説明

蓄熱材容器および熱交換器

【課題】内部に封入された蓄熱材の洩れを確実に防止しうる蓄熱材容器およびこれを用いた熱交換器を提供する。
【解決手段】2枚のアルミニウム板19の周縁部どうしをろう付することにより形成され、かつ蓄冷材封入部16a内に冷熱を蓄える蓄冷材が封入された蓄冷材容器16は、両アルミニウム板19の周縁部に形成されかつ蓄冷材を蓄冷材封入部16a内に注入するのに用いられた蓄熱材注入口を閉じることにより設けられた封止部25を備えている。封止部25は、蓄熱材注入口を圧潰することによって両アルミニウム板19に外方に突出するように設けられるとともに、互いに密着させられた2つの外方突出片26を備えている。両外方突出片26どうしを嫌気性接着剤により接着する。嫌気性接着剤により接着された両外方突出片26を、アルミニウム板19の厚み方向に断面V字状に曲げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は蓄熱材容器および熱交換器に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
たとえば、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0004】
しかしながら、通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒(冷熱を輸送する媒体)が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、エバポレータに蓄冷機能を付与し、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、エバポレータに蓄えられた冷熱を放冷して車室内を冷却することが考えられている。
【0006】
この種の蓄冷機能付きエバポレータとして、上下方向にのびるとともに幅方向が通風方向を向いた複数の扁平状冷媒流通管(熱交換管)が、互いに間隔をおいて並列状に配置されており、隣り合う冷媒流通管どうしの間に通風間隙が形成され、全通風間隙のうち一部の通風間隙に蓄冷材が封入された蓄冷材容器が配置されるとともに、残りの通風間隙にアウターフィンが配置され、蓄冷材容器が、2枚の金属板の周縁部どうしを接合することにより形成されるとともに、2枚の金属板間に設けられた蓄冷材封入部内に蓄冷材が封入されている蓄冷機能付きエバポレータが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1記載には明示されていないが、蓄冷材容器内に蓄冷材を封入するには、蓄冷材容器に蓄冷材注入口を形成しておき、蓄冷材を蓄冷材注入口を通して蓄冷材封入部内に入れた後に蓄冷材注入口が閉じる必要がある。
【0008】
ところで、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいて、蓄冷材容器に蓄冷材注入口を簡単に形成するには、各金属板の周縁部にそれぞれ外方突出状半円筒部を設けるとともに、半円筒状部の両側縁部に外向きフランジを設けておき、外向きフランジどうしを接合して円筒状蓄冷材注入口を形成することが簡単であると考えられる。また、このような蓄冷材注入口は、蓄冷材の封入後にその内部に円柱状の栓を圧入することによって閉鎖するのが簡単であると考えられる。
【0009】
通常、上述した蓄熱材容器を構成する2枚の金属板は、最終形状に対応する形状を有する2つの金型を用いて金属素板にプレス加工を施すことにより製造されるが、この場合、半円筒状部の内周面と、半円筒状部の両側縁に形成される外方突出部との連接部に丸みが生じることは避け得ない。したがって、両金属板を合わせた際に、両金属板の半円筒状部からなる円筒状蓄熱材注入口の内周面に凹みが発生し、その結果蓄熱材注入口内に円柱状の栓を圧入するだけでは、蓄熱材が洩れが発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−12947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、上記問題を解決し、内部に封入された蓄熱材の洩れを確実に防止しうる蓄熱材容器およびこれを用いた熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0013】
1)2枚の金属板の周縁部どうしを接合することにより形成されるとともに、2枚の金属板間に設けられた蓄熱材封入部内に蓄熱材が封入されており、2枚の金属板の周縁部に形成されかつ蓄熱材を蓄熱材封入部内に注入するのに用いられた外方突出筒状の蓄熱材注入口を閉じることにより設けられた封止部を備えている蓄熱材容器であって、
