説明

蓄光性塗膜形成方法、および蓄光性塗膜を有する複層塗膜

【課題】 蓄光性顔料の燐光を分散させることができると共に、これを広い面積に適用することのできる蓄光性塗膜形成方法、および蓄光性塗膜を有する複層塗膜を提供する。
【解決手段】 基材上に蓄光性を有する塗膜を形成する方法であって、基材上に、蓄光性機能を有する蓄光性顔料と、樹脂材料からなる結合剤とを含有する蓄光性塗料を塗布して蓄光層を形成する蓄光層形成工程と、形成した蓄光層の上に、光透過性を有する微細粒子と樹脂材料からなる結合剤とを含有する粒子層を形成する粒子層形成工程とを含む蓄光性塗膜形成方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄光性塗膜形成方法、および蓄光性塗膜を有する複層塗膜に関する。特に、装飾性に優れ、燐光が減じられることなく、更に耐候性も具備する蓄光性塗膜を形成する方法、および蓄光性塗膜を有する複層塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄光性顔料は、太陽光又は人工照明の光を照射した後、暗所において比較的長い時間燐光を発する顔料で、蓄電池の充放電に似ているところから畜光顔料と呼ばれ、安全標識板の他、各種の用途で用いられている。燐光は、励起光より長波長の光であるが、蛍光よりさらに長波長で、寿命も長く、光照射を止めても発光が続く点で蛍光と異なる。また、特殊な処理をした硫化亜鉛や塩化カルシウムは光を発し、これらリン光体は暗所の表示用、測定装置などに広く用いられている。そして従前において、化学的・光学的に優れた蓄光材として、SrAl:Eu2+,Dy3+などのアルカリ土類−アルミン酸塩蓄光型蛍光体も開発されている。
【0003】
このような蓄光材により所定の領域を燐光によって発光させるためには、従来(1)蓄光材を樹脂に混練して塗料とする方法、(2)蓄光材を樹脂に混練してシート状(テープ状)とする方法、(3)蓄光材を無機材料に混練又は塗して焼結する方法などが行われている。
【0004】
そして蓄光材を樹脂に混練して塗料とすることについては、特許文献1(特開2000−271534号公報)が提案されている。この文献には、自動車用樹脂基材の表面に、下塗り塗膜として少なくとも、リン酸系の処理を施した蓄光性顔料を含有するベース塗膜を設け、このベース塗膜上に透明性のクリヤー塗膜を設ける技術が記載されている。しかしながら、この文献には、ガラスビーズなどの微細粒子を含有することは記載されていない。
【0005】
また、特許文献2(特開2002−201429)には、不揃いで不定形である特定のガラスチップを含有する塗料組成物が記載されており、更にガラスビーズや蓄光性顔料を配合し得ることも記載されている。しかしながら、この文献に記載されている塗料組成物は、ビヒクル中にガラスビーズと蓄光性顔料とが混在するものであり、多層構造を構成するものではない。
【0006】
一方、従来、再帰反射シートや自反射機能を有する表示具の分野では、蓄光性顔料と共にガラスビーズを使用することも提案されている。例えば、特許文献3(特開2003−255869号公報)では、表示部材の一部に自反射機能をもったガラスビーズを付着させて、入射光を反射させると共に、蓄光性顔料により燐光を発することのできる表示具が提案されている。しかしながら、この文献の表示具は「透明部3の一部を蓄光材13で発光せしめるとともに、他の一部に自反射機能を有するガラスビーズ23による反射機能を持たせている」(段落番号〔0031〕)ものであり、積層構造を有するものではない。
【0007】
特許文献4(特開2000−319832号公報)には、セラミック蓄光部材の上面にガラスビーズを均一に敷いてホウケイ酸フリット層に埋着することが記載されているが、この文献に記載されているのは、焼成によって蓄光材を含有する乱反射層を形成するものである。
【0008】
特許文献5(特開平11−288233号公報)には、釉薬を母材とする金属箔又は金属粉末(反射素子)からなる層(A)、釉薬を母材とする蓄光素子からなる層(B)、及び釉薬を母材とするガラス粉末(反射素子)からなる層(C)の三層構造の情報表示装置が示されているが、何れの層も釉薬を母材として焼成されたものである。
【0009】
