蓄電装置
【課題】 液状の熱交換媒体の落下に伴う気泡の発生を抑制して、蓄電素子の温度調節を効率良く行うことができる蓄電装置を提供する。
【解決手段】 複数の蓄電素子(11)と、蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体(30)とを密閉状態で収容し、内部に気体の層(50)を含むケース(20)と、ケース内に配置され、回転動作によって熱交換媒体に流動力を与えるためのファン(41)と、を有する。また、複数の蓄電素子が位置する第1領域(R1)とファンが位置する第2領域(R2)との間で熱交換媒体を循環させ、第1領域からの熱交換媒体をファンに向かって落下させるための仕切り部材(42)と、ケースの側面および仕切り部材の間で、第1領域からの熱交換媒体をファンに導く通路を形成し、熱交換媒体の流れに対して摩擦抵抗を与えるガイド部材(70)と、を有する。
【解決手段】 複数の蓄電素子(11)と、蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体(30)とを密閉状態で収容し、内部に気体の層(50)を含むケース(20)と、ケース内に配置され、回転動作によって熱交換媒体に流動力を与えるためのファン(41)と、を有する。また、複数の蓄電素子が位置する第1領域(R1)とファンが位置する第2領域(R2)との間で熱交換媒体を循環させ、第1領域からの熱交換媒体をファンに向かって落下させるための仕切り部材(42)と、ケースの側面および仕切り部材の間で、第1領域からの熱交換媒体をファンに導く通路を形成し、熱交換媒体の流れに対して摩擦抵抗を与えるガイド部材(70)と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の熱交換媒体を用いて複数の蓄電素子の温度を調節することができる蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電源装置では、ケースの内部(密閉空間)に電源モジュールおよび冷却液を収容することにより、発熱状態の電源モジュールを冷却液で冷却するようにしている。しかも、ケース内に配置されたファンを用いて、冷却液をケース内で循環させることにより、電源モジュールの冷却効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−16205号公報(図1,6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電源装置のように、ケース内の密閉空間を冷却液で満たすようにすることはできるが、この場合には、ケース内に冷却液を充填するための構造や作業が複雑になってしまうおそれがある。また、密閉空間を冷却液で満たすと、温度上昇に伴う冷却液の体積膨張によって、ケースに負荷がかかってしまうおそれがある。
【0005】
一方、特許文献1に記載の構成において、密閉空間の上部に空気層を設けると、ケース内で冷却液を循環させる際に、ファンに対して冷却液が落下する現象が生じることがある。そして、冷却液の落下に伴って気泡が発生することがある。
【0006】
このように気泡が発生してしまうと、ファンの駆動によって冷却液を循環させて、冷却液の液面をケースの上面に接触させることができたとしても、気泡の存在によって、ケースの上面に対する冷却液の接触面積が減少してしまう。この場合には、ケースの上面における放熱性が低下してしまうことがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、液状の熱交換媒体の落下に伴う気泡の発生を抑制して、蓄電素子の温度調節を効率良く行うことができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明である蓄電装置は、複数の蓄電素子と、複数の蓄電素子と、蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体とを密閉状態で収容し、内部に気体の層を含むケースと、ケース内に配置され、回転動作によって熱交換媒体に流動力を与えるためのファンと、を有する。また、複数の蓄電素子が位置する第1領域とファンが位置する第2領域との間で熱交換媒体を循環させ、第1領域からの熱交換媒体をファンに向かって落下させるための仕切り部材と、ケースの側面および仕切り部材の間で、第1領域からの熱交換媒体をファンに導く通路を形成し、熱交換媒体の流れに対して摩擦抵抗を与えるガイド部材と、を有する。
【0009】
ここで、ケースの上面からファンに向かって延びるようにガイド部材を配置し、ガイド部材および仕切り部材の間に、上記通路を形成することができる。この場合において、ファンの駆動による熱交換媒体の流動に応じて、ケースの側面およびガイド部材の間に位置するスペースに気体を移動させることができる。これにより、ケース内の気体を特定のスペースに退避させつつ、ガイド部材および仕切り部材によって形成された通路において、熱交換媒体の落下速度を低下させることができる。
【0010】
また、仕切り部材の上端部からファンに向かって延びるようにガイド部材を配置し、ガイド部材およびケースの側面の間に、上記通路を形成することができる。この場合において、ファンの駆動による熱交換媒体の流動に応じて、ガイド部材および仕切り部材の間に位置するスペースに気体を移動(退避)させることができる。これにより、ケース内の気体を特定のスペースに退避させつつ、ガイド部材およびケースの側面によって形成された通路において、熱交換媒体の落下速度を低下させることができる。
【0011】
ここで、ガイド部材の外縁部を用いて、ガイド部材および仕切り部材の間に位置するスペースに気体を導くための導入口を形成することができる。このように構成すれば、ガイド部材によって熱交換媒体に与えられる摩擦抵抗を確保しつつ、気体を上記スペースに容易に導くことができる。
【0012】
一方、ファンが非駆動状態にある場合において、気体の層の体積を、ファンの上方に位置してファンに取り込まれる熱交換媒体の体積よりも小さくすることができる。このように構成すれば、ファンを駆動した際に、熱交換媒体の液面をケースの上面に容易に接触させることができる。そして、ケースの上面を介した熱伝達を効率良く行うことができる。ここで、ケースの外部に配置されたダクトを用いることにより、ケースの上面(外面)に対して、蓄電素子の温度調節に用いられる気体を接触させることができる。これにより、ケースの上面を介した温度調節を効率良く行うことができる。
【0013】
蓄電素子としては、長手方向と直交する断面の形状が略円形に形成された蓄電素子、いわゆる円筒形の蓄電素子を用いることができる。そして、各蓄電素子の長手方向とファンの回転軸方向とが略平行となるように、複数の蓄電素子を配置することができる。このように構成することにより、ファンから送り出された熱交換媒体を各蓄電素子に効率良く接触させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、熱交換媒体をファンに向かって落下させながら、ケース内で熱交換媒体を循環させる構成において、ファンに向かう熱交換媒体の流れに対して、ガイド部材を用いて摩擦抵抗を与えている。これにより、熱交換媒体の落下速度を低下させることができ、熱交換媒体の落下に伴う気泡の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1である電池パックの構成を示す分解図である。
【図2】実施例1における撹拌ユニットの構成を示す外観図である。
【図3】実施例1の電池パックにおいて、熱交換媒体の主な流れを示す図である。
【図4】実施例1において、静止状態にある電池パックの内部構造を示す断面図である。
【図5】実施例1において、ファンを駆動したときの電池パックの内部構造を示す断面図である。
【図6】実施例1において、電池パックの上面を用いた温度調節の構造を示す概略図である。
【図7】実施例1である電池パックの内部における一部の構造を示す断面図である。
【図8】図7に示す構造をアッパーケースの側から見たときの概略図である。
【図9】実施例1において、熱交換媒体の流動状態を示す概略図である。
【図10】実施例1の変形例である電池パックの内部における一部の構造を示す概略図である。
【図11】本発明の実施例2である電池パックの内部における一部の構造を示す断面図である。
【図12】図11に示す構造をアッパーケースの側から見たときの概略図である。
【図13】実施例2において、ファンに向かう熱交換媒体の流れと、ファンの回転動作との関係を示す図である。
【図14】実施例2の変形例である電池パックの内部における一部の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1である電池パック(蓄電装置)の構成について、図1を用いて説明する。ここで、図1は、本実施例の電池パックの構成を示す分解図である。本実施例の電池パック1は、車両に搭載することができ、この車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車とは、車両の走行に用いられるエネルギを出力する動力源として、内燃機関や燃料電池の他に、電池パック1を備えた車両である。電気自動車とは、車両の動力源として、電池パック1だけを備えた車両である。
【0018】
本実施例の電池パック1は、電池モジュール10と、電池モジュール10を収容するパックケース20とを有している。パックケース20は、電池モジュール10を収容するための空間を形成するロアーケース21と、ロアーケース21の開口部21aを覆うアッパーケース22とを有している。アッパーケース22は、ロアーケース21に対して、ネジ等の締結部材によって固定されたり、溶接によって固定されたりする。そして、パックケース20の内部は、密閉状態となっている。ロアーケース21およびアッパーケース22は、熱伝導性や耐食性等に優れた材料、例えば、アルミニウムや鉄等といった金属で形成することができる。
