説明

蒸気発生器用給水管

【課題】管内における熱成層化を抑制することができる蒸気発生器用給水管を提供すること。
【解決手段】蒸気発生器の内部において水平方向に延在し、かつ蒸気発生器の外部から供給される冷却水が流通する管路22aを有する発生器内管部22と、発生器内管部と接続され、蒸気発生器内において発生器内管部の外部の空間40と管路とを連通する連通路が形成された連通管部25と、を備え、連通路の一端26aは、管路における冷却水の流れ方向と直交する断面の上端で管路に接続され、かつ、連通路の他端26bは、連通路の一端よりも鉛直方向の下側に位置しており、連通路における一端側と他端側とは、一端よりも鉛直方向上側の位置で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生器用給水管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加圧水型原子炉等の蒸気発生器内に冷却水を供給する給水管が知られている。給水管において、管内に蒸気が流入することなどにより、熱成層化現象が発生することがある。熱成層化現象は、疲労源の応力を発生させる原因ともなるため、好ましくない。また、流入した蒸気が再給水後に管内に残留した場合、ウォーターハンマが発生する可能性がある。ウォーターハンマは、内管に衝撃を発生させるため好ましくない。
【0003】
特許文献1には、給水リングを持ち上げるように折り曲げた給水管の内部上壁にせきを取り付けてなる蒸気発生器の給水管の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−121304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給水管の管内における熱成層化だけでなくウォーターハンマの発生を抑制することについて、なお検討の余地がある。本発明の目的は、管内における熱成層化を抑制し、かつ、ウォーターハンマの発生を抑制することができる蒸気発生器用給水管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蒸気発生器用給水管は、蒸気発生器の内部において水平方向に延在し、かつ前記蒸気発生器の外部から供給される冷却水が流通する管路を有する発生器内管部と、前記発生器内管部と接続され、前記蒸気発生器内において前記発生器内管部の外部の空間と前記管路とを連通する連通路が形成された連通管部と、を備え、前記連通路の一端は、前記管路における冷却水の流れ方向と直交する断面の上端で前記管路に接続され、かつ、前記連通路の他端は、前記連通路の前記一端よりも鉛直方向の下側に位置しており、前記連通路における前記一端側と前記他端側とは、前記一端よりも鉛直方向上側の位置で接続されていることを特徴とする。
【0007】
この蒸気発生器用給水管によれば、連通路における他端が気層に露出することを抑制し、管路に蒸気が流入することを抑制することで、蒸気発生器用給水管の管内におけるウォーターハンマを抑制することができる。
【0008】
また、上記蒸気発生器用給水管において、前記連通路の前記他端が、鉛直方向において前記発生器内管部の下端以下の位置にあることが好ましい。
【0009】
この蒸気発生器用給水管によれば、蒸気発生器内の水位が発生器内管部の下端まで低下した場合であっても連通路の他端が気層に露出することを抑制することができる。
【0010】
また、上記蒸気発生器用給水管において、前記連通路の前記他端が、前記外部の空間における冷却水の目標水位よりも鉛直方向の下側に位置していることが好ましい。
【0011】
この蒸気発生器用給水管によれば、蒸気発生器内の水位が目標水位以上である場合に連通路の他端が気層に露出することを抑制することができる。
【0012】
また、上記蒸気発生器用給水管において、更に、前記蒸気発生器の外殻部材を貫通する貫通孔に挿入され、かつ水平方向に延在する挿入管部を備え、前記蒸気発生器の外部から供給される冷却水は、前記挿入管部を介して前記管路に流入し、鉛直方向において、前記管路における冷却水の流れ方向と直交する断面の上端が前記挿入管部の内壁面の上端よりも上側に位置していることが好ましい。
【0013】
