説明

蓄光素子

【課題】光をそのまま光として蓄光させることができ、大面積化及び薄膜化の可能な蓄光素子を提供する。
【解決手段】蓄光素子Aは、螺旋構造を有する液晶により構成され、選択反射波長域を有する第一液晶層1と、前記第一液晶層1と同じ巻き方向の螺旋構造を有する液晶により構成され、前記第一液晶層1と重複する波長域で選択反射波長域を有する第二液晶層2と、前記第一液晶層1と前記第二液晶層2との間に介在し、自身を透過する光を二つの固有偏光に分離すると共に前記固有偏光間に位相差を生じさせる位相差生成層3と、を備えている反射層4を複数備えている。複数の前記反射層4のうち隣接する少なくとも二つの反射層4、4の間に蓄光層5が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を蓄積する蓄光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォトニック結晶などを利用した蓄光素子が知られている。フォトニック結晶を用いた蓄光素子では、内部に発光物質を挿入し、その発光物質を電界や光照射により発光させることにより蓄光させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−250333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにフォトニック結晶などを用いた蓄光素子においては、「電気から光」や、「光から光」といったエネルギー変換の過程を必要とするために、その変換効率が小さいことが課題となっている。一方、反射層を利用した蓄光素子も検討されている。蓄光素子においては、光の入射と放射を制御することが必要である。光の入射には、外部からの光を透過させるとともに内部の光を放射させないようにすることが可能な非相反性を有する反射層(アイソレータ)を用いることができる。また、光の放射には、蓄光素子の光透過率をスイッチングにより変化させて行うことできる。
【0005】
上記のような性質を有する反射層としては、ガーネット結晶光アイソレータが知られている。しかしながら、ガーネット結晶光アイソレータは、結晶成長により作製するため、作製が困難であるとともに、製造コストがかかるものであった。また、ガーネット結晶光アイソレータは、結晶成長により作製するために大面積化が困難であった。さらに、ガーネット結晶光アイソレータでは、十分な非相反性を担保するためには光の伝搬方向の厚みを大きくしなければならず、薄膜化が困難であった。
【0006】
また、特許文献1のように、偏光反射層と位相差層とを有する集光素子が開示されているが、このものは蓄光性を有するものではなかった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、光をそのまま光として蓄光させることができ、素子を簡単に製造することができ、大面積化及び薄膜化の可能な蓄光素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蓄光素子は、螺旋構造を有する液晶により構成され、選択反射波長域を有する第一液晶層と、前記第一液晶層と同じ巻き方向の螺旋構造を有する液晶により構成され、前記第一液晶層と重複する波長域で選択反射波長域を有する第二液晶層と、前記第一液晶層と前記第二液晶層との間に介在し、自身を透過する光を二つの固有偏光に分離すると共に前記固有偏光間に位相差を生じさせる位相差生成層と、を備えている反射層を複数備え、複数の前記反射層のうち隣接する少なくとも二つの反射層の間に蓄光層が形成されているものである。
【0009】
本発明では、前記位相差生成層は液晶により構成されていることが好ましい。さらに、前記位相差生成層は、外場により液晶分子の配向が制御可能なものであることが好ましい。あるいはさらに、前記位相差生成層は、外場により液晶分子の配向が、異方性のある異方配向状態と、前記異方配向状態よりも異方性が低く或いは異方性がない非異方配向状態とに切り替え制御可能なものであることが好ましい。また、前記位相差生成層は、外場により分子配向が変動してから外場が取り除かれても変動後の分子配向が保持される液晶から構成されていることが好ましい。
【0010】
本発明では、前記第一液晶層及び前記第二液晶層の少なくとも一方は、液晶分子の配向が制御可能なものであることが好ましい。また、前記第一液晶層及び前記第二液晶層の少なくとも一方は、コレステリックブルー相を含むことが好ましい。また、前記第一液晶層及び前記第二液晶層は、選択反射波長域に波長450〜700nmの波長域を含むことが好ましい。
【0011】
本発明では、前記反射層は、前記第一液晶層及び前記第二液晶層の少なくとも一方が、複数の液晶層により構成されていてもよい。また、前記反射層は柔軟材料により形成されていてもよい。また、前記反射層は保護基板の表面に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光をそのまま光として蓄光させることができ、また、素子を簡単に製造することができ、さらに、大面積化及び薄膜化の可能な蓄光素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、蓄光素子の実施の形態の一例を示す断面図であり、(b)及び(c)は、反射層の一例を示す断面図である。
【図2】蓄光素子の機構を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1(a)は、蓄光素子Aの実施の形態の一例を示している。
【0015】
蓄光素子Aは、複数の反射層4、4、…を備えたものであり、複数の前記反射層4のうち隣接する少なくとも二つの反射層4、4の間に蓄光層5が形成されている。図1(a)の形態では、二つの反射層4、4を備えており、その反射層4間に蓄光層5が設けられている。
【0016】
反射層4は、第一液晶層1、第二液晶層2、及び、位相差生成層3を備えており、第一液晶層1と第二液晶層2との間に位相差生成層3が介在している構造を有している。
【0017】
第一液晶層1及び第二液晶層2は、螺旋構造を有する液晶から形成されている。第一液晶層1における螺旋構造と第二液晶層2における螺旋構造の巻き方向は、同じ方向であることが好ましい。このような第一液晶層1及び第二液晶層2は、螺旋構造の形態に応じた選択反射波長域を有し、この選択反射波長域内の波長を有する光のうち前記螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光を高効率で反射すると共に、それ以外の光を透過させる。
【0018】
第一液晶層1の選択反射波長域と、第二液晶層2の選択反射波長域とは、少なくとも一部が重複している。それにより、選択反射波長域の光を効率よく反射することができる。
【0019】
位相差生成層3は、自身を透過する光を二つの固有偏光に分離すると共に前記固有偏光間に位相差を生じさせる機能を有している。
【0020】
図1(a)の形態では、一方の反射層4と他方の反射層4とは、蓄光層5を介して、第一液晶層を内側にして対向して配置されている。
【0021】
本実施形態における蓄光メカニズムを説明する。
【0022】
蓄光素子Aに光が入射すると、図1(b)に示すように、光はまず外側に配置された反射層4(第一の反射層4a)の第二液晶層2に入射する。この第一の反射層4aに入射する光は、図1(b)の矢印P1に示すように、一部反射されるが第二液晶層2、位相差生成層3及び第一液晶層1を透過し、蓄光層5に到達する。
【0023】
この蓄光層5に到達した光には、第一液晶層1の選択反射波長域と第二液晶層2の選択反射波長域とに共に含まれる波長を有する光(以下、特定光という)が含まれている。
【0024】
