説明

蓄電池への太陽電池電力の充放電制御方法

【課題】太陽電池の電力を充放電する蓄電池に対して当該充放電をシステム構成を複雑高価にすることなく制御できるようにする。
【解決手段】太陽電池1と、太陽電池1の直流電力を交流電力に変換して負荷に出力するパワーコンディショナ3と、を含む電力システムにおいて、太陽電池1の電力を充放電する蓄電池9に対して当該充放電制御を行う方法であって、パワーコンディショナ3内のDCバスライン3cと蓄電池9との間に双方向DC/DCコンバータ7を介装し、DCバスライン3cにおけるライン電圧を監視し、前記監視するライン電圧の変化に応じて双方向DC/DCコンバータ7によりライン電圧をDC/DC変換して蓄電池9への充電と、蓄電池9の充電電圧をDC/DC変換してDCバスライン3cへの放電と、を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の電力を充放電する蓄電池に対して当該充放電を制御する方法に関するものであにる。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から環境への影響の少ない太陽光発電システムの開発が盛んに進められている。
【0003】
この太陽光発電システムでは、太陽電池によって発電した直流電力を、DC/DCコンバータおよびインバータを備えた電力変換装置であるパワーコンディショナによって、商用周波数の交流電力に変換し、商用電力系統と連系して負荷に供給するとともに、余剰電力を商用電力系統に逆潮流することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような系統連系する太陽光発電システムに対して、系統連系を行わない太陽光発電システムがある。このタイプの太陽光発電システムでは、昼間時等における太陽電池の発電電力のうち余剰の電力を売電のために逆潮流をさせることができないので、その余剰電力を蓄電池に充電し、太陽電池の発電電力が不足する夜間などで蓄電池に蓄積したその余剰電力を負荷側に放電させて利用することが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−161032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の太陽光発電システムでは、太陽電池の発電電力や負荷の消費電力が常に変動するので、電流センサや電圧センサによって太陽電池の発電量や負荷での消費電力量を検出し全体を制御するコントローラによって蓄電池の充放電を制御する必要があり、このような制御では太陽光発電システム全体の構成を複雑にしてしまうと共に設備コストが大幅に増大してしまうなどの課題がある。
【0007】
そこで本発明においては、前記蓄電池への充放電を簡易低廉に制御することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による蓄電池への充放電制御方法は、太陽電池と、前記太陽電池の直流電力を交流電力に変換して負荷に出力するパワーコンディショナと、を含む電力システムにおいて、前記太陽電池の電力を蓄電池に対して充放電制御する方法であって、前記パワーコンディショナ内のDCバスラインと前記蓄電池との間に双方向DC/DCコンバータを介装し、前記DCバスラインにおけるライン電圧を監視し、前記監視するライン電圧の変化に応じて前記双方向DC/DCコンバータによりライン電圧をDC/DC変換して前記蓄電池への充電と、前記蓄電池の充電電圧をDC/DC変換して前記DCバスラインへの放電と、を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明において、好ましい態様は、前記双方向DC/DCコンバータを、前記DCバスラインと前記蓄電池一方の極への接続部との間に直列接続された第1、第2スイッチング素子と、前記第1、第2スイッチング素子それぞれに逆並列接続された第1、第2ダイオードと、前記両スイッチング素子の共通接続部と前記蓄電池の他方の極への接続部との間に直列接続される昇降圧コイルと、を含み、前記蓄電池への充電経路を少なくとも前記第1スイッチング素子と前記昇降圧コイルと前記第2ダイオードとで形成し、前記蓄電池からの放電経路を少なくとも前記昇降圧コイルと前記第2スイッチング素子と前記第1ダイオードとで形成することである。