この蒸気発生器用給水管によれば、管路に蒸気が進入したとしても、その蒸気が挿入管部に到達することが抑制される。また、外部の空間から蒸気が管路に流入したとしても、その蒸気が挿入管部に到達することが抑制される。また、挿入管部に蒸気が残存した状態で蒸気発生器の外部から冷却水が挿入管部に供給された場合に、挿入管部内の蒸気は速やかに流れ去る。よって、挿入管部における熱成層化が抑制される。
【0014】
また、上記蒸気発生器用給水管において、前記連通路の前記他端が、鉛直方向において前記挿入管部の内壁面の上端よりも下側に位置していることが好ましい。
【0015】
この蒸気発生器用給水管によれば、蒸気発生器内の水位が挿入管部の内壁面の上端まで低下した場合であっても連通路の他端が気層に露出することを抑制することができる。
【0016】
また、上記蒸気発生器用給水管において、前記管路の下端が、前記挿入管部の内壁面の上端よりも鉛直方向上側に位置していることが好ましい。
【0017】
この蒸気発生器用給水管によれば、蒸気発生器内の水位が管路の下端まで低下した場合であっても、挿入管部内に冷却水が満たされた状態とすることができる。よって、挿入管部に対する蒸気の進入を抑制し、挿入管部における熱成層化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蒸気発生器用給水管の管内における熱成層化及びウォーターハンマの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施形態に係る蒸気発生器の概略図である。
【図2】図2は、第1実施形態にかかる蒸気発生器用給水管を示す断面図である。
【図3】図3は、実施形態にかかる蒸気発生器用給水管の要部を示す断面図である。
【図4】図4は、傾斜した下端面を有する連通管部の一例を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態にかかる蒸気発生器用給水管を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態にかかる蒸気発生器用給水管につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
(第1実施形態)
図1から図4を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、蒸気発生器用給水管に関する。図1は、本実施形態に係る蒸気発生器の概略図、図2は、本実施形態にかかる蒸気発生器用給水管を示す断面図、図3は、実施形態にかかる蒸気発生器用給水管の要部を示す断面図である。図2には、蒸気発生器用給水管を水平方向視した断面図が示されている。
【0022】
蒸気発生器1は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に用いられる。加圧水型原子炉は、原子炉冷却材および中性子減速材として軽水を使用している。加圧水型原子炉では、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧の軽水が一次冷却水として蒸気発生器1に送られる。蒸気発生器1は、高温高圧の一次冷却水の熱を二次冷却水に伝え、二次冷却水に水蒸気を発生させる。そして、この水蒸気によりタービン発電機が回されて発電する。
【0023】
図1に示すように、蒸気発生器1は、上下方向に延在され、かつ密閉された中空円筒形状を成し、上半部に対して下半部が若干小径とされた胴部2を有している。胴部2は、蒸気発生器1の外殻部材である。胴部2の下半部内には、該胴部2の内壁面と所定間隔をもって配置された円筒形状を成す管群外筒3が設けられている。この管群外筒3は、その下端部が、胴部2の下半部内の下方に配置された管板4まで延設され、管板4の上面から一定の隙間を設けている。管群外筒3内には、逆U字形状をなす複数の伝熱管5からなる伝熱管群51が設けられている。各伝熱管5は、U字形状の円弧部を上方に向けて配置され、下方に向く端部が管板4に支持されると共に、中間部が複数の管支持板6により支持されている。管支持板6には、多数の貫通孔(図示せず)が形成されており、この貫通孔内に各伝熱管5が非締結状態で貫通されている。
【0024】
胴部2の下端部には、水室7が設けられている。水室7は、内部が隔壁8により入室71と出室72とに区画されている。入室71には、各伝熱管5の一端部が接続され、出室72には、各伝熱管5の他端部が接続されている。また、入室71は、水室7の外部に通じる入口ノズル711を有し、出室72は、水室7の外部に通じる出口ノズル721を有している。そして、入口ノズル711には、加圧水型原子炉から一次冷却水が送られる冷却水配管(図示せず)が連結される一方、出口ノズル721には、熱交換された後の一次冷却水を加圧水型原子炉に送る冷却水配管(図示せず)が連結される。
