説明

蓄光性カーペット

【課題】 カーペットの表面におけるパイルの上に蓄光材料を含む所定形状の蓄光層を形成した蓄光性カーペットにおいて、蓄光層をカーペットの表面におけるパイルの上に適切に形成することができ、またカーペットの表面におけるパイルの色彩が濃い場合にも、パイルの地の色が蓄光層を通して見えるのを防止すると共に、この蓄光層における発光性能を高め、夜間や停電時等において暗い場所での案内等の表示が適切に行えるようにする。
【解決手段】 カーペット10の表面におけるパイル11の上に所定形状になった白色系保持層20を形成し、この白色系保持層の上に蓄光材料を含む蓄光層30を積層させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は蓄光性カーペットに係り、特に、カーペットの表面におけるパイルの上に蓄光材料を含む所定形状の蓄光層を形成するようにした蓄光性カーペットにおいて、上記の蓄光層をカーペットの表面におけるパイルの上に適切に形成することができ、またカーペットの表面におけるパイルの色彩が濃い場合にも、パイルの地の色が蓄光層を通して見えるのを防止すると共に、この蓄光層における発光性能を高め、夜間や停電時等において暗い場所での案内等の表示が適切に行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カーペット表面のパイルの上に、有色塗料で文字、図形、模様、写真等を印刷した装飾用のカーペットが知られている。
【0003】
また、近年においては、夜間や停電時等において暗い場所での案内等の表示が適切に行えるようにするため、カーペットの表面におけるパイルに、蓄光材料を用いた蓄光部を所定形状に形成し、この蓄光部からの光によって案内等の表示を行うようにしたものが提案されている。
【0004】
ここで、カーペットの表面におけるパイルに蓄光材料を用いた蓄光部を所定形状に形成して案内等の表示を行うにあたり、例えば、特許文献1、2に示されるように、カーペットの表面におけるパイルの上に、発光性塗料や夜光塗料を所定形状に印刷や塗布により付与するようにしたものや、特許文献3に示されるように、カーペットの表面におけるパイルの一部に蓄光材料を含有させた蓄光性繊維を用いるようにし、或いは蛍光シートを基布とパイルの先端との間に介在させるようにしたカーペットが提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1、2に示されるように、カーペットの表面におけるパイルの上に、発光性塗料や夜光塗料を所定形状に印刷や塗布により付与する場合、発光性塗料や夜光塗料がパイル間に入り込んで、発光性塗料や夜光塗料を所定形状に適切に付与することが困難になるという問題があった。また、カーペットの表面におけるパイルの色彩が濃い場合には、パイルの地の色が発光性塗料や夜光塗料の層を通して見え、美観や表示機能が低下するという問題があった。さらに、発光性塗料や夜光塗料から発光された光がパイルに吸収されて発光性能が大きく低下し、夜間や停電時等において暗い場所での案内等の表示が適切に行えなくなるという問題があった。
【0006】
また、特許文献3に示されるように、カーペットの表面におけるパイルの一部に蓄光材料を含有させた蓄光性繊維を用いる場合、このような蓄光性繊維を通常のパイル繊維とは別に製造することが必要になる。さらに、このような蓄光性繊維をカーペットの一部に用いて所定形状の表示を行うようにする場合には、カーペット自体の製造が非常に面倒になる上、表示パターンを変更させることも非常に困難になり、カーペットの製造コストが高く付くなどの様々な問題があった。
【0007】
また、上記のように蛍光シートを基布とパイルの先端との間に介在させるようにしたカーペットの場合、この蛍光シートの上に位置するパイルが邪魔になり、十分な表示が行えなくなる上、この蛍光シートから発光された光がパイルに吸収される等により発光性能が大きく低下し、夜間や停電時等において暗い場所での案内等の表示が適切に行えなくなるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−142956号公報
【特許文献2】実用新案登録第3001016号公報
【特許文献3】特開2008−6160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、カーペットの表面におけるパイルに蓄光材料を用いた蓄光部を所定形状に形成して、夜間や停電時等において暗い場所での案内等の表示が行えるようにした蓄光性カーペットにおける上記のような様々な問題を解決することを課題とするものである。
【0009】