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記蓄電池への充電に際しては、前記DCバスライン、前記第1スイッチング素子、前記昇降圧コイルおよび前記蓄電池の第1充電経路でライン電圧を降圧して前記蓄電池を充電し、次いで、前記昇降圧コイルに蓄積のエネルギを前記昇降圧コイル、前記蓄電池、前記第2ダイオードの第2充電経路で充電する一方、前記蓄電池からの放電に際しては、前記蓄電池、前記昇降圧コイル、前記第2スイッチング素子の第1放電経路で昇降圧コイルにエネルギを蓄積し、前記蓄電池、前記昇降圧コイル、前記第1ダイオードの第2放電経路で蓄電池電圧を昇圧して放電する、ことである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の充放電制御方法においては、ライン電圧を監視するのみで蓄電池への充放電制御ができるようになり、太陽光発電システム全体の構成を複雑にすることなく、蓄電池に対して充放電制御を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る充放電制御方法が実施される太陽光発電システムの概略構成図である。
【図2】図2は、図1の太陽光発電システム内の双方向DC/DCコンバータの回路構成図である。
【図3】図3は、前記双方向DC/DCコンバータを用いた蓄電池への充電動作の説明に用いる図である。
【図4】図4は、前記双方向DC/DCコンバータを用いた蓄電池からの放電動作の説明に用いる図である。
【図5】図5は、前記双方向DC/DCコンバータの充電経路と放電経路とに対する各スイッチング素子のオンオフ関係を示す図である。
【図6】図6は、横軸に時間、縦軸にライン電圧をとり、ライン電圧変化に対する蓄電池の充放電動作の説明に用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態にかかる蓄電池への充放電制御方法を詳細に説明する。
【0014】
図1に上記充放電制御方法が実施される太陽光発電システムの概略構成を示す。図1を参照して、実施形態の太陽光発電システムは、太陽電池1と、パワーコンディショナ3と、負荷5と、双方向DC/DCコンバータ7と、蓄電池9と、を含む電力システムである。
【0015】
パワーコンディショナ3は、太陽電池1の直流電力を交流電力に変換して負荷5に出力するものであり、DC/DCコンバータ3aと、DC/ACインバータ3bとを含む。DC/DCコンバータ3aとDC/ACインバータ3bとはDCバスライン3cで接続されている。DC/DCコンバータ3aは、太陽電池1の直流出力を昇圧してDCバスライン3cにライン電圧として出力する。DC/ACインバータ3bは、DC/DCコンバータ3a出力を交流電力に変換して各種交流の負荷5に供給する。
【0016】
双方向DC/DCコンバータ7は、パワーコンディショナ3と蓄電池9との間に介装され、パワーコンディショナ3のDCバスライン3cから供給される直流のライン電圧を降圧側にDC/DC変換して蓄電池9に充電する一方、蓄電池9の充電電圧を昇圧側にDC/DC変換してパワーコンディショナ3のDCバスライン3cに供給するDC/DCコンバータである。
【0017】
図2を参照してこの双方向DC/DCコンバータ7は、DCバスライン3cと蓄電池9の一方の極であるマイナス極との間に直列接続された、IGBT等からなる第1、第2スイッチング素子Q1,Q2と、第1、第2スイッチング素子Q1,Q2それぞれに逆並列接続された第1、第2ダイオードD1,D2と、両スイッチング素子Q1,Q2の共通接続部と蓄電池9の他方の極であるプラス極との間に直列接続される昇降圧コイルCL1と、蓄電池9に並列のコンデンサC1と、第1、第2スイッチング素子Q1,Q2に並列接続されたコンデンサC2と、双方向DC/DCコンバータ7を制御する制御部11と、DCバスライン3cにおけるライン電圧を検出する電圧センサ13と、蓄電池9の充電電圧を検出する電圧センサ15と、昇降圧コイルCL1を流れる電流とその向きを検出する電流センサ17と、を含む。
【0018】
以上の構成を有する双方向DC/DCコンバータ7においては、制御部11は、電圧センサ13,15と電流センサ17からのセンサデータに基づいてDCバスライン3cのバスライン電圧V1を監視しての蓄電池9への充放電制御を行う。
