説明

蓄熱装置及び該蓄熱装置を備えた空気調和機

【課題】短時間で蓄熱材の温度上昇が可能な蓄熱装置及びこの蓄熱装置を用いた空気調和機を提供すること。
【解決手段】略円筒状の圧縮機6を囲むように配置された蓄熱装置であって、前記圧縮機6で発生した熱を蓄積する蓄熱材36と、蓄熱した熱を取得するための蓄熱熱交換器34を収容し、前記圧縮機で発生した熱を取得するために圧縮機に接する伝熱板51を有する蓄熱槽本体46に関して、伝熱板を熱伝導率の高い所定の厚さの部材で構成すると共にそれ以外の部分を前記伝熱板より低い熱伝導率の部材で構成することで高い蓄熱性能を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機を囲むように配置され圧縮機で発生した熱を蓄積する蓄熱材を収容する蓄熱装置及びこの蓄熱装置を備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプ式空気調和機による暖房運転時、室外熱交換器に着霜した場合には、暖房サイクルから冷房サイクルに四方弁を切り替えて除霜を行っている。この除霜方式では、室内ファンは停止するものの、室内機から冷気が徐々に放出されることから暖房感が失われるという欠点がある。
【0003】
そこで、室外機に設けられた圧縮機に蓄熱装置を設け、暖房運転中に蓄熱槽に蓄えられた圧縮機の廃熱を利用して除霜するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図10は、従来の蓄熱装置の一例を示す横断面図である。図10において、蓄熱装置100は、圧縮機101の外周面に固設されている。また、蓄熱装置100は、蓄熱槽102、蓄熱材103、熱交換器104からなり、蓄熱槽102の伝熱面105は、圧縮機101の外周面に接するように配置されており、これにより圧縮機の廃熱を蓄熱槽に蓄えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−31666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に示される従来の蓄熱装置では、蓄熱槽102を単一材料で形成するのが一般的である。ここで、熱伝導率が高い材料で蓄熱槽を形成すると、圧縮機から蓄熱材への熱抵抗が低減されるが、同時に蓄熱槽から外雰囲気への放熱量も増加するため、十分な蓄熱量が得られない。一方、熱伝導率が低い材料で蓄熱槽を形成すると、蓄熱槽から外雰囲気への放熱量は減少するが、圧縮機から蓄熱材への熱抵抗が増加するため、やはり、十分な蓄熱性能が得られないことがあった。
【0007】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、圧縮機と蓄熱材の間の熱抵抗を低減しながら、蓄熱材から外雰囲気への放熱量を低減することにより、高い蓄熱性能を有し、短時間で蓄熱材の温度上昇が可能な蓄熱装置及びこの蓄熱装置を用いた空気調和機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、略円筒状の圧縮機を囲むように配置された蓄熱装置であって、前圧縮機で発生した熱を蓄積する蓄熱材と、蓄熱材を収容する蓄熱槽と、蓄熱槽の側面であって圧縮機からの熱を蓄熱材に伝える伝熱面と、を有し、伝熱面の材料の熱伝導率は蓄熱槽の伝熱面以外の材料の熱伝導率より高いとしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧縮機に接する蓄熱槽の伝熱面が熱伝導率の高い材料で構成されているため、圧縮機からの廃熱を効率良く蓄熱材に蓄えることが可能となり、かつ、蓄熱槽の
それ以外の面、すなわち外雰囲気と接する面が熱伝導率の低い材料で構成されているため、蓄えた熱の外雰囲気への放熱を最小限にとどめることができる。これにより、高い蓄熱性能を有し、短時間で蓄熱材の温度上昇が可能な蓄熱装置及びこの蓄熱装置を用いた空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る蓄熱装置を備えた空気調和機の構成を示す図
【図2】図1の空気調和機の通常暖房時の動作及び冷媒の流れを示す模式図
【図3】図1の空気調和機の除霜・暖房時の動作及び冷媒の流れを示す模式図
【図4】圧縮機とアキュームレータを取り付けた状態の本発明に係る蓄熱装置の斜視図
【図5】蓄熱槽の分解斜視図
【図6】図4における線VII−VIIに沿った断面図
