説明

蒸着用容器、及びこれを備えた蒸着装置

【課題】外側容器に対する内側容器の取り外しが容易に行なえ、メンテナンスにかかる作業効率を向上させることができ、さらに蒸着材料の温度の測定精度を高めることができる。
【解決手段】それぞれセラミックス系材料からなる外側容器10と、この外側容器10の内側に配置される内側容器20とを備え、外側容器10の内周底面10aに内側容器20の外周底面20bが密着するとともに、外側容器10の内周側面10dと内側容器20の外周側面20aとの間に間隙Sが形成された構成の蒸着用容器1Aと、この蒸着用容器1Aを備えた蒸着装置T1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着材料を溶融させるために好適な蒸着用容器、及びこれを備えた蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、坩堝を用いてアルミニウム(Al)等の蒸着材料の蒸気を放出させる蒸着装置が知られている。このような蒸着装置では、坩堝に入れて真空蒸発させる場合、急冷却、急加熱を行うと坩堝とアルミニウムの熱膨張率の違いにより割れが生じることから、坩堝を二重にする対策を行う場合がある。
【0003】
また、坩堝を金属製の材料にすることで割れを防止し、熱伝導性が良くなるが、蒸着材料のアルミニウムと反応しやすく、坩堝に穴が開いてしまうおそれがある。そのため、外坩堝を金属製の材料とするとともに、内坩堝をセラミック系の材料とすることでアルミニウムによる反応を防止し、熱伝導性を高める目的で外坩堝と内坩堝の側面どうしを密着させたものもある(例えば、特許文献1参照)。
さらに、外坩堝と内坩堝との底面どうしの間に隙間を設けているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
図7は、特許文献2で開示されている坩堝の構造を示す一例である。図7の坩堝は、外坩堝30の内周側面30aと内坩堝31の外周側面31aとが密着し、外坩堝30の内周底面30bと内坩堝31の外周底面31bとの間に隙間sを設けた状態で外坩堝30内に内坩堝31を配置させた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3817054号公報
【特許文献2】特許第3841635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の坩堝においては、以下のような問題があった。
すなわち、外坩堝と内坩堝の側面どうしを密着させた状態で配置させると、加熱や冷却を繰り返すことにより外坩堝に内坩堝が嵌り込み、取り外しが難しくなる。とくに外坩堝と内坩堝とが異なる材料からなる場合には、それぞれの部材で伸びや縮みが異なるので、さらに密着性が大きくなってより取り外し難くなり、メンテナンス性が低下するといった問題があった。
また、内坩堝の内部の蒸着材料の温度は、外坩堝の底面に熱伝対の測定端を取り付けて測定するのが一般的であるが、図7に示すように外坩堝30と内坩堝31との底面30b、31bどうしの間に隙間sがあると、蒸着材料の正確な温度を図ることができないという問題もあった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、外側容器に対する内側容器の取り外しが容易に行なえ、メンテナンスにかかる作業効率を向上させることができる蒸着用容器、及びこれを備えた蒸着装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、蒸着材料の温度の測定精度を高めることができる蒸着用容器、及びこれを備えた蒸着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る蒸着用容器では、それぞれセラミックス系材料からなる外側容器と、外側容器の内側に配置される内側容器とを備え、外側容器の内周底面に内側容器の外周底面が密着するとともに、外側容器の内周側面と内側容器の外周側面との間に間隙が形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る蒸着装置では、上述した蒸着用容器を備えた蒸着装置であって、外側容器の外周側面の周囲を取り囲む加熱手段が設けられていることを特徴としている。
【0010】
本発明では、外側容器と内側容器とがセラミックス系の材料からなり、金属製の部材を用いていないので、加熱手段により容器を加熱してもアルミニウム等の蒸着材料との反応による劣化が無く、これにより容器に穴が開いてしまうといった不具合がなくなり、良好な蒸着が行える。
また、外側容器の内周側面と内側容器の外周側面との間に隙間を設けたことで、それぞれの容器に伸びが生じても両容器どうしが密着した状態で嵌り合うことがなく、外側容器に対する内側容器の取り外しが容易となり、メンテナンス性を向上させることができる。