特許文献6(特開2001−337213号公報)には、プリズム層の下層に、実質的に透明な結合剤層、蓄光性発光物質を含有する機能性発光層を、この順に積層することが記載されているが、この文献に示されているのは再帰反射シートであり蓄光性塗料ではない。また機能性発光層の上層として設けられている反射素子層は、三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(プリズム層)からなり、塗装によって形成し得るものではない。
【特許文献1】特開2000−271534号公報
【特許文献2】特開2002−201429号公報
【特許文献3】特開2003−255869号公報
【特許文献4】特開2000−319832号公報
【特許文献5】特開平11−288233号公報
【特許文献6】特開2001−337213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ガラスビーズなどは、その1つ1つがレンズ乃至は鏡面となって、光を分散させることができることから、蓄光性顔料から成る層の上に配置すれば、蓄光性顔料の燐光も分散させることができる。また、太陽光や車のヘッドライトの光などの入射光を反射させることから、光が照射される場面では、蓄光性顔料による燐光以上の輝度を発することができる。
【0011】
しかしながら、従前においては、蓄光性顔料を塗料として使用する場合には、上記特許文献1及び2に記載されているように、ガラスビーズなどの微細粒子を含有しないか、或いは含有していたとしても、特許文献2に示されているように蓄光性顔料と混在させた状態で使用されているに過ぎない。
【0012】
一方、再帰反射シートや自反射機能を有する表示具の分野では、前記特許文献3乃至6に記載されているように、蓄光性顔料とガラスビーズなどからなる反射層とを別に設けたり、或いは積層させることも提案されているが、これらは釉薬を使用して焼結するものであったり、三角錐型キューブコーナー再帰反射素子(プリズム層)を使用するものであることから、大きい面積をのものについては適用するのが困難である。
【0013】
そこで本発明では、蓄光性顔料の燐光を分散させることができると共に、これを広い面積に適用することのできる蓄光性塗膜形成方法、および蓄光性塗膜を有する複層塗膜を提供しようとするものである。
【0014】
また、蓄光剤の表面には小さなひび割れが生じ易く、その結果、汚れが付着してしまい燐光の発光強度が低下すれるおそれもある。
【0015】
そこで本発明では、蓄光層の表面におけるひび割れの発生のおそれを無くして、更に燐光の照射方向を分散させることで、斜め方向から観察した時の輝度を向上させることのできる蓄光性塗膜形成方法、および蓄光性塗膜を有する複層塗膜を提供しようとするものである。
【0016】
更に、蓄光性顔料を含有する層上に絵や模様などを表示するためには、蓄光性顔料と共に他の有色顔料を配合したり、或いは当該層上に印刷等する事が行われている。しかしながらこのような方法では、有色顔料などによって燐光の輝度が減じられてしまうことになる。
【0017】
そこで本発明では、蓄光性顔料の燐光の輝度を減じることなく、その上に文字や図形などを表示することのできる蓄光性塗膜形成方法、および蓄光性塗膜を有する複層塗膜を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題の何れかを解決するべく、本発明では蓄光層と粒子層とを別に形成する事とし、更にこれらの層からなる蓄光性塗膜を、塗布や吹きつけによっても形成することのできる蓄光性塗膜形成方法、および蓄光性塗膜を有する複層塗膜を提供するものである。
【0019】
即ち本発明は、基材上に蓄光性を有する塗膜を形成する方法であって、基材上に、蓄光性機能を有する蓄光性顔料と結合剤とを含有する蓄光性塗料を塗布して蓄光層を形成する蓄光層形成工程と、形成した蓄光層の上に、光透過性を有する微細粒子と結合剤とを含有する粒子層を形成する粒子層形成工程とを含む蓄光性塗膜形成方法を提供し、前記課題の少なくとも1つを解決するものである。
【0020】
かかる本発明によれば、蓄光層を形成した後に粒子層を形成することで、塗布や吹咐によっても蓄光層上に粒子層を設けた蓄光性塗膜を形成することができる。これは、光透過性を有する微細粒子を、蓄光性顔料とは別に結合剤と組み合わせていることによる。
【0021】
