説明

蓄電池併設型自然エネルギー発電システムに用いる電力管理制御システム

【課題】蓄電池併設型の自然エネルギー発電システムにおいて、実用性の高い電力管理制御システムを提供する。
【解決手段】風車発電装置1と蓄電池17とを1つの発電所内に備え、風車発電装置1からの発電電力と蓄電池17から供給すべき電力とを合わせて電力ネットワーク27へ供給するようになされた発電システムにおいて、風車発電装置1における発電量予測データに基づいて演算される送電計画と、蓄電池17の蓄電量に応じて決まる単位時間当たりの充電可能電力の大小とに基づいて風車発電装置1の発電電力を制御することにより、電力会社が定める技術要件を満足する制御型に従って、1つの発電所での送電計画を作成して風車発電装置1の発電電力の制御および蓄電池17の充放電の制御を行うことによって、電力ネットワーク27への送電を実用的に適切な形で制御することができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池併設型自然エネルギー発電システムに用いる電力管理制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギー発電は、自然エネルギーを原動力として発電するため、気象条件により発電出力が大きく変動し、電力ネットワーク(系統)に連系して送電するには限界がある。例えば風力発電の場合、自然風力を原動力として発電するため、風速などの変動に応じて発電出力が変動する。このため、風力発電により得られた電力を電力会社の電力ネットワークにそのまま連系して送電することが難しくなっている。
【0003】
そこで、風力発電所に複数の蓄電池からなる蓄電設備を併設し、風速などの自然条件によって随時変動する発電出力を蓄電池に充電したり蓄電池から放電させたりすることにより、出力を安定化して電力ネットワークへ送電する事例が多くなりつつある(例えば、特許文献1参照)。また、風力発電により得られた電力を電力需要の少ない夜間に蓄えて、電力需要の多い昼間帯において電力ネットワークに連系して送電する事例も多くなりつつある。
【0004】
上記特許文献1では、複数のウィンドファームを備えた風力発電システムを統括的に制御する方法について開示している。具体的には、ウィンドファームでの総発電出力が計画出力を超えて余剰が生じたときには、蓄電池を備えた第2種ウィンドファーム内の蓄電池に余剰電力を充電する。更に余剰がある場合には、複数の風力発電装置を有する第1種ウィンドファームへ出力ダウン指示を出力し、複数基あるうちの数基を停止または解列させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3981690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、日本国内における電力取引は、受渡の前日およびそれ以前に送電計画を確定する必要がある(例えば、日本卸電力取引所など)。そのため、事前に送電計画が確定しない電力は、余剰電力として安価に取引され、送電計画に対し不足が発生した場合には、高価な補給電力を受ける仕組みとなっている。
【0007】
ウィンドファーム(風力発電所)を電力ネットワークに連系するためには、そのウィンドファームが存在するエリアの電力会社が定める技術要件を満足する必要がある。この技術要件は3つの制御型(一定出力、変動緩和、フリー)に分かれており、それぞれの制御型で連系への募集が行われている。現状では、複数のウィンドファームを統括して制御するという型はなく、このような制御型での連系の申込みは行うことができない。
【0008】
さらに、電力系統利用協議会ルールによれば、計画運転のできないウィンドファームは、エリア外への電力供給が認められていない。そのため、複数のウィンドファームを有する風力発電システムの場合、トータルの送電計画だけでなく、個々のウィンドファームごとの送電計画を作成する必要がある。すなわち、個々のウィンドファームが、計画運転できる発電所でなければならない。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、複数のウィンドファームを統括して制御することに関するものであり、個々のウィンドファームごとに送電計画を作成して運転するものではない。したがって、特許文献1の技術は、現在の日本国内における電力取引では利用することができず、実用性に欠けるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、蓄電池併設型自然エネルギー発電システムにおいて、送電計画に沿って電力ネットワークに電力を供給するために、実用性の高い電力管理制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、自然エネルギー発電装置と蓄電池とを1つの発電所内に備え、自然エネルギー発電装置からの発電電力と蓄電池から供給すべき電力とを合わせて電力ネットワークへ供給するようになされた発電システムにおいて、自然エネルギー発電装置における発電量予測データに基づいて演算される送電計画と、蓄電池の蓄電量に応じて決まる単位時間当たりの充電可能電力の大小とに基づいて、自然エネルギー発電装置の発電電力を制御するようにしている。