一方、外側容器の底面に熱電対の測定端を取り付けて内側容器内の蒸着材料の温度を測定する場合であっても、外側容器の内周底面と内側容器の外周底面とが密着しているので、より正確な温度を測定することができる。
【0011】
また、本発明に係る蒸着用容器では、外側容器と内側容器とを同軸に配置する位置決め手段が設けられていることが好ましい。
本発明では、位置決め手段を設けることで、外側容器に対する内側容器の位置の再現性が得られ、位置決め手段によって内側容器を外側容器に一致させて両容器どうしを同軸に配置させることを簡単に行なうことができる。これにより、内側容器の外側容器に対する隙間が周方向全周にわたって一定となり、位置決め作業を行う必要がなくなる。そのうえ、配置後の内側容器の位置ずれをなくすことができる利点がある。
【0012】
また、本発明に係る蒸着用容器では、外側容器の上端が内側容器の上端よりも高い位置に配置されていることがより好ましい。
この場合には、内側容器を外側容器内に配置させた状態で、内側容器の開口縁が外側容器の開口縁の下側に位置するので、内側容器の開口縁から蒸着材料が溢れ出しても、内側容器と外側容器との間の隙間に流入し、外側容器から外方へ蒸着材料が溢れ出すのを防止することができる。そのため、蒸着用容器の外側に配置されるヒータ等の加熱手段に溢れ出た材料が付着するといった不具合を防止することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る蒸着用容器では、内側容器と外側容器との側壁面の傾斜角度が同一であることが好ましい。
これにより、内側容器と外側容器との間の隙間が全周にわたって一定となるので、外側容器から内側容器へ伝達される加熱温度も側壁面全面で均一となり、蒸着材料に対して安定した加熱を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る蒸着用容器を備えた蒸着装置では、外側容器の上端部分が加熱手段の上端から突出していることが好ましい。
この場合、外側容器及び内側容器の上端部分が加熱手段によって加熱されることがなく、上端部分がそれより下方の加熱領域よりも低温となる。そのため、内側容器内で加熱された蒸着材料が開口縁側へ向けて這い上がろうとしても上端部分の非加熱領域で温度が低下することとなり、その這い上がりが抑制されるので、蒸着材料の溢れ出しを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る蒸着用容器を備えた蒸着装置では、加熱手段は、外側容器の底面側にも配置されていることが好ましい。
本発明では、蒸着用容器の側面と同様に低面側も加熱手段によって加熱することができ、底面側からの放熱を抑えることができるので、蒸着材料に対して均一な温度で加熱させることができる。
【0016】
また、本発明に係る蒸着用容器を備えた蒸着装置では、外周側の加熱手段と蒸着用容器との間に隔壁が設けられていてもよい。
本発明では、加熱手段が隔壁によって覆われているので、蒸着用容器より蒸着材料が溢れ出した場合であっても、加熱手段に蒸着材料が付着することがなく、加熱手段の断線やショートを防止することができ、蒸着装置の復旧を早めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蒸着用容器、及びこれを備えた蒸着装置によれば、外側容器と内側容器との側壁面間に隙間が設けられているので、外側容器に対する内側容器の取り外しが容易に行なえ、メンテナンスにかかる作業効率を向上させることができる。
また、外側容器と内側容器の底面どうしが密着しているので、底面により蒸着材料の温度を測定する場合の測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態による蒸着用容器1Aを備えた蒸着装置T1を示す側断面図である。
【図2】第2の実施の形態による蒸着用容器1Bを示す側断面図である。
【図3】第3の実施の形態による蒸着用容器1Cを示す側断面図である。
【図4】第4の実施の形態による蒸着用容器1Dを示す側断面図である。
【図5】第5の実施の形態による蒸着用容器1Aを備えた蒸着装置T2を示す側断面図である。
【図6】第6の実施の形態による蒸着用容器1Aを備えた蒸着装置T3を示す側断面図である。
【図7】従来の蒸着用容器の一例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態による蒸着用容器、及びこれを備えた蒸着装置について、図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本第1の実施の形態による蒸着装置T1は、アルミニウム(Al)等の蒸着材料を溶融させるための蒸着用容器1Aと、この蒸着用容器1Aを加熱するためのヒータ2(加熱手段)とを真空槽内に配置させた構成となっている。
【0021】
蒸着用容器1Aは、二重坩堝であって、それぞれPBN、窒化アルミ等のセラミックス系材料の同材料からなる外側容器10と、この外側容器10の内側に配置される内側容器20とを備えている。