上記本発明において、粒子層形成工程は、蓄光性塗料が硬化する前に行うこともできるが、望ましくは塗布した蓄光性塗料が硬化した後に行われる。これにより、層構造を確実に分けることができ、また蓄光層の表面が微細粒子によって粗くなる(粗面になる)ことを阻止できる為である。なお、本発明においては、蓄光性塗料が硬化する前に、その表面に微細粒子を吹き付けて僅かに埋め込み、その上に結合剤を塗布することもできる。
【0022】
また本発明では、予め形成している粒子層を蓄光層上に貼付しても良いが、十分な発光輝度を確保する為には、当該粒子層は塗布又は吹きつけ等による塗装方法によって形成されることが望ましい。別途粒子層を形成する場合、それを貼付する為には接着剤層を形成しなければならず、その結果、当該接着剤層自体の色によって燐光の輝度が減じられたり、微細粒子が蓄光層から離間してしまって、燐光の照射性が減じられるおそれがある為である。よって本発明の蓄光性塗膜形成方法において、前記粒子層形成工程は、発光ビーズと結合剤とを夫々別に塗布または吹き付けるか、又は結合剤中に発光ビーズを分散混合して、これを蓄光層上に直接塗布または吹き付けることにより行われる事が望ましい。
【0023】
そして上記本発明にかかる蓄光性塗膜形成方法では、さらに形成された前記粒子層の上に、結合剤を塗布又は吹き付けて被覆層を形成する、被膜層形成工程を含む事が望ましい。被覆層を形成することで、その表面を平滑にし、汚れの付着を回避する為である。
【0024】
更に本発明では、前記課題の少なくとも1つを解決する為に、蓄光性を有する塗膜からなる蓄光層を含んで構成された複層塗膜であって、当該複層塗膜は、前記した本発明にかかる蓄光性塗膜形成方法で形成されており、蓄光層上に粒子層が積層されていることを特徴とする蓄光性塗膜を有する複層塗膜を提供する。
【0025】
そして、かかる本発明の複層塗膜では、前記粒子層を、蓄光層における平面領域の一部の領域に形成することにより、当該粒子層の有無によって、燐光の照射具合が異なり、これにより輝度を現実ことなく、様々なデザインや、文字、図形、記号などを複層塗膜上に表現する事ができる複層塗膜が実現する。
【0026】
また、本発明では、前記課題の少なくとも1つを解決する為に、上記複層塗膜において、蓄光性を有する塗膜からなる蓄光層を含んで構成された複層塗膜であって、当該複層塗膜は、蓄光性機能を有する蓄光性顔料と結合剤とからなる蓄光層と、当該蓄光層上に形成される、光透過性を有する微細粒子と結合剤とからなる粒子層と、当該粒子層上に形成される、結合剤からなる被膜層とからなり、蓄光層における蓄光性顔料の燐光が被膜層の表面に透過することを特徴とする複層塗膜を提供する。
【0027】
かかる複層塗膜の製造方法は何等限定されるものではなく、蓄光層の上に、粒子層、被膜層の順で積層してなる層構造を有するものである。このような層構造を具備することにより、蓄光性顔料の燐光光度を現実ことなく、かつその表面が汚れ難い複層塗膜が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明にかかる蓄光性塗膜形成方法の一例を示す工程図であり、図2は他の実施の形態にかかる蓄光性塗膜形成方法を示す工程図である。また図3は、複層塗膜の実施形態を示す斜視図である。
【0029】
図1に示す蓄光性塗膜形成方法では、適宜前処理を行った基材10上に蓄光性塗料を塗布又は吹きつけ塗装して蓄光層20を形成し(蓄光層形成工程:A)、これを乾燥硬化させる。
【0030】
基材10は、金属製のものや合成樹脂製のものの他、木材などの天然樹脂であって良い。また板状、フィルム状、シート状、布帛状の何れであっても良い。このような基材10に対して前処理を行うか否かは、基材10の材質や性状(表面粗さなど)、及び色によって適宜調整されるべきであり、接着力を向上させるためのプライマーや、塗料の染み込みを抑えるためシーラント(シーラー)を使用するなど、塗装に際して一般に行われている方法を採用することができる。ただし、蓄光層20は下地が白色であると、より輝度の高い燐光を発することができることから、当該基材が白色以外である場合は、タルクその他の白色顔料乃至は塗料を塗布・吹き付けておくことが望ましい。
【0031】