具体的には、自然エネルギー発電装置からの発電電力が、(送電計画電力+所内消費電力+充電可能電力)×係数(1以下の値)により求められる発電出力上限目標値より大きくなる場合に、自然エネルギー発電装置の発電電力を抑制するように制御する。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、1つの発電所内に設置された自然エネルギー発電装置の発電量予測データに基づいて当該発電所での送電計画が演算され、その送電計画に基づいて蓄電池の充放電の制御および自然エネルギー発電装置の発電電力の制御が行われることにより、送電計画に沿って電力が電力ネットワークに供給されるようになる。このため、電力会社が定める技術要件を満足する制御型に従って、1つの発電所での送電計画を作成して電力ネットワークへの送電を制御することができ、電力ネットワークへの電力供給の制御を実用的に適切な形で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態による蓄電池併設型自然エネルギー発電システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】本実施形態による蓄電池の充放電制御に関する例を示す図である。
【図3】本実施形態による風車発電装置の構成例を示す図であり、(a)は風車を側方から観察した断面図、(b)は風車の簡単な構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本実施形態による電力管理処理の主要な流れを示すフローチャートである。
【図5】電力の入出力の関係を示す図であり、(a)は概略的なシステム構成図、(b)は風車群の発電電力と蓄電池における充放電電力と送電電力との時間変化の一例を示す図である。
【図6】蓄電池が充電末に近い状態における動作例を示す図であり、(a)は電力の流れを示す図、(b)〜(e)は送電・発電と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による蓄電池併設型自然エネルギー発電システムにおける電力管理制御システムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態による蓄電池併設型自然エネルギー発電システムの例として風力発電システムAの構成例を示す機能ブロック図である。図1に示す風力発電システムAは、1つの発電所(ウィンドファーム)における発電システムを示すものであり、当該ウィンドファーム内に設置された風車群Bにより発電された電力を電力ネットワーク27に対して供給する際の電力管理制御システムを含んでいる。
【0015】
図1に示すように、風車群Bは、複数の風車発電装置1を備えており、光ケーブルネットワーク3を介して風車群制御装置5と接続されている。ここでは複数の風車発電装置1を備える例を挙げているが、風車発電装置1は1つであっても良い。風車群制御装置5は、風車群Bを制御するものであり、風車群制御装置5から風車群Bに対して、各風車発電装置1の発電出力上限目標候補値および制限解除指令S7,S8が送信される。逆に、風車群Bから風車群制御装置5に対して、各風車発電装置1の発電出力値S9,S10が送信される。風車群Bにおいて発電された電力は、一部が負荷35によって消費されるが、大部分が配線31,33を介して蓄電池17と電力ネットワーク27とに送電されるようになっている。
【0016】
また、風車群制御装置5は、電力監視制御装置11との間で、風車群Bの発電出力上限目標候補値S11と、風車群Bでの発電出力値、風向、風速、力率、無効電力などの詳細なデータS12とをやり取りする。電力監視制御装置11は、風車群制御装置5からデータS12として供給される風速と、各風車発電装置1機器特性とに基づいて、風車群Bでの発電可能電力を算出する。電力監視制御装置11は、風力発電システムAの主制御部であって、外部の発電予測システム37および送電計画演算置41とも連携している。
【0017】
発電予測システム37は、変動する自然条件に基づいて、複数の風力発電装置1におけるそれぞれの単位時間(例えば1時間)ごとの発電量を予測する。すなわち、発電予測システム37は、電力監視制御装置11より送られてくるデータS2(例えば気象データ、地形情報、風車発電装置1の立地条件、風車発電装置1の性能曲線、入力部7から入力される風車発電装置1の稼働情報データなど)を用いて発電量予測を行う。そして、生成した発電量予測データS1を電力監視制御装置11に送信する。
【0018】
電力監視制御装置11は、送電計画演算装置41に対してデータS3(発電量予測データS1および蓄電量データS14)を送り、送電計画演算装置41から送電計画S5を受け取る。また、電力監視制御装置11は、蓄電池17の制御を行う蓄電池制御装置15を介して、蓄電池17のデータ(蓄電量、稼働情報、充電可能電力)S14,S16をリアルタイムに受け取り、蓄電池17へ充放電指令S13,S15を送信する。蓄電池制御装置15は、変圧器23と交直変換装置21との間に接続されたメータ26から蓄電池17の充放電量S17を入力し、蓄電池17の稼動情報と合わせて現在の蓄電量および充電可能電力を演算することができるようになっている。