そして、この発明においては、カーペットの表面におけるパイルの上に蓄光材料を含む所定形状の蓄光層を形成するようにした蓄光性カーペットにおいて、上記の蓄光層をカーペットの表面におけるパイルの上に適切に形成することができ、またカーペットの表面におけるパイルの色彩が濃い場合にも、パイルの地の色が蓄光層を通して見えるのを防止すると共に、この蓄光層における発光性能を高め、夜間や停電時等において暗い場所での案内等の表示が適切に行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明における蓄光性カーペットにおいては、上記のような課題を解決するため、カーペットの表面におけるパイルの上に所定形状になった白色系保持層を形成し、この白色系保持層の上に蓄光材料を含む蓄光層を積層させるようにした。
【0011】
ここで、カーペットの表面におけるパイルの上に所定形状になった白色系保持層を形成するにあたり、この白色系保持層としては、白色系接着剤を用いるようにしたり、接着剤層の上に白色系シートを積層させたものを用いるようにしたりすることができる。
【0012】
また、この発明における蓄光性カーペットにおいては、カーペットの表面におけるパイルの上に直接、所定形状になった白色系保持層と蓄光層とを積層させるようにする他、このカーペットの表面におけるパイルに所定形状の凹部を形成し、この凹部に上記の白色系保持層と蓄光層とを積層させるようにすることができる。
【0013】
ここで、上記のようにカーペットの表面におけるパイルに所定形状の凹部を形成するにあたっては、カーペットの表面におけるパイルを加熱溶融させて所定形状の凹部を形成することが好ましい。
【0014】
また、この発明における蓄光性カーペットにおいては、上記の蓄光層に滑り防止材を含有させるようにすることができる。
【0015】
また、この発明における蓄光性カーペットにおいて、上記のカーペットは特に限定されないが、組み合わせや部分的な交換等が容易に行えるようにするためには、所定大きさの矩形状になったタイルカーペットを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
この発明における蓄光性カーペットにおいては、上記のようにカーペットの表面におけるパイルの上に所定形状になった白色系保持層を形成し、この白色系保持層の上に蓄光材料を含む蓄光層を積層させるようにしたため、蓄光材料を含む蓄光層がカーペットの表面におけるパイルの間に入り込むのが防止され、カーペットの表面におけるパイルの上に所定形状になった蓄光層が適切に形成されるようになる。
【0017】
また、この発明における蓄光性カーペットにおいては、上記のようにカーペットの表面におけるパイルの上に所定形状になった白色系保持層を形成し、その上に蓄光層を積層させるようにしたため、カーペットの表面におけるパイルの色彩が濃い場合にも、パイルの地の色が蓄光層を通して見えるのが防止され、美観や表示機能が低下するということがなく、またこの蓄光層からの光が上記の白色系保持層により反射されて、色彩の濃いパイルに吸収されることなく、カーペットの表面から照射されるようになり、蓄光層における発光性能が向上し、夜間や停電時等において暗い場所での案内等の表示が適切に行えるようになる。
【0018】
また、この発明における蓄光性カーペットにおいて、カーペットの表面におけるパイルに所定形状の凹部を形成し、この凹部に上記の白色系保持層と蓄光層とを積層させるようにすると、カーペットの表面にこれらの層が突出して、躓いたりするのが防止されるようになる。
【0019】
また、上記のようにカーペットの表面におけるパイルに凹部を形成するにあたり、カーペットの表面におけるパイルを加熱溶融させるようにすると、この凹部の表面が加熱溶融されたパイルにより密着した状態になって、凹部の表面における隙間が非常に少なくなり、上記の白色系保持層や蓄光層を形成する材料がカーペット表面のパイルの間に入り込むのが防止され、凹部の表面に白色系保持層と蓄光層とを適切に積層させることができるようになる。
【0020】
また、上記の蓄光層に滑り防止材を含有させると、この蓄光層の上を歩行した際に滑ったりするのが防止されるようになる。
【0021】
また、この発明における蓄光性カーペットにおいて、上記のカーペットに所定大きさの矩形状になったタイルカーペットを用いると、それぞれのタイルカーペットに適当な形状になった蓄光層を形成し、これらを適当に組み合わせて様々な表示が行えるようになると共に、部分的な交換等が容易に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態に係る蓄光性カーペットを添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る蓄光性カーペットは、特に下記の実施形態に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0023】
