説明

蓄氷型冷水装置

【課題】 蓄氷時間の短縮とエネルギーロスを低減すること。
【解決手段】 過冷却水を生成する熱交換器1と、氷および冷水を貯留する蓄氷槽2と、前記熱交換器1および前記蓄氷槽2との間に形成される循環路3と、この循環路3の前記熱交換器1の入口側へ補給水を供給する補給水路4とを備える蓄氷型冷水装置において、前記熱交換器1で過冷却する過冷却運転と前記熱交換器1で過冷却しない非過冷却運転との時間的割合を調整する過冷却制御手段を備えたことを特徴とする。また、前記熱交換器1への入口温度または前記熱交換器1への供給流量を変更することにより、過冷却運転と非過冷却運転とを切り替えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調設備や食品冷却装置等に冷水を供給する蓄氷型冷水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄氷型冷水装置としては、蓄氷槽と熱交換器との間に循環路を形成するとともに、前記循環路の熱交換器入口側へ補給水路を接続したものが知られている。この種蓄氷型冷水装置を補給水型または外部給水型と称する。(例えば、特許文献1参照)。また、この蓄氷型冷水装置は、電力料金の安い深夜電力を利用して、蓄氷槽内に蓄熱媒体としての氷を蓄えておき、負荷の要求に応じて蓄氷槽の上方から解氷のための給水を行い、蓄氷槽下部より冷水を取り出して使用される。
【0003】
この種外部給水型の装置においては、つぎのような課題がある。一般に、過冷却状態を連続させて行うと熱交換器内で過冷却状態が破壊され、熱交換器が凍結することがしばしばある。そこで、従来では、かかる熱交換器1の凍結が発生した場合、例えば、冷凍機の運転を停止するとともに、外部給水路から常温水を所定時間供給する等の凍結解除運転が行われる。その結果、従来装置では冷凍機の運転停止や、凍結解除運転を行うために、畜氷時間が長くなったり、エネルギーのロスを生ずる。
【0004】
【特許文献1】特開平9−152149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、蓄氷時間の短縮とエネルギーロスを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、過冷却水を生成する熱交換器と、氷および冷水を貯留する蓄氷槽と、前記熱交換器および前記蓄氷槽との間の循環路と、前記熱交換器の入口側への補給水路とを備える蓄氷型冷水装置において、前記熱交換器で過冷却する過冷却運転と前記熱交換器で過冷却しない非過冷却運転との時間的割合を調整することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記熱交換器への入口温度または前記熱交換器への供給流量を変更させるか、前記熱交換器の冷却用の冷凍機の能力を変化させることにより、過冷却運転と非過冷却運転とを切り替えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、過冷却運転と非過冷却運転との時間的割合を変化させることにより、簡易に前記熱交換器の凍結防止を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、補給水型(外部給水型)の蓄氷型冷水装置において実施される。
【0010】
まず、この実施の形態の概要を説明する。この実施の形態の蓄氷型冷水装置は、過冷却水を生成する熱交換器と、氷および冷水を貯留する蓄氷槽と、前記熱交換器および前記蓄
氷槽との間に形成される循環路と、この循環路の前記熱交換器の入口側へ補給水を供給する補給水路とを備える蓄氷型冷水装置において、前記熱交換器で過冷却する過冷却運転と前記熱交換器で過冷却しない非過冷却運転との時間的割合を調整する過冷却制御手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
この実施の形態においては、前記蓄氷槽内の水は、前記循環路を循環する間に、前記熱交換器にて過冷却される。この過冷却水は、その一部が過冷却を解除されて氷となり、前記蓄氷槽内に蓄えられる。そして、前記熱交換器の入口側へ補給水路を通して補給水が供給され、前記蓄氷槽からの冷水と補給水とが混合され、この混合水温度が所定温度となるように補給水の混合割合が制御される。そして、前記過冷却制御手段により、非過冷却運転の時間が設けられるので、前記熱交換器の凍結が防止される。ここで、凍結防止とは、凍結を完全に防止するだけでなく、凍結回数を低減することを含んでいる。
【0012】
つぎに、この実施の形態の構成要素について説明する。前記熱交換器は、前記循環路を循環する水を過冷却する機能を有するもので、好ましくは、循環水を冷凍機などの冷却手段の冷媒により間接的に熱交換して冷却するものとする。この熱交換器は、二重管型構造のものなどが採用される。
【0013】
前記蓄氷槽は、冷水と氷とを蓄えるものである。前記熱交換器との間に前記循環路が形成され、前記蓄氷槽内の水を循環路にて循環させ、前記熱交換器にて過冷却することにより、冷水と氷とを貯留する。この循環路には、循環ポンプを備える。
【0014】
前記補給水路は、前記熱交換器の入口側において、補給水が供給され、前記蓄氷槽からの冷水と混合される。この補給水の量は、前記熱交換器の入口側の入口温度が、設定値となるように調整される。
