説明

蓄熱式カーエアコン

【課題】
アイドリングストップ機能などを備えた車両において、アイドリングストップ中に内燃機関、及びその他の方法によりカーエアコン用コンプレッサを起動する事無く、冷暖房を可能にする事を目的とする。
【解決手段】
冷媒を圧縮するコンプレッサと、冷媒の熱を外部に放出するコンデンサと、冷媒を断熱膨張させる膨張弁と、冷媒の冷熱を車室内に送られる空気に放出するエバポレータとを備える自動車用冷房装置において、熱を蓄えるための蓄熱器を設置し、前記膨張弁とは別に冷媒を蓄熱器に導くための膨張弁を設置し熱を蓄える。また、蓄熱器の蓄熱時に、蓄熱器の蓄熱材状態に応じて冷媒の流れを制御する手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイドリングストップ機能などを備えた車両において、アイドリングストップ中に内燃機関、及びその他の方法によりカーエアコン用コンプレッサを起動する事無く、冷暖房を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
北米,欧州,日本において強化されてきている燃費,排気規制に対応するために、現在、ハイブリット車などの技術が開発されており、アイドリングストップ中の、カーエアコンの使い方としては、モータを利用してコンプレッサを起動する方法と、コンプレッサは起動せず、ブロワファンのみを起動する技術がある(特許文献1など)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−211036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アイドリングストップ中に、冷暖房を行う際、条件によりカーエアコン用コンプレッサを起動する場合があるが、コンプレッサを起動するには内燃機関、又はモータ等、動力源が必要となる。そのため、冷暖房をともなうアイドリングストップ時には、バッテリ等の蓄電量が急激に低下し、内燃機関を起動しなければならなくなり、アイドリングストップの時間が短くなってしまい、その分、燃費,排気が悪化してしまう。また、ブロワファンのみを起動した場合は、湿度が高い風が送られるため運転者が不快感を感じてしまうと言う問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その問題を解決するため、冷媒を圧縮するコンプレッサと、冷媒の熱を外部に放出するコンデンサと、冷媒を断熱膨張させる膨張弁と、冷媒の冷熱を車室内に送られる空気に放出するエバポレータとを備える自動車用冷房装置において、熱を蓄えるための蓄熱器を設置し、前記膨張弁とは別に冷媒を蓄熱器に導くための膨張弁を設置し熱を蓄える。また、蓄熱器の蓄熱時に、蓄熱器の蓄熱材状態に応じて冷媒の流れを制御する手段を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アイドリングストップ中に内燃機関やモータなどの動力源を起動させること無く好適な冷暖房を実現することができ、燃費や排気の悪化の防止と運転者が不快感の解消を実現できる。
【0007】
請求項1の発明においては、冷媒を圧縮するコンプレッサと、冷媒の熱を外部に放出するコンデンサと、冷媒を断熱膨張させる第1の膨張弁と、冷媒の冷熱で車室内に送風される空気に冷却するエバポレータと、熱を蓄えるための蓄熱器と、前記第1の膨張弁とは別に冷媒を蓄熱器に導くための第2の膨張弁とを備えた自動車用空調装置において、蓄熱器の蓄熱時に、蓄熱材状態に応じて第2の膨張弁を制御することを特徴とし、他の動力源のアシストを必要とすることなくエアコンを使用することが可能となる。
【0008】
請求項2の発明においては、外気温度、及び車室内の温度の少なくともいずれかに基づいて前記第2の膨張弁を制御することを特徴とし、冷房と暖房を切り替えて使用することが可能となる。
【0009】
請求項3の発明においては、外気温度、及び車室内温度設定の少なくともいずれかが、予め定める第1の所定温度以上の時に、前記第2の膨張弁を絞ることを特徴とし、冷房が必要な場合に好適に冷房として使用することが可能となる。
【0010】
請求項4の発明においては、外気温度、及び車室内温度設定の少なくともいずれかが、予め定める第1の所定温度未満の時に、前記第2の膨張弁を開放することを特徴とし暖房が必要な場合に好適に暖房として使用することが可能となる。
【0011】
請求項5の発明においては、前記蓄熱材の温度が予め定める第2または第3の所定温度以上で、且つ内燃機関の水温または油温の少なくともいずれかが予め定める第3の所定温度以下の場合、前記第2の膨張弁を開放することを特徴とし、内燃機関が冷機状態にあっても暖房を使用、またはデフロストの効果を高めることができる。
