説明

蓄熱装置

【課題】蓄熱材間の熱漏洩を効率的に抑制することにより、蓄熱装置の熱効率を大幅に向上させる。
【解決手段】下方に低温蓄熱材2b、上方に高温蓄熱材2aが蓄えられた蓄熱材容器1と、前記低温蓄熱材2bと高温蓄熱材2aの間に配置されるとともに前記低温蓄熱材2bの密度と高温蓄熱材2aの密度の中間の平均密度を持つ多数の浮体3と、を有する蓄熱装置において、前記多数の浮体3を浮体収容部材5内に収容したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、太陽熱発電装置等に用いられる蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の対策として再生可能エネルギー利用の開発が進められており、一部で実用化もされている。その一つに集光型太陽熱発電(CSP;Concentrating Solar ThermalPower Plant)がある。集光型太陽熱発電は、図5に示すように、レンズや鏡等からなる集光部材16で太陽光15を集光し、その熱で高温になった熱媒体17により蒸気タービン18を回転させて発電する。この太陽熱発電の課題の一つに、太陽が出ている日中にしか発電ができないことや、天候により出力が変動する問題がある。この対策の一つとして、太陽熱を貯蔵する蓄熱装置が開発されている。
【0003】
このような蓄熱装置としては、図5に示すような2容器方式のものがある。この蓄熱装置は高温蓄熱材容器10a、低温蓄熱材容器10b、蓄熱材用ポンプ12及び熱交換器13で構成されている。2つの蓄熱材容器10a、10bには例えば溶融塩からなる蓄熱材が入っており、蓄熱材用ポンプ12の運転/停止により、一方の容器から熱交換器13を経由して他方の容器へ蓄熱材を送れるようになっている。
【0004】
この蓄熱装置に蓄熱する時は、太陽光で高温となった熱媒体17を分流させて実線矢印20の方向に熱交換器13へ流し、低温蓄熱材容器10bから送られる溶融塩と熱交換して溶融塩を加熱し、高温になった溶融塩を高温蓄熱材容器10aに蓄える。
【0005】
放熱時には逆に破線矢印21の方向に低温の熱媒体17を流し、高温蓄熱材容器10aから送られる溶融塩と熱交換して熱媒体17を加熱し、高温になった熱媒体17を発電系に送る。このとき低温になった溶融塩は低温蓄熱材容器10bに蓄えられる。
【0006】
このような蓄熱装置を用いると、余分な熱媒体の熱を溶融塩に一時的に蓄え、必要に応じて熱を熱媒体17に戻すことができる。これにより、昼間に蓄えた熱を用いて夜間に発電したり、日照量に変動があっても出力を一定に維持したりできる。
【0007】
2容器方式の集光型太陽熱発電において、50MW級の商用発電プラントでは、蓄熱装置が大型になり初期コストが高くなる問題がある。コスト低減のためには上記の2容器方式を図6に示すような1容器方式にする方法が提案されている。
【0008】
1容器方式は、1つの蓄熱材容器10内の下方に低温蓄熱材2aを、上方に高温蓄熱材2bを蓄え、密度の差による温度成層を作ることで、高温層と低温層が混合しないようにする方法である。この1容器方式では、蓄熱材として水を用いた例が知られており、高温層から低温層への熱の漏洩を抑制するために断熱層を設けることが提案されている(特許文献1)。また、大型の装置では一体型の断熱層を設けることは困難であり、多数の小球状の浮体3を用いた断熱方式が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−256513号公報
【特許文献2】特開平11−304385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した1容器方式の蓄熱装置において、蓄熱材容器10中に高温層から低温層への熱の漏洩を低減するために多数の浮体3を用いて断熱層を形成している。しかし、多数の浮体3の浮力は必ずしも同じではなく、浮体3の製造誤差、浮体3内部への蓄熱材の漏れや浮体3の変形などにより浮力が変化する場合がある。その際、浮体3の浮力がばらついて、浮体3が不規則に移動又は回転することにより、断熱層としての機能が損なわれ、熱漏洩量が設計値より大きくなる課題があった。
【0011】
本実施形態は上述した課題を解決するためになされたもので、熱漏洩量を確実に低減できる高熱効率の蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態の蓄熱装置は、下方に低温蓄熱材、上方に高温蓄熱材が蓄えられた蓄熱材容器と、前記低温蓄熱材と高温蓄熱材の間に配置されるとともに前記低温蓄熱材の密度と高温蓄熱材の密度の中間の平均密度を持つ多数の浮体と、を有する蓄熱装置において、前記多数の浮体を浮体収容部材内に収容したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る蓄熱材容器の構成図。
