説明

蒸気圧縮システム

【課題】簡単な構成で液媒体から効率よく有効利用可能な蒸気を生成することのできる蒸気圧縮システムを提供する。
【解決手段】液媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器10と、蒸発器10に液媒体を圧送する圧送手段30と、圧送手段30により液媒体が作動流体として圧送されることで蒸発器10内の蒸気を吸引して当該蒸発器10内を減圧するとともに当該蒸発器10から吸引した蒸気を昇圧させて排出するエゼクタ40と、エゼクタ40から排出された液媒体と蒸気との混合物を液媒体と蒸気とに分離する気液分離器50と、気液分離器50から排出された蒸気を圧縮する容積式の圧縮機20とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、当該蒸気を圧縮する圧縮機とを備える蒸気圧縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等から排出された温度の低い温水等の多くは、その熱エネルギが有効に利用されることなく廃棄されており、この熱エネルギを回収してエネルギ効率を高めることが求められている。
【0003】
これに対して、前記温水等の温度の低い液媒体を減圧下で蒸発させた後圧縮することで利用可能な蒸気を生成するシステムの開発が行なわれている。
【0004】
例えば、特許文献1には、液媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、当該蒸発器内を減圧する減圧用のポンプと、前記蒸発器で生成された蒸気を圧縮する遠心式の圧縮機と、この遠心式の圧縮機から吐出された蒸気を冷却する冷却手段と、この冷却手段から排出された蒸気を圧縮する容積式の圧縮機と備えたシステムが開示されている。
【0005】
このシステムでは、前記減圧用のポンプにより前記蒸発器内が減圧されることでこの蒸発器内で前記液媒体が蒸発して蒸気が生成される。そして、前記遠心式の圧縮機で圧縮されることで前記蒸気が加圧されて蒸気密度が高められ、この密度の高い蒸気が前記容積式の圧縮機で圧縮されることで利用可能な蒸気が生成される。ここで、前記蒸気は、前記遠心式の圧縮機で圧縮されることで過熱蒸気となっており、この過熱蒸気がそのまま前記容積式の圧縮機に吸引されると容積式の圧縮機にスケールが付着するおそれがある。そこで、このシステムでは、前記冷却手段により前記遠心式の圧縮機から吐出された蒸気を一旦冷却した後容積式の圧縮機に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−188514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に開示されている従来のシステムでは容積式の圧縮機に吸引される蒸気密度を高めて効率よく蒸気を生成するために遠心式の圧縮機が用いられている。そのため、容積式の圧縮機とは別に、遠心式の圧縮機およびこの遠心式の圧縮機を駆動するためのモータ等が必要となり構造が複雑になる。さらに、遠心式の圧縮機で圧縮、加熱された蒸気が一旦冷却されており熱効率が悪いという問題がある。
【0008】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、有効利用可能な蒸気を簡単な構成で効率よく生成することのできる蒸気圧縮システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明による蒸気圧縮システムは、液媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、前記蒸発器に前記液媒体を圧送する圧送手段と、前記圧送手段により前記液媒体が作動流体として圧送されることで前記蒸発器内の蒸気を吸引して当該蒸発器内を減圧するとともに当該蒸発器から吸引した蒸気を昇圧させて排出するエゼクタと、前記エゼクタから排出された前記液媒体と前記蒸気との混合物を液媒体と蒸気とに分離する気液分離器と、前記気液分離器から排出された蒸気を圧縮する容積式の圧縮機とを備えている。
【0010】