この実施形態に係る蓄光性カーペットにおいては、図1(A),(B)に示すように、カーペットとして、パイル11が植設された基布12の裏面に裏打ち材13が設けられて所定大きさの矩形状になったタイルカーペット10を用いるようにした。なお、カーペットはこのようなタイルカーペット10に限定されず、長尺状になったものや、面積が広いものであってもよい。
【0024】
ここで、上記のパイル11には、一般にナイロン,ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂繊維が用いられ、このパイル11は、図に示すようなループパイルの他に、カットパイルであってもよいが、後述するように、このパイル11の上に白色系保持層20や蓄光層30を形成する際に、これらの材料がパイル11の間に入り込むのを防止するためには、ループパイルであることが好ましい。
【0025】
また、上記の基布12は、織布又は不織布等のシート体からなり、上記のパイル11を十分に植設でき且つ破損などを生じない強度的にも優れたものであれば特にその素材は限定されず、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン等の合成繊維や、セルロース、ウール等の天然繊維を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
また、基布12の裏面に設けられる上記の裏打ち材13としては、例えば、塩化ビニル樹脂等のペーストゾル等を用いることができ、必要に応じて、カーボンブラック等の黒色顔料などの各種顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの充填剤、安定剤、老化防止剤などを混合してもよい。
【0027】
ここで、裏打ち材13は合成樹脂からなる単層のものであってよいが、この実施形態においては、パイル11が植設された基布12を安定的に固定するための合成樹脂ペーストゾル等からなる結合層13aを基布12の裏面に設けると共に、この結合層13aの裏面にガラス繊維製ヤーンの網状体等からなる補強布13bを設け、さらにこの補強布13bの裏面に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂や、SBR、NBR等の合成ゴム等からなるバッキング材13cを設けている。
【0028】
そして、この実施形態に係る蓄光性カーペットにおいては、図2及び図3に示すように、上記のタイルカーペット10におけるパイル11の上に、白色系接着剤を用いた白色系保持層20を所定形状(図に示す例では矢印形状)になるように形成し、この白色系保持層20の上に蓄光材料を含む蓄光層30を白色系保持層20に対応した形状に形成するようにしている。
【0029】
ここで、タイルカーペット10におけるパイル11の上に、所定形状になった白色系保持層20と蓄光層30とを形成するにあたっては、図4に示すように、形成する白色系保持層20や蓄光層30の形状に対応した穴部41が設けられたマスキング部材40を用い、タイルカーペット10におけるパイル11の上に、上記の穴部41を通して白色系接着剤を塗布し、これを硬化させて白色系保持層20を形成した後、蓄光材料とバインダーとを含む蓄光層用塗液を上記の穴部51を通して上記の白色系保持層20の上に塗布し、これを硬化させて蓄光層30を形成することができる。
【0030】
このようにタイルカーペット10のパイル11の上に白色系保持層20を設けた後、この白色系保持層20の上に蓄光材料を含む蓄光層30を形成すると、前記の蓄光層用塗液がタイルカーペット10におけるパイル11の間に入り込むのが防止され、タイルカーペット10のパイル11上に所定形状になった蓄光層30が適切に形成されるようになる。
【0031】
また、タイルカーペット10の表面におけるパイル11の色彩が黒色等の濃い色彩の場合にも、上記の白色系保持層20によって、パイル11の地の色が蓄光層30を通して見えるのが防止され、美観や表示機能が低下するということがない。
【0032】
さらに、夜間や停電時等の周りが暗い状態においては、この蓄光層30における蓄光材料からの光が上記の白色系保持層20により反射されて、色彩の濃いパイル11に吸収されることなく、タイルカーペット10の表面から照射されるようになり、暗い場所での案内等の表示が適切に行えるようになる。
【0033】