【0015】
また、前記過冷却制御手段は、前記熱交換器の凍結が生じないように、過冷却運転と非過冷却運転との時間的割合を調整する。この時間的割合は、予め実験により設定される。
【0016】
この前記過冷却運転と前記非過冷却運転との切り替えは、好ましくは、前記熱交換器に流入する混合水の温度(入口温度)を調整することにより行うが、前記熱交換器への供給流量(給水流量),すなわち混合水量を調整することによっても実現できる。単位時間当たりの前記熱交換器の冷却能力が一定の場合、前者の場合、混合水温度を低くすると、過冷却運転とし、逆に高くすると、非過冷却運転とすることができる。また、後者の場合、混合水量を多くすると非過冷却運転とし、少なくすると過冷却運転とすることができる。さらに、非過冷却運転と過冷却運転との切替は、前記熱交換器冷却用の冷凍機の能力を変化させることによっても可能である。
【実施例1】
【0017】
以下、この発明の蓄氷型冷水装置の具体的実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、同実施例1の概略構成図である。
【0018】
図1において、この実施例1の概要を説明する。図1に示す補給水型蓄氷型冷水装置は、過冷却水を生成する熱交換器1と、氷および冷水を貯留する蓄氷槽2と、前記熱交換器1および前記蓄氷槽2の間に形成される循環路3と、この循環路3の前記熱交換器1の入口側へ補給水を供給する補給水路4と、この発明の特徴とする過冷却制御手段を主要部として備えている。この過冷却制御手段は、前記熱交換器1で過冷却する過冷却運転と前記熱交換器で過冷却しない非過冷却運転との時間的割合を調整することにより、前記熱交換器1の凍結を防止する機能を有する。
【0019】
つぎに、この実施例の各構成要素について説明する。前記熱交換器1は、前記循環路3を循環する水を冷媒により過冷却することが可能な二重管型構造の間接型熱交換器である。この熱交換器1の冷媒側は、冷凍機6の一部の蒸発器を構成している。この冷凍機6は、圧縮機7,凝縮器8,減圧器9および蒸発器としての前記熱交換器1を含み、これらを冷媒回路(符号省略)にて接続している。
【0020】
前記蓄氷槽2は、冷水と氷とを蓄える槽であり、前記熱交換器1と前記循環路3により接続される。また、この蓄氷槽2には、低水位を検出する第一水位検出器11および満水を検出する第二水位検出器12を備えている。そして、この循環路3の一端13は、前記蓄氷槽2の前記第一水位検出器11の検出端よりも下方に開口し、他端14は、この蓄氷槽2内上端部に開口している。そして、前記循環路3には、循環ポンプ15を備え、前記蓄氷槽2−前記循環ポンプ15−前記熱交換器1−前記蓄氷槽2なる冷水循環路を形成する。
【0021】
前記補給水路4は、開度が調節可能な第一弁16を備え、一端が水道などの給水源(図示省略)に接続され、他端が前記循環路3の前記蓄氷槽2および前記循環ポンプ15間に接続されている。これにより、前記熱交換器1の入口側において、補給水が供給され、前記蓄氷槽からの冷水と混合されるように構成されている。
【0022】
また、前記蓄氷槽2には、第二弁17を有する解氷水路18が接続されている。この解氷水路18は、その一端が記補給水路4の前記第一弁16の上流側から分岐され、他端がシャワー状に水を散水する散水口19として構成されている。この散水口19は、前記第二水位検出器12の検出端よりも上方に開口している。
【0023】
また、この蓄氷槽2には、解氷により生成された冷水を取り出して、冷水使用設備(図示省略)へ供給するための冷水供給路21を備えている。この冷水供給路21は、給水ポンプ22を有し、その一端が前記蓄氷槽2内底部に開口している。
【0024】
ここで、前記過冷却制御手段について説明する。この過冷却制御手段は、凍結防止機能と氷充てん率制御機能とを有する。この凍結防止機能は、前記過冷却運転と前記非過冷却運転との時間的割合を調整することにより、前記熱交換器1の凍結の防止を行う機能である。また、氷充てん率制御機能は、補給水温度に応じて前記熱交換器1に流入する混合水(給水)温度を調整することにより、過冷却運転と非過冷却運転との時間的割合を調整し、氷充てん率を制御する機能である。
【0025】
そして、前記過冷却制御手段は、前記補給水路4の補給水温度を検出する第一温度検出器23と、前記熱交換器1への入口温度を検出する第二温度検出器24と、これら温度検出器23,24から信号を入力して、前記第一弁16の開度を制御する制御器25を含む。
【0026】
この制御器25は、予め記憶している処理手順に従い、補給水温度に応じて前記熱交換器1に流入する混合水温度を制御して、過冷却運転と非過冷却運転との切り替えを行うとともに時間的割合を調整して、凍結防止制御と氷充てん率制御を行う。この制御器25は、蓄氷運転全体の制御や冷水取り出しの制御も行う。
【0027】
この実施例においては、前記熱交換器1の冷却温度(入口と出口との温度差)をたとえば、1.5℃とした場合、混合水温度を第一設定温度T1である0.5℃として前記熱交換器1の出口温度を零度以下の−1.0℃とすることで、過冷却運転を行い、混合水温度を第二設定温度T2である2.0℃として前記熱交換器1の出口温度を零度を越える0.5℃とすることで、非過冷却運転を行うように構成している。ここで説明した数値は、一