ここで、単純に光の伝搬のみを考えた場合には、特定光が到達しないようにも思えるが、実際には、前進波と後進波の結合が起きるといった現象や、共振現象などが波長変化に関係し、また、液晶層と位相差生成層との間の屈折率段差により、伝搬光の位相が変化する。これにより、特定光が蓄光層5に到達するものと考えられる。
【0025】
蓄光層5に到達した光は、さらに内側に配置された第二の反射層4bに向って進行する。この第二の反射層4bに向う光のうち、第一液晶層1の選択反射波長域と第二液晶層2の選択反射波長域とに共に含まれる波長を有する光(特定光)に着目すると、この特定光のうち第一液晶層1の螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光は、図1(c)の矢印P2に示すように、第一液晶層1で効率良く反射される。
【0026】
また、特定光のうち第一液晶層1の螺旋構造とは逆の巻き方向を有する円偏光は、第一液晶層1を透過して位相差生成層3に入射し、この位相差生成層3内で偏光状態が変化する。偏光状態が変化した光には、第一液晶層1及び第二液晶層2の螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光成分が含まれる。特に、位相差生成層3で固有偏光間の位相差が180°になる場合には、偏光状態が変化した光は第一液晶層1及び第二液晶層2の螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光となる。この偏光状態が変化した光が更に第二液晶層2へ入射すると、図1(c)の矢印P3で示すように、第二液晶層2の螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光成分が第二液晶層2で効率良く反射される。
【0027】
これにより、第二の反射層4bでは発光素子3が発する光のうち特定光が高効率で反射する。更に、蓄光層5に到達した光に、第一液晶層1の選択反射波長域と第二液晶層2の選択反射波長域のうちの一方のみに含まれる波長の成分が含まれていれば、この成分の一部も第二の反射層4bで反射する。
【0028】
第二の反射層4bにより反射された光は、蓄光層5内を逆方向に第一の反射層4aに向って進行する。この光は第二の反射層4bによって反射された光であり、前記特定光が多く含まれている。
【0029】
そして、この反射して第一の反射層4aに蓄光層5側から向う光のうち、第一液晶層1の選択反射波長域と第二液晶層2の選択反射波長域とに共に含まれる波長を有する光(特定光)に着目すると、この特定光のうち第一液晶層1の螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光は、図1(b)の矢印P4に示すように、第一液晶層1で効率良く反射される。
【0030】
また、特定光のうち第一液晶層1の螺旋構造とは逆の巻き方向を有する円偏光は、第一液晶層1を透過して位相差生成層3に入射し、この位相差生成層3内で偏光状態が変化する。偏光状態が変化した光には、第一液晶層1及び第二液晶層2の螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光成分が含まれる。特に、位相差生成層3で固有偏光間の位相差が180°になる場合には、偏光状態が変化した光は第一液晶層1及び第二液晶層2の螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光となる。この偏光状態が変化した光が更に第二液晶層2へ入射すると、図1(b)の矢印P5で示すように、第二液晶層2の螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光成分が第二液晶層2で効率良く反射される。
【0031】
そして、第一の反射層4aで反射された光は、第二の反射層4bの方向へ向かい、再び第二の反射層4bで反射される。
【0032】
このように、蓄光層5に到達した光は、第二の反射層4bによって反射され、さらに反射された光は第一の反射層4aによって反射され、この反射が繰り返されて蓄光層5で光が蓄光されるのである。
【0033】
第一液晶層1の選択反射波長域、第二液晶層2の選択反射波長域、並びに位相差生成層3での固有偏光間の位相差が適宜調整されることにより、反射層4の反射効率、並びに外部から蓄光層5に到達する外部光の透過効率が適宜調整され得る。そして、前記の特許文献1とは異なり、法線方向を含めたあらゆる方向で位相差が存在しているために、蓄光素子Aは優れた蓄光性を示すものである。
【0034】
第一液晶層1及び第二液晶層2を構成し得る液晶としては、コレステリック液晶(カイラルネマチック液晶)、ネマチック液晶とコレステリック液晶との混合物、カイラル剤が添加されているネマチック液晶、カイラル剤が添加されているスメクチック液晶等が挙げられる。液晶は高分子であっても、低分子であっても、高分子と低分子との混合物であってもよい。液晶の螺旋構造が維持される限り、液晶には色素などの適宜の添加物が添加されていてもよい。液晶が適切な架橋剤により架橋されるなどにより、液晶の螺旋構造が固定化されていることも好ましい。架橋化のための手法としては、ガラス固定化、加熱、紫外線や電子線等のエネルギー線の照射などが、挙げられる。
【0035】
第一液晶層1及び第二液晶層2のうち少なくとも一方がコレステリック液晶から構成される場合、このコレステリック液晶を構成する材料(液晶物質)としては、高分子液晶物質と低分子液晶物質が挙げられる。高分子液晶物質としては、各種の主鎖型高分子液晶物質、側鎖型高分子液晶物質、これらの混合物等が挙げられる。
【0036】
主鎖型高分子液晶物質としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリベンズイミダゾール系、ポリベンズオキサゾール系、ポリベンズチアゾール系、ポリアゾメチン系、ポリエステルアミド系、ポリエステルカーボネート系、ポリエステルイミド系等の高分子液晶物質、これらの混合物等が挙げられる。
【0037】
側鎖型高分子液晶物質としては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系、ポリエステル系等の直鎖状または環状構造の骨格鎖を有する物質に側鎖としてメソゲン基が結合した高分子液晶物質、これらの混合物等が挙げられる。
【0038】
高分子液晶物質の構成単位としては、芳香族あるいは脂肪族ジオール単位、芳香族あるいは脂肪族ジカルボン酸単位、芳香族あるいは脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位等が挙げられる。
【0039】
低分子液晶物質としては、飽和ベンゼンカルボン酸誘導体類、不飽和ベンゼンカルボン酸誘導体類、ビフェニルカルボン酸誘導体類、芳香族オキシカルボン酸誘導体類、シッフ塩基誘導体類、ビスアゾメチン化合物誘導体類、アゾ化合物誘導体類、アゾキシ化合物誘導体類、シクロヘキサンエステル化合物誘導体類、ステロール化合物誘導体類などの末端に反応性官能基を導入した液晶性を示す化合物や、前記化合物誘導体類のなかで液晶性を示す化合物に架橋性化合物を添加した組成物などが挙げられる。
【0040】
液晶物質の具体的な一例としては、コレステロール分子のOH基を種々のラジカルで置換することで得られるコレステロール誘導体が挙げられる。コレステロール誘導体としては、コレステリルプロミネート、コレステリルベンゾネート、コレステリルパルミネートなどが挙げられる。
【0041】
第一液晶層1及び第二液晶層2のうち少なくとも一方がネマチック液晶を用いて形成される場合、ネマチック液晶を形成するための液晶物質は、高分子液晶物質、低分子液晶物質のいずれでもよい。高分子液晶物質としては、各種の主鎖型高分子液晶物質、側鎖型高分子液晶物質、これらの混合物などが挙げられる。
【0042】