【0025】
胴部2の上半部には、水蒸気を蒸気と熱水とに分離する気水分離器9、および分離された蒸気の湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする湿分分離器10が設けられている。気水分離器9の外周には、外部から胴部2内に二次冷却水の給水を行う蒸気発生器用給水管(以下、単に「給水管」と記載する。)20が挿入されている。さらに、胴部2の上端部には、蒸気排出口12が形成されている。また、胴部2の下半部内には、給水管20からこの胴部2内に給水された二次冷却水を、胴部2と管群外筒3との間を流下させて管板4にて折り返させ、伝熱管群51に沿って上昇させる給水路13が設けられている。なお、蒸気排出口12には、タービンに蒸気を送る蒸気供給通路(図示せず)が連結され、給水管20には、タービンで使用された蒸気が復水器(図示せず)で冷却された二次冷却水を供給するための冷却水配管(図示せず)が連結される。
【0026】
このような蒸気発生器1では、加圧水型原子炉で加熱された一次冷却水は、入室71に送られ、多数の伝熱管5内を通って出室72に至る。一方、復水器で冷却された二次冷却水は、給水管20に送られ、給水管20を介して胴部2内に供給される。本実施形態では、二次冷却水を単に「冷却水」とも記載する。胴部2内に供給された冷却水は、給水路13を通って伝熱管群51に沿って上昇する。このとき、胴部2内で、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われる。そして、冷やされた一次冷却水は出室72から加圧水型原子炉に戻される。一方、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行った二次冷却水は、胴部2内を上昇し、気水分離器9で蒸気と熱水とに分離される。そして、分離された蒸気は、湿分分離器10で湿分を除去されてからタービンに送られる。
【0027】
ここで、給水管20の管内において、蒸気と冷却水とが層状化したり、高温の冷却水と低温の冷却水とが層状化したりするなど、熱成層が発生する可能性が考えられる。熱成層が発生した場合、疲労源となる応力が生じるため好ましくない。また、流入した蒸気が再給水後に管内に残留した場合、ウォーターハンマが発生する可能性がある。ウォーターハンマは、内管に衝撃を与えるため好ましくない。給水管20における熱成層及びウォーターハンマの発生を抑制できることが望ましい。
【0028】
本実施形態の給水管20は、以下に詳細に説明するように、給水管20におけるウォーターハンマの発生を抑制できる連通管部25(図2参照)を備える。連通管部25は、管路22a内の冷却水を蒸気発生器1内の空間40に流出させる流出管である。図3に示すように、連通管部25には、発生器内管部22の管路22aと発生器内管部22の外部の空間40とを連通する連通路26が形成されている。連通路26の一端26aは管路22aに接続されており、他端26bは、外部の空間40に向けて開放されている。連通路26の他端26bは、一端26aよりも鉛直方向の下側に位置している。これにより、外部の空間40における冷却水の水位が低下した場合であっても、他端26bが気層に露出することが抑制される。よって、連通路26を介して管路22aに蒸気が流入することが抑制される。従って、本実施形態の給水管20によれば、給水管20内におけるウォーターハンマの発生が抑制される。
【0029】
図2に示すように、給水管20は、挿入管部21、発生器内管部22、接続管部24および連通管部25を備える。挿入管部21、発生器内管部22、接続管部24および連通管部25は、いずれも断面円形の管状部材である。挿入管部21、発生器内管部22、接続管部24および連通管部25には、それぞれその軸方向に断面円形の管路が形成されている。蒸気発生器1の外部から供給される冷却水は、挿入管部21から接続管部24を介して発生器内管部22の管路22aに流れる。管路22a内の冷却水は、連通管部25を介して蒸気発生器1内の空間40に流出する。
【0030】
