蓄冷剤用ラック
【課題】蓄冷剤を支持する作業を容易に行うことができるラックを提供する。
【解決手段】マット状蓄冷剤Aを二つ折りして吊り下げて支持する複数の支持枠45が、本体枠41上に所定間隔を開けて並設された構造であって、凍結庫10内において複数段に亘って装着されるようにしたハンガーラック40において、支持枠45が、マット状蓄冷剤Aを吊り下げる水平枠46と、同水平枠46の奥端から垂下された後枠48と、水平枠46の前端から垂下されたのち奥側に屈曲された前枠47とから構成されている。ハンガーラック40が上下に並んで配された場合、下側のハンガーラック40の支持枠45における水平枠46の前端部の上方に、上側のハンガーラック40の前枠47の傾斜部47Bとの間において手前側に広がったスペースSが構成される。二つ折りしたマット状蓄冷剤Aを支持枠45の水平枠46に掛ける作業がしやすくなる。
【解決手段】マット状蓄冷剤Aを二つ折りして吊り下げて支持する複数の支持枠45が、本体枠41上に所定間隔を開けて並設された構造であって、凍結庫10内において複数段に亘って装着されるようにしたハンガーラック40において、支持枠45が、マット状蓄冷剤Aを吊り下げる水平枠46と、同水平枠46の奥端から垂下された後枠48と、水平枠46の前端から垂下されたのち奥側に屈曲された前枠47とから構成されている。ハンガーラック40が上下に並んで配された場合、下側のハンガーラック40の支持枠45における水平枠46の前端部の上方に、上側のハンガーラック40の前枠47の傾斜部47Bとの間において手前側に広がったスペースSが構成される。二つ折りしたマット状蓄冷剤Aを支持枠45の水平枠46に掛ける作業がしやすくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の蓄冷剤を吊り下げ支持して凍結庫内で凍結させることに用いる蓄冷剤用ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄冷剤の一形態として、短冊状の蓄冷部材を複数連ねて方形のシート状としたものが知られており、このような蓄冷剤を凍結することに使用する蓄冷剤凍結庫として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
このものは、シート状の蓄冷剤を二つ折りして吊り下げて支持する側面方形状をなす複数の支持枠を所定間隔を開けて並設したラックを備え、このラックが凍結庫内において複数段に亘って装着された構造であって、シート状の蓄冷剤を下向きに二つ折りした状態で前方から挿入しつつ、折曲部分を支持枠の上枠に掛けて吊り下げ支持し、庫内に冷気を供給することで蓄冷剤を凍結するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−7389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような凍結庫において、一度に多量の蓄冷剤を凍結処理するためには、ラックを上下方向に詰めてより多段に配設することが有効であるが、上下のラックの間隔が狭くなるため、二つ折りした蓄冷剤を支持枠の上枠に掛ける作業がし難いという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、蓄冷剤を支持する作業を容易に行えるようにしたラックを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シート状の蓄冷剤を二つ折りして吊り下げて支持する方形状をなす複数の支持枠が所定間隔を開けて並設された構造であって、凍結庫内において複数段に亘って装着されるようにしたラックにおいて、前記支持枠における前枠の下側若しくは上側の角部に面取形状が施されている構成としたところに特徴を有する。
二つ折りした蓄冷剤を上下のラックの間から挿入して下側のラックの支持枠に掛けるに当たり、同蓄冷剤の挿入部分が手前側に広がるように口を開けた形態となるから、蓄冷剤を挿入しひいては支持枠に掛ける作業がしやすくなる。
【0006】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記支持枠が、前記蓄冷剤を吊り下げる水平枠と、同水平枠の奥端から垂下された後枠と、前記水平枠の前端から垂下されたのち奥側に屈曲された前枠とから構成されており、この支持枠が並設されてそれぞれの下端側が本体枠に連結されることで当該ラックが形成されている。
ラックが複数段に装着された場合、下側のラックの支持枠における水平枠の前端部の上方に、上側のラックの前枠の屈曲部との間において手前側に広がったスペースができる。二つ折りされた蓄冷剤は、対応するラックの支持枠の水平枠に対して広いスペースを通して挿入されて掛けられる。支持枠に掛ける作業がしやすいことに加えて、蓄冷剤を実際に掛ける水平枠の長さは大きく取れるから、蓄冷剤をより安定して吊り下げることができる。
【0007】
(2)前記支持枠における前枠と後枠との間には、吊り下げられた蓄冷剤における両側に振り分けられた部分の対向面に当接して、両振り分けられた部分の対向面が互いに接近する方向に張り出すことを規制する規制バーが渡されている。
蓄冷剤は、ゲル化剤が樹脂シート内に充填されたものであって、凍結されるとゲル化剤が体積膨張して厚さが増した硬いものとなる。そのため、蓄冷剤が、支持枠の前枠よりも奥側で吊り下げられた状態で凍結されると、蓄冷剤の両側に振り分けられた部分の対向面が互いに接近する方向に張り出した状態となり、そうすると、蓄冷剤を水平枠に沿って引き出す場合に、蓄冷剤が前枠に引っ掛かるおそれがある。
それに対して本構成では、規制バーに当たることで蓄冷剤の両側に振り分けられた部分の対向面が互いに接近する方向に張り出すことが規制され、言い換えると、両側に振り分けられた部分が前枠に対して正面から視た左右両側に外れた位置に留められ、凍結した蓄冷剤は、規制バーに沿うようにして前枠に引っ掛かることなくスムーズに引き出される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のラックを使用すれば、蓄冷剤を支持枠に吊り下げて支持する作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係る凍結庫の側断面図
【図2】開扉状態の凍結庫の正面図
【図3】ハンガーラックの斜視図
【図4】同正面図
【図5】同平面図
【図6】同側面図
【図7】同右奥隅部の拡大平面図
【図8】スタンドラックの斜視図
【図9】同正面図
【図10】同平面図
【図11】同側面図
【図12】本体枠の右奥隅部の拡大平面図
【図13】図10のX矢視拡大図
【図14】図10のY矢視拡大図
【図15】ハンガーラックの装着構造を示す平面図
【図16】スタンドラックの装着構造を示す平面図
【図17】マット状蓄冷剤の支持動作を示す側面図
【図18】実施形態2のハンガーラックを用いた場合におけるマット状蓄冷剤の支持動作を示す側面図
【図19】実施形態3のハンガーラックを用いた場合におけるマット状蓄冷剤の支持動作を示す側面図
【図20】実施形態4のハンガーラックの側面図
【図21】同ハンガーラックの使用形態を示す一部切欠正面図
【図22】実施形態5のハンガーラックの側面図
【図23】同ハンガーラックの使用形態を示す一部切欠正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図17によって説明する。
本実施形態に係る蓄冷剤凍結庫10は、図1及び図2に示すように、前面開口の縦長の断熱箱体からなる凍結庫本体11を有し、内部が凍結室12とされて、底面の四隅に設けられた脚13で支持されている。凍結室12の前面開口部14には、断熱扉15が一方の縦縁(例えば右側縁)を中心とした揺動開閉可能に装着されている。
凍結庫本体11の上面には機械室16が設けられ、同機械室16内には、圧縮機18、空冷式の凝縮器19等からなる冷凍装置17等が装備されている。