封止部が、両金属板にそれぞれ外方に突出するように設けられるとともに、互いに密着させられた2つの外方突出片を備えており、両外方突出片が蓄熱材注入口を圧潰することにより形成され、両外方突出片どうしが嫌気性接着剤により接着されている蓄熱材容器。
【0014】
2)嫌気性接着剤により接着された両外方突出片が、金属板の厚み方向に断面V字状に曲げられている上記1)記載の蓄熱材容器。
【0015】
3)嫌気性接着剤により接着された両金属板の外方突出片が、外方突出片における金属板の周縁部からの突出方向に間隔をおいて複数箇所で曲げられており、隣り合う屈曲部の曲げ方向が異なっている上記2)記載の蓄熱材容器。
【0016】
4)嫌気性接着剤が紫外線硬化型であり、一部分が両外方突出片どうしの合わせ目から外部にあふれ出した状態で硬化している上記1)〜3)記載の蓄熱材容器。
【0017】
5)上下方向にのびかつ冷熱を輸送する媒体が流れる複数の熱交換管と、内部に冷熱を蓄える蓄冷材が封入された複数の蓄冷材容器とを備えており、熱交換管内を流れる媒体が気化させられるようになされ、蓄冷材容器が上記1)〜4)のうちにいずれかに記載の蓄熱材容器からなり、蓄冷材容器内の蓄冷材が、熱交換管内を流れる媒体の有する冷熱により冷却されるようになされており、蓄冷機能付きエバポレータとして用いられる熱交換器。
【0018】
6)熱交換管が幅方向を通風方向に向けた扁平状であり、複数の熱交換管が互いに間隔をおいて並列状に配置されるとともに、隣り合う熱交換管どうしの間に通風間隙が形成され、蓄冷材容器が、上下方向にのびるとともに幅方向を通風方向に向けた扁平状であり、全通風間隙のうち一部の通風間隙に蓄冷材容器が配置されている上記5)記載の熱交換器。
【0019】
7)蓄冷材容器の風下側部分が、熱交換管よりも風下側に位置しており、蓄冷材容器における熱交換管よりも風下側に位置する部分に封止部が形成されている上記6)記載の熱交換器。
【0020】
8)温熱を輸送する媒体が流れる複数の熱交換管と、上下方向にのびるとともに内部に、温熱を蓄える蓄熱材が封入された複数の蓄熱材容器とを備えており、蓄熱材容器が上記1)〜4)のうちにいずれかに記載の蓄熱材容器からなり、蓄熱材容器内の蓄熱材に熱交換管内を流れる媒体の温熱が伝わるようになされている熱交換器。
【発明の効果】
【0021】
上記1)〜4)の蓄熱材容器によれば、封止部が、両金属板にそれぞれ外方に突出するように設けられるとともに、互いに密着させられた2つの外方突出片を備えており、両外方突出片が蓄熱材注入口を圧潰することにより形成され、両外方突出片どうしが嫌気性接着剤により接着されているので、円筒状の蓄熱材注入口内に円柱状の栓を圧入するだけの場合に比べて、内部に封入された蓄熱材の洩れを確実に防止することができる。
【0022】
上記2)および3)の蓄熱材容器によれば、嫌気性接着剤により接着された両外方突出片が、金属板の厚み方向に断面V字状に曲げられているので、両外方突出片を曲げることにより生じるスプリングバックが、屈曲部の曲げの頂点である前記V字部分の稜線と直角をなす方向に作用する。したがって、屈曲部における曲げ内側の外方突出片が、曲げ外側の外方突出片に押し付けられることになり、両金属板の外方突出片間に隙間が生じることを確実に防止することが可能になって、内部に封入された蓄熱材の洩れを一層確実に防止することができる。
【0023】
上記3)の蓄熱材容器によれば、両金属板の外方突出片間に隙間が生じることを、一層確実に防止することが可能になって、内部に封入された蓄熱材の洩れを一層確実に防止することができる。
【0024】
上記4)の蓄熱材容器によれば、両外方突出片どうしの合わせ目から外部にあふれ出した状態で硬化した接着剤が、合わせ目の外端を覆っていることを外部から視認することができ、内部に封入された蓄熱材の洩れを一層確実に防止することができる。
【0025】
上記5)〜7)の熱交換器によれば、蓄冷材容器の内部に封入されかつ冷熱を蓄える蓄冷材の洩れを確実に防止することができる。
【0026】
上記8)の熱交換器によれば、蓄熱材容器の内部に封入されかつ温熱を蓄える蓄熱材の洩れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の蓄熱材容器が蓄冷材容器として用いられている蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図1の蓄冷機能付きエバポレータに用いられている蓄冷材容器の一部を示す拡大斜視図である。