主鎖型高分子液晶物質としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリベンズイミダゾール系、ポリベンズオキサゾール系、ポリベンズチアゾール系、ポリアゾメチン系、ポリエステルアミド系、ポリエステルカーボネート系、ポリエステルイミド系等の高分子液晶物質、これらの混合物等が挙げられる。
【0043】
側鎖型高分子液晶物質としては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系、ポリエステル系等の直鎖状または環状構造の骨格鎖を有する物質に側鎖としてメソゲン基が結合した高分子液晶物質、これらの混合物などが挙げられる。
【0044】
低分子液晶物質としては、飽和ベンゼンカルボン酸誘導体類、不飽和ベンゼンカルボン酸誘導体類、ビフェニルカルボン酸誘導体類、芳香族オキシカルボン酸誘導体類、シッフ塩基誘導体類、ビスアゾメチン化合物誘導体類、アゾ化合物誘導体類、アゾキシ化合物誘導体類、シクロヘキサンエステル化合物誘導体類、ステロール化合物誘導体類などの末端に反応性官能基を導入した液晶性を示す化合物や、前記化合物誘導体類のなかで液晶性を示す化合物に架橋性化合物を添加した組成物などが挙げられる。
【0045】
ネマチック液晶を形成するための液晶物質の具体例を下記[化1]に示す。これらの液晶物質のうち複数種が適宜併用されてもよい。
【0046】
【化1】

【0047】
第一液晶層1及び第二液晶層2のうち少なくとも一方がスメクチック液晶を用いて形成される場合、スメクチック液晶を形成するための液晶物質としては、2−(4−ヘキシロキシ−フェニル)−5−オクチル−ピリミジン、5−ヘキシル−2−(4’−ペンチル−ビフェニル−4−イル)−ピリミジン、[1,1’,4,1”]ターフェニル−4,4”−ジカルボン酸ビス−(1−メチル−ヘプチル)エステルなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0048】
ネマチック液晶又はスメクチック液晶にカイラル剤が添加される場合、適宜のカイラル剤が使用され得る。カイラル剤の具体例を下記[化2]に示す。なお、「・」はカイラル部位(不斉部位である)。
【0049】
【化2】

【0050】
第一液晶層1を構成する液晶と第二液晶層2を構成する液晶のうち少なくとも一方には、コレステリックブルー相が含まれていることも好ましい。コレステリックブルー相は、螺旋軸が3次元的に周期構造を形成しているため、液晶層にコレステリックブルー相が含まれていると、種々の入射角で入射する光が液晶層により反射され得るようになる。これにより蓄光素子Aの高効率化が可能となる。
【0051】
コレステリックブルー相は、コレステリックブルー相I、コレステリックブルー相IIなど、いかなる構造であってもよい。更に、液晶の螺旋構造が固定化されていない場合には、コレステリックブルー相の配向は、外場の変化に応じて非常に速やかに変化する。このため、蓄光素子Aに、後述する配向制御手段が備えられる場合には、コレステリックブルー相を含む液晶層(第一液晶層1及び/又は第二液晶層2)に外場をかけられることで、或いは液晶層にかけられている外場が変化させられることで、液晶層の光の反射性並びに透過性が速やかに切り替え可能となる。よって高速スイッチング可能な反射層4が実現できる。この場合の外場としては、液晶層を構成する液晶の組成などに応じ、磁界、電界、光、温度などが挙げられる。
【0052】
コレステリックブルー相を含む液晶を形成するための液晶物質としては、例えば、チッソ社製の混合液晶である商品名JC1041を48.2質量%、ネマチック液晶を形成する液晶物質である4−シアノ−4’−ペンチルビフェニルを47.4質量%、メルク社製のカイラル剤である商品名ZLI−4572を4.4質量%の割合で混合することで得られる組成物が知られているが、これに限られない。
【0053】
コレステリックブルー相が含まれる液晶には、コレステリックブルー相が発現する温度域の拡大、機械的強度の向上、外場による配向の切り替え速度の高速化などのために、高分子材料や架橋剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0054】
液晶物質から第一液晶層1又は第二液晶層2を形成するための方法としては、公知の方法が採用され得る。例えば液晶物質が適宜の基材上に塗布され、更に熱処理が施されることでシート状に成形されることで、第一液晶層1又は第二液晶層2が形成される。
【0055】
基材としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等から形成されるフィルム、これらのフィルムの一軸延伸フィルム等が挙げられる。
【0056】
この基材には必要により、予め配向能を発現させるための処理が施される。配向能とは、液晶を構成する分子の配向を誘引する能力である。配向能を発現させるための処理としては、基材を適度な条件で加熱しながら延伸する処理、基材の表面をレーヨン布等で一方向に擦るいわゆるラビング処理、基材の表面上にポリイミド、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等の公知の配向剤からなる分子配向層を重ねる処理、酸化珪素等を斜方蒸着する処理などが挙げられる。
【0057】
第一液晶層1が基材上で形成される場合には、第一液晶層1は基材に積層されたままこの基材と共に反射層4に組み込まれても、基材から分離されてから反射層4に組み込まれても、いずれでもよい。第二液晶層2の場合も同様である。
【0058】
第一液晶層1及び第二液晶層2の選択波長領域は、第一液晶層1及び第二液晶層2を構成する液晶の螺旋構造における螺旋ピッチに依存する。液晶の螺旋ピッチは、公知の方法により制御され得る。例えば、液晶物質により液晶層が形成される際の雰囲気の温度、磁界、電界等が調整されたり、液晶物質にUV光等の光を照射されると共にその照射光量が調整されたり、液晶物質中のコレステリック液晶物質やカイラル剤などの添加濃度が調整されたりすることで、液晶の螺旋ピッチが調整され得る。
【0059】
第一液晶層1及び第二液晶層2の選択波長域の広さは、適宜の方法により調整され得る。例えば液晶層が異常光屈折率と常光屈折率との差の大きい液晶(屈折率異方性が高い液晶)から形成されると、液晶層の選択波長領域が広くなる。液晶の屈折率異方性を高めるための手法としては、液晶中の分子をビフェニル基等で修飾すること、液晶中の分子の二次のオーダーパラメータを大きくする(分子の配向性を高める)ことなどが、挙げられる。
【0060】
第一液晶層1及び第二液晶層2が、螺旋ピッチが部分的に変調している螺旋構造を有する液晶から構成される場合も、その螺旋構造に応じて液晶層の選択波長領域が広くなる。このような液晶は、公知の手法により形成され得る。例えば温度勾配や電界勾配がかけられている雰囲気下で液晶物質が成形されることで、螺旋ピッチが部分的に変調している螺旋構造を有する液晶が形成され得る。
【0061】
第一液晶層1及び第二液晶層2が、液晶から構成される複数の層(液晶層)を含み、これらの液晶層が反射層4の積層方向に沿って積層し、更にこれらの液晶層の選択波長領域が互いに異なる場合も、各液晶層の選択反射波長域に応じて液晶層の選択波長領域が広くなる。これらの液晶層は、単層からなる第一液晶層1や第二液晶層2が形成される場合と同じ手法により形成され得る。複数の液晶層を含む第一液晶層1又は第二液晶層2は、例えば複数の液晶層が順次積層されながら形成されることで作製される。複数の液晶層が別個に形成されてから、これらの液晶層が重ねられることで第一液晶層1又は第二液晶層2が作製されてもよい。
【0062】
第一液晶層1と第二液晶層2のうち少なくとも一方が、同じ選択反射波長域を有する複数の液晶層を含んでもよい。この場合は、液晶層の積層数に応じて反射層4の反射率が高くなる。