【図7】図4の蓄熱装置に設けられたシート部材を樹脂層と金属層の2層積層構造とした場合の拡大断面図
【図8】図4の蓄熱装置に設けられたシート部材を樹脂層と金属層と樹脂層の3層積層構造とした場合の拡大断面図
【図9】伝熱板厚さと伝熱性能の関係図
【図10】従来の蓄熱装置の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、略円筒状の圧縮機を囲むように配置された蓄熱装置であって、前圧縮機で発生した熱を蓄積する蓄熱材と、蓄熱材を収容する蓄熱槽と、蓄熱槽の側面であって圧縮機からの熱を蓄熱材に伝える伝熱面と、を有し、伝熱面の材料の熱伝導率は蓄熱槽の伝熱面以外の材料の熱伝導率より高いとしている。
【0012】
この構成により、圧縮機に接する蓄熱槽の伝熱面を熱伝導率の高い材料でとすることで、圧縮機からの廃熱を効率良く蓄熱材に蓄えることが可能となり、かつ、蓄熱槽のそれ以外の面、すなわち外雰囲気と接する面を熱伝導率の低い材料で構成することで、蓄えた熱の外雰囲気への放熱を最小限にとどめることができる。これにより、高い蓄熱性能を有し、短時間で蓄熱材の温度上昇が可能な蓄熱装置及びこの蓄熱装置を用いた空気調和機を提供することができる。
【0013】
また、具体的には、蓄熱槽が圧縮機と接する伝熱面に金属を採用し、その他の材料には樹脂を採用している。これにより、蓄熱槽が圧縮機と接触した場合も、割れ等に伴う蓄熱材の漏れを防ぐことが可能となる。更に接触面以外を成形精度の高い樹脂で構成することで、圧縮機と蓄熱槽の接触面の間に生じる隙間を最低限にとどめることができ、圧縮機と蓄熱槽伝熱面の接触不良にともなう蓄熱性能の低下を防ぐことが可能となる。
【0014】
また、好ましくは、伝熱面材料は、前記伝熱面以外に接合される第1樹脂層と、該第1樹脂層に対して前記圧縮機側に積層される金属層とで構成することで、伝熱面の材料の熱伝導性、強度等が向上する。
【0015】
更に好ましくは、伝熱面材料は、金属層に対して圧縮機側に積層される第2樹脂層を更に備えることにより、伝熱面材料とその他の材料の密着性が更に向上する。
また、好ましくは、伝熱面の圧縮機から蓄熱材への熱の流れ方向の部材厚さL(mm)を0.5mm<L<3mmで表される構成とすることで、圧縮機と伝熱面の間に気泡のかみ込み等、空隙が生じた場合でも伝熱面の熱拡散効果により、圧縮機から蓄熱材への伝熱性能の低下を最低限にとどめることができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明に係る蓄熱装置を備えた空気調和機の構成を示しており、空気調和機は冷媒配管で互いに接続された室外機2と室内機4とで構成されている。
【0018】
図1に示されるように、室外機2の内部には、圧縮機6と四方弁8とストレーナ10と膨張弁12と室外熱交換器14とが設けられ、室内機4の内部には、室内熱交換器16が設けられ、これらは冷媒配管を介して互いに接続されることで冷凍サイクルを構成している。
【0019】
さらに詳述すると、圧縮機6と室内熱交換器16は、四方弁8が設けられた第1配管18を介して接続され、室内熱交換器16と膨張弁12は、ストレーナ10が設けられた第2配管20を介して接続されている。また、膨張弁12と室外熱交換器14は第3配管22を介して接続され、室外熱交換器14と圧縮機6は第4配管24を介して接続されている。
【0020】
第4配管24の中間部には四方弁8が配置されており、圧縮機6の冷媒吸入側における第4配管24には、液相冷媒と気相冷媒を分離するためのアキュームレータ26が設けられている。また、圧縮機6と第3配管22は、第5配管28を介して接続されており、第5配管28には第1電磁弁30が設けられている。
【0021】
さらに、圧縮機6の周囲には蓄熱槽32が設けられ、蓄熱槽32の内部には、蓄熱熱交換器34が設けられるとともに、蓄熱熱交換器34と熱交換するための蓄熱材(例えば、エチレングリコール水溶液)36が充填されており、蓄熱槽32と蓄熱熱交換器34と蓄熱材36とで蓄熱装置を構成している。
【0022】
また、第2配管20と蓄熱熱交換器34は第6配管38を介して接続され、蓄熱熱交換器34と第4配管24は第7配管40を介して接続されており、第6配管38には第2電磁弁42が設けられている。
【0023】