【0011】
凍結室12の天井部の奥側寄りの位置には、ドレンパンを兼ねたダクトパネル20が張られることで冷却器室21が区画形成されており、同冷却器室21の手前側の位置には吸込口22が、奥側には吹出口23がそれぞれ形成されている。冷却器室21内には冷却器25が収容され、上記の機械室16内に装備された冷凍装置17と冷媒配管で接続されて冷凍サイクルが構成されているとともに、吸込口22に臨んで庫内ファン26が装着されている。
そして、冷凍装置17を運転しつつ庫内ファン26を駆動すると、詳しくは後記するように、凍結室12の庫内空気が吸込口22から冷却器室21内に吸引され、その空気が冷却器25を流通する間に熱交換によって冷気が生成され、その冷気が吹出口23から凍結室12の奥壁12Aに沿うようにして吹き出され、凍結室12内に冷気が循環供給されるようになっている。
【0012】
凍結室12内には、蓄冷剤がラックに対して整列して支持されて収納されるようになっている。
この実施形態では基本的には、2種類のシート状の蓄冷剤A,Bが適用されるようになっている。第1の蓄冷剤Aは、樹脂シート内にゲル化剤が充填された短冊状をなす蓄冷部材aが4枚連ねられた形状であって、二つ折り可能とされている。以下、第1の蓄冷剤Aをマット状蓄冷剤Aという。
第2の蓄冷剤Bは、同じく樹脂シート内にゲル化剤が充填されて単体の短冊状に形成されている。以下、第2の蓄冷剤Bを短冊状蓄冷剤Bという。この実施形態の短冊状蓄冷剤Bは、上記マット状蓄冷剤Aを構成する蓄冷部材aと比べて、長さと厚さが同じである反面、幅が半分強に留まっている。
【0013】
マット状蓄冷剤Aは、第1のラック40に対して吊り下げられて支持されるようになっている。以下、第1のラック40をハンガーラック40という。
一方、短冊状蓄冷剤Bは、第2のラック50に対して立て掛けられて支持されるようになっている。以下、第2のラック50をスタンドラック50という。
これらのラック40,50を凍結室12内に装着する手段として、凍結室12の奥壁12Aの左右両端部と、左右の側壁12Bにおける前面開口部14から所定寸法入った位置に、合計4本の棚柱30が立てられており、各棚柱30における同じ高さ位置に棚受金32が装着されて、それらのラック40,50が支持されるようになっている。
【0014】
詳細には、棚受金32は、図15及び図17に示すように、水平な載置板33の先端から支え板34が斜め下方に折り返された形状であり、かつ載置板33には掛止片35が垂直に切り起こし形成されている。棚受金32は、載置板33と支え板34に設けられた取付爪(図示せず)を、棚柱30に列設された取付孔31の上下2個に亘って嵌めることで装着されるようになっている。
この実施形態では、凍結室12内における上側の略3/4の領域に、ハンガーラック40が3段に亘って装着され、残りの下側の領域に、スタンドラック50が2段に亘って装着されている。なお下側のスタンドラック50は、凍結室12の底面上に直に載せられている。
【0015】
次に、ラックの形状について詳細に説明する。
ハンガーラック40は、図3ないし図7に示すように、共に鋼線等の金属線材を素材として形成された本体枠41と、マット状蓄冷剤Aを二つ折りして吊り下げて支持する複数個(図示8個)の支持枠45とから構成されている。
本体枠41は、前縁と左右の側縁とからなる平面門形をなす三方枠42と、後縁枠44とから構成され、三方枠42の左右の側縁の奥端部では、内向きの鈎形に屈曲された被掛止部43が形成されている。後縁枠44は、上記した三方枠42における左右の被掛止部43の折り返し部43Aの間に亘る長さを有し、両端には、折り返し部43Aより所定寸法短い屈曲部44Aが直角曲げされている。三方枠42の両被掛止部43の間には、折り返し部43Aと屈曲部44Aの先端同士を揃えた形態で後縁枠44が差し渡され、溶接により結合されることで本体枠41が形成されている。
本体枠41は、凍結室12の間口にほぼ匹敵する横幅と、同凍結室12の奥行よりも所定寸法小さい奥行寸法を有する平面方形状に形成され、かつ、左右両側縁の奥端に形成された被掛止部43が、後縁枠44よりも所定寸法後方に突出した形状となっている。
【0016】
支持枠45は、前後方向に延びた水平枠46の前後両端に、前枠47と後枠48とを下向きに形成した形状であって、後枠48が直角に下向きに曲げられているのに対して、前枠47は、直角に下向きに曲げられたのち(垂下部47A)、中央高さより少し下方位置から奥側に向けて斜め(45°)に屈曲された(傾斜部47B)形状となっている。
上記した支持枠45は、隣り合う2個の前枠47の下端同士と、後枠48の下端同士がそれぞれ連結枠45Aで連結されることにより、所定間隔を開けて一体的に形成されている。
【0017】
上記した支持枠45の対が4組、各組間に上記した両支持枠45の間隔に等しい間隔を取って左右方向に並べられ、本体枠41における左右の側縁よりも少し内側に入った領域において同本体枠41上に載せられる。詳細には、各支持枠45の対における前側の連結枠45Aが三方枠42の前縁上に載せられ、また後側の連結枠45Aが後縁枠44上に載せられ、それぞれ溶接によって固定されている。
以上により、本体枠41の上面における左右の側縁の少し内側の領域において、図示8個の支持枠45が一定間隔を開けて左右方向に並んで設けられ、かつ、各支持枠45における手前側の一部、すなわち手前側の端縁から前枠47の傾斜部47Bの下端までの奥行領域が、本体枠41の前縁の手前側に突出した形状となる。
【0018】
ここで、支持枠45における水平枠46の前後方向の長さ寸法は、マット状蓄冷剤Aの縦幅の2倍弱であり、水平枠46までの高さ寸法は、マット状蓄冷剤Aの長さの半分強である。
また、各支持枠45における後枠48の内側の面には、同じく金属線材からなる規制枠49が、ほぼ中央高さ位置において全幅に亘って当てられ、溶接により固定されている。
【0019】
次に、スタンドラック50について図8ないし図14によって説明する。
スタンドラック50は大まかには、それぞれ鋼線等の金属線材を素材として形成された本体枠51と、複数の支持枠55(図示15個)と、受け枠62とから構成されている。
本体枠51は、前縁と左右の側縁とからなる平面門形をなす三方枠52と、後縁枠54とから構成されている。三方枠52の左右の側縁の奥端部では、内向きの鈎形に屈曲された被掛止部53が形成され、かつ同被掛止部53の折り返し部53Aの先端部が、互いに対向する方向に直角曲げされている(屈曲部53B)。後縁枠54は、本体枠51の左右の側縁の間に亘る長さを有している。後縁枠54は、左右の被掛止部53における屈曲部53Bの内側に当てられた形態で、本体枠51における左右の側縁の奥端部の間に差し渡され、溶接により結合されることで本体枠51が形成されている。
本体枠51は、凍結室12の間口にほぼ匹敵する横幅と、同凍結室12の奥行よりも所定寸法小さい奥行寸法を有する平面方形状に形成され、かつ、左右両側縁の奥端に形成された被掛止部53が、後縁枠54よりも所定寸法後方に突出した形状となっている。
【0020】
支持枠55は、前後方向に延びた水平枠56の前端に前枠57が一体形成された形状であり、水平枠56の長さ方向の中央部における所定長さ領域には、所定深さを有する方形状の凹陥部58が形成されている。前枠57は、水平枠56の前縁から凹陥部58の深さ寸法だけ垂下したのち、その下端部が奥側に直角曲げされた(屈曲部57A)形状となっている。
上記の支持枠55は、一定間隔を開けて左右方向に並んで配されるが、各支持枠55の水平枠56の後端を連結する連結枠59が設けられている。連結枠59は、本体枠51の左右の側縁の間に亘る長さを有する一方、両端にはL字形をなす脚枠60が互いに向き合う姿勢で形成されている。
【0021】