【0063】
また、第一液晶層1と第二液晶層2のうち少なくとも一方が、逆の巻き方向の螺旋構造を有する複数の液晶層から形成されていてもよい。この場合、反射層4の光反射性並びに光透過性の調整を行うことができる。
【0064】
第一液晶層1及び第二液晶層2の少なくとも一方内において、光学特性の異なる複数の液晶層が反射層4の積層方向と直交する方向に並んで配されていてもよい。この場合は反射層4の光学特性が反射層4の積層方向と直交する方向に分布を有し得るようになる。
【0065】
第一液晶層1及び第二液晶層2の少なくとも一方が複数の液晶層を含む場合には、隣り合う液晶層間に、必要に応じて光学設計調整層、分子配向層、結合層などが介在してもよい。分子配向層の構成については既に説明したとおりである。光学設計調整層及び結合層は、光路長や光の位相を調整するために使用される層である。このうち光学設計調整層と結合層の機能は同じであるが、進行方向の異なる光を結合させる目的を有する層を特に結合層と称する。光学設計調整層及び結合層は、光透過性を有する適宜の材料から形成され得る。光学設計調整層及び結合層は、特定の偏光状態にある光のみを吸収する材料からも形成され得る。
【0066】
上記の通り第一液晶層1及び第二液晶層2の選択波長域の中心波長及び広さは適宜調整され得る。特に第一液晶層1及び第二液晶層2の選択波長領域に450〜700nmの波長域が含まれていることが好ましい。この場合、第一液晶層1及び第二液晶層2の選択波長領域が450〜700nmの波長域と一致し、或いはこれよりも広くなることにより、反射層4が白色光を高効率で反射することができ、白色光の蓄光が可能となる。この波長域は、白色光の観点からは、480〜680nmの波長域であってもよい。
【0067】
第一液晶層1及び第二液晶層2は液晶から構成されるため、第一液晶層1及び第二液晶層2ではブラック反射により光が反射し、且つ反射する光の多くは第一液晶層1及び第二液晶層2の表層部分で反射する。このため、第一液晶層1及び第二液晶層2で光が反射する際には光の減衰が少なくなり、このため反射層4の光反射性が高くなる。蓄光素子Aの蓄光効率の向上のためには、第一液晶層1及び第二液晶層2の、特定光中の螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光成分の反射率が、60%以上であることが好ましく、70%以上であれば更に好ましく、90%以上であれば特に好ましい。特に、第一液晶層1及び第二液晶層2の選択波長領域に450〜700nmの波長域が含まれている場合、第一液晶層1及び第二液晶層2の、螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光成分の反射率が、450〜700nmの波長域で60%以上、或いは更に70%以上であれば、或いは特に90%以上であれば、白色光の蓄光効率が特に高くなる。但し、第一液晶層1及び第二液晶層2の選択波長領域に450〜700nmの波長域が含まれていても、特定光の波長域が450〜700nmの波長域よりも狭い場合には、第一液晶層1及び第二液晶層2の、特定光中の螺旋構造と同じ巻き方向の偏光の反射率が60%以上、或いは更に70%以上であれば、或いは特に90%以上であれば充分に蓄光効率が向上する。また、選択波長領域内の全域において高い反射率を有さずに、必要な波長域での反射率を90%以上、好ましくは99%以上にしてもよい。第一液晶層1及び第二液晶層2の、特定の波長域の光の反射率を向上するためには、例えば第一液晶層1及び第二液晶層2の選択波長領域の中心波長と前記特定の波長域の中心波長とを一致させたり、第一液晶層1及び第二液晶層2の厚みを調整して螺旋構造の巻き数を増やしたりするなどの手法が採用され得る。
【0068】
第一液晶層1を構成する液晶の螺旋構造が固定化されていない場合には、液晶分子の配向が外場などにより制御可能なものであることが好ましい。そのために、蓄光素子Aに、第一液晶層1の分子配向を制御する配向制御手段を備えるようにすることも好ましい。この場合、第一液晶層1の配向が配向制御手段により制御されることで、第一液晶層1の光の反射特性及び透過特性が調整可能となる。第二液晶層2の場合も同様である。配向制御手段としては、第一液晶層1又は第二液晶層2に磁界、電界、光、温度などの外場をかけ、或いはこの外場を変動させる手段が挙げられる。
【0069】
例えば第一液晶層1がコレステリック液晶から構成される場合に、配向制御手段により第一液晶層1に電界又は磁界がかけられると、第一液晶層1の螺旋構造が歪み、これにより第一液晶層1の反射率が低下され得る。また、配向制御手段により第一液晶層1に温度、電界、磁界等がかけられることで、第一液晶層1を構成する液晶がアイソトロピック状態になると、第一液晶層1の反射率が例えば10%以下まで大幅に低下し得る。第二液晶層2の場合も同様である。
【0070】
外場が電界である場合には、第一液晶層1又は第二液晶層2の厚み方向の両面に積層される透明電極と、二つの透明電極間に電界を印加し或いはこの電界を変動させる電源とで、配向制御手段が構成され得る。この場合、液晶を構成する分子は外場に対して正の誘電異方性を有していても、負の誘電異方性を有していてもよい。外場が磁界である場合には例えば磁極を備える配向制御手段が、外場が光である場合には例えば光源を備える配向制御手段が、外場が温度である場合には例えば適宜の温度制御装置を備える配向制御手段が、それぞれ用いられ得る。
【0071】
第一液晶層1及び第二液晶層2の厚みに特に制限はないが、装置の薄型化の観点からは3μm〜500μmの範囲であることが好ましい。
【0072】
位相差生成層3は、屈折率異方性を有する適宜の材料から形成され得る。このような材料としては、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリビニルアルコール等から形成される一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルムなどの有機材料、石英や方解石などの一軸結晶や二軸結晶などの無機材料が、挙げられる。
【0073】
位相差生成層3は液晶から構成されることが好ましい。この場合、液晶の自己組織的な配向特性を利用して位相差生成層3を作製することが可能となるため、位相差生成層3が容易に作製され、且つ位相差生成層3の大面積化も容易となる。
【0074】
位相差生成層3を構成し得る液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶などが挙げられ、位相差生成層3中に複数種の液晶が混在していてもよい。これらの液晶を形成するための液晶物質としては、第一液晶層1及び第二液晶層2について説明したものと同様の液晶材料が使用され得る。
【0075】
位相差生成層3が液晶から構成される場合、位相差生成層3は更に液晶以外の他の材料を含んでいてもよい。例えば位相差生成層3は、厚み調整や光学設計などのために、適宜のフィラー、スペーサ、色素などを含有してもよい。
【0076】
位相差生成層3の厚みは、位相差生成層3の光学設計に応じて適宜調整されるが、反射層4の薄型化の観点からは、この厚みが500μm以下であることが好ましい。また、位相差生成層3の厚みは、位相差を生じさせる観点から0.5μm以上であることが好ましい。
【0077】
位相差生成層3を構成する液晶が適切な架橋剤により架橋されるなどにより、この液晶の配向が固定化されていてもよい。架橋化のための手法としては、ガラス固定化、加熱、紫外線や電子線等のエネルギー線の照射などが、挙げられる。位相差生成層3を構成する液晶の配向は固定化されていなくてもよい。
【0078】