室内機4の内部には、室内熱交換器16に加えて、送風ファン(図示せず)と上下羽根(図示せず)と左右羽根(図示せず)とが設けられており、室内熱交換器16は、送風ファンにより室内機4の内部に吸込まれた室内空気と、室内熱交換器16の内部を流れる冷媒との熱交換を行い、暖房時には熱交換により暖められた空気を室内に吹き出す一方、冷房時には熱交換により冷却された空気を室内に吹き出す。上下羽根は、室内機4から吹き出される空気の方向を必要に応じて上下に変更し、左右羽根は、室内機4から吹き出される空気の方向を必要に応じて左右に変更する。
【0024】
なお、圧縮機6、送風ファン、上下羽根、左右羽根、四方弁8、膨張弁12、電磁弁30,42等は制御装置(図示せず、例えばマイコン)に電気的に接続され、制御装置により制御される。
【0025】
上記構成の本発明に係る冷凍サイクル装置において、各部品の相互の接続関係と機能を暖房運転時を例にとり冷媒の流れとともに説明する。
【0026】
圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、第1配管18を通って四方弁8から室内熱交換器16へと至る。室内熱交換器16で室内空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室内熱交換器16を出て第2配管20を通り、膨張弁12への異物侵入を防止するストレーナ10を通って、膨張弁12に至る。膨張弁12で減圧した冷媒は、第3配管22を通って室外
熱交換器14に至り、室外熱交換器14で室外空気と熱交換して蒸発した冷媒は、第4配管24と四方弁8とアキュームレータ26を通って圧縮機6の吸入口へと戻る。
【0027】
また、第1配管18の圧縮機6吐出口と四方弁8の間から分岐した第5配管28は、第1電磁弁30を介して第3配管22の膨張弁12と室外熱交換器14の間に合流している。
【0028】
さらに、内部に蓄熱材36と蓄熱熱交換器34を収納した蓄熱槽32は、圧縮機6に接して取り囲むように配置され、圧縮機6で発生した熱を蓄熱材36に蓄積し、第2配管20から室内熱交換器16とストレーナ10の間で分岐した第6配管38は、第2電磁弁42を経て蓄熱熱交換器34の入口へと至り、蓄熱熱交換器34の出口から出た第7配管40は、第4配管24における四方弁8とアキュームレータ26の間に合流する。なお、合流する場所はアキュームレータ26と圧縮機6の間でも良く、その場合、アキュームレータ26自身が持つ熱容量によって熱を奪われること避けることができる。
【0029】
次に、図1に示される空気調和機の通常暖房時の動作及び冷媒の流れを模式的に示す図2を参照しながら通常暖房時の動作を説明する。
【0030】
通常暖房運転時、第1電磁弁30と第2電磁弁42は閉制御されており、上述したように圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、第1配管18を通って四方弁8から室内熱交換器16に至る。室内熱交換器16で室内空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室内熱交換器16を出て、第2配管20を通り膨張弁12に至り、膨張弁12で減圧した冷媒は、第3配管22を通って室外熱交換器14に至る。室外熱交換器14で室外空気と熱交換して蒸発した冷媒は、第4配管24を通って四方弁8から圧縮機6の吸入口へと戻る。
【0031】
また、圧縮機6で発生した熱は、圧縮機6の外壁から蓄熱槽32の外壁を介して蓄熱槽32の内部に収容された蓄熱材36に蓄積される。
【0032】
次に、図1に示される空気調和機の除霜・暖房時の動作及び冷媒の流れを示す模式的に示す図3を参照しながら除霜・暖房時の動作を説明する。図中、実線矢印は暖房に供する冷媒の流れを示しており、破線矢印は除霜に供する冷媒の流れを示している。
【0033】
上述した通常暖房運転中に室外熱交換器14に着霜し、着霜した霜が成長すると、室外熱交換器14の通風抵抗が増加して風量が減少し、室外熱交換器14内の蒸発温度が低下する。本発明に係る空気調和機には、図3に示されるように、室外熱交換器14の配管温度を検出する温度センサ44が設けられており、非着霜時に比べて、蒸発温度が低下したことを温度センサ44で検出すると、制御装置から通常暖房運転から除霜・暖房運転への指示が出力される。
【0034】
通常暖房運転から除霜・暖房運転に移行すると、第1電磁弁30と第2電磁弁42は開制御され、上述した通常暖房運転時の冷媒の流れに加え、圧縮機6の吐出口から出た気相冷媒の一部は第5配管28と第1電磁弁30を通り、第3配管22を通る冷媒に合流して、室外熱交換器14を加熱し、凝縮して液相化した後、第4配管24を通って四方弁8とアキュームレータ26を介して圧縮機6の吸入口へと戻る。