【0019】
ここで、蓄電池17の蓄電量および充電可能電力について説明する。蓄電量は、蓄電池17に対して実際に蓄電されている電力量を示す。例えば、蓄電池17の全容量が20,000kWh(例えば、単位時間当たり2,000kWの電力を10時間蓄積できるという定格とする)である場合、その全容量の半分まで蓄電されているとき、蓄電量は10,000kWhということになる。
【0020】
また、充電可能電力は、蓄電池17に対して充電可能な単位時間当たりの電力(瞬時値)を示す。上述の例で言えば、2,000kWが充電可能電力ということになる。蓄電池17の全容量が同じ20,000kWhであっても、定格が異なれば、充電可能電力も異なる。例えば、単位時間当たり1,000kWの電力を20時間蓄積できるという定格の場合には、充電可能電力は1,000kWということになる。
【0021】
この充電可能電力は、蓄電池17の蓄電量に応じて変動する。具体的には、蓄電池17が充電末近くまで充電されてくると、充電可能電力は定格よりも小さく設定される。例えば、定格で充電可能電力が2,000kWの場合、蓄電量が90%未満のときは定格通りに充電可能電力は2,000kWに設定されている。これに対し、蓄電量が90%以上95%未満になると、充電可能電力は例えば1,000kWに下げられる。さらに、蓄電量が95%以上100%未満になると充電可能電力は例えば500kWに下げられ、蓄電池17が満充電になると充電可能電力は0kWとなる。
【0022】
このように充電可能電力を可変とするのは、蓄電池17に充電可能な残容量(マージン)が少ない状態になると、風力の大きな変動に対応できなくなるケースがあるからである。すなわち、充電末に近づくほど充電可能電力を小さくすることにより、蓄電池17への充電が行われにくくなるようにして、蓄電池17における充電のマージンを確保しやすくしている。
【0023】
蓄電池17は、風車発電装置1で発電した電力の一部を、配線31、変圧器23および交直変換装置21を介して充電する。また、蓄電池17は、充電されている電力の一部を放電して、交直変換装置21、変圧器23および配線33を介して電力ネットワーク27に供給する。変圧器23と電力ネットワーク27との間の配線33には、電力を計測するメータ25が接続されており、メータ25から電力監視制御装置11に対して送電量S18が送られる。また、変圧器23と交直変換装置21との間に接続されたメータ26から蓄電池制御装置15に対して充放電量S17が送られ、風車群Bと変圧器23との間の配線31に接続されたメータ28から電力監視制御装置11に対して実際の発電電力S19が送られる。
【0024】
なお、この風力発電システムAのオペレータは、蓄電池17の蓄電量と変動する自然条件に基づいて予測される風車群Bの発電電力とにより設定した発電出力上限目標候補値S6を入力部7から入力することができる。
【0025】
図2は、蓄電池17の充放電制御に関する例を示す図である。電力監視制御装置11は、蓄電池制御装置15により演算された充電可能電力と、送電計画演算装置41により演算された送電計画値S5と、メータ28で計測された発電電力S19とに基づいて、充放電指令S13,S15を生成して蓄電池17へ送信する。
【0026】
基本的には、電力監視制御装置11は、図2(a)に示すように、風車群Bの発電電力S19が送電計画値S5を上回っている場合には、当該上回った分を蓄電池17に充電するよう制御する。一方、風車群Bの発電電力S19が送電計画値S5を下回っている場合には、当該下回った分を蓄電池17から放電するよう制御する。
【0027】
蓄電池制御装置15は、図2(b)に示すように、蓄電池17の蓄電量に基づいて充電可能電力を可変制御する。すなわち、蓄電池17に充電をした結果、蓄電池17の蓄電量が増えてくると、蓄電池制御装置15は充電可能電力を下げるように制御する。一方、蓄電池17から放電をした結果、蓄電池17の蓄電量が減ってくると、蓄電池制御装置15は充電可能電力を上げるように制御する。電力監視制御装置11は、このようにして可変された充電可能電力に基づき単位時間当たりの充電量を制御する。
【0028】
次に、風力発電装置1の構成について、図3を参照しながら説明する。図3(a)は、風力発電装置1を側方から観察した断面図である。図3(a)に示すように、台座101上にタワー部が築かれ、タワー部の上部にはヨー角制御駆動装置150が設けられている。さらにその上部には、ヨー角制御駆動装置150の駆動によって水平面内で回転制御されるナセル120が配置されている。風車発電装置1の制御においては、風の向きが変わった場合、ブレード100のプロペラ回転面が常に風を真正面に受けるように制御することが望ましい。このときに変化させるのがヨー角であり、ヨー角の制御をヨー制御という。ヨー角は、ナセル120を水平面内で回転させることで変化させることができる。
【0029】