上記のように15個の支持枠55が所定間隔を開けて並んで配され、各水平枠56の後端の下面側に連結枠59が当てられて溶接により固定されることで、15個の支持枠55が仮組みされる。このような仮組みされた支持枠55が本体枠51上に載せられ、各支持枠55における前枠57の屈曲部57Aの先端が、本体枠51の前縁の上面に当てられて溶接により固定される。このとき、連結枠59の両端の脚枠60が、本体枠51の左右の奥端部に形成された被掛止部53の突出端の少し手前側に対応するため、同脚枠60の下辺が被掛止部53に載せられて溶接で固定される。
【0022】
また、本体枠51の左右の側縁の間に亘るようにして、4本の受け枠62が設けられる。前側の2本の受け枠62は、本体枠51の前縁から少し奥に入った位置と、凹陥部58の前縁寄りの位置とにそれぞれ配されて溶接で固定される。後側の2本の受け枠62は、凹陥部58の後縁寄りの位置と、同位置と後縁枠54との中間位置とにそれぞれ配されて、同じく溶接で固定される。
【0023】
以上により、本体枠51の上面における左右の側縁の少し内側の領域において、図示15個の支持枠55が一定間隔を開けて左右方向に並んで設けられ、かつ、各支持枠55における手前側の一部、すなわち手前側の端縁から前枠57の屈曲部57Aの先端までの奥行領域が、本体枠51の前縁の手前側に突出し、また、本体枠51の左右の奥端部に形成された被掛止部53の突出端側の所定領域が連結枠59並びにその脚枠60の位置から奥側に突出した形態となる。また、手前側と奥側に分かれた各領域において、それぞれ2本ずつの受け枠62が設けられる。
ここで、支持枠55における水平枠56の前後方向の長さ寸法は、短冊状蓄冷剤Bの長さの2倍弱であり、水平枠56までの高さ寸法は、短冊状蓄冷剤Bの幅よりも少し小さい寸法である。また、前側の2本の受け枠62の間隔は、短冊状蓄冷剤Bの長さの6割程度であり、後側の2本の受け枠62の間隔は、前側の間隔の2/3程度である。
【0024】
短冊状蓄冷剤Bは、奥側の領域では、後側の2本の受け枠62並びに後縁枠54で受けられつつ、隣り合う支持枠55における凹陥部58よりも奥側の部分の間に立て掛けられた形態で支持され、一方手前側の領域では、前側の2本の受け枠62並びに本体枠51の前縁で受けられつつ、隣り合う支持枠55における凹陥部58よりも手前側の部分の間に立て掛けられた形態で支持されるようになっている。すなわち、本実施形態のスタンドラック50では、手前側と奥側の二領域において、短冊状蓄冷剤Bを立て掛けた形態で支持し得る支持領域が構成されている。
【0025】
続いて、本実施形態の作用を説明する。
凍結室12内には、上部側にハンガーラック40が3段に亘り、その下方にスタンドラック50が2段に亘って装着される。
ハンガーラック40は、図15に示すように、奥縁の左右両端部に設けられた被掛止部43が、奥壁12Aの左右の棚柱30に取り付けられた棚受金32に載せられて掛止片35に掛止され、また、本体枠51における前縁の左右の隅部が、左右の側壁12Bの棚柱30に取り付けられた棚受金32に載せられて掛止片35に掛止され、これによりハンガーラック40は前後並びに左右方向に移動不能に位置決めされて装着される。ハンガーラック40は、3段に亘って極力上下方向の間隔を詰めた状態で装着される。
【0026】
このとき、図17に示すように、上下に並んだハンガーラック40において、下側のハンガーラック40の支持枠45における水平枠46の前端部の上方に、上側のハンガーラック40の前枠47の傾斜部47Bとの間において手前側に広がったスペースSができる。
また、ハンガーラック40の支持枠45における前枠47(垂下部47A)と、閉扉された場合の断熱扉15の裏面との間には、所定(棚柱30の幅程度)のスペースが確保されるとともに、支持枠45の後枠48と奥壁12Aとの間にも、前側と同程度のスペースが確保される。
【0027】
一方、2個のスタンドラック50のうち上側のスタンドラック50は、図16に示すように、奥縁の左右両端部に設けられた被掛止部53が、奥壁12Aの左右の棚柱30に取り付けられた棚受金32に載せられて掛止片35に掛止され、また、一番前の受け枠62と本体枠51における左右の側縁とが交差した隅部が、左右の側壁12Bの棚柱30に取り付けられた棚受金32に載せられて掛止片35に掛止され、これにより、上側のスタンドラック50は前後並びに左右方向に移動不能に位置決めされて装着される。
このとき、スタンドラック50の支持枠55における前枠57と、閉扉された場合の断熱扉15の裏面との間には、ハンガーラック40側と同程度のスペースが確保されるとともに、奥縁の連結枠59と奥壁12Aとの間にも、同程度のスペースが確保される。
【0028】
下側のスタンドラック50は、凍結室12の底面に直接に載せられる。なお、図1に示すように、凍結室12の底面には、手前側に向けて下り勾配となった凹面12Cが形成されており、スタンドラック50における本体枠51の前縁が凹面12Cの前縁の内側に嵌って係止されることで、スタンドラック50が手前側へ抜けることが規制されるようになっている。
【0029】
次に、マット状蓄冷剤Aはハンガーラック40に、短冊状蓄冷剤Bはスタンドラック50にそれぞれ支持される。
マット状蓄冷剤Aは下向きに二つ折りされたのち、図17の矢線に示すように、その折曲部をハンガーラック40における対応する支持枠45の水平枠46の前端部に掛け、同水平枠46に沿って押し込むと、規制枠49に当たったところで押し込みが停止される。これにより二つ折りされたマット状蓄冷剤Aが、支持枠45の奥側の領域において吊り下げられた形態で支持される。
支持枠45の手前側の領域にマット状蓄冷剤Aを支持する場合は、同様に下向きに二つ折りしたのち、同折曲部を対応する支持枠45における水平枠46に掛け、その後縁側を奥側の領域で支持されているマット状蓄冷剤Aの前縁側とオーバラップさせつつ、その前縁が支持枠45の前枠47(垂下部47A)と揃う位置まで押し込むことにより、支持枠45の手前側の領域で吊り下げられた形態で支持される(同図の上段参照)。
【0030】
ここで、特に上から二段目と三段目のハンガーラック40では、上下の間隔が狭いと、二つ折りされたマット状蓄冷剤Aを支持枠45に掛ける作業がし難いと言えるが、この実施形態では、二段目と三段目のハンガーラック40におけるマット状蓄冷剤Aを挿入する部分が、手前側に広がるように口を開けた形態となるから、二つ折りされたマット状蓄冷剤Aを挿入し、ひいては支持枠45の水平枠46に掛ける作業がしやすい。
【0031】
マット状蓄冷剤Aが、上記した要領で、各段のハンガーラック40についてそれぞれ奥側と手前側において吊り下げられた形態で支持された場合、奥側に支持されたマット状蓄冷剤Aの後縁は、規制枠49に当たることでそれ以上奥側に押し込まれることが規制され、言い換えると奥側のマット状蓄冷剤Aの後縁と奥壁12Aとの間には、所定間隔の冷気通路65が確保される。
一方、手前側に支持されたマット状蓄冷剤Aは、その前縁を支持枠45の前枠47の垂下部47Aに揃えた形態で吊り下げ支持されているから、手前側のマット状蓄冷剤Aの前縁と閉扉された断熱扉15の裏面との間にも、所定間隔の冷気通路66が確保されることになる。
【0032】
短冊状蓄冷剤Bをスタンドラック50に支持する場合は、短冊状蓄冷剤Bが断面の長辺側を立てて水平に倒した姿勢とされて、上側のスタンドラック50における隣り合う支持枠55の間に挿入され、その後縁が連結枠59に当たったところで押し込みが停止され、同短冊状蓄冷剤Bは、奥側の領域において、後側の2本の受け枠62並びに後縁枠54で受けられつつ、隣り合う支持枠55における凹陥部58よりも奥側の部分の間に立て掛けられた形態で支持される。
手前側の領域に支持する場合は、短冊状蓄冷剤Bが上記と同じ姿勢において、隣り合う支持枠55の間に挿入され、その後縁側を奥側の領域で支持されている短冊状蓄冷剤Bの前縁側とオーバラップさせつつ、その前縁が支持枠55の前枠57と揃う位置まで押し込まれることにより、同短冊状蓄冷剤Bは、前側の2本の受け枠62並びに本体枠51の前縁で受けられつつ、隣り合う支持枠55における凹陥部58よりも手前側の部分の間に立て掛けられた形態で支持される。
【0033】
