蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力プラント
【課題】本発明の目的は、気液分離性能を維持しつつ、圧力損失を低減させた蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力発電プラントを提供することにある。
【解決手段】本発明は、複数の蒸気乾燥器バンクを隔離壁の半径方向中心側及び外周側に分けた時、中心側の領域に設置された蒸気乾燥器バンクは、外周側に設置された蒸気乾燥器バンクに比べて圧力損失を低下させる構造にすることを特徴とする。
【効果】本発明によれば、気液分離性能を維持しつつ、圧力損失を低減させた蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力発電プラントを提供することが可能である。
【解決手段】本発明は、複数の蒸気乾燥器バンクを隔離壁の半径方向中心側及び外周側に分けた時、中心側の領域に設置された蒸気乾燥器バンクは、外周側に設置された蒸気乾燥器バンクに比べて圧力損失を低下させる構造にすることを特徴とする。
【効果】本発明によれば、気液分離性能を維持しつつ、圧力損失を低減させた蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力発電プラントを提供することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力プラントには、蒸気タービンの健全性を維持するために、気水分離器と蒸気乾燥器とで構成される気水分離システムが設置されている。気水分離器は原子炉の加熱で発生した蒸気を冷却水から分離し、蒸気乾燥器は分離された蒸気からさらに液滴を除去する。蒸気乾燥器によって液滴量が一定値以下に調整された蒸気が、蒸気タービンに供給される。
【0003】
このような気水分離システムが設置された沸騰水型原子力プラントの一例を図10に示す。図10は改良型沸騰水型原子炉の縦断面図であり、原子炉圧力容器1内部のシュラウド3内に炉心2が設置されている。炉心2では蒸気が発生し、その蒸気は冷却水と混合状態で上部プレナム8を経由し、シュラウドヘッド4に多数設置された気水分離器12に流入し、ここで液滴を含む蒸気から冷却水の99%が分離される。さらにこの蒸気は、蒸気乾燥器50で0.1%以下まで液滴が除去される。この蒸気乾燥器50は、後述する蒸気乾燥器バンク13及び隔離壁51により構成される。蒸気は、主蒸気管9を経由して蒸気タービンに供給された後、蒸気タービンを回転させる。
【0004】
次に蒸気乾燥器の構造を説明する。図2は蒸気乾燥器の上面図である。蒸気乾燥器は、複数の蒸気乾燥器バンク13により構成される。図3は蒸気乾燥器に組み込まれた蒸気乾燥器バンクの一部断面表示の斜面図である。気水分離器において冷却水から分離された蒸気は、蒸気乾燥器バンク13のフードプレート14の内側に入り、流れの向きを上向きから水平向きに変えて多孔板15の孔内を通過する。その後、波板16により形成される蒸気乾燥器流路を通過する。この蒸気乾燥器流路は、液滴捕獲部に相当する。このとき、運動量が大きい液滴は、波板16の壁に衝突し、液膜を形成してドレン17を経由してドレンダクト18に排水される。
【0005】
ところで、原子炉の熱出力が高い場合は、炉心2で発生する蒸気流量が多くなる。蒸気流量が多いと、気水分離器12や蒸気乾燥器50内を通過する蒸気の流速が増加する。そのため、これらの機器で発生する圧力損失が高くなる。圧力損失が大きい場合、蒸気を循環させるために必要な動力が高くなり、経済性が低下する。そのため、気水分離器12や蒸気乾燥器50は圧力損失をできるだけ小さくすることが望まれていた。
【0006】
圧力損失を低下させる方策として、特許文献1ではスタンドパイプ径を太くすることで気水分離器12の圧力損失を低下する方法が開示されている。また、特許文献2ではピックオフリングの流路面積よりもそのすぐ下流側の気水分離胴の流路面積を小さくした気水分離器が開示されている。特許文献3では、燃料集合体下流側の気液二相流の蒸気の重量比(クオリティ)が径方向について分布があることに着目し、中心部と周辺部の気水分離器の構造を変えることで、気水分離器の最適化設計を行い、圧力損失を下げる方法が開示されている。一方、蒸気乾燥器については、波板により形成される流路が下流側ほど広くすることにより、蒸気流速増大時に伴う液滴の再飛散を抑制できる方法が特許文献4で開示されている。しかしながら、蒸気乾燥器の圧力損失を下げる方法はこれまで開示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−14458号公報
【特許文献2】特開平6−273571号公報
【特許文献3】特開平10−197678号公報
【特許文献4】特開2004−205302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
気水分離器の下流側においても、径方向について蒸気のクオリティに分布がある。これに対し従来の蒸気乾燥器は、形状が等しい蒸気乾燥器バンクが用いられてきた。この場合、中心部のクオリティが高い蒸気に対しては十分気液を分離できるが、圧力損失が大きくなるため、蒸気乾燥器50全体としても圧力損失が大きくなった。また、従来は気水分離器12と蒸気乾燥器50の間に空間を設けることで、クオリティの高い中心部の蒸気とクオリティが低い周辺部の蒸気を混合させていた。しかし、気液分離器で圧力損失をかけて一度クオリティを上げた蒸気が、前記空間でクオリティを下げることになるため、圧力損失が余分に発生していた。
【0009】
本発明の目的は、気液分離性能を維持しつつ、圧力損失を低減させた蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力発電プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の蒸気乾燥器バンクを隔離壁の半径方向中心側及び外周側に分けた時、中心側の領域に設置された蒸気乾燥器バンクは、外周側に設置された蒸気乾燥バンクに比べて圧力損失を低下させる構造にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、気液分離性能を維持しつつ、圧力損失を低減させた蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力発電プラントを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の蒸気乾燥器の上面図である。
【図2】蒸気乾燥器の上面図である。
【図3】蒸気乾燥器に組み込まれた蒸気乾燥器バンクの一部断面表示の斜面図である。
【図4】実施例1の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13A,13Bの斜面図である。
【図5】実施例2の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13C,13Dの斜面図である。
【図6】実施例3の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13E,13Fの斜面図である。
【図7】実施例4の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13G,13Hの斜面図である。