【図2】第2の実施形態に係る蓄熱材容器の構成図。
【図3】第3の実施形態に係る蓄熱材容器の構成図。
【図4】(a)、(b)は第4の実施形態に係る浮体の構成図。
【図5】従来の太陽熱発電装置の構成図
【図6】従来の蓄熱材容器の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る蓄熱装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る蓄熱装置を、図1を用いて説明する。
【0015】
本第1の実施形態の蓄熱装置は、蓄熱材容器1と、蓄熱材容器1内の下方に蓄えられた低温蓄熱材2aと、上方に蓄えられた高温蓄熱材2bと、高温蓄熱材2bの密度と低温蓄熱材2aの密度の中間の平均密度を持つ多数の浮体3と、この多数の浮体3を連結するワイヤー等の連結部材4で構成されている。
【0016】
図1では浮体3は内部が中空の球状の断熱材から形成されるが、これに限定されず、楕円状、多角形状でもよい。また、密度が上述した中間の平均密度を有するものであれば中実状の断熱材を用いてもよい。断熱材の材質としては、樹脂、セラミック材、合金、等を用いることができる。また、発泡材、多孔質材を用いてもよい。
【0017】
このように構成された本第1の実施形態において、多数の浮体は高温蓄熱材2bと低温蓄熱材2aとの間の熱の漏洩を低減するための断熱層を形成する。ここで多数の浮体3の内部への蓄熱材の漏洩や浮体の製造誤差又は使用中の変形等により、個々の浮体3の間に浮力のばらつきが発生しても、浮体3同士は連結部材4で連結されているため、図1に示すように多数の浮体3は離間することなく密集して配列される。これにより、浮体3間の隙間は最小限に抑えられ、浮体の移動や蓄熱材の移動による熱漏洩を抑制することができる。
【0018】
このように本第1の実施形態によれば、高温蓄熱材と低温蓄熱材との間に連結部材で連結された浮体を用いることにより、蓄熱材間の熱漏洩を効率的に抑制することができるので、蓄熱装置の熱効率を大幅に向上させることができる。
【0019】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る蓄熱装置を、図2を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
本第2の実施形態では多数の浮体3が、例えば網状のカバーからなる浮体収容部材5内に収容されるように構成されている。
【0021】
このように構成された本第2の実施形態において、多数の浮体3の浮力にばらつきがあっても多数の浮体3は浮体収容部材5内に密集して収容されるので、浮体の間の隙間は最小限に抑えられる。これにより、浮体の移動や蓄熱材の移動による熱漏洩を抑制できるので、蓄熱装置の熱効率を大幅に向上させることができる。
【0022】
なお、浮体収容部材として、網状のカバーに換えてシート状のカバー又は網状の容器を用いてもよい(図示せず)。
【0023】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る蓄熱装置を、図3を用いて説明する。なお、上記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
本第3の実施形態では、浮体収容部材5におもり6を取り付け、浮体収容部材5をワイヤー等の上下動可能な吊り下げ部材7により所定位置に吊り下げる。また、浮体収容部材5には温度計等の温度検出手段8が設置されている。
【0025】
このように構成された本第3の実施形態において、浮体収容部材5中の浮体3を高温層と低温層の中間に定常的に配置するように、温度検出手段8の出力を監視しながら吊り下げ部材7によって浮体収容部材の位置を調整する。
【0026】
本第3の実施形態によれば、浮体の平均密度は高温蓄熱材2bの密度と低温蓄熱材2aの密度の中間の平均密度以上であればよく、また、浮力のばらつきの許容範囲を大きくできるので、浮体の材料選択の自由度及び製造上の自由度が増す。さらに、温度検出手段8の出力を監視しながら浮体収容部材の位置を調整することができるので、蓄熱材間の熱漏洩をさらに効率的に抑制することができるとともに、蓄熱装置の熱効率を大幅に向上させることができる。
【0027】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る蓄熱装置を、図4(a)、(b)を用いて説明する。なお、上記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0028】