【0019】
パックケース20の内部には、電池モジュール10の他に、電池モジュール10との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体30が収容されている。熱交換媒体30は、後述するように、電池モジュール10(単電池11)の温度を調節するために用いられる。熱交換媒体30の液面は、アッパーケース22の内壁面から離れており、熱交換媒体30の液面とアッパーケース22の内壁面との間には、空気層が形成されている。なお、空気層の代わりに、空気以外の気体の層を形成することもできる。
【0020】
熱交換媒体30としては、絶縁性を有する液体を用いることが好ましく、例えば、絶縁油、シリコーンオイル、フッ素系不活性液体、脂肪酸エステルを用いることができる。フッ素系不活性液体としては、例えば、スリーエム社製のフロリナート、Novec HFE(hydrofluoroether)、Novec1230を用いることができる。また、脂肪酸エステルとしては、例えば、カプリル酸2−エチルヘキシルを用いることができる。
【0021】
次に、電池モジュール10の構成について、具体的に説明する。
【0022】
電池モジュール10は、電気的に直列に接続された複数の単電池(蓄電素子)11を有している。単電池11としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。本実施例では、単電池11として、長手方向と直交する断面の形状が略円形に形成された電池(いわゆる円筒形の電池)を用いている。そして、単電池11の長手方向における両端部には、正極端子(電極端子)11aおよび負極端子(電極端子)11bがそれぞれ設けられている。
【0023】
各単電池11は、両端部において、板状に形成された一対の電池ホルダ12によって支持されている。ここで、電池モジュール10を構成する複数の単電池11は、長手方向における両端部のそれぞれが同一面内に位置するように、並んで配置されている。また、隣り合って配置された2つの単電池11の間には、熱交換媒体30を流動させるためのスペースが設けられている。電池ホルダ12は、パックケース20に固定されており、樹脂等によって形成することができる。なお、本実施例では、一対の電池ホルダ12を用いて、複数の単電池11を支持しているが、これに限るものではなく、一対の電池ホルダ12を一体として構成することもできる。
【0024】
各電池ホルダ12には、電極端子11a,11bを貫通させるための穴部(不図示)が形成されており、電極端子11a,11bは、電池ホルダ12の穴部を貫通した状態で、バスバー13に接続されている。具体的には、各単電池11の正極端子11aは、隣り合って配置された他の単電池11の負極端子11bと、バスバー13を介して電気的に接続されている。また、電極端子11a,11bの先端部には、ネジ部が形成されており、ネジ部は、バスバー13に形成された穴部(不図示)を貫通した状態でナット14と係合している。これにより、バスバー13を電極端子11a,11bに固定することができる。
【0025】
単電池11は、発電要素(不図示)と、発電要素を収容する電池ケースとを有している。発電要素とは、充放電を行うことができる要素であり、例えば、正極素子と、負極素子と、正極素子および負極素子の間に配置された電解液を含むセパレータとで構成することができる。正極素子とは、集電板の表面に正極活物質の層が形成されたものであり、負極素子とは、集電板の表面に負極活物質の層が形成されたものである。発電要素の正極素子は、正極端子11aと電気的および機械的に接続されており、発電要素の負極素子は、負極端子11bと電気的および機械的に接続されている。
【0026】
電池モジュール10の総プラス端子および総マイナス端子には、電池モジュール11の充放電を行うための高圧ケーブル(総プラスケーブルおよび総マイナスケーブル)が接続されている。これらの高圧ケーブルは、パックケース20を貫通して、パックケース20の外部に配置された機器に接続されている。この機器としては、例えば、電池モジュール10の直流電力を交流電力に変換して、モータに出力するためのインバータがある。そして、モータの駆動によって生成された運動エネルギを用いて、電池パック1が搭載された車両を走行させることができる。ここで、DC/DCコンバータによって、電池モジュール10の出力電圧を昇圧させた状態で、インバータに供給することもできる。
【0027】
一方、電池モジュール10には、撹拌ユニット40が取り付けられている。撹拌ユニット40は、パックケース20内において、熱交換媒体30を流動させるために用いられる。撹拌ユニット40の構造について、図2を用いて説明する。
【0028】
撹拌ユニット40は、ファン(いわゆるクロスフローファン)41を有しており、ファン41は、ファンケース42によって回転可能に支持されている。ファン41は、この長手方向(回転軸方向)が単電池11の長手方向と略平行となるように配置されており、回転軸41aと、回転軸41aの外周面に設けられた複数のブレード41bとを有している。複数のブレード41bは、回転軸41aの周方向において等間隔に配置されており、各ブレード41bは、曲面を有している。ファン41の回転軸方向における各ブレード41bの長さは、単電池11の長手方向における長さと略等しくなっている。なお、各ブレード41bの長さを、単電池11の長さよりも長くすることもできる。
【0029】
回転軸41aの一端は、軸受け43によって回転可能に支持され、回転軸41aの他端は、ファンモータ44に接続されている。これにより、ファン41は、ファンモータ44からの駆動力を受けて回転する。ここで、電池ホルダ12の一部は、ファンモータ44との干渉を避けるために、ファンモータ44の外形に沿った形状に形成されている。なお、ファンモータ44をパックケース20の外部に配置することもでき、この場合には、ファンモータ44の回転軸がパックケース20を貫通した状態でファン41に接続されることになる。
【0030】
ファンケース42は、ファン41の回転軸方向において向かい合う一対の側板42aを有しており、一方の側板42aには、軸受け43が固定されており、他方の側板42aには、ファンモータ44が固定されている。各側板42aは、ファン41が位置する面とは反対側の面において、電池ホルダ12に接触している。また、一対の側板42aには、ファン41の外周に沿った形状に形成された底板42fが固定されている。
【0031】
ファンケース42は、ファン41が配置された領域と、複数の単電池11が配置された領域とを仕切るための第1仕切板42bおよび第2仕切板42cを有している。第1仕切板42bは、電池モジュール10に沿って鉛直方向に延びており、第1仕切板42bの下端には第2仕切板42cが接続されている。また、第1仕切板42bの上端には、電池ホルダ12の上端面に沿って単電池11の側に延びる突部42dが設けられており、第1仕切板42bには、一対の側板42aが固定されている。
【0032】
第2仕切板42cは、水平面に対して傾斜しており、パックケース20の底面および第2仕切板42cの間隔は、ファン41から離れるにしたがって、狭くなっている。第2仕切板42cの下方には、ファン41から送り出される熱交換媒体30を、単電池11が配置された領域に導くための開口部42eが形成されている。
【0033】
ファンモータ44の駆動によってファン41を回転させると、ファン41は、ファン41の上方に位置する熱交換媒体30を取り込むとともに、開口部42eを介して複数の単電池11に向けて熱交換媒体30を送り出す。ここで、ファン41のブレード41bは、回転軸41aの長手方向に延びているため、ファン41から送り出される熱交換媒体30は、層流を形成する。そして、ファン41から送り出された熱交換媒体30は、図3の矢印で示すように、電池モジュール10の周囲を辿るように進んで、ファン41に戻るようになっている。ここで、図3に示す矢印は、熱交換媒体30の主な流れを示すものであり、この流れとは異なる方向に進む流れも存在することがある。
【0034】
本実施例では、電池モジュール10(最も外側に位置する単電池11)とパックケース20(ロアーケース21)の内壁面との間の距離(最短距離)を、隣り合って配置された2つの単電池11の間隔(最短距離)よりも長くしている。このように設定することで、ファン41から送り出された熱交換媒体30を、電池モジュール10の周囲に沿って主に移動させることができる。
【0035】
そして、電池モジュール10の周囲において、熱交換媒体30の主な流れ(層流)を発生させることにより、隣り合って配置された2つの単電池11の間にも、熱交換媒体30の二次的な流れを発生させることができる。具体的には、隣り合って配置された2つの単電池11の間に形成されたスペースにおいて、電池モジュール10の下方から上方に向かう熱交換媒体30の二次的な流れを発生させることができる。
【0036】
上述したように熱交換媒体30を流動させることにより、電池モジュール10を構成するすべての単電池11に対して、流動状態の熱交換媒体30を接触させることができる。また、ファン41から送り出される熱交換媒体30を、単電池11の長さと略等しい幅を有する層流の状態としているため、単電池11の全面に対して熱交換媒体30を接触させることができる。
【0037】
ここで、単電池11が充放電等によって発熱した場合には、単電池11の熱を、熱交換媒体30を介してパックケース20に伝達することができ、単電池11の温度上昇を抑制することができる。また、熱交換媒体30を直接的又は間接的に温めれば、熱交換媒体30を介して単電池11を温めることができ、単電池11の温度低下を抑制することができる。ここで、熱交換媒体30を直接的に温める場合としては、ヒータを熱交換媒体30に接触させておき、ヒータの熱によって熱交換媒体30を温めることができる。また、熱交換媒体30を間接的に温める場合としては、パックケース20を温めることにより、パックケース20を介して熱交換媒体30を温めることができる。
【0038】
