説明

蓄熱装置

【課題】短時間で無駄なく蓄放熱することが可能な蓄熱装置を提供する。
【解決手段】潜熱蓄熱材13と熱媒油14とを上下二層に分離した状態で収容する蓄熱タンク12と、その蓄熱タンク12内の潜熱蓄熱材層16中に熱媒油14を供給する供給管18と、蓄熱タンク12内の熱媒油層17から熱媒油14を回収する回収管19とを有し、供給管18から潜熱蓄熱材層16中に供給された熱媒油14を潜熱蓄熱材13に直接接触させて熱交換を行なう蓄熱装置6において、蓄熱タンク12内に、供給管18から潜熱蓄熱材層16中に供給された熱媒油14と、その熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13との間で熱交換を行なう伝熱板21を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電所や廃棄物焼却場などの熱源施設で発生する廃熱を蓄熱する蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱源施設(例えば、発電所や廃棄物焼却場、製鉄所、化学プラント)で生じる廃熱を、熱利用施設(例えば、オフィスビルや病院、ホテル、クアハウス)で有効利用するため、熱源施設の廃熱を蓄熱タンク内に蓄熱し、その蓄熱タンクを熱利用施設に運搬し、その蓄熱タンクを熱源として給湯や暖房等を行なうことを可能とした蓄熱装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
この蓄熱装置は、潜熱蓄熱材と熱媒油とを上下二層に分離した状態で収容する蓄熱タンクと、その蓄熱タンク内の潜熱蓄熱材層中に熱媒油を供給する供給管と、前記蓄熱タンク内の熱媒油層から熱媒油を回収する回収管とを有し、その供給管と回収管を通じて、熱源施設(または熱利用施設)と蓄熱タンクの間で熱媒油を循環させて使用する。このとき、供給管から潜熱蓄熱材層中に供給された熱媒油は、熱媒油と潜熱蓄熱材の比重差により潜熱蓄熱材層中を上昇しながら、潜熱蓄熱材と直接接触して熱交換を行なう。
【0004】
ここで、潜熱蓄熱材は、物質が固相と液相の間で相変化するときに吸収・排出する熱(潜熱)を利用して蓄熱と放熱を行なう蓄熱材であり、固相から液相に相変化するときに周りから熱を吸収し、液相から固相に相変化するときに放熱する。また、潜熱蓄熱材は、固相と液相の間で相変化するときに温度が変化しないので、一定した温度での放熱が可能である。このような潜熱蓄熱材として、例えば、酢酸ナトリウム三水和物や、塩化マグネシウム六水和物、エリスリトール、マンニトールが用いられる。
【特許文献1】特開2007−132569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄熱タンク内の潜熱蓄熱材層には、供給管から供給された熱媒油が通過する領域と通過しない領域とがあり、熱媒油が通過する領域の潜熱蓄熱材は、熱媒油と直接接触して熱交換を行なうが、熱媒油が通過しない領域の潜熱蓄熱材は、熱媒油が通過する領域の潜熱蓄熱材を介して熱交換を行なう。そのため、熱媒油が通過しない領域の潜熱蓄熱材は、蓄放熱させるのに長時間を要し、その領域の潜熱蓄熱材を十分に活用することが難しかった。
【0006】
例えば、図9に示すように、蓄熱タンク31内の潜熱蓄熱材32を融かして蓄熱する場合、供給管33から供給された熱媒油の通過する領域34の潜熱蓄熱材32は、その熱媒油と直接接触して熱を受け取るので、短時間で融けるが、熱媒油が通過しない領域35の潜熱蓄熱材32は、熱媒油と直接接触しないので、なかなか融けない。そのため、蓄熱タンク31内の潜熱蓄熱材32がすべて融けるまで長時間を要し、蓄熱タンク31内の潜熱蓄熱材32を無駄なく利用するのが難しかった。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、短時間で無駄なく蓄放熱することが可能な蓄熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、前記蓄熱タンク内に、前記供給管から潜熱蓄熱材層中に供給された熱媒油と、その熱媒油が通過しない領域の潜熱蓄熱材との間で熱交換を行なう伝熱部材を設けた。この伝熱部材は、前記熱媒油層に至るように設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明の蓄熱装置は、蓄熱タンク内に設けた伝熱部材が、供給管から潜熱蓄熱材層中に供給された熱媒油と、その熱媒油が通過しない領域の潜熱蓄熱材との間で熱交換を行なうので、熱媒油が通過しない領域の潜熱蓄熱材を蓄放熱させるのに必要な時間が短い。そのため、この発明の蓄熱装置は、蓄熱タンク内の潜熱蓄熱材を、短時間で無駄なく利用することができる。
【0010】
さらに、前記伝熱部材を、前記熱媒油層に至るように設けたものは、その伝熱部材を介して、熱媒油が通過しない領域の潜熱蓄熱材と、熱媒油層中の熱媒油との間でも熱交換が行われるので、蓄放熱の効率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に、熱源施設1(例えば、発電所や廃棄物焼却場、製鉄所、化学プラント)で生じる廃熱を、熱源施設1から離れた熱利用施設2(例えば、オフィスビル、病院、ホテル、クアハウス)で利用可能とする熱搬送システムを示す。