下側のスタンドラック50についても、上記と同様に、短冊状蓄冷剤Bが手前側と奥側の領域でそれぞれ立て掛けられた形態で支持される。
このとき、スタンドラック50の奥側の領域に支持された短冊状蓄冷剤Bの後縁と奥壁12Aとの間、並びに手前側の領域に支持された短冊状蓄冷剤Bの前縁と、閉扉された断熱扉15の裏面との間に、上記の冷気通路65,66に繋がる冷気通路が確保される。
【0034】
蓄冷剤A,Bの収納が完了したら、断熱扉15が閉じられたのち冷却運転が開始される。すなわち、冷凍装置17と庫内ファン26とが駆動されると、図1の矢線に示すように、吸込口22から吸い込まれた庫内空気が冷却器25を通過する間に冷気が生成され、その冷気が吹出口23から奥壁12Aの表面の冷気通路65に向けて吹き出されたのち、各段のラック40,50に支持された蓄冷剤A,Bを通って前方に吹き抜け、そののち断熱扉15の裏面の冷気通路66に沿って立ち上がるように循環供給され、これにより収納された蓄冷剤A,Bが凍結されることになる。
収納された蓄冷剤群の前面側と後面側に冷気通路65,66が確保されているから、冷気が凍結室12内の全域に亘ってスムーズに循環供給され、全蓄冷剤A,Bが均一にかつ高速度で凍結される。
凍結が完了したら、断熱扉15を開けたのち、収納時とは逆の手順によって、蓄冷剤A,Bを対応するラック40,50から引き抜きつつ庫外に取り出せばよい。
【0035】
本実施形態の効果は以下のようである。上下に並んだハンガーラック40のうち下側のハンガーラック40にマット状蓄冷剤Aを支持する場合には、図17に示すように、二つ折りしたマット状蓄冷剤Aを上下のハンガーラック40の間から挿入して下側のハンガーラック40の支持枠45に掛けるのであるが、下側のハンガーラック40の支持枠45における水平枠46の前端部の上方には、上側のハンガーラック40の前枠47の傾斜部47Bとの間において手前側に広がったスペースSが構成されるから、二つ折りしたマット状蓄冷剤Aを挿入しひいては支持枠45の水平枠46に掛ける作業がしやすくなる。結果、蓄冷剤の収納時間が短縮できる。
上記した挿入をしやすくするためのスペースSを構成するのに、前枠47に傾斜部47Bを設けることで対応し、マット状蓄冷剤Aを実際に掛ける水平枠46の長さは大きく取るようにしたから、マット状蓄冷剤Aをより安定して吊り下げ支持することができる。
【0036】
<実施形態2>
図18は、本発明の実施形態2を示す。実施形態2のハンガーラック40Wでは、支持枠45における前枠47の下端部が円弧状部47Cとされている。
上下に並んだハンガーラック40Wのうち下側のハンガーラック40Wの支持枠45における水平枠46の前端部の上方には、上側のハンガーラック40Wの前枠47の円弧状部47Cとの間において手前側に広がったスペースSが構成される。同様に、二つ折りしたマット状蓄冷剤Aを挿入しひいては支持枠45の水平枠46に掛ける作業がしやすくなる。
【0037】
<実施形態3>
図19は、本発明の実施形態3を示す。実施形態3のハンガーラック40Xでは、支持枠45における前枠47の上端と水平枠46の前端とが交差する角部が、面取りを施すように傾斜部47Dとなっている。同じく支持枠45における水平枠46の前方に手前側に広がったスペースSが構成される。
なお、傾斜部47Dは、上記よりも緩やか勾配で奥行の長い形状としてもよく、また円弧状部としてもよい。
【0038】
<実施形態4>
本発明の実施形態4を、図20及び図21によって説明する。
蓄冷剤は凍結されるとゲル化剤が体積膨張して厚さが増した硬いものとなる。そのため、上記実施形態1に例示したように、マット状蓄冷剤Aがハンガーラック40の支持枠45の水平枠46に吊り下げられて凍結された場合、特に奥側に支持されたマット状蓄冷剤Aでは、両側に振り分けられた部分の対向面が互いに接近する方向に張り出した状態となり、そうすると、その奥側のマット状蓄冷剤Aを水平枠46に沿って引き出す場合に、同マット状蓄冷剤Aが支持枠45の前枠47に引っ掛かるおそれがある。
この実施形態4のハンガーラック40Yでは、支持枠45における前枠47の傾斜部47Bの後枠48との間に、規制バー70が水平方向に差し渡されて溶接で固定されている。
【0039】
このようなハンガーラック40の支持枠45に二つ折りされたマット状蓄冷剤Aが吊り下げられた場合、同蓄冷剤Aにおける両側に振り分けられた部分の下側部分の対向面の間に規制バー70が入った状態となって、対向面が互いに接近する方向に張り出すことが規制される。言い換えると、両側に振り分けられた部分が前枠47に対して正面から視た左右両側に外れた位置に留められ、凍結したマット状蓄冷剤Aは、規制バー70に沿うようにして前枠47に引っ掛かることなくスムーズに引き出される。
また、マット状蓄冷剤Aにおける両側に振り分けられた部分の間に隙間が確保され、同隙間にも冷気が流通して、凍結速度が速められる。
【0040】
<実施形態5>
図22及び図23は、実施形態5を示す。
マット状蓄冷剤A1の形態として、短冊状の蓄冷部材aを3個連結した三連式のものがあり、その場合は、同マット状蓄冷剤A1は、図23に示すように、一方に2個の蓄冷部材aが、他方に1個の蓄冷部材aが来るように振り分けられて吊り下げられる。
この実施形態5のハンガーラック40Zでは、上記のような支持形態を睨み、支持枠45における前枠47の垂下部47Aのほぼ中央高さ位置と、後枠48との間に、規制バー71が水平方向に差し渡されて溶接で固定されている。
【0041】
このようなハンガーラック40Zの支持枠45に三連式のマット状蓄冷剤A1が吊り下げられた場合、図23に示すように、両側に振り分けられて対向した部分の間に規制バスバー71が入った状態となって、対向面が互いに接近する方向に張り出すことが規制され、同様に両側に振り分けられた部分が前枠47に対して正面から視た左右両側に外れた位置に留められる。そのため凍結したマット状蓄冷剤A1は、同じく規制バー71に沿うようにして前枠47に引っ掛かることなくスムーズに引き出される。
【0042】
この実施形態5のハンガーラック40Zは、短冊状の蓄冷部材aを2個連結した二連式のマット状蓄冷剤を吊り下げて支持する場合にも、同マット状蓄冷剤を前枠47に引っ掛けることなくスムーズに取り出すことに同様に有効となる。
なお、ハンガーラック40Zに対して、上記実施形態4に例示した規制バー70を併せて設けるようにしてもよい。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、ハンガーラックの支持枠に対して、マット状蓄冷剤が奥側と手前側の二列に亘って吊り下げ支持される場合を例示したが、同マット状蓄冷剤の大きさによって三列以上に並べたり、一列のみとする場合であってもよい。
(2)ハンガーラックに支持されるシート状の蓄冷剤は、短冊状の蓄冷部材を複数個連ねたマット状蓄冷剤に限らず、1枚の大きな蓄冷剤等、要は二つ折りして吊り下げ支持可能な形態のものであればよい。
【符号の説明】
【0044】
A,A1…マット状蓄冷剤(シート状の蓄冷剤) a…蓄冷部材 S…スペース 10…凍結庫 12…凍結室 30…棚柱 40,40W,40X,40Y,40Z…ハンガーラック 41…本体枠 45…支持枠 46…水平枠 47…前枠 47A…垂下部 47B…傾斜部(面取形状) 47C…円弧形部(面取形状) 47D…傾斜部(面取形状) 48…後枠 70,71…規制バー
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の蓄冷剤を吊り下げ支持して凍結庫内で凍結させることに用いる蓄冷剤用ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄冷剤の一形態として、短冊状の蓄冷部材を複数連ねて方形のシート状としたものが知られており、このような蓄冷剤を凍結することに使用する蓄冷剤凍結庫として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
