説明

蓄熱試験装置および蓄熱試験方法

【課題】直射日光等による蓄熱を考慮に入れた変形を定量的に評価することができる蓄熱試験装置および蓄熱試験方法を提供することを目的とする。
【解決手段】試験体Tの耐熱性を評価するための蓄熱試験装置1であって、前記試験体Tから離間した位置に配置され前記試験体Tに対して光を照射すると共に前記試験体Tに対して放熱する熱源13と、前記試験体の温度を測定する温度センサ15とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱試験装置および蓄熱試験方法に関するものであり、特に樹脂材料または樹脂部品の耐熱性を評価する場合に用いられて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来から、材料や部品等の性質および性能を定量的に評価するために多数の試験装置および試験方法が提案されている(特許文献1参照)。例えば自動車等をはじめとして主に屋外で使用される製品の樹脂部品は、太陽光による熱の影響により変形が発生する場合があり、その耐熱性を定量的に評価する必要がある。
【0003】
例えば、樹脂材料の耐熱性の試験方法としては、「JIS K7191 荷重たわみ温度の試験方法 第1部〜第3部」で規定する荷重たわみ温度を測定したり、示差走査熱量測定(DSC)等の機器による融点測定をしたりすることにより行っている。
また、樹脂部品の試験方法としては、雰囲気温度に設定した恒温槽内に一定時間保持して、外観および寸法変化の確認を行う。また、樹脂部品を切り出して試験体を作成し、「JIS K7195 プラスチックのヒートサグ試験方法」で規定するヒートサグ試験を用いて、恒温槽内で所定の温度で所定の時間放置させ、たわみ量を測定することにより行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−243551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような樹脂部品の試験方法では、所定の雰囲気温度における試験体のたわみ量を評価しているために、熱源によって試験体が蓄熱しながら昇温する場合の耐熱性を評価することができない。また、実際の試験体の温度は、恒温槽の設定温度まで上昇しないために、変形を開始する実際の試験体の温度を検証することが困難である。また、樹脂部品における変形の発生率は色によって異なり、着色顔料やアルミニウム等の光輝材が影響する場合があり、上述したような樹脂部品の試験方法では、このような影響による変形を定量的に評価することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、直射日光等による蓄熱を考慮に入れた変形を定量的に評価することができる蓄熱試験装置および蓄熱試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蓄熱試験装置は、試験体の耐熱性を評価するための蓄熱試験装置であって、前記試験体から離間した位置に配置され前記試験体に対して光を照射すると共に前記試験体に対して放熱する熱源と、前記試験体の温度を測定する温度センサとを備えたことを特徴とする。
また、前記熱源は、フォトリフレクタランプであることを特徴とする。
また、前記試験体のたわみ量を測定する距離計を更に備えたことを特徴とする。
また、前記試験体を保持する試験体保持台を更に備え、前記試験体保持台は、前記試験体の両端を保持することを特徴とする。
また、前記試験体を保持する試験体保持台を更に備え、前記試験体保持台は、前記試験体を片持ち式に保持することを特徴とする。
【0008】
試験体の耐熱性を評価するための蓄熱試験方法であって、前記試験体から離間した位置に配置された熱源により前記試験体に対して光を照射すると共に放熱する手順と、前記試験体の温度を温度センサにより測定する手順とを有することを特徴とする。
また、前記試験体のたわみ量を測定する手順を更に有することを特徴とする。
また、前記試験体のたわみ量を測定する手順では、前記試験体に錘を載せた状態のたわみ量を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、直射日光等による樹脂材料または樹脂部品の蓄熱を考慮に入れた変形を定量的に評価することができる。例えば、蓄熱による試験体の温度を実際に測定することにより、変形を開始したときの実際の試験体の温度を検証することができる。また、例えば、着色した試験体や光輝材を含有させた試験体であっても、色の影響を含んだ変形を定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る蓄熱試験装置の外観構成を示す図である。