【図8】実施例5の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13J,13Kの斜面図である。
【図9】実施例6の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13L,13Mの斜面図である。
【図10】改良型沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の好適な一実施例である実施例1の蒸気乾燥器の上面図である。本実施例では2種類の蒸気乾燥器バンク13A,13Bにより構成される。これらの蒸気乾燥器バンクは、隔離壁51の上面に設置される。図4は、蒸気乾燥器バンク13A,13Bの波板の部分を取り出した斜視図である。蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Aを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Bを設置する。蒸気乾燥器バンク13Aの波板の間隔20Aは蒸気乾燥器バンク13Bの波板の間隔20Bよりも大きい。波板の間隔を除けば、蒸気乾燥器バンク13A,13Bの形状、例えば開口部の長さ21,波板の流れ方向の長さ22,波板の角(ピッチ)の角度23,ピッチの数,多孔板15は蒸気乾燥器バンク13A,14Bで同じである。
【0015】
蒸気乾燥器バンク13A,13Bは、蒸気乾燥器の入口面積が同じであるが、波板の間隔が異なる分だけ波板の数も異なる。すなわち蒸気乾燥器バンク13Aの波板の数は、蒸気乾燥器バンク13Bの波板の数よりも少ない。これに伴い、液滴を捕獲するドレンの数も蒸気乾燥器バンク13Aの方が少ない。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、流路断面積が大きいほうが蒸気の流速が低くなるため、圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13A,13Bでは、ドレンの数が少ない分、蒸気乾燥器バンク13Aの流路断面積が大きくなるため、圧力損失が低くなる。
【0016】
蒸気乾燥器バンク13Aは蒸気乾燥器バンク13Bよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Aが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Aでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Bにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Bにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0017】
このように、複数の蒸気乾燥器バンクを隔離壁の半径方向中心側及び外周側に分けた時、中心側の領域に設置された蒸気乾燥器バンクは、外周側に設置された蒸気乾燥器バンクに比べて圧力損失を低下させる構造にすることで、気液分離性能を維持しつつ、圧力損失を低減させた蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力発電プラントを提供することが可能である。上記に示した本実施例により、蒸気乾燥器50の気液分離性能を維持しつつ圧力損失を下げることができることから、蒸気を循環させるために必要な動力を低くすることでき、経済性を向上させることができる。
【0018】
また、本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔は、全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くしている。この間隔空間においてクオリティの異なる蒸気の混合を抑制させ、蒸気乾燥器に流入する蒸気のクオリティの分布を大きくしたうえで、クオリティが高い部分の蒸気乾燥器流路の圧力損失を下げることができる。これにより、原子炉圧力容器を小型化することができるため、建設コストを削減できる。
【0019】
さらに、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、上記に示した蒸気乾燥器の小型化により生じた空間分だけ燃料集合体の長さを長くすることができる。これにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【実施例2】
【0020】
図5は実施例2の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13C,13Dの波板の部分を取り出した斜面図である。蒸気乾燥器バンク13C,13Dのレイアウトは、図1の蒸気乾燥器バンク13A,13Bをそれぞれ蒸気乾燥器バンク13C,13Dと置き換えたものである。すなわち、蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Cを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Dを設置する。蒸気乾燥器バンク13Cの波板の開口部の長さ21Cは蒸気乾燥器バンク13Dの波板の開口部の長さ21Dよりも大きい。波板の開口部の長さを除けば、波板の間隔20,蒸気乾燥器バンク13C,13Dの形状、例えば波板の流れ方向の長さ22,波板の角(ピッチ)の角度23,ピッチの数,多孔板15は蒸気乾燥器バンク13C,13Dで同じである。
【0021】
蒸気乾燥器バンク13C,13Dは、蒸気乾燥器の入口面積が異なる。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、流路断面積が大きいほうが蒸気の流速が低くなるため、圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13C,13Dでは、蒸気乾燥器バンク13Cの流路断面積が大きくなるため、圧力損失が低くなる。
【0022】
蒸気乾燥器バンク13Cは蒸気乾燥器バンク13Dよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Cが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Cでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Dにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Dにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0023】
本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔を全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くした場合は、実施例1と同様に原子炉圧力容器の小型化による建設コストを削減できる。また、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、燃料集合体の長さを長くすることにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【実施例3】
【0024】