【図4】図1の蓄冷機能付きエバポレータに用いられる蓄冷材容器の封止部を形成する方法を示し、蓄冷材注入口の内周面に嫌気性接着剤を塗布した状態の斜視図である。
【図5】図1の蓄冷機能付きエバポレータに用いられる蓄冷材容器の封止部を形成する方法を示し、図4の嫌気性接着剤が塗布された蓄冷材注入口を圧潰する方法を示す垂直拡大断面図である。
【図6】図1の蓄冷機能付きエバポレータに用いられる蓄冷材容器の封止部を形成する方法の変形例を示す垂直拡大断面図である。
【図7】図1の蓄冷機能付きエバポレータに用いられる蓄冷材容器の封止部を形成する方法の他の変形例を示す垂直拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この発明の蓄熱材容器を、蓄冷機能付きエバポレータにおける冷熱を蓄える蓄冷材が封入される蓄冷材容器に適用したものである。
【0029】
全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0030】
以下の説明において、通風方向下流側(図1および図2に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとし、図1の左右を左右というものとする。
【0031】
さらに、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0032】
図1はこの発明による蓄熱材容器が蓄冷材容器として用いられている蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図2および図3はその要部の構成を示す。また、図4および図5は蓄冷機能付きエバポレータに用いられる蓄冷材容器の封止部を形成する方法を示す。
【0033】
図1において、蓄冷機能付きエバポレータ(1)(熱交換器)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0034】
第1ヘッダタンク(2)は、前側(通風方向下流側)に位置する風下側上ヘッダ部(5)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ風下側上ヘッダ部(5)に一体化された風上側上ヘッダ部(6)とを備えている。風下側上ヘッダ部(5)の右端部に冷媒入口(7)が設けられ、風上側上ヘッダ部(6)の右端部に冷媒出口(8)が設けられている。第2ヘッダタンク(3)は、前側に位置する風下側下ヘッダ部(9)と、後側に位置しかつ風下側下ヘッダ部(9)に一体化された風上側下ヘッダ部(11)とを備えている。第2ヘッダタンク(3)の風下側下ヘッダ部(9)内と風上側下ヘッダ部(11)内とは、両中間ヘッダ部(9)(11)の右端部に跨って接合され、かつ内部が通路となった連通部材(12)を介して通じさせられている。
【0035】
図1および図2に示すように、熱交換コア部(4)には、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向(前後方向)を向いた複数のアルミニウム押出形材製扁平状熱交換管(13)が、左右方向に間隔をおいて並列状に配置されている。ここでは、前後方向に間隔をおいて配置された2つの熱交換管(13)からなる複数の組(14)が左右方向に間隔をおいて配置されており、前後の熱交換管(13)よりなる組(14)の隣り合うものどうしの間に通風間隙(15)が形成されている。前側の熱交換管(13)の上端部は風下側上ヘッダ部(5)に接続されるとともに、同下端部は風下側下ヘッダ部(9)に接続されている。また、後側の熱交換管(13)の上端部は風上側上ヘッダ部(6)に接続されるとともに、同下端部は風上側下ヘッダ部(11)に接続されている。
【0036】
熱交換コア部(4)における全通風間隙(15)のうち一部の複数の通風間隙(15)でかつ隣接していない通風間隙(15)において、冷熱を蓄える蓄冷材(図示略)が封入されたアルミニウム製蓄冷材容器(16)(蓄熱材容器)が、前後両熱交換管(13)に跨るように配置されている。また、残りの通風間隙(15)に、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、かつ前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状のアウターフィン(17)が、前後両熱交換管(13)に跨るように配置されて通風間隙(15)を形成する左右両側の組(14)を構成する前後両熱交換管(13)にろう付されている。すなわち、蓄冷材容器(16)が配置された通風間隙(15)の両側の通風間隙(15)にそれぞれアウターフィン(17)が配置されている。また、左右両端の熱交換管(13)の組(14)の外側にも両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなるアウターフィン(17)が配置されて前後両熱交換管(13)にろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(17)の外側にアルミニウム製サイドプレート(18)が配置されてアウターフィン(17)にろう付されている。左右両端のアウターフィン(17)とサイドプレート(18)との間も通風間隙となっている。