この蒸気圧縮システムでは、前記圧送手段により前記エゼクタに作動流体として前記液媒体が圧送されることで前記蒸発器内が減圧されるとともに前記蒸発器から吸引された蒸気が昇圧されて、この昇圧された蒸気が前記気液分離器を介して前記容積式の圧縮機に吸引される。そのため、前記蒸発器内を減圧するための減圧用ポンプ等の装置を設けることなく、簡単な構成で、前記蒸発器内を減圧して前記液媒体から蒸気を効率よく生成することができるとともに、前記容積式の圧縮機で有効利用可能な蒸気を効率よく生成することができる。すなわち、容積式の圧縮機では単位時間あたりに一定の容積の蒸気が吸引されるため、吸引する蒸気の圧力が昇圧されて蒸気密度が高められることで、この容積式の圧縮機で生成される単位時間あたりの蒸気質量が増大する。
【0011】
しかも、前記エゼクタと前記蒸発器とには共通の圧送手段によって液媒体が圧送されており前記エゼクタではほぼ同じ温度の作動流体と蒸気とが混合するので、前記蒸発器内で生成された蒸気は蒸発器内における温度とほぼ同温度の状態で前記エゼクタから排出される。従って、圧縮機に吸引される蒸気を冷却する必要がなく、構成が簡素化されるとともに熱効率を高くすることができる。
【0012】
本発明において、前記圧送手段から圧送された前記液媒体で前記圧縮機を冷却するのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、前記液媒体の気化熱を利用して前記圧縮機を効率よく冷却することができる。
【0014】
また、本発明において、前記圧縮機から吐出された圧縮後の蒸気が作動流体として供給されることで前記気液分離器から排出された前記蒸気を吸引して昇圧させる蒸気作動式のエゼクタをさらに備え、前記圧縮機は、前記蒸気作動式のエゼクタから排出された蒸気も圧縮するのが好ましい。
【0015】
この構成では、前記エゼクタから吐出された蒸気が前記蒸気作動式のエゼクタでさらに昇圧されて前記圧縮機に吸引されるので、圧縮機において有効利用可能な蒸気をより効率よく生成することができる。
【0016】
この場合において、前記圧縮機と前記蒸気作動式のエゼクタとの間に介在して、前記圧縮機から吐出された蒸気のうち前記蒸気作動式のエゼクタに作動流体として供給される蒸気の圧力を調整可能な調整手段を備えるのが好ましい。
【0017】
この構成では、前記調整手段により前記蒸気作動式のエゼクタの作動流体の圧力が調整されて、この作動流体の圧力調整に伴い蒸気作動式のエゼクタでの蒸気の昇圧量が調整されるので、前記圧縮機に適切な圧力の蒸気が吸引される。
【0018】
また、本発明において、前記気液分離器から排出された前記液媒体を前記圧送手段の上流側に戻す液媒体戻しラインを備えるのが好ましい。
【0019】
この構成では、前記エゼクタから前記気液分離器に排出された液媒体が廃棄されることなく前記液媒体戻しラインを通って前記圧送手段の上流側に戻されるので、この液媒体を無駄なく利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な構成で有効利用可能な蒸気を効率よく生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態による蒸気圧縮システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の蒸気圧縮システムに用いられるエゼクタの構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態による蒸気圧縮システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による蒸気圧縮システム1の構成を示す図である。この蒸気圧縮システム1は、工場等から排出される低温の液媒体から有効利用可能な蒸気を生成するためのシステムである。ここでは、前記液媒体として温水が適用される場合について説明する。なお、図1において、実線矢印は温水(液体)の移動を示しており、破線矢印は蒸気の移動を示している。
【0024】
前記蒸気圧縮システム1は、蒸発器10と、圧縮機20と、ポンプ(圧送手段)30と、エゼクタ40と、タンク(気液分離器)50とを備える。