プロペラ型風車の羽根(翼)部分であるブレード100は、ハブ(ブレード100の取り付け部分)を介して回転軸112に取り付けられ、ブレード100のピッチ角がピッチ角制御駆動装置160の駆動によって制御される。風のエネルギーを有効に活用するためには、風を受けるブレード100の角度を最適な状態にする必要があり、このときのブレード100の角度をピッチ角(ブレードアングル)という。上述のプロペラ回転面は、ブレード100が配置された回転軸112に対して垂直な面である。
【0030】
ナセル120の内部には、回転軸112に繋がれた発電機130、増幅器(図示せず)などが格納されている。ナセル120の上部には、風向風速検出用光学系部210が配置されている。本体部200は、風向風速を算出するためのデータを風向風速検出用光学系部210から取り出して加工する。
【0031】
本体部200で得られた風向風速データは、通信系を介して風向風速計信号処理部(以下、信号処理部とする)220に送られる。信号処理部220は、風向風速データに基づいて、風車に向かってくる風、すなわち近未来(数秒から数十秒後)に発電に利用する風の状況(風向風速および風の到達時間など)を予測し、これを風況予測データとして出力する。主に本体部200と風向風速検出用光学系部210と信号処理部220とによってレーザ式風向風速計が構成される。
【0032】
この信号処理部220が算出した風況予測データは、通信系を介してコントローラ140に送信される。コントローラ140は、与えられた風況予測データを基に、ヨー角制御駆動装置150やピッチ角制御駆動装置160に通信系170,175を介して指令を与える。この指令に応じて、ヨー角制御駆動装置150がヨー角を変化させ、ピッチ角制御駆動装置160がピッチ角を変化させることにより、発電機130の高効率運転、すなわち風力エネルギーの高効率利用を可能にする。また、コントローラ140は、現在のヨー角、ピッチ角、風車軸回転数(回転数または回転速度)を常にスキャニングして把握している。
【0033】
さらに、発電機130に繋がれた電力ケーブル(配線)31は、電力出力端となる電力ネットワーク27に変圧器23を介して接続されている。電力ケーブル31と電力ネットワーク27の間には、蓄電池17が、交直変換装置21、変圧器23を介して接続されている。
【0034】
風車の回転数は、固定もしくは段階的にのみ変化可能なものか、あるいは定められた範囲内で連続的に変化可能なものとする。なお、ブレード100は風を受けて風力エネルギーを回転力に変換するものであり、このブレード100の回転エネルギーを電力に変換するのが発電機130である。また、コントローラ140もしくは他の制御機構は、ヨー角、風車回転数、現在の風向風速などの風力発電装置1制御に必要な諸量を取り込んで解析し、風力発電装置1の各制御駆動装置(例えば、ブレーキ設備など)にも制御指令を出している。
【0035】
より簡単に構成を示すと、図3(b)に示すように、風車発電装置1は、風車内コントローラ140と、ヨー角制御駆動装置150と、ピッチ角制御駆動装置160(風車ハブ)160とにより構成されている。このような風車発電装置1を用いることで、ブレード100の角度を変更することができ、それにより、同じ風向・風力であっても、発電出力を有る程度制御することができるようになっている。
【0036】
図4は、本実施形態による電力管理処理の主要な流れを示すフローチャートである。図4に示すように、電力管理処理が開始されると(ステップS101:START)、ステップS102において、電力監視制御装置11は、発電出力上限目標候補値の演算の自動・手動の設定を判定する(自動演算であるか否かを判定する)。自動演算でない場合には(ステップS102:NO)、ステップS103に進む。ここで、入力部7から電力監視制御装置11に発電出力上限目標候補値が入力されると、ステップS105に進む。
【0037】
一方、自動演算の場合には(ステップS102:YES)、ステップS104に進み、電力監視制御装置11において、発電出力上限目標候補値を以下の演算式により演算する。
発電出力上限目標候補値=(送電計画電力+所内消費電力+蓄電池充電可能電力)×係数
発電出力上限目標候補値の制御を自動化する場合には、安全性を考慮して、この式のように1以下の係数を乗算するにより、(送電計画電力+所内消費電力+充電可能電力)よりも若干低い値に発電出力上限目標候補値を設定する。
【0038】
次いで、ステップS105において、ステップS103で入力された発電出力上限目標候補値(入力値)またはステップS104で自動演算された発電出力上限目標候補値(演算値)と、発電機定格出力(風車群Bの発電機定格出力合計)とを比較する。すなわち、発電出力上限目標候補値<発電機定格出力であるかどうかを判定する。ここで、ステップS105の比較結果がYESであれば、ステップS106において、発電出力上限目標値=発電出力上限目標候補値のように発電出力上限目標値を設定する。
【0039】
次いで、ステップS107において、ステップS106で設定された発電出力上限目標値に風車群Bの発電電力が近づくように、それぞれの風車発電装置1のブレード100のヨー角やピッチ角を調整し、発電出力を制御する。そして、ステップS108に進み処理を終了する(END)。