【0037】
図2に示すように、蓄冷材容器(16)は幅方向を前後方向に向けた扁平状であって、2枚の略縦長方形状アルミニウム板(19)(金属板)の周縁部どうしをろう付することにより形成されるとともに、2枚のアルミニウム板(19)間に設けられた蓄冷材封入部(16a)(蓄熱材封入部)内に蓄冷材が封入されたものである。蓄冷材容器(16)は、前側熱交換管(13)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(14)の前後2つの熱交換管(13)にろう付された容器本体部(21)と、容器本体部(21)の前側縁部(風下側縁部)に連なるとともに前側熱交換管(13)の前側縁よりも前方(通風方向外側)に張り出すように設けられた外方張り出し部(22)とを備えており、容器本体部(21)内および外方張り出し部(22)内が蓄冷材封入部(16a)となっている。蓄冷材容器(16)の容器本体部(21)の左右方向の寸法は全体に等しくなっている。蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)は、上下方向の寸法が容器本体部(21)の上下方向の寸法と等しく、かつ左右方向の寸法が容器本体部(21)の左右方向の寸法よりも大きくなっており、容器本体部(21)に対して左右方向外方に膨出している。外方張り出し部(22)の左右方向の寸法は、熱交換管(13)の左右方向の寸法である管高さの2倍に、蓄冷材容器(16)の容器本体部(21)の左右方向の寸法を加えた高さと等しくなっている。
【0038】
蓄冷材容器(16)内には、容器本体部(21)の後端部から外方張り出し部(22)の前端部に至るアルミニウム製インナーフィン(23)が、上下方向のほぼ全体にわたって配置されている。インナーフィン(23)は、前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状である。インナーフィン(23)のフィン高さは全体に等しく、蓄冷材容器(16)の容器本体部(21)の左右両側壁内面にろう付されている。
【0039】
蓄冷材容器(16)内へ充填される蓄冷材としては、凝固点が5〜10℃程度に調整されたパラフィン系潜熱蓄冷材が用いられる。具体的には、ペンタデカン、テトラデカンなどが用いられる。蓄冷材は、蓄冷材容器(16)の上端近傍まで存在するように蓄冷材容器(16)内に封入されている。なお、蓄冷材容器(16)の強度は、通常の使用環境温度範囲、たとえば−40〜90℃の範囲内においては、液相状態の蓄冷材が密度変化するとともに、蓄冷材容器(16)内に残存している空気が熱膨張することにより内圧が上昇したとしても、破損しないような強度に設計されている。
【0040】
蓄冷材容器(16)を構成するアルミニウム板(19)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工が施されることによって形成されたものであり、容器本体部(21)および外方張り出し部(22)を形成する膨出部(19a)(19b)と、周縁部に残った所定幅の帯状部(19c)とを有している。そして、2枚のアルミニウム板(19)を、インナーフィン(23)を間に挟んで膨出部(19a)(19b)の開口どうしが対向するように組み合わせ、この状態で両アルミニウム板(19)の帯状部(19c)どうしおよび両アルミニウム板(19)とインナーフィン(23)とをろう付することによって蓄冷材容器(16)が形成されている。
【0041】
図3に示すように、蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)の上端には、2枚のアルミニウム板(19)の周縁部に形成され、かつ蓄冷材を蓄冷材封入部(16a)内に注入するのに用いられた蓄冷材封入口(24)(蓄熱材注入口、図4および図5(a)参照)を閉じることによって、上方突出状の封止部(25)が設けられている。封止部(25)は、アルミニウム板(19)に上方に突出するように設けられるとともに、互いに密着させられた2つの外方突出片(26)を備えている。両外方突出片(26)は、蓄冷材封入口(24)を蓄冷材容器(16)の厚み方向の外側から圧潰することにより設けられたものであり、両外方突出片(26)どうしは嫌気性接着剤(29)(図5(b)参照、図3においては図示略)により接着されている。