このように熱交換媒体30を用いることにより、複数の単電池11の温度を調節することができる。しかも、上述したように熱交換媒体30をパックケース20内で流動させることにより、単電池11の温度調節を効率良く行うことができる。
【0039】
一方、本実施例では、図4に示すように、電池パック1が静止状態にある場合において、パックケース20内における空気層50の体積をV1とし、ファン41の上方に位置する熱交換媒体30の体積をV2としたときに、体積V1を体積V2よりも小さくしている。ここで、図4は、電池パック1の内部構成を示す断面図である。
【0040】
電池パック1が静止状態にあるとき、熱交換媒体30の液面31は、電池ホルダ12の上端面と同一面内に位置しており、空気層50は、液面31と、アッパーケース22およびロアーケース21の内壁面とによって形成されている。体積V2は、ロアーケース21の内壁面と、ファンケース42(側板42aおよび第1仕切板42b)とによって囲まれたスペースにおいて、ファン41の上方に存在する熱交換媒体30の体積である。
【0041】
体積V1,V2が上述した関係にあるとき、ファン41を駆動すると、ファン41から送り出された熱交換媒体30が単電池11の配置領域(第1領域)R1に移動することにより、単電池11の配置領域R1において、熱交換媒体30の液面31が上昇する。そして、液面31は、図5に示すように、アッパーケース22の内壁面に接触するようになる。なお、体積V1,V2が上述した関係を満たす限り、電池パック1が傾いていたとしても、液面31をアッパーケース22に接触させることができる。
【0042】
ここで、配置領域R1は、第1仕切板42bに対して、複数の単電池11が位置する側の領域である。また、配置領域(第2領域)R2は、第1仕切板42bに対して、ファン41が位置する側の領域である。
【0043】
単電池11の配置領域R1において、熱交換媒体30の液面31が上昇すると、熱交換媒体30は、ファンケース42の上端部(突部42d)を乗り越えて、単電池11の配置領域R1からファン41の配置領域R2に移動する。ここで、ファン41を駆動したときに、ファン41の配置領域R2において液面31が下降する速度は、単電池11の配置領域R1において液面31が上昇する速度よりも速くなっている。このため、単電池11の配置領域R1からファン41の配置領域R2に熱交換媒体30が移動する際に、熱交換媒体30は、ファンケース42に沿って落下することになる。
【0044】
ファン41の配置領域R2に移動した熱交換媒体30は、ファン41の回転によって、単電池11の配置領域R1に向かって再び送り出されることになる。そして、熱交換媒体30は、ファン41の駆動量に応じて、単電池11の配置領域R1とファン41の配置領域R2との間で循環することになる。
【0045】
本実施例では、パックケース20内に空気層50を設けることにより、熱交換媒体30の体積膨張を吸収することができる。熱交換媒体30は、温度上昇に応じて膨張することがあるが、熱交換媒体30の体積膨張に応じて空気層50を収縮させることにより、パックケース20に対して過度の負荷がかかるのを抑制することができる。これにより、パックケース20の構造を簡素化することができる。
【0046】
また、空気層50を設けることにより、パックケース20内に熱交換媒体30を容易に充填することができる。すなわち、ロアーケース21に熱交換媒体30を充填してから、ロアーケース21にアッパーケース22を固定するだけでよい。ここで、パックケース20の内部を熱交換媒体30で満たす場合には、アッパーケース22をロアーケース21に固定してから、更に熱交換媒体30を補充しなければならないが、本実施例では、熱交換媒体30を補充する必要がない。
【0047】
一方、空気層50は、液状の熱交換媒体30よりも熱伝導率が低いため、パックケース20内の上部に空気層50が存在したままの状態では、アッパーケース22を介した熱伝達が行われ難くなってしまう。例えば、単電池11から熱を奪った熱交換媒体30が、アッパーケース22に熱を伝達しにくくなり、アッパーケース22における放熱性が不十分となることがある。
【0048】
そこで、本実施例では、上述したように体積V1,V2を設定することにより、アッパーケース22の内壁面にも熱交換媒体30を接触させることができ、アッパーケース22を介した熱伝達を効率良く行うことができる。また、単電池11から熱を受けた熱交換媒体30は、上方に移動しやすくなっているため、液面31をアッパーケース22に接触させることにより、熱交換媒体30の熱をアッパーケース22に効率良く伝達することができる。
【0049】
本実施例の電池パック1を用いた場合には、図6に示すように、ダクト60を用いて、電池パック1の上面に温度調節用の空気を接触させることができる。ここで、電池パック1が車両に搭載されている場合には、車室内の空気を、ダクト60を介して電池パック1に導くことができる。図6に示す矢印は、空気の移動方向を示している。
【0050】
具体的には、ダクト60の一端に形成された吸気口61を車室内に位置させ、ファン(不図示)の駆動によって、車室内の空気をダクト60内に取り込ませることができる。ここでいう車室とは、乗員の乗車するスペースをいう。そして、ダクト60のうち、電池パック1(アッパーケース22)と対向する領域に開口部62を形成しておき、開口部62を介してアッパーケース22の外壁面に空気を接触させることができる。また、ダクト60の他端に形成された排気口63を車外に位置させておけば、アッパーケース22との間で熱交換された空気を車外に排出させることができる。
【0051】
図6に示す構成において、ファン41を駆動した状態で、冷却用の空気をアッパーケース22の外壁面に接触させれば、アッパーケース22における放熱性を向上させることができ、複数の単電池11の冷却効率を向上させることができる。また、加温用の空気をアッパーケース22の外壁面に接触させれば、アッパーケース22を介して熱交換媒体30を温めることができ、複数の単電池11の加温効率を向上させることができる。
【0052】
なお、図6に示す構成では、アッパーケース22の外壁面を平坦な面で構成しているが、アッパーケース22の外壁面にフィンを設けることができる。すなわち、ダクト60の内部にフィンを配置することができる。このように構成すれば、アッパーケース22の外壁面において、温度調節用の空気との接触面積を増加させることができ、アッパーケース22を介した電池モジュール10の温度調節を効率良く行うことができる。なお、フィンの形状や数は、適宜設定することができる。
【0053】
一方、アッパーケース22の内壁面にフィンを設けることもでき、この場合には、パックケース20内において、熱交換媒体30との接触面積を増加させることができる。この場合には、上述した熱交換媒体30の主な流れに沿うようにフィンを配置することが好ましい。
【0054】
熱交換媒体30をパックケース20内で循環させると、上述したように、ファンケース42の上端部(突部42d)を乗り越えた熱交換媒体30がファン41に向かって落下することになる。この場合には、熱交換媒体30の落下によって気泡が発生するおそれがあり、ファン41の配置領域R2で気泡が発生してしまうと、アッパーケース22の内壁面に気泡が到達してしまうことがある。そして、アッパーケース22の内壁面に気泡が残ったままでは、アッパーケース22および熱交換媒体30の接触面積が減少し、アッパーケース22を介した熱伝達が行われにくくなってしまう。
【0055】
そこで、本実施例では、図7に示すように、ファン41の配置領域R2にガイド板70を設けることにより、熱交換媒体30の落下による気泡の発生を阻止するようにしている。ここで、図7は、電池パック1の内部における一部の構成を示す断面図である。
【0056】
ガイド板70は、一部がアッパーケース22の内壁面に固定されており、ファンケース42の第1仕切板42bと略平行に配置されている。また、図8に示すように、ガイド板70は、ファンケース42における一対の側板42aの間に位置しており、ガイド板70の外縁部が一対の側板42aに接触している。ここで、図8は、図7に示す構成をアッパーケース22の側から見たときの図である。
【0057】
本実施例では、ガイド板70を用いることにより、単電池11の配置領域R1からファン41に向かう熱交換媒体30の流路を狭めている。すなわち、ガイド板70を設けたときの熱交換媒体30の流路の幅W1は、ガイド板70を設けないときの熱交換媒体30の流路の幅W2よりも狭くなっている。このように熱交換媒体30の流路を狭めることにより、熱交換媒体30の落下速度を低下させることができ、熱交換媒体30の落下に伴う気泡の発生を抑制することができる。
【0058】
ファン41に向かう熱交換媒体30を、ファンケース42の第1仕切板42bおよびガイド板70に接触させることにより、図9に示すように、熱交換媒体30に摩擦抵抗を与えることができる。ここで、図9は、第1仕切板42bおよびガイド板70の間における熱交換媒体30の落下状態を示す概略図である。
【0059】
図9に示す曲線Sは、熱交換媒体30の流速分布を示しており、第1仕切板42bおよびガイド板70に接触する部分Fにおいて、最も流速が低くなっている。ここで、ガイド板70を省略した場合には、ファン41に向かう熱交換媒体30に対して、第1仕切板42bだけで摩擦抵抗を与えるだけであるが、本実施例では、熱交換媒体30を挟む部分で摩擦抵抗を与えることができる。
【0060】
なお、幅W1は、パックケース20内における熱交換媒体30の循環を確保する点と、熱交換媒体30の落下速度を低下させる点とに基づいて、適宜設定することができる。また、ファン41の配置領域R2において、ガイド板70およびロアーケース21の間に形成されたスペースは、熱交換媒体30を流動させた際に、空気50を退避させるスペースとなる。
【0061】