【0040】
一方、ステップS105の比較結果がNOの場合は、直接ステップS108に進み処理を終了する(END)。この場合には、蓄電池17において充放電に関する余裕があるため、風車の発電制御処理を行う必要がないためである。
【0041】
なお、風車発電装置1における発電出力値を電力監視制御装置11に送り続けることで、常時変化する風力などに対応して、送電電力管理を継続して行うようにすることもできる。
【0042】
図6に示すように、蓄電池17への充電ができない充電末状態に近い場合であれば、風車群Bにおける発電電力を抑制する。このようにすることにより、電力ネットワーク27への電力供給量を計画通りに維持しながら、蓄電池17への充電を行わないようにして、蓄電池17における充放電のマージンを確保しやすくすることができる。
【0043】
以上のように、発電出力上限目標候補値(入力値または演算値)=(送電計画電力+所内消費電力+蓄電池充電可能電力)×係数<発電機定格出力であるかどうかの判断に基づいて、風車群Bの発電電力について制御を行う必要があるかどうかを決定している。そして、制御を行う必要有りと判断された場合のみ、風車群Bの発電電力を制御する構成としたことにより、蓄電池17の状態に応じて所定の送電電力を電力ネットワーク27に安定して供給することができる。
【0044】
図5(b)は、図5(a)のようなシステムにおいて上述の構成および制御に基づいて得られる風車群Bの発電電力と、蓄電池17における充放電電力と、送電電力との時間変化の一例を示した図である。図5(b)に示すように、風車群Bの発電電力は、1日のうちで風力および風向により大きく変化することが分かる。この変動分を蓄電池17の充放電により吸収し、電力需要の高い時間帯に集中させるなど供給時間帯を自由に設定し、送電計画を工夫して電力ネットワーク27に電力を供給することができる。
【0045】
上記の制御を行わない場合には、蓄電池17の数を多くするか大容量化して、風車群Bの発電電力の大きな変動分を蓄電池17の充放電により吸収できるようにする必要がある。一方、本実施形態による制御を行うことで、発電電力に大きな変動があっても、その変動分を蓄電池17のみでなく風車群Bの発電電力の制御により吸収することができる。これにより、小容量の蓄電池17を用いたり、蓄電池17の数を減らしたりしても、図5(b)に示すように所望の送電電力を得ることができるようになる。
【0046】
以下に、本発明の具体的な実施例について説明する。図6は、蓄電池17が充電できない状態、すなわち、充電末に近い状態における電力の流れ(図6(a))と、送電・発電と時間との関係の例(図6(b)〜(e))とを示す図である。図6(a)に示すように、蓄電池17への充電ができない場合には、風車群Bからの発電電力と蓄電池17からの放電とで電力ネットワーク27へ送電する形態のみに限られる。
【0047】
図6(b)に示す時間に依存しない送電計画値に対して、図6(c)に示すように発電可能電力が送電計画を上回っている時間帯がある。この時間帯では、風車群Bの発電電力を制御しないと、図6(d)に示すように充電が可能な時間だけ蓄電池17への充電が行われるが、その後は蓄電池17への充電ができず、送電計画外の電力が電力ネットワーク27に流れてしまう。本実施形態によれば、図6(c)に示すように、蓄電池17への充電ができなくなった後は、風車群Bの発電電力を抑制する制御を行うことにより、図6(e)に示すように送電計画通りの送電ができるようになる。
【0048】
なお、蓄電池17が放電できない状態、すなわち放電末に近い状態で、送電計画値に対して発電可能電力が下回っている場合には、風車発電装置1の発電電力量を抑制する制御を行っていればその抑制を解除する方向に制御を行う。
【0049】
以上に詳しく説明したように、本実施形態による電力管理制御システムでは、発電予測機能と発電制御機能とを併せて組み込んでいる。これにより、送電量を事前に確定する取引において、風車発電装置1において送電計画電力を超過して発電し、さらに蓄電池17の貯蔵余力がない場合であっても、風車発電装置1の発電電力を抑制して送電計画通りに送電することができる。そのため、発電電力が予測を上回る場合に備えて確保すべき蓄電池17の調整範囲を縮小でき、それによって蓄電池17の小容量化を実現し、蓄電池併設型自然エネルギー発電所の建設促進に貢献することができる。
【0050】
また、本実施形態では、発電予測機能により算出される発電量予測データに基づいて1つのウィンドファームでの送電計画が演算され、その送電計画に基づいて蓄電池17の充放電の制御および風車発電装置1の発電電力の制御が行われることにより、送電計画に沿って電力を電力ネットワーク27に供給することができる。このため、電力会社が定める技術要件を満足する制御型に従って、1つのウィンドファームでの送電計画を作成して電力ネットワーク27への送電を制御することができ、電力ネットワーク27への電力供給の制御を実用的に適切な形で行うことが可能となる。
【0051】