位相差生成層3が螺旋構造を有する場合には、少なくとも特定光のうち第一液晶層1を透過する円偏光成分が位相差生成層3も透過するように、位相差生成層3の螺旋構造が調整されることが好ましい。第一液晶層1の選択波長域にある光のうち第一液晶層1を透過する円偏光成分が位相差生成層3も透過するように、位相差生成層3の螺旋構造が調整されることも、好ましい。
【0079】
位相差生成層3が二つの固有偏光間に生じさせる位相差は、160°〜200°の範囲であることが好ましく、170〜190°であることがより好ましく、175〜185°であることがさらに好ましい。特に反射層4による特定光の反射率向上のためには、前記位相差が180°であることが理想的である。この場合、上述のとおり、特に位相差生成層3で偏光状態が変化した光が第一液晶層1及び第二液晶層2の螺旋構造と同じ巻き方向を有する円偏光となり、このためこの光が第二液晶層2で効率良く反射される。但し、この位相差の好ましい値は、反射層4に要求される光反射性及び光透過性、反射層4が備える位相差生成層3以外の層の構成などに応じて変動し得る。この位相差生成層3が二つの固有偏光間に生じさせる位相差は、位相差生成層3を構成する材料の種類、この材料の異方性の程度、位相差生成層3の厚みなどを変更することで適宜調整され得る。
【0080】
位相差生成層3は液晶から構成されることが好ましく、さらに位相差生成層3は、外場により液晶分子の配向が制御可能なものであることが好ましい。そのため、蓄光素子Aに、位相差生成層3の分子配向を外場により制御する外場制御手段を備えることも好ましい。この場合、位相差生成層3の配向が外場制御手段により制御されることで、位相差生成層3の光の透過特性や反射性が調整可能となる。このため、外場制御手段によって反射層4の光反射性並びに光透過性が調節可能となる。その結果、蓄光素子Aの光の蓄積及び放射が制御可能になる。
【0081】
外場制御手段としては、位相差生成層3に磁界、電界、光、温度などの外場をかけ、或いはこの外場を変動させる手段が挙げられる。例えば、外場が電界である場合には、位相差生成層3の厚み方向の両面に積層される一対の透明電極と、この二つの透明電極間に電圧を印加し或いはこの電圧を変動させる電源とで、外場制御手段が構成され得る。第一液晶層1及び第二液晶層2の分子配向が固定化されて外場により変動しない場合には、外場制御手段を構成する二つの透明電極は第一液晶層1の位相差生成層3とは反対側の外面、並びに第二液晶層2の位相差生成層3とは反対側の外面に、それぞれ積層していてもよい。発光素子が装置に組み込まれる場合、外場制御手段を構成する透明電極は、発光素子の電極を兼ねてもよい。位相差生成層3における液晶を構成する分子は外場に対して正の誘電異方性を有していても、負の誘電異方性を有していてもよい。外場が磁界である場合には例えば磁極を備える外場制御手段が、外場が光である場合には例えば光源を備える外場制御手段が、外場が温度である場合には例えば適宜の温度制御装置を備える外場制御手段が、それぞれ用いられ得る。
【0082】
位相差生成層3は、外場により液晶分子の配向が、異方性のある異方配向状態と、前記異方配向状態よりも異方性が低く或いは異方性がない非異方配向状態とに切り替え制御可能なものであることが好ましい。そのため、装置が外場制御手段を備える場合、外場制御手段によって、位相差生成層3の分子配向が、異方性がある異方配向状態(第一の状態)と、この異方配向状態よりも異方性が低く或いは異方性がない非異方配向状態(第二の状態)とに切り替え可能であるようにすることができる。この場合、位相差生成層3の分子配向が第一の状態にあれば位相差生成層3を透過する固有偏光間の位相差が大きくなり、位相差生成層3の分子配向が第二の状態にあれば位相差生成層3を透過する固有偏光間の位相差が小さくなるか、或いは位相差が生じなくなる。また、非異方配向状態となったランダムな配向であれば、反射層4で光を散乱状態にすることが可能になる。このように位相差生成層3の分子配向が第一の状態と第二の状態に切り替えられることで、反射層4の光反射性並びに光透過性が調節可能となる。
【0083】
例えば異方配向状態にある位相差生成層3が二つの固有偏光間に生じさせる位相差が160°〜200°の範囲となる場合には、第一の状態で反射層4による光の反射率が高くなる。この位相差生成層3の分子配向が非異方配向状態になると、位相差生成層3が二つの固有偏光間に生じさせる位相差は前記範囲よりも小さくなり、或いは位相差が生じなくなる。この場合、反射層4による光の反射率が低くなると共に、反射層4の光透過性が高くなる。
【0084】
更に、外場制御手段によって位相差生成層3の分子配向が、異方配向状態と非異方配向状態との間で連続的に調整可能であり、或いは多段階に調整可能であれば、反射層4の光反射性並びに光透過性が細かく調節可能となる。
【0085】
異方配向状態では位相差生成層3を構成する液晶の二次のオーダーパラメータは0.6以上であることが好ましく、非異方配向状態では位相差生成層3を構成する液晶の二次のオーダーパラメータは0.4以下であることが好ましい。この液晶の二次のオーダーパラメータは、位相差生成層3を構成する液晶の種類に応じ、外場制御手段により位相差生成層3にかけられる外場が調節されることで、適宜調整され得る。
【0086】
位相差生成層3の分子配向が非異方配向状態にあるときに位相差生成層3を構成する液晶中の分子が微視的に配向していてもよく、また位相差生成層3の分子配向が異方配向状態にあるときに位相差生成層3を構成する液晶中の分子が巨視的にランダムに配向していてもよい。
【0087】
また、位相差生成層3は、外場により分子配向が変動してから外場が取り除かれても変動後の分子配向が保持される液晶から構成されていることも好ましい。すなわち、例えば位相差生成層3に外場制御手段により外場がかけられることで分子配向が異方性のある異方配向状態(第一の状態)になったら、外場が取り除かれても分子配向が異方配向状態のまま維持されるようなことである。あるいは、位相差生成層3に外場制御手段により外場がかけられることで分子配向が非異方配向状態(第二の状態)になったら、外場が取り除かれても分子配向が非異方配向状態のまま維持されるようなことである。これらの場合、外場制御手段を作動させるために要するエネルギーが節減され、省電力化などが可能となる。
【0088】
外場制御手段が外場として電界をかける手段である場合の、位相差生成層3の好ましい一態様においては、位相差生成層3がコレステリック液晶から構成される。この場合、位相差生成層3は外場制御手段によってかけられる電界により分子配向が変動してから電界が取り除かれても変動後の分子配向が保持される。すなわち、コレステリック液晶は双安定性(メモリ性)を備えており、液晶に印加する電界強度が調節されることでプレーナ配向にある状態、フォーカルコニック配向にある状態、プレーナ配向とフォーカルコニック配向とが混在した中間的な状態の、いずれかの状態になる。更に、一旦プレーナ配向にある状態、フォーカルコニック配向にある状態又はそれらが混在した中間的な状態になると、その後は無電界下においても安定してその状態が維持される。このため、例えば外場制御手段により位相差生成層3にその構成に応じた直流パルス電界が印加されると、位相差生成層3の分子配向がプラナー配向からフォーカル配向に変化し、この状態から電界が取り除かれても分子配向は維持される。また外場制御手段により位相差生成層3にその構成に応じた矩形波電界が印加されると、位相差生成層3の分子配向がフォーカルコニック配向からプラナー配向に変化し、この状態から電界が取り除かれても分子配向は維持される。位相差生成層3の分子配向がプレーナ配向にある状態又はプレーナ配向が優勢な状態が第一の状態に設定されると共に、フォーカルコニック配向にある状態又はフォーカルコニック配向が優勢な状態が第二の状態に設定され得る。位相差生成層3には、無電界下において分子配向が維持されやすくなるように、適宜の架橋材料が添加されてもよい。