【0042】
嫌気性接着剤(29)により接着された封止部(25)の両外方突出片(26)は、上下方向、すなわち外方突出片(26)におけるアルミニウム板(19)の周縁部からの突出方向に間隔をおいて複数箇所、ここでは2箇所においてアルミニウム板(19)の厚み方向に断面V字状に曲げられており、隣り合う屈曲部(27)の曲げ方向が異なっている。嫌気性接着剤(29)としては、たとえばヘンケル社製のロックタイト638が用いられる。この場合、蓄冷機能付きエバポレータ(1)の通常の使用環境温度域である−40〜90℃においても安定した気密性および接着強度を確保することができる。
【0043】
アウターフィン(17)は、前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状である。アウターフィン(17)は、前側熱交換管(13)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(14)の前後の熱交換管(13)にろう付されたフィン本体部(31)と、フィン本体部(31)の前側縁に連なるとともに後側熱交換管(13)の前側縁よりも前方に張り出すように設けられた外方張り出し部(32)とを備えている。そして、蓄冷材容器(16)が配置された通風間隙(15)の両隣の通風間隙(15)に配置されたアウターフィン(17)の外方張り出し部(32)が、蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)の左右両側面にろう付されている。また、隣接するアウターフィン(17)の外方張り出し部(32)間にはアルミニウム製スペーサ(33)が配置されており、外方張り出し部(32)にろう付されている。
【0044】
蓄冷材容器(16)の封止部(25)は次のようにして設けられる。
【0045】
予め、蓄冷材容器(16)を形成する2枚のアルミニウム板(19)における外方張り出し部(22)を構成する膨出部(19b)の上端に、それぞれ注入口形成用半円筒状部(28)を設けておく。半円筒状部(28)の両側縁部に、外方に張り出したフランジ(28a)を一体に形成しておく。フランジ(28a)は、アルミニウム板(19)の帯状部(19c)に連なっている。この状態で、上述したように蓄冷材容器(16)を製造することによって蓄冷材注入口(24)をつくる。蓄冷材封入口(24)は、図4および図5(a)に示すように、外方張り出し部(22)の上端に連なって上方に突出するように設けられており、下端が蓄冷材容器(16)の蓄冷材封入部(16a)の一部を形成する外方張り出し部(22)内に開口するとともに、上端が外部に開口した円筒状である。なお、蓄冷材容器(16)の製造は、蓄冷機能付きエバポレータ(1)のその他の部品のろう付と同時に行ってもよいし、あるいは別個に行ってもよい。蓄冷材容器(16)の製造を、蓄冷機能付きエバポレータ81)のその他の部品のろう付と別個に行う場合には、蓄冷材容器(16)の製造後に、蓄冷機能付きエバポレータの所定位置に配置する。
【0046】
ついで、蓄冷材注入口(24)を通して蓄冷材容器(16)内に蓄冷材を注入した後、蓄冷材注入口(24)の内周面に嫌気性接着剤(29)を塗布する(図4および図5(a)参照)。ついで、蓄冷材注入口(24)を、左型(35)および右型(36)を用いてアルミニウム板(19)の厚み方向の両側から圧潰して互いに密着した外方突出片(26)を形成する。左型(35)には、右方に突出した凸部(35a)と、左方に凹んだ凹部(35b)とが上下に並んで設けられている。右型(36)には、右方に凹みかつ左型(35)の凸部(35a)と対応した凹部(36a)と、左方に突出しかつ左型(35)の凹部(35b)と対応した凸部(36b)とが上下に並んで設けられている。したがって、左型(35)の凸部(35a)と右型(36)の凹部(36a)、および左型(35)の凹部(35b)と右型(36)の凸部(36b)とによりそれぞれ両外方突出片(26)が、アルミニウム板(19)の厚み方向に断面形状がV字状になるように曲げられ、その結果両外方突出片(26)が上下方向に間隔をおいた2箇所において、隣り合う屈曲部(27)の曲げ方向が異なるように曲げられる(図5(b)参照)。その後、所定時間放置することにより両外方突出片(26)どうしが嫌気性接着剤(29)により接着される。こうして、封止部(25)が設けられる。