【0012】
請求項6の発明においては、自動車の走行中は前記第2の膨張弁を開放し、前記蓄熱材が予め定める第4の所定の温度に到達したら前記第2の膨張弁を閉じることを特徴とし、蓄熱材に必要な熱量は走行中に蓄積することで、アイドルストップ中は他の動力源を必要とすること無く温度調節が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明における蓄熱式エアコンの構成図であり、コンプレッサ101とコンデンサ102と膨張弁103とエバポレータ104と蓄熱器105と蓄熱器に冷媒を導くための膨張弁106と蓄熱器105からエバポレータ104へ冷媒を輸送するためのポンプ107とで構成されており、さらに蓄熱器の蓄熱時に、蓄熱器の蓄熱材状態に応じて冷媒の流れを制御装置108とで構成される
【実施例1】
【0015】
図2から図7を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図2は本発明の実施形態におけるフローチャートを示す。S201では、車両がアイドルストップ状態であるか否かを判定する。判定方法の一例として、イグニッショ信号ONで且つ車速が0km/hの時にアイドルストップ状態と判定する方法がある。アイドルストップ状態でない場合は本制御を終了する。アイドルストップ状態の場合はS202へ進む。S202では目標車内温度と目標蓄熱材温度を決定する。本実施形態では目標車内温度はエアコンの設定温度としたが、任意の方法で決定しても良い。目標蓄熱材温度は目標車内温度と車室内温度に基づいて決定する。これに関しては図3で詳細を説明する。S203は車室内温度を監視するステップである。S204では車室内温度と目標車室内温度が一致するかを判定する。一致しない場合はS203へ戻る。一致する場合はS205へ進む。S205では蓄熱材温度が目標蓄熱材温度と一致するかを判定する。一致しない場合はS208へ進み通常のエアコン起動とする。一致する場合はS206へ進む。S206ではエバポレータへの蓄熱材の循環を開始する。S207では目標車室内温度と蓄熱材温度を比較し、蓄熱材温度が目標車室内温度未満の場合はS206へ戻り、蓄熱材の循環を継続する。また、目標車室内温度以上となった場合はS208へ進み通常のエアコン起動に切り替え処理を終了する。なお、本フローチャートは一例として冷房としてエアコンを起動させる例である。暖房として起動させる場合は、S207のステップで、蓄熱材温度が目標車室内温度以下となるか否かを判定し、以下となったらS208へ進み、蓄熱材が目標車室内温度よりも温度が高い場合はS206へ戻り蓄熱材の循環を継続する。
【0017】
図3は、目標蓄熱材温度の決定方法の一例である。S301では外気温度がエアコン設定温度以下か否かを判定する。外気温度がエアコン設定値より大きい場合は、S302へ進み冷房側設定としS304で冷房側の目標蓄熱材温度を決定する。一方、S301で外気温度がエアコン設定温度以下であると判定された場合は、S303へ進み暖房側設定とし、S304で暖房側の目標蓄熱材温度を決定する。本実施の形態では、冷房側の目標蓄熱材温度は−10℃とし、暖房側の目標蓄熱材温度は80℃とした。これらの温度はこの値に限らず、任意で設定して良い。
【0018】
図4に本発明を実施した場合のタイムチャートの一例を示す。図4は冷房として使用する場合のタイムチャートである。車速が0よりも大きい間はエアコンが冷房として起動している状態とする。この状態で、車速が0となりアイドルストップ状態になると、目標蓄熱材温度と蓄熱材温度に基づき、蓄熱材温度が目標値よりも小さい場合はエアコンを停止し、蓄熱材がエバポレータに循環して冷房として機能する。これにより、蓄熱材の温度は徐々に上昇し、車室内温度と一致すると冷房として機能することが不可能になるため、通常のエアコン使用に切り替える。
【0019】
一方、図5には暖房として使用する場合のタイムチャートを示す。車速が0よりも大きい間はエアコンが暖房として起動している状態とする。この状態で、車速が0となりアイドルストップ状態になると、目標蓄熱材温度と蓄熱材温度に基づき、蓄熱材温度が目標値よりも大きい場合はエアコンを停止し、蓄熱材がエバポレータに循環して暖房として機能する。これにより、蓄熱材の温度は徐々に低下し、車室内温度と一致すると暖房として機能することが不可能になるため、通常のエアコン使用に切り替える。
【0020】
以上のように、アイドルストップ時の冷暖房として使用するため、走行中に蓄熱材の温度を調整することでアイドルストップ時はエアコンを起動することなく、車室内の温度を調整することができ、燃費や排気悪化を防止することが可能となる。
【0021】