ここで、上述した蒸着用容器1Aの外側容器10と内側容器20は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置された状態で配設されている。本実施の形態では、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿った内側容器20側を上側、外側容器10側を下側という。また、容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0022】
蒸着用容器1Aは、内面にヒータ2(加熱手段)を備えた円筒状の遮蔽壁3と、その遮蔽壁3の下端開口を塞ぐ輻射板4とによって囲まれる空間内に配置されている。そして、遮蔽壁3の外周側には、冷却配管5が設けられている。つまり、蒸着用容器1Aは、外側容器10が径方向外方のヒータ2によって周囲が取り囲まれた状態で配置されている。なお、ヒータ2は、容器軸Oを中心にして周方向に巻き回したものが用いられているが、縦巻きのものを採用しても良い。
そして、外側容器10の外周底面10cには、熱電対6の測定端6aが接触され、外側容器10の温度が測定されるようになっている。外側容器10と内側容器20とは、詳しくは後述するが、それぞれの底面10b、10cどうしが密着しているので、熱電対6の測定値を内側容器20内の蒸着材料温度と略同一とすることができる。
【0023】
さらに、蒸着用容器1は、外側容器10の内周底面10aに内側容器20の外周底面20bが密着するとともに、外側容器10の内周側面10dと内側容器20の外周側面20aとの間に間隙Sが形成されている。
【0024】
外側容器10は、有底筒状をなし、容器軸O方向で底面側に向けて外径寸法が小さくなる筒部11と、筒部11の開口縁11aに沿って径方向外方に張り出す環状鍔部12とからなる。筒部11は、全面にわたって同じ厚さ寸法をなしている。そして、環状鍔部12が嵩上ブロック7を介して遮蔽壁3上に載置されており、外側容器10の上端がヒータ2(遮蔽壁3)の上端3aから所定の高さだけ突出している。ここで、嵩上ブロック7は、周方向全周にわたる環状に設けられていても良いし、部分的に設けられていても良い。要は、高さが周方向に一定であって、環状鍔部12が載置される外側容器10が水平に配置されれば良いのである。
【0025】
内側容器20は、有底筒状をなし、容器軸O方向で底面側に向けて外径寸法が小さくなるとともに、その外周側面20aが外側容器10の内周側面10dと同じテーパ面、すなわち外側容器10に対して同軸に配置された状態で外側容器10の内周側面10dに対して一定の前記間隙Sが形成され、内側容器20と外側容器10との側壁面の傾斜角度が同一となっている。そして、内側容器20の上端は、外側容器10の上端(開口縁11a)より上方へ突出している。
【0026】
次に、上述したように構成された蒸着用容器1Aの作用について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本蒸着用容器1Aでは、外側容器10と内側容器20とがセラミックス系の材料からなり、金属製の部材を用いていないので、ヒータ2により容器を加熱してもアルミニウム等の蒸着材料との反応による劣化が無く、これにより容器に穴が開いてしまうといった不具合がなくなり、良好な蒸着が行える。
【0027】
また、外側容器10の内周側面10dと内側容器20の外周側面20aとの間に隙間Sを設けたことで、それぞれの容器10、20に伸びが生じても両容器10、20どうしが密着した状態で嵌り合うことがなく、外側容器10に対する内側容器20の取り外しが容易となり、メンテナンス性を向上させることができる。
一方、外側容器10の外周底面10bに熱電対6の測定端を取り付けて内側容器20内の蒸着材料の温度を測定する際に、外側容器10の内周底面10aと内側容器20の外周底面20bとが密着しているので、より正確な温度を測定することができる。
【0028】
また、内側容器20と外側容器10との側壁面の傾斜角度が同一であり、内側容器20と外側容器10との間の隙間Sが全周にわたって一定となるので、外側容器10から内側容器20へ伝達される加熱温度も側壁面全面で均一となり、蒸着材料に対して安定した加熱を行うことができる。
【0029】
さらに、外側容器10は嵩上ブロック7によって嵩上げされており、外側容器10の上端部分がヒータ2を備えた遮蔽壁3の上端3aから上方に突出しているので、外側容器10及び内側容器20のそれぞれの上端部分がヒータ2によって加熱されることがなく、上端部分がそれより下方の加熱領域よりも低温となる。そのため、内側容器20内で加熱された蒸着材料が開口縁20c側へ向けて這い上がろうとしても上端部分の非加熱領域で温度が低下することとなり、その這い上がりが抑制されるので、蒸着材料の溢れ出しを防止することができる。
【0030】