胴部2は、管台11を有する。管台11は、胴部2の径方向外側に向けて突出する突出部111を有している。また、管台11には、管台11を突出部111の軸方向に貫通する貫通孔112が形成されている。貫通孔112は、突出部111を胴部2の径方向に貫通している。挿入管部21は、この貫通孔112に対して胴部2の径方向内側から嵌合している。挿入管部21は、挿入管部21の外周面と突出部111の内周面とが互いに対向する状態で管台11に対して溶接等により固定されている。つまり、挿入管部21は、蒸気発生器1の胴部2を貫通する貫通孔112に挿入されている。管台11の中心軸線、すなわち貫通孔112の中心軸線は、水平であり、これに対応して挿入管部21は水平方向に延在している。また、挿入管部21は、直線状に延在しており、その延在方向は胴部2の径方向となっている。
【0031】
発生器内管部22は、胴部2の内部、すなわち蒸気発生器1の内部に配置されている。発生器内管部22は、リング状に形成されており、水平に配置されている。つまり、発生器内管部22は、胴部2の内壁面2aに沿って胴部2の周方向に延在している。発生器内管部22は、例えば、胴部2の中心軸線50とリングの中心軸線とが同一線上となるように配置されてもよい。発生器内管部22は、ステー14を介して胴部2の内壁面2aによって支持されている。
【0032】
発生器内管部22の内部には、蒸気発生器1の外部から供給される冷却水が流通する管路22aが形成されている。発生器内管部22が水平方向に延在していることに対応して、管路22aも水平方向に延在している。つまり、管路22aでは、冷却水の流れ方向と直交する断面の上端22bは、軸方向におけるどの位置の断面においても鉛直方向の位置が等しい。また、管路22aでは、冷却水の流れ方向と直交する断面の下端22cは、軸方向におけるどの位置の断面においても鉛直方向の位置が等しい。このように、管路22aは、中心軸線が同一の水平面上に延在しており、かつ内径が一定の管路である。
【0033】
接続管部24は、挿入管部21と発生器内管部22とを接続している。接続管部24は、挿入管部21の延長線上に水平方向に延在している。接続管部24において、挿入管部21に接続された側と反対側の端部は発生器内管部22に接続されている。接続管部24は、発生器内管部22から胴部2の径方向の外側に向けて分岐する分岐管となっている。
【0034】
本実施形態では、挿入管部21、接続管部24および発生器内管部22は、それぞれの管路の上端の位置が同じ高さ位置となっている。つまり、挿入管部21と接続管部24との接続部における挿入管部21の内壁面(管路)の上端21aと、接続管部24の管路の上端24aと、発生器内管部22の管路22aにおける冷却水の流れ方向と直交する断面の上端22bとは鉛直方向の高さ位置が同じである。言い換えると、給水管20において、冷却水の流れ方向と直交する断面における上端の高さ位置は、給水管20の全ての位置で同一である。このように上端の位置が揃えられていることで、給水管20の管内に蒸気が滞留することが抑制される。なお、挿入管部21の中心軸線、接続管部24の中心軸線および発生器内管部22の中心軸線の鉛直方向における高さ位置が全て同じとされてもよい。
【0035】
接続管部24の管径(内径)は、例えば、挿入管部21の管径と同じとすることができる。また、発生器内管部22の管径は、例えば、挿入管部21および接続管部24の管径よりも小径とされる。
【0036】
発生器内管部22には、連通管部25が接続されている。連通管部25は、逆U字形状または逆J字形状をなしている。連通管部25は、発生器内管部22の軸方向に沿って複数配置されている。連通管部25は、例えば、発生器内管部22の軸方向に沿って等間隔で配置される。
【0037】
図3は、発生器内管部22および連通管部25を示す断面図である。図3には、発生器内管部22の軸方向と直交する断面、すなわち発生器内管部22の冷却水の流れ方向と直交する断面が示されている。図3に示すように、連通管部25には、管路25aが形成されている。管路25aは、蒸気発生器1内において発生器内管部22の外部の空間40と発生器内管部22の管路22aとを連通する連通路26として機能する。
【0038】
連通管部25は、湾曲部251と、第一直管部252と、第二直管部253とを有する。湾曲部251は、逆U字形状をなしており、両端部よりも中央部が鉛直方向上側に位置するように湾曲している。第一直管部252および第二直管部253は、それぞれ直線状の管部であり、鉛直方向に延在している。第一直管部252は、湾曲部251の一端と発生器内管部22とを鉛直方向に接続している。湾曲部251は、例えば第一直管部252を省略し、発生器内管部22に直接接続することもできる。