【0089】
反射層4を構成する複数の各層の光学特性は、反射層4の積層方向と直交する方向に一様であっても、この方向に分布を有していても、いずれでもよい。
【0090】
更に、反射層4は、光反射性並びに光透過性の調整などのために、第一液晶層1及び第二液晶層2とは逆の巻き方向の螺旋構造を有する液晶から形成される層を更に備えてもよい。
【0091】
反射層4における位相差生成層3と第一液晶層1及び第二液晶層2とは、直接積層していてもよく、位相差生成層3と第一液晶層1及び第二液晶層2との間に別の層が介在していてもよい。位相差生成層3と第一液晶層1との間、及び、位相差生成層3と第二液晶層2との間に介在し得る層としては、分子配向層、光学設計調整層、結合層などが挙げられる。これらの層の構成については既に説明した通りである。
【0092】
一つの反射層4を構成する複数の層は、適宜の手法により積層され得る。例えば、第一液晶層1及び第二液晶層2を構成する液晶が流動性を有さず、位相差生成層3を構成する液晶が流動性を有する場合には、第一液晶層1及び第二液晶層2がシート状に形成され、両者の間に位相差生成層3を構成する液晶が充填されることで、反射層4が構成される。この場合、第一液晶層1と第二液晶層2の間の外周部分に適宜の封止材が介在することで、位相差生成層3が第一液晶層1と第二液晶層2との間に封入される。更に蓄光素子Aに、位相差生成層3に電界を加える外場制御手段が備えられる場合、外場制御手段の透明電極が第一液晶層1の外面及び第二液晶層2の外面にそれぞれ重ねられてもよい。
【0093】
蓄光層5は、空気や不活性ガスや真空で形成されていてもよいし、材料が充填して形成されていてもよい。不活性ガスとしては窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられる。蓄光層5は単一の材料から形成されていても、混合材料で形成されていてもよい。蓄光層5の構成材料は複数でもよいし、複数の層を積層してもよい。また、面内方向に伝播する光を抑制する構造であってもよい。
【0094】
蓄光層5を構成する材料としては、例えば、ガラス、アクリルなどの透明樹脂、Siで形成された面内にフォトニックバンドギャップを有する微細構造膜、などが挙げられる。
【0095】
蓄光層5の厚みは、反射率の関係によってその最適距離は変化するものであるが、例えば、300nm〜10mmであることが好ましい。この範囲になることにより、蓄光性を高めることができる。
【0096】
蓄光層5は、一の反射層4と他の反射層4とを、その間に蓄光層5を構成する材料を介在させながら対向させて配置し固定することにより形成することができる。あるいは、一の反射層4と他の反射層4とを、スペーサーを外周又は外縁に介在させながら対向させて配置し固定してもよい。またあるいは、一の反射層4の表面に、蓄光層5を構成する材料を積層し、その表面にさらに他の反射層4を積層するようにして、順次積層して形成するようにしてもよい。
【0097】
蓄光素子Aは、適宜の基材を備えていてもよい。その場合、基材が保護基板であり、反射層4がその保護基板の表面に形成されていることが好ましい。
【0098】
基材は、例えば、反射層4の表面に重ねて積層される。複数の反射層4のうちの外側に配置される反射層4の外側に基材が重ねられることも好ましい。このとき、基材が配置されるのは反射層4の一方の外側でも両方の外側でもよい。このような基材により、蓄光素子Aや反射層4が保護され得る。基材が配置される位置は、前記の位置以外に、第一液晶層1と位相差生成層3との間、位相差生成層3と第二液晶層2との間などであってもよい。発光素子が積層される場合、基材が発光素子の基板を兼ねてもよい。反射膜に基材が重ねられる場合には、基材を構成する材料が反射膜に真空蒸着法、スパッタリング法、塗布法などの手法により積層されることにより基材が形成されてもよい。基材の厚みは特に制限されないが、基材が充分な機械的強度を有するためには、50nm以上であることが好ましい。
【0099】
基材は光透過性を有することが好ましい。基材の材質としては、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透明ガラス、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂などの適宜の樹脂材料が挙げられる。基材の形状は板状であってもフィルム状であってもよい。基材は、透明性を有していれば、蓄光素子Aの用途などに応じて、例えば無色透明であっても、着色されていても、磨りガラス状であってもよい。
【0100】
反射層4が柔軟材料により形成されていることも好ましい。その場合、可撓性を有する蓄光素子Aを形成することができ、蓄光素子Aの用途を拡大することができる。すなわち、例えば、蓄光素子Aを有する装置を保管する際には筒状に巻いたり折りたたんだりすることで保管場所の省スペース化を図り、当該装置を使用する際には使用場所へ運んでから広げて使用することが可能となる。可撓性を有する装置が構成されるための好ましい一つの形態は、有機EL素子が積層された装置である。有機EL素子は主として有機材料から形成されるため、有機EL素子には柔軟性が容易に付与され、このため装置が可撓性を有し得るようになる。
【0101】
位相差生成層3は液晶から構成されることが好ましく、この場合、位相差生成層3にも柔軟性が容易に付与されるようになり、このため反射層4に柔軟性が容易に付与されるようになる。反射層4を構成する液晶に適宜の架橋材料が添加されていることも好ましく、この場合、柔軟且つ曲げ応力に強い反射層4が形成され得る。
【0102】
反射層4は、柔軟性が付与されるように薄型に形成されることが好ましい。特に一つの反射層4の厚みが7μm〜1mmに形成されることが好ましく、また、複数の反射層4の厚みの総厚(合計)が10μm〜1mmに形成されることが好ましい。また、一つの蓄光層5の厚みは300nm〜5mmであることが好ましく、蓄光層5が複数ある場合、その厚みの総厚(合計)が500nm〜5mmであることが好ましい。基材を備える場合には、この薄型且つ可撓性を有する基材が使用されることが好ましい。基材を構成する材料が硬質であっても、薄型化されていれば基材は可撓性を有し得る。例えば基材がガラスから形成される場合には基材の厚みが10μm〜100μmであることが好ましく、基材が樹脂から形成される場合には基材の厚みが10μm〜200μmであることが好ましい。
【0103】
蓄光素子Aは、用途に応じ、剛性を有することも好ましい。剛性を有する蓄光素子Aが構成されるためには、例えば蓄光素子Aが剛性を有する基材を備えるようにする。基材は蓄光素子Aが充分な剛性を有する程度の厚みを有していればよいが、例えば基材がガラスから形成される場合には基材の厚みが200μm以上であることが好ましく、基材が樹脂から形成される場合には基材の厚みが300μm以上であることが好ましい。
【0104】
蓄光素子Aが剛性を有する場合には反射層4及び蓄光層5の厚みに制限はないが、装置が剛性を有する範囲で薄型化する観点からは、これらの厚みは可撓性を有する場合と同様、薄い方が好ましい。
【0105】
蓄光素子Aに発光素子が積層されることも好ましい。この場合、発光素子から発せられる光を蓄光することが可能になる。発光素子は、反射層4と基材との間に配置されてもよいし、複数の反射層4のうちのある反射層4と他の反射層4との間に配置されてもよいし、複数の反射層4のうちの外側に配置している反射層4の外側に配置されてもよい。また、反射層4と発光素子とは、直接積層されていてもよく、反射層4と発光素子との間に別の層が介在していてもよい。発光素子としては、前述のように有機EL素子であることが好ましい。
【0106】