図6は実施例3の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13E,13Fの波板の部分を取り出した斜面図である。蒸気乾燥器バンク13E,13Fのレイアウトは、図1の蒸気乾燥器バンク13A,13Bをそれぞれ蒸気乾燥器バンク13E,13Fと置き換えたものである。すなわち、蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Eを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Fを設置する。蒸気乾燥器バンク13Eの波板の流れ方向の長さ22Eは、蒸気乾燥器バンク13Fの波板の流れ方向の長さ22Fよりも短い。波板の流れ方向の長さを除けば、波板の間隔20,蒸気乾燥器バンク13E,13Fの形状、例えば波板の開口部の長さ21,波板の角(ピッチ)の角度23,多孔板15は蒸気乾燥器バンク13E,13Fで同じである。
【0025】
蒸気乾燥器バンク13E,13Fは、波板の長さが異なる。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、波板の長さが短いときほど圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13E,13Fでは、蒸気乾燥器バンク13Eの波板が短いため、圧力損失が低くなる。
【0026】
蒸気乾燥器バンク13Eは蒸気乾燥器バンク13Fよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Eが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Eでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Fにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Fにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0027】
本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔を全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くした場合は、実施例1と同様に原子炉圧力容器の小型化による建設コストを削減できる。また、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、燃料集合体の長さを長くすることにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【実施例4】
【0028】
図7は実施例4の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13G,13Hの波板の部分を取り出した斜面図である。蒸気乾燥器バンク13G,13Hのレイアウトは、図1の蒸気乾燥器バンク13A,13Bをそれぞれ蒸気乾燥器バンク13G,13Hと置き換えたものである。すなわち、蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Gを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Hを設置する。蒸気乾燥器バンク13Gの波板の角(ピッチ)の角度23Gは、蒸気乾燥器バンク13Hの波板の角の角度23Hよりも大きい。波板のピッチを除けば、波板の間隔20,蒸気乾燥器バンク13G,13Hの形状、例えば波板の開口部の長さ21,波板の流れ方向の長さ22,ピッチの数,多孔板15は蒸気乾燥器バンク13G,13Hで同じである。
【0029】
蒸気乾燥器バンク13G,13Hでは、波板の間を流れる蒸気が、波板の角における流れの方向の変化量が異なる。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、流れの方向の変化量が小さいときほど圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13G,13Hでは、蒸気乾燥器バンク13Gのほうが波板の角における流れの方向の変化量が小さいため、圧力損失が低くなる。
【0030】
蒸気乾燥器バンク13Gは蒸気乾燥器バンク13Hよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Gが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Gでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Hにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Hにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0031】
本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔を全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くした場合は、実施例1と同様に原子炉圧力容器の小型化による建設コストを削減できる。また、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、燃料集合体の長さを長くすることにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【実施例5】
【0032】
図8は実施例5の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13J,13Kの波板の部分を取り出した斜面図である。蒸気乾燥器バンク13J,13Kのレイアウトは、図1の蒸気乾燥器バンク13A,13Bをそれぞれ蒸気乾燥器バンク13J,13Kと置き換えたものである。すなわち、蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Jを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Kを設置する。蒸気乾燥器バンク13Jの波板のピッチ数は、蒸気乾燥器バンク13Kのピッチ数よりも小さい。波板のピッチ数を除けば、波板の間隔20、蒸気乾燥器バンク13J,13Kの形状、例えば波板の開口部の長さ21,波板の流れ方向の長さ22,波板の角(ピッチ)の角度23,多孔板15は蒸気乾燥器バンク13J,13Kで同じである。
【0033】
蒸気乾燥器バンク13J,13Kでは、波板の間を流れる蒸気の流れる方向が変えられる回数が異なる。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、流れの方向を変えられる回数が少ないほど圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13J,13Kでは、蒸気乾燥器バンク13Jのほうが流れを変えられる回数が少ないため、圧力損失が低くなる。
【0034】
蒸気乾燥器バンク13Jは蒸気乾燥器バンク13Kよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Jが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Jでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Kにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Kにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0035】