例であり、種々変更可能である。
【0028】
そして、凍結防止制御は、第一設定時間t1(たとえば、1時間)毎に第二設定時間t2(たとえば、10分)だけ前記非過冷却運転を行い、所定時間以上過冷却運転が続かないように構成される。
【0029】
また、氷充てん率を最適とする時間的割合の制御は、つぎのようにして行う。補給水温度が低ければ氷充てん率が低くなるので、過冷却運転時間(蓄氷時間)を長くし、補給水温度が高ければ氷充てん率が高くなるので、過冷却運転時間を短く、非過冷却運転時間(冷水製造時間)を長くする。すなわち、過冷却運転時間と非過冷却運転時間の割合を補給水温度に応じて調整することにより、補給水温度の変化にかかわらず氷充てん率を設定値に制御する。この過冷却運転時間と非過冷却運転時間の割合制御は、補給水温度の変化に対して段階的に割合を変化させるか、連続的に変化させて行う。段階的に制御する場合は、補給水温度をたとえば3段階に分けて、各段階毎に前記割合を異ならせる。
【0030】
以上の構成の実施例の作用を説明する。まず、深夜電力を利用して行われる蓄氷運転について説明する。蓄氷槽2内に前記第一水位検出器11の検出端まで水を入れた後、冷凍機6を起動するとともに、循環ポンプ15を起動して蓄氷槽2内の水を循環路3を介して前記熱交換器1へ供給する。そして、熱交換により生成された過冷却水は、蓄氷槽2に還流し、さらに分散板(図示省略)に衝突することにより過冷却状態が解除されてスラリー状の氷を生成する。
【0031】
前記熱交換器1へ流入する冷水の温度が低下してくると、この温度低下を第二温度検出器24にて検知し、第一弁16の開度を調節し、前記補給水路4を通して常温の補給水を供給して、冷水と混合することにより所定温度の混合水とする。
【0032】
この蓄氷運転において、凍結防止運転は、つぎのようにして行われる。前記熱交換器1による過冷却運転が第一設定時間t1だけ行われると、非過冷却運転へ切り替え、これを第二設定時間だけ継続し、過冷却運転に切り替える。こうして、所定時間毎に非過冷却運転を加えることにより、前記熱交換器1の凍結回数を減らし、デフロスト(凍結解除)によるエネルギーロスを低減できる。また、凍結解除回数の低減により、蓄氷時間の短縮を実現できる。
【0033】
また、氷充てん率制御運転は、つぎのようにして行われる。前記第一温度検出器23により補給水温度が検出されている。補給水温度が低下すると、混合水温度が前記第一設定温度T1となるように前記第一弁16の開度を調整して過冷却運転を行うとともに、過冷却運転の時間的割合を大きくして、氷充てん率が高くなるように制御する。逆に、補給水温度が上昇すると、混合水温度が前記第二設定温度T2となるように前記第一弁16の開度を調整して非過冷却運転を行うとともに、過冷却運転の時間的割合を小さくして、氷充てん率が小さくなるように制御する。こうした過冷却運転と非過冷却運転との運転時間割合を補給水温度に応じて調整することにより、氷充てん率を所望の設定値に制御する。この蓄氷運転は、前記第一水位検出器12の検出端による満水検出まで行われる。
【0034】
つぎに、冷水取り出し運転につき説明する。冷水供給の要求があると、前記給水ポンプ22が駆動されるとともに、前記第二弁17が開かれる。これにより、常温水が解氷水路18を通して前記散水口19から前記蓄氷槽2内へ供給され、解氷を行いながら、冷水を冷水供給路21から取り出す。この解氷運転において、氷充てん率が適正な値に制御されているので、従来の課題を解消できる。すなわち、氷充てん率を制御しない従来装置においては、氷充てん率が大きいと、短時間の大きい冷水負荷に対して蓄氷槽からの冷水供給が追いつかないという課題があり、氷充てん率が小さいと、冷水負荷の総量が大きい場合
にこれに答えることができないという課題があるが、この実施例によれば、こうした課題を解消または改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 熱交換器
2 蓄氷槽
3 循環路
4 補給水路
25 制御器(過冷却制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過冷却水を生成する熱交換器1と、氷および冷水を貯留する蓄氷槽2と、前記熱交換器1および前記蓄氷槽2との間の循環路3と、前記熱交換器1の入口側への補給水路4とを備える蓄氷型冷水装置において、前記熱交換器1で過冷却する過冷却運転と前記熱交換器1で過冷却しない非過冷却運転との時間的割合を調整する過冷却制御手段を備えたことを特徴とする蓄氷型冷水装置。
【請求項2】
前記熱交換器1への入口温度または前記熱交換器1への供給流量を変更させるか、前記熱交換器冷却用の冷凍機の能力を変化させることにより、過冷却運転と非過冷却運転とを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の蓄氷型冷水装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−29661(P2006−29661A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207969(P2004−207969)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)