ここで、上記の白色系保持層20に用いる白色系接着剤の種類は特に限定されないが、例えば、それ自体が白色の変成シリコン系接着剤の他に、ラテックス系接着剤,ゴム系ホットメルト,溶融ポリマー接着剤,アクリレート接着剤等の公知の接着剤にチタンホワイト,炭酸カルシウム,酸化アルミニウム,セラミック微粉末,タルク等の白色顔料を含有させたものを用いることができるが、隠蔽性の高い変成シリコン系接着剤を用いることが好ましい。なお、上記のように公知の接着剤に白色顔料を含有させる場合、白色顔料が均一に分散されるようにするため、その粒径が30μm以下のものを用いることが好ましい。
【0034】
また、上記のように蓄光層30における蓄光材料からの光が白色系保持層20によって適切に反射されるようにすると共に、パイル11の色彩が黒色等の濃い色彩の場合にも、パイル11の地の色が蓄光層30を通して見えるのを防止するため、上記の白色系保持層20としては、JIS Z8722に規定される白色度が60以上、好ましくは80以上になったものを用いるようにし、また白色系保持層20の厚みを10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上になるようにする。但し、この白色系保持層20の厚みが厚くなりすぎると、タイルカーペット10の表面から突出する白色系保持層20及び蓄光層30の高さが高くなって躓きやすくなったり、白色系保持層20及び蓄光層30が剥がれやすくなったりするため、白色系保持層20の厚みを5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下になるようにする。
【0035】
また、上記の蓄光層30に用いる蓄光材料としては、一般に使用されている公知のものを用いることができ、特に、長く繰り返して使用することができ、放射性物質を含まず、残光輝度が高く、残光時間が長く、耐光性や耐久性に優れたものを用いることが好ましい。例えば、硫化カルシウム/ビスマス系(CaS/Bi)、硫化カルシウム・ストロンチウム/ビスマス系〔(Ca,Sr)S/Bi)、硫化亜鉛/銅系(ZnS/Cu)、硫化亜鉛・カドミウム/銅系〔(Zn,Cd)S/Cu〕等の硫化物系蓄光材料や、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等の金属酸化物を母体結晶としたものに、賦活剤としてセリウム、プラセオジム、ネオジム、サマルウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等の希土類元素加えたもの等を用いることができる。具体的には、N夜光ルミノーバ(根本特殊化学株式会社製)や、アルミン酸ストロンチウム系蓄光性蛍光体であるケミテックピカリコCP−04、ケミカラーNL(ケミテック株式会社製)や、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が主成分となるウルトラグロー(日亜化学株式会社製)等を用いることができる。
【0036】
また、上記の蓄光材料が蓄光層30中に均一に分散されるようにするため、その粒径が1〜100μmのもの、好ましくは10〜50μmのもの、より好ましくは10〜30μmのものを用いるようにし、また粒径の異なる2種以上のものを組み合わせて用いることも可能である。
【0037】
また、上記の蓄光層30中における蓄光材料の割合が少ないと、十分な蓄光性能を得ることが困難になり、残光輝度が低下したり、残光時間が短くなったりする一方、蓄光材料の割合が多くなりすぎると、蓄光層30の付着力や強度が低下するため、上記のバインダーに対して20〜60質量%、好ましくは30〜45質量%含有させるようにする。
【0038】
また、上記の蓄光層30の厚みが薄いと、十分な蓄光性能を得ることが困難になり、残光輝度が低下したり、残光時間が短くなったりする一方、蓄光層30の厚みが厚くなりすぎると、タイルカーペット10の表面から突出する蓄光層30の高さが高くなって躓きやすくなったり、蓄光層30が剥がれやすくなったりするため、蓄光層30の厚みを20μm〜10mm、好ましくは50μm〜5mm、より好ましくは70μm〜2mmの範囲になるようにする。
【0039】
また、上記の蓄光層30におけるバインダーとしては、例えば、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート、フッ素樹脂、アクリルシリコーン樹脂、石油樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、マレイン酸変性ロジンエステル、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂等の常温硬化型の合成樹脂及びこれらを2種以上混合させた混合樹脂や、イソプレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、スチレン−イソプレン−ブチレンブロック共重合ゴム等の合成ゴムや、天然ゴム等を用いることができる。