【0019】
蓄電池9への充電に際しては、図3で示すようにDCバスライン3c→第1スイッチング素子Q1→昇降圧コイルCL1→蓄電池9の第1充電経路L1でライン電圧を降圧して蓄電池9を充電する。また、昇降圧コイルCL1に蓄積のエネルギを同図3で示すように昇降圧コイルCL1→蓄電池9(コンデンサC1も含む)→第2ダイオードD2の第2充電経路L2で充電する。
【0020】
また、蓄電池9からの放電に際しては、図4で示すように蓄電池9→昇降圧コイルCL1→第2スイッチング素子Q2の第1放電経路L3で昇降圧コイルCL1にエネルギを蓄積する。また、同図4で示すように蓄電池9→昇降圧コイルCL1→第1ダイオードD1の第2放電経路L4で蓄電池電圧を昇圧して放電する。
【0021】
以上の第1、第2充電経路L1,L2と、第1、第2放電経路L3,L4に関して第1、第2スイッチング素子Q1,Q2のオンオフは図5で示すように、第1充電経路L1は、第1スイッチング素子Q1がオン(○印)、第2スイッチング素子Q2がオフ(×印)であり、第2充電経路L2は、第1、第2スイッチング素子Q1,Q2が共にオフであり、第1放電経路L1は、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオンであり、第2充電経路L2は、第1、第2スイッチング素子Q1,Q2が共にオフである。
【0022】
次に図6を参照して実施形態の双方向DC/DCコンバータ7による蓄電池9に対する充放電制御動作を説明する。この制御を行う双方向DC/DCコンバータ7内の制御部11は、図示略のCPUとメモリ等で構成されている。メモリにはCPUの上記充放電制御プログラムが格納されている。CPUはこの制御プログラムに従い双方向DC/DCコンバータ7を用いて蓄電池9に対する充放電動作を制御することができるようになっている。図6は横軸に時間、縦軸にライン電圧をとった図であり、ライン電圧変化に対する蓄電池9の充放電動作の説明に用いる。
【0023】
まず、太陽電池1の発電電力が例えば3kWであり、負荷5で例えば1kW消費している場合、2kWの電力が余剰となる。そして、この場合、パワーコンディショナ3でのライン電圧が図6の実線LVで示すように所定電圧380V(この所定電圧はパワーコンディショナ3内のPWM制御により設定される指令電圧値)よりも高い電圧であれば、制御部11にはそのライン電圧のデータが電圧センサ13から与えられる。制御部11は、ライン電圧V1が所定電圧の380V以上であるので第1スイッチング素子Q1をオン、第2スイッチング素子Q2をオフにして図3で示すように第1充電経路L1を形成し、この第1充電経路L1を介して蓄電池9にライン電圧を充電させる制御を行う。ついで、制御部11は、同図3で示すように第1、第2スイッチング素子Q1,Q2を共にオフにして第2充電経路L2を形成し、この第2充電経路L2を介して昇降圧コイルCL1からその蓄積エネルギを放出させ、この蓄積エネルギを蓄電池9に充電させる制御を行う。
【0024】
こうして蓄電池9に充電させると、ライン電圧が図6で示すように低下してくる。この場合、制御部11においては、ライン電圧が所定電圧である前記385Vを中心にして一定電圧例えば±5Vの電圧範囲で蓄電池9を充放電させることでライン電圧を前記385Vを含む±5Vの電圧範囲に制御するようになっている。この電圧範囲の下限値は380Vであり、上限値は390Vである。この上限と下限の値は一例であり、これに限定されない。
【0025】
こうしてライン電圧が、前記一定電圧範囲の下限値である380Vに低下するまでは蓄電池9の充電を継続する。また、ライン電圧が前記下限値の380Vに到達すると、充電動作を停止させると共に図4で示すように第1放電経路L3、第2放電経路L4を形成して放電動作を開始させる。
【0026】
こうして上記放電でライン電圧が一定電圧範囲の上限値の390Vに上昇するまでは蓄電池9の放電を継続し、ライン電圧が上記上限値390Vに到達すると放電動作を停止して充電動作を開始する。
【0027】