本第4の実施形態では、浮体3として図4(a)に示すように、浮力の異なる2つの浮体3a及び3bを連結部材で連結して浮体3を形成する。これにより、浮体3を直立させる方向に力が働くため浮体3の回転を抑制することができるため、多数の浮体3を直列に密集整列させた浮体の集合体を形成することが可能となる。その結果、蓄熱装置の熱効率を大幅に向上させることができる。
なお、浮力の異なる浮体を3個以上連結しても、同様な効果が得られる。
【0029】
また、第4の実施形態の変形例では、図4(b)に示すよう、浮体3に例えば板状の突起9が取り付けられている。これにより、浮体を直立させる力が働くとともに、外力により浮体が回転しそうになった場合にも、板状突起が抵抗となって回転を抑止することができるため、多数の浮体3を直列に密集整列させた集合体を形成することが可能となる。
【0030】
本第4の実施形態によれば、浮体3の不規則な移動、回転を防止し、多数の浮体3を直列に密集整列させた浮体の集合体を形成することが可能となるため、蓄熱材間の熱漏洩をさらに効率的に抑制することができるとともに、蓄熱装置の熱効率を大幅に向上させることができる。
【0031】
(第5の実施形態)
本第5の実施形態では、上述した実施形態で用いられる浮体3をマンガン窒化物等の負熱膨張率を持つ物質で構成する。これにより製造上のばらつきによって大きい浮力を有する浮体3が高温側に浮上した場合には、暖められて収縮することで沈み、小さい浮力を有する浮体3が低温側に沈降した場合には、冷却されて膨張することで浮かび、その結果として浮力のばらつきが抑制され、浮体3は所望の位置で密集して整列されることになる。
【0032】
本第5の実施形態によれば、浮体を負熱膨張率を持つ物質で構成することにより蓄熱材間の熱漏洩をさらに効率的に抑制することができるとともに、蓄熱装置の熱効率をさらに大幅に向上させることができる。
【0033】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、組み合わせ、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1…蓄熱材容器、2a…低温蓄熱材、2b…高温蓄熱材、3…浮体、4…連結部材、5…体収容部材、6…おもり、7…吊り上げ手段、8…温度検出手段、9…突起、10…蓄熱材容器、10a…高温蓄熱材容器、10b…低温蓄熱材容器、12…蓄熱材用ポンプ、13…熱交換器、15…太陽光、16…集光部材、17…熱媒体、18…蒸気タービン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に低温蓄熱材、上方に高温蓄熱材が蓄えられた蓄熱材容器と、前記低温蓄熱材と高温蓄熱材の間に配置されるとともに前記低温蓄熱材の密度と高温蓄熱材の密度の中間の平均密度を持つ多数の浮体と、を有する蓄熱装置において、
前記多数の浮体を浮体収容部材内に収容したことを特徴とする蓄熱装置。
【請求項2】
前記浮体収容部材を上下動可能に吊り下げる吊り下げ手段を有するとともに、前記浮体収容部材に重量調整用おもりを設けたことを特徴とする請求項1記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記浮体収容部材に温度検出手段を設け、検出温度に応じて前記吊り下げ手段により前記浮体収容部材の高さを調整することを特徴とする請求項2記載の蓄熱装置。
【請求項4】
前記浮体収容部材は網状のカバー、網状の容器又はシート状のカバーであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の蓄熱装置。
【請求項5】
前記多数の浮体は浮力の異なる浮体からなり、当該浮力の異なる浮体を連結部材で連結したことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の蓄熱装置。
【請求項6】
前記浮体に突起を設けたことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の蓄熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−37217(P2012−37217A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259074(P2010−259074)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2010−175497(P2010−175497)の分割
【原出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)