【0025】
前記ポンプ30は、前記工場等から排出された温水を前記蒸発器10と前記エゼクタ40と前記圧縮機20に圧送するためのものである。このポンプ30は、前記工場等から排出される温水が流通している配管またはこの温水が貯留されているタンク等(以下、温水源部という)と前記蒸発器10等とに接続されており、前記温水源部の温水を前記蒸発器10等に圧送する。
【0026】
前記蒸発器10は、前記ポンプ30により圧送された温水の一部を蒸発させて蒸気を生成するためのものである。本実施形態では、この蒸発器10は、前記ポンプ10から圧送された温水が内側に供給される所定の容積を有するタンクで構成されている。後述するように、この蒸発器10は前記エゼクタ40によりその内部の蒸気が蒸発器10外に吸い出されることで温水源部の圧力よりも減圧されている。例えば大気圧以下に減圧されている。従って、前記ポンプ30により蒸発器10内に圧送された温水は、その温度が低いにも関わらず、その多くがこの蒸発器10内で蒸発する。本実施形態では、前記温水がより容易に蒸発するように、蒸発器10内においてその上部から温水が散布されている。
【0027】
前記エゼクタ40は、前記ポンプ30により圧送された温水を作動流体として、前記蒸発器10内の蒸気を吸引して蒸発器10内を減圧するとともにこの吸引した蒸気を昇圧するためのものである。このエゼクタ40は、図2に示すように、ノズル42と、ディフューザー46と、このノズル42とディフューザー46との間に介在する吸引室44とを有している。この図2において、実線矢印は作動流体である温水の移動を示しており、破線矢印は蒸発器10から吸引される蒸気の移動を示している。
【0028】
前記ノズル42は、前記ポンプ30と連通しており、前記ポンプ30により圧送された前記温水を前記吸引室44内に高速で噴出可能な形状を有している。前記吸引室44は前記蒸発器10と連通しており、この蒸発器10内の蒸気が吸引室44内に流入可能な形状を有している。前記ディフューザー46は、前記タンク50と連通しており、前記吸引室44側から前記タンク50と連通するエゼクタ吐出口46aに向かってその流路通面積が徐々に拡大する形状を有している。
【0029】
前記エゼクタ40では、前記ポンプ30により圧送された温水が前記ノズル42から前記吸引室44内に高速で噴出されることで前記蒸発器10内から前記蒸気が前記吸引室44内に吸引されてこの蒸発器10内が減圧されるとともに、この吸引された蒸気が前記温水と混合して前記ディフューザー46を通過することでこの蒸気が昇圧される。
【0030】
すなわち、前記温水が前記吸引室44内に高速で噴出されると、前記吸引室44内においてこの温水の周囲の圧力は蒸発器10内の圧力よりも減圧され、この圧力差に伴い前記蒸発器10から前記吸引室44内に蒸気が吸引される。そして、この吸引された蒸気は前記高速の温水とともに高速で前記ディフューザー46に流入し、前記ディフューザー46を通過することで減速されつつ昇圧される。また、このディフューザー46を通過することで、前記温水はその圧力を回復する。なお、このエゼクタ40において前記作動流体としての温水の一部が蒸発してもよい。
【0031】
ここで、前記エゼクタ40の作動流体は前記ポンプ30により前記温水源部から圧送された温水であり、前記蒸発器10から前記吸引室44内に吸引される蒸気は、同じ前記ポンプ30により前記温水源部から圧送された温水が前記蒸発器10内で蒸発したものである。従って、この作動流体としての温水と前記吸引室44に吸引される蒸気の温度とはほぼ同じであり、前記蒸発器10内の蒸気は加温されることなくその温度を維持したまま前記エゼクタ40から吐出される。
【0032】
前記タンク50は、前記エゼクタ40のエゼクタ吐出口46aから吐出された蒸気と温水の混合流体を蒸気と温水とに分離するためのものである。このエゼクタ40から吐出された混合流体はこのタンク50内に引き込まれ、温水がこのタンク50の底部に貯留する一方、蒸気がこのタンク50の上部に溜まることで分離される。このタンク50で分離された蒸気はタンク50の上部に設けられた蒸気流出部50aから前記圧縮機20側に排出される。一方、このタンク50の底部に溜まった温水は、このタンク50と前記ポンプ30の上流側すなわち前記温水源部あるいは前記ポンプ30と前記温水源部とを接続する配管等とを接続する戻しライン(液媒体戻しライン)52に排出されて、この戻しライン52を通過して、前記ポンプ30の上流側に戻される。戻された温水は再びポンプ30により前記蒸発器10等に圧送されて有効に利用される。