以上の蓄電池9に対する充放電動作によりライン電圧は所定電圧の385Vを中心に一定電圧の±5Vの電圧範囲で制御しつつ、蓄電池9は、昼間時等における太陽電池1の発電電力のうち余剰電力を充電し、太陽電池1の発電電力が夜間や雨天、曇天、日陰等で日照不足して低下すると、上記蓄電池9の蓄積電圧をDCバスライン3cに放電し、その放電した電力を負荷5側で利用することができるようになっている。
【0028】
なお、実施形態では、双方向DC/DCコンバータ7と充電電池9とのセットは1セットで示したが、本発明では、この1セットの例に限定されるものではなく、このセットを複数セットで実施することも含む。
【0029】
また、前記385Vは指令電圧値としてパワーコンディショナ3内部の図示略の制御部で設定してあり、パワーコンディショナ3におけるPWM制御で図6のS1,S2で示すようにDC/DCコンバータ3aから出力されるライン電圧は385V近傍に制御される。そして、ライン電圧が390V以上である領域S1以前の電圧値から立ち下がって385V近傍領域S1にPWM制御されるが、その太陽電池1出力低下等でライン電圧が385Vより電圧が低下して380Vに達するまでは、蓄電池9が充電制御される。そして、380Vに低下すると、蓄電池9が放電制御されてライン電圧が上昇して指令電圧385Vに達すると、その385V近傍領域S2でPWM制御される。そして、ライン電圧が385Vより電圧が上昇して390Vに達するまでは蓄電池9の放電は継続され、ライン電圧が390Vに達すると、蓄電池9は放電から充電に反転制御される。
【0030】
以上説明したように本実施の形態では、太陽電池1と、太陽電池1の直流電力を交流電力に変換して負荷に出力するパワーコンディショナ3と、を含む電力システムにおいて、太陽電池1の電力を充放電する蓄電池9に対して当該充放電制御を行う方法であって、パワーコンディショナ3内のDCバスライン3cと蓄電池9との間に双方向DC/DCコンバータ7を介装し、DCバスライン3cにおけるライン電圧を監視し、前記監視するライン電圧の変化に応じて双方向DC/DCコンバータ7によりライン電圧をDC/DC変換して蓄電池9への充電と、蓄電池9の充電電圧をDC/DC変換してDCバスライン3cへの放電と、を制御するようにしたので、蓄電池9に対して太陽電池1の電力の充放電制御をシステム構成を複雑高価にすることなく実施することができるようになる。
【符号の説明】
【0031】
1 太陽電池
3 パワーコンディショナ
3a DC/DCコンバータ
3b DC/ACインバータ
5 負荷
7 双方向DC/DCコンバータ
Q1,Q2 第1、第2スイッチング素子
CL1 昇降圧コイル
9 蓄電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、前記太陽電池の直流電力を交流電力に変換して負荷に出力するパワーコンディショナと、を含む電力システムにおいて、前記太陽電池の電力を蓄電池に対して充放電制御する方法であって、
前記パワーコンディショナ内のDCバスラインと前記蓄電池との間に双方向DC/DCコンバータを介装し、
前記DCバスラインにおけるライン電圧を監視し、
前記監視するライン電圧の変化に応じて前記双方向DC/DCコンバータによりライン電圧をDC/DC変換して前記蓄電池への充電と、前記蓄電池の充電電圧をDC/DC変換して前記DCバスラインへの放電と、を制御することを特徴とする充放電制御方法。
【請求項2】
前記双方向DC/DCコンバータは、
前記DCバスラインと前記蓄電池一方の極への接続部との間に直列接続された第1、第2スイッチング素子と、
前記第1、第2スイッチング素子それぞれに逆並列接続された第1、第2ダイオードと、
前記両スイッチング素子の共通接続部と前記蓄電池の他方の極への接続部との間に直列接続される昇降圧コイルと、
を含み、
前記蓄電池への充電経路を少なくとも前記第1スイッチング素子と前記昇降圧コイルと前記第2ダイオードとで形成し、
前記蓄電池からの放電経路を少なくとも前記昇降圧コイルと前記第2スイッチング素子と前記第1ダイオードとで形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−161189(P2012−161189A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20114(P2011−20114)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】