本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔を全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くした場合は、実施例1と同様に原子炉圧力容器の小型化による建設コストを削減できる。また、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、燃料集合体の長さを長くすることにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【実施例6】
【0036】
図9は実施例6の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13L,13Mの斜面図である。蒸気乾燥器バンク13L,13Mのレイアウトは、図1の蒸気乾燥器バンク13A,13Bをそれぞれ蒸気乾燥器バンク13L,13Mと置き換えたものである。すなわち、蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Lを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Mを設置する。蒸気乾燥器バンク13Lの多孔板の開口率は、蒸気乾燥器バンク13Mの開口率よりも大きい。多孔板の開口率を除けば、蒸気乾燥器バンク13J,13Kの形状、例えば波板の間隔20,波板の開口部の長さ21,波板の流れ方向の長さ22,波板の角(ピッチ)の角度23,波板のピッチ数は蒸気乾燥器バンク13L,13Mで同じである。
【0037】
蒸気乾燥器バンク13L,13Mでは、多孔板の開口率が異なる。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、多孔板の開口率が大きいときほど圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13L,13Mでは、蒸気乾燥器バンク13Lのほうが多孔板の開口率が大きいため、圧力損失が低くなる。
【0038】
蒸気乾燥器バンク13Lは蒸気乾燥器バンク13Mよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Lが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Lでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Mにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Mにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0039】
本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔を全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くした場合は、実施例1と同様に原子炉圧力容器の小型化による建設コストを削減できる。また、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、燃料集合体の長さを長くすることにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、原子炉の気水分離器からの蒸気を取り込んで蒸気中に含まれる液滴を除去する蒸気乾燥器、および沸騰水型原子力プラントに適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 原子炉圧力容器
2 炉心
3 シュラウド
4 シュラウドヘッド
9 主蒸気管
12 気水分離器
13,13A,13B,13C,13D,13E,13F,13G,13H,13J,13K,13L,13M 蒸気乾燥器バンク
14 フードプレート
15 多孔板
16 波板
17 ドレン
18 ドレンダクト
20,20A,20B 波板の間隔
21,21C,21D 蒸気乾燥器の開口部の長さ
22,22E,22F 波板の流れ方向の長さ
23,23G,23H 波板の角(ピッチ)の角度
50 蒸気乾燥器
51 隔離壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力プラントには、蒸気タービンの健全性を維持するために、気水分離器と蒸気乾燥器とで構成される気水分離システムが設置されている。気水分離器は原子炉の加熱で発生した蒸気を冷却水から分離し、蒸気乾燥器は分離された蒸気からさらに液滴を除去する。蒸気乾燥器によって液滴量が一定値以下に調整された蒸気が、蒸気タービンに供給される。
【0003】
このような気水分離システムが設置された沸騰水型原子力プラントの一例を図10に示す。図10は改良型沸騰水型原子炉の縦断面図であり、原子炉圧力容器1内部のシュラウド3内に炉心2が設置されている。炉心2では蒸気が発生し、その蒸気は冷却水と混合状態で上部プレナム8を経由し、シュラウドヘッド4に多数設置された気水分離器12に流入し、ここで液滴を含む蒸気から冷却水の99%が分離される。さらにこの蒸気は、蒸気乾燥器50で0.1%以下まで液滴が除去される。この蒸気乾燥器50は、後述する蒸気乾燥器バンク13及び隔離壁51により構成される。蒸気は、主蒸気管9を経由して蒸気タービンに供給された後、蒸気タービンを回転させる。
【0004】
次に蒸気乾燥器の構造を説明する。図2は蒸気乾燥器の上面図である。蒸気乾燥器は、複数の蒸気乾燥器バンク13により構成される。図3は蒸気乾燥器に組み込まれた蒸気乾燥器バンクの一部断面表示の斜面図である。気水分離器において冷却水から分離された蒸気は、蒸気乾燥器バンク13のフードプレート14の内側に入り、流れの向きを上向きから水平向きに変えて多孔板15の孔内を通過する。その後、波板16により形成される蒸気乾燥器流路を通過する。この蒸気乾燥器流路は、液滴捕獲部に相当する。このとき、運動量が大きい液滴は、波板16の壁に衝突し、液膜を形成してドレン17を経由してドレンダクト18に排水される。
【0005】
ところで、原子炉の熱出力が高い場合は、炉心2で発生する蒸気流量が多くなる。蒸気流量が多いと、気水分離器12や蒸気乾燥器50内を通過する蒸気の流速が増加する。そのため、これらの機器で発生する圧力損失が高くなる。圧力損失が大きい場合、蒸気を循環させるために必要な動力が高くなり、経済性が低下する。そのため、気水分離器12や蒸気乾燥器50は圧力損失をできるだけ小さくすることが望まれていた。
【0006】
圧力損失を低下させる方策として、特許文献1ではスタンドパイプ径を太くすることで気水分離器12の圧力損失を低下する方法が開示されている。また、特許文献2ではピックオフリングの流路面積よりもそのすぐ下流側の気水分離胴の流路面積を小さくした気水分離器が開示されている。特許文献3では、燃料集合体下流側の気液二相流の蒸気の重量比(クオリティ)が径方向について分布があることに着目し、中心部と周辺部の気水分離器の構造を変えることで、気水分離器の最適化設計を行い、圧力損失を下げる方法が開示されている。一方、蒸気乾燥器については、波板により形成される流路が下流側ほど広くすることにより、蒸気流速増大時に伴う液滴の再飛散を抑制できる方法が特許文献4で開示されている。しかしながら、蒸気乾燥器の圧力損失を下げる方法はこれまで開示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−14458号公報