【図2】蓄熱試験装置によって試験体の表面温度を測定した結果を示す図である。
【図3】他の試験体保持台の構成の一例を示す図である。
【図4】他の蓄熱試験方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る蓄熱試験装置は、熱源としてフォトリフレクタランプを用いて、太陽光による樹脂材料または樹脂部品の蓄熱状況を再現することができる。
図1は、本実施形態に係る蓄熱試験装置の外観構成を示す図である。図1に示すように、蓄熱試験装置1は、試験台10、試験体保持台11、ランプ保持台12、ランプ13、風防壁14、温度センサ15を含んで構成されている。
【0012】
試験台10は、試験体保持台11を載置するために平坦状に形成され、試験体保持台11およびランプ保持台12を取り付けることができる大きさを有している。試験体保持台11は、試験体Tを、ランプ13の光が均一に照射されるように、かつ、試験台10から所定間隔h1、離間するように保持している。間隔h1は、略30mmであることが好ましい。試験体Tを試験台10から所定間隔、離間させることで、試験台10の熱が試験体Tに及ぼす影響を少なくすることができる。また、本実施形態では、図1に示すように、所定間隔g、離間した一対の試験体保持台11がそれぞれ、平面状の試験体Tの両端部を保持している。したがって、試験体Tの自重による変形を容易に確認することができる。
【0013】
ランプ保持台12は、ランプ13を試験体Tから所定の高さh2、離間するように保持している。高さh2は、略300mmであることが好ましい。ランプ13には、フォトリフレクタランプを用い、試験体Tに対して光を照射すると共に熱を放出して、直射日光を再現することができる。フォトリフレクタランプは、色温度が昼光色であり、出力が安定し、チラツキを低減できるという特性がある。また、フォトリフレクタランプは、試験者が試験体Tの表面温度を直接、測定する場合にも人体に影響を与えない。風防壁14は、試験台10の周囲および上部を囲むように構成され、試験体Tの温度変化に影響を及ぼす風等の外的要因を遮断する。
なお、上述した試験台10および試験体保持台11は断熱性を有していて、試験台10および試験体保持台11の昇温による試験体Tに及ぼす影響を少なくすることができる。
【0014】
温度センサ15は、赤外線温度計、接触型温度計または熱電対等を用いることができ、試験体Tの表面温度を測定する。なお、蓄熱試験装置1は、試験体Tの変形を測定するために、図示しない距離計を備えていてもよい。距離計は、例えば光学式測距装置であって、試験体Tのたわみ量を非接触で測定できるものを用いることができる。
【0015】
次に、上述したように構成される蓄熱試験装置1を用いた蓄熱試験方法について説明する。
まず、評価対象とする樹脂材料または樹脂部品の試験体Tを作成し、作成した試験体Tを蓄熱試験装置1の試験体保持台11で保持する。このとき、試験体保持台11はランプ13から試験体Tに照射される光が均一になるような位置に配置する。
次に、ランプ13を発光および発熱させ、試験体Tの表面温度およびたわみ量の測定を開始する。
このとき、ランプ13にフォトリフレクタランプを用いているために、ランプ13の発熱に応じて試験体Tが蓄熱することで、太陽光による蓄熱状況を再現することができる。
【0016】
図2は、白色の樹脂材料で作成した試験体Twと、黒色の樹脂材料で作成した試験体Tbとを上述した蓄熱試験装置1によって表面温度を測定した結果を示す図である。図2では、横軸が時間(min)を示し、縦軸が温度(℃)を示している。
図2に示すように、時間が経過するにしたがって各樹脂材料の表面温度が上昇することを確認することができる。また、黒色の樹脂材料は白色の樹脂材料よりも、表面温度が高くなることを確認することができる。なお、時間が経過するにしたがって、各試験体Tのたわみ量を距離計または実測によって測定することで、試験体Tの温度とたわみ量との関係も評価することができる。
【0017】
このように、本実施形態に係る蓄熱試験装置によれば、ランプにより試験体を蓄熱させることで、太陽光による蓄熱状況を再現することができる。特に、蓄熱による試験体の温度を実際に測定することにより、変形を開始したときの実際の試験体の温度を検証することができる。また、着色した試験体や光輝材を含有させた試験体を用いて、ランプにより蓄熱させることで、色の影響を含んだ蓄熱状況を再現することができる。