【0039】
第一直管部252は、発生器内管部22における頂部、すなわち発生器内管部22における冷却水の流れ方向と直交する断面の上端に接続されている。発生器内管部22における第一直管部252との接続位置には、管路25aと管路22aとを連通する連通孔22eが形成されている。つまり、連通孔22eは、管路22aと外部の空間40とを連通する連通路26の一部として機能する。本実施形態において、連通路26は連通管部25の管路25aおよび連通孔22eを含んでいる。本実施形態では、連通孔22eの径は、連通管部25の管路25aの径と同径とされている。
【0040】
連通管部25の管径(内径)と発生器内管部22の管径との関係は、例えば、連通管部25の流路断面積の合計が、発生器内管部22の流路断面積と等しくなるよう定めることができる。
【0041】
第二直管部253は、湾曲部251の他端に接続されている。第二直管部253は、発生器内管部22のリングの径方向において発生器内管部22よりも内側に位置している。第二直管部253は、湾曲部251との接続部から発生器内管部22の側方を通り発生器内管部22の下端に対応する高さ位置まで延在している。湾曲部251は、冷却水の流れ方向を上向きから下向きに反転させると共に、第二直管部253が発生器内管部22と干渉しないように第一直管部252と第二直管部253との間隔を確保している。発生器内管部22の軸方向と直交する断面において、発生器内管部22の存在する領域R1と第二直管部253の存在する領域R2とが水平方向において異なる領域とされている。このように、第二直管部253と発生器内管部22との間には適切な隙間が確保されている。
【0042】
蒸気発生器1の外部から管路22aに冷却水が供給されると、管路22a内の冷却水は、水圧により連通路26を介して外部の空間40に流出する。第二直管部253における下端面253aは、水平な面となっている。つまり、連通路26における管路22a側と反対側の端部は、鉛直方向の下方に向けて開放されている。これにより、連通路26を流れた冷却水は、鉛直下方に向けて流出する。
【0043】
発生器内管部22において、連通孔22eが頂部に形成されていることで、発生器内管部22における蒸気の滞留が抑制される。発生器内管部22内に蒸気溜りが生じたとしても、その蒸気は、冷却水の流出と共に、頂部の連通孔22eから発生器内管部22の外部に排出される。よって、発生器内管部22内に蒸気溜りが生じることによるウォーターハンマの発生が抑制される。
【0044】
また、連通孔22eに接続された連通管部25は、鉛直上側に湾曲した逆J字形状であるため、連通管部25を介して発生器内管部22内に蒸気が進入することが抑制される。連通管部25は、連通孔22eから鉛直方向上側に向けて延在し、湾曲部251において鉛直方向下側に折り返されている。これに対応して、連通路26は、管路22aと接続された一端26aから鉛直方向上側に向けて延在し、湾曲部251において鉛直方向下側に折り返されている。このように連通路26における他端26bが鉛直方向下側に向けて折り返されていることで、他端26bが気層中に露出することが抑制される。他端26bの露出が抑制されることで、連通路26を介して管路22aに蒸気が進入することが抑制されている。
【0045】
また、本実施形態の給水管20は、連通路26における流出口の高さ位置を下げることで、管路22aに対する蒸気の進入の抑制が図られている。具体的には、連通路26における管路22aと接続された一端26aよりも他端26bが鉛直方向の下側に位置している。以下の説明では、連通路26の他端26bを「流出口26b」とも記載する。連通路26の一端26aは、管路22aにおける冷却水の流れ方向と直交する断面の上端22bで管路22aに接続されており、連通路26の他端26bは、この上端22bよりも鉛直方向の下側に位置している。これにより、外部の空間40における冷却水の水位が管路22aの上端22bの位置まで低下したとしても、連通路26の他端26bは冷却水の水面下にある。このため、外部の空間40の蒸気が連通路26を介して管路22aに流入することが抑制される。
【0046】