【特許文献2】特開平6−273571号公報
【特許文献3】特開平10−197678号公報
【特許文献4】特開2004−205302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
気水分離器の下流側においても、径方向について蒸気のクオリティに分布がある。これに対し従来の蒸気乾燥器は、形状が等しい蒸気乾燥器バンクが用いられてきた。この場合、中心部のクオリティが高い蒸気に対しては十分気液を分離できるが、圧力損失が大きくなるため、蒸気乾燥器50全体としても圧力損失が大きくなった。また、従来は気水分離器12と蒸気乾燥器50の間に空間を設けることで、クオリティの高い中心部の蒸気とクオリティが低い周辺部の蒸気を混合させていた。しかし、気液分離器で圧力損失をかけて一度クオリティを上げた蒸気が、前記空間でクオリティを下げることになるため、圧力損失が余分に発生していた。
【0009】
本発明の目的は、気液分離性能を維持しつつ、圧力損失を低減させた蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力発電プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の蒸気乾燥器バンクを隔離壁の半径方向中心側及び外周側に分けた時、中心側の領域に設置された蒸気乾燥器バンクは、外周側に設置された蒸気乾燥バンクに比べて圧力損失を低下させる構造にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、気液分離性能を維持しつつ、圧力損失を低減させた蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力発電プラントを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の蒸気乾燥器の上面図である。
【図2】蒸気乾燥器の上面図である。
【図3】蒸気乾燥器に組み込まれた蒸気乾燥器バンクの一部断面表示の斜面図である。
【図4】実施例1の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13A,13Bの斜面図である。
【図5】実施例2の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13C,13Dの斜面図である。
【図6】実施例3の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13E,13Fの斜面図である。
【図7】実施例4の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13G,13Hの斜面図である。
【図8】実施例5の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13J,13Kの斜面図である。
【図9】実施例6の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13L,13Mの斜面図である。
【図10】改良型沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の好適な一実施例である実施例1の蒸気乾燥器の上面図である。本実施例では2種類の蒸気乾燥器バンク13A,13Bにより構成される。これらの蒸気乾燥器バンクは、隔離壁51の上面に設置される。図4は、蒸気乾燥器バンク13A,13Bの波板の部分を取り出した斜視図である。蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Aを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Bを設置する。蒸気乾燥器バンク13Aの波板の間隔20Aは蒸気乾燥器バンク13Bの波板の間隔20Bよりも大きい。波板の間隔を除けば、蒸気乾燥器バンク13A,13Bの形状、例えば開口部の長さ21,波板の流れ方向の長さ22,波板の角(ピッチ)の角度23,ピッチの数,多孔板15は蒸気乾燥器バンク13A,14Bで同じである。
【0015】
蒸気乾燥器バンク13A,13Bは、蒸気乾燥器の入口面積が同じであるが、波板の間隔が異なる分だけ波板の数も異なる。すなわち蒸気乾燥器バンク13Aの波板の数は、蒸気乾燥器バンク13Bの波板の数よりも少ない。これに伴い、液滴を捕獲するドレンの数も蒸気乾燥器バンク13Aの方が少ない。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、流路断面積が大きいほうが蒸気の流速が低くなるため、圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13A,13Bでは、ドレンの数が少ない分、蒸気乾燥器バンク13Aの流路断面積が大きくなるため、圧力損失が低くなる。
【0016】
蒸気乾燥器バンク13Aは蒸気乾燥器バンク13Bよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Aが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Aでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Bにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Bにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0017】
このように、複数の蒸気乾燥器バンクを隔離壁の半径方向中心側及び外周側に分けた時、中心側の領域に設置された蒸気乾燥器バンクは、外周側に設置された蒸気乾燥器バンクに比べて圧力損失を低下させる構造にすることで、気液分離性能を維持しつつ、圧力損失を低減させた蒸気乾燥器及び沸騰水型原子力発電プラントを提供することが可能である。上記に示した本実施例により、蒸気乾燥器50の気液分離性能を維持しつつ圧力損失を下げることができることから、蒸気を循環させるために必要な動力を低くすることでき、経済性を向上させることができる。
【0018】
また、本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔は、全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くしている。この間隔空間においてクオリティの異なる蒸気の混合を抑制させ、蒸気乾燥器に流入する蒸気のクオリティの分布を大きくしたうえで、クオリティが高い部分の蒸気乾燥器流路の圧力損失を下げることができる。これにより、原子炉圧力容器を小型化することができるため、建設コストを削減できる。
【0019】
さらに、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、上記に示した蒸気乾燥器の小型化により生じた空間分だけ燃料集合体の長さを長くすることができる。これにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【実施例2】
【0020】
