説明

蒸気渦流整流器

【課題】流れ誘発振動の大きさ又は振動数を減少する装置を提供する。
【解決手段】流れ誘発振動を発生する渦流の形成の確度を低下するように構成された渦制限器220を具備し、実施形態は、原子炉の原子炉圧力容器の少なくとも1つの構造と一体化されてもよい。また、流れ誘発振動の減衰及び/又は振動数変化を必要とする他のシステムと一体化されてもよい。他のシステムは、例えば蒸気発生装置、熱交換器、復水器、ボイラなどを含むが、それらに限定されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に蒸気圧力容器に関し、特に、蒸気圧力容器の構成要素の流れ誘発振動のレベルを減衰するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1には、蒸気圧力容器の一種である従来の沸騰水型軽水炉(BWR)が示される。原子炉の動作中、原子炉圧力容器(RPV)の内部を循環する冷却水は、核燃料炉心35で発生する核分裂により加熱される。給水入口15及び炉心スプレーライン105に隣接する給水スパージャパイプ20を介してRPV10に給水が行われる。冷却水は、RPV10と炉心シュラウド30との間の環状領域であるダウンカマーアニュラス25を介して下方へ流れる。
【0003】
炉心シュラウド30は、核燃料炉心35を取り囲むステンレス鋼の円筒である。炉心35は複数の燃料束集合体40(図1には2つの燃料束集合体40のみが示される)を含む。上部ガイド45及び炉心支持板50は各燃料束集合体40を支持する。
【0004】
冷却水はダウンカマーアニュラス25を通って下方へ流れ、炉心下部プレナム55に流入する。次に、冷却水は炉心下部プレナム55から核燃料炉心35を通って上方へ流れる。特に、冷却水は燃料束集合体40に入り、そこで沸騰境界層が形成される。核燃料炉心35から出た水と蒸気の混合物は、シュラウドヘッド65の下方の炉心上部プレナム60に流入する。次に、蒸気と水の混合物はシュラウドヘッド65の最上部にある直立管70を通って流れ、水と蒸気とを分離する気水分離器75に入る。分離された水はダウンカマーアニュラス25に戻され、蒸気は蒸気出口ノズル110を介してRPV10から排出される。
【0005】
BWRは、要求される出力密度を達成するために必要な核燃料炉心35を通過する強制対流を発生する冷却水再循環系を更に含む。ダウンカマーアニュラス25の下端部から再循環水出口80を介して水の一部が抽出され、抽出された水は、再循環ポンプ(図示せず)により再循環水入口90を介して複数のジェットポンプ構体85(図1には1つのジェットポンプ構体が示される)の中へ強制的に送り込まれる。通常、ジェットポンプ構体85は炉心シュラウド30の周囲に沿って分散するように配置され、要求される炉心流れを形成する。典型的なBWRは16〜24の入口ミキサ95を有する。
【0006】
図1に示されるように、従来のジェットポンプ構体85は1対の入口ミキサ95を具備する。各入口ミキサ95に溶接されたL字継手は、再循環ポンプ(図示せず)から入口昇水管100を介して加圧駆動水を受け取る。入口ミキサ95の1つの型は、入口ミキサ95の周囲に入口ミキサ軸(図示せず)に関して等しい角度で配分された5つ1組のノズルを具備する。この場合、各ノズルはノズル出口で半径方向内側に向かって先細になる形状を有する。この収束形ノズルはジェットポンプ構体85を作動する。ノズル出口の半径方向外側に二次入口開口(図示せず)がある。従って、ノズルから水のジェットが射出されるにつれて、ダウンカマーアニュラス25から二次入口開口を介して入口ミキサ95の中へ水が引き込まれ、そこで再循環ポンプからの水との混合が起こる。
【0007】
動作中、RPV10から排出された蒸気は蒸気出口ノズル110を通って流れる間に回転しようとし、その結果、少なくとも1つの渦を形成する。渦は流れ誘発振動を発生し、それにより圧力損失を引き起こす。周知のように、気水分離器75を含むが、それに限定されないRPV10の内部構成要素に亀裂を形成する一因が、この流れ誘発振動である。流れ誘発振動の中には、RPV10の内部構成要素のうち1つ以上の構成要素の1つ以上の固有振動モードにごく近い振動数の圧力変動を有するものがある。励振振動数が内部構成要素の固有振動数に近い場合、振動が起こることにより内部構成要素に亀裂が発生する。そのため、RPV10をより低負荷で動作させることが必要になる。その結果、RPV10の動作を停止しなければならない場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の理由により、流れ誘発振動の発生確度を低下する装置及びシステムが必要とされる。装置は渦形成の可能性を減少すべきである。装置は、圧力容器において起こる流れ誘発振動という周知の問題を費用効果の高い方法によって解決すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、システム内の流れ誘発振動を減少する装置は、流れ誘発振動を許容するシステム内に一体化するように適合可能なベース(210)と;ベースにより支持され、且つ流れ誘発振動を発生する渦流の形成の確度を低下するように構成された渦制限器(220)とを具備し;渦制限器(220)はシステムの流体の流路に隣接して配置され且つ流れ誘発振動のレベルを低下する。