【0040】
また、上記の蓄光層30においては、その強度を向上させたり、滑りを抑制させたりするために、上記の蓄光材料とバインダーの他に、ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、セラミック繊維等の補強繊維や、滑石粉、珪石粉、マイカ、カーボン、セラミック等の無機粒子、フッ素化樹脂、ポリエチレン、天然若しくは合成ゴム等の有機粒子(又はチップ)を添加させることができる。さらに、発泡剤、難燃剤等の添加剤や、耐汚染性を向上させるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等の滑剤や、可塑剤老化防止剤、紫外線吸収剤、硬化剤等を添加させることも可能である。
【0041】
なお、この実施形態に係る蓄光性カーペットにおいては、タイルカーペット10の表面におけるパイル11の上に設ける白色系保持層20に、白色系接着剤を用いるようにしたが、図5に示すように、タイルカーペット10の表面におけるパイル11の上に、前記の変成シリコン系接着剤や他の公知の接着剤を用いて所定形状になった接着剤層21を形成し、この接着剤層21の上に対応した形状になった白色系シート22を積層させて白色系保持層20を設け、この白色系保持層20の上に、前記のようにして蓄光層30を設けるようにすることも可能である。
【0042】
ここで、上記の白色系シート22としては、前記の蓄光層30のバインダーに用いる樹脂やゴムに、前記の白色顔料を添加させてシート状に形成したものを用いることができ、またこのような白色系シート22を接着剤層21の上に設けるため、上記の接着剤層21に用いる接着剤は必ずしも白色系のものに限られず、透明なものであってもよい。
【0043】
また、この実施形態に係る蓄光性カーペットにおいては、タイルカーペット10の表面におけるパイル11の上に、そのまま所定形状になった白色系保持層20と蓄光層30とを形成するようにしたが、図6に示すように、タイルカーペット10の表面におけるパイル11を押圧しながら加熱溶融させて、タイルカーペット10の表面に上記のような所定形状になった凹部14を形成した後、図7に示すように、この凹部14の上に、前記のようにして白色系保持層20と蓄光層30とを形成することも可能である。
【0044】
ここで、上記のようにタイルカーペット10の表面におけるパイル11を押圧しながら加熱溶融させて、タイルカーペット10の表面に上記のような所定形状になった凹部14を形成するにあたっては、例えば、図8に示すように、上記の凹部14の形状に対応した加熱押圧部51を有する加熱用こて50を用い、この加熱用こて50の加熱押圧部51をタイルカーペット10表面のパイル11の上から押し付けて、タイルカーペット10表面のパイル11を加熱溶融させるようにすることができる。
【0045】
そして、このように加熱用こて50の加熱押圧部51によりタイルカーペット10表面のパイル11を押圧しながら加熱溶融させて、タイルカーペット10の表面に上記のような所定形状になった凹部14を形成すると、押圧されて凹んで密集した状態になったパイル11が加熱溶融されて密着した状態になり、上記のように白色系接着剤等を塗布して白色系保持層20を形成する際に、白色系接着剤等がタイルカーペット10の表面におけるパイル11の間に入り込むのが防止され、凹部14の表面に白色系保持層20が適切に形成されるようになり、この白色系保持層20の上に蓄光層30が適切に形成されるようになる。
【0046】
また、パイルの溶融によって形成されるタイルカーペット10の凹部14は、パイルが溶融する過程で微小な凹凸が形成された硬質の樹脂層となっている。そして、このような硬質の樹脂層の微細な凹凸の上に、白色系保持層20における白色系接着剤や接着剤層21が固着されるようになり、白色系保持層20の接着性が高くなって剥離しにくくなる。この結果、タイルカーペット10と白色系保持層20との層間での剥離が生じにくくなる。
【0047】
また、このようにタイルカーペット10の表面に形成された凹部14の上に白色系保持層20と蓄光層30とを形成すると、タイルカーペット10の表面から白色系保持層20と蓄光層30とが突出するのが抑制されて、歩行時などに躓いたりするのが防止されると共に、これにより白色系保持層20や蓄光層30がタイルカーペット10の表面から剥離されるのも防止されるようになる。
【0048】