このような蓄光性塗料は、蓄光性機能を有する蓄光性顔料と結合剤とを含有しており、蓄光性顔料は、結合剤中に均質に分散している状態に形成されている。また、この蓄光性塗料は、乾燥硬化させた後に膜厚約10〜40μmのとなる様に塗装し、これを10〜30分間放置して自然乾燥させることができる。また自然乾燥意外にも、約80℃から100度の温風に20分から30分間晒す焼付け塗装により蓄光性塗料を硬化させることもできる。
【0032】
蓄光層を乾燥硬化させた後、当該蓄光層20の上に微細粒子含有組成物を塗装して粒子層30を形成し(粒子層形成工程:B)、これを乾燥させる。微細粒子含有組成物は、乾燥硬化させた後の膜厚が約100〜800μmのとなる様に塗装し、これを20〜50分間放置して自然乾燥させることができる。この微細粒子含有組成物は、微細粒子31が結合剤32中に分散した性状を有し、微細粒子としては平均粒径約50μm〜800μmのものを使用するのが望ましい。
【0033】
乾燥硬化した粒子層30では、硬化した結合剤32から微細粒子31が突起しており、この微細粒子31により蓄光性顔料の燐光を拡散させることができる。
【0034】
以上の工程で形成した複層塗膜100は、これをそのまま複層塗膜として使用する事もできるが、本実施の形態では、この粒子層の上に、更に結合剤を塗布又は吹き付けて被膜層40を形成し(被膜層形成工程:C)、複層塗膜101を形成している。
【0035】
次に、上記本実施の形態に使用することのできる各成分の具体例を示す。
「結合剤」
蓄光層20、粒子層30および被服層40に使用される結合剤は、少なくとも硬化した後において光透過性を有するもの、望ましくは透明なものが使用され、使用耐久性を考慮した上で、表面硬度、耐候性を有するものが好適に使用される。また蓄光層に使用されるものであれば、蓄光性顔料を分散、保持でき、かつ基材との接着性が高いものが好適に使用され、粒子層に使用されるものであれば、蓄光層に対して微細粒子を保持するものが好適に使用される。
【0036】
かかる結合剤としては、塗装の分野で使用されているクリヤ、ウレタン、ラッカーなどの他、アクリル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂等を使用することができ、これらはそれぞれ単独でもしくは共重合された形で、又はブレンドして用いることができる。中でも耐候性に優れ、加工適性の良好なアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂が好ましく、アクリル樹脂が最も好適である。また、蓄光性顔料の結合剤 として広く利用されている疎水性の結合剤 (タナカケミカル株式会社製 商品名:コーテックスメジューム)や、親水性結合剤 (十条ケミカル株式会社製商品名:アクアセットインキ 5100)も好適に使用できる。
【0037】
また、蓄光性顔料における燐光の光度を上げると共に、基材との密着性を高め、更に十分な耐候性を有する複層塗膜を形成するには、この結合剤として、特定の水溶性樹脂を使用するのが望ましい。
【0038】
更に、蓄光層20、粒子層30および被服層40に使用される結合剤は、各層同士の親和性を考慮して、同じ性質(親水性または疎水性)の結合剤が使用されることが望ましい。
【0039】
また、耐候性を向上する目的で紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤などをそれぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。さらに着色剤として各種の有機顔料、無機顔料、蛍光顔料、染料および蛍光染料などを含有させることができる。
【0040】
「蓄光性顔料」
蓄光性塗料に使用される蓄光性顔料は、日中の太陽光、また夜間の蛍光灯、自動車のヘッドライト等の照明の光などを照射することにより、光励起過程で、そのエネルギーを吸収して燐光を発する顔料であれば特に制限無く使用することができ、適宜着色されたものであっても良い。
【0041】
このような蓄光性顔料としては、N夜光蓄光顔料、S夜光蓄光顔料などの一般に市場で入手可能な蓄光顔料がいずれも使用でき、特に限定されるものではないが、蓄光性能の良さの観点から酸化物系蓄光性顔料、特にアルカリ土類金属の酸化物と酸化アルミニウムを母結晶とし、賦活剤として希土類金属原子を含有してなる蓄光性顔料であるのが好ましい。このアルカリ土類金属としては、Ca、Ba及びSrからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であるのが好ましく、また希土類金属としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であるのがよい。このような蓄光性顔料は、さらに必要に応じて共賦活剤としてMn、SnおよびBiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有してなる蓄光性顔料であることが好ましい。