【0035】
また、第2配管20における室内熱交換器16とストレーナ10の間で分流した液相冷媒の一部は、第6配管38と第2電磁弁42を経て、蓄熱熱交換器34で蓄熱材36から吸熱し蒸発、気相化して、第7配管40を通って第4配管24を通る冷媒に合流し、アキュームレータ26から圧縮機6の吸入口へと戻る。
【0036】
アキュームレータ26に戻る冷媒には、室外熱交換器14から戻ってくる液相冷媒が含まれているが、これに蓄熱熱交換器34から戻ってくる高温の気相冷媒を混合することで、液相冷媒の蒸発が促され、アキュームレータ26を通過して液相冷媒が圧縮機6に戻ることがなくなり、圧縮機6の信頼性の向上を図ることができる。
【0037】
除霜・暖房開始時に霜の付着により氷点下となった室外熱交換器14の温度は、圧縮機6の吐出口から出た気相冷媒によって加熱されて、零度付近で霜が融解し、霜の融解が終わると、室外熱交換器14の温度は再び上昇し始める。この室外熱交換器14の温度上昇を温度センサ44で検出すると、除霜が完了したと判断し、制御装置から除霜・暖房運転から通常暖房運転への指示が出力される。
【0038】
図4、図5は蓄熱装置を示しており、蓄熱装置は、上述したように、蓄熱槽32と蓄熱熱交換器34と蓄熱材36とで構成されている。なお、図4は、圧縮機6と、圧縮機6に組み付けられるアキュームレータ26を蓄熱装置に取り付けた状態を示している。また、図5は蓄熱槽の分解斜視図であり、図6は図4における線VII−VIIに沿った蓄熱槽の断面図である。
【0039】
図4及び図5に示されるように、蓄熱槽32は、側壁46a、46bと底壁(図示せず)を有し上方が開口した樹脂製の蓄熱槽本体46と、この蓄熱槽本体46の上方開口部を閉塞する樹脂製の蓋体48と、蓄熱槽本体46と蓋体48の間に介装されシリコンゴム等で作製されたパッキンを備え、蓋体48は蓄熱槽本体46にてツメ部50により固定される。また、蓄熱槽本体46の側壁46bの一部(つまり、側壁46bで圧縮機6と対向する部分)は開口しており、この開口部46cに圧縮機6の外周面と密着する伝熱板51が嵌まり込み、接合される。本実施例では、伝熱板として、加工性、耐食性に優れた銅板を採用している。
【0040】
なお、伝熱板51は、全体として所定の直径の円筒の一部を切り欠いた形状を呈しており、この内側には、圧縮機6が収容されることから、取付公差等を考慮して伝熱板51の内径は圧縮機6の外径より僅かに大きく設定される。
【0041】
蓄熱熱交換器34は、例えば銅管等を蛇行状に折曲したもので、蓄熱槽本体46の内部に収容されており、蓄熱熱交換器34の両端は蓋体48から上方に延出され、一端は第6配管38(図1参照)に接続される一方、他端は第7配管40(図1参照)に接続される。また、蓄熱熱交換器34が収容され、側壁46a、46bと底壁と伝熱板51で囲繞された蓄熱槽本体46の内部空間には、蓄熱材36が充填される。
【0042】
蓄熱槽本体46は圧縮機6を抱くように横方向から密着させ、バンド52a、52bにより、それぞれアキュームレータ26、圧縮機6に上下で締結されることで、強固に固定される。
【0043】
なお、図5において蓄熱熱交換器34は省略しているが、蓄熱熱交換器34は、蓋体48を蓄熱槽本体46に固定する前に蓋体48に取り付けられ、蓄熱槽32の内部に収容される。
【0044】
次に、上記構成の蓄熱装置の作用を説明する。
【0045】
上述したように、蓄熱装置は、暖房運転時に圧縮機6で発生した熱を蓄熱材36に蓄熱し、通常暖房運転から除霜・暖房運転に移行したときに、蓄熱熱交換器34によって、その熱を取得し利用する。したがって、暖房運転時に霜が成長するよりも早く蓄熱材36の温度が十分に上げられるよう、圧縮機6外表面から蓄熱材36に至る伝熱経路の伝熱性能
が良く、かつ蓄熱材36から外雰囲気への断熱性が高い程好ましい。
【0046】
圧縮機6外表面から蓄熱材36に至る伝熱経路の伝熱性能は、蓄熱槽本体46と圧縮機6との密着度と、伝熱面の伝熱性能に依存しており、蓄熱材36から外雰囲気への断熱性は蓄熱槽本体46の伝熱面以外の断熱性能に依存している。
【0047】
そこで、本発明に係る蓄熱装置においては、蓄熱槽本体46に断熱性が高く、成形精度の高い樹脂部材を採用し、そこに伝熱性能の高い伝熱板51を嵌め込み、接合する構成としている。これにより、蓄熱材から、外雰囲気への放熱を防ぐと共に、伝熱面の寸法精度の確保が可能となり、圧縮機と伝熱面の密着度を向上させ、蓄熱材36への蓄熱性能を向上させている。