特に、上記のようにパイルの溶融によって形成される硬質の樹脂層からなる凹部14の上に白色系保持層20を形成した場合には、さらに白色系保持層20と蓄光層30とが剥離しにくい構成となる。さらに、タイルカーペット10の表面から白色系保持層20と蓄光層30とが突出するのが抑制されるため、白色系保持層20と蓄光層30の層厚を大きく確保することができる。この結果、白色系保持層20の隠蔽効果と蓄光層30の発光を高めることができ、意匠性、表示性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の実施形態に係る蓄光性カーペットにおいて使用するタイルカーペットの概略平面図及び断面説明図である。
【図2】上記の実施形態に係る蓄光性カーペットにおいて、タイルカーペットの表面におけるパイルの上に、白色系保持層と蓄光層とを積層させた状態を示した概略断面図である。
【図3】上記の実施形態に係る蓄光性カーペットの概略平面図である。
【図4】上記の実施形態に係る蓄光性カーペットを製造するにあたり、穴部が形成されたマスキング部材を用いて、タイルカーペットの表面におけるパイルの上に白色系保持層と蓄光層とを積層させる状態を示した概略平面図である。
【図5】上記の実施形態に係る蓄光性カーペットにおいて、上記の白色系保持層として、接着剤層の上に白色系シートを積層させた第1の変更例の概略断面図である。
【図6】上記の実施形態に係る蓄光性カーペットの第2の変更例において、タイルカーペットの表面におけるパイルを押圧しながら加熱溶融させて、タイルカーペットの表面に凹部を形成した状態を示した概略断面図である。
【図7】上記の第2の変更例において、タイルカーペットの表面に形成された凹部の上に、白色系保持層と蓄光層とを形成した状態を示した概略断面図である。
【図8】上記の第2の変更例において、タイルカーペットの表面におけるパイルを押圧しながら加熱溶融させて凹部を形成するのに使用する加熱用こての概略側面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 タイルカーペット(シート材)
11 パイル
12 基布
13 裏打ち材
13a 結合層
13b 補強布
13c バッキング材
14 凹部
20 白色系保持層
21 接着剤層
22 白色系シート
30 蓄光層
40 マスキング部材
41 穴部
50 加熱用こて
51 加熱押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペットの表面におけるパイルの上に所定形状になった白色系保持層が形成され、この白色系保持層の上に蓄光材料を含む蓄光層が積層されてなることを特徴とする蓄光性カーペット。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄光性カーペットにおいて、上記の白色系保持層に白色系接着剤を用いたことを特徴とする蓄光性カーペット。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄光性カーペットにおいて、上記の白色系保持層が、接着剤層の上に白色系シートが積層されて構成されていることを特徴とする蓄光性カーペット。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の蓄光性カーペットにおいて、上記のカーペットの表面におけるパイルに所定形状の凹部が形成され、この凹部に上記の白色系保持層と蓄光層とが積層されてなることを特徴とする蓄光性カーペット。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄光性カーペットにおいて、上記のカーペットの表面におけるパイルが加熱溶融されて所定形状の凹部が形成されていることを特徴とする蓄光性カーペット。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の蓄光性カーペットにおいて、上記の蓄光層に滑り防止材が含有されていることを特徴とする蓄光性カーペット。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の蓄光性カーペットにおいて、上記のカーペットが所定大きさの矩形状になったタイルカーペットであることを特徴とする蓄光性カーペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−273759(P2009−273759A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129461(P2008−129461)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(595111594)株式会社アシスト (6)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】