【0047】
上述した蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(7)を通って蓄冷機能付きエバポレータ(1)の風下側上ヘッダ部(5)内に入り、全熱交換管(13)を通って風上側上ヘッダ部(6)の冷媒出口(8)から流出する。そして、冷媒が熱交換管(13)内を流れる間に、通風間隙(15)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0048】
このとき、熱交換管(13)内を流れる冷媒の有する冷熱によって蓄冷材容器(16)の容器本体部(21)内の蓄冷材が冷却され、さらに容器本体部(21)内の冷却された蓄冷材の有する冷熱がインナーフィン(23)を介して蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)内の蓄冷材に伝えられるとともに、通風間隙(15)を通って冷媒により冷やされた空気の有する冷熱が外方張り出し部(22)内の蓄冷材に伝えられ、その結果蓄冷材容器(16)内全体の蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0049】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷材容器(16)の容器本体部(21)および外方張り出し部(22)内の蓄冷材の有する冷熱が、インナーフィン(23)を介して容器本体部(21)および外方張り出し部(22)の左右両側壁に伝えられる。容器本体部(21)の左右両側壁に伝えられた冷熱は、熱交換管(13)を通過し、当該熱交換管(13)にろう付されているアウターフィン(17)のフィン本体部(31)を介して蓄冷材容器(16)が配置されている通風間隙(15)の両隣の通風間隙(15)を通過する空気に伝えられる。外方張り出し部(22)の左右両側壁に伝えられた冷熱は、外方張り出し部(22)の左右両側面にろう付されたアウターフィン(17)の外方張り出し部(22)](39)を介して通風間隙(15)を通過する空気に伝えられる。したがって、エバポレータ(1)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0050】
図6および図7は蓄冷材容器(16)に設けられる封止部および封止部を設ける方法の変形例を示す。
【0051】
図6に示す蓄冷材容器(16)の封止部(25)は、両外方突出片(26)どうしが、紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)によって接着されたものである。紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)の一部分は、両外方突出片(26)どうしの合わせ目から外部にあふれ出すとともに合わせ目の外端を覆った状態で硬化している(図6(b)参照)。紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)における前記合わせ目から外部にあふれた部分を(40a)で示す。紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)としては、たとえばヘンケル社製のロックタイト638UVが用いられる。この場合、蓄冷機能付きエバポレータ(1)の通常の使用環境温度域である−40〜90℃においても安定した気密性および接着強度を確保することができる。
【0052】
紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)を用いた蓄冷材容器(16)の封止部(25)は、嫌気性接着剤(29)に代えて、紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)を塗布することを除いては、嫌気性接着剤(29)を用いた封止部(25)と同様にして設けられる。
【0053】
但し、紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)の塗布量を、蓄冷材注入口(24)を左型(35)および右型(36)を用いてアルミニウム板(19)の厚み方向の両側から圧潰した際に、紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)の一部が、両外方突出片(26)どうしの合わせ目から外部にあふれ出させて合わせ目の外端を紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)で覆うような量とする。