特に、本実施形態では、連通路26の他端26bは、鉛直方向において発生器内管部22の下端以下の位置にある。図3に示すように、鉛直方向において、連通路26の他端26bは、発生器内管部22における冷却水の流れ方向と直交する断面の下端22f以下の位置、すなわち発生器内管部22の外周面における下端22f以下の位置にある。従って、外部の空間40における冷却水の水位が、発生器内管部22の下端22fまで低下したとしても、外部の空間40の蒸気が連通路26を介して管路22aに流入することが抑制される。
【0047】
また、本実施形態の給水管20では、連通管部25の下端面253aが気層中に露出したとしても、発生器内管部22の管路22aに対する蒸気の進入が抑制される。連通管部25が鉛直方向上側に湾曲する形状であることから、連通路26における一端26a側の第一直管部252と他端26b側の第二直管部253とは、一端26aよりも鉛直方向上側の位置で接続されている。第一直管部252と第二直管部253とを接続する湾曲部251は、一端26aよりも鉛直方向上側に位置していることから、外部の空間40の蒸気が他端26bから連通路26に進入したとしても、湾曲部251よりも一端26a側に蒸気が進入することが抑制される。
【0048】
また、本実施形態の給水管20では、冷却水の供給が停止されたときの管路22a内の冷却水の流出が抑制される。連通孔22eが発生器内管部22の頂部に形成されていることで、冷却水の供給が停止されているときに発生器内管部22内の冷却水が連通孔22eを介して流出してしまうことが抑制される。また、第一直管部252と第二直管部253とを接続する湾曲部251は、一端26aよりも鉛直方向上方に位置している。従って、連通管部25の下端面253aが気層中に露出した場合に、第二直管部253および湾曲部251内の冷却水が外部の空間40に流出したとしても、第一直管部252には冷却水が残された状態となる。これにより、管路22a内の冷却水の流出が抑制される。
【0049】
このように、本実施形態の給水管20では、管路22aに対する蒸気の進入が抑制され、かつ外部からの冷却水の供給が停止されているときに管路22a内の冷却水が流出してしまうことが抑制される。よって、給水管20内におけるウォーターハンマが抑制される。
【0050】
本実施形態の連通管部25は逆J字形状であったが、連通管部25の形状はこれには限定されない。連通管部25の軸方向に沿った形状によらず、連通路26における管路22aと接続された端部よりも管路22a側と反対側の端部が鉛直方向下側に位置していれば、管路22aへの蒸気の進入を抑制する効果を奏することができる。
【0051】
本実施形態では第二直管部253における下端面253aが水平な面であったが、これには限定されない。例えば、下端面253a、すなわち連通管部25における発生器内管部22に接続された側と反対側の端面が、水平方向に対して傾斜していてもよい。この場合、連通路26の他端26bの鉛直方向における位置は、例えば、他端26bにおける鉛直方向の最も上側の位置とすることができる。
【0052】
図4は、傾斜した下端面を有する連通管部25の一例を示す図である。図4に示すように、連通管部25の下端面253bが水平面に対して傾斜している場合、連通路26の他端26bにおける鉛直方向の上端26cが他端26bの鉛直方向の位置を代表するようにすればよい。つまり、外部の空間40における冷却水の水位が低下するときに連通路26の他端26bにおいて最初に気層に露出する部分である上端26cが、連通路26の一端26aや発生器内管部22の下端22fよりも鉛直方向の下側に位置するようにすればよい。
【0053】
本実施形態の連通管部25は、連通路26における流出口26bが発生器内管部22よりもリングの径方向における内側に位置しているが、これに代えて、流出口26bが発生器内管部22よりもリングの径方向における外側に位置していてもよい。
【0054】
本実施形態の発生器内管部22は、リング形状をなすものであったが、発生器内管部22の形状はこれには限定されない。
【0055】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例について説明する。上記第1実施形態では、連通路26の他端26bの鉛直方向における位置が、連通路26の一端26aや発生器内管部22の下端22fの位置に基づいて定められていた。本変形例では、これに代えて、連通路26の他端26bの位置が、外部の空間40における冷却水の水位の制御における目標水位に基づいて予め決められている。なお、冷却水の目標水位は、蒸気発生器1を有する原子力プラントの制御パラメータに依存して決まるものである。