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、原子炉圧力容器(RPV)(10)の蒸気系の内部で起こる流れ誘発振動を減少するシステムは、複数の燃料束集合体(40)を具備する核燃料炉心(35)と;給水入口(15)と;蒸気ノズル(110)と;ベース(210)及び渦制限器(220)を具備する整流器(200)とを具備し、渦制限器(220)は蒸気系内部の蒸気の流路に隣接して配置され且つ流れ誘発振動のレベルを低下する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の一実施形態が動作する環境を示した概略図である。
【図2】図2は本発明の環境の中に配置された整流器の一実施形態を示した概略等角投影図である。
【図3A】図3A及び図3Bは合わせて図3を構成し、本発明の一実施形態に係る整流器を示した概略平面図及び概略立面図である。
【図3B】図3A及び図3Bは合わせて図3を構成し、本発明の一実施形態に係る整流器を示した概略平面図及び概略立面図である。
【図4】図4は本発明の一実施形態に係る整流器の別の実施形態を示した概略平面図である。
【図5】図5は本発明の一実施形態に係るRPVに設置された本発明の一実施形態を示した概略等角投影断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、ある特定の用語は便宜上使用されるだけであり、本発明を限定すると解釈されるべきではない。例えば、「上部」、「下部」、「左」、「正面」、「右」、「水平」、「垂直」、「上流側」、「下流側」、「前」及び「後」などの用語は、単に図に示される構成を説明するにすぎない。実際、構成要素は任意の向きに配置されてよいので、特に指定されない限り、それらの用語はそのような向きの変更をも含むものと理解されるべきである。
【0013】
以下の説明は、主にRPV10の少なくとも1つの蒸気出口ノズル110と一体化された本発明の一実施形態を説明する。本発明の他の実施形態は、流れ誘発振動の減衰及び/又は振動数変化を必要とする他のシステムと一体化されてもよい。他の圧力容器は、例えば蒸気発生器、熱交換器、復水器、ボイラなどを含むが、それらに限定されない。
【0014】
再び図を参照して説明する。いくつかの図において、種々の図中符号は一貫して同様の部分を示す。図2は、本発明の装置が動作する環境の中に配置された整流器200の一実施形態を示した概略等角投影図である。この場合、整流器200は蒸気出口ノズル110の中に配置される。
【0015】
整流器200の一実施形態は2つの主要な構成要素、すなわちベース210及び渦制限器220を具備してもよい。ベース210は、一般に整流器200を支持する働きをする。ベース210は蒸気出口ノズル110の少なくとも1つの面と結合するように構成されてもよい。渦制限器220は渦流を形成する確度を低下するように構成される。渦制限器220の一部は、RPV10のシステムの内部を流れる流体の流路に隣接するように配置されてもよい。
【0016】
合わせて図3を構成する図3A及び図3Bは、本発明の一実施形態に係る整流器200を示した概略平面図及び概略立面図である。
【0017】
特に、図3Aは、リング部分を具備するか又はリングに似た形状を有してもよいベース210の一実施形態を示す。リング形であるため、ベース210の外径部分は、例えば図2に示されるように蒸気出口ノズル110の内径部分と係合する。ベース210は、渦制限器220を支持しながら蒸気出口ノズル110との十分に堅牢な結合を可能にするような寸法を有していなければならない。
【0018】
渦制限器220は、一般に少なくとも1つの渦が形成される確度を低下する働きをする。渦制限器220はRPV10から排出される蒸気の流路の中に直接又は間接的に配置されてもよい。渦制限器220は渦の形成を部分的に又は完全に阻止できる形状に形成されてもよい。図3に示されるように、渦制限器220の一実施形態はフィン又は翼に類似してもよい。この実施形態の整流器200は、渦制限器220を、蒸気出口ノズル110を介してRPV10から排出される蒸気の流路内に直接配置する。本発明の一実施形態において、複数の方向に少なくとも1つの翼が配置されてもよい。翼が配置される方向は、例えば水平方向、垂直方向、斜め方向又はそれらを任意に組み合わせた方向であってもよいが、それらに限定されない。
【0019】
図3Aは、複数の翼の形の複数の渦制限器220を示す。この場合、第1の翼は垂直方向に配置され且つ第2の翼は水平方向に配置される。図3Aに示されるように、本実施形態の渦制限器220は、蒸気が渦制限器220を通って流れる間に蒸気流れが渦を形成するのを阻止する十字形を形成する。本発明の別の実施形態において、渦制限器220は例えば、「X」字形、「星」形又はそれらを任意に組み合わせた形状であってもよいが、渦制限器220の形状はそれらに限定されない。その場合、渦制限器200は複数の翼,フィンなどを具備してもよい。
