒸気が流入するのを防止するためのシール構造72が、最終段軸54の下流側面とダイアフラム19の上流側面との間に設けられている。同じく遊星歯車部に蒸気が流入するのを防止するためのシール構造73が、駆動軸55の上流側面とダイアフラム19の下流側面との間に設けられている。
【0057】
太陽歯車(外歯1)と最終段軸54との間には、また太陽歯車(外歯2)と最終段軸54との間には、スラスト力を伝達するためのスラストベアリング75とスラストベアリング76をそれぞれ設ける。スラスト力は、遊星歯車機構の歯車に、はすば歯車を用いることによっても伝達することもできる。
【0058】
図11の機構図を用いて、本実施例の動力の伝達機構を説明する。最終段除くタービン段落60により発生した回転エネルギーは、駆動軸61を介して太陽歯車(外歯67)に伝達される。太陽歯車(外歯67)の回転は、遊星歯車68を回転させるが、内歯車(内歯69)が固定されているため、遊星キャリヤの機能を持つ最終段落63は、上流側のタービン段落60よりも小さい回転数で回転する。下流側遊星歯車機構の遊星キャリヤの機能も持つ最終段落63の回転は、遊星歯車168を回転させ、内歯車169が固定されているため、太陽歯車167を、最終段落63より大きな回転数で回転させる。以上のようにタービン段落60で発生された駆動力は、最終段落63による駆動力と合わさり、駆動軸161を介して被駆動体62に伝達される。
【0059】
本実施例においても、実施例1と同様に遊星歯車機構により、下流側段落の動翼の回転数を、上流側段落の動翼の回転数に対して小さくできる。そのため、最終段落の環帯面積を大きくしても、動翼の回転数の増加を抑え、回転速度の増加を抑制できる。その結果、本実施例によれば動翼とロータに作用する応力が大きくなることなく、動翼先端側で流入速度が超音速になることなく、外周側の拡大流路部ではく離が起きることなく、動翼先端側の水滴によるエロージョン量が大きくなることなしに、効率向上、出力増大、タービンサイズを小さくすることができる。
【0060】
以上説明した各実施例は、下流段として最終段のみをとった例を説明したが、下流段として最終段からの複数段をとった場合においても、同じ効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
10 タービンロータ
12、22、32、42 動翼
13、23、33、43 静翼
11、25、35、45 外周側ダイアフラム
14、26、36、46 内周側ダイアフラム
19 ダイアフラム
20 動翼ダイアフラム
60 タービン段落
61 駆動軸
62 被駆動体
64 減速機
66 変速機
80 内歯車
81 遊星キャリヤ
82 遊星歯車
83 太陽歯車
90 タービン中心軸
91 作動流体流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静翼と動翼とからなるタービン段落を作動流体の流れ方向に複数有する蒸気タービンにおいて、
作動流体の流れ方向下流側に設けられた下流側段落の動翼の回転数を、作動流体の流れ方向上流側に設けられた上流側段落の動翼の回転数に対して小さくする変速機構を有することを特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気タービンにおいて、
前記蒸気タービンによって駆動される被駆動体が、前記下流側段落の前記動翼の回転数と同じ回転数で回転されることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項3】
請求項1に記載の蒸気タービンにおいて、
蒸気タービンによって駆動される被駆動体が、前記上流側段落の上流側の軸端に設置されており、前記上流側段落に設けられた動翼と同じ回転数で回転することを特徴とする蒸気タービン。
【請求項4】
請求項1に記載の蒸気タービンにおいて、
前記変速機構は前記上流側段落と前記下流側段落との間に設けられ、前記下流側段落の下流側にタービンロータの回転数を再び大きくするための第2の変速機構を有し、蒸気タービンによって駆動される被駆動体が、前記第2の変速機構に接続していることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項5】
請求項2または3に記載の蒸気タービンにおいて、
前記変速機構は、太陽歯車と、内周側に内歯を有し、前記太陽歯車の外周側に設けられた内歯車と、前記太陽歯車と前記内歯車との間で回転する遊星歯車とを備え、前記太陽歯車と前記内歯車がタービンロータと同心となるように配置された遊星歯車機構であり、前記上流側段落が前記太陽歯車に接続され、前記下流側段落が前記遊星歯車を互いに連結する遊星キャリヤを構成し、もしくは遊星キャリヤと接続し、前記内歯車が蒸気タービンの静止体に固定されることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項6】
請求項4の蒸気タービンにおいて、
前記上流側段落と前記下流側段落との間に設置された変速機構は、太陽歯車と、内周側に内歯を有し、前記太陽歯車の外周側に設けられた内歯車と、前記太陽歯車と前記内歯車との間で回転する遊星歯車とを備え、前記太陽歯車と前記内歯車がタービンロータと同心となるように配置された遊星歯車機構であり、前記上流側段落が前記太陽歯車に接続され、前記下流側段落が前記遊星歯車を互いに連結する遊星キャリヤを構成し、前記内歯車が蒸気タービンの静止体に固定され、
前記第2の変速機構は、太陽歯車と、内周側に内歯を有し、前記太陽歯車の外周側に設けられた内歯車と、前記太陽歯車と前記内歯車との間で回転する遊星歯車とを備え、前記太陽歯車と前記内歯車がタービンロータと同心となるように配置された遊星歯車機構であり、前記下流側段落が前記遊星歯車を互いに連結する遊星キャリヤを構成し、前記内歯車が前記蒸気タービンの静止体に設置され、前記被駆動体の回転軸が前記太陽歯車に接続されることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の蒸気タービンであって、
前記遊星歯車機構の歯車は、はすば歯車であることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項8】
ケーシングに固設された静翼とタービンロータに固定された動翼とからなるタービン段落を複数有する蒸気タービンにおいて、一部の段落の動翼の回転数を、前記タービンロータの回転数より小さくするための変速機構を有することを特徴とする蒸気タービン。
【請求項9】
請求項8の蒸気タービンであって、
前記変速機構は、中心に位置する太陽歯車と、内周側に内歯を有し、前記太陽歯車の外周側に設けられた内歯車と、前記太陽歯車と前記内歯車との間で回転する遊星歯車とを備えた遊星歯車機構であり、前記太陽歯車は前記タービンロータの外周面に外歯を設けてなり、前記動翼を固定する内周側ダイアフラムが前記遊星歯車を互いに連結する遊星キャリヤとなり、もしくは遊星キャリヤに接続され、前記内歯車が蒸気タービンの静止体に設置される構造を特徴とする蒸気タービン。
【請求項10】
請求項8の蒸気タービンであって、
前記変速機構は、軸心が蒸気タービンの回転軸上に位置する太陽歯車と、内周側に内歯を有し、前記太陽歯車の外周側に設けられた内歯車と、前記太陽歯車と前記内歯車との間で回転する遊星歯車とを備えた遊星歯車機構であり、前記太陽歯車は、前記タービンロータの外周面に外歯を設けてなり、前記内歯車は、前記動翼を固定する内周側ダイアフラムに内歯を設けてなり、前記遊星歯車を蒸気タービンの静止体に接続することを特徴とする蒸気タービン。
【請求項11】
請求項9または請求項10記載の蒸気タービンであって、
前記タービンロータより動翼の回転数が低い段落は、低圧タービンの最終段落であることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項12】
請求項11に記載の蒸気タービンであって、
前記遊星歯車機構の歯車は、はすば歯車であることを特徴とする蒸気タービン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−32748(P2013−32748A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169738(P2011−169738)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)