【0042】
このような蓄光性顔料としては、例えば、SrO・1.75(Al,B):Eu,Dy、SrO・1.75(Al,B):Eu,Ho、SrAl:Eu、SrAl:Eu,Dy、SrAl:Eu,Nd、SrAl:Eu,Pr、SrAl:Eu,Sm、SrAl:Eu,Tb、SrAl:Eu,Ho、SrAl:Eu,Mn、SrAl:Eu,Sn、SrAl:Eu,Bi、CaAl:Eu,Nd、CaAl:Eu,Sm、CaAl:Eu,Tm、CaAl:Eu,Nd,La、CaAl:Eu,Nd,Ce、CaAl:Eu,Nd,Pr、CaAl:Eu,Nd,Sm、CaAl:Eu,Nd,Gd、CaAl:Eu,Nd,Tb、CaAl:Eu,Nd,Dy、CaAl:Eu,Nd,Ho、CaAl:Eu,Nd,Er、CaAl:Eu,Nd,Tm、CaAl:Eu,Nd,Yb、CaAl:Eu,Nd,Lu、CaAl:Eu,Nd,Mn、CaAl:Eu,Nd,Sn、CaAl:Eu,Nd,Bi、Ca0.9Sr0.1Al:Eu,Nd,La、Ca0.9Sr0.1Al:Eu,Nd,Dy、Ca0.7Sr0.3Al:Eu,Nd,Dy、Ca0.9Sr0.1Al:Eu,Nd,Ho、Ca0.7Sr0.3Al:Eu,Nd,Hoなどが挙げられる。これらは1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0043】
また、上記蓄光性顔料が配合される蓄光性塗料には、その他にも必要に応じて、通常の着色剤、蛍光発色剤等のその他の着色剤や、光安定剤、熱安定剤、充填剤、架橋剤等の各種添加剤を配合しても良い。
【0044】
「微細粒子」
粒子層30を形成する微細粒子は、少なくとも光透過性を有するものであって、望ましくは透明のものが使用される。例えば、ガラスの他、各種樹脂を用いて形成することができる。このような、微細粒子は、平均粒径は50μm〜800μmのものが好適に使用され、例えば光を反射し易い、ガラスビーズ 、ガラスカレットなどの他、これと類似の性状(色や大きさ)を有する樹脂粒子が使用される。
【0045】
上記各成分の配合割合は、使用する結合剤の物性(硬さ、粘土など)に応じて適宜選択することができ、用途に応じて自在に調整することができる。
【0046】
次に、図2を参照しながら、他の実施の形態にかかる蓄光性塗膜形成方法を説明する。
この実施の形態に示す方法では、上記の実施の形態と同じく所定の前処理を行った基材10に対して、蓄光層形成工程(A)において、蓄光性塗料を塗布又は吹きつけ塗装して蓄光層20を形成する。そしてこの蓄光層20が硬化した後、粒子層形成工程(B)で、ガラスビーズやガラスカレットなどの微細粒子31を振り掛けるか、吹きつけ塗装し、その上から結合剤32を塗布又は吹きつけ塗装を行い、粒子層30を形成する。そして、この結合剤32を硬化させて、本実施の形態における蓄光性塗膜を有する複層塗膜102を作成する。
【0047】
このような方法で蓄光性塗膜102を形成する場合、ガラスビーズやガラスカレットなどの微細粒子31は、蓄光層20の硬化を待たずに、その表面に吹き付けることもでき、丁度微細粒子31の一部が蓄光層20の表面に露出するように、吹き付け塗装時の力(風力・速度)を調整すれば、微細粒子31が蓄光層20に保持されながらも、蓄光性顔料の燐光を散乱させることのできる塗膜が形成される。また、微細粒子31の上から設けられる結合剤32の膜厚を調整すれば、図2に示した塗膜と同じように、表面が平滑で、汚れが付着し難い塗膜が形成される。
【0048】
図3は、上記の方法等によって作成された複層塗膜を示す斜視図であり、特にその表面側に、絵や文字、或いは記号などを出現させた態様を示している。
【0049】