図5は実施例2の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13C,13Dの波板の部分を取り出した斜面図である。蒸気乾燥器バンク13C,13Dのレイアウトは、図1の蒸気乾燥器バンク13A,13Bをそれぞれ蒸気乾燥器バンク13C,13Dと置き換えたものである。すなわち、蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Cを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Dを設置する。蒸気乾燥器バンク13Cの波板の開口部の長さ21Cは蒸気乾燥器バンク13Dの波板の開口部の長さ21Dよりも大きい。波板の開口部の長さを除けば、波板の間隔20,蒸気乾燥器バンク13C,13Dの形状、例えば波板の流れ方向の長さ22,波板の角(ピッチ)の角度23,ピッチの数,多孔板15は蒸気乾燥器バンク13C,13Dで同じである。
【0021】
蒸気乾燥器バンク13C,13Dは、蒸気乾燥器の入口面積が異なる。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、流路断面積が大きいほうが蒸気の流速が低くなるため、圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13C,13Dでは、蒸気乾燥器バンク13Cの流路断面積が大きくなるため、圧力損失が低くなる。
【0022】
蒸気乾燥器バンク13Cは蒸気乾燥器バンク13Dよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Cが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Cでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Dにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Dにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0023】
本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔を全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くした場合は、実施例1と同様に原子炉圧力容器の小型化による建設コストを削減できる。また、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、燃料集合体の長さを長くすることにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【実施例3】
【0024】
図6は実施例3の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13E,13Fの波板の部分を取り出した斜面図である。蒸気乾燥器バンク13E,13Fのレイアウトは、図1の蒸気乾燥器バンク13A,13Bをそれぞれ蒸気乾燥器バンク13E,13Fと置き換えたものである。すなわち、蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Eを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Fを設置する。蒸気乾燥器バンク13Eの波板の流れ方向の長さ22Eは、蒸気乾燥器バンク13Fの波板の流れ方向の長さ22Fよりも短い。波板の流れ方向の長さを除けば、波板の間隔20,蒸気乾燥器バンク13E,13Fの形状、例えば波板の開口部の長さ21,波板の角(ピッチ)の角度23,多孔板15は蒸気乾燥器バンク13E,13Fで同じである。
【0025】
蒸気乾燥器バンク13E,13Fは、波板の長さが異なる。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、波板の長さが短いときほど圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13E,13Fでは、蒸気乾燥器バンク13Eの波板が短いため、圧力損失が低くなる。
【0026】
蒸気乾燥器バンク13Eは蒸気乾燥器バンク13Fよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Eが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Eでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Fにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Fにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0027】
本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔を全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くした場合は、実施例1と同様に原子炉圧力容器の小型化による建設コストを削減できる。また、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、燃料集合体の長さを長くすることにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【実施例4】
【0028】
図7は実施例4の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13G,13Hの波板の部分を取り出した斜面図である。蒸気乾燥器バンク13G,13Hのレイアウトは、図1の蒸気乾燥器バンク13A,13Bをそれぞれ蒸気乾燥器バンク13G,13Hと置き換えたものである。すなわち、蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Gを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Hを設置する。蒸気乾燥器バンク13Gの波板の角(ピッチ)の角度23Gは、蒸気乾燥器バンク13Hの波板の角の角度23Hよりも大きい。波板のピッチを除けば、波板の間隔20,蒸気乾燥器バンク13G,13Hの形状、例えば波板の開口部の長さ21,波板の流れ方向の長さ22,ピッチの数,多孔板15は蒸気乾燥器バンク13G,13Hで同じである。
【0029】
蒸気乾燥器バンク13G,13Hでは、波板の間を流れる蒸気が、波板の角における流れの方向の変化量が異なる。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、流れの方向の変化量が小さいときほど圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13G,13Hでは、蒸気乾燥器バンク13Gのほうが波板の角における流れの方向の変化量が小さいため、圧力損失が低くなる。
【0030】
蒸気乾燥器バンク13Gは蒸気乾燥器バンク13Hよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Gが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Gでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Hにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Hにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0031】