このものは、シート状の蓄冷剤を二つ折りして吊り下げて支持する側面方形状をなす複数の支持枠を所定間隔を開けて並設したラックを備え、このラックが凍結庫内において複数段に亘って装着された構造であって、シート状の蓄冷剤を下向きに二つ折りした状態で前方から挿入しつつ、折曲部分を支持枠の上枠に掛けて吊り下げ支持し、庫内に冷気を供給することで蓄冷剤を凍結するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−7389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような凍結庫において、一度に多量の蓄冷剤を凍結処理するためには、ラックを上下方向に詰めてより多段に配設することが有効であるが、上下のラックの間隔が狭くなるため、二つ折りした蓄冷剤を支持枠の上枠に掛ける作業がし難いという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、蓄冷剤を支持する作業を容易に行えるようにしたラックを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シート状の蓄冷剤を二つ折りして吊り下げて支持する方形状をなす複数の支持枠が所定間隔を開けて並設された構造であって、凍結庫内において複数段に亘って装着されるようにしたラックにおいて、前記支持枠における前枠の下側若しくは上側の角部に面取形状が施されている構成としたところに特徴を有する。
二つ折りした蓄冷剤を上下のラックの間から挿入して下側のラックの支持枠に掛けるに当たり、同蓄冷剤の挿入部分が手前側に広がるように口を開けた形態となるから、蓄冷剤を挿入しひいては支持枠に掛ける作業がしやすくなる。
【0006】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記支持枠が、前記蓄冷剤を吊り下げる水平枠と、同水平枠の奥端から垂下された後枠と、前記水平枠の前端から垂下されたのち奥側に屈曲された前枠とから構成されており、この支持枠が並設されてそれぞれの下端側が本体枠に連結されることで当該ラックが形成されている。
ラックが複数段に装着された場合、下側のラックの支持枠における水平枠の前端部の上方に、上側のラックの前枠の屈曲部との間において手前側に広がったスペースができる。二つ折りされた蓄冷剤は、対応するラックの支持枠の水平枠に対して広いスペースを通して挿入されて掛けられる。支持枠に掛ける作業がしやすいことに加えて、蓄冷剤を実際に掛ける水平枠の長さは大きく取れるから、蓄冷剤をより安定して吊り下げることができる。
【0007】
(2)前記支持枠における前枠と後枠との間には、吊り下げられた蓄冷剤における両側に振り分けられた部分の対向面に当接して、両振り分けられた部分の対向面が互いに接近する方向に張り出すことを規制する規制バーが渡されている。
蓄冷剤は、ゲル化剤が樹脂シート内に充填されたものであって、凍結されるとゲル化剤が体積膨張して厚さが増した硬いものとなる。そのため、蓄冷剤が、支持枠の前枠よりも奥側で吊り下げられた状態で凍結されると、蓄冷剤の両側に振り分けられた部分の対向面が互いに接近する方向に張り出した状態となり、そうすると、蓄冷剤を水平枠に沿って引き出す場合に、蓄冷剤が前枠に引っ掛かるおそれがある。
それに対して本構成では、規制バーに当たることで蓄冷剤の両側に振り分けられた部分の対向面が互いに接近する方向に張り出すことが規制され、言い換えると、両側に振り分けられた部分が前枠に対して正面から視た左右両側に外れた位置に留められ、凍結した蓄冷剤は、規制バーに沿うようにして前枠に引っ掛かることなくスムーズに引き出される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のラックを使用すれば、蓄冷剤を支持枠に吊り下げて支持する作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係る凍結庫の側断面図
【図2】開扉状態の凍結庫の正面図
【図3】ハンガーラックの斜視図
【図4】同正面図
【図5】同平面図
【図6】同側面図
【図7】同右奥隅部の拡大平面図
【図8】スタンドラックの斜視図
【図9】同正面図
【図10】同平面図
【図11】同側面図
【図12】本体枠の右奥隅部の拡大平面図
【図13】図10のX矢視拡大図
【図14】図10のY矢視拡大図
【図15】ハンガーラックの装着構造を示す平面図
【図16】スタンドラックの装着構造を示す平面図
【図17】マット状蓄冷剤の支持動作を示す側面図
【図18】実施形態2のハンガーラックを用いた場合におけるマット状蓄冷剤の支持動作を示す側面図
【図19】実施形態3のハンガーラックを用いた場合におけるマット状蓄冷剤の支持動作を示す側面図
【図20】実施形態4のハンガーラックの側面図
【図21】同ハンガーラックの使用形態を示す一部切欠正面図
【図22】実施形態5のハンガーラックの側面図
【図23】同ハンガーラックの使用形態を示す一部切欠正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図17によって説明する。
本実施形態に係る蓄冷剤凍結庫10は、図1及び図2に示すように、前面開口の縦長の断熱箱体からなる凍結庫本体11を有し、内部が凍結室12とされて、底面の四隅に設けられた脚13で支持されている。凍結室12の前面開口部14には、断熱扉15が一方の縦縁(例えば右側縁)を中心とした揺動開閉可能に装着されている。
凍結庫本体11の上面には機械室16が設けられ、同機械室16内には、圧縮機18、空冷式の凝縮器19等からなる冷凍装置17等が装備されている。
【0011】
凍結室12の天井部の奥側寄りの位置には、ドレンパンを兼ねたダクトパネル20が張られることで冷却器室21が区画形成されており、同冷却器室21の手前側の位置には吸込口22が、奥側には吹出口23がそれぞれ形成されている。冷却器室21内には冷却器25が収容され、上記の機械室16内に装備された冷凍装置17と冷媒配管で接続されて冷凍サイクルが構成されているとともに、吸込口22に臨んで庫内ファン26が装着されている。
そして、冷凍装置17を運転しつつ庫内ファン26を駆動すると、詳しくは後記するように、凍結室12の庫内空気が吸込口22から冷却器室21内に吸引され、その空気が冷却器25を流通する間に熱交換によって冷気が生成され、その冷気が吹出口23から凍結室12の奥壁12Aに沿うようにして吹き出され、凍結室12内に冷気が循環供給されるようになっている。
【0012】
凍結室12内には、蓄冷剤がラックに対して整列して支持されて収納されるようになっている。
この実施形態では基本的には、2種類のシート状の蓄冷剤A,Bが適用されるようになっている。第1の蓄冷剤Aは、樹脂シート内にゲル化剤が充填された短冊状をなす蓄冷部材aが4枚連ねられた形状であって、二つ折り可能とされている。以下、第1の蓄冷剤Aをマット状蓄冷剤Aという。
第2の蓄冷剤Bは、同じく樹脂シート内にゲル化剤が充填されて単体の短冊状に形成されている。以下、第2の蓄冷剤Bを短冊状蓄冷剤Bという。この実施形態の短冊状蓄冷剤Bは、上記マット状蓄冷剤Aを構成する蓄冷部材aと比べて、長さと厚さが同じである反面、幅が半分強に留まっている。
【0013】
マット状蓄冷剤Aは、第1のラック40に対して吊り下げられて支持されるようになっている。以下、第1のラック40をハンガーラック40という。
一方、短冊状蓄冷剤Bは、第2のラック50に対して立て掛けられて支持されるようになっている。以下、第2のラック50をスタンドラック50という。
これらのラック40,50を凍結室12内に装着する手段として、凍結室12の奥壁12Aの左右両端部と、左右の側壁12Bにおける前面開口部14から所定寸法入った位置に、合計4本の棚柱30が立てられており、各棚柱30における同じ高さ位置に棚受金32が装着されて、それらのラック40,50が支持されるようになっている。