【0054】
ここで、蓄冷材注入口(24)の内周面への紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)の塗布量Zmmは、たとえば次の式で決められる。すなわち、蓄冷材注入口(24)の内周長:L1mm、蓄冷材注入口(24)の内周面における紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)を塗布する部分の上下方向の長さ:L2mm、蓄冷材注入口(24)を圧潰した後の両外方突出片(26)間の間隔:L3mmとした場合、Z=L1×L2×L3mmとすることが好ましい。
【0055】
最後に、紫外線を照射するとともに、所定時間放置することにより両外方突出片(26)どうしが紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)により接着されるとともに、あふれ出した硬化部分(40a)が形成される。こうして、封止部(25)が設けられる。
【0056】
図7に示す蓄冷材容器(16)の封止部(45)は、アルミニウム板(19)に上方に突出するように設けられるとともに、互いに密着させられた2つの外方突出片(46)を備えている。両外方突出片(46)は、蓄冷材封入口(24)を蓄冷材容器(16)の厚み方向の外側から圧潰することによって全体が平坦となるように設けられたものであり、両外方突出片(46)どうしは紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)によって接着されている。紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)の一部分は、両外方突出片(46)どうしの合わせ目から外部にあふれ出すとともに合わせ目の外端を覆った状態で硬化している(図7(c)参照)。紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)における前記合わせ目から外部にあふれた部分を(40a)で示す。
【0057】
蓄冷材容器(16)の封止部(45)は次のようにして設けられる。
【0058】
蓄冷材注入口(24)を有する蓄冷材容器(16)を製造するまでは、上述した嫌気性接着剤(29)を用いた封止部(25)の場合と同様である。そして、蓄冷材注入口(24)を通して蓄冷材容器(16)内に蓄冷材を注入した後、蓄冷材注入口(24)の内周面に紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)を塗布し(図7(a)参照)、ついで蓄冷材注入口(24)を、第1の左右両型(47)を用いてアルミニウム板(19)の厚み方向の両側から圧潰する。左右両型(47)の互いに向き合った部分には、それぞれ垂直面(47a)と、垂直面(47a)の上端に連なりかつ上方に向かって左右方向外方に傾斜した傾斜面(47b)とが設けられている。そして、左右両型(47)により蓄冷材注入口(24)の半円筒状部(28)の上部が変形させられ、変形部の下部が垂直面(47a)により圧潰されて互いに押し付けられるとともに、変形部の上部が左右両型(47)の傾斜面(47b)に沿うように変形させられる。紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)の一部は、半円筒状部(28)における左右両型(47)の傾斜面(47b)に沿った部分間に溜まる(図7(b)参照)。
【0059】
ついで、第2の左右両型(48)により蓄冷材注入口(24)の半円筒状部(28)の全体を圧潰する。左右両型(48)の互いに向き合った部分は全体に垂直面(48a)となっており、左右両型(48)の垂直面(48a)により平坦な外方突出片(46)が形成されるとともに、両外方突出片(46)が互いに密着させられる。このとき、紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)の一部を、両外方突出片(46)どうしの合わせ目から外部にあふれ出させて合わせ目の外端を紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)で覆う。その後、紫外線を照射するとともに、所定時間放置することにより両外方突出片(46)どうしが紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)により接着される。こうして、封止部(45)が設けられる。
【0060】