発光素子による発光の波長域は、第一液晶層1の選択反射波長域、及び、第二液晶層2の選択反射波長域のいずれか一方の波長域と、少なくとも一部が重複していることが好ましく、両方の波長域と少なくとも一部が重複していることがより好ましい。それにより、発光素子から発せられる光の蓄光効率が向上する。
【0107】
発光素子は、反射層4の第一液晶層1に対向するように配置されることが好ましい。それにより蓄光性が高まる。
【0108】
発光素子の発光色としては、白色光であることが好ましい。この場合、白色光を効率よく蓄光することが可能となる。
【0109】
図2は、蓄光素子Aの機構を示す概略説明図である。この蓄光素子Aは、複数(図では4つ)の反射層4を備えており、隣り合う反射層4、4の間には、蓄光層5が設けられている。蓄光素子Aの内部において最も外側に配置される反射層4(第一の反射層4a)とその隣に配置される反射層(第二の反射層4b)とは、各第一液晶層1を内部側にして対向配置されている。第二の反射層4b以降の、蓄光素子Aの内部に配置される反射層4(第三の反射層4c、第四の反射層4d)は、第一液晶層1を外部側(光の入射側)に向けて配置されている。
【0110】
太陽光など光源からの光は、蓄光素子Aの内部において最も外側に配置される第一の反射層4aに入射する。そして、第一の反射層4aは、上記で説明したように光を透過し、複数の蓄光層5のうち最も外側に配置される第一の蓄光層5aに到達する。第一の蓄光層5aに到達した光は、第二の反射層4bによって反射され、さらに反射された光は第一の反射層4aによって反射され、この反射が繰り返されて第一の蓄光層5aで光が蓄光される。このとき、理想的には100%の光が反射されて蓄光されることが好ましいが、実際には、光の性質や材料特性により、0.1%程度の光が第二の反射層4bを透過し得る。しかしながら、図2の形態では、第二の反射層4bと第三の反射層4cとの間に、第二の蓄光層5bが形成されており、この第二の蓄光層5bによって第二の反射層4bを透過した光を蓄光することができる。さらに、第二の蓄光層5bの光のうち0.1%の光、すなわち、第一の蓄光層5の光のうちの10−4%の光は、第三の反射層4cを透過し得るが、この光は、第三の反射層4cと第四の反射層4dとの間の第三の蓄光層5cにより蓄光される。このように、蓄光素子Aの内部では、反射層4を通過できる光の透過量は各0.1%程度となり、第四の反射層4dを透過し得る光は、第一の蓄光層5の光のうちの10−7%の光となる。これにより、蓄光素子Aに入射した光のほとんどを蓄光素子A内に蓄えることが可能となるのである。
【0111】
上記の蓄光素子Aの光透過特性及び光反射特性に関する挙動は便宜上単純化されており、実際は素子内で共振現象や位相変換などが誘起されるため、蓄光素子Aは光学的特性に関して非常に複雑な挙動をする。蓄光素子Aを構成する複数の層の光学特性が適宜調整されることで、外部光を効率よく蓄光層5に入射しながら、この蓄光層5に到達し蓄光した光を効率良く出射させ得る蓄光素子Aも構成され得る。
【実施例】
【0112】
[実施例1]
ガラス基板の表面に、ポリイミド配向材料(JSR,254)をスピンコート法により塗布した。塗布した配向材料にラビング処理を行った後に、別途作製した有機EL素子とガラス基板を6μmのスペーサーを介して仮固定した。スペーサーにより作製した膜厚6μmの空隙に毛細管現象を利用してコレステリック液晶層を注入した。コレステリック液晶は、ネマチック液晶(メルク,E44)100質量部にカイラル剤(メルク,S−811)を30質量部、光重合開始剤(長瀬産業、イルガキュア)を2質量部添加したものを用いた。紫外線を照射することによりコレステリック液晶を硬化させ、第一液晶層1を形成した。
【0113】
次に、仮固定していたガラス基板を取り除いた後に、前記有機EL素子の第一液晶層1が形成された面に、3μmのスペーサーを介して他のガラス基板を仮固定した。スペーサーにより作製した膜厚3μmの空隙に毛細管現象を利用してネマチック液晶(メルク,E44)100質量部に光重合開始剤(長瀬産業、イルガキュア)を2質量部添加したものを注入した。紫外線を照射することによりネマチック液晶を硬化させ、位相差生成層3を形成した。
【0114】
次に、仮固定していたガラス基板を取り除いた後に、前記有機EL素子の位相差生成層3が形成された面に、6μmのスペーサーを介して他のガラス基板を仮固定した。スペーサーにより作製した膜厚6μmの空隙に毛細管現象を利用してコレステリック液晶層を注入した。コレステリック液晶は、ネマチック液晶(メルク,E44)100質量部にカイラル剤(メルク,S−811)を30質量部、光重合開始剤(長瀬産業、イルガキュア)を2質量部添加したものを用いた。紫外線を照射することによりコレステリック液晶を硬化させ、第二液晶層2を形成した。
【0115】
これにより、有機EL素子の表面に積層した反射層4が形成された。
【0116】
また、有機EL素子に代えてガラス基板を用いた以外は、上記と同様の方法により、ガラス基板に積層された反射層4を形成した。
【0117】
そして、反射層4が形成された有機EL素子と、反射層4が形成されたガラス基板とを、それぞれ仮固定したガラス基板を取り除いた後に、各第一液晶層1、1が内側になるように対向させて、スペーサーにより空隙1μmを介して、張り合わせた。
【0118】
以上により、実施例1の蓄光素子Aが形成された。この蓄光素子Aは、二つの反射層4、4の間に空気の蓄光層5が形成され、一方の反射層4の表面には有機EL素子が積層されたものである。また、第一液晶層1及び第二液晶層2は同一の向きで螺旋構造が形成されている。
【0119】
[実施例2]
ガラス基板の表面に、ポリイミド配向材料(JSR,254)をスピンコート法により塗布した。塗布した配向材料にラビング処理を行った。同様に、ポリイミド配向材料を塗布しラビング処理したガラス基板をもう1枚用意した。
【0120】
この二枚のガラス基板を12μmのスペーサーを介して仮固定し、12μmの空隙にカイラルスメクチック液晶材料を注入した。カイラルスメクチック液晶材料としては、カイラルスメクチック液晶材料100質量部に光重合開始剤(長瀬産業、イルガキュア)を2重量部添加したものを用いた。紫外線を照射しカイラルスメクチック液晶を硬化させて、フィルム状の第一液晶層1を作製した。
【0121】
同様の材料及び方法を用いて、第二液晶層2を作製した。
【0122】
作製した第一液晶層1及び第二液晶層2から、それぞれ片面のガラス基板を取り除き、第一液晶層1と第二液晶層2との間に、20μmのフィラーを外周部に分散して配置させて張り合わせた後、毛細管現象を利用してネマチック液晶(メルク,E47)を空隙に注入した。これにより、第一液晶層1と第二液晶層2との間に位相差生成層3が形成され、反射層4が作製された。
【0123】
同様の材料及び方法を用いて、反射層4をさらに二つ作製した。
【0124】
一の反射層4の第二液晶層2側の面に透明有機EL素子を粘着剤により付着した。
【0125】
そして、有機EL素子が積層された反射層4に他の反射層4を、各反射層4、4の第一液晶層1、1が内側になるように対向させ、反射層4、4間にスペーサーにより10μmの空隙が形成されるように張り合わせた。
【0126】
そして、有機EL素子に反射層4が二つ積層されたもののさらに外側に、第一液晶層1が内側となるように三番目の反射層4を積層した。
【0127】
以上により、実施例2の蓄光素子Aが形成された。この蓄光素子Aは、三つの反射層4のそれぞれの間に空気の蓄光層5が形成され、外側に配置された一方の反射層4の表面には有機EL素子が積層されたものである。また、第一液晶層1及び第二液晶層2は同一の向きで螺旋構造が形成されている。
【0128】
[実施例3]
実施例2と同様の材料及び方向により、反射層4を二つ作製した。
【0129】