上述した本第1の実施の形態による蒸着用容器、及びこれを備えた蒸着装置では、外側容器10の内周側面10dと内側容器20の外周側面20aとの間に隙間Sが設けられているので、外側容器10に対する内側容器20の取り外しが容易に行なえ、メンテナンスにかかる作業効率を向上させることができる。
また、外側容器10と内側容器20の底面どうしが密着しているので、その底面により蒸着材料の温度を測定する場合の測定精度を高めることができる。
【0031】
次に、本発明の蒸着用容器、及びこれを備えた蒸着装置による他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0032】
(第2の実施の形態)
図2に示す第2の実施の形態による蒸着用容器1Bは、外側容器10と内側容器20とを同軸に配置する位置決め手段として、外側容器10と内側容器20との底部にそれぞれ凸状部13、凹状部21を設けたものである。つまり、外側容器10には、その内周底面10aの中心を上方へ向けて突出させた円錐状の凸状部13が形成されている。内側容器20は、外周底面20bの中心を上方へ向けて突出させるとともに、前記凸状部13に一致する凹状部21が形成された構成となっている。なお、図2では、蒸着用容器1Bの周囲に設けられるヒータや遮蔽壁、嵩上ブロック等が省略されている。
【0033】
本蒸着用容器1Bでは、内側容器20の凹状部21を外側容器10の凸状部13に一致させることで、両容器10、20どうしを容易に同軸に配置させることができ、これにより内側容器20の外側容器10に対する隙間Sが周方向全周にわたって一定となり、位置決め作業を行う必要がなくなるうえ、配置後の内側容器20の位置ずれを無くすことができる利点がある。
しかも、外側容器10に凸状部13を設けることで、その外周底面10cには上方へ向けて凹む窪みが形成されることになり、この窪みの頂点部に熱電対6の測定端6aを配置することができることから、外側容器10に対する形態係数が大きくなり、より正確な温度計測が可能となる。
【0034】
(第3の実施の形態)
次に、図3に示す第3の実施の形態による蒸着用容器1Cは、外側容器10と内側容器20とを同軸に配置する位置決め手段として、外側容器10と内側容器20との間に周方向に沿うリング状のスペーサ8を介在させたものである。この状態において、外側容器10の内周底面10aと内側容器20の外周底面20bとが密着している。
このスペーサ8として、外側容器10の内周側面10dと内側容器20の外周側面20aとの間の隙間Sに配置される第1スペーサ8Aと、外側容器10の開口縁11aと内側容器20の外周側面20aとの間に配置される第2スペーサ8Bとを用いている。第1スペーサ8Aは、蒸着用容器1Cの上下方向で所定高さに配置される径寸法を有し、テーパ面に沿った形状をなしている。第2スペーサ8Bは、断面視で略L字型に形成されており、その一辺が外側容器10の環状鍔部12上に係止している。
【0035】
本第3の実施の形態による蒸着用容器1Cでは、外側容器10に対して第1スペーサ6A及び第2スペーサ6Bを介在させて内側容器20を配置させることで、内側容器20の外側容器10に対する隙間Sが周方向全周にわたって一定となり、上述した第2の実施の形態と同様に両容器10、20どうしを容易に同軸に配置させることができ、位置決め作業を行う必要がなくなるうえ、配置後の内側容器20の位置ずれを無くすことができるという効果を奏する。
【0036】
(第4の実施の形態)
次に、図4に示す第4の実施の形態による蒸着用容器1Dは、外側容器10の高さ寸法を内側容器20よりも高くしたものである。すなわち、外側容器10の上端位置(開口縁11a)が内側容器20の開口縁20cの位置よりも高い位置となっている。
この場合、内側容器20を外側容器10内に配置させた状態で、内側容器20の開口縁20cが外側容器10の開口縁11aの下側に位置するので、内側容器20の開口端20cから蒸着材料が溢れ出しても、内側容器20と外側容器10との間の隙間Sに流入し、外側容器10から外方へ材料が溢れ出すのを防止することができる。そのため、蒸着用容器の外側に配置されるヒータ2(図1参照)に溢れ出た材料が付着するといった不具合を防止することができる。
【0037】
(第5の実施の形態)
次に、図5に示すように、第5の実施の形態による蒸着装置T2は、上述した第1の実施の形態の蒸着用容器1Aが用いられ、下方に位置する輻射板4の上面にもヒータ2B(2)を配置させた構成となっている。
この蒸着装置T2では、蒸着用容器1Aの側壁面と同様に低面側もヒータ2(2A,2B)によって加熱することができ、底面側からの放熱を抑えることができるので、蒸着材料に対して均一な温度で加熱させることができる。
【0038】
(第6の実施の形態)
図6に示すように、第6の実施の形態による蒸着装置T3は、上述した第1の実施の形態の蒸着用容器1Aが用いられ、外周側のヒータ2と蒸着用容器1Aとの間にセラミック系の材料からなるカバー部材9(隔壁)を設けている。カバー部材9は、ヒータ2を覆うようにして、遮蔽壁3の全周にわたって配置されている。