本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔を全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くした場合は、実施例1と同様に原子炉圧力容器の小型化による建設コストを削減できる。また、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、燃料集合体の長さを長くすることにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【実施例5】
【0032】
図8は実施例5の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13J,13Kの波板の部分を取り出した斜面図である。蒸気乾燥器バンク13J,13Kのレイアウトは、図1の蒸気乾燥器バンク13A,13Bをそれぞれ蒸気乾燥器バンク13J,13Kと置き換えたものである。すなわち、蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Jを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Kを設置する。蒸気乾燥器バンク13Jの波板のピッチ数は、蒸気乾燥器バンク13Kのピッチ数よりも小さい。波板のピッチ数を除けば、波板の間隔20、蒸気乾燥器バンク13J,13Kの形状、例えば波板の開口部の長さ21,波板の流れ方向の長さ22,波板の角(ピッチ)の角度23,多孔板15は蒸気乾燥器バンク13J,13Kで同じである。
【0033】
蒸気乾燥器バンク13J,13Kでは、波板の間を流れる蒸気の流れる方向が変えられる回数が異なる。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、流れの方向を変えられる回数が少ないほど圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13J,13Kでは、蒸気乾燥器バンク13Jのほうが流れを変えられる回数が少ないため、圧力損失が低くなる。
【0034】
蒸気乾燥器バンク13Jは蒸気乾燥器バンク13Kよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Jが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Jでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Kにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Kにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0035】
本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔を全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くした場合は、実施例1と同様に原子炉圧力容器の小型化による建設コストを削減できる。また、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、燃料集合体の長さを長くすることにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【実施例6】
【0036】
図9は実施例6の蒸気乾燥器の蒸気乾燥器バンク13L,13Mの斜面図である。蒸気乾燥器バンク13L,13Mのレイアウトは、図1の蒸気乾燥器バンク13A,13Bをそれぞれ蒸気乾燥器バンク13L,13Mと置き換えたものである。すなわち、蒸気のクオリティが高い中心部には蒸気乾燥器バンク13Lを設置し、蒸気のクオリティが低い周辺部には蒸気乾燥器バンク13Mを設置する。蒸気乾燥器バンク13Lの多孔板の開口率は、蒸気乾燥器バンク13Mの開口率よりも大きい。多孔板の開口率を除けば、蒸気乾燥器バンク13J,13Kの形状、例えば波板の間隔20,波板の開口部の長さ21,波板の流れ方向の長さ22,波板の角(ピッチ)の角度23,波板のピッチ数は蒸気乾燥器バンク13L,13Mで同じである。
【0037】
蒸気乾燥器バンク13L,13Mでは、多孔板の開口率が異なる。蒸気乾燥器へ流入する蒸気の流量が一定の場合、多孔板の開口率が大きいときほど圧力損失が低くなる。蒸気乾燥器バンク13L,13Mでは、蒸気乾燥器バンク13Lのほうが多孔板の開口率が大きいため、圧力損失が低くなる。
【0038】
蒸気乾燥器バンク13Lは蒸気乾燥器バンク13Mよりも圧力損失が低くなるが、その分気液分離性能が低下する。しかしながら、蒸気乾燥器バンク13Lが設置されている中心部は、蒸気のクオリティが高いため、圧力損失が小さい蒸気乾燥器バンク13Lでも十分に液滴を除去できる。周辺部に位置する蒸気乾燥器バンク13Mにおいては、蒸気のクオリティが低いため、従来どおり比較的圧力損失が高い蒸気乾燥器バンク13Mにより、適切に液滴を除去する。これにより、蒸気乾燥器全体としては、気液分離性能を維持しつつ従来よりも圧力損失を下げることができる。
【0039】
本実施例において、気水分離器と蒸気乾燥器の間隔、もしくは炉心と気水分離器の間隔を全ての蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて狭くした場合は、実施例1と同様に原子炉圧力容器の小型化による建設コストを削減できる。また、原子炉圧力容器の寸法を従来と同じとした場合は、燃料集合体の長さを長くすることにより、燃料の燃焼効率が向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、原子炉の気水分離器からの蒸気を取り込んで蒸気中に含まれる液滴を除去する蒸気乾燥器、および沸騰水型原子力プラントに適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 原子炉圧力容器
2 炉心
3 シュラウド
4 シュラウドヘッド
9 主蒸気管
12 気水分離器
13,13A,13B,13C,13D,13E,13F,13G,13H,13J,13K,13L,13M 蒸気乾燥器バンク
14 フードプレート
15 多孔板
16 波板
17 ドレン
18 ドレンダクト
20,20A,20B 波板の間隔
21,21C,21D 蒸気乾燥器の開口部の長さ
22,22E,22F 波板の流れ方向の長さ
23,23G,23H 波板の角(ピッチ)の角度
50 蒸気乾燥器
51 隔離壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲した流路が設けられ該流路内を流れる蒸気から液滴を捕獲する液滴捕獲部と、多数の貫通孔が形成され前記液滴捕獲部の蒸気を整流する複数の多孔板とを備えた蒸気乾燥器バンクと、前記蒸気乾燥器バンクを複数配置した隔離壁を備えた蒸気乾燥器において、