そして、一の反射層4に他の反射層4を、各反射層4、4の第一液晶層1、1が内側になるように対向させ、反射層4、4間にスペーサーにより50μmの空隙が形成されるように張り合わせた。
【0130】
この反射層4のそれぞれの外側に、ITOをスパッタ法により成膜して電極を形成し、電界を印加可能にした。
【0131】
以上により、実施例3の蓄光素子Aが形成された。この蓄光素子Aは、二つの反射層4の間に空気の蓄光層5が形成され、外側に配置された反射層4の表面には電極が形成されたものである。また、第一液晶層1及び第二液晶層2は同一の向きで螺旋構造が形成されている。また、電極に電界を印加することにより、位相差生成層3は、非異方配向状態が異方配向状態に変化した。
【0132】
[実施例4]
ガラス基板の表面に、ポリイミド配向材料(JSR,254)をスピンコート法により塗布した。塗布した配向材料にラビング処理を行った。同様に、ポリイミド配向材料を塗布しラビング処理したガラス基板をもう1枚用意した。
【0133】
この二枚のガラス基板を50μmのスペーサーを介して仮固定し、50μmの空隙にコレステリック液晶材料を注入した。コレステリック液晶材料としては、コレステリック液晶100質量部に光重合開始剤(長瀬産業、イルガキュア)を2質量部添加したものを用いた。温度コントローラーによりコレステリック液晶の螺旋軸方向に温度勾配をつけながら紫外線照射し、フィルム状の第一液晶層1を作製した。
【0134】
同様の材料及び方法を用いて、第二液晶層2を作製した。
【0135】
作製した第一液晶層1及び第二液晶層2から、それぞれ片面のガラス基板を取り除き、第一液晶層1と第二液晶層2との間に、5μmのフィラーを外周部に分散して配置させて張り合わせた後、毛細管現象を利用してネマチック液晶(メルク,E7)を空隙に注入した。これにより、第一液晶層1と第二液晶層2との間に位相差生成層3が形成され、反射層4が作製された。
【0136】
同様の材料及び方法を用いて、反射層4をもう一つ作製した。
【0137】
そして、一の反射層4に他の反射層4を、各反射層4、4の第一液晶層1、1が内側になるように対向させ、反射層4、4間にスペーサーにより100μmの空隙が形成されるように張り合わせた。
【0138】
以上により、実施例4の蓄光素子Aが形成された。この蓄光素子Aは、二つの反射層4の間に空気の蓄光層5が形成されたものである。また、第一液晶層1及び第二液晶層2は同一の向きで螺旋構造が形成されている。
【0139】
[実施例5]
実施例4と同様にして反射層4を作成した。この反射層4の第一液晶層1側の表面に、さらに液晶層を作製した。ただし、液晶材料として、ネマチック液晶(メルク,E44)100質量部にカイラル剤(メルク,R−811)を20質量部、光重合開始剤(長瀬産業、イルガキュア)を2質量部添加したものを用いることにより、選択反射波長領域および螺旋の巻き方向の異なる液晶層を作製した。これにより、この新たに形成された液晶層ともとの第一液晶層1とを合わせた二層構造の第一液晶層1を有する反射層4が形成された。
【0140】
同様の材料及び方法により、第一液晶層1が二層構造の反射層4をもう一つ作製した。
【0141】
そして、一の反射層4に他の反射層4を、各反射層4、4の第一液晶層1、1が内側になるように対向させ、反射層4、4間にスペーサーにより20μmの空隙が形成されるように張り合わせた。
【0142】
以上により、実施例5の蓄光素子Aが形成された。この蓄光素子Aは、二つの反射層4の間に空気の蓄光層5が形成されたものであり、内側に配置される第一液晶層1は螺旋構造が逆向きになった二つの液晶層からなる二層構造を有している。また、第一液晶層1の位相差生成層3側の液晶層と第2液晶層2とは同一の向きで螺旋構造が形成されている。
【0143】
[実施例6]
実施例1で作製した蓄光素子Aを用意した。
【0144】
また、実施例1と同様の材料及び方法で、ガラス基板に積層された反射層4を形成した。
【0145】
そして実施例1で作製された蓄光素子Aの反射層4側にさらに他の反射層4を、反射層4、4間にスペーサーにより10μmの空隙が形成されるように粘着材で張り合わせた。
【0146】
以上により、実施例6の蓄光素子Aが形成された。この蓄光素子Aは、三つの反射層4のそれぞれの間に空気の蓄光層5が形成され、外側に配置された一方の反射層4の表面には有機EL素子が積層されたものである。また、第一液晶層1及び第二液晶層2は同一の向きで螺旋構造が形成されている。
【0147】
[結果]
各実施例の蓄光性Aを計算によりシミュレーションしたところ蓄光性が確認された。
【符号の説明】
【0148】
A 蓄光素子
1 第一液晶層
2 第二液晶層
3 位相差生成層
4 反射層
5 蓄光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋構造を有する液晶により構成され、選択反射波長域を有する第一液晶層と、前記第一液晶層と同じ巻き方向の螺旋構造を有する液晶により構成され、前記第一液晶層と重複する波長域で選択反射波長域を有する第二液晶層と、前記第一液晶層と前記第二液晶層との間に介在し、自身を透過する光を二つの固有偏光に分離すると共に前記固有偏光間に位相差を生じさせる位相差生成層と、を備えている反射層を複数備え、
複数の前記反射層のうち隣接する少なくとも二つの反射層の間に蓄光層が形成されている、蓄光素子。
【請求項2】
前記位相差生成層は液晶により構成されている、請求項1に記載の蓄光素子。
【請求項3】
前記位相差生成層は、外場により液晶分子の配向が制御可能なものである、請求項2に記載の蓄光素子。
【請求項4】
前記位相差生成層は、外場により液晶分子の配向が、異方性のある異方配向状態と、前記異方配向状態よりも異方性が低く或いは異方性がない非異方配向状態とに切り替え制御可能なものである、請求項3に記載の蓄光素子。
【請求項5】
前記位相差生成層は、外場により分子配向が変動してから外場が取り除かれても変動後の分子配向が保持される液晶から構成されている、請求項3に記載の蓄光素子。
【請求項6】
前記第一液晶層及び前記第二液晶層の少なくとも一方は、液晶分子の配向が制御可能なものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄光素子。
【請求項7】
前記第一液晶層及び前記第二液晶層の少なくとも一方は、コレステリックブルー相を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄光素子。
【請求項8】
前記第一液晶層及び前記第二液晶層は、選択反射波長域に波長450〜700nmの波長域を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄光素子。
【請求項9】
前記反射層は、前記第一液晶層及び前記第二液晶層の少なくとも一方が、複数の液晶層により構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の蓄光素子。
【請求項10】
前記反射層は柔軟材料により形成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の蓄光素子。
【請求項11】
前記反射層は保護基板の表面に形成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の蓄光素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−220904(P2012−220904A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89697(P2011−89697)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】