本実施例では、ガイド板70を平板状の部材で構成しているが、これに限るものではない。例えば、図10に示すように、第1仕切板42bおよびガイド板70のうち、熱交換媒体30が移動する通路を形成する面に対して、複数のフィン71,42gをそれぞれ設けることができる。ここで、図10は、電池パック1の内部をアッパーケース22の側から見たときの図であり、図8に対応した図である。複数のフィン71,42gを設けておけば、熱交換媒体30との摩擦抵抗を増加させたり、ファン41に向かう熱交換媒体30の流れを整えたりすることができる。なお、フィン71,42gの形状や位置は、適宜設定することができる。また、第1仕切板42bおよびガイド板70のうち、一方の部材にのみ、上述したフィンを設けることもできる。
【0062】
また、本実施例では、ガイド板70を第1仕切板42bに対して略平行となるように配置しているが、第1仕切板42bに対して傾斜するように配置することもできる。具体的には、ガイド板70および第1仕切板42bの間隔(図8の幅W1に相当)が、ファン41に近づくにしたがって、狭くなるように、ガイド板70を配置することができる。このように構成しても、熱交換媒体30の落下速度を低下させることができる。
【実施例2】
【0063】
次に、本発明の実施例2である電池パックについて説明する。ここで、実施例1で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。本実施例では、実施例1で説明した構造とは異なる構造を用いて、ファン41に向かう熱交換媒体30の落下速度を低下させるようにしている。
【0064】
実施例1では、ガイド板70および第1仕切板42bの間に、ファン41に向かう熱交換媒体30の流路を形成しているが、本実施例では、ガイド板80とロアーケース21の側壁との間に、熱交換媒体30の流路を形成している。具体的には、図11に示すように、ファンケース42に対してガイド板80が取り付けられている。ガイド板80の一端は、ファンケース42の上端部(突部42d)に接続されており、ガイド板80は、突部42dと同一面内に位置する領域81と、鉛直方向に延びる領域82とを有している。
【0065】
また、図12に示すように、ガイド板80の外縁部83は、ファンケース42の側板42aから離れている。ここで、図12は、図11に示す構成をアッパーケース22の側から見たときの図である。
【0066】
本実施例において、ファン41を駆動すると、ファン41の配置領域R2から単電池11の配置領域R1に向かって熱交換媒体30が送り出され、単電池11の配置領域R1において、液面31が上昇する。本実施例でも、実施例1(図4)で説明したように、体積V1を体積V2よりも小さくしているため、液面31をアッパーケース22の内壁面に接触させることができる。これにより、実施例1と同様に、アッパーケース22を介した熱伝達を効率良く行うことができる。
【0067】
単電池11の配置領域R1において、液面31が上昇すると、熱交換媒体30は、ファンケース42の上方を通過して、ファン41の配置領域R2に移動するようになる。このとき、熱交換媒体30は、ガイド板80とロアーケース21の側壁との間に形成されたスペースにおいて、ファン41に向かって落下することになる。本実施例でも、ガイド板80を用いて、ファン41に向かう熱交換媒体30の流路を狭めているため、熱交換媒体30の落下速度を低下させることができる。これにより、熱交換媒体30の落下に伴う気泡の発生を抑制することができる。
【0068】
また、ロアーケース21の側壁に沿って熱交換媒体30の流路を形成することにより、ファン41の回転を妨げることなく、熱交換媒体30をファン41に到達させることができる。図13には、熱交換媒体30の移動方向およびファン41の回転方向の関係を示している。単電池11の配置領域R1に対して熱交換媒体30を送り出すためには、ファン41を図13の矢印で示すように回転させる必要がある。このとき、ガイド板80およびロアーケース21の間を落下する熱交換媒体30は、ファン41の回転方向に沿うように、ファン41に到達するため、ファン41をスムーズに回転させることができる。
【0069】
ここで、ガイド板80のうち鉛直方向に延びる領域82と、ファン41の回転軸41aとを同一面内に位置させれば、熱交換媒体30をファン41に向かって落下させつつ、ファン41をスムーズに回転させることができる。
【0070】
本実施例では、図11に示すように、ファンケース42およびガイド板80によって囲まれたスペースを空気50の退避スペースとして用いている。ここで、図12に示すように、ガイド板80の外縁部83はファンケース42の側板42aから離れているため、上述した退避スペースに、空気50を容易に移動させることができる。すなわち、外縁部83および側板42aは、空気50を上述した退避スペースに導くための導入口を形成している。
【0071】
ガイド板80の外縁部83を側板42aに接触させてしまうと、ファンケース42およびガイド板80によって囲まれた退避スペースに、空気50を移動させにくくなってしまう。すなわち、外縁部83を側板42aに接触させた構成では、ファン41の駆動に応じて、空気50をガイド板80の下端部まで移動させなければならないが、空気50は、熱交換媒体(液体)30よりも比重が軽いため、ガイド板80の下端部まで空気50を移動させにくくなる。そこで、上述したように、ガイド板80の外縁部83および側板42aの間に、空気50の移動スペースを形成することにより、上述した退避スペースに空気50を容易に移動させることができる。
【0072】
なお、ファンケース42およびガイド板80によって囲まれたスペースに空気50を導く構成は、上述した構成に限るものではない。すなわち、ガイド板80およびロアーケース21の側壁を用いて熱交換媒体30の落下速度を低下させつつ、上述した退避スペースに空気50を導くことができればよい。
【0073】
例えば、図14に示すように、ガイド板80のうち、鉛直方向に延びる領域82において、複数の開口部84を形成することができる。これにより、ファン41の駆動に応じて、空気50は、開口部84を通過して退避スペースに移動することができる。ここで、複数の開口部84を、領域82のうち、上方に位置する領域に形成しておけば、空気50を退避スペースに容易に移動させることができる。また、図14に示す構成において、ガイド板80の外縁部83は、ファンケース42の側板42aに接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
【0074】
一方、本実施例(図11)で説明した構成において、実施例1(図7)で説明したガイド板70を追加することができる。具体的には、ガイド板80およびロアーケース21の側壁の間にガイド板70を配置し、2つのガイド板70,80の間に形成された通路を用いて熱交換媒体30をファン41に向かって落下させることができる。
【0075】
また、本実施例では、ファンケース42にガイド板80を取り付けているが、ガイド板80をロアーケース21の側壁に取り付けることもできる。この場合には、ガイド板80およびファンケース42の第1仕切板42bの間に形成された通路を用いて、熱交換媒体30をファン41に向かって落下させることができる。そして、気体50は、ガイド板80およびロアーケース21によって囲まれたスペースに退避させることができる。
【符号の説明】
【0076】
1:電池パック(蓄電装置) 10:電池モジュール
11:単電池(蓄電素子) 11a,11b:電極端子
12:電池ホルダ 13:バスバー
20:パックケース 21:ロアーケース
22:アッパーケース 30:熱交換媒体
40:撹拌ユニット 41:ファン
42:ファンケース(仕切り部材) 44:ファンモータ
50:空気層 60:ダクト
70,80:ガイド板(ガイド部材) 71:フィン
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の熱交換媒体を用いて複数の蓄電素子の温度を調節することができる蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電源装置では、ケースの内部(密閉空間)に電源モジュールおよび冷却液を収容することにより、発熱状態の電源モジュールを冷却液で冷却するようにしている。しかも、ケース内に配置されたファンを用いて、冷却液をケース内で循環させることにより、電源モジュールの冷却効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−16205号公報(図1,6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電源装置のように、ケース内の密閉空間を冷却液で満たすようにすることはできるが、この場合には、ケース内に冷却液を充填するための構造や作業が複雑になってしまうおそれがある。また、密閉空間を冷却液で満たすと、温度上昇に伴う冷却液の体積膨張によって、ケースに負荷がかかってしまうおそれがある。
【0005】
一方、特許文献1に記載の構成において、密閉空間の上部に空気層を設けると、ケース内で冷却液を循環させる際に、ファンに対して冷却液が落下する現象が生じることがある。そして、冷却液の落下に伴って気泡が発生することがある。
【0006】
このように気泡が発生してしまうと、ファンの駆動によって冷却液を循環させて、冷却液の液面をケースの上面に接触させることができたとしても、気泡の存在によって、ケースの上面に対する冷却液の接触面積が減少してしまう。この場合には、ケースの上面における放熱性が低下してしまうことがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、液状の熱交換媒体の落下に伴う気泡の発生を抑制して、蓄電素子の温度調節を効率良く行うことができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明である蓄電装置は、複数の蓄電素子と、複数の蓄電素子と、蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体とを密閉状態で収容し、内部に気体の層を含むケースと、ケース内に配置され、回転動作によって熱交換媒体に流動力を与えるためのファンと、を有する。また、複数の蓄電素子が位置する第1領域とファンが位置する第2領域との間で熱交換媒体を循環させ、第1領域からの熱交換媒体をファンに向かって落下させるための仕切り部材と、ケースの側面および仕切り部材の間で、第1領域からの熱交換媒体をファンに導く通路を形成し、熱交換媒体の流れに対して摩擦抵抗を与えるガイド部材と、を有する。