【0014】
詳細には、棚受金32は、図15及び図17に示すように、水平な載置板33の先端から支え板34が斜め下方に折り返された形状であり、かつ載置板33には掛止片35が垂直に切り起こし形成されている。棚受金32は、載置板33と支え板34に設けられた取付爪(図示せず)を、棚柱30に列設された取付孔31の上下2個に亘って嵌めることで装着されるようになっている。
この実施形態では、凍結室12内における上側の略3/4の領域に、ハンガーラック40が3段に亘って装着され、残りの下側の領域に、スタンドラック50が2段に亘って装着されている。なお下側のスタンドラック50は、凍結室12の底面上に直に載せられている。
【0015】
次に、ラックの形状について詳細に説明する。
ハンガーラック40は、図3ないし図7に示すように、共に鋼線等の金属線材を素材として形成された本体枠41と、マット状蓄冷剤Aを二つ折りして吊り下げて支持する複数個(図示8個)の支持枠45とから構成されている。
本体枠41は、前縁と左右の側縁とからなる平面門形をなす三方枠42と、後縁枠44とから構成され、三方枠42の左右の側縁の奥端部では、内向きの鈎形に屈曲された被掛止部43が形成されている。後縁枠44は、上記した三方枠42における左右の被掛止部43の折り返し部43Aの間に亘る長さを有し、両端には、折り返し部43Aより所定寸法短い屈曲部44Aが直角曲げされている。三方枠42の両被掛止部43の間には、折り返し部43Aと屈曲部44Aの先端同士を揃えた形態で後縁枠44が差し渡され、溶接により結合されることで本体枠41が形成されている。
本体枠41は、凍結室12の間口にほぼ匹敵する横幅と、同凍結室12の奥行よりも所定寸法小さい奥行寸法を有する平面方形状に形成され、かつ、左右両側縁の奥端に形成された被掛止部43が、後縁枠44よりも所定寸法後方に突出した形状となっている。
【0016】
支持枠45は、前後方向に延びた水平枠46の前後両端に、前枠47と後枠48とを下向きに形成した形状であって、後枠48が直角に下向きに曲げられているのに対して、前枠47は、直角に下向きに曲げられたのち(垂下部47A)、中央高さより少し下方位置から奥側に向けて斜め(45°)に屈曲された(傾斜部47B)形状となっている。
上記した支持枠45は、隣り合う2個の前枠47の下端同士と、後枠48の下端同士がそれぞれ連結枠45Aで連結されることにより、所定間隔を開けて一体的に形成されている。
【0017】
上記した支持枠45の対が4組、各組間に上記した両支持枠45の間隔に等しい間隔を取って左右方向に並べられ、本体枠41における左右の側縁よりも少し内側に入った領域において同本体枠41上に載せられる。詳細には、各支持枠45の対における前側の連結枠45Aが三方枠42の前縁上に載せられ、また後側の連結枠45Aが後縁枠44上に載せられ、それぞれ溶接によって固定されている。
以上により、本体枠41の上面における左右の側縁の少し内側の領域において、図示8個の支持枠45が一定間隔を開けて左右方向に並んで設けられ、かつ、各支持枠45における手前側の一部、すなわち手前側の端縁から前枠47の傾斜部47Bの下端までの奥行領域が、本体枠41の前縁の手前側に突出した形状となる。
【0018】
ここで、支持枠45における水平枠46の前後方向の長さ寸法は、マット状蓄冷剤Aの縦幅の2倍弱であり、水平枠46までの高さ寸法は、マット状蓄冷剤Aの長さの半分強である。
また、各支持枠45における後枠48の内側の面には、同じく金属線材からなる規制枠49が、ほぼ中央高さ位置において全幅に亘って当てられ、溶接により固定されている。
【0019】
次に、スタンドラック50について図8ないし図14によって説明する。
スタンドラック50は大まかには、それぞれ鋼線等の金属線材を素材として形成された本体枠51と、複数の支持枠55(図示15個)と、受け枠62とから構成されている。
本体枠51は、前縁と左右の側縁とからなる平面門形をなす三方枠52と、後縁枠54とから構成されている。三方枠52の左右の側縁の奥端部では、内向きの鈎形に屈曲された被掛止部53が形成され、かつ同被掛止部53の折り返し部53Aの先端部が、互いに対向する方向に直角曲げされている(屈曲部53B)。後縁枠54は、本体枠51の左右の側縁の間に亘る長さを有している。後縁枠54は、左右の被掛止部53における屈曲部53Bの内側に当てられた形態で、本体枠51における左右の側縁の奥端部の間に差し渡され、溶接により結合されることで本体枠51が形成されている。
本体枠51は、凍結室12の間口にほぼ匹敵する横幅と、同凍結室12の奥行よりも所定寸法小さい奥行寸法を有する平面方形状に形成され、かつ、左右両側縁の奥端に形成された被掛止部53が、後縁枠54よりも所定寸法後方に突出した形状となっている。
【0020】
支持枠55は、前後方向に延びた水平枠56の前端に前枠57が一体形成された形状であり、水平枠56の長さ方向の中央部における所定長さ領域には、所定深さを有する方形状の凹陥部58が形成されている。前枠57は、水平枠56の前縁から凹陥部58の深さ寸法だけ垂下したのち、その下端部が奥側に直角曲げされた(屈曲部57A)形状となっている。
上記の支持枠55は、一定間隔を開けて左右方向に並んで配されるが、各支持枠55の水平枠56の後端を連結する連結枠59が設けられている。連結枠59は、本体枠51の左右の側縁の間に亘る長さを有する一方、両端にはL字形をなす脚枠60が互いに向き合う姿勢で形成されている。
【0021】
上記のように15個の支持枠55が所定間隔を開けて並んで配され、各水平枠56の後端の下面側に連結枠59が当てられて溶接により固定されることで、15個の支持枠55が仮組みされる。このような仮組みされた支持枠55が本体枠51上に載せられ、各支持枠55における前枠57の屈曲部57Aの先端が、本体枠51の前縁の上面に当てられて溶接により固定される。このとき、連結枠59の両端の脚枠60が、本体枠51の左右の奥端部に形成された被掛止部53の突出端の少し手前側に対応するため、同脚枠60の下辺が被掛止部53に載せられて溶接で固定される。
【0022】
また、本体枠51の左右の側縁の間に亘るようにして、4本の受け枠62が設けられる。前側の2本の受け枠62は、本体枠51の前縁から少し奥に入った位置と、凹陥部58の前縁寄りの位置とにそれぞれ配されて溶接で固定される。後側の2本の受け枠62は、凹陥部58の後縁寄りの位置と、同位置と後縁枠54との中間位置とにそれぞれ配されて、同じく溶接で固定される。
【0023】
以上により、本体枠51の上面における左右の側縁の少し内側の領域において、図示15個の支持枠55が一定間隔を開けて左右方向に並んで設けられ、かつ、各支持枠55における手前側の一部、すなわち手前側の端縁から前枠57の屈曲部57Aの先端までの奥行領域が、本体枠51の前縁の手前側に突出し、また、本体枠51の左右の奥端部に形成された被掛止部53の突出端側の所定領域が連結枠59並びにその脚枠60の位置から奥側に突出した形態となる。また、手前側と奥側に分かれた各領域において、それぞれ2本ずつの受け枠62が設けられる。
ここで、支持枠55における水平枠56の前後方向の長さ寸法は、短冊状蓄冷剤Bの長さの2倍弱であり、水平枠56までの高さ寸法は、短冊状蓄冷剤Bの幅よりも少し小さい寸法である。また、前側の2本の受け枠62の間隔は、短冊状蓄冷剤Bの長さの6割程度であり、後側の2本の受け枠62の間隔は、前側の間隔の2/3程度である。
【0024】
短冊状蓄冷剤Bは、奥側の領域では、後側の2本の受け枠62並びに後縁枠54で受けられつつ、隣り合う支持枠55における凹陥部58よりも奥側の部分の間に立て掛けられた形態で支持され、一方手前側の領域では、前側の2本の受け枠62並びに本体枠51の前縁で受けられつつ、隣り合う支持枠55における凹陥部58よりも手前側の部分の間に立て掛けられた形態で支持されるようになっている。すなわち、本実施形態のスタンドラック50では、手前側と奥側の二領域において、短冊状蓄冷剤Bを立て掛けた形態で支持し得る支持領域が構成されている。
【0025】
続いて、本実施形態の作用を説明する。
凍結室12内には、上部側にハンガーラック40が3段に亘り、その下方にスタンドラック50が2段に亘って装着される。
ハンガーラック40は、図15に示すように、奥縁の左右両端部に設けられた被掛止部43が、奥壁12Aの左右の棚柱30に取り付けられた棚受金32に載せられて掛止片35に掛止され、また、本体枠51における前縁の左右の隅部が、左右の側壁12Bの棚柱30に取り付けられた棚受金32に載せられて掛止片35に掛止され、これによりハンガーラック40は前後並びに左右方向に移動不能に位置決めされて装着される。ハンガーラック40は、3段に亘って極力上下方向の間隔を詰めた状態で装着される。
【0026】
このとき、図17に示すように、上下に並んだハンガーラック40において、下側のハンガーラック40の支持枠45における水平枠46の前端部の上方に、上側のハンガーラック40の前枠47の傾斜部47Bとの間において手前側に広がったスペースSができる。
また、ハンガーラック40の支持枠45における前枠47(垂下部47A)と、閉扉された場合の断熱扉15の裏面との間には、所定(棚柱30の幅程度)のスペースが確保されるとともに、支持枠45の後枠48と奥壁12Aとの間にも、前側と同程度のスペースが確保される。
【0027】
一方、2個のスタンドラック50のうち上側のスタンドラック50は、図16に示すように、奥縁の左右両端部に設けられた被掛止部53が、奥壁12Aの左右の棚柱30に取り付けられた棚受金32に載せられて掛止片35に掛止され、また、一番前の受け枠62と本体枠51における左右の側縁とが交差した隅部が、左右の側壁12Bの棚柱30に取り付けられた棚受金32に載せられて掛止片35に掛止され、これにより、上側のスタンドラック50は前後並びに左右方向に移動不能に位置決めされて装着される。
このとき、スタンドラック50の支持枠55における前枠57と、閉扉された場合の断熱扉15の裏面との間には、ハンガーラック40側と同程度のスペースが確保されるとともに、奥縁の連結枠59と奥壁12Aとの間にも、同程度のスペースが確保される。
【0028】
下側のスタンドラック50は、凍結室12の底面に直接に載せられる。なお、図1に示すように、凍結室12の底面には、手前側に向けて下り勾配となった凹面12Cが形成されており、スタンドラック50における本体枠51の前縁が凹面12Cの前縁の内側に嵌って係止されることで、スタンドラック50が手前側へ抜けることが規制されるようになっている。
【0029】
次に、マット状蓄冷剤Aはハンガーラック40に、短冊状蓄冷剤Bはスタンドラック50にそれぞれ支持される。
マット状蓄冷剤Aは下向きに二つ折りされたのち、図17の矢線に示すように、その折曲部をハンガーラック40における対応する支持枠45の水平枠46の前端部に掛け、同水平枠46に沿って押し込むと、規制枠49に当たったところで押し込みが停止される。これにより二つ折りされたマット状蓄冷剤Aが、支持枠45の奥側の領域において吊り下げられた形態で支持される。
支持枠45の手前側の領域にマット状蓄冷剤Aを支持する場合は、同様に下向きに二つ折りしたのち、同折曲部を対応する支持枠45における水平枠46に掛け、その後縁側を奥側の領域で支持されているマット状蓄冷剤Aの前縁側とオーバラップさせつつ、その前縁が支持枠45の前枠47(垂下部47A)と揃う位置まで押し込むことにより、支持枠45の手前側の領域で吊り下げられた形態で支持される(同図の上段参照)。
【0030】
ここで、特に上から二段目と三段目のハンガーラック40では、上下の間隔が狭いと、二つ折りされたマット状蓄冷剤Aを支持枠45に掛ける作業がし難いと言えるが、この実施形態では、二段目と三段目のハンガーラック40におけるマット状蓄冷剤Aを挿入する部分が、手前側に広がるように口を開けた形態となるから、二つ折りされたマット状蓄冷剤Aを挿入し、ひいては支持枠45の水平枠46に掛ける作業がしやすい。
【0031】
マット状蓄冷剤Aが、上記した要領で、各段のハンガーラック40についてそれぞれ奥側と手前側において吊り下げられた形態で支持された場合、奥側に支持されたマット状蓄冷剤Aの後縁は、規制枠49に当たることでそれ以上奥側に押し込まれることが規制され、言い換えると奥側のマット状蓄冷剤Aの後縁と奥壁12Aとの間には、所定間隔の冷気通路65が確保される。
一方、手前側に支持されたマット状蓄冷剤Aは、その前縁を支持枠45の前枠47の垂下部47Aに揃えた形態で吊り下げ支持されているから、手前側のマット状蓄冷剤Aの前縁と閉扉された断熱扉15の裏面との間にも、所定間隔の冷気通路66が確保されることになる。
【0032】
短冊状蓄冷剤Bをスタンドラック50に支持する場合は、短冊状蓄冷剤Bが断面の長辺側を立てて水平に倒した姿勢とされて、上側のスタンドラック50における隣り合う支持枠55の間に挿入され、その後縁が連結枠59に当たったところで押し込みが停止され、同短冊状蓄冷剤Bは、奥側の領域において、後側の2本の受け枠62並びに後縁枠54で受けられつつ、隣り合う支持枠55における凹陥部58よりも奥側の部分の間に立て掛けられた形態で支持される。
手前側の領域に支持する場合は、短冊状蓄冷剤Bが上記と同じ姿勢において、隣り合う支持枠55の間に挿入され、その後縁側を奥側の領域で支持されている短冊状蓄冷剤Bの前縁側とオーバラップさせつつ、その前縁が支持枠55の前枠57と揃う位置まで押し込まれることにより、同短冊状蓄冷剤Bは、前側の2本の受け枠62並びに本体枠51の前縁で受けられつつ、隣り合う支持枠55における凹陥部58よりも手前側の部分の間に立て掛けられた形態で支持される。
【0033】
下側のスタンドラック50についても、上記と同様に、短冊状蓄冷剤Bが手前側と奥側の領域でそれぞれ立て掛けられた形態で支持される。
このとき、スタンドラック50の奥側の領域に支持された短冊状蓄冷剤Bの後縁と奥壁12Aとの間、並びに手前側の領域に支持された短冊状蓄冷剤Bの前縁と、閉扉された断熱扉15の裏面との間に、上記の冷気通路65,66に繋がる冷気通路が確保される。
【0034】
蓄冷剤A,Bの収納が完了したら、断熱扉15が閉じられたのち冷却運転が開始される。すなわち、冷凍装置17と庫内ファン26とが駆動されると、図1の矢線に示すように、吸込口22から吸い込まれた庫内空気が冷却器25を通過する間に冷気が生成され、その冷気が吹出口23から奥壁12Aの表面の冷気通路65に向けて吹き出されたのち、各段のラック40,50に支持された蓄冷剤A,Bを通って前方に吹き抜け、そののち断熱扉15の裏面の冷気通路66に沿って立ち上がるように循環供給され、これにより収納された蓄冷剤A,Bが凍結されることになる。
収納された蓄冷剤群の前面側と後面側に冷気通路65,66が確保されているから、冷気が凍結室12内の全域に亘ってスムーズに循環供給され、全蓄冷剤A,Bが均一にかつ高速度で凍結される。
凍結が完了したら、断熱扉15を開けたのち、収納時とは逆の手順によって、蓄冷剤A,Bを対応するラック40,50から引き抜きつつ庫外に取り出せばよい。
【0035】
本実施形態の効果は以下のようである。上下に並んだハンガーラック40のうち下側のハンガーラック40にマット状蓄冷剤Aを支持する場合には、図17に示すように、二つ折りしたマット状蓄冷剤Aを上下のハンガーラック40の間から挿入して下側のハンガーラック40の支持枠45に掛けるのであるが、下側のハンガーラック40の支持枠45における水平枠46の前端部の上方には、上側のハンガーラック40の前枠47の傾斜部47Bとの間において手前側に広がったスペースSが構成されるから、二つ折りしたマット状蓄冷剤Aを挿入しひいては支持枠45の水平枠46に掛ける作業がしやすくなる。結果、蓄冷剤の収納時間が短縮できる。
上記した挿入をしやすくするためのスペースSを構成するのに、前枠47に傾斜部47Bを設けることで対応し、マット状蓄冷剤Aを実際に掛ける水平枠46の長さは大きく取るようにしたから、マット状蓄冷剤Aをより安定して吊り下げ支持することができる。