【0018】
次に、他の実施形態に係る蓄熱試験装置および蓄熱試験方法について図3および図4を参照して説明する。
図3は、他の試験体保持台の構成を示す図である。図3に示す試験体保持台20は、試験体Tの一端部を上下から挟み込んで固定する挟持部21を備えている。試験体保持台20は、挟持部21により試験体Tの端部を挟み込むことで、試験体Tを片持ち式に支持することができる。このように、試験体Tを片持ち式に支持することにより、試験体Tの自由端が蓄熱による影響でたわみ易くなり、試験体Tのたわみ量を容易に測定することができる。
【0019】
図4は、他の蓄熱試験方法を行うための蓄熱試験装置の一部の構成を示す図である。図4に示す試験体保持台は、図1に示す試験体保持台と同様に、離間した一対の試験体保持台30がそれぞれ、平面状の試験体Tの両端部を保持している。本実施形態に係る蓄熱試験方法では、一対の試験体保持台30に保持された試験体Tの中央上部に錘31を載せて、荷重をかけながら、ランプ13を発光させ、試験体Tの表面温度およびたわみ量の測定を開始する。このように、試験体Tに荷重をかけた状態で表面温度およびたわみ量の測定を行うことで、荷重の影響を入れた試験体Tの変形を評価することができる。
【0020】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
例えば、上述した実施形態では、試験体を評価する場合について説明したが、この場合に限られず、実際の製品に用いる樹脂材料または樹脂部品を直接、蓄熱試験装置により評価してもよい。
上述した実施形態では、着色した試験体や光輝材を含有させた試験体を試験する場合について説明したが、この場合に限られず、塗装した試験体等、加飾部品に対しても同様に試験することができる。
【符号の説明】
【0021】
1:蓄熱試験装置 10:試験台 11:試験体保持台 12:ランプ保持台 13:ランプ 14:風防壁 15:温度センサ 20:試験体保持台 21:挟持部 30:試験体保持台 31:錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体の耐熱性を評価するための蓄熱試験装置であって、
前記試験体から離間した位置に配置され前記試験体に対して光を照射すると共に前記試験体に対して放熱する熱源と、
前記試験体の温度を測定する温度センサとを備えたことを特徴とする蓄熱試験装置。
【請求項2】
前記熱源は、フォトリフレクタランプであることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱試験装置。
【請求項3】
前記試験体のたわみ量を測定する距離計を更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱試験装置。
【請求項4】
前記試験体を保持する試験体保持台を更に備え、
前記試験体保持台は、前記試験体の両端を保持することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の蓄熱試験装置。
【請求項5】
前記試験体を保持する試験体保持台を更に備え、
前記試験体保持台は、前記試験体を片持ち式に保持することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の蓄熱試験装置。
【請求項6】
試験体の耐熱性を評価するための蓄熱試験方法であって、
前記試験体から離間した位置に配置された熱源により前記試験体に対して光を照射すると共に放熱する手順と、
前記試験体の温度を温度センサにより測定する手順とを有することを特徴とする蓄熱試験方法。
【請求項7】
前記試験体のたわみ量を測定する手順を更に有することを特徴とする請求項6に記載の蓄熱試験方法。
【請求項8】
前記試験体のたわみ量を測定する手順では、前記試験体に錘を載せた状態のたわみ量を測定することを特徴とする請求項7に記載の蓄熱試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−2539(P2012−2539A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135275(P2010−135275)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】