なお、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎない。すなわち、本発明は、添付図面に図示されている構成等に限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では蓄電池17を1つ備える例について説明したが、蓄電池17は複数であっても良い。この場合、蓄電池制御装置15は、メータ26から複数の蓄電池17に関する充放電量S17をそれぞれ入力し、それぞれの蓄電池17について現在の蓄電量および充電可能電力を演算する。そして、複数の蓄電池17についてそれぞれ演算した充電可能電力を全て合計した値を、発電出力上限目標候補値を求める際の演算式における蓄電池充電可能電力として用いる。電力監視制御装置11は、各蓄電池17について算出された充電可能電力に基づいて、各蓄電池17に対する単位時間当たりの充電量をそれぞれ制御する。
【0053】
また、上記実施形態では自然エネルギー発電の一例として風力発電を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、太陽光発電、太陽熱発電、地熱発電、波力発電など他の自然エネルギーを利用した発電システムに適用してもよい。
【0054】
また、本実施形態で説明した機能を実現するためのブログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行することにより、各部の処理を行うようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(オペレーティングシステム)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、コンピュータシステムは、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0055】
また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するものを含むものとする。また、サーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0056】
A 風力発電システム
B 風車群
1 風車発電装置
3 光ネットワークケーブル
5 風車群制御装置
11 電力監視制御装置
15 蓄電池制御装置
17 蓄電池
21 交直変換装置
23 変圧器
27 電力ネットワーク
37 発電予測システム
41 送電計画演算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギー発電装置と上記自然エネルギー発電装置で発電した電力の一部を充放電する蓄電池とを1つの発電所内に備え、上記自然エネルギー発電装置における単位時間ごとの発電量を予測する発電量予測データに基づいて、上記蓄電池の蓄電量を指定された範囲内に維持するように電力ネットワークへの送電計画を演算する送電計画演算手段を備え、上記自然エネルギー発電装置からの発電電力と上記蓄電池から供給すべき電力とを合わせて上記1つの発電所から上記電力ネットワークへ供給する蓄電池併設型自然エネルギー発電システムに用いる電力管理制御システムであって、
上記送電計画に基づいて上記蓄電池の充放電量を制御するとともに、上記送電計画と上記蓄電池の蓄電量に応じて決まる単位時間当たりの充電可能電力の大小とに基づいて、上記自然エネルギー発電装置の発電電力量を制御する電力監視制御装置を備えたことを特徴とする電力管理制御システム。
【請求項2】
上記電力監視制御装置は、(送電計画電力+所内消費電力+充電可能電力)×係数(1以下の値)により求められる発電出力上限目標候補値と、上記自然エネルギー発電装置の定格出力値とを比較し、上記自然エネルギー発電装置の定格出力値の方が上記発電出力上限目標候補値よりも大きい場合に、上記発電出力上限目標候補値を発電出力上限目標値として上記自然エネルギー発電装置の発電電力を制御することを特徴とする請求項1に記載の電力管理制御システム。
【請求項3】
上記自然エネルギー発電装置からの発電電力が上記発電出力上限目標値より大きい場合に、上記自然エネルギー発電装置の発電電力を抑制するように制御することを特徴とする請求項2項に記載の電力管理制御システム。
【請求項4】
上記自然エネルギー発電装置は風力発電装置であり、風車のブレード角度を調整することにより上記発電電力を制御することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電力管理制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−229205(P2011−229205A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93940(P2010−93940)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(503075585)日本風力開発株式会社 (4)
【Fターム(参考)】