そこで、図6には走行中に蓄熱材に蓄熱する方法について説明する。S601では、車速が0より大きく、且つエアコンが起動中か否かを判定する。車両が停止している、またはエアコンが起動していない場合は蓄熱材への蓄熱は行わない。条件が成立している場合はS602へ進み、外気温度がエアコンの設定温度と以下か否かを判定する。S602からS605の処理は図3と同じである。なお、この他の目標蓄熱材温度を決定する方法として、エアコン起動中の設定温度からエアコンを冷房として使用しているか暖房と使用しているかを判定し、目標蓄熱材温度を決定しても良い。S606では蓄熱材への蓄熱を開始する。蓄熱方法は膨張弁の開き具合を制御することによって行う。この方法は既に公知技術でありここでの説明は割愛する。S607は目標蓄熱材温度と蓄熱材温度が等しいか否かを判定する。等しくない場合はS606へ戻り蓄熱材への蓄熱を継続する。温度が等しい場合は、S608へ進み蓄熱材の蓄熱を中止する。
【0022】
図7は本実施形態による蓄熱時のタイムチャートの一例である。車両が走行中はエアコンが冷房として起動している場合について説明する。従って暖房の場合は、図7と目標蓄熱材温度の変化が逆の傾向になる。車両が走行中にエアコン信号がONとなっている。この間にエアコンに使用している冷媒の一部を蓄熱材へ供給し、蓄熱材の温度は低下する。そして蓄熱材温度が目標蓄熱材温度に到達した時、蓄熱材の蓄熱を終了する。その後、車両が停止しアイドルストップ状態になった場合は、エアコンをOFFにし、蓄熱材の熱によって車室内を冷却する。そのため、アイドルストップ後は蓄熱材の温度が徐々に上昇する。
【0023】
これ以降の経過は図4と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態をなす制御装置の制御ブロック図を示す。
【図2】図1の蓄熱式エアコン制御のフローチャートを示す。
【図3】図1の目標蓄熱材温度の決定方法のフローチャートを示す。
【図4】図2のフローチャートを実施した場合のタイムチャートの一例。
【図5】図2のフローチャートを実施した場合のタイムチャートの一例。
【図6】図1の蓄熱式エアコン制御において、蓄熱材への蓄熱方法のタイムチャートを示す。
【図7】図6を実施した場合のタイムチャートの一例。
【符号の説明】
【0025】
101 コンプレッサ
102 コンデンサ
103 膨張弁(従来空調機用)
104 エバポレータ
105 蓄熱器
106 膨張弁(蓄熱器用)
107 蓄熱材循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するコンプレッサと、冷媒の熱を外部に放出するコンデンサと、冷媒を断熱膨張させる第1の膨張弁と、冷媒の冷熱で車室内に送風される空気に冷却するエバポレータと、熱を蓄えるための蓄熱器と、前記第1の膨張弁とは別に冷媒を蓄熱器に導くための第2の膨張弁とを備えた自動車用空調装置において、蓄熱器の蓄熱時に、蓄熱材状態に応じて第2の膨張弁を制御することを特徴とする蓄熱式エアコンの制御装置。
【請求項2】
請求項1において、外気温度、及び車室内の温度の少なくともいずれかに基づいて前記第2の膨張弁を制御することを特徴とする蓄熱式エアコンの制御装置。
【請求項3】
請求項1および2において、外気温度、及び車室内温度の少なくともいずれかが、予め定める第1の所定温度以上の時に、前記第2の膨張弁を絞ることを特徴とする蓄熱式エアコンの制御装置。
【請求項4】
第1の所定温度は、空調器温度とすることを特徴とする蓄熱式エアコンの制御装置。
【請求項5】
請求項1および2において、外気温度、及び車室内温度の少なくともいずれかが、予め定める第1の所定温度未満の時に、前記第2の膨張弁を開放することを特徴とする蓄熱式エアコンの制御装置。
【請求項6】
請求項1から4において、前記蓄熱材の温度が予め定める第2の所定温度以上で、且つ内燃機関の水温または油温の少なくともいずれかが予め定める第3の所定温度以下の場合、前記第2の膨張弁を開放することを特徴とする蓄熱式エアコンの制御装置。
【請求項7】
第3の所定温度とは、内燃機関が始動する際に内燃機関が冷機状態である判定する温度とすることを特徴とする蓄熱式エアコンの制御装置。
【請求項8】
請求項1から5において、自動車の走行中は前記第2の膨張弁を開放し、前記蓄熱材が予め定める第4の所定の温度に到達したら前記第2の膨張弁を閉じることを特徴とする蓄熱式エアコンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−166646(P2009−166646A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6361(P2008−6361)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】