【0020】
図3Bは、図3Aの整流器200を示した側面図である。この場合、本発明の一実施形態の渦制限器220は、矩形の輪郭形状を有する複数の翼を具備する。図3Bは、ベース210が渦制限器220と一体化されて、1つの整流器200を形成してもよいことを更に示す。この構成を採用すると、比較的単純な工程で整流器200を製造できる。
【0021】
図4は、本発明の一実施形態に係る整流器200の別の実施形態を示した概略平面図である。渦制限器220は1つのフィン又は翼を具備してもよい。この場合、翼は水平方向に配置されてもよい。
【0022】
図5は、本発明の一実施形態に係るRPV10に設置された本発明の一実施形態を示した概略等角投影断面図である。RPV10は図1に示されるRPVに類似してもよいが、構成要素の大半は取り除かれている。図5は、使用中の複数の整流器200の適用状況を示す。この場合、各整流器200は1つの蒸気出口ノズル110と一体化される。本発明の一実施形態において、図5に示されるように、整流器200の全幅は蒸気出口ノズル110の全幅と同様であってもよい。
【0023】
先に説明したように、使用中、整流器200は蒸気出口ノズル110を介してRPV10から排出される蒸気に作用する。各整流器200は、渦の形成を阻止することにより流れ誘発振動を減少させてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態の構成要素は、整流器200がさらされる動作環境に耐えられる任意の材料から形成されてもよい。
【0025】
本発明のごく少数の例示的な実施形態に関して本発明を相当詳細に示し且つ説明したが、開示された実施形態に対して、特に以上の教示を考慮して種々の変形、省略及び追加が実施されてもよいので、以上の説明が本発明をそれらの実施形態に限定することを意図しないことは当業者により理解されるべきである。従って、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神及び範囲の中に含まれるそのようなすべての変形、省略、追加及び同等物を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0026】
10 原子炉圧力容器(RPV)
110 ノズル
200 整流器
210 ベース
220 渦制限器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム内の流れ誘発振動を減少する装置において、
流れ誘発振動を許容するシステム内に一体化するように適合可能なベース(210)と;
前記ベース(210)により支持され、且つ流れ誘発振動を発生する渦流の形成の確度を低下するように構成された渦制限器(220)とを具備し;
前記渦制限器(220)は、前記システムの流体の流路に隣接して配置され且つ前記流れ誘発振動のレベルを低下する振動軽減振動装置。
【請求項2】
前記ベース(210)はリング形である請求項1記載の振動軽減装置。
【請求項3】
前記渦制限器(220)は少なくとも1つの翼を具備し、前記少なくとも1つの翼は前記流路と係合する請求項3記載の振動軽減装置。
【請求項4】
前記ベース(210)及び前記渦制限器(220)は1つの整流器(200)を形成するように一体化される請求項3記載の振動軽減装置。
【請求項5】
前記流体は蒸気である請求項4記載の振動軽減装置。
【請求項6】
前記流路は蒸気流路である請求項5記載の振動軽減装置。
【請求項7】
前記整流器(200)は前記蒸気流路の中のノズル(110)と接合する請求項6記載の振動軽減装置。
【請求項8】
前記蒸気流路は従来の蒸気ボイラ、圧力容器、原子炉(10)又は他の蒸気系のうち少なくとも1つと一体化される請求項5記載の振動軽減装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの翼の位置は水平方向、垂直方向又はそれらを任意に組み合わせた方向のうち少なくとも1つである請求項3記載の振動軽減装置。
【請求項10】
複数の翼を更に具備し、前記複数の翼のうち各翼の位置は水平方向、垂直方向、斜め方向又はそれらを任意に組み合わせた方向のうち少なくとも1つである請求項9記載の振動軽減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−236851(P2010−236851A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71276(P2010−71276)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナージー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC