説明

蓄冷熱カプセルの製造方法

【課題】蓄冷熱カプセルの大きさに対して、蓄冷熱材の封入量の容積比率を出来るだけ大きくなるように、且つ安価で製造できる方法を提供する。また、パラフィンのように引火性のある蓄冷熱材を溶接などで封入する蓄冷熱カプセルで、引火しないように安全な製造方法を提供する。
【解決手段】筒状の管を切断し、両端部を絞り加工したのち、一端を溶接して口を閉じ、もう一端の開口部より蓄冷熱剤を注入し、次いでカシメ加工によって端部の閉口を行った後、その端部を溶接する蓄冷熱カプセルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置に使用される蓄冷器の部品である蓄冷カプセルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調装置に使用される蓄冷(熱)器の一般的な形式は、シェルアンドチューブ方式とカプセル方式の2種類がある。カプセル方式の方がシェルアンドチューブ方式よりも蓄冷材の充填効率が良いとされており、比較的狭いスペースに設置される時はカプセル方式が使用されることが多い。
狭いスペースに蓄冷器を設置する必要がある空調調和機の例として、自動車(車両)の空調調和機が稼動して車内の快適性を保つ技術が検討されている。冷房時にはエンジン回転に直結した圧縮機(コンプレッサー)が稼動し、フロンなどの高圧の気体状態の冷媒が凝縮器に送られて外気により液化され、膨張弁を介して低圧の液体のまま蒸発器に送られる。蒸発器では、冷媒の蒸発潜熱により冷却された空気が室内に送られて車内空調が行われる。また暖房時には冷媒は前述と同じ経路を通るが、蒸発器では冷媒の蒸発潜熱により空気の除湿が行われ、その空気が加熱器によって温調されて車内空調が行われる。
【0003】
この一般的な車両用空調機の冷媒熱サイクルの中で、蒸発器の前に蓄冷器を設置しておくと、車両の運転時にコンプレッサーによる冷媒の循環で、低温になった冷媒によって蓄冷器に冷熱が蓄えられる。この場合のシステム例を図9に示す。図9において、31はエンジン、32は圧縮機、33は凝縮器、34は電動弁、35蓄冷器、36は遠心式電動ポンプ、37は三方弁、38は蒸発器、39は外気または内気、および40は冷風をそれぞれ示す。また、実線の矢印は通常時の冷媒の流れを、点線の矢印は蓄冷器使用時の冷媒の流れをそれぞれ示す。そして、車両のエンジン31停止に伴う圧縮機32の停止のときに、蓄冷器35と蒸発器38との間の冷媒の循環を遠心式電動ポンプ36などで行うようにすると、蓄冷器35が車両運転時の凝縮器の代わりとなって、蓄冷器35に蓄えられた熱量の冷熱分だけエンジン停止時でも車内空調が可能となる。
このような小スペースに設置する空調機に蓄冷器を利用する例としては、例えば特許文献1〜5に記載のものがある。蓄冷カプセルを使用した蓄冷(熱)器では、内部が密閉されたカプセルの中に蓄冷(熱)材が封入されている。冷熱を蓄えるとき蓄冷材は、カプセルの外側から融点以下の温度である冷たい流体によって冷却され、蓄冷材自体は凝固して保有される蓄冷材の潜熱分の冷熱エネルギーが蓄えられ、冷熱が必要とされるときにカプセル外側に被冷却流体が流されてカプセル内部の蓄冷材の溶解による潜熱の移動で、被冷却流体が冷却される。空調設備において被冷却流体は冷媒(一般的にフロンが多い)であり、蓄冷熱が使用されるときに蓄冷カプセルの外側では冷媒の凝縮(相変化)が行われる。また、温熱を蓄えて蓄熱器となる場合は全く逆のことが行われて、蓄温熱が利用されるときに被加熱流体である冷媒は液体から蒸発(相変化)が行われる。
【0004】
蓄冷(熱)カプセルについて、その熱交換特性を高める改善例を示したものには、例えば、特許文献6〜7に記載のものがある。これらの公知文献は、特に円筒状の蓄冷(熱)カプセルの熱交換特性を高めるために、蓄冷(熱)剤とカプセル壁面とが接する部分に、内面フィンを取り付けるなどの改善技術を開示したものである。図8は内面にフィンを取り付けた蓄冷熱カプセル形状の一例の説明図である。(a)は蓄冷熱カプセルの外観図であり、点線は内部のフィンを示している。(b)は蓄冷熱カプセルの断面図を示す。(c)はフィン部の詳細な説明図である。ここでDはカプセル外径、dはカプセル内径、hはフィン高さ、tはカプセルの肉厚、αはフィンの頂角、Rftはフィン先端部の曲率半径、Rfbはフィン底部の曲率半径をそれぞれ示すものである。
【特許文献1】特開2003−285634号公報
【特許文献2】特開平6−211036号公報
【特許文献3】特開平7−76208号公報
【特許文献4】特開2000−313226号公報
【特許文献5】特開2001−287539号公報
【特許文献6】特開平11−270975号公報
【特許文献7】特開昭55−56597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような車両用などに代表される小スペースに設置が必要な空調機でカプセル方式の蓄冷器を適用する場合には、蓄冷熱カプセルの大きさ(容積)に対して、内部に封入される蓄冷材量を出来る限り増やす形状にする必要がある。また、空調機に使用される蓄冷熱器は、空調機の熱サイクルにおいて、駆動力エネルギーの低減を図る目的で設置される補助装置である。そのため安価に供給されるものでなくてはならない。
【0006】
潜熱を利用する蓄冷材としては水が安価で、潜熱も大きいとしてよく知られている。そのため、蓄冷材としてよく用いられる。但し、水は大きな圧力を変えない限り相変化温度(融点)を変えることが出来ず、一般的な冷媒であるフロンの作動温度を水の潜熱を利用できる温度に圧力調整しなければ、蓄冷器としての機能を果たさない問題がある。そのため、1〜30℃程度で潜熱を利用できる融点(凝固点)をもつパラフィンも蓄冷材としてよく使用される。但し、パラフィンは引火性があるので取り扱いに注意が必要とされる。
従来、蓄冷熱カプセルの製造は、パラフィン封入後に該カプセル端部を溶接する方法が取られていた。しかし、溶接部にパラフィンが付着してしまうため、溶接時にパラフィンが引火して火災が発生する危険があった。
【0007】
さらに、自動車空調装置に使用される蓄冷器は、自動車のエンジンが稼動中に車内空調を行う場合には本来必要とされない、補助的な機器であり、小型あるいは軽量であることが重要である。そのため、特許文献6や特許文献7に開示される蓄冷(熱)カプセルを使用して、蓄冷(熱)器の小型軽量化を図ることが有効な技術と認められる反面、そのような複雑な形状を有する蓄冷(熱)カプセルを、前述のような問題を改善して安価に、また安全に製造される技術が、その実現には不可欠である。
上記のように蓄冷カプセル方式の蓄冷器は車両用空調機などの効率化に有効なものとして提案されている公知例が多いが、実用化あるいは普及させるためには経済性および安全性の上で問題も多い。
【0008】
本願発明の目的は上記の従来の問題点を解決した蓄冷熱カプセルの製造方法を提供することである。具体的には、蓄冷熱カプセルの大きさに対して、蓄冷熱材の封入量の容積比率を出来るだけ大きくなるように、且つ安価で製造できる方法を提供することである。また、パラフィンのように引火性のある蓄冷熱材を溶接などで封入する蓄冷熱カプセルであっても、引火しないような、安全な製造方法を提供することである。さらに、蓄冷熱カプセルを、1度の工程で複数本製造して、製造コスト低減を図ることのできる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)筒状の管を切断し、両端部を絞り加工したのち、一端を溶接して口を閉じ、他端の開口部より蓄冷熱材を注入し、次いでカシメ加工によって端部の閉口を行った後、その端部を溶接することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法、
(2)筒状の管を切断し、該管と同じ外側形状をもつキャップの内側形状および高さに合わせた分だけ両端を縮径して、一端を該キャップで接合し、次いで蓄冷熱材を注入し、他端を該管と同じ外側形状をもつ別のキャップにて溶接することを特徴とする蓄冷カプセルの製造方法、
(3)筒状の管を切断し、前記筒状の管の内径よりも小さい外径の管を複数本挿入すると同時に、挿入される管の内側から蓄冷熱材を注入することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法、
(4)筒状の管を切断し、該管の一端をカシメ加工によって閉口した後、その端部を溶接し、他端をその管と同じ外側形状をもつキャップの内側形状および高さに合わせた分だけ縮径してキャップを接合し、閉口することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法、
(5)複数本の管からなる蓄冷熱カプセル端部の閉口部分に相当する形状の板材あるいはキャップ形状の連結体に該管の一端をロウ付けあるいは溶接によって閉口し、該管の他端から蓄冷熱材を注入し、次いで蓄冷熱カプセル端部の閉口部分に相当する板材あるいはキャップ形状の連結体に該管の他端をロウ付けあるいは溶接によって閉口することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法、
(6)管を押出により成形する押出速度と同じ速度で蓄冷熱材を注入しながら管を製造し、管外面から管を押し潰して端部を機械的に閉口して切断し、次いで該閉口部分を溶接することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法、
(7)管を押出により成形する押出速度と同じ速度で蓄冷熱材を注入しながら管を製造し、管側面を圧縮し閉口させたのち切断し、次いで該閉口部分を溶接することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法、
(8)カプセルの母材となる材料を押出によって中空状の長手方向の一端が閉口された容器とし、開口部より蓄冷熱材を注入して、その後、該開口部をロウ付けあるいは溶接によって閉口することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法、
(9)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の蓄冷器用カプセルの製造方法において、蓄冷熱カプセルの端部の閉口を、カプセル母材の融点よりも低い融点を持つ、ハンダあるいはロウ材を使用して閉口することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法、および
(10)(9)項に記載の蓄冷熱カプセルの製造方法において、蓄冷熱カプセルの端部の閉口の際に、母材に超音波を与えてハンダ付けすることを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、蓄冷熱カプセルの大きさに対して、蓄冷熱材の封入量の容積比率を出来るだけ大きく取ることが可能となる。また、パラフィンのように引火性のある蓄冷熱材を溶接などで封入する蓄冷熱カプセルで、引火しないように安全な製造方法を提供できる。さらに、蓄冷熱カプセルを、1度の工程で複数本製造できる設備を提供して、製造コスト低減を図ることができる。その結果、高効率化を図るために空調機に取り付ける蓄冷熱器を、安価に提供できるようになり、実用化および普及を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の蓄冷熱カプセルの製造方法の好ましい実施態様について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
まず、第1の実施態様による製造工程を図1に示す。ここでは、金属管などの筒状の管を常法により切断してカプセル原管1とする(a)。次いで、A端部2およびB端部3を常法により絞り加工したのち(b)、B端部3のみを溶接して口を閉じる(c)。このときもう一端のA端部2は(d)および(e)に示されるように、半部だけ端部の口が開いた開口部となっている。なお、(e)は、A端部2を上方から見た拡大図である。次いで、A端部2の開口部より注射器のようなものでパラフィン等の蓄冷熱材4を注入し(f)、常法によりカシメ加工によって端部の閉口を行う(gおよびh)。なお、(h)は、このときのA端部2を上方から見た拡大図である。最後に、A端部2を常法により溶接する。
この方法によれば、従来の溶接のみの方法と異なるため、引火性のある蓄冷熱材(パラフィン)を注入しても、機械的に封入を行いその後で最終溶接を行うので引火する危険性がない。またカプセル端部の処理に新たな材料を使用しないでカプセル原管の変形でカプセルを作成するので、材料費自体がカプセルの原管だけでよいので安価に製造可能である。なお、例示ではカプセル外形状が円筒状の場合を示しているが、形状をこれに制限するものではなく、多角柱の形状であっても同様である。
【0013】
第2の実施態様による製造工程を図2に示す。ここでは、筒状の管を常法により切断してカプセル原管1とする(a)。その後、カプセル原管1と同じ外側形状をもつキャップ5の内側形状および高さに合わせた分だけ、A端部2およびB端部3の両端を常法により縮径して(b)、B端部3にキャップ5を接合する(c)。次いで、A端部2の開口部よりパラフィン等の蓄冷熱材4を注入し(d)、A端部2をキャップ5を装着し常法により溶接する。キャップ5はカプセル原管1と同様の材質あることが好ましい。
カプセル端部をカシメ加工で溶接する場合は、カプセル端部に蓄冷熱材が封入できず、カプセルの容積サイズに対して蓄冷熱材の充填率が下がることがあるが、第2の実施態様では、カプセル端部まで蓄冷熱材を封入できるので蓄冷熱材の充填率を上げることができる。また、広い口から引火性のある蓄冷熱材(パラフィン)を注入するので、キャップを溶接する面にその蓄冷熱材が付着しにくく、溶接時に引火する危険が少ない。キャップの外径(外形状)と、蓄冷熱カプセルの原管である金属管の外径(外形状)が同じであるので、蓄冷器にこのカプセルを配列しても、隙間を発生することが無く、蓄冷器の製造時に効率よくカプセルを配列できる。なお、図2ではカプセル外形状が円筒状の場合を示しているが、第1の実施態様と同様、多角柱の形状であっても同様である。
【0014】
第3の実施態様による製造工程を図3に示す。ここでは、筒状の管を常法により切断してカプセル原管1とする(a)。次いで、カプセル原管1の片端部を常法により溶接する(b)。次いで、カプセル原管1の内径よりも小さい外径を有する内部金属管8を複数本挿入(好ましくは圧入)するとともに、内部金属管8の内側に注射器7などにより蓄冷熱材を注入する(c)。(d)は、点線で表される内部金属管が完全にカプセル原管1に挿入された状態を示す。最後に、カプセル原管1の開口していた下部の片端部6を常法により溶接する(e)。上部の開口部の閉口はカシメ加工、あるいはキャップを被せる工程を行ったのち、片端部6を溶接して行う。
注射器で引火性のある蓄冷熱材注入した場合、注射器を抜くときに注射器の針の先端に残っている蓄冷熱材が溶接する面に若干付着し、溶接時に引火する危険がある。これに対して、この第3の実施態様であれば注射器の針に残っているパラフィンが管に付着しても、溶接する金属管の溶接面に付着すること無いので、引火の危険が少なくなる。また、圧入された内側の管が、カプセル内面にフィンを設けることと同じ効果を得ることが出来るので、蓄冷熱器全体で使用するカプセル本数を低減することにも役立つ。なお、例示では、原管である金属管を変形させるものを記載しているが、管端部封入に第2の実施態様であるキャップを使用する場合も同じである。
【0015】
なお、第1から第3の実施態様において、両端の閉口を同じ閉口方法を採用しなくとも、その製造工程において、一端をカシメ加工および溶接によって実施し、もう一端をキャップによる接合を行っても問題はない(第4の実施態様)。
【0016】
第5の実施態様による製造工程を図4に示す。ここでは、複数本の各金属管からなるカプセル原管1の端部の閉口部分に相当する形状のキャップ形状の各連結体9に管1の一端を常法によりロウ付けあるいは溶接する(a)。なお、(b)はキャップの連結体の平面図である。もう一端から蓄冷熱材4を注入し(c)、次いでキャップ形状の連結体9に管1の一端をロウ付けあるいは溶接し(d)、閉口する(e)。
第5の実施態様を用いれば、第2の実施態様の製造方法によって製造されるカプセルを一度に複数本製造できるので、製造工程上コストダウンに有効である。
【0017】
第6の実施態様による製造工程を図5に示す。ここでは、管状体18aを押出により成形する押出速度と同じ速度で蓄冷熱材を注入しながら管状体18aを製造し(a)、管外面からローラのようなもので管を押し潰して端部を機械的に閉口して切断し(b)、次いでカプセル端部を機械的に閉口し(c)、最後に閉口部分を溶接する(d)。なお、図5で11は素材(金属素線)、12および13はローラ、14は押出しダイ、15は蓄冷熱材、16は可動式蓄冷熱材注入機、17は回転ローラ押しつぶし機、18aは管状体、18はカプセル原管、19は機械的封入されたカプセル端部、並びに20は溶接されたカプセル端部を表す。
第6の実施態様では、カプセル内部に蓄冷熱材を封入する工程を、カプセルの原型である管材の製造工程と同時に実施できる。すなわち、カプセル原型の管材の製造時間とほぼ同時に蓄冷熱カプセルが製作されることになり、連続量産化が可能となる。その結果、大幅なコスト低減を図ることが出来る。
【0018】
第7の実施態様による製造工程を図6に示す。ここでは、管状体を押出により成形する押出速度と同じ速度で蓄冷熱材を注入しながら管状体を製造し(a)、蓄冷熱カプセルの管側面を圧縮し閉口させたのち切断し(b)、次いで閉口部分を溶接する(c)。各図中の符号は他の図6と同様のものを示す。
第7の実施態様は、第6の実施態様による蓄冷熱カプセルの製造設備を複数本同時加工できるように改良したものである。第6の実施態様よりも量産速度が向上して、さらにコスト低減を図ることができる。
【0019】
第8の実施態様による製造工程を図7に示す。ここでは、カプセルの母材となる材料21を矢印方法に押出し(a)、中空状の長手方向の一端が閉口された容器22とする。容器22の開口部より蓄冷熱材23を注入して、その後、開口部をロウ付けあるいは溶接によって閉口し、閉口部24を形成する(c)。
第8の実施態様は、カプセル母材の押出によって、カプセルの端部の1つが押出し段階ですでに閉口されており、蓄冷熱剤注入後の端部閉口箇所が第1〜第7の実施態様に比べて1箇所ですむという利点がある。その結果、溶接箇所の低減によるコスト低減などの効果がある。
【0020】
第9の実施態様は、端部の溶接方法に関するものである。第1〜第7の実施態様では蓄冷熱カプセルの母材が金属である場合に溶接の方法を適用して、カプセル端部の閉口を行う。この時、溶接方法は例えばTIG溶接などの方法でもよい。しかしながら、例えばカプセルの母材にアルミニウムを使用してTIG溶接によってカプセル端部を閉口する製造法においては、以下のような問題を生じることがある。TIG溶接は、母材であるアルミニウムを溶解して溶接する方法であるために、溶接部はアルミニウムの融点以上の温度に上昇し、また溶接による火が発生する。そして、溶接によって母剤が溶かされるために、高温になった蓄冷熱剤であるパラフィンが引火してしまう危険がある。そのため、カプセルの母材の融点以下の融点を有するロウ材あるいはハンダによって、カプセル端部を閉口すれば、引火性のある蓄冷熱剤であるパラフィンへの引火の可能性を低減できる。パラフィン注入後のカプセル端部閉口は、最初に圧着などにより機械的に閉口して、その部分をロウ付けまたはハンダ付けすることで、蓄冷熱カプセルを製造することが出来る。TIG溶接などのカプセルの母材を溶かしてしまう方法であれば、たとえ、機械的に閉口した後にTIG溶接を行っても、母材自体が溶解して内部の蓄冷熱材が出てくる危険がある。そこで、第9の実施態様では、蓄冷熱カプセルの端部の閉口を、カプセル母材の融点よりも低い融点を持つ、ハンダあるいはロウ材を使用して閉口するものである。
【0021】
第10の実施態様について説明する。第9の実施態様でハンダ付けを行う場合、最近の環境問題から鉛が混入されていないハンダが要求される。しかしながら、Pbフリーのハンダはその濡れ性が劣るために、フラックスなどの母材表面の酸化膜を除去して使用する必要がある。そのため、ハンダ付け工程の後には、残留のフラックスを洗浄するための工程も必要となり、製造コストの増加の要因となる。この洗浄工程をなくすために、フラックス以外の方法でカプセル母材の表面酸化膜の除去を行える、超音波ハンダ付けの技術が有効である。この技術は、アルミニウムなどを溶接する技術として従来から用いられているが、これを蓄冷熱カプセルの端部閉口時に用いることによって、フラックスの洗浄工程が省略できる。また、ハンダ付けであるので、カプセルの母材にアルミニウムなどの金属を用いても、母材の融点以下で閉口できるので、ハンダ付け時に母材が溶けて内部からパラフィンが出るという問題もない。そこで、第10の実施態様としては、蓄冷熱カプセルの端部の閉口の際に、母材に超音波を与えてハンダ付けする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施態様の説明図である。
【図2】本発明の第2の実施態様の説明図である。
【図3】本発明の第3の実施態様の説明図である。
【図4】本発明の第5の実施態様の説明図である。
【図5】本発明の第6の実施態様の説明図である。
【図6】本発明の第7の実施態様の説明図である。
【図7】本発明の第8の実施態様の説明図である。
【図8】蓄冷熱カプセル形状の一例の説明図である。
【図9】蓄冷熱器を使用した車両用空調機のシステム例の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 カプセル原管
2 A端部
3 B端部
4 蓄冷熱材
5 キャップ
6 片端部
7 注射器
8 内部金属管
9 キャップ形状の連結体
11 素線
12 ローラ
13 ローラ
14 押出しダイ
15 蓄冷熱材
16 可動式蓄冷熱材注入機
17 回転ローラ押しつぶし機
18a 管状体
18 カプセル原管
19 機械的封入されたカプセル端部
20 溶接されたカプセル端部
21 母材となる材料
22 容器
23 蓄冷熱材
24 閉口部
31 エンジン
32 圧縮機
33 凝縮器
34 電動弁
35 蓄冷器
36 遠心式電動ポンプ
37 三方弁
38 蒸発器
39 外気または内気
40 冷風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の管を切断し、両端部を絞り加工したのち、一端を溶接して口を閉じ、他端の開口部より蓄冷熱剤を注入し、次いでカシメ加工によって端部の閉口を行った後、その端部を溶接することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法。
【請求項2】
筒状の管を切断し、該管と同じ外側形状をもつキャップの内側形状および高さに合わせた分だけ両端を縮径して、一端を該キャップで接合し、次いで蓄冷熱材を注入し、他端を該管と同じ外側形状をもつ別のキャップにて溶接することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法。
【請求項3】
筒状の管を切断し、前記筒状の管の内径よりも小さい外径の管を複数本挿入すると同時に、挿入される管の内側から蓄冷熱材を注入することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法。
【請求項4】
筒状の管を切断し、該管の一端をカシメ加工によって閉口した後、その端部を溶接し、他端をその管と同じ外側形状をもつキャップの内側形状および高さに合わせた分だけ縮径してキャップを接合し、閉口することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法。
【請求項5】
複数本の管からなる蓄冷熱カプセル端部の閉口部分に相当する形状の板材あるいはキャップ形状の連結体に該管の一端をロウ付けあるいは溶接によって閉口し、該管の他端から蓄冷熱材を注入し、次いで蓄冷熱カプセル端部の閉口部分に相当する板材あるいはキャップ形状の連結体に該管の他端をロウ付けあるいは溶接によって閉口することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法。
【請求項6】
管を押出により成形する押出速度と同じ速度で蓄冷熱材を注入しながら管を製造し、管外面から管を押し潰して端部を機械的に閉口して切断し、次いで該閉口部分を溶接することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法。
【請求項7】
管を押出により成形する押出速度と同じ速度で蓄冷熱材を注入しながら管を製造し、管側面を圧縮し閉口させたのち切断し、次いで該閉口部分を溶接することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法。
【請求項8】
カプセルの母材となる材料を押出によって中空状の長手方向の一端が閉口された容器とし、開口部より蓄冷熱材を注入して、その後、該開口部をロウ付けあるいは溶接によって閉口することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄冷器用カプセルの製造方法において、蓄冷熱カプセルの端部の閉口を、カプセル母材の融点よりも低い融点を持つ、ハンダあるいはロウ材を使用して閉口することを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の蓄冷熱カプセルの製造方法において、蓄冷熱カプセルの端部の閉口の際に、母材に超音波を与えてハンダ付けすることを特徴とする蓄冷熱カプセルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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