【0012】
この熱搬送システムは、熱源施設1側に、熱源管3と、熱媒管4と、熱源管3と熱媒管4の間で熱交換を行なう熱交換器5とが設けられている。熱源管3は熱源施設1に接続されており、熱源施設1と熱交換器5の間で、廃熱を有する熱源流体(例えば、温水や蒸気)が循環するようになっている。熱媒管4は、この発明の実施形態の蓄熱装置6に着脱可能に接続されており、熱媒管4の途中に設けた循環ポンプ7を作動させると、熱交換器5と蓄熱装置6の間で熱媒油が循環し、その熱媒油を介して熱源管3から蓄熱装置6に熱が伝達され、蓄熱される。
【0013】
また、この熱搬送システムは、熱利用施設2側に、熱利用管8と、熱媒管9と、熱利用管8と熱媒管9の間で熱交換を行なう熱交換器10とが設けられている。熱利用管8は、熱利用施設2に接続されており、熱利用施設2と熱交換器10の間で、熱利用媒体(例えば、給湯用水や暖房用水)が循環するようになっている。熱媒管9は、蓄熱装置6に着脱可能に接続されており、熱媒管9の途中に設けた循環ポンプ11を作動させると、蓄熱装置6と熱交換器10の間で熱媒油が循環し、その熱媒油を介して蓄熱装置6から熱利用管8に熱が伝達され、その熱を利用して熱利用施設2での給湯や暖房が可能となる。
【0014】
この熱搬送システムは、上述した熱源施設1と熱利用施設2の間で、蓄熱装置6を行き来させることにより、熱源施設1の廃熱を熱利用施設2の熱エネルギーとして利用することができる。
【0015】
蓄熱装置6は、図2、図3に示すように、中心軸を略水平とする円筒状の蓄熱タンク12を有する。蓄熱タンク12は、断熱壁で覆われており、その蓄熱タンク12内に、潜熱蓄熱材13と熱媒油14とが上下二層に分離した状態で収容されている。潜熱蓄熱材13は、固相から液相に相変化するときに周りから熱を吸収し、液相から固相に相変化するときに放熱する。このような潜熱蓄熱材13として、例えば、エリスリトールやマンニトール、酢酸ナトリウム三水和物、塩化マグネシウム六水和物などを用いることができる。
【0016】
熱媒油14は、潜熱蓄熱材13よりも比重が小さいものが用いられ、潜熱蓄熱材13との比重差によって潜熱蓄熱材13の表面に浮いた状態となっている。また、蓄熱タンク12内には空気層15が設けられており、その空気層15が、潜熱蓄熱材層16と熱媒油層17の体積変化を吸収するようになっている。
【0017】
また、蓄熱タンク12には、潜熱蓄熱材層16中に熱媒油14を供給する供給管18と、熱媒油層17から熱媒油14を回収する回収管19とが設けられている。供給管18は、蓄熱タンク12の中心軸と略平行に配置され、潜熱蓄熱材層16中に熱媒油14を吐出する下向きの吐出口20が、長手方向に間隔をおいて多数形成されている。
【0018】
蓄熱タンク12内には、金属製(例えば、銅製)の伝熱板21が設けられている。伝熱板21は、図3に示すように、供給管18から下向きに吐出された熱媒油14と接触する位置から、蓄熱タンク12の内面に沿って上方に延びており、その伝熱板21を介して、供給管18から潜熱蓄熱材層16中に供給された熱媒油14と、その熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13との間で熱交換を行なうようになっている。また、伝熱板21は、熱媒油層17に至るように設けられており、その伝熱板21を介して、熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13と、熱媒油層17中の熱媒油14との間でも熱交換を行なうようになっている。伝熱板21は、潜熱蓄熱材13に対する接触面積が大きくなるように、蓄熱タンク12の内面に対して直角となる姿勢で配置されている。
【0019】
この蓄熱装置6に熱を蓄えるときは、蓄熱装置6の供給管18と回収管19を、熱源施設1の熱媒管4に接続し、その状態で循環ポンプ7を作動させ、蓄熱装置6と熱交換器5の間で熱媒油14を循環させる。このとき、供給管18から潜熱蓄熱材層16中に熱媒油14が吐出され、その熱媒油14が、潜熱蓄熱材13との比重差によって潜熱蓄熱材層16中を上昇する。その上昇過程において、熱媒油14が通過する領域23の潜熱蓄熱材13は、熱媒油14と直接接触して熱を受け取り、固相から液相に変化する。また、熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13は、供給管18から潜熱蓄熱材層16中に吐出された熱媒油14から、伝熱板21を介して熱を受け取り、固相から液相に変化する。
【0020】
一方、この蓄熱装置6から熱を取り出すときは、蓄熱装置6の供給管18と回収管19を、熱利用施設2の熱媒管9に接続し、その状態で循環ポンプ11を作動させ、蓄熱装置6と熱交換器10の間で熱媒油14を循環させる。このとき、供給管18から潜熱蓄熱材層16中に熱媒油14が吐出され、その熱媒油14が、潜熱蓄熱材13との比重差によって潜熱蓄熱材層16中を上昇し、その上昇過程において、潜熱蓄熱材13と直接接触して熱を受け取る。また、供給管18から潜熱蓄熱材層16中に吐出された熱媒油14は、伝熱板21を介して、熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13からも熱を受け取る。
【0021】