かかる複層塗膜では、図示するような模様を表示するために、当該模様を形作るように粒子層30を形成している。即ち、図3の態様では、当該模様内にだけ粒子層30を形成し、それ以外の領域は蓄光層20が露出するものとして形成されている。このように粒子層30を形成するには、蓄光層20上に、この模様を形作るように結合剤32を塗布、吹きつけ又は印刷し、その上から微細粒子31を降りかけることにより、当該微細粒子31をこのような模様に固着する事ができる。その他にも、微細粒子含有組成物をこのような模様に塗布しても良い。
【0050】
以上の様に形成された複層塗膜では、微細粒子31としてガラスビーズなど透明なものを使用すれば、その下層にある蓄光層20の燐光は何等減じられることなく、この粒子層30が形成されていない領域(蓄光層20が露出している領域)と同等の輝度で発光することができる。しかしながら、正面以外の方向から当該複層塗膜を観察した場合には、粒子層の有無により燐光の見え方(輝度を含む)が異なり、その結果、当該模様を視認できるようになる。
【0051】
即ち、蓄光性顔料の燐光光度を減じることなく、文字や記号或いは図形を表現することのできる複層塗膜となっている。
【0052】
尚、本発明の蓄光性塗膜形成方法、および蓄光性塗膜を有する複層塗膜は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の蓄光性塗膜形成方法、および蓄光性塗膜を有する複層塗膜は、道路標識などの表示板の製造方法の他、建築物などの壁面塗装方法、アクセサリーなどの製造方法など、蓄光性塗膜を形成するものであれば、各種のものを作成するのに使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる蓄光性塗膜形成方法の一例を示す工程図
【図2】他の実施の形態にかかる蓄光性塗膜形成方法を示す工程図
【図3】複層塗膜の実施形態を示す斜視図
【符号の説明】
【0055】
10 基材
20 蓄光層
30 粒子層
31 微細粒子
32 結合剤
40 被服層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に蓄光性を有する塗膜を形成する方法であって、当該方法は、
基材上に、蓄光性機能を有する蓄光性顔料と、樹脂材料からなる結合剤とを含有する蓄光性塗料を塗布して蓄光層を形成する蓄光層形成工程と、
形成した蓄光層の上に、光透過性を有する微細粒子と樹脂材料からなる結合剤とを含有する粒子層を形成する粒子層形成工程とを含むことを特徴とする、蓄光性塗膜形成方法。
【請求項2】
前記粒子層形成工程は、塗布した蓄光性塗料の硬化後に行われる、請求項1に記載の蓄光性塗膜形成方法。
【請求項3】
前記粒子層形成工程は、光透過性を有する微細粒子と結合剤とを夫々別に塗布もしくは吹き付けるか、または結合剤中に、光透過性を有する微細粒子を分散混合して、これを塗布または吹き付けることにより行われる請求項1又は2に記載の蓄光性塗膜形成方法。
【請求項4】
さらに、形成された前記粒子層の上に、結合剤を塗布又は吹き付けて被覆層を形成する、被膜層形成工程を含む請求項1乃至の何れか一項に記載の蓄光性塗膜形成方法。
【請求項5】
蓄光性を有する塗膜からなる蓄光層を含んで構成された複層塗膜であって、
当該複層塗膜は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法で形成されており、
蓄光層上に粒子層が積層されていることを特徴とする蓄光性塗膜を有する複層塗膜。
【請求項6】
前記粒子層は、蓄光層における平面領域の一部の領域に形成されている請求項5に記載の複層塗膜。
【請求項7】
蓄光性を有する塗膜からなる蓄光層を含んで構成された複層塗膜であって、
当該複層塗膜は、蓄光性機能を有する蓄光性顔料と結合剤とからなる蓄光層と、
当該蓄光層上に形成される、光透過性を有する微細粒子と結合剤とからなる粒子層と、
当該粒子層上に形成される、結合剤からなる被膜層とからなり、
蓄光層における蓄光性顔料の燐光が被膜層の表面に透過する、蓄光性塗膜を有する複層塗膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−161791(P2008−161791A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353272(P2006−353272)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(507001645)
【Fターム(参考)】