ここで、蓄冷材注入口(24)の内周面への紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)の塗布量Zmmは、たとえば次の式で決められる。すなわち、蓄冷材注入口(24)の内周長:L1mm、蓄冷材注入口(24)の内周面における紫外線硬化型嫌気性接着剤(40)を塗布する部分の上下方向の長さ:L2mm、蓄冷材注入口(24)を圧潰した後の両外方突出片(26)間の間隔:L3mmとした場合、Z=L1×L2×L3mmとすることが好ましい。
【0061】
上述した実施形態においては、この発明による蓄熱材容器が、蓄冷機能付きエバポレータにおける冷熱を蓄える蓄冷材を封入する蓄冷材容器として用いられているが、これに限定されるものではなく、温熱を輸送する媒体が流れる複数の熱交換管を有する熱交換器において、温熱を蓄える蓄熱材を封入する蓄熱材容器として用いられこともある。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明による蓄熱材容器は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルの蓄冷機能付きエバポレータに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0063】
(1):蓄冷機能付きエバポレータ(熱交換器)
(13):熱交換管
(15):通風間隙
(16):蓄冷材容器(蓄熱材容器)
(16a):蓄冷材封入部(蓄熱材封入部)
(19):アルミニウム板(金属板)
(21):容器本体部
(22):外方張り出し部
(24):蓄冷材注入口(蓄熱材注入口)
(25)(45):封止部
(26)(46):外方突出片
(27):屈曲部
(29):嫌気性接着剤
(40):紫外線硬化型嫌気性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の金属板の周縁部どうしを接合することにより形成されるとともに、2枚の金属板間に設けられた蓄熱材封入部内に蓄熱材が封入されており、2枚の金属板の周縁部に形成されかつ蓄熱材を蓄熱材封入部内に注入するのに用いられた外方突出筒状の蓄熱材注入口を閉じることにより設けられた封止部を備えている蓄熱材容器であって、
封止部が、両金属板にそれぞれ外方に突出するように設けられるとともに、互いに密着させられた2つの外方突出片を備えており、両外方突出片が蓄熱材注入口を圧潰することにより形成され、両外方突出片どうしが嫌気性接着剤により接着されている蓄熱材容器。
【請求項2】
嫌気性接着剤により接着された両外方突出片が、金属板の厚み方向に断面V字状に曲げられている請求項1記載の蓄熱材容器。
【請求項3】
嫌気性接着剤により接着された両金属板の外方突出片が、外方突出片における金属板の周縁部からの突出方向に間隔をおいて複数箇所で曲げられており、隣り合う屈曲部の曲げ方向が異なっている請求項2記載の蓄熱材容器。
【請求項4】
嫌気性接着剤が紫外線硬化型であり、一部分が両外方突出片どうしの合わせ目から外部にあふれ出した状態で硬化している請求項1〜3記載の蓄熱材容器。
【請求項5】
上下方向にのびかつ冷熱を輸送する媒体が流れる複数の熱交換管と、内部に冷熱を蓄える蓄冷材が封入された複数の蓄冷材容器とを備えており、熱交換管内を流れる媒体が気化させられるようになされ、蓄冷材容器が請求項1〜4のうちにいずれかに記載の蓄熱材容器からなり、蓄冷材容器内の蓄冷材が、熱交換管内を流れる媒体の有する冷熱により冷却されるようになされており、蓄冷機能付きエバポレータとして用いられる熱交換器。
【請求項6】
熱交換管が幅方向を通風方向に向けた扁平状であり、複数の熱交換管が互いに間隔をおいて並列状に配置されるとともに、隣り合う熱交換管どうしの間に通風間隙が形成され、蓄冷材容器が、上下方向にのびるとともに幅方向を通風方向に向けた扁平状であり、全通風間隙のうち一部の通風間隙に蓄冷材容器が配置されている請求項5記載の熱交換器。
【請求項7】
蓄冷材容器の風下側部分が、熱交換管よりも風下側に位置しており、蓄冷材容器における熱交換管よりも風下側に位置する部分に封止部が形成されている請求項6記載の熱交換器。
【請求項8】
温熱を輸送する媒体が流れる複数の熱交換管と、上下方向にのびるとともに内部に、温熱を蓄える蓄熱材が封入された複数の蓄熱材容器とを備えており、蓄熱材容器が請求項1〜4のうちにいずれかに記載の蓄熱材容器からなり、蓄熱材容器内の蓄熱材に熱交換管内を流れる媒体の温熱が伝わるようになされている熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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