この場合、カバー部材9がセラミック系の材料であるので、そのカバー部材9を介してヒータ2の熱が蒸着用容器1Aに加熱による熱効率を低下させることなく加熱することができる。そして、ヒータ2がカバー部材9によって覆われているので、蒸着用容器1Aより蒸着材料が溢れ出した場合であっても、ヒータ2に蒸着材料が付着することがなく、そのヒータ2の断線やショートを防止することができ、蒸着装置T3の復旧を早めることができる。
【0039】
以上、本発明による蒸着用容器、及びこれを備えた蒸着装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では外側容器10の上端部分をヒータ2を備えた遮蔽壁3の上端3aから上方へ突出させた構成としているが、この突出長は任意に設定することができ、また外側容器10を上端部分を突出させず遮蔽壁3の上端3aと同じ高さで配置する構成とするこも可能である。さらに、本実施の形態では外側容器10の嵩上げ方法として、嵩上ブロック7を用いているが、これに限定されることはなく、他の嵩上げ手段を採用してもよい。
【0040】
また、ヒータ2、遮蔽壁3、輻射板4、冷却配管5などの構成は、上述した実施の形態に限定されることはなく、適宜な形状とすることができる。
さらに、外側容器20に対する内側容器10の位置決め手段として、第2の実施の形態においてそれぞれの容器の底面に円錐状の凹凸を設ける手段とし、第3の実施の形態においてスペーサ8A、8Bを設ける手段としたが、これらに限定されることはなく、また、位置、形状なども適宜設定することが可能である。例えば、底面に設けられる凹凸状の窪み形状は、平面視で矩形状であっても良い。
【0041】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施の形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1A、1B、1C、1D 蒸着用容器
2、2A、2B ヒータ(加熱手段)
3 遮蔽壁
4 輻射板
6 熱伝対
7 嵩上ブロック
8、8A、8B スペーサ(位置決め手段)
9 カバー部材(隔壁)
10 外側容器
10a 内周底面
10b 外周側面
10c 外周底面
10d 内周側面
11 筒部
11a 開口縁
12 環状鍔部
13 凸状部(位置決め手段)
20 内側容器
20a 外周側面
20b 外周底面
20c 開口縁
21 凹状部(位置決め手段)
S 隙間
T1、T2、T3 蒸着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれセラミックス系材料からなる外側容器と、該外側容器の内側に配置される内側容器とを備え、
前記外側容器の内周底面に前記内側容器の外周底面が密着するとともに、
前記外側容器の内周側面と前記内側容器の外周側面との間に間隙が形成されていることを特徴とする蒸着用容器。
【請求項2】
前記外側容器と前記内側容器とを同軸に配置する位置決め手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蒸着用容器。
【請求項3】
前記外側容器の上端が前記内側容器の上端よりも高い位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着用容器。
【請求項4】
前記内側容器と前記外側容器との側壁面の傾斜角度が同一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蒸着用容器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蒸着用容器を備えた蒸着装置であって、
前記外側容器の外周側面の周囲を取り囲む加熱手段が設けられていることを特徴とする蒸着用容器を備えた蒸着装置。
【請求項6】
前記外側容器の上端部分が前記加熱手段の上端から突出していることを特徴とする請求項5に記載の蒸着用容器を備えた蒸着装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、前記外側容器の底面側にも配置されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の蒸着用容器を備えた蒸着装置。
【請求項8】
外周側の加熱手段と前記蒸着用容器との間に隔壁が設けられていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の蒸着用容器を備えた蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−172185(P2012−172185A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34494(P2011−34494)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】