【0056】
連通路26の他端26bは、例えば、冷却水の目標水位における予め定められた下限よりも鉛直方向の下側に位置するようにすることができる。例えば、原子力プラントの運転状況に応じて目標水位が変化する場合に、設定可能な目標水位の下限よりも連通路26の他端26bを鉛直方向の下側に配置するようにしてもよい。このようにすれば、水位の制御目標が予め定められた選択可能な範囲のどの位置とされていても、他端26bが気層に露出することが抑制される。
【0057】
なお、冷却水の目標水位に基づく連通路26の他端26bの位置の決め方は、これには限定されない。他端26bの位置は、例えば、原子力プラントにおける定常運転状態での目標水位よりも他端26bを下側に位置させるように定めることができる。
【0058】
(第2実施形態)
図5を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図5は、第2実施形態にかかる蒸気発生器用給水管を示す断面図である。図5には、図2と同様に蒸気発生器用給水管を水平方向視した断面図が示されている。
【0059】
本実施形態の給水管60において、上記第1実施形態の給水管20と異なる点は、発生器内管部62が挿入管部21に対して鉛直方向の上側に配置されている点である。これにより、挿入管部21の管内における熱成層化が効果的に抑制される。
【0060】
発生器内管部62は、上記第1実施形態の発生器内管部22と同様に、リング状に形成されており、蒸気発生器1の内部に水平に配置されている。また、発生器内管部62に形成された管路62aは、上記第1実施形態の管路22aと同様に水平方向に延在している。発生器内管部62の管径が挿入管部21の管径よりも小さい場合は、これに対応して接続管部64にテーパー部642が形成される。テーパー部642において、接続管部64の管径は、挿入管部21側から発生器内管部62側に向けて漸減している。この管径の減少に対応して、テーパー部642における管底は、挿入管部21側から発生器内管部62側に向けて鉛直方向上側に向かう傾斜を有している。
【0061】
管路62aにおける冷却水の流れ方向と直交する断面の上端62bは、挿入管部21と接続管部64との接続部における挿入管部21の内壁面の上端21aよりも鉛直方向の上側にある。つまり、鉛直方向において、連通路66と管路62aとの接続位置が、挿入管部21の内壁面の上端21aよりも上側に位置している。これに対応して、接続管部64は、冷却水の流れ方向における挿入管部21側よりも発生器内管部62側が鉛直方向の上側に位置する傾斜部641を有している。言い換えると、接続管部64は、挿入管部21に対して発生器内管部62を持ち上げるように折り曲げられている。
【0062】
このように発生器内管部62が挿入管部21に対して鉛直方向の上側に位置していることで、挿入管部21における熱成層化が抑制される。例えば、発生器内管部62の管路62a内に蒸気が進入したとしても、その蒸気が挿入管部21に到達することが抑制される。また、外部の空間40の蒸気が連通路66を介して発生器内管部62に流入した場合に、その蒸気が挿入管部21に到達することが抑制される。また、給水管60内に蒸気が残存した状態で蒸気発生器1の外部から冷却水が挿入管部21に供給された場合に、挿入管部21内の蒸気は速やかに発生器内管部62に流れ去る。この給水管60では、挿入管部21における熱成層化が抑制されることで、管台11における熱応力の発生が抑制されるという利点がある。
【0063】
特に、本実施形態の給水管60では、鉛直方向において、発生器内管部62の管路62aと挿入管部21の管路21bとは互いに異なる領域にあり、かつ管路62aが管路21bよりも鉛直方向の上方に位置している。言い換えると、発生器内管部62の管路62aにおける冷却水の流れ方向と直交する断面の下端62cが、挿入管部21と接続管部64との接続部における挿入管部21の内壁面の上端21aよりも鉛直方向の上側に位置している。これにより、挿入管部21における熱成層化がより確実に抑制される。例えば、外部の空間40の冷却水の水位が低下し、発生器内管部62内において管路62aの下端62cまで冷却水の水位が低下したような場合であっても、挿入管部21の管路21bは冷却水に満たされた状態とすることができる。よって、管路21bに対する蒸気の進入を効果的に抑制することができる。