複数の前記蒸気乾燥器バンクを前記隔離壁の半径方向中心側及び外周側に分けた時、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクは、前記外周側に設置された前記蒸気乾燥器バンクに比べて圧力損失を低下させる構造にすることを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項2】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、
中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど前記蒸気乾燥器バンクの屈曲した流路の間隔が大きいことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項3】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど屈曲した流路の開口部の鉛直方向の長さが大きいことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項4】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど蒸気乾燥器バンクの屈曲した流路の開口部の流れ方向の長さが小さいことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項5】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど蒸気乾燥器バンクの屈曲した流路の屈曲点の角度が大きいことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項6】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど蒸気乾燥器バンクの屈曲した流路の屈曲点の数が少ないことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項7】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど蒸気乾燥器バンクの多孔板の開口率が大きいことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項8】
蒸気を発生させる炉心と、前記炉心で生成した蒸気から冷却水を分離する気水分離器と、前記気水分離器から流出した蒸気から液滴を除去する蒸気乾燥器を備えた沸騰水型原子力プラントにおいて、
前記蒸気乾燥器は、屈曲した流路が設けられ該流路内を流れる蒸気から液滴を捕獲する液滴捕獲部と、多数の貫通孔が形成され前記液滴捕獲部の蒸気を整流する複数の多孔板とを備えた蒸気乾燥器バンクと、前記蒸気乾燥手段を複数配置した隔離壁を備え、
複数の前記蒸気乾燥器バンクを前記隔離壁の半径方向中心側及び外周側に分けた時、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクは、前記外周側に設置された前記蒸気乾燥器バンクに比べて圧力損失を低下させる構造にすると共に、
前記気水分離器及び前記蒸気乾燥器の間隔、又は前記炉心及び前記気水分離器の間隔は、全ての前記蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて、その間隔を狭くしたことを特徴とする沸騰水型原子力プラント。
【請求項1】
屈曲した流路が設けられ該流路内を流れる蒸気から液滴を捕獲する液滴捕獲部と、多数の貫通孔が形成され前記液滴捕獲部の蒸気を整流する複数の多孔板とを備えた蒸気乾燥器バンクと、前記蒸気乾燥器バンクを複数配置した隔離壁を備えた蒸気乾燥器において、
複数の前記蒸気乾燥器バンクを前記隔離壁の半径方向中心側及び外周側に分けた時、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクは、前記外周側に設置された前記蒸気乾燥器バンクに比べて圧力損失を低下させる構造にすることを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項2】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、
中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど前記蒸気乾燥器バンクの屈曲した流路の間隔が大きいことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項3】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど屈曲した流路の開口部の鉛直方向の長さが大きいことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項4】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど蒸気乾燥器バンクの屈曲した流路の開口部の流れ方向の長さが小さいことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項5】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど蒸気乾燥器バンクの屈曲した流路の屈曲点の角度が大きいことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項6】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど蒸気乾燥器バンクの屈曲した流路の屈曲点の数が少ないことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項7】
請求項1に記載した蒸気乾燥器において、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクほど蒸気乾燥器バンクの多孔板の開口率が大きいことを特徴とする蒸気乾燥器。
【請求項8】
蒸気を発生させる炉心と、前記炉心で生成した蒸気から冷却水を分離する気水分離器と、前記気水分離器から流出した蒸気から液滴を除去する蒸気乾燥器を備えた沸騰水型原子力プラントにおいて、
前記蒸気乾燥器は、屈曲した流路が設けられ該流路内を流れる蒸気から液滴を捕獲する液滴捕獲部と、多数の貫通孔が形成され前記液滴捕獲部の蒸気を整流する複数の多孔板とを備えた蒸気乾燥器バンクと、前記蒸気乾燥手段を複数配置した隔離壁を備え、
複数の前記蒸気乾燥器バンクを前記隔離壁の半径方向中心側及び外周側に分けた時、中心側の領域に設置された前記蒸気乾燥器バンクは、前記外周側に設置された前記蒸気乾燥器バンクに比べて圧力損失を低下させる構造にすると共に、
前記気水分離器及び前記蒸気乾燥器の間隔、又は前記炉心及び前記気水分離器の間隔は、全ての前記蒸気乾燥器バンクが同一構造である場合に比べて、その間隔を狭くしたことを特徴とする沸騰水型原子力プラント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−47658(P2012−47658A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191651(P2010−191651)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
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