【0036】
<実施形態2>
図18は、本発明の実施形態2を示す。実施形態2のハンガーラック40Wでは、支持枠45における前枠47の下端部が円弧状部47Cとされている。
上下に並んだハンガーラック40Wのうち下側のハンガーラック40Wの支持枠45における水平枠46の前端部の上方には、上側のハンガーラック40Wの前枠47の円弧状部47Cとの間において手前側に広がったスペースSが構成される。同様に、二つ折りしたマット状蓄冷剤Aを挿入しひいては支持枠45の水平枠46に掛ける作業がしやすくなる。
【0037】
<実施形態3>
図19は、本発明の実施形態3を示す。実施形態3のハンガーラック40Xでは、支持枠45における前枠47の上端と水平枠46の前端とが交差する角部が、面取りを施すように傾斜部47Dとなっている。同じく支持枠45における水平枠46の前方に手前側に広がったスペースSが構成される。
なお、傾斜部47Dは、上記よりも緩やか勾配で奥行の長い形状としてもよく、また円弧状部としてもよい。
【0038】
<実施形態4>
本発明の実施形態4を、図20及び図21によって説明する。
蓄冷剤は凍結されるとゲル化剤が体積膨張して厚さが増した硬いものとなる。そのため、上記実施形態1に例示したように、マット状蓄冷剤Aがハンガーラック40の支持枠45の水平枠46に吊り下げられて凍結された場合、特に奥側に支持されたマット状蓄冷剤Aでは、両側に振り分けられた部分の対向面が互いに接近する方向に張り出した状態となり、そうすると、その奥側のマット状蓄冷剤Aを水平枠46に沿って引き出す場合に、同マット状蓄冷剤Aが支持枠45の前枠47に引っ掛かるおそれがある。
この実施形態4のハンガーラック40Yでは、支持枠45における前枠47の傾斜部47Bの後枠48との間に、規制バー70が水平方向に差し渡されて溶接で固定されている。
【0039】
このようなハンガーラック40の支持枠45に二つ折りされたマット状蓄冷剤Aが吊り下げられた場合、同蓄冷剤Aにおける両側に振り分けられた部分の下側部分の対向面の間に規制バー70が入った状態となって、対向面が互いに接近する方向に張り出すことが規制される。言い換えると、両側に振り分けられた部分が前枠47に対して正面から視た左右両側に外れた位置に留められ、凍結したマット状蓄冷剤Aは、規制バー70に沿うようにして前枠47に引っ掛かることなくスムーズに引き出される。
また、マット状蓄冷剤Aにおける両側に振り分けられた部分の間に隙間が確保され、同隙間にも冷気が流通して、凍結速度が速められる。
【0040】
<実施形態5>
図22及び図23は、実施形態5を示す。
マット状蓄冷剤A1の形態として、短冊状の蓄冷部材aを3個連結した三連式のものがあり、その場合は、同マット状蓄冷剤A1は、図23に示すように、一方に2個の蓄冷部材aが、他方に1個の蓄冷部材aが来るように振り分けられて吊り下げられる。
この実施形態5のハンガーラック40Zでは、上記のような支持形態を睨み、支持枠45における前枠47の垂下部47Aのほぼ中央高さ位置と、後枠48との間に、規制バー71が水平方向に差し渡されて溶接で固定されている。
【0041】
このようなハンガーラック40Zの支持枠45に三連式のマット状蓄冷剤A1が吊り下げられた場合、図23に示すように、両側に振り分けられて対向した部分の間に規制バスバー71が入った状態となって、対向面が互いに接近する方向に張り出すことが規制され、同様に両側に振り分けられた部分が前枠47に対して正面から視た左右両側に外れた位置に留められる。そのため凍結したマット状蓄冷剤A1は、同じく規制バー71に沿うようにして前枠47に引っ掛かることなくスムーズに引き出される。
【0042】
この実施形態5のハンガーラック40Zは、短冊状の蓄冷部材aを2個連結した二連式のマット状蓄冷剤を吊り下げて支持する場合にも、同マット状蓄冷剤を前枠47に引っ掛けることなくスムーズに取り出すことに同様に有効となる。
なお、ハンガーラック40Zに対して、上記実施形態4に例示した規制バー70を併せて設けるようにしてもよい。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、ハンガーラックの支持枠に対して、マット状蓄冷剤が奥側と手前側の二列に亘って吊り下げ支持される場合を例示したが、同マット状蓄冷剤の大きさによって三列以上に並べたり、一列のみとする場合であってもよい。
(2)ハンガーラックに支持されるシート状の蓄冷剤は、短冊状の蓄冷部材を複数個連ねたマット状蓄冷剤に限らず、1枚の大きな蓄冷剤等、要は二つ折りして吊り下げ支持可能な形態のものであればよい。
【符号の説明】
【0044】
A,A1…マット状蓄冷剤(シート状の蓄冷剤) a…蓄冷部材 S…スペース 10…凍結庫 12…凍結室 30…棚柱 40,40W,40X,40Y,40Z…ハンガーラック 41…本体枠 45…支持枠 46…水平枠 47…前枠 47A…垂下部 47B…傾斜部(面取形状) 47C…円弧形部(面取形状) 47D…傾斜部(面取形状) 48…後枠 70,71…規制バー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の蓄冷剤を二つ折りして吊り下げて支持する方形状をなす複数の支持枠が所定間隔を開けて並設された構造であって、凍結庫内において複数段に亘って装着されるようにしたラックにおいて、
前記支持枠における前枠の下側若しくは上側の角部に面取形状が施されていることを特徴とする蓄冷剤用ラック。
【請求項2】
前記支持枠が、前記蓄冷剤を吊り下げる水平枠と、同水平枠の奥端から垂下された後枠と、前記水平枠の前端から垂下されたのち奥側に屈曲された前枠とから構成されており、この支持枠が並設されてそれぞれの下端側が本体枠に連結されることで当該ラックが形成されていることを特徴とする請求項1記載の蓄冷剤用ラック。
【請求項3】
前記支持枠における前枠と後枠との間には、吊り下げられた蓄冷剤における両側に振り分けられた部分の対向面に当接して、両振り分けられた部分の対向面が互いに接近する方向に張り出すことを規制する規制バーが渡されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の蓄冷剤用ラック。
【請求項1】
シート状の蓄冷剤を二つ折りして吊り下げて支持する方形状をなす複数の支持枠が所定間隔を開けて並設された構造であって、凍結庫内において複数段に亘って装着されるようにしたラックにおいて、
前記支持枠における前枠の下側若しくは上側の角部に面取形状が施されていることを特徴とする蓄冷剤用ラック。
【請求項2】
前記支持枠が、前記蓄冷剤を吊り下げる水平枠と、同水平枠の奥端から垂下された後枠と、前記水平枠の前端から垂下されたのち奥側に屈曲された前枠とから構成されており、この支持枠が並設されてそれぞれの下端側が本体枠に連結されることで当該ラックが形成されていることを特徴とする請求項1記載の蓄冷剤用ラック。
【請求項3】
前記支持枠における前枠と後枠との間には、吊り下げられた蓄冷剤における両側に振り分けられた部分の対向面に当接して、両振り分けられた部分の対向面が互いに接近する方向に張り出すことを規制する規制バーが渡されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の蓄冷剤用ラック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−215312(P2012−215312A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79242(P2011−79242)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
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