このように、蓄熱装置6は、蓄熱タンク12内に設けた伝熱板21が、供給管18から潜熱蓄熱材層16中に吐出された熱媒油14と、その熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13との間で熱交換を行なうので、熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13を蓄放熱させるのに必要な時間が短い。そのため、蓄熱タンク12内の潜熱蓄熱材13を、短時間で無駄なく利用することができる。
【0022】
また、この蓄熱装置6は、伝熱板21を介して、熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13と、熱媒油層17中の熱媒油14との間でも熱交換を行なうので、蓄放熱の効率が高い。
【0023】
上記実施形態では、伝熱板21は、蓄放熱の効率を高めるため、熱媒油層17に至るように配置しているが、図4に示すように、熱媒油層17に至らないように配置してもよい。
【0024】
また、上記実施形態の伝熱板21を設けるかわりに、図5に示すように、供給管18から吐出された熱媒油14と接触する位置に配置した銅板24と、熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13の位置に配置した銅板25とを、ヒートパイプ26で連結し、そのヒートパイプ26を介して、供給管18から供給された熱媒油14と、その熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13との間で熱交換が行われるようにしてもよい。
【0025】
ここで、ヒートパイプ26は、金属製のパイプ内に作動液を封入し、そのパイプ内を減圧したものであり、パイプ内の作動液の蒸発潜熱によって熱を吸収し、その蒸気がパイプ内を移動することにより熱を移動させ、その蒸気の凝縮潜熱によって熱を放出する。
【0026】
また、上記実施形態の伝熱板21を設けるかわりに、図6、図7に示すように、蓄熱タンク12の内面に沿って分岐しながら上方に延びる金属製の伝熱体27を、蓄熱タンク12内に設け、その伝熱体27を介して熱交換が行われるようにしてもよい。このようにすると、供給管18から吐出された熱媒油14の熱が分岐して伝達するので、供給管18の吐出口20の設置間隔が広い場合にも、潜熱蓄熱材13を満遍なく蓄放熱させることができる。伝熱体27の分岐部27aは、蓄熱タンク12内における潜熱蓄熱材13の移動を妨げないように、薄肉に形成すると好ましい。
【0027】
また、上記実施形態の伝熱板21を設けるかわりに、図8に示すように、蓄熱タンク12内に銅線28を垂らし、その銅線28を介して、供給管18から潜熱蓄熱材層16中に供給された熱媒油14と、その熱媒油14が通過しない領域22の潜熱蓄熱材13との間で熱交換が行われるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施形態の蓄熱装置を利用した熱搬送システムを示す図
【図2】図1に示す蓄熱装置の断面図
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図
【図4】図3の蓄熱装置の変形例を示す断面図
【図5】図3の蓄熱装置の他の変形例を示す断面図
【図6】図3の蓄熱装置の更に他の変形例を示す断面図
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図
【図8】図3の蓄熱装置の更に他の変形例を示す断面図
【図9】従来の蓄熱装置を示す断面図
【符号の説明】
【0029】
6 蓄熱装置
12 蓄熱タンク
13 潜熱蓄熱材
14 熱媒油
16 潜熱蓄熱材層
17 熱媒油層
18 供給管
19 回収管
21 伝熱板
22 熱媒油が通過しない領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱蓄熱材(13)とその潜熱蓄熱材(13)よりも比重の小さい熱媒油(14)とを上下二層に分離した状態で収容する蓄熱タンク(12)と、その蓄熱タンク(12)内の潜熱蓄熱材層(16)中に熱媒油(14)を供給する供給管(18)と、前記蓄熱タンク(12)内の熱媒油層(17)から熱媒油(14)を回収する回収管(19)とを有し、前記供給管(18)から潜熱蓄熱材層(16)中に供給された熱媒油(14)を潜熱蓄熱材(13)に直接接触させて熱交換を行なう蓄熱装置(6)において、前記蓄熱タンク(12)内に、前記供給管(18)から潜熱蓄熱材層(16)中に供給された熱媒油(14)と、その熱媒油(14)が通過しない領域(22)の潜熱蓄熱材(13)との間で熱交換を行なう伝熱部材(21)を設けたことを特徴とする蓄熱装置。
【請求項2】
前記伝熱部材(21)を、前記熱媒油層(17)に至るように設けた請求項1に記載の蓄熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−198134(P2009−198134A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42694(P2008−42694)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)