【0064】
更に、本実施形態では、挿入管部21に対して発生器内管部62が持ち上げられたことに対応して、連通管部65が鉛直方向の下方に延長されている。連通管部65は、上記第1実施形態の連通管部25と同様に、逆J字形状をなしており、管路62aと外部の空間40とを連通する連通路66が形成されている。連通路66の一端66aは、管路62aにおける冷却水の流れ方向と直交する断面の上端62bと接続されている。連通路66の流出口である他端66bは、挿入管部21と接続管部64との接続部における挿入管部21の内壁面の上端21aよりも鉛直方向の下側に位置している。これにより、挿入管部21の内壁面の上端21aが露出する程度に外部の空間40の冷却水位が低下した場合であっても、連通路66の他端66bは気層に露出しないため、発生器内管部62に蒸気が進入することが抑制される。
【0065】
なお、連通路66における他端66bの鉛直方向における位置は、例えば、挿入管部21の内壁面の下端21cよりも下側に位置していてもよい。
【0066】
このように、本実施形態の給水管60によれば、給水管60内における熱成層化およびウォーターハンマを抑制可能であり、特に、挿入管部21の管路21bにおける熱成層化を効果的に抑制することができる。挿入管部21における熱成層化が抑制されることで、管台11における熱応力の発生が抑制され、管台11が保護されるという利点がある。
【0067】
上記の各実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明にかかる蒸気発生器用給水管は、管内における熱成層及びウォーターハンマを抑制するのに適している。
【符号の説明】
【0069】
1 蒸気発生器
2 胴部
11 管台
20,60 給水管
21 挿入管部
22,62 発生器内管部
22a,62a 管路
22e 連通孔
24,64 接続管部
25 連通管部
26,66 連通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器の内部において水平方向に延在し、かつ前記蒸気発生器の外部から供給される冷却水が流通する管路を有する発生器内管部と、
前記発生器内管部と接続され、前記蒸気発生器内において前記発生器内管部の外部の空間と前記管路とを連通する連通路が形成された連通管部と、
を備え、
前記連通路の一端は、前記管路における冷却水の流れ方向と直交する断面の上端で前記管路に接続され、かつ、前記連通路の他端は、前記連通路の前記一端よりも鉛直方向の下側に位置しており、
前記連通路における前記一端側と前記他端側とは、前記一端よりも鉛直方向上側の位置で接続されている
ことを特徴とする蒸気発生器用給水管。
【請求項2】
前記連通路の前記他端が、鉛直方向において前記発生器内管部の下端以下の位置にある
請求項1に記載の蒸気発生器用給水管。
【請求項3】
前記連通路の前記他端が、前記外部の空間における冷却水の目標水位よりも鉛直方向の下側に位置している
請求項1に記載の蒸気発生器用給水管。
【請求項4】
更に、前記蒸気発生器の外殻部材を貫通する貫通孔に挿入され、かつ水平方向に延在する挿入管部を備え、前記蒸気発生器の外部から供給される冷却水は、前記挿入管部を介して前記管路に流入し、
鉛直方向において、前記管路における冷却水の流れ方向と直交する断面の上端が前記挿入管部の内壁面の上端よりも上側に位置している
請求項1から3のいずれか1項に記載の蒸気発生器用給水管。
【請求項5】
前記連通路の前記他端が、鉛直方向において前記挿入管部の内壁面の上端よりも下側に位置している
請求項4に記載の蒸気発生器用給水管。
【請求項6】
前記管路の下端が、前記挿入管部の内壁面の上端よりも鉛直方向上側に位置している
請求項4または5に記載の蒸気発生器用給水管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220077(P2012−220077A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85438(P2011−85438)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)