【0033】
前記圧縮機20は、前記蒸発器10で生成された蒸気を圧縮して有効利用可能な高圧の蒸気を生成するためのものである。この圧縮機20は、蒸気が通過する部分あるいは蒸気が収容される圧縮部の容積が変化することで前記蒸気を圧縮する容積式の圧縮機である。本実施形態では、この圧縮機20としてスクリュ式圧縮機が用いられている。このスクリュ式圧縮機20は、互いに噛み合って回転する一対のスクリュロータを有している。前記蒸気は、このスクリュ式圧縮機20の吸込口20aから前記スクリュロータ間に流入して、このスクリュロータ間の領域で構成される圧縮部の容積が回転に伴い変化することで圧縮された後、吐出口20bから吐出される。なお、このスクリュ式圧縮機20は、モータ28により回転駆動されている。
【0034】
前記スクリュ式圧縮機20の吸込口20aは、前記タンク50の蒸気流出部50aと連通しており、このスクリュ式圧縮機20には、このタンク50から排出された蒸気が吸引される。前記タンク50から排出された蒸気は、前記蒸発器10で生成された後、前記ポンプ30から前記エゼクタ40に温水が圧送されることに伴いこのエゼクタ40で昇圧した蒸気である。従って、スクリュ式圧縮機20には、圧力の高い蒸気すなわち密度の高い蒸気が吸引される。前述のように、このスクリュ式圧縮機20は容積式の圧縮機である。従って、蒸気密度が高められると、圧縮部すなわちスクリュロータ間に吸引される単位時間あたりの蒸気質量が増大する結果、スクリュ式圧縮機20で圧縮、吐出される蒸気質量が増大する。
【0035】
前記エゼクタ40における蒸気の昇圧量は、ポンプ30の吐出圧やエゼクタ40の各寸法等によって異なるが、例えば、前記温水源部の温水が、60〜100℃、大気圧の温水の場合は、エゼクタ40により前記蒸発器10内の圧力が−0.02〜0.0MPaG(ゲージ圧)に減圧されるとともに、エゼクタ吐出口46aにおいて蒸気の圧力は0.0〜0.1MPaGに昇圧される。この蒸気の圧力は前記タンク50内にて−0.01〜+0.05MpaGに減少するが、少なくとも蒸発器10内の圧力よりも高い圧力でスクリュ式圧縮機20に吸引される。なお、前記の各圧力範囲において、下限値どうしあるいは上限値どうしが同条件での結果である。
【0036】
前記スクリュ式圧縮機20は蒸気の圧縮に伴い高温となる。そのため、このスクリュ式圧縮機20は冷却されるのが好ましく、本実施形態に係る蒸気圧縮システム1では、前記ポンプ30により前記温水源部の温水の一部をスクリュ式圧縮機20に圧送しており、この温水を前記スクリュロータ等と接触させて気化させることでこの気化熱によりスクリュロータ等を冷却している。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る蒸気圧縮システム1では、前記エゼクタ40により蒸発器10内が減圧されるとともにこの蒸発器10で生成された蒸気が昇圧されて前記スクリュ式圧縮機20に吸引されるので、蒸発器10内を減圧するための装置とこの蒸気を昇圧させるための装置とを個別に設ける場合、また、前記蒸気を昇圧するために別途、圧縮機とこの圧縮機を駆動するためのモータとを設ける場合に比べて、簡単な構成でスクリュ式圧縮機20に吸引される蒸気密度を高めることができる。そして、これにより、スクリュ式圧縮機20において有効利用可能な蒸気を効率よく生成することができる。
【0038】
特に、前記エゼクタ40は、蒸発器10に温水を圧送するためのポンプ30により圧送された温水を作動流体としているので、このエゼクタ40に別途、作動流体を供給する場合に比べて構成が簡素化される。しかも、蒸発器10内の蒸気の温度とエゼクタ40の作動流体の温度とを等しくすることができるので、スクリュ式圧縮機20に吸引される蒸気の温度を高めることなくこの蒸気の密度を高めることができる。従って、圧縮機を用いて蒸気を加圧する場合のように加圧に伴い過熱蒸気となった蒸気を冷却する必要がなく、熱効率を高くすることができる。
【0039】
なお、前記ポンプ30から圧送された温水により前記スクリュ式圧縮機20を冷却する構成は省略可能である。ただし、前記蒸発器10に温水を圧送するためのポンプ30を利用して前記温水源部からスクリュ式圧縮機20に温水を供給すれば、温水の気化熱によりスクリュ式圧縮機20を効率よく冷却することができる。また、スクリュ式圧縮機20を冷却するための冷却水がポンプ30により所定の圧力に維持されるため、スクリュ式圧縮機20を安定して冷却することができる。
【0040】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態による蒸気圧縮システム1の構成を示す図である。なお、図3において、実線矢印は温水(液体)の移動を示しており、破線矢印は蒸気の移動を示している。
【0041】
この第2実施形態による蒸気圧縮システム1では、前記第1実施形態による蒸気圧縮システム1の各要素に加えて、蒸気を作動流体とする蒸気作動式のエゼクタ140と、この蒸気作動式のエゼクタ140に供給される作動流体としての蒸気の圧力を調整可能な調整手段60とを有している。ここでは、これら蒸気作動式のエゼクタ140および調整手段60に関してのみ説明する。
【0042】
前記蒸気作動式のエゼクタ140の構造は、前記エゼクタ40と同じであり、ノズル142と吸引室144とディフューザー146とを有している。
【0043】
前記蒸気作動式のエゼクタ140は、そのノズル142が前記スクリュ式圧縮機20の吐出口20bと連通し、その吸引室144が前記タンク50の蒸気流出部50aと連通するとともに、そのエゼクタ吐出口146aが前記スクリュ式圧縮機20の吸込口20aに連通する状態で配置されている。より詳細には、この第2実施形態に係る蒸気圧縮システム1では、前記スクリュ式圧縮機20の吐出口20bに連通して圧縮後の蒸気が通過する吐出通路90が、その下流側において、外部通路94と昇圧用通路92とに分岐している。そして、前記蒸気作動式のエゼクタ140の前記ノズル142と前記昇圧用通路92とが連通している。
【0044】
前記蒸気作動式のエゼクタ140では、前記ノズル142に前記スクリュ式圧縮機20から吐出された圧縮後の蒸気の一部が作動流体として供給されて、この蒸気が前記ノズル142から吸引室144内に高速で噴出されることで、前記タンク50から排出された蒸気が前記吸引室144内に吸引される。そして、この吸引された蒸気は作動流体としての前記圧縮後の蒸気とともに前記ディフューザー146で昇圧された後、エゼクタ吐出口146aから吐出される。前記スクリュ式圧縮機20には、このエゼクタ吐出口146aから吐出された昇圧された蒸気が吸引される。
【0045】
前記調整手段60は、調整バルブ64と、バルブ駆動装置62とを有している。前記調整バルブ64は、前記昇圧用通路92のうち前記外部通路94との分岐点と前記蒸気作動式のエゼクタ140との間に設けられており、この昇圧用通路92を開閉する。前記バルブ駆動装置62は、この調整バルブ64を駆動してこの調整バルブ64の開度を変化させることで前記昇圧用通路92の流路面積を変化させる。前記調整手段60は、前記バルブ駆動装置62により前記調整バルブ64の開度を変更することで前記昇圧用通路92の流路面積を変更し、これにより、この昇圧用通路92を通って前記蒸気作動式のエゼクタ140に作動流体として供給される蒸気の圧力を変更する。
【0046】
前記蒸気作動式のエゼクタ140による蒸気の昇圧量すなわち前記スクリュ式圧縮機20に吸引される蒸気密度の増加量は、前記作動流体としての蒸気の圧力に応じて変化する。そのため、前記調整手段60により前記作動流体としての蒸気の圧力が適切に調整されることで、スクリュ式圧縮機20には適切な密度の蒸気が吸引される。例えば、前記温水源部の温水の温度が低く蒸発器10で生成される蒸気の圧力が低い場合には、前記バルブ駆動装置62により前記調整バルブ64を全開として前記蒸気作動式のエゼクタ140に供給される作動流体としての蒸気密度を高くする一方、前記温水源部の温水の温度が高い場合には、前記バルブ駆動装置62により前記調整バルブ64を全閉として前記蒸気作動式のエゼクタ140に作動を停止すれば、スクリュ式圧縮機20に吸引される蒸気密度を一定としてスクリュ式圧縮機20で生成される蒸気量を温水源部の温水の温度によらず一定とすることができる。
【0047】
以上のように、第2実施形態に係る蒸気圧縮システムでは、蒸気作動式のエゼクタ140により、前記エゼクタ40で昇圧された蒸気が前記タンク50を通過後さらに昇圧されて蒸気密度がより高められた状態で前記スクリュ式圧縮機20に供給されるので、スクリュ式圧縮機20においてより一層効率よく有効利用可能な蒸気を生成することができる。また、前記調整手段60により、前記蒸気作動式のエゼクタ140に供給される作動流体としての蒸気の圧力が調整されるので、スクリュ式圧縮機20により適切な密度の蒸気を供給することができる。
【0048】
なお、前記調整手段60を前記調整バルブ64でのみ構成して、この調整バルブ64の開度を手動で変更してもよい。また、この調整手段60は、前記スクリュ式圧縮機20から吐出された蒸気のうち前記蒸気作動式のエゼクタ140に作動流体として供給される蒸気の圧力を調整可能なものであれば、その具体的構成は前記に限らない。
【0049】
また、本発明において、圧縮機20は容積式の圧縮機であればよく、前記スクリュ式圧縮機に限らない。
【符号の説明】
【0050】
1 蒸気圧縮システム
10 蒸発器
20 スクリュ式圧縮機(容積式の圧縮機)
30 ポンプ(圧送手段)
40 エゼクタ
50 タンク
60 調整手段
140 蒸気作動式のエゼクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、
前記蒸発器に前記液媒体を圧送する圧送手段と、
前記圧送手段により前記液媒体が作動流体として圧送されることで前記蒸発器内の蒸気を吸引して当該蒸発器内を減圧するとともに当該蒸発器から吸引した蒸気を昇圧させて排出するエゼクタと、
前記エゼクタから排出された前記液媒体と前記蒸気との混合物を液媒体と蒸気とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器から排出された蒸気を圧縮する容積式の圧縮機とを備えていることを特徴とする蒸気圧縮システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気圧縮システムにおいて、
前記圧送手段から圧送された前記液媒体で前記圧縮機を冷却することを特徴とする蒸気圧縮システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蒸気圧縮システムにおいて、
前記圧縮機から吐出された圧縮後の蒸気が作動流体として供給されることで前記気液分離器から排出された前記蒸気を吸引して昇圧させる蒸気作動式のエゼクタをさらに備え、
前記圧縮機は、前記蒸気作動式のエゼクタから排出された蒸気も圧縮することを特徴とする蒸気圧縮システム。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸気圧縮システムにおいて、
前記圧縮機と前記蒸気作動式のエゼクタとの間に介在して、前記圧縮機から吐出された蒸気のうち前記蒸気作動式のエゼクタに作動流体として供給される蒸気の圧力を調整可能な調整手段を備えることを特徴とする蒸気圧縮システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の蒸気圧縮システムにおいて、
前記気液分離器から排出された前記液媒体を前記圧送手段の上流側に戻す液媒体戻しラインを備えることを特徴とする蒸気圧縮システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−2472(P2012−2472A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140312(P2010−140312)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)