【0048】
また、伝熱板51は金属の単層構造でもよいが、耐食性、強度等を考慮して、金属層に樹脂層を積層した積層構造とすることもできる。これにより伝熱板51と蓄熱槽本体46の結合部を同一樹脂材料で構成することが可能となり、結合部の強度を増加させることができる。
【0049】
積層構造の場合、図7に示されるように、外側(圧縮機6との対向面)に金属層58を配置し、内側(蓄熱材36との接触面)に樹脂層60を配置するのが好ましい。金属層58を圧縮機6側に配置するのは、例えば、圧縮機6表面の凹凸で伝熱板51が傷むことを防止するためである。また、金属層58よりも蓄熱材側に樹脂層60を配置するのは、金属層58の腐食を防止するためである。
【0050】
さらに、図8に示されるように、金属層58に、圧縮機6と密着する第2の樹脂層62を積層してもよく、この場合、伝熱板51と蓄熱槽本体46の結合部の強度を更に増加させることができる。
【0051】
また、伝熱板51の厚さは、圧縮機6から蓄熱材36への熱の流れ方向に対して下式の厚さL(mm)で構成されることが望ましい。
【0052】
0.5mm<L<3mm
図9は、伝熱板51と圧縮機6の間に1mm間隔で隙間が生じた場合の伝熱性能を、伝熱板の厚さに対して示した計算例である。伝熱板の熱伝導率が高い場合、気泡の含有などにより伝熱板51と圧縮機6の間に空隙が生じても、伝熱板の厚さを適度に確保することで、圧縮機と接していない伝熱板の領域に関しても熱拡散効果による温度上昇が可能となり、圧縮機6から蓄熱材36への伝熱性能の低下を最低限にとどめることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る蓄熱装置は圧縮機と密着する密着部材を備えており、圧縮機で発生した熱を蓄熱材に効率的に蓄積することができるので、空気調和機、冷蔵庫、給湯器、ヒートポンプ式洗濯機等に有用である。
【符号の説明】
【0054】
2 室外機
4 室内機
6 圧縮機
8 四方弁
10 ストレーナ
12 膨張弁
14 室外熱交換器
16 室内熱交換器
18 第1配管
20 第2配管
22 第3配管
24 第4配管
26 アキュームレータ
28 第5配管
30 第1電磁弁
32 蓄熱槽
34 蓄熱熱交換器
36 蓄熱材
38 第6配管
40 第7配管
42 第2電磁弁
44 温度センサ
46 蓄熱槽本体
46a、46b 側壁
46c 側壁開口部、
48 蓋体
50 ツメ部
51 伝熱板
52a、52b バンド
58 金属層
60 樹脂層
62 第2の樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の圧縮機を囲むように配置された蓄熱装置であって、
前記圧縮機で発生した熱を蓄積する蓄熱材と、前記蓄熱材を収容する蓄熱槽と、前記蓄熱槽の側面であって前記圧縮機からの熱を前記蓄熱材に伝える伝熱面と、を有し、前記伝熱面の材料の熱伝導率は前記蓄熱槽の前記伝熱面以外の材料の熱伝導率より高いことを特徴とする蓄熱装置。
【請求項2】
前記伝熱面の材料には金属を用い、その他の材料には樹脂を用いたことを特徴とする、請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記伝熱面以外の材料には樹脂を用い、前記伝熱面材料は、第1樹脂層と、該第1樹脂層に対して前記圧縮機側に積層される金属層とで構成されることを特徴とする、請求項1に記載の蓄熱装置に記載の蓄熱装置。
【請求項4】
前記伝熱面材料は、前記金属層に対して前記圧縮機側に積層される第2樹脂層をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の蓄熱装置。
【請求項5】
前記伝熱面の厚さL(mm)は、0.5mm<L<3mmで表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄熱装置を用いた空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−72934(P2012−72934A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216457(P2010−216457)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】