【0009】
ここで、ケースの上面からファンに向かって延びるようにガイド部材を配置し、ガイド部材および仕切り部材の間に、上記通路を形成することができる。この場合において、ファンの駆動による熱交換媒体の流動に応じて、ケースの側面およびガイド部材の間に位置するスペースに気体を移動させることができる。これにより、ケース内の気体を特定のスペースに退避させつつ、ガイド部材および仕切り部材によって形成された通路において、熱交換媒体の落下速度を低下させることができる。
【0010】
また、仕切り部材の上端部からファンに向かって延びるようにガイド部材を配置し、ガイド部材およびケースの側面の間に、上記通路を形成することができる。この場合において、ファンの駆動による熱交換媒体の流動に応じて、ガイド部材および仕切り部材の間に位置するスペースに気体を移動(退避)させることができる。これにより、ケース内の気体を特定のスペースに退避させつつ、ガイド部材およびケースの側面によって形成された通路において、熱交換媒体の落下速度を低下させることができる。
【0011】
ここで、ガイド部材の外縁部を用いて、ガイド部材および仕切り部材の間に位置するスペースに気体を導くための導入口を形成することができる。このように構成すれば、ガイド部材によって熱交換媒体に与えられる摩擦抵抗を確保しつつ、気体を上記スペースに容易に導くことができる。
【0012】
一方、ファンが非駆動状態にある場合において、気体の層の体積を、ファンの上方に位置してファンに取り込まれる熱交換媒体の体積よりも小さくすることができる。このように構成すれば、ファンを駆動した際に、熱交換媒体の液面をケースの上面に容易に接触させることができる。そして、ケースの上面を介した熱伝達を効率良く行うことができる。ここで、ケースの外部に配置されたダクトを用いることにより、ケースの上面(外面)に対して、蓄電素子の温度調節に用いられる気体を接触させることができる。これにより、ケースの上面を介した温度調節を効率良く行うことができる。
【0013】
蓄電素子としては、長手方向と直交する断面の形状が略円形に形成された蓄電素子、いわゆる円筒形の蓄電素子を用いることができる。そして、各蓄電素子の長手方向とファンの回転軸方向とが略平行となるように、複数の蓄電素子を配置することができる。このように構成することにより、ファンから送り出された熱交換媒体を各蓄電素子に効率良く接触させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、熱交換媒体をファンに向かって落下させながら、ケース内で熱交換媒体を循環させる構成において、ファンに向かう熱交換媒体の流れに対して、ガイド部材を用いて摩擦抵抗を与えている。これにより、熱交換媒体の落下速度を低下させることができ、熱交換媒体の落下に伴う気泡の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1である電池パックの構成を示す分解図である。
【図2】実施例1における撹拌ユニットの構成を示す外観図である。
【図3】実施例1の電池パックにおいて、熱交換媒体の主な流れを示す図である。
【図4】実施例1において、静止状態にある電池パックの内部構造を示す断面図である。
【図5】実施例1において、ファンを駆動したときの電池パックの内部構造を示す断面図である。
【図6】実施例1において、電池パックの上面を用いた温度調節の構造を示す概略図である。
【図7】実施例1である電池パックの内部における一部の構造を示す断面図である。
【図8】図7に示す構造をアッパーケースの側から見たときの概略図である。
【図9】実施例1において、熱交換媒体の流動状態を示す概略図である。
【図10】実施例1の変形例である電池パックの内部における一部の構造を示す概略図である。
【図11】本発明の実施例2である電池パックの内部における一部の構造を示す断面図である。
【図12】図11に示す構造をアッパーケースの側から見たときの概略図である。
【図13】実施例2において、ファンに向かう熱交換媒体の流れと、ファンの回転動作との関係を示す図である。
【図14】実施例2の変形例である電池パックの内部における一部の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1である電池パック(蓄電装置)の構成について、図1を用いて説明する。ここで、図1は、本実施例の電池パックの構成を示す分解図である。本実施例の電池パック1は、車両に搭載することができ、この車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車とは、車両の走行に用いられるエネルギを出力する動力源として、内燃機関や燃料電池の他に、電池パック1を備えた車両である。電気自動車とは、車両の動力源として、電池パック1だけを備えた車両である。
【0018】
本実施例の電池パック1は、電池モジュール10と、電池モジュール10を収容するパックケース20とを有している。パックケース20は、電池モジュール10を収容するための空間を形成するロアーケース21と、ロアーケース21の開口部21aを覆うアッパーケース22とを有している。アッパーケース22は、ロアーケース21に対して、ネジ等の締結部材によって固定されたり、溶接によって固定されたりする。そして、パックケース20の内部は、密閉状態となっている。ロアーケース21およびアッパーケース22は、熱伝導性や耐食性等に優れた材料、例えば、アルミニウムや鉄等といった金属で形成することができる。
【0019】
パックケース20の内部には、電池モジュール10の他に、電池モジュール10との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体30が収容されている。熱交換媒体30は、後述するように、電池モジュール10(単電池11)の温度を調節するために用いられる。熱交換媒体30の液面は、アッパーケース22の内壁面から離れており、熱交換媒体30の液面とアッパーケース22の内壁面との間には、空気層が形成されている。なお、空気層の代わりに、空気以外の気体の層を形成することもできる。
【0020】
熱交換媒体30としては、絶縁性を有する液体を用いることが好ましく、例えば、絶縁油、シリコーンオイル、フッ素系不活性液体、脂肪酸エステルを用いることができる。フッ素系不活性液体としては、例えば、スリーエム社製のフロリナート、Novec HFE(hydrofluoroether)、Novec1230を用いることができる。また、脂肪酸エステルとしては、例えば、カプリル酸2−エチルヘキシルを用いることができる。
【0021】
次に、電池モジュール10の構成について、具体的に説明する。
【0022】
電池モジュール10は、電気的に直列に接続された複数の単電池(蓄電素子)11を有している。単電池11としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。本実施例では、単電池11として、長手方向と直交する断面の形状が略円形に形成された電池(いわゆる円筒形の電池)を用いている。そして、単電池11の長手方向における両端部には、正極端子(電極端子)11aおよび負極端子(電極端子)11bがそれぞれ設けられている。
【0023】
各単電池11は、両端部において、板状に形成された一対の電池ホルダ12によって支持されている。ここで、電池モジュール10を構成する複数の単電池11は、長手方向における両端部のそれぞれが同一面内に位置するように、並んで配置されている。また、隣り合って配置された2つの単電池11の間には、熱交換媒体30を流動させるためのスペースが設けられている。電池ホルダ12は、パックケース20に固定されており、樹脂等によって形成することができる。なお、本実施例では、一対の電池ホルダ12を用いて、複数の単電池11を支持しているが、これに限るものではなく、一対の電池ホルダ12を一体として構成することもできる。
【0024】
各電池ホルダ12には、電極端子11a,11bを貫通させるための穴部(不図示)が形成されており、電極端子11a,11bは、電池ホルダ12の穴部を貫通した状態で、バスバー13に接続されている。具体的には、各単電池11の正極端子11aは、隣り合って配置された他の単電池11の負極端子11bと、バスバー13を介して電気的に接続されている。また、電極端子11a,11bの先端部には、ネジ部が形成されており、ネジ部は、バスバー13に形成された穴部(不図示)を貫通した状態でナット14と係合している。これにより、バスバー13を電極端子11a,11bに固定することができる。
【0025】
単電池11は、発電要素(不図示)と、発電要素を収容する電池ケースとを有している。発電要素とは、充放電を行うことができる要素であり、例えば、正極素子と、負極素子と、正極素子および負極素子の間に配置された電解液を含むセパレータとで構成することができる。正極素子とは、集電板の表面に正極活物質の層が形成されたものであり、負極素子とは、集電板の表面に負極活物質の層が形成されたものである。発電要素の正極素子は、正極端子11aと電気的および機械的に接続されており、発電要素の負極素子は、負極端子11bと電気的および機械的に接続されている。
【0026】
電池モジュール10の総プラス端子および総マイナス端子には、電池モジュール11の充放電を行うための高圧ケーブル(総プラスケーブルおよび総マイナスケーブル)が接続されている。これらの高圧ケーブルは、パックケース20を貫通して、パックケース20の外部に配置された機器に接続されている。この機器としては、例えば、電池モジュール10の直流電力を交流電力に変換して、モータに出力するためのインバータがある。そして、モータの駆動によって生成された運動エネルギを用いて、電池パック1が搭載された車両を走行させることができる。ここで、DC/DCコンバータによって、電池モジュール10の出力電圧を昇圧させた状態で、インバータに供給することもできる。
【0027】
一方、電池モジュール10には、撹拌ユニット40が取り付けられている。撹拌ユニット40は、パックケース20内において、熱交換媒体30を流動させるために用いられる。撹拌ユニット40の構造について、図2を用いて説明する。
【0028】
撹拌ユニット40は、ファン(いわゆるクロスフローファン)41を有しており、ファン41は、ファンケース42によって回転可能に支持されている。ファン41は、この長手方向(回転軸方向)が単電池11の長手方向と略平行となるように配置されており、回転軸41aと、回転軸41aの外周面に設けられた複数のブレード41bとを有している。複数のブレード41bは、回転軸41aの周方向において等間隔に配置されており、各ブレード41bは、曲面を有している。ファン41の回転軸方向における各ブレード41bの長さは、単電池11の長手方向における長さと略等しくなっている。なお、各ブレード41bの長さを、単電池11の長さよりも長くすることもできる。
【0029】
回転軸41aの一端は、軸受け43によって回転可能に支持され、回転軸41aの他端は、ファンモータ44に接続されている。これにより、ファン41は、ファンモータ44からの駆動力を受けて回転する。ここで、電池ホルダ12の一部は、ファンモータ44との干渉を避けるために、ファンモータ44の外形に沿った形状に形成されている。なお、ファンモータ44をパックケース20の外部に配置することもでき、この場合には、ファンモータ44の回転軸がパックケース20を貫通した状態でファン41に接続されることになる。
【0030】
ファンケース42は、ファン41の回転軸方向において向かい合う一対の側板42aを有しており、一方の側板42aには、軸受け43が固定されており、他方の側板42aには、ファンモータ44が固定されている。各側板42aは、ファン41が位置する面とは反対側の面において、電池ホルダ12に接触している。また、一対の側板42aには、ファン41の外周に沿った形状に形成された底板42fが固定されている。
【0031】
ファンケース42は、ファン41が配置された領域と、複数の単電池11が配置された領域とを仕切るための第1仕切板42bおよび第2仕切板42cを有している。第1仕切板42bは、電池モジュール10に沿って鉛直方向に延びており、第1仕切板42bの下端には第2仕切板42cが接続されている。また、第1仕切板42bの上端には、電池ホルダ12の上端面に沿って単電池11の側に延びる突部42dが設けられており、第1仕切板42bには、一対の側板42aが固定されている。
【0032】
第2仕切板42cは、水平面に対して傾斜しており、パックケース20の底面および第2仕切板42cの間隔は、ファン41から離れるにしたがって、狭くなっている。第2仕切板42cの下方には、ファン41から送り出される熱交換媒体30を、単電池11が配置された領域に導くための開口部42eが形成されている。
【0033】
ファンモータ44の駆動によってファン41を回転させると、ファン41は、ファン41の上方に位置する熱交換媒体30を取り込むとともに、開口部42eを介して複数の単電池11に向けて熱交換媒体30を送り出す。ここで、ファン41のブレード41bは、回転軸41aの長手方向に延びているため、ファン41から送り出される熱交換媒体30は、層流を形成する。そして、ファン41から送り出された熱交換媒体30は、図3の矢印で示すように、電池モジュール10の周囲を辿るように進んで、ファン41に戻るようになっている。ここで、図3に示す矢印は、熱交換媒体30の主な流れを示すものであり、この流れとは異なる方向に進む流れも存在することがある。
【0034】
本実施例では、電池モジュール10(最も外側に位置する単電池11)とパックケース20(ロアーケース21)の内壁面との間の距離(最短距離)を、隣り合って配置された2つの単電池11の間隔(最短距離)よりも長くしている。このように設定することで、ファン41から送り出された熱交換媒体30を、電池モジュール10の周囲に沿って主に移動させることができる。
【0035】
そして、電池モジュール10の周囲において、熱交換媒体30の主な流れ(層流)を発生させることにより、隣り合って配置された2つの単電池11の間にも、熱交換媒体30の二次的な流れを発生させることができる。具体的には、隣り合って配置された2つの単電池11の間に形成されたスペースにおいて、電池モジュール10の下方から上方に向かう熱交換媒体30の二次的な流れを発生させることができる。
【0036】
上述したように熱交換媒体30を流動させることにより、電池モジュール10を構成するすべての単電池11に対して、流動状態の熱交換媒体30を接触させることができる。また、ファン41から送り出される熱交換媒体30を、単電池11の長さと略等しい幅を有する層流の状態としているため、単電池11の全面に対して熱交換媒体30を接触させることができる。
【0037】
ここで、単電池11が充放電等によって発熱した場合には、単電池11の熱を、熱交換媒体30を介してパックケース20に伝達することができ、単電池11の温度上昇を抑制することができる。また、熱交換媒体30を直接的又は間接的に温めれば、熱交換媒体30を介して単電池11を温めることができ、単電池11の温度低下を抑制することができる。ここで、熱交換媒体30を直接的に温める場合としては、ヒータを熱交換媒体30に接触させておき、ヒータの熱によって熱交換媒体30を温めることができる。また、熱交換媒体30を間接的に温める場合としては、パックケース20を温めることにより、パックケース20を介して熱交換媒体30を温めることができる。
【0038】
このように熱交換媒体30を用いることにより、複数の単電池11の温度を調節することができる。しかも、上述したように熱交換媒体30をパックケース20内で流動させることにより、単電池11の温度調節を効率良く行うことができる。
【0039】
一方、本実施例では、図4に示すように、電池パック1が静止状態にある場合において、パックケース20内における空気層50の体積をV1とし、ファン41の上方に位置する熱交換媒体30の体積をV2としたときに、体積V1を体積V2よりも小さくしている。ここで、図4は、電池パック1の内部構成を示す断面図である。
【0040】
電池パック1が静止状態にあるとき、熱交換媒体30の液面31は、電池ホルダ12の上端面と同一面内に位置しており、空気層50は、液面31と、アッパーケース22およびロアーケース21の内壁面とによって形成されている。体積V2は、ロアーケース21の内壁面と、ファンケース42(側板42aおよび第1仕切板42b)とによって囲まれたスペースにおいて、ファン41の上方に存在する熱交換媒体30の体積である。
【0041】
体積V1,V2が上述した関係にあるとき、ファン41を駆動すると、ファン41から送り出された熱交換媒体30が単電池11の配置領域(第1領域)R1に移動することにより、単電池11の配置領域R1において、熱交換媒体30の液面31が上昇する。そして、液面31は、図5に示すように、アッパーケース22の内壁面に接触するようになる。なお、体積V1,V2が上述した関係を満たす限り、電池パック1が傾いていたとしても、液面31をアッパーケース22に接触させることができる。
【0042】
ここで、配置領域R1は、第1仕切板42bに対して、複数の単電池11が位置する側の領域である。また、配置領域(第2領域)R2は、第1仕切板42bに対して、ファン41が位置する側の領域である。
【0043】
単電池11の配置領域R1において、熱交換媒体30の液面31が上昇すると、熱交換媒体30は、ファンケース42の上端部(突部42d)を乗り越えて、単電池11の配置領域R1からファン41の配置領域R2に移動する。ここで、ファン41を駆動したときに、ファン41の配置領域R2において液面31が下降する速度は、単電池11の配置領域R1において液面31が上昇する速度よりも速くなっている。このため、単電池11の配置領域R1からファン41の配置領域R2に熱交換媒体30が移動する際に、熱交換媒体30は、ファンケース42に沿って落下することになる。
【0044】
ファン41の配置領域R2に移動した熱交換媒体30は、ファン41の回転によって、単電池11の配置領域R1に向かって再び送り出されることになる。そして、熱交換媒体30は、ファン41の駆動量に応じて、単電池11の配置領域R1とファン41の配置領域R2との間で循環することになる。
【0045】
本実施例では、パックケース20内に空気層50を設けることにより、熱交換媒体30の体積膨張を吸収することができる。熱交換媒体30は、温度上昇に応じて膨張することがあるが、熱交換媒体30の体積膨張に応じて空気層50を収縮させることにより、パックケース20に対して過度の負荷がかかるのを抑制することができる。これにより、パックケース20の構造を簡素化することができる。
【0046】
また、空気層50を設けることにより、パックケース20内に熱交換媒体30を容易に充填することができる。すなわち、ロアーケース21に熱交換媒体30を充填してから、ロアーケース21にアッパーケース22を固定するだけでよい。ここで、パックケース20の内部を熱交換媒体30で満たす場合には、アッパーケース22をロアーケース21に固定してから、更に熱交換媒体30を補充しなければならないが、本実施例では、熱交換媒体30を補充する必要がない。
【0047】
一方、空気層50は、液状の熱交換媒体30よりも熱伝導率が低いため、パックケース20内の上部に空気層50が存在したままの状態では、アッパーケース22を介した熱伝達が行われ難くなってしまう。例えば、単電池11から熱を奪った熱交換媒体30が、アッパーケース22に熱を伝達しにくくなり、アッパーケース22における放熱性が不十分となることがある。
【0048】
そこで、本実施例では、上述したように体積V1,V2を設定することにより、アッパーケース22の内壁面にも熱交換媒体30を接触させることができ、アッパーケース22を介した熱伝達を効率良く行うことができる。また、単電池11から熱を受けた熱交換媒体30は、上方に移動しやすくなっているため、液面31をアッパーケース22に接触させることにより、熱交換媒体30の熱をアッパーケース22に効率良く伝達することができる。
【0049】
本実施例の電池パック1を用いた場合には、図6に示すように、ダクト60を用いて、電池パック1の上面に温度調節用の空気を接触させることができる。ここで、電池パック1が車両に搭載されている場合には、車室内の空気を、ダクト60を介して電池パック1に導くことができる。図6に示す矢印は、空気の移動方向を示している。
【0050】
具体的には、ダクト60の一端に形成された吸気口61を車室内に位置させ、ファン(不図示)の駆動によって、車室内の空気をダクト60内に取り込ませることができる。ここでいう車室とは、乗員の乗車するスペースをいう。そして、ダクト60のうち、電池パック1(アッパーケース22)と対向する領域に開口部62を形成しておき、開口部62を介してアッパーケース22の外壁面に空気を接触させることができる。また、ダクト60の他端に形成された排気口63を車外に位置させておけば、アッパーケース22との間で熱交換された空気を車外に排出させることができる。
【0051】
図6に示す構成において、ファン41を駆動した状態で、冷却用の空気をアッパーケース22の外壁面に接触させれば、アッパーケース22における放熱性を向上させることができ、複数の単電池11の冷却効率を向上させることができる。また、加温用の空気をアッパーケース22の外壁面に接触させれば、アッパーケース22を介して熱交換媒体30を温めることができ、複数の単電池11の加温効率を向上させることができる。
【0052】
なお、図6に示す構成では、アッパーケース22の外壁面を平坦な面で構成しているが、アッパーケース22の外壁面にフィンを設けることができる。すなわち、ダクト60の内部にフィンを配置することができる。このように構成すれば、アッパーケース22の外壁面において、温度調節用の空気との接触面積を増加させることができ、アッパーケース22を介した電池モジュール10の温度調節を効率良く行うことができる。なお、フィンの形状や数は、適宜設定することができる。
【0053】
一方、アッパーケース22の内壁面にフィンを設けることもでき、この場合には、パックケース20内において、熱交換媒体30との接触面積を増加させることができる。この場合には、上述した熱交換媒体30の主な流れに沿うようにフィンを配置することが好ましい。
【0054】
熱交換媒体30をパックケース20内で循環させると、上述したように、ファンケース42の上端部(突部42d)を乗り越えた熱交換媒体30がファン41に向かって落下することになる。この場合には、熱交換媒体30の落下によって気泡が発生するおそれがあり、ファン41の配置領域R2で気泡が発生してしまうと、アッパーケース22の内壁面に気泡が到達してしまうことがある。そして、アッパーケース22の内壁面に気泡が残ったままでは、アッパーケース22および熱交換媒体30の接触面積が減少し、アッパーケース22を介した熱伝達が行われにくくなってしまう。
【0055】
そこで、本実施例では、図7に示すように、ファン41の配置領域R2にガイド板70を設けることにより、熱交換媒体30の落下による気泡の発生を阻止するようにしている。ここで、図7は、電池パック1の内部における一部の構成を示す断面図である。
【0056】
ガイド板70は、一部がアッパーケース22の内壁面に固定されており、ファンケース42の第1仕切板42bと略平行に配置されている。また、図8に示すように、ガイド板70は、ファンケース42における一対の側板42aの間に位置しており、ガイド板70の外縁部が一対の側板42aに接触している。ここで、図8は、図7に示す構成をアッパーケース22の側から見たときの図である。
【0057】
本実施例では、ガイド板70を用いることにより、単電池11の配置領域R1からファン41に向かう熱交換媒体30の流路を狭めている。すなわち、ガイド板70を設けたときの熱交換媒体30の流路の幅W1は、ガイド板70を設けないときの熱交換媒体30の流路の幅W2よりも狭くなっている。このように熱交換媒体30の流路を狭めることにより、熱交換媒体30の落下速度を低下させることができ、熱交換媒体30の落下に伴う気泡の発生を抑制することができる。
【0058】
ファン41に向かう熱交換媒体30を、ファンケース42の第1仕切板42bおよびガイド板70に接触させることにより、図9に示すように、熱交換媒体30に摩擦抵抗を与えることができる。ここで、図9は、第1仕切板42bおよびガイド板70の間における熱交換媒体30の落下状態を示す概略図である。
【0059】
図9に示す曲線Sは、熱交換媒体30の流速分布を示しており、第1仕切板42bおよびガイド板70に接触する部分Fにおいて、最も流速が低くなっている。ここで、ガイド板70を省略した場合には、ファン41に向かう熱交換媒体30に対して、第1仕切板42bだけで摩擦抵抗を与えるだけであるが、本実施例では、熱交換媒体30を挟む部分で摩擦抵抗を与えることができる。
【0060】
なお、幅W1は、パックケース20内における熱交換媒体30の循環を確保する点と、熱交換媒体30の落下速度を低下させる点とに基づいて、適宜設定することができる。また、ファン41の配置領域R2において、ガイド板70およびロアーケース21の間に形成されたスペースは、熱交換媒体30を流動させた際に、空気50を退避させるスペースとなる。
【0061】
本実施例では、ガイド板70を平板状の部材で構成しているが、これに限るものではない。例えば、図10に示すように、第1仕切板42bおよびガイド板70のうち、熱交換媒体30が移動する通路を形成する面に対して、複数のフィン71,42gをそれぞれ設けることができる。ここで、図10は、電池パック1の内部をアッパーケース22の側から見たときの図であり、図8に対応した図である。複数のフィン71,42gを設けておけば、熱交換媒体30との摩擦抵抗を増加させたり、ファン41に向かう熱交換媒体30の流れを整えたりすることができる。なお、フィン71,42gの形状や位置は、適宜設定することができる。また、第1仕切板42bおよびガイド板70のうち、一方の部材にのみ、上述したフィンを設けることもできる。
【0062】
また、本実施例では、ガイド板70を第1仕切板42bに対して略平行となるように配置しているが、第1仕切板42bに対して傾斜するように配置することもできる。具体的には、ガイド板70および第1仕切板42bの間隔(図8の幅W1に相当)が、ファン41に近づくにしたがって、狭くなるように、ガイド板70を配置することができる。このように構成しても、熱交換媒体30の落下速度を低下させることができる。
【実施例2】
【0063】
次に、本発明の実施例2である電池パックについて説明する。ここで、実施例1で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。本実施例では、実施例1で説明した構造とは異なる構造を用いて、ファン41に向かう熱交換媒体30の落下速度を低下させるようにしている。
【0064】
実施例1では、ガイド板70および第1仕切板42bの間に、ファン41に向かう熱交換媒体30の流路を形成しているが、本実施例では、ガイド板80とロアーケース21の側壁との間に、熱交換媒体30の流路を形成している。具体的には、図11に示すように、ファンケース42に対してガイド板80が取り付けられている。ガイド板80の一端は、ファンケース42の上端部(突部42d)に接続されており、ガイド板80は、突部42dと同一面内に位置する領域81と、鉛直方向に延びる領域82とを有している。
【0065】
また、図12に示すように、ガイド板80の外縁部83は、ファンケース42の側板42aから離れている。ここで、図12は、図11に示す構成をアッパーケース22の側から見たときの図である。
【0066】
本実施例において、ファン41を駆動すると、ファン41の配置領域R2から単電池11の配置領域R1に向かって熱交換媒体30が送り出され、単電池11の配置領域R1において、液面31が上昇する。本実施例でも、実施例1(図4)で説明したように、体積V1を体積V2よりも小さくしているため、液面31をアッパーケース22の内壁面に接触させることができる。これにより、実施例1と同様に、アッパーケース22を介した熱伝達を効率良く行うことができる。
【0067】
単電池11の配置領域R1において、液面31が上昇すると、熱交換媒体30は、ファンケース42の上方を通過して、ファン41の配置領域R2に移動するようになる。このとき、熱交換媒体30は、ガイド板80とロアーケース21の側壁との間に形成されたスペースにおいて、ファン41に向かって落下することになる。本実施例でも、ガイド板80を用いて、ファン41に向かう熱交換媒体30の流路を狭めているため、熱交換媒体30の落下速度を低下させることができる。これにより、熱交換媒体30の落下に伴う気泡の発生を抑制することができる。
【0068】
また、ロアーケース21の側壁に沿って熱交換媒体30の流路を形成することにより、ファン41の回転を妨げることなく、熱交換媒体30をファン41に到達させることができる。図13には、熱交換媒体30の移動方向およびファン41の回転方向の関係を示している。単電池11の配置領域R1に対して熱交換媒体30を送り出すためには、ファン41を図13の矢印で示すように回転させる必要がある。このとき、ガイド板80およびロアーケース21の間を落下する熱交換媒体30は、ファン41の回転方向に沿うように、ファン41に到達するため、ファン41をスムーズに回転させることができる。
【0069】
ここで、ガイド板80のうち鉛直方向に延びる領域82と、ファン41の回転軸41aとを同一面内に位置させれば、熱交換媒体30をファン41に向かって落下させつつ、ファン41をスムーズに回転させることができる。
【0070】
本実施例では、図11に示すように、ファンケース42およびガイド板80によって囲まれたスペースを空気50の退避スペースとして用いている。ここで、図12に示すように、ガイド板80の外縁部83はファンケース42の側板42aから離れているため、上述した退避スペースに、空気50を容易に移動させることができる。すなわち、外縁部83および側板42aは、空気50を上述した退避スペースに導くための導入口を形成している。
【0071】
ガイド板80の外縁部83を側板42aに接触させてしまうと、ファンケース42およびガイド板80によって囲まれた退避スペースに、空気50を移動させにくくなってしまう。すなわち、外縁部83を側板42aに接触させた構成では、ファン41の駆動に応じて、空気50をガイド板80の下端部まで移動させなければならないが、空気50は、熱交換媒体(液体)30よりも比重が軽いため、ガイド板80の下端部まで空気50を移動させにくくなる。そこで、上述したように、ガイド板80の外縁部83および側板42aの間に、空気50の移動スペースを形成することにより、上述した退避スペースに空気50を容易に移動させることができる。
【0072】
なお、ファンケース42およびガイド板80によって囲まれたスペースに空気50を導く構成は、上述した構成に限るものではない。すなわち、ガイド板80およびロアーケース21の側壁を用いて熱交換媒体30の落下速度を低下させつつ、上述した退避スペースに空気50を導くことができればよい。
【0073】
例えば、図14に示すように、ガイド板80のうち、鉛直方向に延びる領域82において、複数の開口部84を形成することができる。これにより、ファン41の駆動に応じて、空気50は、開口部84を通過して退避スペースに移動することができる。ここで、複数の開口部84を、領域82のうち、上方に位置する領域に形成しておけば、空気50を退避スペースに容易に移動させることができる。また、図14に示す構成において、ガイド板80の外縁部83は、ファンケース42の側板42aに接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
【0074】
一方、本実施例(図11)で説明した構成において、実施例1(図7)で説明したガイド板70を追加することができる。具体的には、ガイド板80およびロアーケース21の側壁の間にガイド板70を配置し、2つのガイド板70,80の間に形成された通路を用いて熱交換媒体30をファン41に向かって落下させることができる。
【0075】
また、本実施例では、ファンケース42にガイド板80を取り付けているが、ガイド板80をロアーケース21の側壁に取り付けることもできる。この場合には、ガイド板80およびファンケース42の第1仕切板42bの間に形成された通路を用いて、熱交換媒体30をファン41に向かって落下させることができる。そして、気体50は、ガイド板80およびロアーケース21によって囲まれたスペースに退避させることができる。
【符号の説明】
【0076】
1:電池パック(蓄電装置) 10:電池モジュール
11:単電池(蓄電素子) 11a,11b:電極端子
12:電池ホルダ 13:バスバー
20:パックケース 21:ロアーケース
22:アッパーケース 30:熱交換媒体
40:撹拌ユニット 41:ファン
42:ファンケース(仕切り部材) 44:ファンモータ
50:空気層 60:ダクト
70,80:ガイド板(ガイド部材) 71:フィン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子と、前記蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体とを密閉状態で収容し、内部に気体の層を含むケースと、
前記ケース内に配置され、回転動作によって前記熱交換媒体に流動力を与えるためのファンと、
前記複数の蓄電素子が位置する第1領域と前記ファンが位置する第2領域との間で前記熱交換媒体を循環させ、前記第1領域からの前記熱交換媒体を前記ファンに向かって落下させるための仕切り部材と、
前記ケースの側面および前記仕切り部材の間で、前記第1領域からの前記熱交換媒体を前記ファンに導く通路を形成し、前記熱交換媒体の流れに対して摩擦抵抗を与えるガイド部材と、
を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記ケースの上面から前記ファンに向かって延びており、前記仕切り部材との間で前記通路を形成することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記気体は、前記ファンの駆動による前記熱交換媒体の流動に応じて、前記ケースの側面および前記ガイド部材の間に位置するスペースに移動することを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記仕切り部材の上端部から前記ファンに向かって延びており、前記ケースの側面との間で前記通路を形成することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記気体は、前記ファンの駆動による前記熱交換媒体の流動に応じて、前記ガイド部材および前記仕切り部材の間に位置するスペースに移動することを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記ガイド部材の外縁部は、前記スペースに前記気体を導くための導入口を形成することを特徴とする請求項5に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記ファンが非駆動状態にある場合において、前記気体の層の体積は、前記ファンの上方に位置して前記ファンに取り込まれる前記熱交換媒体の体積よりも小さいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記ケースの上面には、前記ケースの外部に配置されたダクトを介して、前記蓄電素子の温度調節に用いられる気体が供給されることを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記蓄電素子は、長手方向と直交する断面の形状が略円形に形成されており、
前記複数の蓄電素子は、前記各蓄電素子の長手方向と前記ファンの回転軸方向とが略平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項1】
複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子と、前記蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体とを密閉状態で収容し、内部に気体の層を含むケースと、
前記ケース内に配置され、回転動作によって前記熱交換媒体に流動力を与えるためのファンと、
前記複数の蓄電素子が位置する第1領域と前記ファンが位置する第2領域との間で前記熱交換媒体を循環させ、前記第1領域からの前記熱交換媒体を前記ファンに向かって落下させるための仕切り部材と、
前記ケースの側面および前記仕切り部材の間で、前記第1領域からの前記熱交換媒体を前記ファンに導く通路を形成し、前記熱交換媒体の流れに対して摩擦抵抗を与えるガイド部材と、
を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記ケースの上面から前記ファンに向かって延びており、前記仕切り部材との間で前記通路を形成することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記気体は、前記ファンの駆動による前記熱交換媒体の流動に応じて、前記ケースの側面および前記ガイド部材の間に位置するスペースに移動することを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記仕切り部材の上端部から前記ファンに向かって延びており、前記ケースの側面との間で前記通路を形成することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記気体は、前記ファンの駆動による前記熱交換媒体の流動に応じて、前記ガイド部材および前記仕切り部材の間に位置するスペースに移動することを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記ガイド部材の外縁部は、前記スペースに前記気体を導くための導入口を形成することを特徴とする請求項5に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記ファンが非駆動状態にある場合において、前記気体の層の体積は、前記ファンの上方に位置して前記ファンに取り込まれる前記熱交換媒体の体積よりも小さいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記ケースの上面には、前記ケースの外部に配置されたダクトを介して、前記蓄電素子の温度調節に用いられる気体が供給されることを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記蓄電素子は、長手方向と直交する断面の形状が略円形に形成されており、
前記複数の蓄電素子は、前記各蓄電素子の長手方向と前記ファンの回転軸方向とが略平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−244863(P2010−244863A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92670(P2009−92670)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]